特許第6601512号(P6601512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6601512ヒートシンク付きパワーモジュール用基板及びパワーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601512
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】ヒートシンク付きパワーモジュール用基板及びパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20191028BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H01L23/36 C
   H01L23/12 J
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-9313(P2018-9313)
(22)【出願日】2018年1月24日
(65)【公開番号】特開2019-129208(P2019-129208A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2019年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】大開 智哉
(72)【発明者】
【氏名】大井 宗太郎
【審査官】 平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−46356(JP,A)
【文献】 特開2016−27645(JP,A)
【文献】 特開2016−181549(JP,A)
【文献】 特開2017−73483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12−23/15
H01L 23/29
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/473
H01L 25/00−25/10
H01L 25/10−25/11
H01L 25/16−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方に面に回路層が接合されるとともに、該セラミックス基板の他方の面に金属層が接合され、該金属層に放熱側接合材を介してヒートシンクが接合されており、
前記回路層が、前記セラミックス基板の一方の面に接合された第1層と、該第1層の表面に接合された第2層と、を有する積層構造とされ、
前記第1層と前記金属層とが純度99.99質量%以上のアルミニウムからなり、
前記第2層と前記放熱側接合材とが純銅又は銅合金からなり、
前記ヒートシンクが前記第1層及び前記金属層よりも純度の低いアルミニウムからなるとともに、前記放熱側接合材が接合される前記ヒートシンクの天面部が、前記放熱側接合材との接合面よりも大きく形成され、かつ、前記天面部の周縁から前記回路層側に向けて立設された周壁部を有し、前記天面部と前記周壁部とで囲まれた収容凹部に、少なくとも前記放熱側接合材の一部が収容されており、
前記第2層と前記第1層との接合面積をA1(mm)、前記第2層の体積を前記接合面積A1で除した相当板厚をt1(mm)、前記第2層の耐力をσ1(N/mm)、前記第2層の線膨張係数をα1(/K)とし、
前記放熱側接合材と前記金属層との接合面積をA2(mm)、前記放熱側接合材の体積を前記接合面積A2で除した相当板厚をt2(mm)、前記放熱側接合材の耐力をσ2(N/mm)、前記放熱側接合材の線膨張係数をα2(/K)とし、
前記ヒートシンクと前記放熱側接合材との接合面積をA3(mm)、前記ヒートシンクの前記周壁部を含む体積を前記接合面積A3で除した相当板厚をt3(mm)、前記ヒートシンクの耐力をσ3(N/mm)、前記ヒートシンクの線膨張係数をα3(/K)としたときに、
25℃における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}が0.70以上1.30以下であることを特徴とするヒートシンク付きパワーモジュール用基板。
【請求項2】
前記ヒートシンクの前記放熱側接合材とは反対側の面には、複数のピンフィンが設けられており、
前記t3(mm)は、前記ヒートシンクの前記周壁部及び前記複数のピンフィンを含む体積を前記接合面積A3で除した値であることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付きパワーモジュール用基板。
【請求項3】
前記ヒートシンクの前記周壁部には、複数の取付穴が形成されており、
前記ヒートシンクの体積には、前記取付穴の空間体積は含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の前記ヒートシンク付きパワーモジュール用基板と、前記回路層の表面上に搭載された半導体素子と、を備えることを特徴とするパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるヒートシンク付きパワーモジュール用基板及びパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールに用いられるパワーモジュール用基板として、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Al(アルミナ)、Si(窒化ケイ素)等のセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に接合されたアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の導電性に優れた金属からなる回路層と、を備えた構成のものが知られている。また、この種のパワーモジュール用基板には、セラミックス基板の他方の面に熱伝導性に優れた金属からなる金属層を形成することや、金属層を介してヒートシンク(放熱層)を接合することも行われており、ヒートシンクが接合されたヒートシンク付きパワーモジュール用基板が用いられている。そして、パワーモジュールは、このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板の回路層の表面(上面)に、パワー素子等の半導体素子が搭載(実装)されることにより、製造される。また、半導体素子が実装されたパワーモジュールは、絶縁性確保や配線保護等の観点から、ポッティング樹脂やモールディング樹脂で封止することも行われる。
【0003】
一般的なヒートシンク付きパワーモジュール用基板は、セラミックス基板の一方の面に接合された回路層と他方の面に接合された金属層の厚みが同程度に形成され、高剛性のヒートシンクを接合することにより製造される。このため、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板はセラミックス基板を介した上下の剛性の差を有しており、半導体素子の実装工程で加熱された際、あるいは使用環境における温度変化等において、反りが生じるおそれがある。実装工程で反りが生じた場合、半導体素子の位置ずれが生じたり、半導体素子の接合部に歪みやクラック等が生じることにより、接合信頼性が損なわれる。また、使用環境において反りが生じた場合、ヒートシンクと冷却器との間に介在する熱伝導性グリースがポンプアウト現象によりヒートシンクと冷却器との間から流れ出すことにより、ヒートシンクと冷却器との密着性が損なわれ、熱抵抗の増加を招くことで、放熱性が阻害される。このため、反りの少ないヒートシンク付きパワーモジュール用基板が求められており、従来から、ヒートシンク付きパワーモジュールの反りを低減する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、剛性の高いアルミニウムからなるヒートシンクに対して、回路層を第1層と第2層との積層構造としてセラミックス基板の反対側に剛性の高いアルミニウムからなる第2層を配置することにより、セラミックス基板を中心とした対称構造を構成することが記載されている。また、特許文献1には、回路層の第2層とヒートシンクとについて、これらの厚さt1,t2(mm)、接合面積A1,A2(mm)及び耐力σ1,σ2(N/mm)の関係を例えば比率(t1×A1×σ1)/(t2×A2×σ2)が0.85以上1.40以下の範囲に設定することにより、セラミックス基板を中心とする対称性を向上させ、反りの発生を防止できることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、複数の小回路層により構成された回路層の各小回路層を第1層と第2層との積層構造とし、ヒートシンク(放熱板)を第2層と主成分が同一の材料(銅又はアルミニウム)により形成することで、セラミックス基板を中心とした対称構造を構成することが記載されている。また、特許文献2には、小回路層どうしの間の非接合領域において金属層にもセラミックス基板との非接合部を設けることで、回路層と金属層との対称性をさらに高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015‐216370号公報
【特許文献2】特開2017‐73483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板の加熱時に生じる反りを低減するために、セラミックス基板を中心とした対称構造を構成することが行われている。しかし、特許文献1又は特許文献2では、ヒートシンク(放熱板)と回路層の第2層とを主成分が同一の材料(銅又はアルミニウム)で形成することにより、セラミックス基板を中心とした対称構造を構成しており、回路層(第2層)とヒートシンクとを異なる材料で形成する場合には、適用できなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回路層とヒートシンクとを異なる材料で形成でき、加熱時の反りを低減できるヒートシンク付きパワーモジュール用基板及びパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のヒートシンク付きパワーモジュール用基板は、セラミックス基板の一方に面に回路層が接合されるとともに、該セラミックス基板の他方の面に金属層が接合され、該金属層に放熱側接合材を介してヒートシンクが接合されており、前記回路層が、前記セラミックス基板の一方の面に接合された第1層と、該第1層の表面に接合された第2層と、を有する積層構造とされ、前記第1層と前記金属層とが純度99.99質量%以上のアルミニウムからなり、前記第2層と前記放熱側接合材とが純銅又は銅合金からなり、前記ヒートシンクが前記第1層及び前記金属層よりも純度の低いアルミニウムからなるとともに、前記放熱側接合材が接合される前記ヒートシンクの天面部が、前記放熱側接合材との接合面よりも大きく形成され、かつ、前記天面部の周縁から前記回路層側に向けて立設された周壁部を有し、前記天面部と前記周壁部とで囲まれた収容凹部に、少なくとも前記放熱側接合材の一部が収容されており、前記第2層と前記第1層との接合面積をA1(mm)、前記第2層の体積を前記接合面積A1で除した相当板厚をt1(mm)、前記第2層の耐力をσ1(N/mm)、前記第2層の線膨張係数をα1(/K)とし、前記放熱側接合材と前記金属層との接合面積をA2(mm)、前記放熱側接合材の体積を前記接合面積A2で除した相当板厚をt2(mm)、前記放熱側接合材の耐力をσ2(N/mm)、前記放熱側接合材の線膨張係数をα2(/K)とし、前記ヒートシンクと前記放熱側接合材との接合面積をA3(mm)、前記ヒートシンクの前記周壁部を含む体積を前記接合面積A3で除した相当板厚をt3(mm)、前記ヒートシンクの耐力をσ3(N/mm)、前記ヒートシンクの線膨張係数をα3(/K)としたときに、25℃における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}が0.70以上1.30以下である。
【0010】
このヒートシンク付きパワーモジュール用基板は、回路層を第1層と第2層との積層構造として、回路層の第2層に銅材を用い、ヒートシンクにアルミニウム材を用い、第2層をアルミニウムよりも導電性に優れた銅により構成している。そして、ヒートシンクにアルミニウムの純度が低く、剛性の高い、すなわち耐力の高いアルミニウム材を用いるとともに、金属層とヒートシンクとの間の放熱側接合材に銅材を用い、これらの組み合わせにおいて、25℃における上記比率を上記範囲に調整することにより、セラミックス基板を中心とした対称構造を構成している。なお、上記接合面積A1,A2,A3、相当板厚t1,t2,t3、耐力σ1,σ2,σ3、線膨張係数α1,α2,α3は、いずれも25℃(常温)における値である。
【0011】
また、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板は、複数の小回路層を並べて配設して回路層をパターン化した場合や、ヒートシンクにフィンを配設した場合等には、回路層やヒートシンクの形状が種々のバリエーションで構成されることになるが、各部材の剛性を耐力だけではなく、各部材の体積を接合面積で除した相当板厚と各部材の線膨張係数を加えた関係式で評価することにより、第2層とヒートシンク及び放熱側接合材との剛性や熱応力の対称性を種々の形態を有するヒートシンク付きパワーモジュール用基板において安定して対称構造を構成でき、反りの発生を確実に防止できる。
さらに、セラミックス基板と接合される第1層と金属層には、純度99.99質量%以上の比較的軟らかい、すなわち耐力の低いアルミニウム板を配置しているので、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板の加熱時等にセラミックス基板にかかる熱応力を低減させて割れが生じることを防止できる。
したがって、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板の加熱時等にセラミックス基板の両面に作用する応力に偏りが生じにくく、半導体素子の実装工程持や使用環境において反りの発生を抑制できる。このため、パワーモジュールの接合信頼性を向上でき、良好な放熱性を発揮できる。
【0012】
放熱側接合材との接合面よりも大面積の天面部を形成しておくことで、半導体素子が実装されたパワーモジュールをモールディング樹脂等で封止する際に、モールディング樹脂との接着面積を広く設けることができる。したがって、半導体素子とヒートシンク付きパワーモジュール用基板との接合信頼性を向上できる。
【0013】
ヒートシンクに周壁部で囲まれた収容凹部を形成しておくことで、半導体素子が実装されたパワーモジュールをモールディング樹脂等で封止する際に、モールディング樹脂との接着面積をさらに広く設けることができ、半導体素子とヒートシンク付きパワーモジュール用基板との接合信頼性を向上できる。
【0014】
本発明のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の好適な実施態様として、前記ヒートシンクの前記放熱側接合材とは反対側の面には、複数のピンフィンが設けられており、前記t3(mm)は、前記ヒートシンクの前記周壁部及び前記複数のピンフィンを含む体積を前記接合面積A3で除した値であるとよい。
【0015】
本発明のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の好適な実施態様として、前記ヒートシンクの前記周壁部には、複数の取付穴が形成されており、前記ヒートシンクの体積には、前記取付穴の空間体積は含まないとよい。
【0016】
本発明のパワーモジュールは、前記ヒートシンク付きパワーモジュール用基板と、前記回路層の表面上に搭載された半導体素子と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回路層とヒートシンクとを異なる材料で形成したヒートシンク付きパワーモジュール用基板において、加熱時の反りを低減できるので、半導体素子の実装工程での不具合を解消できるとともに、温度サイクル(冷熱サイクル)時の反りを抑制でき、接合信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の斜視図である。
図2図1に示すヒートシンク付きパワーモジュール用基板の正面図である。
図3図1に示す第1実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の製造工程を示す斜視図である。
図4】各部材の接合面積を説明する模式図である。
図5】本発明の第2実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の斜視図である。
図6図5に示すヒートシンク付きパワーモジュール用基板の正面図である。
図7】本発明の第3実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の斜視図である。
図8図7に示すヒートシンク付きパワーモジュール用基板の正面図である。
図9】本発明の第4実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板の斜視図である。
図10図9に示すヒートシンク付きパワーモジュール用基板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、第1実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板101を示す。ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101は、パワーモジュール用基板10Aと、このパワーモジュール用基板10Aに放熱側接合材14を介して接合されたヒートシンク15Aとを備える。そして、パワーモジュール201は、図2に示すように、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101の表面に半導体素子等の素子91が搭載されることにより製造される。また、パワーモジュール201は、素子91とヒートシンク付きパワーモジュール用基板101とがエポキシ樹脂等からなるモールディング樹脂93により樹脂封止されており、パワーモジュール201の露出面(ヒートシンク15Aの露出面)を冷却器等の他の部品の表面に押し付けて固定された状態で使用される。
【0020】
パワーモジュール用基板10Aは、図1及び図2に示すように、一枚のセラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面に接合された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に接合された一枚の金属層13と、を備える。
セラミックス基板11は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)、Al(アルミナ)等のセラミックス材料からなる。
【0021】
回路層12は、図1及び図2に示すように複数の小回路層21〜23からなり、各小回路層21〜23はセラミックス基板11の一方の面に相互に間隔をあけて接合される。また、回路層12を構成する各小回路層21〜23は、セラミックス基板11の表面(一方の面)に接合された第1層121と、第1層121の表面(セラミックス基板11とは反対側の面)に接合された第2層122と、を有する積層構造とされる。このうち第1層121は純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)からなり、このアルミニウムからなるアルミニウム材をセラミックス基板11の一方の面にろう材を用いて接合することにより形成される。また、第2層122は、純銅又は銅合金からなり、この銅からなる銅材をアルミニウムからなる第1層121に固相拡散接合により接合することで形成される。
【0022】
金属層13は、回路層12の第1層121と同様に、純度99.99質量%以上のアルミニウムからなる。また、金属層13は、上述したアルミニウムからなるアルミニウム材をセラミックス基板11の他方の面(回路層12とは反対側)にろう材を用いて接合することにより形成される。そして、金属層13の表面(セラミックス基板11とは反対側の面)に放熱側接合材14を介してヒートシンク15Aが接合されている。放熱側接合材14は、回路層12の第2層122と同様に銅又は銅合金からなり、この銅からなる銅材をアルミニウムからなる金属層13と、後述するヒートシンク15Aとに固相拡散接合により接合することで形成される。
【0023】
また、ヒートシンク15Aは、回路層12の第1層121及び金属層13よりも純度の低いアルミニウムからなり、例えば、純度が99.90質量%以下のアルミニウムで、JIS規格では純度99.90質量%以上のいわゆる3Nアルミニウムや、純度99.0質量%以上のいわゆる2Nアルミニウム(例えばA1050等)のアルミニウム、A3003、A6063、A5052等のアルミニウム合金により形成される。
図1及び図2では、ヒートシンク15Aは、矩形平板状の天面部51を有しており、この天面部51上に放熱側接合材14が接合され、放熱側接合材14を介してパワーモジュール用基板10Aの金属層13が接合される。天面部51の上面は、放熱側接合材14との接合面よりも大きく形成されている。また、天面部51の面方向の四隅には、厚み方向に貫通する取付孔52が設けられており、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101は、ヒートシンク15Aの取付孔52を用いて他の部品にねじ止め等により組み込み可能とされる。
【0024】
なお、ヒートシンク15Aの形状としては、特に限定されるものではなく、図1及び図2に示すように平板状のものの他、多数のピン状フィンを一体に形成したもの、相互に平行な帯状フィンを一体に形成したもの等、適宜の形状のものを採用することができる。
【0025】
このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板101の諸寸法について一例を挙げると、Si(窒化珪素)からなるセラミックス基板11の板厚が0.2mm〜1.5mm、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)からなる第1層121の板厚が0.1mm〜2.5mm、金属層13の板厚が0.1mm〜2.5mmとされる。無酸素銅(C1020)からなる第2層122の板厚が0.1mm〜4.0mm、放熱側接合材14の板厚が0.05mm〜2.0mmとされる。また、A6063アルミニウム合金からなるヒートシンク15Aの天面部51の板厚が0.5mm〜3.0mmとされる。ただし、これらの寸法は、上記数値範囲に限られるものではない。
【0026】
そして、このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板101において、回路層12の第2層122と第1層121との接合面積をA1(mm)、第2層122の体積を接合面積A1で除した相当板厚をt1(mm)、第2層122の耐力をσ1(N/mm)、第2層122の線膨張係数をα1(/K)とし、放熱側接合材14と金属層13との接合面積をA2(mm)、放熱側接合材14の体積を接合面積A2で除した相当板厚をt2(mm)、放熱側接合材14の耐力をσ2(N/mm)、放熱側接合材14の線膨張係数をα2(/K)とし、ヒートシンク15Aと放熱側接合材14との接合面積をA3(mm)、ヒートシンク15Aの体積を接合面積A3で除した相当板厚をt3(mm)、ヒートシンク15Aの耐力をσ3(N/mm)、ヒートシンク15Aの線膨張係数をα3(/K)としたときに、25℃(室温)における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}が0.70以上1.30以下となる関係に調整される。なお、上記接合面積A1,A2,A3、相当板厚t1,t2,t3、耐力σ1,σ2,σ3、線膨張係数α1,α2,α3は、いずれも25℃(常温)における値である。
【0027】
本実施形態では、回路層12は複数の小回路層21〜23からなるため、上記比率の関係式において第1層121と第2層122との接合面積A1は、図4に示すように、回路層12を構成する各小回路層21〜23における3つの第1層121と第2層122との接合面積a11〜a13の総和(a11+a12+a13)となる。また、第2層122の相当板厚t1は、各小回路層21〜23における3つの第2層122の総体積V1を接合面積A1で除した値とされる。例えば、図4に示すように、各小回路層21〜23の第2層122の体積をそれぞれv11,v12,v13としたときに、第2層122の総体積V1=(v11+v12+v13)であり、第2層122の相当板厚t1は、(V1/A1)={(v11+v12+v13)/(a11+a12+a13)}となる。
【0028】
一方、本実施形態では、放熱側接合材14が一枚で構成されることから、図4に示すように、放熱側接合材14と金属層13との接合面積A2は単独の面積となり、放熱側接合材14の体積V2も単独の体積となる。したがって、放熱側接合材14の相当板厚t2は(V2/A2)となる。
また、ヒートシンク15Aは、一枚の矩形平板状の天面部51で構成されており、天面部51の上面は、図4に示すように放熱側接合材14との接合面(接合面積A3で表される部分)よりも大きな面積を有している。このため、ヒートシンク15Aの体積V3を接合面積A3で除した相当板厚t3=(V3/A3)は、ヒートシンク15Aの実際の板厚よりも大きくなる。なお、天面部51には取付孔52が設けられているので、ヒートシンク15Aの体積V3に取付孔52の空間体積は含まない。
【0029】
例えば、各小回路層21〜23の各第2層122がC1020(無酸素銅、25℃における耐力σ1=195N/mm、線膨張係数α1=16.8/K)からなる同形状の矩形板状(11mm×36mm×1.0mm)に形成される場合、面積a11〜a13がそれぞれ(11mm×36mm)、体積v11〜v13がそれぞれ(11mm×36mm×1.0mm)となり、総面積A1=3×(11mm×36mm)、総体積V1=3×(11mm×36mm×1.0mm)、相当板厚t1=1.0mmとなる。
また、放熱側接合材14が第2層122と同材料(C1020)からなる矩形板状(36mm×36mm×0.1mm)に形成される場合、耐力σ2=195N/mm、線膨張係数α2=16.8/K、接合面積A2=(36mm×36mm)、体積V2=(36mm×36mm×0.1mm)、相当板厚t2=0.1mmとなる。
【0030】
ヒートシンク15AがA6063アルミニウム合金では、25℃における耐力σ3=50N/mm、線膨張係数α3=23.4/Kである。ヒートシンク15Aの天面部51が矩形平板状(50mm×50mm×1.0mm)に形成され、天面部51の四隅に取付孔52(直径4.0mm×深さ1.0mm)が形成される場合、体積V3={(50mm×50mm×1.0mm)−4×(π)×(2.0mm)×1.0mm}となる。また、ヒートシンク15Aと放熱側接合材14との接合面積A3は、放熱側接合材14と金属層13との接合面積A2と同じ大きさ(36mm×36mm)の場合、相当板厚t3=1.9mmとなる。
そして、これらの組み合わせの場合、25℃における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}=1.18となる。
【0031】
このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板101には、必要とされる機能に応じた素子91が搭載され、パワーモジュール201が製造される。
素子91は、半導体を備えた電子部品であり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。この場合、素子91は、図示を省略するが、上部に上部電極部が設けられ、下部に下部電極部が設けられており、下部電極部が回路層12の上面にはんだ等により接合されることで、素子91が回路層12の上面(第2層122)に搭載されている。また、素子91の上部電極部は、はんだ等で接合されたリードフレーム92等を介して回路層12の回路電極部等に接続される。
【0032】
また、素子91が搭載されたパワーモジュール201は、素子91とヒートシンク付きパワーモジュール用基板101とが、金属層13の裏面側を除いてモールディング樹脂93により樹脂封止されることにより一体化されている。モールディング樹脂93としては、例えばSiOフィラー入りのエポキシ系樹脂等を用いることができ、例えばトランスファーモールドにより成形される。
【0033】
次に、このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板101を製造する方法について説明する。ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101は、セラミックス基板11と回路層12のうちの第1層121及び金属層13とを接合した後(第1接合工程)、第1層121の表面に第2層122、金属層13の表面に放熱側接合材14、さらに放熱側接合材14の表面にヒートシンク15Aをそれぞれ接合すること(第2接合工程)により製造される。
【0034】
[第1接合工程]
図3(a)に示すように、セラミックス基板11の一方の面にろう材41を介して回路層12のうちの第1層121となる第1層アルミニウム板121aを積層し、他方の面にもろう材41を介して金属層13となる金属層アルミニウム板13aを積層する。そして、これらの積層体を積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下で接合温度に加熱することにより、各層がろう材41を介して接合され、一体に形成される。
これらの接合には、Al−Si系等の合金のろう材を箔の形態で用いるとよい。なお、Mgを含有するろう材を用いる場合には、真空雰囲気中ではなく、非酸化性雰囲気中でろう付けできる。ろう付け接合時の条件としては、例えば、加圧力が0.1MPa〜1.0MPa、加熱温度が630℃〜650℃とされ、この加圧及び加熱状態を10分〜50分保持する。
【0035】
[第2接合工程]
図3(b)に示すように、第1接合工程により得られた接合体30の第1層121に、第2層122となる第2層銅板122aを積層し、金属層13に放熱側接合材14となる接合板14aを介してヒートシンク15Aを積層する。そして、これらの積層体を積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下で接合温度に加熱することにより、第1層121と第2層122、金属層13と放熱側接合材14、放熱側接合材14とヒートシンク15Aを、それぞれ固相拡散接合する。この場合の加圧力としては例えば0.5MPa〜2.0MPa、加熱温度としては500℃〜540℃とされ、この加圧及び加熱状態を30分〜120分保持する。これにより、第1層121と第2層122、金属層13と放熱側接合材14、放熱側接合材14とヒートシンク15Aが同時に接合され、図1に示すように、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101が得られる。
【0036】
なお、本実施形態においては、第1層121と第2層122、金属層13と放熱側接合材14、放熱側接合材14とヒートシンク15Aの、それぞれの接合面は、予め傷が除去されて平滑にされた後に固相拡散接合される。また、固相拡散接合における真空加熱の好ましい加熱温度は、アルミニウムと銅の共晶温度−5℃以上、共晶温度未満の範囲とされる。
【0037】
このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板101は、上述したように、回路層12の第2層122に銅材を用い、ヒートシンク15Aにアルミニウム材を用い、第2層122をアルミニウムよりも導電性に優れた銅により構成している。そして、ヒートシンク15Aにアルミニウムの純度が低く、剛性の高い、すなわち耐力の高いアルミニウム材を用いるとともに、金属層13とヒートシンク15Aとの間の放熱側接合材14に銅材を用い、これらの組み合わせにおいて、25℃(室温)における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}を0.70以上1.30以下の範囲に調整することにより、セラミックス基板11を中心とした対称構造を構成している。
【0038】
このように、本実施形態では、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101を構成する各部材の剛性を耐力だけではなく、各部材の体積を接合面積で除した相当板厚と各部材の線膨張係数を加えた関係式(比率)で評価している。このため、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101のように、複数の小回路層21〜23を並べて回路層12をパターン化した構成においても、セラミックス基板11を中心とした対称構造を容易に構成でき、加熱時における反りの発生を防止できる。
【0039】
また、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101において、セラミックス基板11と接合される第1層121と金属層13には、純度99.99質量%以上の比較的軟らかい、すなわち耐力の低いアルミニウム板を配置しているので、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101の加熱時等にセラミックス基板11にかかる熱応力を低減させて割れが生じることを防止できる。したがって、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板101の加熱時等にセラミックス基板11の両面に作用する応力に偏りが生じにくく、素子91の実装工程持や使用環境において反りの発生を抑制できる。このため、パワーモジュール201の接合信頼性を向上でき、良好な放熱性を発揮できる。
【0040】
さらに、本実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板101は、ヒートシンク15Aに放熱側接合材14との接合面よりも大面積の天面部51を形成しているので、素子91が実装されたパワーモジュール201をモールディング樹脂93等で封止する際に、モールディング樹脂93との接着面積を広く設けることができる。したがって、素子91とヒートシンク付きパワーモジュール用基板101との接合信頼性を向上できる。
【0041】
(第2実施形態)
前述した第1実施形態においては、ヒートシンク15Aが平板状の天面部51からなる構成とされていたが、図5及び図6に示す第2実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板102(パワーモジュール202)のように、複数のピンフィン53を配設したヒートシンク15Bを備える構成も、本発明に含まれる。この第2実施形態において第1実施形態との共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
第2実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板102及びパワーモジュール202において、パワーモジュール用基板10A及び放熱側接合材14の構成は第1実施形態と同様であるが、図5及び図6に示すように、ヒートシンク15Bが天面部51の下面に複数のピンフィン53を立設した形状とされる。ヒートシンク15Bは、複数のピンフィン53を有していることから、全体の体積V3は天面部51とピンフィン53とを含めた値となり、この体積V3からヒートシンク15Bの相当板厚t3が求められる。
【0042】
そして、このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板102において、25℃(室温)における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}が0.70以上1.30以下となる関係に調整される。
【0043】
このヒートシンク付きパワーモジュール用基板102においても、25℃における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}を上記範囲内に調整することにより、セラミックス基板11を中心とした対称構造を構成でき、加熱時における反りの発生を防止できる。
【0044】
(第3実施形態)
図7及び図8は、第3実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板103(パワーモジュール203)を示している。この第3実施形態においても、第1実施形態及び第2実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
第3実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板103及びパワーモジュール203において、パワーモジュール用基板10A及び放熱側接合材14の構成は第1実施形態と同様であるが、図8に示すように、ヒートシンク15Cが天面部51の周縁から回路層12側に向けて立設された周壁部54を有しており、ヒートシンク15Cの上面には天面部51と周壁部54とで囲まれた収容凹部55が設けられている。そして、この収容凹部55の底面と放熱側接合材14とが固相拡散接合されることにより、放熱側接合材14を介してパワーモジュール用基板10Aとヒートシンク15Cとが接合され、ヒートシンク15Cの収容凹部55に少なくとも放熱側接合材14の一部が収容されている。
【0045】
このように、ヒートシンク15Cは周壁部54を有していることから、全体の体積V3が天面部51とピンフィン53とに加えて周壁部54を含めた値となり、この体積V3からヒートシンク15Cの相当板厚t3が求められる。そして、このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板103において、25℃(室温)における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}が0.70以上1.30以下となる関係に調整される。
【0046】
ヒートシンク付きパワーモジュール用基板103においても、25℃における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}を上記範囲内に調整することにより、セラミックス基板11を中心とした対称構造を構成でき、加熱時における反りの発生を防止できる。
また、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板103では、ヒートシンク15Cに周壁部54で囲まれた収容凹部55を形成しているので、素子91が実装されたパワーモジュール203をモールディング樹脂93等で封止する際に、モールディング樹脂93との接着面積をさらに広く設けることができる。したがって、素子91とヒートシンク付きパワーモジュール用基板103との接合信頼性を向上できる。
【0047】
(第4実施形態)
図9及び図10は、第4実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板104(パワーモジュール204)を示している。この第4実施形態においても、上記の第1〜第3実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を簡略化する。
第4実施形態のヒートシンク付きパワーモジュール用基板104及びパワーモジュール204において、放熱側接合材14及びヒートシンク15Aの構成は第1実施形態と同様であるが、図9及び図10に示すように、回路層12の第2層122に、第1層121よりも外方に突出する端子部123が一体に形成されている。そして、この端子部123に外部接続用のリードフレーム94がはんだ等により接続されている。
【0048】
このように、第2層122は端子部123を有していることから、全体の体積V1が端子部123を含めた値となり、この体積V1から第2層122の相当板厚t1が求められる。そして、このように構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板104において、25℃(室温)における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}が0.70以上1.30以下となる関係に調整される。
【0049】
ヒートシンク付きパワーモジュール用基板104においても、25℃における比率(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}を上記範囲内に調整することにより、セラミックス基板11を中心とした対称構造を構成でき、加熱時における反りの発生を防止できる。このように、回路層12やヒートシンク15Aの形状が種々のバリエーションで構成されるヒートシンク付きパワーモジュール用基板104においても、各部材の剛性だけではなく、各部材の体積を接合面積で除した相当板厚と各部材の線膨張係数とを加えた関係式で評価することにより、セラミックス基板11を中心とした対称構造を構成でき、加熱時における反りの発生を防止できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の効果を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0052】
発明例1〜10及び比較例1〜3の試料を構成する部材には、板厚0.635mmのAlNからなるセラミックス基板と、板厚0.6mmの4N‐Alからなる第1層及び金属層とを用意するとともに、回路層の第2層、放熱側接合材及びヒートシンクについて表1に示す材質、相当板厚、接合面積、線膨張係数(CTE)、耐力のものを用意した。
【0053】
表1の「実施形態」は、各試料の第2層及びヒートシンクが、どの実施形態の形態(形状)で形成されたかを示している。なお、表1における「25℃における比率」は、(A1×t1×σ1×α1)/{(A2×t2×σ2×α2)+(A3×t3×σ3×α3)}を示す。また、「25℃における耐力」は、JIS規格G0567:2012に基づく方法により計測した。
【0054】
これらを第1実施形態で述べた製造方法により接合して、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板の試料を作製した。そして、得られた各試料につき、接合後の常温(25℃)時における反り量(初期反り)、280℃加熱時の反り量(加熱時反り)をそれぞれ測定した。反り量は、ヒートシンクの背面の中心部分(40mm×40mmの範囲)における平面度の変化をモアレ式三次元形状測定機で測定した。そして、初期反りと加熱時反りとの差分が150μm以下の場合を反り量が少なく良「○」、差分が150μmを超えた場合を反り量が大きく否「×」と評価した。表1に結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1からわかるように、「25℃における比率」が0.70以上1.30以下の範囲内になる発明例1〜10では、初期反りと加熱時反りとの差分が小さくなり、加熱時における反り量が小さいヒートシンク付きパワーモジュール用基板が得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0057】
10A,10B パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
13 金属層
13a 金属層アルミニウム板
14 放熱側接合材
14a 接合板
15A,15B,15C ヒートシンク
21,22,23 小回路層
30 接合体
51 天面部
52 取付孔
53 ピンフィン
54 周壁部
55 収容凹部
91 素子(半導体素子)
92,94 リードフレーム
93 モールディング樹脂
101,102,103,104 ヒートシンク付きパワーモジュール用基板
121 第1層
121a 第1層アルミニウム板
122 第2層
122a 第2層銅板
123 端子部
201,202,203,204 パワーモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10