(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下端部取り付け部材の前記第1の取り付け面と、前記コンクリート表面との間に、目地材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洪水防止止水構造。
前記上端部補強部材は、略直交する位置関係にある2つの外側面を有し、前記2つの外側面のうちの一方の外側面は上方を向いており、前記2つの外側面のうちの他方の外側面は、前記止水パネルの止水面と平行に配置されて該止水パネルの上端部に機械的に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の洪水防止止水構造。
隣接する前記側端部板状体のうちの一方には、水平方向に長い長孔が設けられており、隣接する前記側端部板状体のうちの他方には、鉛直方向に長い長孔が設けられており、前記水平方向に長い長孔および前記鉛直方向に長い長孔には、ボルトが挿通されており、該ボルトによって、隣接する前記側端部板状体同士は連結されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の洪水防止止水構造。
少なくとも一部の表面がコンクリートである地盤に立設される支柱と、水域の岸に沿って配置されて前記支柱に取り付けられる止水パネルと、互いに略直交する位置関係にある第1及び第2の取り付け面を有して前記止水パネルの下端部と前記地盤との間を固定する下端部取り付け部材と、を有する洪水防止止水構造の構築方法であって、
前記支柱を前記水域の岸に沿って前記地盤に立設する支柱立設工程と、
前記下端部取り付け部材の前記第1の取り付け面を前記地盤の前記コンクリート表面と平行に配置し、該コンクリート表面にアンカーボルトで固定する地盤取り付け工程と、
前記地盤取り付け工程で前記地盤の前記コンクリート表面に固定された前記下端部取り付け部材の前記第2取り付け面と前記止水パネルの止水面とが平行になるように前記止水パネルを配置し、前記止水パネルの下端部を前記第2の取り付け面に固定する止水パネル下端部取り付け工程と、
前記支柱に前記止水パネルを取り付ける止水パネル支柱取り付け工程と、
を有することを特徴とする洪水防止止水構造の構築方法。
前記支柱立設工程は、前記支柱を前記地盤表面のコンクリートにアンカーボルトで固定する工程であることを特徴とする請求項13に記載の洪水防止止水構造の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、対象とする水域の岸に沿う方向に延びる止水パネルを、硬化したコンクリート表面との間で止水性を保った形で、かつ簡易な構造で設けることができる洪水防止止水構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の洪水防止止水構造により、前記課題を解決したものである。
【0008】
即ち、本発明に係る洪水防止止水構造は、水域の岸に沿って設けられる洪水防止止水構造であって、少なくとも一部の表面がコンクリートである地盤に立設された支柱と、前記水域の岸に沿って配置され、前記支柱に取り付けられた止水パネルと、前記水域の岸に沿う方向に所定の長さを持ち、前記止水パネルの下端部と前記地盤との間を固定するために設けられた下端部取り付け部材と、を有してなり、前記下端部取り付け部材は互いに略直交する位置関係にある第1及び第2の取り付け面を有し、前記止水パネルの下端部と前記地盤との間の固定は、前記第1の取り付け面を前記地盤の前記コンクリート表面に平行に配置して該コンクリート表面にアンカーボルトで固定するとともに、前記止水パネルの止水面が前記第2の取り付け面と平行となるように前記止水パネルを配置して、前記第2の取り付け面に前記止水パネルの下端部を固定してなされることを特徴とする洪水防止止水構造である。
【0009】
ここで、本願において止水パネルの止水面とは、水域に面する面のことであり、洪水時に水域から溢れ出た水を堰き止める面のことである。
【0010】
また、前記第2の取り付け面に前記止水パネルの下端部を固定する際には、機械的に固定してもよい。ここで、「機械的に固定」とは、力学的な作用により固定することであり、具体的には例えば、ボルトおよびナット等により固定することである。
【0011】
前記支柱は、前記水域の岸に沿って複数設けられ、また、前記下端部取り付け部材の前記所定の長さは、複数設けられた前記支柱間の長さ、または前記止水パネルの前記水域の岸に沿う方向の端部と該端部から最も近い前記支柱との間の長さに対応しているようにしてもよい。
【0012】
前記支柱は、前記地盤表面のコンクリートにアンカーボルトで固定されているように構成してもよい。
【0013】
前記下端部取り付け部材の前記第1の取り付け面と、前記コンクリート表面との間に、目地材を設けてもよい。
【0014】
前記洪水防止止水構造は、必要に応じて上端部板状体を有してもよく、前記上端部板状体は、長手方向が前記止水パネルの前記水域の岸に沿う方向となるように配置されるとともに、前記止水パネルの上端部に溶接で取り付けられていて、対向する最大面積の面のうちの一方の面が上方を向いているように構成してもよい。
【0015】
前記洪水防止止水構造は、必要に応じて、前記止水パネルの上端部に取り付けられた上端部補強部材を有してもよく、前記上端部補強部材は、長手方向が前記止水パネルの前記水域の岸に沿う方向となるように、前記止水パネルの上端部に機械的に固定されているように構成してもよい。
【0016】
前記上端部補強部材は、略直交する位置関係にある2つの外側面を有し、前記2つの外側面のうちの一方の外側面は上方を向いており、前記2つの外側面のうちの他方の外側面は、前記止水パネルの止水面と平行に配置されて該止水パネルの上端部に機械的に固定されているように構成してもよい。
【0017】
前記止水パネルは、上端部が略直角となるように折り曲げられているように構成してもよい。
【0018】
前記洪水防止止水構造は、必要に応じて側端部板状体を備えてもよく、前記側端部板状体は、前記止水パネルの、前記水域の岸に沿う方向の両端部に溶接で取り付けられ、前記止水パネルの下端部から上端部にわたって配置され、前記側端部板状体の対向する最大面積の面は、前記止水パネルと直交しているように構成してもよい。
【0019】
前記支柱および前記止水パネルは、前記水域の岸に沿って複数設けられ、前記水域の岸に沿う方向に隣り合う前記止水パネルに取り付けられた前記側端部板状体のうち、隣接する前記側端部板状体同士の間の少なくとも一部に、前記止水パネルの略高さ方向に目地材が設けられているように構成してもよい。
【0020】
隣接する前記側端部板状体のうちの一方には、水平方向に長い長孔が設けられており、隣接する前記側端部板状体のうちの他方には、鉛直方向に長い長孔が設けられており、前記水平方向に長い長孔および前記鉛直方向に長い長孔には、ボルトが挿通されており、該ボルトによって、隣接する前記側端部板状体同士は連結されているように構成してもよい。
【0021】
前記支柱は、既存の車両用防護柵が取り付けられている既存の支柱であってもよい。
【0022】
本発明に係る洪水防止止水構造の構築方法は、少なくとも一部の表面がコンクリートである地盤に立設される支柱と、水域の岸に沿って配置されて前記支柱に取り付けられる止水パネルと、互いに略直交する位置関係にある第1及び第2の取り付け面を有して前記止水パネルの下端部と前記地盤との間を固定する下端部取り付け部材と、を有する洪水防止止水構造の構築方法であって、前記支柱を前記水域の岸に沿って前記地盤に立設する支柱立設工程と、前記下端部取り付け部材の前記第1の取り付け面を前記地盤の前記コンクリート表面と平行に配置し、該コンクリート表面にアンカーボルトで固定する地盤取り付け工程と、前記地盤取り付け工程で前記地盤の前記コンクリート表面に固定された前記下端部取り付け部材の前記第2取り付け面と前記止水パネルの止水面とが平行になるように前記止水パネルを配置し、前記止水パネルの下端部を前記第2の取り付け面に固定する止水パネル下端部取り付け工程と、前記支柱に前記止水パネルを取り付ける止水パネル支柱取り付け工程と、を有することを特徴とする洪水防止止水構造の構築方法である。
【0023】
前記支柱立設工程は、前記支柱を前記地盤表面のコンクリートにアンカーボルトで固定する工程であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、対象とする水域の岸に沿う方向に延びる止水パネルを、硬化したコンクリート表面との間で止水性を保った形で、かつ簡易な構造で設けることができる洪水防止止水構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態に係る洪水防止止水構造の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を示す正面図であり、
図2は
図1のII−II線断面図であり、
図3は
図1のIII−III線断面図であり、
図4は
図1のIV−IV線端面図であり、
図5は
図1のV−V線断面図であり、
図6は
図1のVI−VI線断面図であり、
図7は
図1のVII−VII線断面図であり、
図8は
図1のVIII−VIII線断面図であり、
図9は
図1のIX−IX線端面図である。
図9では、アンカーボルト22を破線で記載している。また、
図5において、ナット26Bは本来隠れ線(破線)で描くべきであるが、図示の都合上、実線で描いている。また、隣接する側端部板状体18、19の間に設けた目地材24は、
図7においてハッチングで示している。
【0028】
本発明の第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、支柱12と、止水パネル14と、下端部取り付け部材16と、側端部板状体18、19と、上端部板状体20と、アンカーボルト22と、目地材24と、Uボルト26と、を有してなる。
【0029】
支柱12は、少なくとも一部の表面がコンクリートである地盤に下部が埋め込まれて立設され、水域の岸に沿って複数設けられる柱部材であり、止水パネル14を保持する部材である。本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10においては、1枚の止水パネル14に対して1本の支柱12を配置している。支柱12は、円筒状の形状であり、その断面形状(長手方向と直交する面で切断して得られる断面形状)は、具体的には例えば、外径が100〜120mm程度で、厚さが4.5mm程度である。支柱12の全長は、具体的には例えば、1.0m〜2.4m程度であり、支柱12の下部は、地盤に深さ0.2m〜1.7m程度埋め込まれている。
【0030】
ただし、支柱12の前記した寸法は、具体的な寸法例を示しただけであり、支柱12の形状が、前記した寸法に限定されるわけではなく、施工現場の実情に合わせて、前記した具体的な寸法例から外れる寸法を採用してもよい。例えば、地盤に埋め込んだ支柱12の下部の周囲をコンクリートやモルタル等で固めたり、地盤に埋め込んだ支柱12の下端に、水平方向に鋼板に取り付けるとともに、ブラケットやアンカーを設ける等の工夫を行うことにより、地盤に埋め込む支柱12の長さを短くすることも可能であり、結果として、支柱12の全長を短くすることも可能である。
【0031】
また、支柱12の形状は円筒状でなくてもよく、例えば角筒状であってもよい。また、既存の支柱を用いることも可能であり、例えば、既存の車両用防護柵が取り付けられている既存の支柱を支柱12として用いることも可能である。
【0032】
また、支柱12は、下部が地盤に埋め込まれて立設される態様に必ずしも限定されるわけではなく、例えば、地盤表面の硬化したコンクリート100にアンカーボルトで固定して立設する態様とすることも可能である。この態様の場合、具体的には例えば、支柱12の下端部側面と地盤表面の硬化したコンクリート100との間に、断面がL形の鋼材を配置して、該L形の鋼材の一方の部位を硬化したコンクリート100にアンカーボルトで固定するとともに、該L形の鋼材の他方の部位をボルトおよびナット等で支柱12と連結するようにしてもよい。また、前記L形の鋼材に代え、支柱12の地盤表面と対向する下端部底面に平板状取り付け部材を取り付け、この平板状取り付け部材を地盤表面の硬化したコンクリート100にアンカーボルトで固定するようにしてもよい。
【0033】
止水パネル14は、例えば厚さ3.2mm〜6mm程度の鋼板からなるパネルで、板状体であり、水域の岸に沿う方向に配置されている。止水パネル14の大きさは、水域の岸に沿う方向の幅が2〜3m程度で、高さが0.5m〜1m程度であり、止水パネル14は、幅方向の中央部において支柱12に取り付けられて、水域の岸に沿って鉛直に立設されて設けられていて、水域から水があふれ出たときに、止水パネル14の止水面14Xが溢れ出た水を堰き止める。ただし、止水パネル14の厚さおよび大きさは、安全性を照査した上で、現場の状況に応じて適宜に変更してもよい。
【0034】
また、止水パネル14の表面に、防食のための処理を施してもよく、防食のための処理としては、例えば、溶融亜鉛メッキやモルタル吹き付け、塗装等を挙げることができる。止水パネル14にステンレス鋼を用いた場合には、防食のための処理を施さないようにすることもできる。支柱12、下端部取り付け部材16、側端部板状体18、19、上端部板状体20、およびUボルト26の表面にも、防食処理を施してもよく、支柱12、下端部取り付け部材16、側端部板状体18、19、上端部板状体20、およびUボルト26に対する防食対策の内容は、前記した止水パネル14についての防食対策と同様である。
【0035】
本第1実施形態では、止水パネル14の支柱12への取り付けにUボルト26を用いており、
図1、5、6に示すように、支柱12を抱え込むようにUボルト26を配置し、Uボルト26の両端部を止水パネル14および補強鋼板14Aに挿通させて、Uボルト26の両端部をナット26Aおよびナット26Bで止水パネル14および補強鋼板14Aに取り付けている。補強鋼板14Aは、止水パネル14の幅方向中央部付近に溶接した鋼板であり、Uボルト26の取り付け箇所を補強している。
【0036】
また、本第1実施形態では、1枚の止水パネル14が1本の支柱12に取り付けられているが、1枚の止水パネル14に複数本の支柱12を取り付けて支持させてもよく、この場合には、止水パネル14の幅を大きくすることができる。例えば、止水パネル14の幅を4mにして2本の支柱12を取り付けてもよく、この場合には、例えば、止水パネル14の両側端部(水域の岸に沿う方向の両端部)からそれぞれ1m程度の位置にそれぞれ支柱12を取り付けて止水パネル14を支持させてもよい。また、支柱12の間隔と止水パネル14の幅とは適宜に変更可能である。
【0037】
また、止水パネル14は、全体が一体的に形成されたものでなくてもよく、例えば他の部材を介して連結して1枚の止水パネルとしたものでもよい。また、例えば溶接により連結して1枚の止水パネルとしたものでもよい。
【0038】
また、止水パネル14は、安全性を照査した上で、支柱12の水域側の側面に取り付けても、水域と反対側の側面に取り付けても、どちらでもよい。止水パネル14を、支柱12の水域側の側面に取り付けた場合には、水域から溢れ出た水から止水パネル14が受けた水圧は、支圧で支柱12に伝達することができる。また、本第1実施形態では、前述したように、止水パネル14の支柱12への取り付けに、支柱12を抱え込むように配置したUボルト26を用いているので、止水パネル14を水域と反対側の支柱12の側面に取り付けた場合でも、Uボルト26を介して支柱12に水圧を伝達することができる。
【0039】
また、止水パネル14の支柱12への取り付けは、Uボルト26を用いた態様に限定されるわけではなく、安全性を照査した上で、適宜に取り付け態様を変更してもよい。止水パネル14の支柱12への取り付けを溶接で行うことも可能である。
【0040】
下端部取り付け部材16は、長手方向が止水パネル14の水域の岸に沿う方向となるように、止水パネル14の下端部に取り付けられている。下端部取り付け部材16は、長手方向と直交する面で切断した断面がL形であるL状体であり、鋼材であってもよい。このL状体を構成する一方の部位16A(硬化したコンクリート100の表面に沿う部位)の幅は例えば100mm程度であり、他方の部位16B(止水パネル14に沿う部位)の幅(上下方向の幅)は例えば100mm程度である。下端部取り付け部材16の一方の部位16Aおよび他方の部位16Bの厚さは、6mm〜12mm程度である。また、
図1、2に示すように、下端部取り付け部材16は、支柱12の位置において2本に分断されており、下端部取り付け部材16の長さは、止水パネル14の水域の岸に沿う方向の幅の半分弱であり、1〜2m弱である。なお、1枚の止水パネル14に複数本の支柱12を取り付ける場合、その複数本の支柱12のうちの隣接する支柱12の間に配置する下端部取り付け部材16の長さは、その隣接する支柱12の間の長さに対応する長さにするのがよい。
【0041】
また、前述したように、下端部取り付け部材16は、長手方向と直交する面で切断した断面がL形であるL状体であり、一方の部位16Aの取り付け面16A1と他方の部位16Bの取り付け面16B1とは、略直交する位置関係にある。
図9に示すように、一方の部位16Aの取り付け面16A1は、一方の部位16Aの側面のうち、他方の部位16Bが位置する側とは反対側の側面であり、他方の部位16Bの取り付け面16B1は、他方の部位16Bの側面のうち、一方の部位16Aが位置する側とは反対側の側面である。
【0042】
下端部取り付け部材16の一方の部位16Aは、水平に配置される部位であり、
図9に示すように、一方の部位16Aの取り付け面16A1は、硬化したコンクリート100の表面と平行に配置されており、アンカーボルト22およびナット22Aによって、硬化したコンクリート100の表面に固定されている。アンカーボルト22の種類は特には限定されず、コンクリート打設前に所定の位置に配置しておき、その状態でコンクリートを打設してコンクリートに埋め込むタイプのアンカーボルト(以下、通常タイプのアンカーボルトと記す。)を使用してもよく、あるいは、あと施工アンカーボルトを使用してもよい。あと施工アンカーボルトは、接着系アンカーボルトおよび金属系アンカーボルトのどちらも使用可能である。
【0043】
下端部取り付け部材16の一方の部位16Aを、硬化したコンクリート100へ取り付ける際には、硬化したコンクリート100に取り付けたアンカーボルト22に、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aに設けた貫通孔を挿通させて、下端部取り付け部材16を硬化したコンクリート100の表面に配置する。そして、その状態でアンカーボルト22の上端部にナット22Aを取り付けて締め込むことで、硬化したコンクリート100の表面に不陸があっても、その不陸の形状に追随するように、下端部取り付け部材16がある程度変形する。このため、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、硬化したコンクリート100の表面に不陸があっても、その不陸の形状に追随するようにある程度変形して、下端部取り付け部材16が、硬化したコンクリート100の表面に取り付けられるので、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間の隙間が小さくなっており、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性が良好になっている。
【0044】
また、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間には、目地材24が配置されており、目地材24によってさらに隙間が埋められているので、さらに止水性が良好になっている。ただし、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、前述したように、硬化したコンクリート100の表面の不陸の形状に追随するように、下端部取り付け部材16がある程度変形して取り付けられるので、目地材24は必ず設けなくてはならないというわけではなく、必要に応じて設ければよい。
【0045】
前記のようにして、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aを、硬化したコンクリート100の表面に固定した後、下端部取り付け部材16の他方の部位16B(鉛直に配置される部位)の取り付け面16B1(
図9参照)に止水パネル14の下端部を取り付ける。その際には、下端部取り付け部材16の他方の部位16Bに設けた貫通孔に、止水パネル14の下端部に設けた貫通孔を合わせて、それらの貫通孔を挿通するようにボルト16Cを差し込むとともに、支柱12を抱え込むように配置するUボルト26の両端部を止水パネル14の中央部付近に設けた貫通孔および補強鋼板14Aに設けた貫通孔に挿通させて、止水パネル14の止水面14Xが取り付け面16B1と平行になるように止水パネル14を配置し、その状態で、ボルト16Cの端部をナット16Dで締め込み、Uボルト26の両端部をナット26Aおよびナット26Bで締め込む。
【0046】
以上説明したように、下端部取り付け部材16は、硬化したコンクリート100の表面との隙間を小さくしつつ、硬化したコンクリート100の表面に止水パネル14を取り付けて、洪水防止止水構造10の止水性を良好にすることができる。また、下端部取り付け部材16は、止水パネル14の下端部を補強する役割も果たしている。また、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間に目地材24を配置する場合には、下端部取り付け部材16は、目地材を保持する役割も果たす。
【0047】
側端部板状体18、19は、厚さが6mm〜12mm程度で幅(止水パネル14と直交する方向の幅)が100mm程度、長さが0.5m〜1m程度の細長い鋼板からなる板状体であり、対向する最大面積の面が止水パネル14と直交するような配置状態で、長手方向が上下方向となるように、止水パネル14の両端部(水域の岸に沿う方向の両端部)に溶接で取り付けられている。1つの止水パネル14において、水域の岸に沿う方向の一端部に側端部板状体18が設けられ、他端部に側端部板状体19が設けられている。
【0048】
側端部板状体18には、
図7に示すように、鉛直方向に長い長孔18Aが設けられており、側端部板状体19には、
図8に示すように、水平方向に長い長孔19Aが設けられている。長孔18Aと長孔19Aとは、対応する位置に設けられており、隣接する側端部板状体18、19は、長孔18A、19Aを挿通するボルト28によって、位置を微調整しつつ構造的に連結できるようになっている。
【0049】
隣り合う洪水防止止水構造10の隣接する側端部板状体18、19の間には、目地材24が設けられており、隣接する側端部板状体18、19の間の隙間が塞がれている。
【0050】
したがって、側端部板状体18、19は、止水パネル14を補強する役割だけでなく、隣接する側端部板状体18、19の間に目地材24を保持し、隣接する側端部板状体18、19の間の隙間を塞ぐ役割も有する。
【0051】
また、隣接する側端部板状体18、19の間を目地材24で塞ぐだけでなく、隣接する側端部板状体18、19をボルト28およびナット28Aによって構造的に連結することが好ましい。隣り合う洪水防止止水構造10同士を構造的に連結することにより、洪水時に流木等が1つの洪水防止止水構造10に衝突しても、その際に加わる外力は隣の洪水防止止水構造10にも伝達されるので、流木等が衝突した洪水防止止水構造10が倒壊することを防止することができる。
【0052】
上端部板状体20は、厚さが6mm〜12mm程度で幅(止水パネル14と直交する方向の幅)が100mm程度、長さが1m弱程度(止水パネル14の水域の岸に沿う方向の幅の半分弱の長さ)の細長い鋼板からなる板状体であり、止水パネル14の上端部において、長手方向が止水パネル14の水域の岸に沿う方向となるように、溶接で取り付けられている。
【0053】
上端部板状体20の一端部(止水パネル14の水域の岸に沿う方向の一端部)は、側端部板状体18、19の上端部の側面に当接し、側端部板状体18、19の上端部の側面に溶接されている。
【0054】
目地材24は、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間の隙間を塞ぐ役割、および隣接する側端部板状体18、19の間の隙間を塞ぐ役割を有する。また、目地材24は、止水パネル14の熱膨張および熱収縮を吸収する役割も有する。
【0055】
目地材24は、水域の側とその反対側とを連通する隙間を残さないように、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aの取り付け面16A1と硬化したコンクリート100の表面との間の少なくとも一部に、止水パネル14に沿う水平方向に途切れることなく、一列状に設ける。また、
図2に示すように、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aの支柱12側の端部と支柱12との間の領域にも、硬化したコンクリート100の表面上に目地材24を設ける。
【0056】
また、目地材24は、水域の側とその反対側とを連通する隙間を残さないように、隣接する側端部板状体18、19の間の少なくとも一部に、止水パネル14の略高さ方向(略鉛直方向)に途切れることなく、一列状に設ける。また、隣り合う洪水防止止水構造10の隣接する止水パネル14の側端同士の間に隙間が残る場合には、隣接する止水パネル14の側端同士の間にも目地材24を設けて、その隙間を塞ぐようにしてもよい。
【0057】
目地材24としては、弾力性があって形状追従性に優れる材料を採用することが好ましく、また、屋外での使用となるため、紫外線劣化しにくい材料を採用することが好ましい。具体的には、例えば、エラスタイトや紫外線劣化しにくいゴム等を採用することができる。
【0058】
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、前述したように、硬化したコンクリート100の表面に不陸があっても、その不陸の形状に追随するように、下端部取り付け部材16がある程度変形する。このため、その不陸の形状に追随するようにある程度変形して、下端部取り付け部材16が、硬化したコンクリート100の表面に取り付けられるので、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、硬化したコンクリート100の表面との間の隙間が小さくなっており、止水性が良好になっているが、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間には、目地材24がさらに配置されており、目地材24によってさらに隙間が埋められているので、さらに止水性が良好になっている。
【0059】
また、隣接する側端部板状体18、19の間の隙間も、前述したように目地材24で塞がれるので、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性能に優れる。
【0060】
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10で実現すべき好ましい止水性能を具体的に数値で示せば、止水パネル14の1m
2当たりの単位時間(1時間)当たりの浸水量が0.2m
3/(h・m
2)(=200L/(h・m
2))以下であり、より好ましくは0.02m
3/(h・m
2)(=20L/(h・m
2))以下である。
【0061】
また、目地材24が配置される領域の幅(止水パネル14と直交する方向の幅)は、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aおよび側端部板状体18、19の幅(止水パネル14と直交する方向の幅)である100mm程度あるので、水を遮断する領域の幅が大きく、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性能がより高められている。ただし、この100mm程度の幅に、止水パネル14の厚さである3.2mm〜6mm程度を加えても、既存の車両用防護柵設備の道路幅員方向の幅と同程度の幅であり、使用可能な道路幅員を狭くするということはない。
【0062】
また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の止水パネル14は、Uボルト26を介して支柱12に取り付けられているだけでなく、止水パネル14の下端部が下端部取り付け部材16を介して、硬化したコンクリート100の表面に強固に固定されているので、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性を確実に確保することができる。
【0063】
また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、硬化したコンクリート100の上に設けるので、洪水防止止水構造10の下方の地盤に、洪水時に洗掘が生じることも防止されている。
【0064】
なお、側端部板状体18、19および上端部板状体20は、止水パネル14に取り付けることが原則であるが、安全性を照査した上で、適宜に省略することも可能である。
【0065】
また、目地材24を配置する場合、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aの取り付け面16A1と硬化したコンクリート100の表面との間の隙間を全て埋め尽くすように配置するのが原則であるが、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aの取り付け面16A1と硬化したコンクリート100の表面との間に配置する目地材24の一部を省略してもよい。ただし、目地材24は、水域の側とその反対側とを連通する隙間を残さないように、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aの取り付け面16A1と硬化したコンクリート100の表面との間の少なくとも一部に、止水パネル14に沿う水平方向に途切れることなく、一列状に配置するのがよい。
【0066】
また、目地材24を配置する場合、隣接する側端部板状体18、19の間の隙間を全て埋め尽くすように配置するのが原則であるが、隣接する側端部板状体18、19の間の隙間に配置する目地材24の一部を省略してもよい。ただし、目地材24は、水域の側とその反対側とを連通する隙間を残さないように、隣接する側端部板状体18、19の間の少なくとも一部に、止水パネル14の略高さ方向(略鉛直方向)に途切れることなく、一列状に配置するのがよい。
【0067】
また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を水域沿いの道路の側端に設ける場合、水域とは反対の側である道路側に、車両用防護柵(図示せず)を支柱12にさらに付加して取り付けてもよい。
【0068】
以上説明したように、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、支柱12と、止水パネル14と、下端部取り付け部材16と、側端部板状体18、19と、上端部板状体20と、アンカーボルト22と、目地材24と、Uボルト26と、を有してなる簡易な構造でありながら、止水パネル14の中央部付近がUボルト26によって支柱12に確実に取り付けられており、かつ、止水パネル14の下端部は、下端部取り付け部材16およびアンカーボルト22によって、硬化したコンクリート100の表面に強固に取り付けられており、さらに、下端部取り付け部材16は、硬化したコンクリート100の表面の不陸に合わせてある程度変形することができる上に、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間には目地材24が設けられており、止水性も良好である。また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の水域の岸に沿う方向と直交する水平方向の幅は、支柱12の同方向の幅に止水パネル14の厚さを加えた程度の長さであり、小さくなっている。
【0069】
なお、図面においては、ナット16D、22A、26A、28A、42Dを袋ナットとして描いているが、ナット16D、22A、26A、28A、42Dは袋ナットに限定されるわけではない。
【0070】
(1−2)第1実施形態に係る洪水防止止水構造の構築方法
本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の部位のうち、溶接を行う部位については、工場で予め溶接してから現場に搬入する。具体的には、補強鋼板14A、側端部板状体18、19、および上端部板状体20については、止水パネル14の所定の位置に工場で溶接してから、止水パネル14と一体化した状態で現場に搬入する。
【0071】
支柱12、下端部取り付け部材16、アンカーボルト22、およびUボルト26については、他の部材と連結していない状態で現場に搬入する。
【0072】
以下、新たに支柱12を設置する場合(既存の支柱を本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の支柱12として利用しない場合)と、既存の支柱を支柱12として利用する場合に分けて説明する。
【0073】
(1−2−1)新たに支柱12を設置する場合
既存の支柱を、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の支柱12として利用せず、新たに支柱12を設置する場合には、まず支柱12を所定の位置に設置する。この場合には、支柱12を差し込む穴を所定の深さまで掘り、その穴に、洪水防止止水構造10の支柱12を、所定の深さまで差し込んで、支柱12を地盤に固定する。その際には、穴の内面と支柱12の外面との間の隙間を土やコンクリートで十分に埋めて、支柱12を固定する。そして、洪水防止止水構造10の設置対象の地盤表面を均した後、アンカーボルト22(通常タイプのアンカーボルト)を所定の鉄筋等とともに所定の位置に配置して、地盤表面に新規のコンクリートを打設して、アンカーボルト22をコンクリートに埋め込む。そして、打設したコンクリートの表面を平滑化し、所定の強度が発現するまでコンクリートを養生する。
【0074】
洪水防止止水構造10を設置する地盤表面にすでに既存のコンクリートが打設されている場合には、そのコンクリートを用いてもよい。この場合には、アンカーボルト22としてあと施工アンカーボルトを用い、既存のコンクリートの所定の位置に、あと施工アンカーボルトを固定する。
【0075】
次に、硬化したコンクリート100の表面の所定の位置に、下端部取り付け部材16の一方の部位16A(水平に配置される部位)を、アンカーボルト22およびナット22Aを用いて取り付ける。
【0076】
下端部取り付け部材16の一方の部位16Aを、硬化したコンクリート100へ取り付ける際には、硬化したコンクリート100に取り付けたアンカーボルト22に、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aに設けた貫通孔を挿通させて、下端部取り付け部材16を硬化したコンクリート100の表面に配置する。そして、その状態でアンカーボルト22の上端部にナット22Aを取り付けて締め込む。この締め込みにより、硬化したコンクリート100の表面に不陸があっても、その不陸の形状に追随するように、下端部取り付け部材16がある程度変形する。このため、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、硬化したコンクリート100の表面に不陸があっても、その不陸の形状に追随するようにある程度変形しつつ、下端部取り付け部材16が、硬化したコンクリート100の表面に取り付けられる。このため、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間の隙間が小さくなり、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10は、止水性が良好になっている。
【0077】
また、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間に目地材24を配置してから、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aを、硬化したコンクリート100へ取り付けてもよい。下端部取り付け部材16の一方の部位16Aと硬化したコンクリート100の表面との間に目地材24を設けた場合には、目地材24によってさらに隙間が埋められるので、さらに止水性が良好になる。
【0078】
前記のようにして、下端部取り付け部材16の一方の部位16Aを、硬化したコンクリート100の表面に取り付けた後、下端部取り付け部材16の他方の部位16B(鉛直に配置される部位)に止水パネル14の下端部を取り付ける。その際には、下端部取り付け部材16の他方の部位16Bに設けた貫通孔に、止水パネル14の下端部に設けた貫通孔を合わせて、それらの貫通孔を挿通するようにボルト16Cを差し込むとともに、支柱12を抱え込むように配置するUボルト26の両端部を、止水パネル14の中央部付近に設けた貫通孔および補強鋼板14Aに設けた貫通孔に挿通させて、止水パネル14の止水面14Xが取り付け面16B1と平行になるように止水パネル14を配置し、その状態で、ボルト16Cの端部をナット16Dで締め込んで、止水パネル14の下端部を下端部取り付け部材16の他方の部位16Bに連結し、Uボルト26の両端部をナット26Aおよびナット26Bで締め込んで、止水パネル14の中央部付近を支柱12に連結する。
【0079】
なお、下端部取り付け部材16の他方の部位16B(鉛直に配置される部位)の取り付け面16B1に止水パネル14の下端部を小さい固定度で仮固定しておき、その状態で下端部取り付け部材16の一方の部位16Aを、硬化したコンクリート100の表面に取り付けた後、仮固定していた他方の部位16Bを止水パネル14の下端部に本固定するとともに、Uボルト26の両端部をナット26Aおよびナット26Bで締め込んで、止水パネル14の中央部付近を支柱12に連結するようにしてもよい。
【0080】
また、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を、水域の岸に沿う方向に複数設ける場合には、隣り合う側端部板状体18、19の間に目地材24を配置して、隣接する側端部板状体18、19の位置を微調整しつつ、ボルト28を長孔18A、19Aに挿通させる。そして、ボルト28をナット28Aによって締め込んで、隣接する側端部板状体18、19を構造的に連結させるとともに、隣接する側端部板状体18、19の間の隙間をなくすようにする。この場合、側端部板状体18の側面に取り付ける目地材24については、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の側端部板状体18、19のどちらか一方の側面のみに取り付け、他方の側端部板状体18、19の側面には取り付けないようにするのがよい。
【0081】
(1−2−2)既存の支柱を支柱12として利用する場合
既存の支柱を、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の支柱12として利用する場合には、「(1−2−1)新たに支柱12を設置する場合」で前述した設置工程のうち、新たに支柱12を設置する工程を省略する以外は同様にして、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10を構築すればよい。
【0082】
(1−3)変形例
図10は、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の下端部取り付け部材16の止水パネル14との連結態様の変形例を示す端面図(
図9に対応する部位の端面図)である。
図10において、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の部材および部位と同様の部材および部位については、同一の符号を付しており、説明は省略する。
【0083】
図9に示すように、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10においては、止水パネル14の下端部は、下端部取り付け部材16の他方の部位16Bの外側の面(一方の部位16Aが位置する側とは反対側の面)である取り付け面16B1に取り付けられているが、安全性を照査した上で、
図10に示す変形例のように、止水パネル14の下端部を、下端部取り付け部材16の他方の部位16Bの内側の面(一方の部位16Aが位置する側の面)である取り付け面16B2に取り付けるようにしてもよい。他方の部位16Bの取り付け面16B2は、一方の部位16Aの取り付け面16A1と略直交する位置関係にある。
【0084】
図11は、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の下端部取り付け部材16の第1変形例である下端部取り付け部材30を示す端面図(
図9に対応する部位の端面図)であり、
図12は本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の下端部取り付け部材16の第2変形例である下端部取り付け部材32を示す端面図(
図9に対応する部位の端面図)である。
図11および
図12において、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の部材および部位と同様の部材および部位については、同一の符号を付しており、説明は省略する。
【0085】
図11に示すように、下端部取り付け部材16の第1変形例である下端部取り付け部材30は、長手方向と直交する面で切断して得られる断面形状が逆T形になっており、この逆T形を構成する一方の部位30A(硬化したコンクリート100の表面に沿う部位(フランジ部))の幅は例えば200mm程度であり、他方の部位30B(止水パネル14に沿う部位(ウェブ部))の高さは例えば100mm程度である。下端部取り付け部材30の一方の部位30Aおよび他方の部位30Bの厚さは、6mm〜12mm程度である。
【0086】
第1変形例である下端部取り付け部材30は、他方の部位30Bによって隔てられた一方の部位30Aのそれぞれの側に配置されたアンカーボルト22によって、一方の部位30Aが硬化したコンクリート100の表面に固定され、止水パネル14は、その下端部が下端部取り付け部材30の他方の部位30Bに取り付けられて固定される。このため、第1変形例である下端部取り付け部材30を用いることにより、硬化したコンクリート100の表面に、止水パネル14をより強固に固定することができる。
【0087】
第2変形例である下端部取り付け部材32は、
図12に示すように、長手方向と直交する面で切断して得られる断面形状がL形になるように鋼板を折り曲げて作製した部材であり、本第1実施形態に係る洪水防止止水構造10の下端部取り付け部材16よりも安価である。
【0088】
また、折り曲げる前の鋼板の状態で、硬化したコンクリート100の表面にアンカーボルト22によって固定し、その後、その鋼板を折り曲げて下端部取り付け部材32に加工する場合には、剛性が小さい鋼板の状態で、硬化したコンクリート100の表面に固定することになるので、硬化したコンクリート100の表面に不陸があっても、その不陸の形状に追随するように変形しやすく、硬化したコンクリート100の表面との間の隙間をより小さくすることができる。
【0089】
(2)第2実施形態
図13は、本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造40を示す正面図であり、
図14は
図13のXIV−XIV線断面図であり、
図15は
図13のXV−XV線端面図である。
【0090】
本発明の第2実施形態に係る洪水防止止水構造40は、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10で用いていた上端部板状体20を、上端部補強部材である上端部L状体42に変更して、この上端部L状体42をボルト42Cおよびナット42Dで止水パネル14の上端部に取り付けた実施形態である。この点以外は、本第2実施形態に係る洪水防止止水構造40は、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10と同様であるので、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10で用いた部材および部位と同様の部材および部位については、同一の符号を付しており、説明は省略する。
【0091】
上端部L状体42は、長手方向と直交する面で切断した断面がL形であるL状体であり、一方の部位42Aの外側面42A1と他方の部位42Bの外側面42B1とは、略直交する位置関係にある。
図15に示すように、一方の部位42Aの外側面42A1は、一方の部位42Aの側面のうち、他方の部位42Bが位置する側とは反対側の側面であり、他方の部位42Bの外側面42B1は、他方の部位42Bの側面のうち、一方の部位42Aが位置する側とは反対側の側面である。上端部L状体42は、鋼材であってもよい。
【0092】
上端部L状体42は、一方の部位42Aの外側面42A1が上方を向くように止水パネル14の上端に沿って配置されていて、その幅(止水パネル14と直交する方向の幅)は例えば100mm程度であり、他方の部位42B(止水パネル14に沿う部位)の幅(上下方向の幅)は例えば100mm程度である。上端部L状体42の一方の部位42Aおよび他方の部位42Bの厚さは、6mm〜12mm程度である。また、
図13および
図14に示すように、上端部L状体42は、支柱12の位置において2本に分断されており、上端部L状体42の長さは、止水パネル14の水域の岸に沿う方向の幅の半分弱であり、1〜2m弱である。
【0093】
上端部L状体42の他方の部位42B(鉛直に配置される部位)は、止水パネル14の上端部に取り付けられる部位であり、上端部L状体42の他方の部位42Bに設けた貫通孔を、止水パネル14の上端部に設けた貫通孔に合わせて配置し、それらの貫通孔を挿通するようにボルト42Cを差し込み、他方の部位42Bの外側面42B1が止水パネル14の止水面14Xと平行になるように上端部L状体42を配置する。そして、ボルト42Cの端部をナット42Dで締め込んで、上端部L状体42を止水パネル14の上端部に取り付ける。上端部L状体42を予め工場等で止水パネル14の上端部へ取り付けて、上端部L状体42が取り付けられた状態の止水パネル14を現場に搬入した方が、現場作業を少なくでき好ましいが、上端部L状体42を止水パネル14上端部へ取り付けた後に溶融亜鉛メッキ等のメッキ処理を行わないのであれば、上端部L状体42と止水パネル14とを別々の状態で現場に搬入して、現場作業で上端部L状体42を止水パネル14の上端部へ取り付けてもよい。
【0094】
上端部L状体42の止水パネル14上端部への取り付けを、工場で行うのか現場で行うのかに関わらず、上端部L状体42は、ボルト42Cおよびナット42Dによって止水パネル14の上端部に取り付けられ、溶接は用いないで取り付けられる。このため、本第2実施形態に係る洪水防止止水構造40は、第1実施形態に係る洪水防止止水構造10よりも溶接箇所が少なくなっており(第1実施形態に係る洪水防止止水構造10では、上端部板状体20の取り付けに溶接を用いている。)、上端部L状体42を止水パネル14上端部への取り付けた後に溶融亜鉛メッキ等を行う場合であっても、母材温度の上昇に伴う溶接歪みの悪影響は小さくなる。
【0095】
(3)第3実施形態
上述した実施形態は、止水パネル14の上端部に上端部板状体20を取り付けた構成(第1実施形態)や、補強部材である上端部L状体42を止水パネル14の上端部に取り付けた構成(第2実施形態)であるが、本発明に係る洪水防止止水構造の構成はこれらの構成に限定されるわけではなく、止水パネル14の上端部自体を略直角に折り曲げる構成にしてもよい(第3実施形態)。このような構成にすることにより、部品点数の削減、軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【解決手段】少なくとも一部の表面がコンクリートである地盤に立設された支柱12と、水域の岸に沿って配置され、支柱12に取り付けられた止水パネル14と、前記水域の岸に沿う方向に所定の長さを持ち、止水パネル14の下端部と前記地盤との間を固定するために設けられた下端部取り付け部材16と、を有してなり、下端部取り付け部材16は互いに略直交する位置関係にある第1及び第2の取り付け面16A1、16B1を有し、第1の取り付け面16A1を前記地盤の前記コンクリート表面に平行に配置してアンカーボルト22で固定するとともに、止水パネル14の止水面14Xが第2の取り付け面16B1と平行となるように止水パネル14を配置して、第2の取り付け面16B1に止水パネル14の下端部を固定する。