(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、トナー粒子、トナー母粒子、トナーコア、第1粒子、又は外添剤粒子に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。
【0011】
また、粉体の個数平均1次粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の体積中位径(D
50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。
【0012】
また、酸価及び水酸基価の各々の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。ガラス転移点(Tg)及び融点(Mp)は、各々、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定した値である。軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。
【0013】
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、何ら規定していなければ、下記式を用いて求められた値である。ここで、下記式において、「軟化点」は、結晶性ポリエステル樹脂の軟化点(Tm)を意味する。また、「吸熱曲線」は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される吸熱曲線を意味する。「吸熱曲線における最大ピーク温度」は、吸熱曲線に現れる吸熱ピークのうち、最も高温側に位置する吸熱ピークのピーク温度を意味する。結晶性ポリエステル樹脂において、吸熱曲線における最大ピーク温度は、融点(Mp)に相当する。
(結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数)=(軟化点)/(吸熱曲線における最大ピーク温度)
【0014】
また、帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ、又は摩擦帯電における負帯電性の強さは、周知の帯電列などで確認できる。
【0015】
また、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0016】
[本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの構成]
本実施形態に係る静電潜像現像用トナー(以下、「トナー」と記載することがある)は、正帯電性を有し、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、各々、トナー母粒子を備える。トナー母粒子は、各々、トナーコアと、シリカを含有する複数の第1粒子と、シェル層とを有する。トナーコアは、各々、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂とを含有する。第1粒子は、各々、トナーコアの表面に埋め込まれている埋没部分と、トナーコアの表面よりもトナー粒子の径方向外側に突出する突出部分とを含む。トナーコアの表面領域のうち第1粒子で被覆されたトナーコアの面積の割合(以下、「第1粒子の被覆率」と記載する)が、50%以上である。第1粒子の個数平均1次粒子径R
fが、200nm以上500nm以下である。シェル層は、トナーコアの表面のうち第1粒子から露出する部分(以下、「トナーコアの露出部分」と記載する)と、突出部分の表面とを被覆する。シェル層は、非晶性ポリエステル樹脂よりも強い正帯電性を有する樹脂(以下、単に「正帯電性を有する樹脂」と記載する)を含有する。シェル層の厚さTが、20nm以上50nm以下である。
【0017】
<用語の説明>
第1粒子の個数平均1次粒子径R
fは、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)r
f(後述の
図2参照)の個数平均値を意味する。
【0018】
シェル層の厚さTは、トナー粒子の径方向におけるシェル層の寸法を意味し、次に示す方法で測定される。
まず、透過電子顕微鏡(TEM、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて、トナー母粒子の断面TEM写真を撮影する。次に、トナー母粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(例えば三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、解析する。詳しくは、トナー母粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引く。その2本の直線の各々において、トナーコアとシェル層との界面(トナーコアの表面に相当)からシェル層の表面までの長さを測定する。このようにして測定された4箇所の長さの平均値を、1個のトナー母粒子が備えるシェル層の厚さt(後述の
図2参照)とする。このようなシェル層の厚さtの測定を複数のトナー母粒子に対して行い、複数のトナー母粒子が備えるシェル層の厚さtの平均値を求める。このようにして求められたシェル層の厚さtの平均値を「シェル層の厚さT」とする。
【0019】
第1粒子の被覆率は、次に示す方法で測定される。
詳しくは、まず、トナー母粒子のTEM写真を撮影する。次に、トナー母粒子のTEM写真を、画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、二値化処理する。このとき、トナーコアの表面領域において第1粒子が設けられている領域と第1粒子が設けられていない領域とが明確になるように、トナー母粒子のTEM写真に対して二値化処理を行う。そして、第1粒子の投影面積を用いて、表面全域に占める第1粒子の割合を算出する。この操作を複数枚のTEM写真(トナー母粒子のTEM写真)に対して行い、第1粒子の占有割合の平均値を算出する。このようにして求められた第1粒子の占有割合の平均値を「第1粒子の被覆率」とする。
【0020】
トナー粒子の径方向における第1粒子の突出部分の長さ(以下、「第1粒子の突出高さ」と記載する)の個数平均値Hは、次に示す方法で測定される。
まず、トナー母粒子の断面TEM写真を撮影する。次に、トナー母粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、解析する。詳しくは、画像解析ソフトウェアにおいて、計測ツールの手動計測のライン長計測を選択する。手動計測のライン長計測を選択した状態で、トナー母粒子の断面TEM写真において、第1粒子(トナーコアの表面に埋め込まれている第1粒子)を無作為に数個、選択する。そして、選択した第1粒子の各々において、トナー粒子の径方向における第1粒子の突出部分の長さh(後述の
図2参照)を計測し、その個数平均値を算出する。このようにして求められた長さhの個数平均値を「第1粒子の突出高さの個数平均値H」とする。
【0021】
<第1の具体例に係る静電潜像現像用トナーの構成>
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るトナーの構成を具体的に説明する。
図1は、第1の具体例に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成を説明する断面図である。
図2は、
図1に示すトナー粒子の構成を説明する拡大断面図である。なお、
図2では、トナーコア21の表面を直線で記載しているが、実際のトナー粒子では、トナーコアの表面は球面形状(断面視円形形状)を有する。また、
図2では、シェル層25の表面の一部分を直線で記載しているが、実際のトナー粒子では、シェル層25の表面は曲面形状を有する。また、
図2では、トナー粒子10(
図1参照)の径方向を「Dr」で表し、トナー粒子10の径方向内側を「X1」で表し、トナー粒子10の径方向外側を「X2」で表す。
【0022】
第1の具体例に係るトナーは、正帯電性を有し、複数のトナー粒子10を含む。トナー粒子10は、各々、トナー母粒子20を備える。トナー母粒子20は、各々、トナーコア21と、シリカを含有する複数の第1粒子23と、シェル層25とを有する。トナーコア21は、各々、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂とを含有する。第1粒子23は、各々、トナーコア21の表面に埋め込まれている埋没部分231と、トナーコア21の表面よりもトナー粒子10の径方向外側X2に突出する突出部分233とを含む。第1粒子23の被覆率が、50%以上である。第1粒子23の個数平均1次粒子径R
fが、200nm以上500nm以下である。シェル層25は、トナーコア21の露出部分と、第1粒子23の突出部分233の表面とを被覆する。シェル層25は、正帯電性を有する樹脂を含有する。シェル層25の厚さTが、20nm以上50nm以下である。これにより、第1の具体例では、低温定着性と耐熱保存安定性とに優れるトナーを提供できる。また、第1の具体例では、トナーの帯電量の低下を防止できる。
【0023】
詳しくは、トナーコア21は、結晶性ポリエステル樹脂を含有する。これにより、低温定着性と耐熱保存安定性とに優れるトナーを提供できる。
【0024】
また、シェル層25は、トナーコア21の露出部分と、第1粒子23の突出部分233の表面とを被覆する。一般に、シェル層は、トナーコアに比べ、耐熱性に優れる。そのため、シェル層25の厚さTが20nm以上であれば、耐熱保存安定性に優れるトナーを提供できる。また、シェル層25の厚さTが50nm以下であれば、低温定着性に優れるトナーを提供できる。
【0025】
シェル層25がトナーコア21の露出部分と第1粒子23の突出部分233の表面とを被覆するため、トナー母粒子20の表面はシェル層25で構成される。ここで、シェル層25は、正帯電性を有する樹脂を含有する。そのため、第1の具体例に係るトナーは、静電潜像現像用キャリア(以下、「キャリア」と記載する)又は磁性粉との摩擦により、正に帯電し易い。より具体的には、シェル層25とキャリア又は磁性粉とが擦り合わされると、シェル層25では正電荷が発生し易い。
【0026】
シェル層25が第1粒子23の突出部分233の表面を被覆するため、シェル層25よりもトナー粒子10の径方向内側X1には第1粒子23が存在する。一般に、シリカ粒子は、樹脂(例えば、シェル層を構成する樹脂又は結着樹脂)に比べ、高い電気抵抗を有する。また、第1粒子23は、シリカを含有する。これらのことから、第1粒子23は、トナーコア21及びシェル層25に比べ、高い電気抵抗を有し、よって、電荷を保持し易い。また、第1粒子23の被覆率は50%以上であるため、シェル層25よりもトナー粒子10の径方向内側X1に存在する第1粒子23の量を確保できる。以上より、シェル層25において発生した正電荷を第1粒子23で保持することができる。そのため、トナーの帯電量の低下を防止できる。したがって、逆帯電トナーの飛散を防止でき、ひいては、かぶりの発生を防止できる。
【0027】
第1の具体例に係るトナーをさらに説明する。第1粒子23は、埋没部分231を含む。また、第1粒子23の突出部分233は、シェル層25で被覆されている。これらのことから、画像形成中に第1粒子23がトナーコア21の表面から脱離することを防止できる。よって、画像形成中にトナーの帯電量が低下することを防止できる。したがって、連続印刷を行った場合であっても、逆帯電トナーの飛散を防止でき、ひいては、かぶりの発生を防止できる。
【0028】
第1粒子23の個数平均1次粒子径R
fは、200nm以上500nm以下である。このように、第1粒子23は、大径なシリカ粒子である。そのため、画像形成装置内において第1の具体例に係るトナーが機械的又は熱的なストレスを受けた場合であっても、第1粒子23全体がトナーコア21に完全に埋まることを防止できる。このことによっても、画像形成中にトナーの帯電量が低下することを防止できる。したがって、連続印刷を行った場合であっても、逆帯電トナーの飛散を防止でき、ひいては、かぶりの発生を防止できる。
【0029】
なお、「画像形成装置内において第1の具体例に係るトナーが機械的なストレスを受けた場合」の一例としては、次に示す場合が考えられる。詳しくは、画像形成装置内において、トナー粒子10と、画像形成装置を構成する部材、キャリアを構成するキャリア粒子、又は他のトナー粒子10とが、互いに衝突する。これにより、トナー粒子10には、外力が付与され易い。
【0030】
また、「画像形成装置内において第1の具体例に係るトナーが熱的なストレスを受けた場合」の一例としては、次に示す場合が考えられる。詳しくは、画像形成装置内での摩擦熱の発生などに起因して、画像形成装置の内部温度が上昇する。これにより、画像形成装置に含まれるトナーの温度が上昇する。よって、トナーコア21が軟化し易い。
【0031】
以下、第1の具体例に係るトナーの好ましい構成を説明する。好ましくは、第1粒子23の突出高さの個数平均値Hは、第1粒子23の個数平均1次粒子径R
fの0.4倍以上0.8倍以下である。これにより、画像形成中に第1粒子23がトナーコア21の表面から脱離することをより一層、防止できる。また、画像形成中に第1粒子23全体がトナーコア21に完全に埋まることをより一層、防止できる。これらのことから、連続印刷を行った場合であっても、逆帯電トナーの飛散を防止でき、ひいては、かぶりの発生を防止できる。
【0032】
また、好ましくは、第1粒子23は、表面に疎水化処理と正帯電化処理とが施されていないシリカ粒子である。これにより、疎水化処理と正帯電化処理とを(特に正帯電化処理を)表面に施したことに起因する劣化が第1粒子23において発生することを防止できる。よって、帯電特性に優れるトナーを提供できる。なお、トナー粒子10では、シェル層25において発生した正電荷を第1粒子23で保持することができる。そのため、第1粒子23として、表面が正帯電化処理されていないシリカ粒子を使用できる。また、第1粒子23では、埋没部分231はトナーコア21に埋没され、突出部分233の表面はシェル層25で被覆されている。そのため、第1粒子23として、表面が疎水化処理されていないシリカ粒子を使用できる。
【0033】
<第2の具体例に係る静電潜像現像用トナーの構成>
以下、
図3を参照して、本実施形態に係るトナーの好ましい構成を具体的に説明する。
図3は、第2の具体例に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成を説明する断面図である。以下では、第1の具体例に係るトナーとは異なる点を主に説明する。
【0034】
図3に示すトナー粒子50は、シェル層25の表面に付着する外添剤を備える。外添剤は、複数の外添剤粒子52を含む。外添剤粒子52の個数平均1次粒子径R
sは、10nm以上40nm以下であることが好ましい。これにより、トナー粒子50の流動性を高めることができる。ここで、外添剤粒子52の個数平均1次粒子径R
sは、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)r
sの個数平均値を意味する。
【0035】
外添剤粒子52は、シリカ粒子の表面に疎水化処理と正帯電化処理とが施されて構成された粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子の表面に疎水化処理が施されると、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基の少なくとも1つにおいて、OHが、OHよりも反応性の低い官能基で置換される。OHよりも反応性の低い官能基としては、例えばアルキル基が挙げられる。また、シリカ粒子の表面に正帯電化処理が施されると、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基の少なくとも1つにおいて、OHが、OHよりも正帯電性の強い官能基で置換される。OHよりも正帯電性の強い官能基としては例えばアミノ基(−NH
2基)が挙げられる。以上、
図1〜
図3を用いて、本実施形態に係るトナーの構成と本実施形態に係るトナーの好ましい構成とを説明した。なお、本実施形態に係るトナーは、1成分現像剤に含まれるトナーであっても良いし、キャリアと共に2成分現像剤を構成しても良い。
【0036】
[本実施形態に係るトナーの製造方法]
本実施形態に係るトナーの製造方法は、トナー母粒子の製造工程を含み、好ましくは外添工程をさらに含む。トナー母粒子の製造工程を行えば、
図1に示すトナー粒子を複数含むトナーを製造できる。トナー母粒子の製造工程と外添工程とを順に行えば、
図3に示すトナー粒子を複数含むトナーを製造できる。なお、同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
【0037】
<トナー母粒子の製造工程>
トナー母粒子の製造工程は、トナーコアの製造工程と、第1粒子の埋没工程と、シェル層の形成工程とを含む。
【0038】
(トナーコアの製造工程)
トナーコアの製造工程では、公知の凝集法又は公知の粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましい。これにより、トナーコアを容易に製造できる。
【0039】
より好ましくは、公知の粉砕法によりトナーコアを製造する。これにより、誘電正接(tanδ)が1.5×10
-3以下であるトナーを製造できる。一般に、トナーの誘電正接が小さいほど、トナーは電荷を保持し易い。そのため、誘電正接が1.5×10
-3以下であるトナーを製造できれば、電荷の保持性能に優れるトナーを製造できる。よって、公知の粉砕法によりトナーコアを製造すれば、シェル層において発生した正電荷をより一層保持可能なトナーを提供できる。したがって、帯電量の低下をより一層防止可能なトナーを提供できる。
【0040】
ここで、トナーの誘電正接は、以下に示す方法で測定できる。詳しくは、まず、トナーを圧縮成型して、所定の形状を有するサンプルを作製する。次に、サンプルを、一対の固体用電極の間にセットする。続いて、LCRメーターを用いて、固体用電極の間に5×10
3Hzの交流電圧を印加したときの位相のずれを測定する。このようにして測定された位相のずれを「トナーの誘電正接」とする。
【0041】
(第1粒子の埋没工程)
第1粒子の埋没工程では、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、トナーコアと第1粉体とを混合する。ここで、第1粉体は、複数の第1粒子で構成された粉体を意味する。トナーコアと第1粉体とを混合すると、トナーコアの表面には、第1粒子の各々の一部分が埋め込まれる。このようにして、第1粒子の各々の一部分がトナーコアの表面に埋め込まれて構成された粒子(以下、「複合トナーコア」と記載する)が得られる。
【0042】
第1粒子は、表面に疎水化処理と正帯電化処理とが施されていないシリカ粒子であることが好ましい。例えば、公知のゾルゲル法により製造されたシリカ粒子を第1粒子として使用できる。
【0043】
トナーコアと第1粉体との混合条件を調整すれば、第1粒子の突出高さの個数平均値Hと第1粒子の被覆率とを調整できる。例えば、トナーコアと第1粉体との混合時間が長ければ、第1粒子はトナーコアの表面に埋め込まれ易い。そのため、第1粒子の突出高さの個数平均値Hが小さくなる傾向にある。また、第1粒子の被覆率が高くなる傾向にある。混合機が備える攪拌機の回転速度が速い場合、同様の傾向を示し易い。一方、トナーコアと第1粉体との混合時間が短ければ、第1粒子はトナーコアの表面に埋め込まれ難い。そのため、第1粒子の突出高さの個数平均値Hが大きくなる傾向にある。また、第1粒子の被覆率が低くなる傾向にある。混合機が備える攪拌機の回転速度が遅い場合、同様の傾向を示し易い。
【0044】
また、第1粉体の配合量を調整すれば、第1粒子の被覆率を調整できる。例えば、第1粉体の配合量が多ければ、第1粒子の被覆率が高くなる傾向にある。一方、第1粉体の配合量が少なければ、第1粒子の被覆率が低くなる傾向にある。
【0045】
(シェル層の形成工程)
シェル層の形成工程では、例えばin−situ重合法、液中硬化被膜法、又はコアセルベーション法により、複合トナーコアの表面をシェル層で被覆する。これにより、シェル層は、トナーコアの露出部分と、第1粒子の突出部分の表面とに、形成される。このようにして、複数のトナー母粒子が得られる。より具体的には、
図1に示すトナー粒子を複数含むトナーが得られる。
【0046】
シェル層を構成する樹脂(以下、「シェル樹脂」と記載することがある)の配合量を調整すれば、シェル層の厚さTを調整できる。例えば、シェル樹脂の配合量が多ければ、シェル層の厚さTが大きくなる傾向にある。一方、シェル樹脂の配合量が少なければ、シェル層の厚さTが小さくなる傾向にある。
【0047】
<外添工程>
混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する。これにより、トナー母粒子の表面には、外添剤粒子の各々が付着する。このようにして、複数のトナー粒子が得られる。より具体的には、
図3に示すトナー粒子を複数含むトナーが得られる。
【0048】
外添剤粒子は、次に示す方法で製造されることが好ましい。詳しくは、まず、公知のゾルゲル法によりシリカ粒子を製造する。次に、製造されたシリカ粒子の表面に、疎水化処理と、正帯電化処理とを施す。疎水化処理では、公知の疎水化処理剤を用いてシリカ粒子の表面を処理することが好ましい。正帯電化処理では、公知の正帯電性付与剤を用いてシリカ粒子の表面を処理することが好ましい。
【0049】
[トナーを構成する材料及び物性の各々の例示]
トナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、各々、トナー母粒子を備える。トナー母粒子は、トナーコアと、第1粒子と、シェル層とを有する。第1粒子については、上記[本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの構成]で説明したとおりである。以下では、トナーコアとシェル層とを順に説明する。
【0050】
<トナーコア>
トナーコアは、結着樹脂を含有する。トナーコアは、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤のうちの少なくとも1つをさらに含有しても良い。
【0051】
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。
【0052】
上述したように、トナーコアは、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂とを含有する。以下では、ポリエステル樹脂を説明した後に、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを順に説明する。
【0053】
(結着樹脂:ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸との共重合体である。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示す2価アルコール又は3価以上のアルコールを使用できる。2価アルコールとしては、例えば、ジオール類又はビスフェノール類を使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示す2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を使用できる。
【0054】
ジオール類の好適な例としては、脂肪族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、α,ω−アルカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。α,ω−アルカンジオールは、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、又は1,12−ドデカンジオールであることが好ましい。
【0055】
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0056】
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0057】
2価カルボン酸の好適な例としては、芳香族ジカルボン酸、α,ω−アルカンジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、又はシクロアルカンジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸であることが好ましい。α,ω−アルカンジカルボン酸は、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は1,10−デカンジカルボン酸であることが好ましい。不飽和ジカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、又はグルタコン酸であることが好ましい。シクロアルカンジカルボン酸は、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。
【0058】
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
【0059】
(結着樹脂:結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分として、炭素数2以上8以下のα,ω−アルカンジオールを含むことが好ましい。α,ω−アルカンジオールは、例えば、2種類のα,ω−アルカンジオールであることが好ましい。より具体的には、α,ω−アルカンジオールは、炭素数4の1,4−ブタンジオールと炭素数6の1,6−ヘキサンジオールとであることが好ましい。
【0060】
結晶性ポリエステル樹脂は、酸成分として、炭素数(2つのカルボキシル基の炭素を含む)4以上10以下のα,ω−アルカンジカルボン酸を含むことが好ましい。α,ω−アルカンジカルボン酸は、例えば、炭素数4のコハク酸であることが好ましい。
【0061】
より好ましくは、結晶性ポリエステル樹脂の融点が50℃以上100℃以下である。これにより、低温定着性と耐熱保存安定性とにさらに優れるトナーを提供できる。
【0062】
トナーコアに含まれる結晶性ポリエステル樹脂の量は、トナーコアに含まれるポリエステル樹脂の総量(結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂との合計量)に対して、5質量%超30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。例えば、トナーコアに含まれるポリエステル樹脂の総量が100gである場合には、トナーコアに含まれる結晶性ポリエステル樹脂の量が5g超30g以下(より好ましくは、10g以上30g以下)であることが好ましい。これにより、低温定着性と耐熱保存安定性とにさらに優れるトナーを提供できる。
【0063】
(結着樹脂:非晶性ポリエステル樹脂)
非晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分として、ビスフェノール類を含むことが好ましい。ビスフェノール類は、例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0064】
非晶性ポリエステル樹脂は、酸成分として、芳香族ジカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸であることが好ましい。不飽和ジカルボン酸は、例えば、フマル酸であることが好ましい。
【0065】
(結着樹脂:その他の樹脂)
結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(具体的には、水酸基価、酸価、ガラス転移点、又は軟化点)を調整できる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなる。また、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の酸価及び水酸基価の少なくとも一方が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0066】
トナーコアは、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂以外に、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を使用できる。アクリル酸系樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体を使用できる。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を使用できる。ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂を使用できる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として使用できる。例えば、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂も、トナーコアを構成する熱可塑性樹脂として使用できる。
【0067】
(着色剤)
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1.00質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0068】
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0069】
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
【0070】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを使用できる。
【0071】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を使用できる。
【0072】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを使用できる。
【0073】
(離型剤)
離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1.00質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0074】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを使用できる。1種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
【0075】
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
【0076】
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
【0077】
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
【0078】
<シェル層>
シェル層は、正帯電性を有する樹脂を含有し、好ましくは正帯電性を有する樹脂で構成される。正帯電性を有する樹脂は、好ましくは、スチレン−アクリル酸系樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂のうちの少なくとも1つであり、より好ましくは、スチレン−アクリル酸系樹脂である。非晶性ポリエステル樹脂は、上記(結着樹脂:非晶性ポリエステル樹脂)で説明したとおりである。以下では、スチレン−アクリル酸系樹脂を説明する。
【0079】
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するために使用されるスチレン系モノマーとしては、以下に示すスチレン系モノマーを好適に使用できる。また、スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するために使用されるアクリル酸系モノマーとしては、以下に示すアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。
【0080】
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン、ヒドロキシスチレン、又はハロゲン化スチレンが挙げられる。アルキルスチレンは、例えば、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレンであることが好ましい。ヒドロキシスチレンは、例えば、p−ヒドロキシスチレン、又はm−ヒドロキシスチレンであることが好ましい。ハロゲン化スチレンは、例えば、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンであることが好ましい。
【0081】
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
【実施例】
【0082】
本発明の実施例を説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーT−1〜T−11を示す。表1において、「粒子径」は、第1粒子の個数平均1次粒子径を意味する。「高さ」は、第1粒子の突出高さの個数平均値を意味する。「比率」は、「高さ」を「粒子径」で除して得られた数値を意味する(比率=高さ/粒子径)。「被覆率」は、第1粒子の被覆率を意味する。「樹脂X1」は、スチレン−アクリル酸系樹脂を意味する。
【0083】
【表1】
【0084】
以下では、まず、第1粒子A〜Eの物性値の測定方法と分散液Qの調製方法とを説明する。次に、トナーT−1〜T−11の製造方法、物性値の測定方法、評価方法、及び評価結果を説明する。
【0085】
[第1粒子A〜Eの個数平均1次粒子径の測定方法]
第1粒子Aとして、シリカ粒子(株式会社日本触媒製「シーホスター(登録商標)KE−P30」)を準備した。第1粒子Bとして、シリカ粒子(株式会社日本触媒製「シーホスターKE−P20」)を準備した。第1粒子Cとして、シリカ粒子(株式会社日本触媒製「シーホスターKE−P50」)を準備した。第1粒子Dとして、シリカ粒子(株式会社日本触媒製「シーホスターKE−P10」)を準備した。第1粒子Eとして、シリカ粒子(株式会社日本触媒製「シーホスターKE−P70」)を準備した。
【0086】
走査型電子顕微鏡を用いて、第1粒子(第1粒子A〜Eの各々)のSEM写真を撮影した。SEM写真から、50個の第1粒子の画像を無作為に抽出した。抽出された第1粒子の画像を用いて、各々、長軸方向における第1粒子の長さを求めた。求められた長さの合計を第1粒子の個数(詳しくは50個)で除した。得られた値を第1粒子の個数平均1次粒子径とした。
【0087】
第1粒子A〜Eは、何れも、シャープな粒度分布を有していた。より具体的には、第1粒子A〜Eは、各々、約300nm、約200nm、約500nm、約100nm、及び約700nmの粒子径を有する第1粒子のみを実質的に含んでいた。
【0088】
[分散液Qの調製方法]
まず、攪拌機とコンデンサと温度計と窒素導入管とを備えるフラスコ(容量:2L)に、250質量部のイソブタノール(溶媒)と、45質量部のジエチルアミノエチルメタクリレートと、45質量部のパラトルエンスルホン酸メチルとを入れた。フラスコの温度を80℃まで上昇させた。フラスコの温度を80℃に保った状態で、窒素雰囲気下において1時間にわたってフラスコの内容物を攪拌した。この状態を維持しながら、4級化反応を進行させた。
【0089】
次に、フラスコに、窒素を導入しながら、156質量部のスチレンと、72質量部のブチルアクリレートと、12質量部のt-ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富株式会社製、過酸化物系反応開始剤)とを加えた。フラスコの温度を95℃(重合温度)まで上昇させた。フラスコの温度を95℃に保った状態で、3時間にわたってフラスコの内容物を攪拌した。フラスコに12質量部のt-ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富株式会社製)をさらに加え、3時間にわたってフラスコの内容物を攪拌した。高温減圧環境(温度140℃且つ圧力10kPa)下でフラスコの内容物を乾燥させて、フラスコの内容物から溶媒成分を除去した。得られた固形物を解砕して、粗粉砕物を得た。粗粉砕物を微粉砕して、微粉砕物(粒子径:10μm以下)を得た。
【0090】
100質量部の微粉砕物と、1質量部のカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン(登録商標) 24P」)と、25質量部の水酸化ナトリウム水溶液(濃度:0.1N)とを混合し、イオン交換水をさらに加えた。このようにして、400質量部のスラリーを得た。得られたスラリーを耐圧ステンレス容器(丸底)に入れ、耐圧ステンレス容器を高速剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックス(登録商標)CLM−2.2S」)に入れた。高速剪断乳化装置を用いて、高温高圧環境(温度140℃且つ圧力0.5MPa)下で30分間にわたって耐圧ステンレス容器の内容物を剪断分散した(ローターの回転速度:20000rpm)。ローターの回転速度を15000rpmに変更して耐圧ステンレス容器の内容物を攪拌しながら、5℃/分の冷却速度で耐圧ステンレス容器の温度を50℃まで下げた。このようにして、第1分散液を得た。
【0091】
第1分散液をフラスコ(容量:2L)に入れた。このフラスコに100.0質量部の第2分散液を30分間かけて滴下した。第2分散液は、25.0質量部のメチルメタクリレートと、25.0質量部のブチルアクリレートと、0.2質量部のチオグリコール酸オクチルと、1.0質量部のカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン 24P」)とを含み、イオン交換水(調整量)をさらに含んでいた。その後、フラスコの温度を95℃まで上昇させた。フラスコの温度を95℃に保った状態で、2時間にわたってフラスコの内容物を攪拌した。フラスコの温度を25℃まで冷却して、分散液Qを得た。分散液Qでは、樹脂粒子が分散していた。分散液Qにおける樹脂粒子の濃度(固形分濃度)は、29.1質量%であった。また、樹脂粒子の体積中位径(D
50)は、0.09μmであった。
【0092】
[トナーの製造方法]
<トナーT−1の製造方法>
まず、トナー母粒子の製造工程を行った。次に、外添工程を行った。
【0093】
(1.トナー母粒子の製造工程)
(1−1.トナーコアの製造工程)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)に、2880質量部の非晶性ポリエステル樹脂(数平均分子量Mn:1882、質量平均分子量Mw:4324、酸価:25.2mgKOH/g、軟化点Tm:82.1℃、ガラス転移点Tg:55.3℃)と、720質量部の結晶性ポリエステル樹脂(数平均分子量Mn:1131、質量平均分子量Mw:34012、酸価:3.6mgKOH/g、水酸基価:17.9mgKOH/g、軟化点Tm:85.6℃、融点Mp:76.4℃、結晶性指数:1.12)と、184質量部のワックス(合成エステル型ワックス、軟化点Tm:76℃、酸価:0.1mgKOH/g)と、216質量部のシアン顔料P.B.15−3(マスターバッチ、非晶性ポリエステル樹脂:シアン顔料=1:1(質量比))とを入れた。FMミキサーの内容物を回転速度2400rpmで180秒間混合した。
【0094】
得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度5kg/時、軸回転速度150rpm、設定温度範囲(シリンダー温度範囲)150℃の条件で、溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却した。冷却された溶融混練物を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、粗粉砕した。粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて、微粉砕した。微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて、分級した。このようにして、体積中位径(D
50)が6.65μmのトナーコアが得られた。
【0095】
(1−2.第1粒子の埋没工程)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)に、1000質量部のトナーコアと300質量部の第1粒子Aとを入れた。FMミキサーのジャケットにおいて温水(40℃)を循環させながら、FMミキサーの内容物を回転速度2800rpmで10分間混合した。得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。このようにして、複合トナーコアを得た。
【0096】
(1−3.シェル層の形成工程)
攪拌機を備えた丸底フラスコ(容量:2L、材料:ステンレス)に、50質量部のアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール(登録商標) 0」)の水溶液(濃度:25質量%)と500質量部の蒸留水とを入れた後、500質量部の複合トナーコアを加えた。丸底フラスコの温度を25℃に保ちながら、丸底フラスコの内容物を10分間にわたって回転速度100rpmで攪拌した。丸底フラスコに2質量部の塩酸水溶液(濃度:2N)を加えて、丸底フラスコの内容物のpHを4.5とした。
【0097】
丸底フラスコに80質量部の分散液Qを加えた後、丸底フラスコの内容物を15分間にわたって回転速度100rpmで攪拌した。丸底フラスコに水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1N)を加えて、丸底フラスコの内容物のpHを7.0とした。丸底フラスコの温度が55℃になるまで、0.2℃/分の昇温速度で丸底フラスコを加熱した。その後、丸底フラスコの温度を60℃まで上昇させた。丸底フラスコの温度を60℃に保った状態で、丸底フラスコの内容物を2時間にわたって回転速度100rpmで攪拌した。丸底フラスコの温度を60℃に保っている間に、分散液Qに分散している樹脂粒子を複合トナーコアの表面に付着させ、複合トナーコアの表面での膜化を進行させた。その後、丸底フラスコの加熱を停止した。そして、丸底フラスコの温度が25℃になるまで、10℃/分の冷却速度で丸底フラスコを冷却した。
【0098】
(1−4.洗浄工程)
ブフナー漏斗を用いて、丸底フラスコの内容物を吸引濾過した。得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再度分散させた。得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。このような固液分離処理を5回にわたって繰返し行った。
【0099】
(1−5.乾燥工程)
洗浄工程を経たウェットケーキ状のトナー母粒子を、35℃で48時間にわたって乾燥させた。このようにして、トナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子では、体積中位径(D
50)は5.53μmであり、平均円形度は0.959であった。
【0100】
(2.外添工程)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)に、1000質量部のトナー母粒子と、15質量部の外添剤粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、内容:表面処理により正帯電性が付与された乾式シリカ粒子、個数平均1次粒子径:約20nm)とを、入れた。FMミキサーのジャケットにおいて温水(30℃)を循環させながら、FMミキサーの内容物を回転速度2400rpmで10分間混合した。得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。このようにして、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーT−1)を得た。
【0101】
<トナーT−2の製造方法>
上記(1−2.第1粒子の埋没工程)では、FMミキサーに1000質量部のトナーコアと200質量部の第1粒子Bとを入れた。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−2を製造した。
【0102】
<トナーT−3の製造方法>
上記(1−2.第1粒子の埋没工程)では、FMミキサーに1000質量部のトナーコアと500質量部の第1粒子Cとを入れた。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−3を製造した。
【0103】
<トナーT−4の製造方法>
上記(1−2.第1粒子の埋没工程)における第1粒子Aの配合量を200質量部とした。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−4を製造した。
【0104】
<トナーT−5の製造方法>
上記(1−3.シェル層の形成工程)における分散液Qの配合量を120質量部とした。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−5を製造した。
【0105】
<トナーT−6の製造方法>
上記(1−2.第1粒子の埋没工程)では、FMミキサーに1000質量部のトナーコアと100質量部の第1粒子Dとを入れた。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−6を製造した。
【0106】
<トナーT−7の製造方法>
上記(1−2.第1粒子の埋没工程)では、FMミキサーに1000質量部のトナーコアと700質量部の第1粒子Eとを入れた。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−7を製造した。
【0107】
<トナーT−8の製造方法>
上記(1−2.第1粒子の埋没工程)における第1粒子Aの配合量を150質量部とした。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−8を製造した。
【0108】
<トナーT−9の製造方法>
上記(1−3.シェル層の形成工程)における分散液Qの配合量を40質量部とした。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−9を製造した。
【0109】
<トナーT−10の製造方法>
上記(1−3.シェル層の形成工程)と、上記(1−4.洗浄工程)と、上記(1−5.乾燥工程)とを行わなかった。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−10を製造した。
【0110】
<トナーT−11の製造方法>
上記(1−3.シェル層の形成工程)における分散液Qの配合量を140質量部とした。この点を除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−11を製造した。
【0111】
[トナーの物性値の測定方法]
以下に示す方法で、第1粒子の突出高さの個数平均値と、第1粒子の被覆率と、シェル層の厚さとを測定した。なお、これらの物性値を測定する際には、試料として、外添剤が除去されたトナー粒子(つまり、トナー母粒子)を使用した。
【0112】
<第1粒子の突出高さの個数平均値の測定方法>
まず、トナー母粒子(トナーT−1〜T−11の各々に含まれるトナー母粒子)の断面TEM写真を撮影した。次に、トナー母粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、解析した。詳しくは、画像解析ソフトウェアにおいて、計測ツールの手動計測のライン長計測を選択した。手動計測のライン長計測を選択した状態で、トナー母粒子の断面TEM写真において、第1粒子(第1粒子A〜Eの各々)を無作為に数個、選択した。そして、選択した第1粒子の各々において、トナー粒子の径方向における突出部分の長さを計測し、その個数平均値を算出した。このようにして求められた長さの個数平均値を「第1粒子の突出高さの個数平均値」とした。
【0113】
<第1粒子の被覆率の測定方法>
透過電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて、トナー母粒子のTEM写真(倍率100000倍)を撮影した。次に、得られたトナー母粒子のTEM写真を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、二値化処理した。このとき、トナーコアの表面領域において第1粒子(第1粒子A〜Eの各々)が設けられている領域と第1粒子が設けられていない領域とが明確になるように、トナー母粒子のTEM写真に対して二値化処理を行った。そして、第1粒子の投影面積を用いて、表面全域に占める第1粒子の割合を算出した。この操作を、10枚のTEM写真(トナー母粒子のTEM写真)に対して行って、第1粒子の占有割合の平均値を算出した。このようにして求められた平均値を「第1粒子の被覆率」とした。
【0114】
<シェル層の厚さの測定方法>
まず、透過電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて、トナー母粒子の断面TEM写真を撮影した。次に、得られたトナー母粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、解析した。詳しくは、トナー母粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引いた。その2本の直線の各々において、トナーコアとシェル層との界面(トナーコアの表面に相当)からシェル層の表面までの長さを測定した。このようにして測定された4箇所の長さの平均値を、1個のトナー母粒子が備えるシェル層の厚さとした。このようなシェル層の厚さの測定を複数のトナー母粒子に対して行い、複数のトナー母粒子(測定対象)が備えるシェル層の厚さの平均値を求めた。このようにして求められたシェル層の厚さの平均値を「シェル層の厚さ」とした。
【0115】
トナー母粒子の断面TEM写真においてトナーコアとシェル層との境界が不明瞭である場合には、トナー母粒子の断面TEM写真を、電子エネルギー損失分光法(EELS)検出器(ガタン社製「GIF TRIDIEM(登録商標)」)と画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)とを用いて、解析した。
【0116】
[トナーの評価方法]
以下に示す方法で、トナーの耐熱保存安定性と、トナーの帯電量と、トナーの飛散量と、かぶり濃度とを評価した。
【0117】
<トナーの耐熱保存安定性の評価方法>
まず、3gのトナー(トナーT−1〜T−11の各々)をポリエチレン製容器(容量:20mL)に入れた。ポリエチレン製容器を、恒温槽(56℃に設定)に入れ、3時間及び48時間静置した。ポリエチレン製容器を、恒温槽から取り出し、温度25℃且つ湿度65%RHの環境下で30分間静置した。トナーを、ポリエチレン製容器から取り出し、325メッシュ(目開き45μm)の篩(質量既知)の上に置いた。篩をパウダーテスター(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製「TYPE PT−E 84810」)に取り付けた。5メモリの条件で30秒間、トナーをふるった。篩上に残存したトナーの質量を測定し、下記式に基づいてトナーの残分(単位:%)を算出した。
トナーの残分(単位:%)=篩上に残存したトナーの質量(単位:g)×100/ポリエチレン製容器に入れたトナーの質量(3g)
【0118】
トナーの耐熱保存安定性の評価基準を以下に示す。また、トナーの残分の算出結果と、トナーの耐熱保存安定性の評価結果とを、表2に示す。
良好(○):トナーの残分が10%未満
普通(△):トナーの残分が10%以上20%未満
不良(×):トナーの残分が20%以上
【0119】
<トナーの帯電量とトナーの飛散量との評価方法>
(評価対象の調製方法)
まず、キャリアを作製した。詳しくは、1350質量部の水に、30.00質量部のポリアミドイミド樹脂(無水トリメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの共重合体)と120.0質量部のFEP(4フッ化エチレンと6フッ化プロピレンとの共重合体)とを溶解した。この水溶液に3.000質量部のシリカ粒子を分散させた。このようにして、キャリアコート液を得た。
【0120】
流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC−5」)に、1500.0質量部のキャリアコート液と10×10
3質量部のキャリアコア(パウダーテック株式会社製「EF−35B」、数平均1次粒子径35μm)とを入れた。流動層コーティング装置を用いて、キャリアコアにキャリアコート液を噴霧した。このようにして、未硬化の有機層(流動層)で被覆されたキャリアコアを得た。得られた粉体を、箱型棚式乾燥機に入れて250℃で1時間加熱した後、冷却して解砕した。このようにして、キャリアを得た。得られたキャリアでは、樹脂の被覆量は1.5質量%であった。
【0121】
ポリエチレン製容器(容量:500mL)に、300質量部のキャリアと30.0質量部のトナー(トナーT−1〜T−11の各々)とを入れた。混合機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「ターブラー(登録商標)ミキサーT2F」)を用いて、30分間にわたってポリエチレン製容器の内容物を混合した。このようにして、評価対象を得た。
【0122】
(評価機の準備方法)
カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)の現像部に、評価対象と、評価対象とは異なる色のトナーとを入れた。評価対象とは異なる色のトナーには、マゼンタトナーとイエロートナーとブラックトナーとが含まれていた。これらのトナーは、何れも、未使用状態であった。また、カラー複合機のトナーコンテナに、補給用トナー(未使用状態)を入れた。このようにして、評価機を準備した。
【0123】
(評価方法)
温度28℃且つ湿度65%RHの環境下で、評価機を用いて、印字率5%のサンプル画像を印刷用紙(A4サイズ)に10万枚連続で印刷する耐刷試験(以下、「5%耐刷」と記載する)を行った。
【0124】
5%耐刷の後に、評価機の現像部からトナーを取り出した。そして、次に示す方法で、トナーの帯電量(5%耐刷後の帯電量)を測定した。詳しくは、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−1」)の測定セルに0.10gの評価対象(キャリア及びトナー)を入れ、評価対象のうちトナーのみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、下記式に基づいて、トナーの帯電量(単位:μC/g)を算出した。
トナーの帯電量(単位:μC/g)=吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)
【0125】
5%耐刷後の帯電量の評価基準を以下に示す。また、5%耐刷後の帯電量の算出結果及び評価結果を表2に示す。
良好(○):5%耐刷後の帯電量が20μC/g以上40μC/g未満
不良(×):5%耐刷後の帯電量が20μC/g未満又は40μC/g以上
【0126】
また、5%耐刷の後に、評価機の現像部のトナー受け部に堆積したトナーの質量(以下、「トナーの飛散量」と記載する)を測定した。トナーの飛散量の評価基準を以下に示す。また、トナーの飛散量の測定結果及び評価結果を表2に示す。
良好(○):トナーの飛散量が0.5g未満
普通(△):トナーの飛散量が0.5g以上1.0g未満
不良(×):トナーの飛散量が1.0g以上
【0127】
<かぶり濃度の評価方法>
上記(評価機の準備方法)で示す方法で準備した評価機を用いて、かぶり濃度を評価した。詳しくは、まず、温度28℃且つ湿度65%RHの環境下で、評価機を用いて、印字率2%の文字パターンを印刷用紙(A4サイズ)に5000枚連続で印刷した。その後、印字率100%のパッチパターンを印刷用紙(A4サイズ)に1000枚連続で印刷した。
【0128】
反射濃度計(X−Rite社製「RD914」)を用いて、パッチパターンが印刷された用紙の空白部(非印字領域)の反射濃度を測定した。反射濃度の最大値(1000枚の用紙の空白部の反射濃度のうち、最も高いかぶり濃度)をかぶり濃度(FD)とした。かぶり濃度(FD)の評価基準を以下に示す。また、かぶり濃度(FD)の測定結果及び評価結果を表2に示す。
良好(○):かぶり濃度(FD)が0.004以下
普通(△):かぶり濃度(FD)が0.004超0.01未満
不良(×):かぶり濃度(FD)が0.01以上
【0129】
【表2】
【0130】
表2において、「帯電量」には、5%耐刷後の帯電量の算出結果(単位:μC/g)を記し、「帯電量」の括弧内には、5%耐刷後の帯電量の評価結果を記す。「飛散量」には、トナーの飛散量の測定結果(単位:g)を記し、「飛散量」の括弧内には、トナーの飛散量の評価結果を記す。「FD」には、かぶり濃度(FD)の測定結果を記し、「FD」の括弧内には、かぶり濃度(FD)の評価結果を記す。
【0131】
トナーT−1〜T−5(実施例1〜5に係るトナー)は、各々、帯電性を有し、複数のトナー粒子を含んでいた。トナー粒子は、各々、トナー母粒子を備えていた。トナー母粒子は、各々、トナーコアと、シリカを含有する複数の第1粒子と、シェル層とを有していた。トナーコアは、各々、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性ポリエステル樹脂とを含有していた。第1粒子は、各々、トナーコアの表面に埋め込まれている埋没部分と、トナーコアの表面よりもトナー粒子の径方向外側に突出する突出部分とを含んでいた。第1粒子の被覆率が、50%以上であった。第1粒子の個数平均1次粒子径R
fが、200nm以上500nm以下であった。シェル層は、トナーコアの露出部分と、第1粒子の突出部分の表面とを被覆していた。シェル層は、正帯電性を有する樹脂を含有していた。シェル層の厚さTが、20nm以上50nm以下であった。
【0132】
表2に示されるように、トナーT−1〜T−5は、各々、耐熱保存安定性に優れた。また、トナーT−1〜T−5では、各々、トナーの帯電量の低下を防止でき、逆帯電トナーの飛散を防止でき、かぶりの発生を防止できた。
【0133】
トナーT−6(比較例1に係るトナー)では、トナーT−1〜T−5に比べ、使用した第1粒子(第1粒子D)の個数平均1次粒子径が小さかった。そのため、第1粒子によるスペーサ効果を十分に得ることができなかった。よって、トナーの耐熱保存安定性が悪化した。
【0134】
トナーT−7(比較例2に係るトナー)では、トナーT−1〜T−5に比べ、使用した第1粒子(第1粒子E)の個数平均1次粒子径が大きかった。そのため、画像形成中(例えば5%耐刷中)に、トナーコアの表面からの第1粒子の脱離を招いた。これにより、トナーの帯電量が低下した。よって、トナー(帯電量が低下したトナー)の飛散量が増加し、その結果、形成した画像にかぶりが発生した。
【0135】
トナーT−8(比較例3に係るトナー)では、トナーT−1〜T−5に比べ、第1粒子の被覆率が低かった。そのため、トナーコアの露出部分が大きくなり、トナーの耐熱保存安定性が悪化した。また、第1粒子の被覆率が低いために、シェル層よりもトナー粒子の径方向内側に存在する第1粒子の量を確保することが難しかった。そのため、画像形成中(例えば5%耐刷中)、シェル層において発生した正電荷を第1粒子で保持することが難しかった。これにより、トナーの帯電量が低下した。よって、トナー(帯電量が低下したトナー)の飛散量が増加し、その結果、形成した画像にかぶりが発生した。
【0136】
トナーT−9(比較例4に係るトナー)では、トナーT−1〜T−5に比べ、シェル層の厚さが小さかった。また、トナーT−10(比較例5に係るトナー)では、シェル層が形成されていなかった。そのため、トナーT−9及びトナーT−10では、各々、第1粒子を被覆するシェル材料(シェル層を構成する材料)の量が少なかった。これにより、画像形成中(例えば5%耐刷中)に、トナーコアの表面からの第1粒子の脱離を招いた。よって、トナーの帯電量が低下した。したがって、トナー(帯電量が低下したトナー)の飛散量が増加し、その結果、形成した画像にかぶりが発生した。
【0137】
トナーT−11(比較例6に係るトナー)では、各々、トナーT−1〜T−5に比べ、シェル層の厚さが大きかった。そのため、第1粒子を被覆するシェル材料の量が多かった。これにより、画像形成中(例えば5%耐刷中)に、トナーコアの表面への第1粒子の埋没を招いた。よって、トナーの帯電量が低下した。したがって、トナー(帯電量が低下したトナー)の飛散量が増加し、その結果、形成した画像にかぶりが発生した。
【0138】
なお、本発明者は、トナーT−1〜T−5が低温定着性に優れることを確認している。また、本発明者は、負帯電性を有する樹脂(例えばフェノール樹脂)をシェル樹脂として使用した場合に初期の帯電量が著しく低下することを確認している。