(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動金型に連結され一体的に移動し、型締め時に、前記スライド型転写面が受ける成形時の圧力に抗して前記スライド型を支持するロッキングブロックを有しており、前記ロッキングブロックが前記第1部材であり、前記固定金型及び/又は前記可動金型が前記第2部材である請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形装置。
前記スライド型は、成形後における前記成形品の取り出し時に、前記第1光学面又は前記第2光学面が前記スライド型と干渉する範囲を超えて、スライド可能となっている請求項5又は請求項5を引用する請求項6に記載の成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、顕微鏡や計測器等に用いることができる特殊プリズムとしての成形品を成形する成形装置の断面図であり、左半分は型開き時の断面であり、右半分は型締め時の断面である。
図2は、
図1の成形装置により成形される特殊プリズムとしての成形品の斜視図である。
【0012】
図2に示すように、樹脂製の成形品MPは、短手方向断面が台形状の棒状体であって、4つの平面鏡面である光学面OP1〜OP4を有している。このような成形品MPから形成される特殊プリズムは、例えば特開2000−98237号公報に開示された顕微鏡の他、計測器等で用いることができる。
【0013】
次に、成形品MPを成形する成形装置について説明する。
図1において、不図示の定盤上に固定されたベースBS上に保持部HLDが固定されている。保持部HLDはその上面中央の凹部内に固定型FDを固定保持している。又、上下方向に沿って固定型(固定金型ともいう)FDに対向するように、可動型(可動金型ともいう)MDが配置されている。固定型FDの上面及び可動型MDの下面が転写面となっている。可動型MDは、支持ブロックSTBの下面中央の凹部に保持固定されており、両者は不図示の駆動源により上下方向に一体で移動可能に配置されている。更に、固定型FDに対し、2つのスライド型SDが、水平方向に移動可能に配置されている。ここで、
図1で上下方向(型開閉方向)をZ方向とし、水平方向(スライド方向)をX方向とする。
【0014】
2つのスライド型SDは、主コア(ここではコア)SDaと、主コアSDaを保持するホルダSDcとを有する。主コアSDaは、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXに接近するように傾いた平面(スライド型転写面)SDfを有する。
【0015】
ホルダSDcは、後述するアンギュラピンAPを受け入れ可能なように傾いた円筒孔SDdと、後述するロッキングブロックLBのテーパ面LBbに対応して傾いたテーパ面SDuとを有する。尚、図示していないが、接近してきたロッキングブロックLBとホルダSDcとが規定の関係になるようにガイドするガイド部を設けるようにしても良い。ホルダSDcは、ベースBSの上面にガイドされて、主コアSDaと共にX方向に移動可能となっている。
【0016】
可動型MDを挟んで支持ブロックSTBの両側には、2つの凹部STBaが形成され、かかる凹部STBaに嵌合するようにして、ロッキングブロックLBが固定されている。ロッキングブロックLBは、支持ブロックSTBの一部であっても良い。ロッキングブロックLBは、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXから離間するように傾いた袋孔LBcと、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXから離間するように傾いたテーパ面LBbとを有する。袋孔LBc内には円筒状のアンギュラピンAPの上端が挿通されて、その下端側をロッキングブロックLBから露出させるようにして固定されている。露出したアンギュラピンAPは、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXから離間するように,それぞれ同じ角度で傾いている。
【0017】
本実施形態では、型締め時のスライド型SDを起点としてX方向に配置された第1部材として、スライド型SDの主コアSDaとホルダSDc、及びロッキングブロックLBを超鋼材(例えばヤング率400GPa以上)で形成している。一方、型締め時のスライド型SDを起点としてZ方向に配置された第2部材として、固定型FD、可動型MDは構造用鋼(例えばヤング率250GPa以下)で形成している。但し、主コアSDaと、ホルダSDcと、ロッキングブロックLBの少なくとも1つを構造用鋼で形成しても良い。尚、アンギュラピンAPは、射出圧力を直接受けないので構造用鋼で良い。ここで、「剛性が高い」とは、同じ力を付与された場合に変形量がより小さくなることをいい、例えば「ヤング率が高い」ことが相当する。
【0018】
更に本実施形態では、スライド型SDの平面SDfをX方向に投影した際の投影面積は、固定型FDの転写面又は可動型MDの転写面をZ方向に投影した際の投影面積に対し、20%以上である。又、スライド型SDの平面SDfをX方向に投影した際の投影面積が1000mm
2以上と大きくなっている。このように平面SDfの投影面積が増大すると、成形時にパスカルの原理に従いキャビティ内の樹脂からスライド型SDが受ける圧力が大きくなり、それに応じてスライド方向に作用する力が増大し、これによりスライド型SDの微小移動や変形が生じて,高精度な成形を行えない恐れがある。かかる不具合を回避するには、成形品のサイズに対して相当に大きな金型を用いたり、大容量の油圧シリンダ機構でスライド金型を移動させるなどの方策が考えられるが、いずれも大掛かりであるから,成形装置の大型化やコストの増大を招く。そこで本実施形態にかかる成形装置は、スライド型SDの主コアSDa及びホルダSDcと、ロッキングブロックLBのみを、ヤング率が高い超鋼材で形成することで、成形時におけるスライド型SDの微小移動や変形を抑制して、小型且つ安価でありながら高精度な成形品を成形できるようにしたのである。尚、スライド型SDの平面SDfをX方向に投影した際の投影面積が、固定型FDの転写面又は可動型MDの転写面をZ方向に投影した際の投影面積に対し、30%以上となる場合はより好ましく、又、スライド型SDの平面SDfをX方向に投影した際の投影面積が1500mm
2以上になる場合はより好ましい。尚、特許文献1において、係止部を成形するスライド金型の投影面積について発明の詳細な説明に具体的な記載はないが、特許文献1の
図2に相当する
図11に示すように、係止部STPの転写面を型開き方向(Z方向)と直交する方向(X方向)に投影した際の投影面積が、固定型FDの転写面又は可動型MDの転写面をZ方向に投影した際の投影面積に対し20%以下であり、及び、その投影面積は1000mm
2より小さいと推認される。従って、このような構成では、係止部STPを転写するスライド金型を超鋼材とする必要はないと考えられる。
【0019】
次に、本実施形態の成形装置を用いた成形方法について説明する。
図1において、固定型FDに対して可動型MDを接近させると、駆動部材であるアンギュラピンAPの先端がスライド型SDのホルダSDcに設けられた円筒孔SDdに係合し、更に可動型MDがZ方向に沿って接近することで、スライド型SDが押されるように連動しX方向に沿って固定型FDに接近し、型締め状態となる。このとき、ロッキングブロックLBのテーパ面LBbが、ホルダSDcのテーパ面SDuに当接し、スライド型SDの押さえとなる。このようにアンギュラピンAPを用いることで、スライド型SDを簡素な機構で駆動できるので、大型の油圧装置等を用いる必要がなく、成形装置の簡素化、小型化を図ることが出来る。
【0020】
ここで、
図1の紙面垂直方向にある不図示のゲート部から溶融した樹脂を供給すると、固定型FD、可動型MD,スライド型SDにより形成される密閉されたキャビティ内へと樹脂が供給される。この際の射出圧力により固定型FDと可動型MDが離間する方向に大きな力を受けるが,両者が相対移動しないように70〜100トン程度の荷重で可動型MDを抑えている。また、可動型MDのZ方向における移動が阻止されれば、各スライド型SDのX方向の移動も阻止されることとなるが、各部の剛性が低いと、局所的に撓みなどが生じてスライド型SDの微小移動を招く恐れがある。一方、全ての部材を高剛性の素材から形成したり或いは肉厚を厚くしたりすると、スライド型SDの移動を有効に抑制できるが、高剛性の素材を用いると成形金型の加工が困難になるので加工時間が増大するし、肉厚を厚くすると金型大型化によるコストアップや成形装置の大型化を招く。そこで本実施形態では、主コアSDaと、ホルダSDcと、ロッキングブロックLBを超鋼材で形成することで、X方向における各部の変形を抑制して、スライド型SDの移動を阻止し、成形装置の小型化を確保しつつ高精度な成形品を形成できるようにしている。同時に、固定型FD、可動型MD,支持ブロックSTBなどは構造用鋼で形成することで、成形装置の大型化防止を図ることができる。
【0021】
このとき、可動型MDの下面により、
図2に示す成形品MPの上側の光学面OP1が成形され、固定型FDの上面により、成形品MPの下側の光学面OP2が成形され、2つのスライド型SDの平面SDfにより、成形品MPの両側の光学面OP3,OP4が成形される。
【0022】
更に、樹脂が固化した後、固定型FDに対して可動型MDを離間させると、ロッキングブロックLBのテーパ面LBbが、ホルダSDcのテーパ面SDuから離間して、スライド型SDが外方へとスライド可能となり、更にアンギュラピンAPがスライド型SDのホルダSDcを外方に押し出すので、スライド型SDが固定型FDより離間するX方向へと移動する。アンギュラピンAPが円筒孔SDdから抜けた時点でスライド型SDが停止する。かかる状態で、平面SDfが成形品MPから十分な距離だけ退避するので、成形品MPを容易に取り出すことができる。
【0023】
取り出した成形品MPにおいて、必要に応じて光学機能膜を付与する等により,
図2に示すような特殊プリズムを形成することができる。
【0024】
図3は、参考例として示す成形装置の断面図である。
図3に示す成形装置では、スライド型を有さず、固定型FDと、固定型FDに対して上下方向に移動可能な可動型MDのみを有している。固定型FDは、左右方向に対向して一対の斜面FD1,FD2を有している。
図3に示す成形装置で、
図2に示す成形品MPを成形した場合、成形後における斜面FD1,FD2の抜き抵抗が大きくなり、離型時に成形品が損傷して収率が悪化する恐れがある。又、固定型FDを機械加工する際に、斜面FD1,FD2の鏡面形成が困難であり、型の製造コストが大幅に増大することとなる。従って、
図3に示す成形装置は簡素な構造を有するものの、総合的に見れば
図1に示す成形装置の方が、低コストでありながらも高精度な成形品を成形できるといえる。
【0025】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態にかかるミラーユニットを用いたレーザレーダを車両に搭載した状態を示す概略図である。但し、このタイプのレーザレーダは、車載用途に限られず、ロボット、飛行体や船舶などの移動体に搭載したり、道路や鉄道などの交通インフラにおいて固定物に設置したりできる。本実施形態のレーザレーダLRは、車両1のフロントウィンドウ1aの背後、もしくはフロントグリル1bの背後に設けられている。
【0026】
図5は、ミラーユニットを用いたレーザレーダLRの概略構成図である。
図6は,レーザレーダLRにおけるミラーユニットMUの断面図であるが、投光系と受光系は省略している。
【0027】
レーザレーダLRは、例えば、レーザ光束を出射するパルス式の半導体レーザLDと、半導体レーザLDからの発散光を平行光に変換するコリメートレンズCLと、コリメートレンズCLで平行とされたレーザ光を、回転するミラー面により対象物OBJ側(
図4)に向かって走査投光すると共に、走査投光された対象物OBJからの反射光を反射させるミラーユニットMUと、ミラーユニットMUで反射された対象物OBJからの反射光を集光するレンズLSと、レンズLSにより集光された光を受光するフォトダイオードPDとを有する。
【0028】
ミラーユニットMUは、2つの略多角錐台を逆向きに接合して一体化した形状を有し、すなわち対になって向き合う方向に傾いたミラー面M1、M2を4対有している。第1光学面と第2光学面とを構成するミラー面M1、M2は、詳細は後述するが、ミラーユニットMUの形状をした樹脂の一体成形品から形成されている。
【0029】
ミラーユニットMUは、全体的に中空であって、中央に水平方向に延在する板状のフランジ部FLを有している。フランジ部FLの中央には、円形開口CHが形成されている。フランジ部FLは、それぞれ板状の第1保持部PT1と第2保持部PT2とで挟持されている。フランジ部FLの下方に配置された第1保持部PT1は、その外周がミラーユニットMUの内周にほぼ全周で当接して、一体的に回転するようになっている。第1保持部PT1の下面中央には非円形断面の開口PT1aが形成されており、ここにモータMTの回転軸SHの先端が嵌合連結され,一体的に回転するようになっている。開口PT1aと回転軸SHの嵌合は圧入で行っても良い。回転駆動源としてのモータMTは、レーザレーダLRを保持するフレームFRに固定されている。よって、ミラーユニットMUはモータMTの駆動によって一定速度で回転可能となっている。
【0030】
又、第1保持部PT1の上面中央には、回転軸SHと同軸になるようにして円筒軸PT1bが植設されており、フランジ部FLの円形開口CHを通して上方へと延在し,更に円形板状の第2保持部PT2の中央に形成された円形開口PT2aを貫通している。円筒軸PT1bの先端は、圧入等によりキャップCPに嵌合している。更に、キャップCPと第2保持部PT2との間に配置されたスプリングSPGが、キャップCPに対して第2保持部PT2を離間する方向に付勢しており、その反力が円筒軸PT1bを介して伝達されることで、第1保持部PT1がフランジ部FLに密着するようになっている。以上のように構成されているので、不図示の電源よりモータMTに給電が行われた時、回転軸SHが回転し、第1保持部PT1を介してミラーユニットMUが回転駆動されるようになっている。
【0031】
図6において、ミラーユニットMUの下端外周に、凸状部PJが形成されている。凸状部PJの端面には反射部が形成されている。一方、フレームFRには,例えば検出光を投射して,その反射量を測定することで、凸状部PJの通過を検出できるセンサSSが設置されている。従って、センサSSの出力を読み取ることで、ミラーユニットMUの回転速度を求めることができ、これにより不図示の制御装置を用いてモータMTの出力をフィードバック制御できる。尚、ミラーユニットMUの回転速度の検出態様は以上に限られない。例えば凸状部の代わりに凹状部を設けても良いが、これらはミラーユニットの成形と同時に成形されると好ましい。又、凸状部PJはミラーユニットMUの上端側に設けても良い。
【0032】
半導体レーザLDと、コリメートレンズCLとで投光系LPSを構成し、レンズLSと、フォトダイオードPDとで受光系RPSを構成する。投光系LPS、受光系RPSの光軸は、ミラーユニットMUの回転軸線ROに対して直交している。
【0033】
次に、レーザレーダLRの対象物検出動作について説明する。
図5、6において、半導体レーザLDからパルス状に間欠的に出射された発散光は、コリメートレンズCLで平行光束に変換され、回転するミラーユニットMUの第1ミラー面M1に入射し、ここで反射され、更に第2ミラー面M2で反射した後、外部の対象物OBJ側に例えば縦長の矩形断面を持つレーザスポット光として走査投光される。
【0034】
図7は、ミラーユニットMUの回転に応じて、出射するレーザスポット光SB(ハッチングで示す)で、レーザレーダLRの検出範囲RG内を走査する状態を示す図である。ミラーユニットMUの第1ミラー面M1と第2ミラー面M2の組み合わせにおいて、後述するように、それぞれ交差角が異なっている。レーザ光は、回転する第1ミラー面M1と第2ミラー面M2にて、順次反射される。まず1番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2にて反射したレーザ光は、ミラーユニットMUの回転に応じて、検出範囲RGの一番上の領域Ln1を水平方向に左から右へと走査される。次に、2番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2で反射したレーザ光は、ミラーユニットMUの回転に応じて、検出範囲RGの上から二番目の領域Ln2を水平方向に左から右へと走査される。次に、3番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2で反射したレーザ光は、ミラーユニットMUの回転に応じて、検出範囲RGの上から三番目の領域Ln3を水平方向に左から右へと走査される。次に、4番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面で反射したレーザ光は、ミラーユニットMUの回転に応じて、検出範囲RGの最も下の領域Ln4を水平方向に左から右へと走査される。これにより検出範囲RG全体の1回の走査が完了する。そして、ミラーユニットMUが1回転した後、1番対の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2が戻ってくれば、再び検出範囲RGの一番上の領域Ln1から最も下の領域Ln4までの走査を繰り返す。
【0035】
図5、6において、走査投光された光束のうち対象物OBJに当たって反射したレーザ光の一部は、再びミラーユニットMUの第2ミラー面M2に入射し、ここで反射され、更に第1ミラー面M1で反射されて、レンズLSにより集光され、それぞれフォトダイオードPDの受光面で検知されることとなる。これにより検出範囲RG内の全領域で、対象物OBJの検出を行える。
【0036】
次に、ミラーユニットの製造工程について説明する。
図8は、ミラーユニットを形成する為の成形品を成形する本実施形態にかかる成形装置の断面図であり、
図9は、成形装置の主要部を示す断面図であり、
図10は、スライド型周辺を拡大して示す斜視図であるが、スライド型の中心を通る断面(XZ面)で切断している。
【0037】
図8において、不図示の定盤上に固定されたベースBS上に、固定型FDが取り付けられており、また後述するアンギュラピンAPに対応して開口BSaが形成されている。又、固定型(固定金型ともいう)FDに対向して、可動型(可動金型ともいう)MDが不図示の駆動源により上下方向に移動可能に配置されている。更に、固定型FDに対し、4つ(
図8、9では2つのみ図示するが、残りの2つは紙面垂直方向に同様に対向配置されている)のスライド型SDが、水平方向に移動可能に配置されている。ここで、
図8,9で上下方向(型開閉方向)をZ方向とし、水平方向(スライド方向)をX方向又はY方向(
図8,9ではX方向のみ図示)とする。
【0038】
図9において、固定型FDは、略四角錐台状の内周転写面FDaと、内周転写面FDaの頂部に設けた平面状のフランジ転写部FDbと、フランジ転写部FDbの中央に形成された円筒状転写部FDcとを有する。又、固定型FDの内周転写面FDaの周囲に、スライド型SDを案内するガイド面FDdを形成している。尚、図示していないが、固定型FDには、ミラーユニットMUの凸状部PJを形成する為の転写部を有している。
【0039】
一方、可動型MDは、略四角錐台状の内周転写面MDaと、内周転写面MDaの頂部に設けた平面状のフランジ転写面MDbと、可動型MDの上端からフランジ転写面MDbに連通する4つのピンゲート部MDcとを有する。各ピンゲート部MDcは、フランジ転写面MDbの中心から等距離で周方向に等間隔に配置されており、すなわち、隣接するスライド型SDの境界部の中間位置に対応して配置されている。かかる配置により、各ピンゲート部MDcから供給された樹脂が、スライド型SDの後述する第1平面SDeと第2平面SDfとの間からキャビティ内に展開したときに、樹脂同士の先端がぶつかり合う、いわゆるウェルドラインがスライド型SDの境界に位置するようになり、これによりミラー面に歪みなどの影響が生じないようにしている。
【0040】
図8に示すように、可動型MDは支持ブロックSTBに保持されており、また支持ブロックSTBは板部PTに固定されており,これらはZ方向に一体的に移動するようになっている。板部PTの下面には、支持ブロックSTBのピンゲート部MDcが露出した上面により遮蔽される凹部CCが形成されており、更に支持部SPを貫通し凹部CCに連通するようにしてスプルー部SLが形成されている、スプルー部SLは、不図示の樹脂の供給源に接続されている。
【0041】
支持ブロックSTBの可動型MDの周囲には、4つの凹部STBaが形成され、かかる凹部STBaに嵌合するようにして、ロッキングブロックLBが固定されている。
図9に示すように、ロッキングブロックLBは、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXから離間するように傾いた貫通孔LBaと、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXから離間するように傾いたテーパ面LBbとを有する。貫通孔LBa内の上方からアンギュラピンAPが挿通されて、その下端側をロッキングブロックLBから露出させている。露出したアンギュラピンAPは、固定型FD側に向かうにつれて可動型MDの軸線AXから離間するように,それぞれ同じ角度で傾いている。
【0042】
4つのスライド型SDは、断面図である
図10において、それぞれ主コアSDaと、副コアSDbと、主コアSDa及び副コアSDbを固定保持するホルダSDcとを有する。ホルダSDcは、アンギュラピンAPを受け入れ可能なように傾いた円筒孔SDdと、ロッキングブロックLBのテーパ面LBbに対応して傾いたテーパ面SDuと、テーパ面SDuに対向する縁に沿って突出したガイド部SDvとを有する。ガイド部SDvは、接近してきたロッキングブロックLBをガイドする機能を有する。ホルダSDcは、固定型FDのガイド面FDd(
図9)に設けられたガイドに係合してX方向又はY方向に移動可能となっている。
【0043】
主コアSDaは、可動型MDの軸線AX(
図9)に対して傾いた第1平面(第1スライド型転写面)SDeと、第1平面SDeとは逆側に傾いた第2平面(第2スライド型転写面)SDfと、第1平面SDeと第2平面SDfとの間に形成された中間面SDgと、第1平面SDeの両側に隣接して形成された第1つなぎ面転写面SDh(
図10では一方のみ図示)と、第2平面SDfの両側に隣接して形成された第2つなぎ面転写面SDi(
図10では一方のみ図示)とを有する。第1平面SDeと第2平面SDfとが同一の主コアSDaに形成されているので、両者の傾き角を精度良く確保できる。尚、第1つなぎ面転写面SDhと第2つなぎ面転写面SDiは、凹状の曲面であると好ましい。
【0044】
本実施形態では、
図8(b)に示す型締め状態において、各スライド型SDを起点として、X方向及びY方向に沿って配置された第1部材として、主コアSDaと、ホルダSDcと、ロッキングブロックLBを超鋼材(例えばヤング率400GPa以上)で形成している。一方、Z方向に沿って配置された第2部材として、固定型FD、可動型MD,支持ブロックSTBなどは,安価に入手しやすい構造用鋼(例えばヤング率250GPa以下)で形成することで、コストを低減させている。第1部材の剛性は第2部材より高くなっている。但し、主コアSDaと、ホルダSDcと、ロッキングブロックLBの少なくとも1つを超鋼材で形成すれば足りる。尚、アンギュラピンAPは、射出圧力を直接受けないので構造用鋼で良い。
【0045】
本実施形態では、4つの主コアSDaの形状が互いに異なっている。より具体的には、第1平面SDeは、軸線AXに対してそれぞれ45度で傾いているが、第1平面SDeに対する第2平面SDfの傾き角(交差角)は、例えば88度、90度、92度、94度と異なっている。尚、傾き角の選択は任意であるが、対象物OBJを3次元的に計測するためには互いに0.5度以上異なっていると好ましい。又、第1平面SDeと第2平面SDfの面積は,例えば100mm
2以上と大きくなっており、両面積は等しいと好ましいが、±20%以内で異なっていても良い。
【0046】
一方、副コアSDbは、第1平面SDeに隣接する球面状の第1外周面SDj(
図10では一方のみ図示)と、第2平面SDfに隣接する球面状の第2外周面SDk(
図10では一方のみ図示)とを有する。本実施形態においては、
図9に示すように、傾いた第1平面SDeの上端P1と下端P2との間におけるX方向に沿った距離Lを超えて、スライド型SDがX方向にスライド可能となっている。又、Y方向に配置されたスライド型SDも同様である。つまり、「成形後における成形品の取り出し時に、第1光学面又は第2光学面がスライド型と干渉する範囲」とは、例えば「成形品の第1光学面又は第2光学面における型開閉方向における一端と、その反対側の他端との間におけるスライド方向に沿った距離L」をいうものとする。
【0047】
スライド型SDが最も内側に移動した状態で、周方向に隣接する第1つなぎ面転写面SDh同士が隙間なく接触し、且つ周方向に隣接する第1外周面SDj同士が隙間なく接触し、また同様に、第2つなぎ面転写面SDi同士が隙間なく接触し、且つ第2外周面SDk同士が隙間なく接触する。
【0048】
次に、本実施形態の成形装置を用いた成形方法について説明する。
図8(b)に示す状態から、固定型FDに対して可動型MDを接近させると、アンギュラピンAPの先端がスライド型SDのホルダSDcに設けられた円筒孔SDdに係合し、更に可動型MDがZ方向に沿って接近することで、スライド型SDが押されるように連動しX方向及びY方向に沿って固定型FDに接近し、
図8(a)に示す型締めした状態となる。このとき、ロッキングブロックLBのテーパ面LBbが、ホルダSDcのテーパ面SDuに当接し、スライド型SDの押さえとなる。又、スライド型SDの円筒孔SDdを貫通したアンギュラピンAPの先端は、ベースBSの開口BSa内に進入する。これによりスライド型SDのスライド量を確保できる。このようにアンギュラピンAPを用いることで、スライド型SDを簡素な機構で駆動できるので、大型の油圧装置等を用いる必要がなく、成形装置の簡素化、小型化を図ることが出来る。
【0049】
ここで、外部の樹脂の供給源からスプルー部SLを介して溶融した樹脂を供給すると、凹部CCから4本のピンゲート部MDc内に均等に樹脂が供給されて、固定型FD、可動型MD,スライド型SDにより形成される密閉されたキャビティ内へと樹脂が供給される。この際の射出圧力により固定型FDと可動型MDが離間する方向に大きな力を受けるが,両者が相対移動しないように70〜100トン程度の荷重で可動型MDを抑えている。また、可動型MDのZ方向における移動が阻止されれば、各スライド型SDのX方向及びY方向の移動も阻止されることとなるが、各部の剛性が低いと、局所的に撓みなどが生じてスライド型SDの微小移動を招く恐れがある。一方、全ての部材を高剛性の素材から形成したり或いは肉厚を厚くしたりすると、スライド型SDの移動を有効に抑制できるが、成形装置の高コストや大型化を招く。そこで本実施形態では、主コアSDaと、ホルダSDcと、ロッキングブロックLBを超鋼材で形成することで、X方向及びY方向における各部の変形を抑制して、スライド型SDの移動を阻止し、成形装置の小型化を確保しつつ高精度な成形品を形成できるようにしている。同時に、Z方向に沿って配置された固定型FD、可動型MD,支持ブロックSTBなどは構造用鋼で形成することで、成形装置の低コスト化を図ることができる。
【0050】
このとき、固定型FDの内周転写面FDaにより、成形品MP(ミラーユニットMUと同形状)の一方側の内周面が形成され、フランジ転写面FDbによりフランジ部FLの下面が形成され、円筒状転写部FDcによりフランジ部FLの円形開口CHが形成され、また不図示の転写部で凸状部PJ(
図6参照)が形成される。又、可動型MDの内周転写面MDaにより、成形品MPの他方側の内周面が形成され、フランジ転写面MDbによりフランジ部FLの上面が形成される。ここで成形品MPの重心G(
図6参照)が、ミラーユニットMUの回転軸線ROに一致すると好ましく、より具体的には重心Gを円形開口CH内、好ましくは円形開口CHの中心とすることで、ミラーユニットMUの回転時における振れを抑制できる。尚、固定型FD,可動型MD,及び各スライド型SDの型締め時の位置を調整することで、成形品MPの重心調整を行うことができる。
【0051】
更に、スライド型SDの主コアSDaの第1平面SDeにより第1光学面が形成され、第2平面SDfにより第2光学面が形成され、中間面SDgにより繋ぎ面MUe(
図5参照)が形成され、第1つなぎ面転写面SDhにより曲面状或いは面取り形状の第1つなぎ面MUa(
図5参照)が形成され、第2つなぎ面転写面SDiにより曲面状或いは面取り形状の第2つなぎ面MUb(
図5参照)が形成され、第1外周面SDjにより球面状の第1外周面MUcが形成され、第2外周面SDkにより球面状の第2外周面MUdが形成される。第1外周面MUc、第2外周面MUdにより、ミラーユニットMUの小型化と回転抵抗の減少を図れる。
【0052】
尚、周方向に隣接する第1つなぎ面MUa同士、及び周方向に隣接する第2つなぎ面MUb同士は、その間にスライド型SDのパーティングラインPTL(
図5参照)を形成しているが、両者は殆ど段差がなくつながっており、特に第2光学面の傾き角が異なっていた場合でも、その影響を抑えることができる。又、周方向に隣接する第1外周面MUc同士、周方向に隣接する第2外周面MUd同士も殆ど段差がなくつながっている。更に、
図6に示すように、フランジ部FLの外周となる繋ぎ面MUeは、断面円弧状であると好ましい。これにより、対になった第1光学面と第2光学面とが滑らかにつながるようになる。
【0053】
更に、樹脂が固化した後、固定型FDに対して可動型MDを離間させると、ロッキングブロックLBのテーパ面LBbが、ホルダSDcのテーパ面SDuから離間して、スライド型SDが外方へとスライド可能となり、更にアンギュラピンAPが開口BSaから退避しつつスライド型SDのホルダSDcを外方に押し出すので、スライド型SDが固定型FDより離間するX方向及びY方向へと移動する。アンギュラピンAPが円筒孔SDdから抜けた時点でスライド型SDが停止するが、この状態で成形品MPのアンダーカット部に相当する距離L(
図9)を超えており、第1光学面と第2光学面がスライド型SDに干渉することなく、成形品MPを取り出せる距離だけスライド型SDは移動している。従って、
図8(b)に示す状態まで可動型MDを離間させることで、成形品MPを取り出すことができる。
【0054】
取り出した成形品MPにおいて、成形後処理としての真空蒸着等によって、第1光学面と第2光学面に金属膜(Al,Ag等)などを成膜することで、反射率90%以上の第1ミラー面M1と第2ミラー面M2とを形成することができ、これにより
図5,6に示すミラーユニットMUを形成することができる。第1ミラー面M1と第2ミラー面M2の相対傾き角度は、45度以上、135度以下であると好ましい。その後、第1保持部PT1及び第2保持部PT2等を介して、モータMTの回転軸SHを連結するようにして、ミラーユニットMUをレーザレーダLRに組み付けることができる。このとき、フランジ部FLの上面又は下面を、組み付けの際の基準面とすることができる。
【0055】
以下、本発明者らが行った実験結果を説明する。本発明の効果を確認する為に、本来的には型締め時に規定の射出圧力を印加したときに、スライド型SD同士の隙間がどのように変化したかを評価するのが好ましいが、かかる隙間を直接測定することは難しい。そこで、スライド型同士の隙間を、かかる隙間から漏れ出た樹脂が固化してなるバリの長さで評価することとした。隙間が比較的小さい場合、樹脂や射出条件が同じであるとすると、バリの長さと隙間の間隔とは大凡リニアな関係にあるとされる。ここでは,
図8に示す成形装置を用いて、以下の比較例及び実施例1,2の条件にて、型締め時に可動型MDを75トンで押圧し、射出圧力100MPaで熱可塑性樹脂の射出成形を行って、バリの長さを評価した。
比較例:支持ブロック、ベース、固定型、可動型、スライド型、ロッキングブロック全てを構造用鋼(ヤング率210GPa)で形成した。
実施例1:ロッキングブロックのみを超鋼材(ヤング率520GPa)で形成し、支持ブロック、ベース、固定型、可動型、スライド型全てを構造用鋼(ヤング率210GPa)で形成した。
実施例2:ロッキングブロック及び主コアを超鋼材(ヤング率520GPa)で形成し、支持ブロック、ベース、固定型、可動型、主コア以外のスライド型を構造用鋼(ヤング率210GPa)で形成した。
【0056】
その評価結果を表1に示す。表1の評価において、×はバリの長さが100μm以上であって使用不可であり、一方、○はバリの長さが100μm未満であり、◎はバリが確認されないため,いずれも使用可能であることを意味する。
【0058】
表1に示す結果を考察するに、比較例のように支持ブロック、ベース、固定型、可動型、スライド型,ロッキングブロック全てを構造用鋼とすると、比較的大きな面積の第1スライド型転写面及び第2スライド型転写面で射出圧力を受けることでスライド方向に沿ってスライド型に発生する過大な押圧力に抗するに十分な剛性を持たないため、スライド型がある程度の移動を余儀なくされる結果、スライド型同士の隙間が大きくなってしまうと推認される。これに対し、実施例1のようにロッキングブロックを超鋼材とすることでスライド方向に沿って剛性がより高まり、スライド型の移動量を抑えることで、スライド型同士の隙間を小さく抑えることができると推認される。更に、実施例2のようにロッキングブロックに加えて主コアを超鋼材とすることでスライド方向に沿って剛性が一層高まり、移動しないようにスライド型をしっかりと保持することができるから、スライド型同士の隙間が殆ど生じないと推認される。以上に加えてホルダを超鋼材とすれば更にスライド方向に沿って剛性が高まるから,より高い射出圧力にも対応できると期待される。
【0059】
本発明は、本明細書に記載の実施形態・実施例に限定されるものではなく、他の実施形態・実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施形態や実施例や技術思想から本分野の当業者にとって明らかである。例えば、上述の実施形態に対し、主コアを、第1スライド型転写面を有するコア部材と、第2スライド型転写面を有するコア部材とで別体とし、それぞれ突き出し量を独立して調整できるようにしても良い。これにより成形品において第1光学面と第2光学面の位置の微調整を行えるので、ミラーユニットMUの重心位置を制御することが出来、回転時のブレを抑えることができる。かかる場合、2つのコア部材それぞれ(ホルダとの間に調整用のスペーサを設ける場合はスペーサも)を、超鋼材より形成することが望ましい。
【0060】
更に、以上述べた実施形態で、スライド型SDの数(N)を4つとしたが、3つでも良いし、或いは5つ以上としても良い。又、成形品において、軸線に対する第1光学面の角度を互いに異ならせ、第2光学面の角度を互いに等しくしても良いし、第1光学面の角度及び第2光学面の角度をそれぞれ異ならせても良い。第1光学面及び第2光学面は平面に限られず、曲面であっても良い。