(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搬送経路のうち、前記振動搬送経路よりも前記搬送方向下流の経路であって、前記搬送部よりも前記搬送方向上流の経路を搬送される前記媒体を加熱する加熱部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような印刷装置では、装置の使用環境や使用状況によっては、ロール体から繰り出された媒体の表面に埃や毛羽などの異物が付着することがある。この場合には、媒体に付着したゴミが吐出部に接触したり、吐出部から吐出されるインクの着弾精度に影響を与えたりすることで、印刷品質が低下するおそれがある。
【0005】
なお、こうした実情は、印刷装置に限らず、ロール体から繰り出された媒体に向けて吐出部から液体を吐出する液体吐出装置においても概ね共通するものとなっている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものである。その目的は、異物が付着した媒体に液体が吐出されることを抑制できる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する液体吐出装置は、媒体を巻き重ねたロール体を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記ロール体から繰り出された前記媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された前記媒体に液体を吐出する吐出部と、前記保持部から前記搬送部に向かって搬送される前記媒体に振動を与える振動部と、を備え、前記搬送経路のうち、前記振動部が振動を与える前記媒体が搬送される経路を振動搬送経路としたとき、前記振動搬送経路は、前記保持部から前記搬送部に向かうに連れて鉛直上方に進むように形成される。
【0007】
上記構成によれば、保持部に保持されたロール体から繰り出された媒体は、搬送部に至る前に振動部によって振動される。また、振動部によって媒体に振動が与えられるのは、保持部から搬送部に向かうに連れて鉛直上方に進む振動搬送経路の搬送されるときである。このため、振動によって、振動搬送経路を搬送される媒体に付着した異物が媒体から離れると、傾いた媒体の表面を滑るようにして鉛直下方に落下することとなる。こうして、この構成によれば、異物が付着した媒体が振動搬送経路よりも搬送方向下流に搬送されることを抑制し、異物が付着した媒体に向けて液体が吐出されることを抑制することができる。
【0008】
上記液体吐出装置は、前記搬送経路のうち、前記振動搬送経路よりも前記搬送方向下流の経路であって、前記搬送部よりも前記搬送方向上流の経路を搬送される前記媒体を加熱する加熱部を備えることが望ましい。
【0009】
前もって加熱した媒体に向けて液体を吐出する場合に、媒体の加熱後に当該媒体に振動を与えると、媒体の温度が低下するおそれがある。また、媒体を加熱しながら当該媒体に振動を与えると、媒体の加熱効率が低下する場合がある。この点、上記構成では、振動搬送経路よりも搬送方向下流で媒体が加熱される。このため、加熱した媒体に向けて液体を吐出する場合に、媒体の温度が低下したり、媒体の加熱効率が低下したりすることを抑制できる。
【0010】
上記液体吐出装置は、前記振動搬送経路を構成する案内面を有する案内部を備え、前記振動部は、前記案内面を振動させることで、前記保持部から前記搬送部に向かって搬送される前記媒体に振動を与えることが望ましい。
【0011】
上記構成によれば、振動搬送経路を構成する案内面を振動させることで、振動搬送経路を搬送される媒体に振動を与えることができる。このため、振動搬送経路を搬送される媒体を振動させる構成を容易に実現することができる。
【0012】
上記液体吐出装置において、前記案内部は、前記保持部の鉛直上方に設けられることが望ましい。
液体吐出装置の使用後に、保持部に保持されたロール体に媒体を巻き戻したとしても、保持部にロール体を保持したままとすると、液体吐出装置の使用を再開する状況下において、ロール体(媒体)の上面(表面)に異物が堆積するおそれがある。この点、上記構成によれば、案内部が保持部の鉛直上方に設けられるため、案内部が保持部に保持されたロール体を覆う庇として機能する。したがって、上記の状況下において、ロール体(媒体)の上面(表面)に異物が堆積することを抑制することができる。
【0013】
上記課題を解決する液体吐出装置は、媒体を巻き重ねたロール体を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記ロール体から繰り出された前記媒体を搬送経路に沿って搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送された前記媒体の表面に液体を吐出する吐出部と、前記保持部から前記搬送部に向かって搬送される前記媒体に振動を与える振動部と、前記搬送経路のうち、前記振動部が振動を与える前記媒体が搬送される経路を振動搬送経路としたとき、前記振動搬送経路、及び、前記搬送経路のうち前記振動搬送経路よりも前記搬送方向下流の経路であって前記搬送部よりも前記搬送方向上流の経路のうち少なくとも一方の経路を搬送される前記媒体の表面に沿う気流を発生させる気流発生部と、を備える。
【0014】
上記構成によれば、保持部に保持されたロール体から繰り出された媒体は、搬送部に至る前に振動部によって振動される。また、振動部によって振動が与えられる振動搬送経路及び当該振動搬送経路よりも下流であって搬送部よりも上流の経路のうち少なくとも一方の経路を搬送される媒体の表面には、気流発生部によって気流が発生される。このため、振動によって、媒体の表面から離れた異物は、当該媒体の表面から気流によって取り除かれる。こうして、この構成によれば、異物が付着した媒体が振動搬送経路よりも搬送方向下流に搬送されることを抑制し、異物が付着した媒体に向けて液体が吐出されることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、液体吐出装置を印刷装置に具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の印刷装置は、用紙などの媒体に液体の一例としてのインクを吐出することで、文字や画像を形成するインクジェットプリンターである。
【0017】
図1に示すように、印刷装置10は、媒体Mの搬送方向に沿って、ロール状に巻き重ねた媒体Mを繰り出す繰出部20と、媒体Mを案内する案内部30と、媒体Mを搬送する搬送部40と、媒体Mを支持する支持部50と、媒体Mに印刷を行う印刷部60と、媒体Mを巻き取る巻取部70と、を備えている。また、印刷装置10は、装置の一部の構成部材を収容する筐体11と、筐体11などを支持する脚部12と、を備えている。
【0018】
なお、以降の説明では、媒体Mを搬送する方向を「搬送方向F」とし、繰出部20から巻取部70までにおいて、媒体Mが搬送される経路(媒体Mの移動経路)を「搬送経路FP」とも言う。また、印刷装置10の幅方向を「幅方向X」とし、印刷装置10の前後方向を「前後方向Y」とし、印刷装置の上下方向を「鉛直方向Z」とする。なお、本実施形態では、幅方向X、前後方向Y及び鉛直方向Zは互いに交差(直交)する方向であり、搬送方向Fは幅方向Xと交差(直交)する方向である。
【0019】
繰出部20は、媒体Mをロール状に巻き重ねたロール体R1を着脱自在に保持する保持部21を有している。そして、繰出部20は、ロール体R1を一方向(
図1では反時計方向)に回転させることで、ロール体R1から巻き解いた媒体Mの繰り出しを行い、ロール体R1を他方向(
図1では時計方向)に回転させることで、ロール体R1から繰り出した媒体Mの巻き戻しを行う。
【0020】
案内部30は、搬送経路FPの一部を形成する案内面31を有する案内部材32と、案内部材32を摺動可能に支持するレール部材33と、案内部材32(案内面31)を振動させる振動部34と、を備えている。幅方向Xにおいて、案内部30の長さは、印刷装置10が印刷対象とする媒体Mのうち最大の媒体Mの長さよりも長くなっている。また、案内面31は、繰出部20から搬送部40に向かうに連れて鉛直上方に進むように形成された斜面となっている。そして、案内部30の案内面31は、媒体Mの裏面に接触することで当該媒体Mの搬送を案内する。
【0021】
レール部材33は、案内部材32を幅方向X及び鉛直方向Zの両方向と交差する方向(本実施形態では前後方向Y)に移動可能に支持している。また、レール部材33は、案内部材32との間にばね成分やダンパー成分を設けるなどして、振動部34が案内部材32を振動させる際に、当該振動が伝達されないようにすることが望ましい。
【0022】
また、以降の説明では、案内部材32がレール部材33に対して後方に突出した位置(
図1に示す位置)を「突出位置」とも言い、案内部材32が筐体11に収納された位置(
図2に示す位置)を「収納位置」とも言う。すなわち、案内部材32が収納位置に位置するときには、案内部材32の筐体11からの突出量が最大となり、案内部材32が突出位置に位置するときには、案内部材32の筐体11からの突出量が最小となる。
【0023】
また、
図1に示すように、レール部材33が突出位置に位置するときには、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1の鉛直上方に案内部材32が配置されることとなる。ここで、案内部材32が突出位置に配置される場合、印刷装置10の平面視において、案内部材32で少なくともロール体R1の回転軸が隠れることが望ましく、案内部材32でロール体R1が全て隠れることがより望ましい。なお、ここで言うロール体R1とは、媒体Mが最大限まで巻き重ねられているものとする。
【0024】
振動部34は、案内部材32の案内面31とは反対側において当該案内部材32に接するように設けられている。振動部34は、案内部材32の幅方向Xにおける中心に1つだけ設けてもよいし、案内部材32の幅方向Xに亘って複数設けてもよい。そして、振動部34は、案内部材32を振動させることで、案内部材32の案内面31に案内される媒体Mに振動を与える。
【0025】
また、振動部34は、案内部材32を振動させるものであればよく、例えば、次のような構成を採用すればよい。まず、振動部34による振動発生方式は、偏りがある重りを出力軸に取り付けたモーターを駆動することで振動を発生させる方式(ERM:Eccentric Rotating Mass方式)とすればよい。また、振動部34による振動発生方式は、コイルに流す電流値に応じた電磁力と、コイル及び磁石の反発力との差を時間変化させることでコイルに発生する振動を利用する方式(LRA:Linear Resonant Actuator方式)としてもよい。また、振動部34による振動発生方式は、印加した電圧値に応じて伸縮する圧電素子によって発生する振動を利用する方式としてもよい。さらに、振動部34による振動発生方式は、高圧の気体を動力源として、周期的な運動を行う振動子によって振動を発生させる方式としてもよい。
【0026】
また、振動部34は、案内部材32を、例えば、数十Hz〜数百Hzで振動させることが望ましい。さらに、振動部34は、案内部材32を案内面31と交差する方向(望ましくは直交する方向)に振動させることが望ましい。なお、案内部材32の振幅は、搬送する媒体Mの厚みに応じて変更すればよいが、例えば、0.1mm〜5mm程度であればよい。
【0027】
また、以降の説明では、搬送経路FPのうち、振動部34が振動を与える媒体Mが搬送される経路を「振動搬送経路FP1」とも言う。すなわち、本実施形態では、振動搬送経路FP1は、案内部材32の案内面31によって形成されていると言うことができる。
【0028】
搬送部40は、媒体Mの裏面に接触しつつ駆動回転する駆動ローラー41と、媒体Mの表面に接触しつつ従動回転する従動ローラー42と、を備えている。そして、搬送部40は、駆動ローラー41及び従動ローラー42に媒体Mを挟持させた状態で、駆動ローラー41を正回転させることで、繰出部20から繰り出された媒体Mを搬送経路FPに沿って、搬送方向Fに向かって搬送する。また、搬送部40は、駆動ローラー41を逆回転させることで媒体Mを搬送方向Fとは逆方向に向かって搬送する。
【0029】
支持部50は、搬送部40よりも搬送方向上流に設けられる第1の支持部51と、搬送部40よりも搬送方向下流に設けられる第2の支持部52と、を備えている。
第1の支持部51は、印刷装置10の前方に向かうに連れて鉛直上方に進むように形成されている。また、第1の支持部51は、案内部30と同様に印刷装置10の幅方向Xに亘って設けられている。さらに、第1の支持部51において、媒体Mを支持する支持面53とは反対側には、当該第1の支持部51を加熱する第1の加熱部54が設けられている。
【0030】
第2の支持部52は、印刷装置10の前方に進んだ後に、印刷装置10の前方に向かうに連れて鉛直下方に進むように形成されている。また、第2の支持部52は、案内部30と同様に印刷装置10の幅方向Xに亘って設けられている。さらに、第2の支持部52において、媒体Mを支持する支持面53とは反対側には、当該第2の支持部52を加熱する第2の加熱部55が設けられている。
【0031】
また、第1の支持部51及び第2の支持部52の支持面53は搬送経路FPの一部を形成している。そして、支持部50は、案内部30によって案内された媒体Mを支持したり、印刷部60によって印刷が行われる媒体Mを支持したり、印刷部60によって印刷が行われた媒体Mを支持したりする。
【0032】
因みに、第1の支持部51及び第2の支持部52は、第1の加熱部54及び第2の加熱部55の駆動により加熱され、支持面53に接触する媒体Mを伝熱により加熱する。この点で、支持部50は、アルミニウムやステンレスなどの熱伝導率が高い金属材料で形成されることが望ましい。
【0033】
なお、第1の加熱部54は、振動搬送経路FP1よりも搬送方向下流の経路であって、搬送部40よりも搬送方向上流の経路を搬送される媒体M、すなわち、第1の支持部51の支持面53に支持される媒体Mを加熱するものである。この点で、本実施形態では、第1の加熱部54が「加熱部」の一例に相当する。
【0034】
印刷部60は、液体の一例としてのインクを吐出する吐出部61(例えば、吐出ヘッド)と、吐出部61を支持するキャリッジ62と、キャリッジ62を幅方向Xに往復移動可能に支持するガイド軸63と、を備えている。なお、キャリッジ62の幅方向Xへの移動は、例えば、プーリー機構などによって、モーターの回転運動を幅方向Xへの直進運動に変換する機構によって実現すればよい。
【0035】
そして、印刷部60は、印刷装置10に投入された印刷ジョブに基づいて、媒体Mに印刷を行う。詳しくは、キャリッジ62を幅方向Xに移動させつつ吐出部61からインクを媒体Mの表面に吐出させることで1パス分の印刷を行う。
【0036】
巻取部70は、媒体Mを巻き重ねたロール体R2を着脱自在に保持する保持部71と、搬送方向Fと交差する方向に媒体Mにテンション(張力)を付与するテンションバー72と、を備えている。そして、巻取部70は、ロール体R2を一方向(
図1では反時計方向)に回転させることで、印刷済みの媒体Mの巻き取りを行う。
【0037】
また、本実施形態では、繰出部20及び巻取部70の駆動に伴う媒体Mの繰出量と媒体Mの巻取量とが制御されることで、媒体Mに作用するテンション(張力)が調整される。こうして、円滑に媒体Mが搬送されるように、搬送経路FPを搬送される媒体Mにシワや弛みが生じることを抑制している。
【0038】
ところで、本実施形態のような印刷装置10では、媒体Mに印刷を行うために、ロール体R1から媒体Mを繰り出すときに、ロール体R1から媒体Mが剥離することによって当該媒体Mが帯電しやすい。さらに、保持部21は筐体11外に設けられているため、印刷装置10の設置環境に塵や埃などの異物が浮遊している場合には、当該異物が帯電した媒体Mに吸着されるおそれがある。そして、この場合には、異物が吸着した媒体Mに対してインクが吐出されることにより、印刷品質が低下するおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態では、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1から繰り出された媒体Mが搬送部40に到達する前に、媒体Mの裏面に接する案内面31(案内部材32)を振動させて、媒体Mに付着した異物を当該媒体Mから分離させることとした。言い換えれば、振動搬送経路FP1を搬送される媒体Mに振動を与えて、媒体Mに付着した異物を当該媒体Mから分離させることとした。
【0040】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態の印刷装置10の作用について説明する。
まず、
図2を参照して、印刷装置10の非印刷時の作用について詳しく説明する。
本実施形態の印刷装置10では、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1の残量が無くなったり、幅方向Xにおける長さが異なる媒体Mに印刷を開始したりする場合には、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1が交換される。なお、繰出部20のロール体R1を交換する際に当該ロール体R1から繰り出した媒体Mがある場合には、媒体Mが繰出部20のロール体R1に巻き取られた後に当該ロール体R1が交換されるものとする。
【0041】
図2に示すように、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1を交換する場合には、ユーザーの操作によって、案内部材32が収納位置に位置される。したがって、案内部材32が突出位置に位置し続けることにより、繰出部20の保持部21におけるロール体R1の着脱動作がしにくくなることが抑制される。
【0042】
その一方で、繰出部20の保持部21にロール体R1を保持させたまま、印刷装置10の使用を中断する場合には、ユーザーの操作によって、案内部材32が突出位置に位置される。このため、印刷装置10の使用を長期(例えば、数日)に亘って中断する場合であっても、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1の上部に異物が堆積することが抑制される。その結果、印刷装置10の使用を再開する場合において、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1から繰り出された媒体Mに付着する異物の量が低減される。
【0043】
続いて、
図3を参照して、印刷装置10の印刷時の作用について詳しく説明する。
図3に示すように、本実施形態の印刷装置10では、繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1から繰り出された媒体Mは、振動部34によって振動する案内部材32(案内面31)に案内される。このため、ロール体R1から繰り出された媒体Mは、
図3において両方向実線矢印で示すように振動され、媒体Mの表面に異物が付着している場合には当該異物が媒体Mの表面から離れるとともに、媒体Mの斜面を伝って落下する。したがって、異物が表面に付着した媒体Mが搬送部40よりも下流側に搬送されることが抑制され、そうした媒体Mに向けてインクが吐出されることが抑制される。
【0044】
また、本実施形態では、搬送方向Fにおいて、案内部30よりも搬送方向上流に媒体Mを加熱する第1の支持部51が設けられている。このため、搬送方向Fに搬送される媒体Mは、案内部30において異物が分離された後に、第1の支持部51に沿って搬送されつつ当該第1の支持部51によって予備加熱(プレヒート)される。
【0045】
その後、予備加熱された媒体Mは、第2の支持部52に支持された状態で、吐出部61からインクが吐出されることで印刷が行われる。続いて、印刷済みの媒体Mは、第2の支持部52に沿って搬送されつつ当該第2の支持部52によって本加熱され、インクの定着が促進される。そして、媒体Mは、テンションバー72によってテンションが付与された後に巻取部70のロール体R2に巻き取られる。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)繰出部20の保持部21に保持されたロール体R1から繰り出された媒体Mは、搬送部40に至る前に振動部34によって振動される。また、振動部34によって媒体Mに振動が与えられるのは、保持部21から搬送部40に進むに連れて鉛直上方に向かう案内面31に案内されるときである。このため、振動によって、媒体Mの表面に付着した異物が媒体Mから離れると、媒体Mの表面を滑るようにして鉛直下方に落下する。こうして、異物が付着した媒体Mが振動搬送経路FP1よりも搬送方向下流まで搬送されることが抑制され、異物が付着した媒体Mに向けてインクが吐出されることを抑制することができる。
【0047】
(2)媒体Mを加熱後に当該媒体Mに振動を与えると、媒体Mの温度が低下するおそれがある。また、媒体Mを加熱しながら当該媒体Mに振動を与えると、媒体Mに対する加熱効率が低下する場合がある。この点、上記実施形態では、振動搬送経路FP1よりも搬送方向Fにおいて下流側で媒体Mが加熱される。このため、媒体Mを予備加熱する場合において、媒体Mの温度が低下したり、媒体Mの加熱効率が低下したりすることを抑制できる。
【0048】
(3)媒体Mを案内する案内面31を有する案内部材32を振動させることで、振動搬送経路FP1を搬送される媒体Mを振動させることができる。こうして、振動搬送経路FP1を搬送される媒体Mを振動させる構成を容易に実現することができる。
【0049】
(4)突出位置に位置する案内部材32は、保持部21の鉛直上方に位置するため、印刷装置を使用していないときに、案内部材32を保持部21に保持されたロール体R1を覆う庇として機能させることができる。したがって、ロール体R1を繰出部20の保持部21に保持させたまま印刷装置10の使用を中断した場合であっても、ロール体R1の上部に異物が堆積することを抑制することができる。
【0050】
(5)案内部材32を突出位置と収納位置との間で変位可能としたため、繰出部20の保持部21に対してロール体R1を着脱する場合には、案内部材32を収納位置に配置させることで、ユーザーの作業性を高めることができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、以下に示すように変更してもよい。
・印刷装置10は、
図4に示すような印刷装置10Aであってもよい。なお、
図4に示す印刷装置10Aの説明では、上記実施形態と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略するものとする。
【0052】
図4に示すように、他の実施形態に係る印刷装置10Aは、媒体Mの搬送方向Fに沿って、ロール体R1から媒体Mを繰り出す繰出部20と、媒体Mを案内する案内部80と、媒体Mに向けて気体を送風する送風部90と、媒体Mを搬送する搬送部40と、媒体Mを支持する支持部50Aと、媒体Mに印刷を行う印刷部60と、を備えている。また、印刷装置10Aは、筐体11と、脚部12と、印刷済みの媒体Mを筐体11外に排出するための排出口13と、を備えている。
【0053】
繰出部20は、印刷装置10Aの筐体11の鉛直上方であって後方となる位置に設けられている。すなわち、繰出部20は、印刷部60の吐出部61よりも鉛直上方であって後方となる位置に配置されている。このため、繰出部20から繰り出された媒体Mは、印刷装置10Aの前方に進むに連れて鉛直下方に向かうように搬送される。
【0054】
案内部80は、搬送方向Fに沿って、媒体Mの表面に接する第1の案内ローラー81と、媒体Mの裏面に接する案内面82を有する案内板83と、媒体Mの表面に接する第2の案内ローラー84と、を備えている。また、案内部80は、案内板83を振動させる振動部34を備えている。第1の案内ローラー81、案内板83及び第2の案内ローラー84は、印刷装置10Aの幅方向Xに亘って設けられている。第1の案内ローラー81及び第2の案内ローラー84は、幅方向Xを回転軸方向として、媒体Mの搬送に伴って従動回転可能に設けられている。
【0055】
また、本実施形態では、第1の案内ローラー81、案内板83(案内面82)及び第2の案内ローラー84によって媒体Mの搬送経路FPの一部が形成され、案内板83(案内面82)によって振動搬送経路FP1が形成されている。
【0056】
送風部90は、「気流発生部」の一例に相当し、
図4に白抜き矢印で示すように、筐体11外の気体を案内板83の案内面82に向けて気体を送風する。このため、印刷装置10Aが媒体Mに対して印刷を行うために媒体Mを搬送しているときには、案内板83によって振動が与えられた媒体Mの表面、すなわち、振動搬送経路FP1を搬送される媒体Mの表面に気流が発生する。
【0057】
図4に示す印刷装置10Aによれば、保持部21に保持されたロール体R1から繰り出された媒体Mは、搬送部40に至る前に振動する案内板83によって振動される。また、振動部34によって振動が与えられる案内板83に案内される媒体Mには、送風部90によって気体が吹き付けられる。このため、振動を与えられることで媒体Mの表面から離れた異物は、媒体Mに吹き付けられることで発生する気流(衝突流)によって媒体Mの表面から除去される。こうして、異物が付着した媒体Mが振動搬送経路FP1よりも搬送方向Fにおいて下流側まで搬送されることが抑制され、異物が付着した媒体Mに向けてインクが吐出されることを抑制することができる。
【0058】
・
図4に示す他の実施形態において、送風部90は、搬送経路FPのうち振動搬送経路FP1よりも搬送方向下流の流路であって、搬送部40よりも搬送方向上流の経路を搬送される媒体Mに向かって気体を送風することで、当該媒体Mの表面に沿う気流を発生させてもよい。この構成によっても、他の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0059】
・
図4に示す他の実施形態において、送風部90を設けなくてもよい。この場合、気流発生部の一例としての排気ファンを設けることが望ましい。これによれば、排気部が、筐体11内の気体を筐体11外に排出することに伴って発生する気流によって、媒体Mの表面から異物を取り除くことができる。
【0060】
・また、
図4に示す他の実施形態において、キャリッジ62が幅方向Xに往復移動することによって、案内板83に案内される媒体Mの表面に気流を発生できる場合には、送風部90を設けなくてもよい。この場合、幅方向Xに往復移動するキャリッジ62が「気流発生部」の一例に相当することとなる。
【0061】
・
図4に示す他の実施形態において、第1の案内ローラー81及び第2の案内ローラー84のうち少なくとも一方に振動部34を設け、当該案内ローラー81,84を振動させてもよい。この場合、案内板83を設けなくてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、媒体Mにおいてインクが吐出される表面とは反対側の裏面に振動を与える構成としたが、媒体Mの表面に振動を与える構成としてもよい。
・振動部34は、案内部材32を幅方向Xに振動させるものであってもよいし、鉛直方向Zに振動させるものであってもよいし、搬送方向Fに振動させるものであってもよい。
【0063】
・振動部34は、媒体Mに直接的に接することで当該媒体Mを振動させてもよい。すなわち、この場合には、案内面31,82は不要となる。
・案内面82が水平方向に沿うように案内板83を設けてもよい。この場合、他の実施形態と同様に、振動が与えられた後の媒体Mの表面に気流を発生させる構成を採用することが望ましい。
【0064】
・媒体Mを案内する案内部材32を振動部34が振動させることで、当該媒体Mの表面に付着した異物がさらに離れやすくなるように、送風式のイオナイザーを設けてもよい。この場合、当該送風式のイオナイザーは、案内部材32に案内される媒体Mの表面に向けて送風することが望ましい。
【0065】
・上記実施形態において、第1の加熱部54及び第2の加熱部55を設けなくてもよい。
・上記実施形態において、案内部材32を突出位置と収納位置との間で変位可能としなくてもよい。すなわち、案内部材32を突出位置に固定配置してもよい。
【0066】
・印刷装置10がキャリッジ62を備えず、媒体Mの幅全体と対応した長尺状の固定された吐出部61を備える、いわゆるラインヘッドタイプの印刷装置に変更してもよい。この場合の吐出部61は、液体を液滴として吐出するノズルが形成された複数の単位ヘッド部を並列配置することによって記録範囲が媒体Mの幅全体に亘るようにしてもよいし、単一の長尺ヘッドに媒体Mの幅全体に亘るように多数のノズルを配置することによって、記録範囲が媒体Mの幅全体に亘るようにしてもよい。
【0067】
・吐出部61が吐出または噴射する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出して記録を行う構成にしてもよい。