(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の乾燥剤は、吸水することにより、疎水性物質を放出する
前記一般式(1)で表される構造を有する有機金属酸化物を含有することを特徴とする。この特徴は、各実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0043】
また、本発明の有機薄膜は前記乾燥剤を含有することを特徴とする。当該有機薄膜は、電子デバイスに対して水分透過に対する封止性の高い薄膜として機能する。
【0045】
また、本発明の有機薄膜のフッ素比率が、前記式(a)を満たすことが好ましく、フッ素比率を高めることにより、電子デバイスに対して水分透過に対する封止性のより高い薄膜を提供することができる。
【0048】
また、前記Mで表される金属原子が、ストロンチウムであることが、本発明の効果をより高める観点から好ましく、さらに、前記一般式(1)で表される構造を有する金属原子種の異なる少なくとも2種類の有機金属酸化物を含有し、少なくとも1種類の金属原子が
マグネシウム、ストロンチウム又はバリウムであることが、好ましい。
【0049】
本発明に係る有機金属酸化物の製造方法としては、金属アルコキシド又は金属カルボキシレートとフッ化アルコールの混合液を用いて製造することが、本発明の効果を得る上での特徴である。
【0050】
また、本発明の有機薄膜の製造方法としては、前記有機薄膜を塗布法又はインクジェットプリント法によって製造する工程を有することが好ましく、さらに、前記有機薄膜に真空紫外光を照射する工程を有することが、緻密で均一な有機薄膜を効率よく生産する観点から好ましい製造方法である。
【0051】
また、本発明の有機薄膜にそれ以外の他の有機薄膜が積層された有機積層膜として電子デバイスに具備することが好ましく、当該有機薄膜が水分を吸収して疎水性の化合物を放出したときに、当該化合物の電子デバイスへの浸透による影響を、当該他の有機薄膜によって緩和することができる。したがって、他の有機薄膜は溶出防止膜であることが好ましい。
【0052】
本発明の有機薄膜、又は前記有機積層膜は電子デバイスに具備されるものであり、当該電子デバイスが、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機光電変換素子を用いた太陽電池、又は有機薄膜トランジスターであることが、外部からの水分の透過を防ぎ、デバイスの性能劣化が抑制された電子デバイスを提供する観点から好ましい。
【0053】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0054】
〔1〕乾燥剤
本発明の乾燥剤は、吸水することにより、疎水性物質を放出する
前記一般式(1)で表される構造を有する有機金属酸化物を含有することを特徴とする。
【0055】
本発明の乾燥剤は、金属アルコキシドを過剰のアルコール存在下で加アルコール分解して、アルコール置換した有機金属酸化物又は有機金属酸化物の重縮合体である。その際に、ヒドロキシ基のβ位にフッ素原子が置換した長鎖アルコールを用いることで、フッ化アルコキシドを含有する有機金属酸化物となり、本発明の乾燥剤となる。
【0056】
一方、前記有機金属酸化物は、焼結や紫外線を照射することで、ゾル・ゲル反応を促進し重縮合体を形成することができる。その際、前記ヒドロキシ基のβ位にフッ素原子が置換した長鎖アルコールを用いると、フッ素の撥水効果により金属アルコキシド中の金属周りに存在する水分の頻度因子を減少させることで、加水分解速度が減少し、当該現象を利用することで3次元の重合反応を抑え、所望の有機金属酸化物を含有する均一で稠密な有機薄膜を形成しうるという特徴がある。
【0057】
本発明の乾燥剤に含有される有機金属酸化物は、以下の反応スキームIに示すものである。なお、焼結後の有機金属酸化物の重縮合体の構造式において、「O−M」部の「M」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
【0059】
上記有機金属酸化物が、焼結又は紫外線照射により重縮合して形成された有機薄膜は、以下の反応スキームIIによって、系外からの水分(H
2O)によって加水分解し、疎水性物質であるフッ化アルコール(R′−OH)を放出する。このフッ化アルコールによって、さらに水分の電子デバイス内部への透過を防止(パッシベーション)するものである。
【0060】
すなわち、本発明の乾燥剤は、加水分解によって生成したフッ化アルコールが撥水性のため、本来の乾燥性(デシカント性)に加え、水分との反応により撥水機能が付加されて、封止性に相乗効果(シナジー効果)を発揮するという、従来の乾燥剤にはない特徴を有する。
【0061】
なお、下記構造式において、「O−M」部の「M」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
【0063】
本発明の乾燥剤は、下記一般式(1)で表される構造を有する有機金属酸化物を主成分として含有することが好ましい。「主成分」とは、前記乾燥剤の全体の質量のうち、70質量%以上が疎水性物質を放出する前記有機金属酸化物であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であることをいう。
【0064】
一般式(1) R−[M(OR
1)
y(O−)
x−y]
n−R
(式中、Rは、水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。ただし、Rは置換基としてフッ素原子を含む炭素鎖でもよい。Mは、金属原子を表
し、マグネシウム、ストロンチウム又はバリウムを表す。OR
1は、フッ化アルコキシ基を表す。xは金属原子の価数、yは1とxの間の任意な整数を表す。nは重縮合度をそれぞれ表す。)
また、本発明の有機薄膜のフッ素比率が、下記式(a)を満たすことが好ましい。
【0065】
式(a) 0.05≦F/(C+F)≦1
式(a)の測定意義は、ゾル・ゲル法により作製した有機薄膜がある量以上のフッ素原子を必要とすることを数値化するものである。上記式(a)のF及びCは、それぞれフッ素原子及び炭素原子の濃度を表す。
【0066】
式(a)の好ましい範囲としては、0.2≦F/(C+F)≦0.6の範囲である。
【0067】
上記フッ素比率は、有機薄膜形成に使用するゾル・ゲル液をシリコンウェハ上に塗布して薄膜を作製後、当該薄膜をSEM・EDS(Energy Dispersive X−ray Spectoroscopy:エネルギー分散型X線分析装置)による元素分析により、それぞれフッ素原子及び炭素原子の濃度を求めることができる。SEM・EDS装置の一例として、JSM−IT100(日本電子社製)を挙げることができる。
【0068】
SEM・EDS分析は、高速、高感度で精度よく元素を検出できる特徴を有する。
【0069】
本発明に係る有機金属酸化物は、ゾル・ゲル法を用いて作製できるものであれば特に制限はされず、例えば、「ゾル−ゲル法の科学」P13、P20に紹介されている金属、リチウム、ナトリウム、銅、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、リン、アンチモン、バナジウム、タンタル、タングステン、ランタン、ネオジウム、チタン、ジルコニウムから選ばれる1種以上の金属を含有してなる金属酸化物を例として挙げることができる。好ましくは、前記Mで表される金属原子は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)から選択されることが、本発明の効果を得る観点から好ましい。
【0070】
さらに、前記Mで表される金属原子が、第2族元素であることが好ましく、中でもマグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)であ
り、ストロンチウム(Sr)であることが特に好ましい。
【0071】
また、本発明の有機薄膜は.前記一般式(1)で表される構造を有する金属原子種の異なる少なくとも2種類の有機金属酸化物を含有し、少なくとも1種類の金属原子が第2族元素であることが、本発明の効果を得る観点から好ましい。
【0072】
上記一般式(1)において、OR
1はフッ化アルコキシ基を表す。
【0073】
R
1は少なくとも一つフッ素原子に置換したアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。各置換基の具体例は後述する。
【0074】
Rは水素原子、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシ基、又は複素環基を表す。又はそれぞれの基の水素の少なくとも一部をハロゲンで置換したものでもよい。又、ポリマーでもよい。
【0075】
アルキル基は置換又は未置換のものであるが、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル等であるが、好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0076】
アルケニル基は、置換又は未置換のもので、具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキシセニル基等があり、好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0077】
アリール基は置換又は未置換のもので、具体例としては、フェニル基、トリル基、4−シアノフェニル基、ビフェニル基、o,m,p−テルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、9−フェニルアントラニル基、9,10−ジフェニルアントラニル基、ピレニル基等があり、好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0078】
置換又は未置換のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等でありが好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0079】
置換又は未置換のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボナン基、アダマンタン基、4−メチルシクロヘキシル基、4−シアノシクロヘキシル基等であり好ましくは炭素数が8以上のものがよい。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0080】
置換又は未置換の複素環基の具体例としては、ピロール基、ピロリン基、ピラゾール基、ピラゾリン基、イミダゾール基、トリアゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、トリアジン基、インドール基、ベンズイミダゾール基、プリン基、キノリン基、イソキノリン基、シノリン基、キノキサリン基、ベンゾキノリン基、フルオレノン基、ジシアノフルオレノン基、カルバゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ビスベンゾオキサゾール基、ビスベンゾチアゾール基、ビスベンゾイミダゾール基等がある。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0081】
置換又は未置換のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピメロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、エライドイル基、マレオイル基、フマロイル基、シトラコノイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、グリコロイル基、ラクトイル基、グリセロイル基、タルトロノイル基、マロイル基、タルタロイル基、トロポイル基、ベンジロイル基、サリチロイル基、アニソイル基、バニロイル基、ベラトロイル基、ピペロニロイル基、プロトカテクオイル基、ガロイル基、グリオキシロイル基、ピルボイル基、アセトアセチル基、メソオキサリル基、メソオキサロ基、オキサルアセチル基、オキサルアセト基、レブリノイル基これらのアシル基にフッソ、塩素、臭素、ヨウ素などが置換してもよい。好ましくはアシル基の炭素は8以上良い。またこれらのオリゴマー、ポリマーでもよい。
【0082】
本発明に係る一般式(1)で表される構造を有する有機金属酸化物を形成するための、金属アルコキシド、金属カルボキシレート及びフッ化アルコールの具体的な組み合わせについて、以下に例示する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
前記金属アルコキシド、金属カルボキシレートとフッ化アルコール(R′−OH)は以下の反応スキームIIIによって、本発明に係る有機金属酸化物となる。ここで、(R′−OH)としては、以下のF−1〜F−16の構造が例示される。
【0086】
本発明に係る金属アルコキシド又は金属カルボキシレートは、以下のM(OR)
n又はM(OCOR)
nに示す化合物が例示され、本発明に係る有機金属酸化物は、前記(R′−OH:F−1〜F16)との組み合わせにより、下記例示化合物番号1〜155の構造を有する化合物(下記例示化合物I、II、III及びIV参照。)となる。本発明に係る有機金属酸化物は、ただし、これに限定されるものではない。
【0091】
本発明に係る有機金属酸化物を製造する有機金属酸化物の製造方法は、金属アルコキシドとフッ化アルコールの混合液を用いて製造することが特徴である。
【0092】
反応の一例として例示化合物番号1の反応スキームIV及び有機薄膜に適用するときの有機金属酸化物の構造を以下に示す。
【0093】
なお、下記構造式において、「O−Ti」部の「Ti」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
【0095】
本発明に係る有機金属酸化物の製造方法は、金属アルコキシド又は金属カルボキシレートにフッ化アルコールを加え混合液として攪拌混合させた後に、必要に応じて水と触媒を添加して所定温度で反応させる方法を挙げることができる。
【0096】
ゾル・ゲル反応をさせる際には、加水分解・重縮合反応を促進させる目的で下記に示すような加水分解・重合反応の触媒となりうるものを加えてもよい。ゾル−ゲル反応の加水分解・重合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、P29)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、P154)等に記載されている一般的なゾル−ゲル反応で用いられる触媒である。例えば、酸触媒では塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類、アルカリ触媒では、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン類などが挙げられる。
【0097】
好ましい触媒の使用量は、有機金属酸化物の原料となる金属アルコキシド又は金属カルボキシレート1モルに対して2モル当量以下、さらに好ましくは1モル当量以下である。
ゾル・ゲル反応をさせる際、好ましい水の添加量は、有機金属酸化物の原料となる金属アルコキシド又は金属カルボキシレート1モルに対して、40モル当量以下であり、より好ましくは、10モル当量以下であり、さらに好ましくは、5モル当量以下である。
【0098】
本発明において、好ましいゾル・ゲル反応の反応濃度、温度、時間は、使用する金属アルコキシド又は金属カルボキシレートの種類や分子量、それぞれの条件が相互に関わるため一概には言えない。すなわち、アルコキシド又は金属カルボキシレートの分子量が高い場合や、反応濃度の高い場合に、反応温度を高く設定したり、反応時間を長くし過ぎたりすると、加水分解、重縮合反応に伴って反応生成物の分子量が上がり、高粘度化やゲル化する可能性がある。従って、通常の好ましい反応濃度は、概ね溶液中の固形分の質量%濃度で1〜50%であり、5〜30%がより好ましい。また、反応温度は反応時間にもよるが通常0〜150℃であり、好ましくは1〜100℃、より好ましくは20〜60℃であり、反応時間は1〜50時間程度が好ましい。
【0099】
前記有機金属酸化物の重縮合体が有機薄膜を形成し、以下の反応スキームVにより、水分を吸収して疎水性物質であるフッ化アルコールを放出する。
【0100】
なお、下記構造式において、「O−Ti」部の「Ti」は、さらに置換基を有しているが、省略してある。
【0102】
〔2〕有機薄膜
本発明の有機薄膜は、電子デバイス用有機材料であることが好ましい。なお、「有機薄膜」はその機能から「封止膜」という場合がある。ただし、後述するガスバリアーフィルムやガラス等の電子デバイスの「封止部材」とは別の部材である。
【0103】
前記電子デバイスとしては、例えば、有機EL素子、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)、液晶素子、太陽電池(光電変換素子)、タッチパネル、液晶表示装置などのカラーフィルター等が挙げられる。特に、本発明においては、本発明の効果発現の観点から、電子デバイスが有機EL素子、太陽電池及び発光ダイオードであることが好ましい。
【0104】
なお、本発明において、電子デバイス用有機材料とは、有機材料の固形成分のことをいい、有機溶媒を含まないものとする。
【0105】
〔2.1〕有機薄膜の使用例
本発明の有機薄膜の使用例として、有機EL素子に具備したときの例を挙げて説明する。
【0106】
図1は本発明の電子デバイスに係る有機EL素子の構成の一例を示す概略断面図である。
【0107】
有機EL素子(100)は、基板(101)上に、陰極(105)、有機機能層群(106)、透明電極(陽極107)が積層されて素子(10)を形成している。
【0108】
本発明の有機薄膜(108)は、前記素子(10)を覆うように形成されており、さらに必須ではないが、他の有機薄膜(109)が本発明の有機薄膜(108)と素子(10)の間にあり、積層膜を形成していることが好ましい態様である。
【0109】
ガラスカバー又はガスバリアーフィルム(102)内には窒素ガスが充填されており、ガラスカバー又はガスバリアーフィルム(102)と基板(101)は接着剤(103)によって固定されている。
【0110】
本発明の有機薄膜(108)は、前記接着剤(103)から素子内部に透過してくる水分により、含有する有機金属酸化物が加水分解される際に、フッ化アルコールがクエンチされた水分子と等モル生成し、それが撥水機能を有するために、それ以上の水の侵入を防止するものである。
【0111】
なお、他の有機薄膜(109)は、生成したフッ化アルコールを素子(10)内に浸透させないための遮断機能を有する溶出防止膜であることが好ましい。
【0112】
〔2.2〕有機薄膜の詳細
本発明の有機薄膜は、吸水することにより、疎水性物質を放出する前記乾燥剤を主成分として含有する。「主成分」とは、前記有機薄膜の全体の質量のうち、70質量%以上が前記乾燥剤であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であることをいう。
【0113】
本発明の有機薄膜は、前記本発明の乾燥剤を含む塗布液を調製し、電子デバイス上に塗布して焼結又は紫外線を照射して重縮合させながら皮膜化することで、形成することができる。
【0114】
塗布液を調製する際に必要であれば用いることのできる有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、又は、脂肪族エーテル又は脂環式エーテル等のエーテル類等が適宜使用できる。
【0115】
塗布液における本発明の乾燥剤(有機金属酸化物)の濃度は、目的とする厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。塗布液には重合を促進する触媒を添加することも好ましい。
【0116】
調製した塗布液は、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、インクジェットプリント法を含む印刷法などのパターニングによる方法などの湿式形成法が挙げられ、材料に応じて使用できる。これらのうち好ましいのは、インクジェットプリント法である。インクジェットプリント法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
【0117】
インクジェットプリント法によるインクジェットヘッドからの塗布液の吐出方式は、オンデマンド方式及びコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型等の電気−機械変換方式、又は、サーマルインクジェット型及びバブルジェット(登録商標)型等の電気−熱変換方式等のいずれでもよい。
【0118】
塗布後の有機薄膜を固定化するには、低温で重合反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使うことが好ましく、紫外線の中でも真空紫外線処理(VUVという。)を用いることが、薄膜表面の平滑性向上のために好ましい。
【0119】
真空紫外線処理における紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー等が挙げられるが、特に限定されないがエキシマランプを用いることが好ましい。
【0120】
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定することができる。有機薄膜を形成する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材や乾燥剤含有塗布液の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分間であり、好ましくは0.5秒〜3分間である。
【0121】
塗膜面が受けるエネルギーとしては、均一で堅牢な薄膜を形成する観点から、1.0J/cm
2以上であることが好ましく、2.0J/cm
2以上であることがより好ましく、4.0J/cm
2であることがさらに好ましい。また、同様に、過度な紫外線照射を避ける観点から、14.0J/cm
2以下であることが好ましく、12.0J/cm
2以下であることがより好ましく、10.0J/cm
2以下であることがさらに好ましい。
【0122】
また、真空紫外線(VUV)を照射する際の、酸素濃度は300〜10000体積ppm(1体積%)とすることが好ましく、更に好ましくは、500〜5000体積ppmである。このような酸素濃度の範囲に調整することにより、有機薄膜が酸素過多になるの
を防止して、水分吸収の劣化を防止することができる。
【0123】
真空紫外線(VUV)照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスを用いることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。
【0124】
これらの真空紫外線処理の詳細については、例えば、特開2012−086394号公報の段落0055〜0091、特開2012−006154号公報の段落0049〜0085、特開2011−251460号公報の段落0046〜0074等に記載の内容を参照することができる。
【0125】
本発明の有機薄膜は、60℃・90%RH環境下で1時間放置されたときに、有機薄膜表面に、フッ素原子がどれだけ配向するか推定するために、23℃雰囲気下での純水の接触角を測定することが好ましく、この時の放置後の接触角が放置前の接触角に比べて増加する場合は、より撥水性が向上し、水分透過の封止性が高まる。
【0126】
〔接触角の測定〕
接触角の測定は、公知文献「接着の基礎と理論」(日刊工業新聞社)p52−53に記載の液適法を参考にして以下の方法で測定することができる。
【0127】
具体的には、有機薄膜表面の純水の接触角の測定は、JIS−R3257に基づいて、60℃、90%RHで1時間放置した前後の有機薄膜試料に対して、23℃、55%RHの雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μLを滴下し1分後における接触角を測定する。なお、測定は有機薄膜幅手方向に対して等間隔で10点測定して、最大値及び最小値を除いてその平均値を接触角とする。
【0128】
本発明の有機薄膜の膜厚は、膜厚の範囲はドライ膜で10nm〜100μm、より好ましくは、0.1〜1μmの範囲であることが、封止膜としての効果を発現する上で好ましい。
【0129】
〔3〕他の有機薄膜
本発明の有機薄膜は、有機薄膜とそれ以外の他の有機薄膜が隣接して積層され、有機積層膜を形成することが好ましい。
【0130】
前記他の有機薄膜は、本発明の有機薄膜が水分を吸収して放出するフッ化アルコールが、電子デバイス内部に溶出、浸透し、ダークスポット等の発光阻害に影響することを防止する機能を有する薄膜であることが好ましい。以下、「その他の有機薄膜」を「溶出防止膜」として説明する。
【0131】
前記溶出防止膜は、アルコール溶媒に不溶な有機材料を蒸着法にて形成してもよい。該有機材料としては、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体等の多くの有機EL材料を適用することができ、特に限定されるものではない。
【0132】
また、前記溶出防止膜は、塗布にて形成してもよい。塗布により形成する材料としては、熱硬化型又はUV硬化型の無溶剤モノマーが好ましく、特に、硬化型シリコーンモノマーが好ましい。無溶剤モノマーを塗布後、熱硬化及び/又はUV硬化により固体薄膜化させ、溶出防止膜を形成する。
【0133】
前記溶出防止膜には、水分・酸素を吸収するゲッター剤を混合してもよい。
【0134】
溶出防止膜は、調製した塗布液を電子デバイスと本発明の有機薄膜の間に配置することが好ましく、前述の有機薄膜と同様に、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、インクジェットプリント法を含む印刷法などのパターニングによる方法などの湿式形成法で塗布することが好ましい。これらのうち好ましいのは、インクジェットプリント法である。
【0135】
溶出防止膜の膜厚は、ドライ膜で10nm〜100μm、より好ましくは、0.1〜1μmの範囲であることが、溶出防止膜としての効果を発現する上で好ましい。
【0136】
溶出防止膜は、前記溶出防止機能を発現する観点から、シリコーン樹脂を含有することが好ましく、当該シリコーン樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等を使用することができる。さらに、フッ素原子を含有するシロキサンも好適に使用することができる。
【0137】
本発明に係る溶出防止膜に用いられるシリコーン樹脂としては低分子体であってもよいし、高分子体でもよい。特に好ましくはオリゴマーやポリマーであり、具体的には、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系共重合体等のポリシロキサン誘導体が挙げられる。また、これら化合物を組む合わせたものであってもよい。
【0138】
ポリシロキサン骨格を有する化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有しており、一般式(I)中の繰り返し数n(1以上の数)や有機変性部の種類を変化させることで、溶出防止の効果を任意にコントロールすることができる。
【0140】
上記一般式(I)中のnや有機変性部の種類を変化させる一例として、例えば、下記一般式(II)で表される構造(x及びyは繰り返し数を表す1以上の数、mは1以上の整数)が挙げられ、側鎖を付与することによりシリコーン骨格を変性させることができる。なお、一般式(II)におけるR
1としては、例えば、メチル基、エチル基、デシル基等が挙げられる。R
2としては、例えば、ポリエーテル基、ポリエステル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0141】
さらに、下記一般式(III)で表される構造(mは1以上の整数)を有する化合物も用いることが可能であり、シリコーン鎖は数個のSi−O結合からなり、R
3に相当する平均1個のポリエーテル鎖等を有する。
【0142】
このように、一般式(II)で表される構造を有する化合物及び一般式(III)で表される構造を有する化合物いずれにおいても、表面自由エネルギーのコントロールや相溶性の調整を任意に行うことができる。
【0144】
(ポリシロキサン系化合物)
ポリシロキサン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトキエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、又は該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等が挙げられる。
【0145】
(ポリジメチルシロキサン系化合物)
ポリジメチルシロキサン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン(例えば、東亞合成(株)製GUV−235)などが挙げられる。
【0146】
(ポリジメチルシロキサン系共重合体)
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
【0147】
(市販材料)
また、市販されている材料としてはケイ素原子を有していれば特に限定されないが、例えば以下に記したものを用いることができる。
【0148】
共栄社化学株式会社製:GL-01、GL-02R、GL-03、GL-04R
日信化学工業株式会社製:シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG008、シルフェイスSAG503A、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールSE
信越化学工業株式会社製:FA−600、KC−89S、KR−500、KR−516、X−40−9296、KR−513、X−22−161A、X−22−162C、X−22−163、X−22−163A、X−22−164、X−22−164A、X−22−173BX、X−22−174ASX、X−22−176DX、X−22−343、X−22−2046、X−22−2445、X−22−3939A、X−22−4039、X−22−4015、X−22−4272、X−22−4741、X−22−4952、X−22−6266、KF−50−100cs、KF−96L−1cs、KF−101、KF−102、KF−105、KF−351、KF−352、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−393、KF−615A、KF−618、KF−857、KF−859、KF−860、KF−862、KF−877、KF−889、KF−945、KF−1001、KF−1002、KF−1005、KF−2012、KF−2201、X−22−2404、X−22−2426、X−22−3710、KF−6004、KF−6011、KF−6015、KF−6123、KF−8001、KF−8010、KF−8012、X−22−9002
東レ・ダウコーニング株式会社製:DOW CORNING 100F ADDITIVE、DOW CORNING 11 ADDITIVE、DOW CORNING 3037 INTERMEDIATE、DOW CORNING 56 ADDITIVE、DOW CORNING TORAY Z−6094、DOW CORNING TORAY FZ−2104、DOW CORNING TORAY AY42−119、DOW CORNING TORAY FZ−2222
花王株式会社製:エマルゲン102KG、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン210P、エマルゲン220、エマルゲン306P、エマルゲン320P、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409PV、エマルゲン420、エマルゲン430、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲン1108、エマルゲン1118S−70、エマルゲン1135S−70、エマルゲン2020G−HA、エマルゲン2025G、エマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS114
前記化合物は、溶出防止膜を構成する材料中の溶媒を除く全成分に対し、0.005〜5質量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
【0149】
〔4〕電子デバイス
本発明の有機薄膜、及又は当該有機薄膜とその他の有機薄膜との有機積層膜を具備する電子デバイスの例として、有機EL素子を具備した有機EL表示装置、光電変換素子及び太陽電池について説明する。
【0150】
〔4.1〕有機EL表示装置
[有機EL素子]
本発明に好適に用いられる有機EL素子は、基板上に、陽極と陰極、及びこれらの電極間に挟持された1層以上の有機機能層(「有機EL層」、「有機化合物層」ともいう。)を有している。
【0151】
(基板)
有機EL素子に用いることのできる基板(以下、基体、支持基板、基材、支持体等ともいう。)としては、特に限定は無く、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができ、また透明であっても不透明であってもよい。基板側から光を取り出す場合には、基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板としては、ガラス、石英、透明プラスチック基板を挙げることができる。
【0152】
また、基板としては、基板側からの酸素や水の侵入を阻止するため、JIS Z−0208に準拠した試験において、その厚さが1μm以上で水蒸気透過度が1g/(m
2・24h・atm)(25℃)以下であるものが好ましい。
【0153】
ガラス基板としては、具体的には、例えば無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。水分の吸着が少ない点からは無アルカリガラスが好ましいが、充分に乾燥を行えばこれらのいずれを用いてもよい。
【0154】
プラスチック基板は、可撓性が高く、軽量で割れにくいこと、さらに有機EL素子のさらなる薄型化を可能にできること等の理由で近年注目されている。
【0155】
プラスチック基板の基材として用いられる樹脂フィルムとしては、特に限定は無く、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、有機無機ハイブリッド樹脂等を挙げることができる。
【0156】
有機無機ハイブリッド樹脂としては、有機樹脂とゾル・ゲル反応によって得られる無機高分子(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)を組み合わせて得られるものが挙げられる。これらのうちでは、特にアートン(JSR(株)製)又はアペル(三井化学(株)製)といったノルボルネン(又はシクロオレフィン系)樹脂が好ましい。
【0157】
通常生産されているプラスチック基板は、水分の透過性が比較的高く、また、基板内部に水分を含有している場合もある。そのため、このようなプラスチック基板を用いる際には、樹脂フィルム上に水蒸気や酸素などの侵入を抑制するバリアー膜(「ガスバリアー膜」又は「水蒸気封止膜」ともいう。)を設け、ガスバリアーフィルムとしたものが好ましい。
【0158】
バリアー膜を構成する材料は、特に限定は無く、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド等が用いられる。被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m
2・24h)以下のバリアー性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10
−3mL/(m
2・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10
−5g/(m
2・24h)以下の高バリアー性フィルムであることが好ましい。
【0159】
バリアー膜を構成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であれば特に限定は無く、例えば金属酸化物、金属酸窒化物又は金属窒化物等の無機物、有機物、又はその両者のハイブリッド材料等を用いることができる。
【0160】
金属酸化物、金属酸窒化物又は金属窒化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化ケイ素等の金属窒化物、酸窒化ケイ素、酸窒化チタン等の金属酸窒化物等が挙げられる。
【0161】
さらに、該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0162】
前記樹脂フィルムに、バリアー膜を設ける方法は、特に限定されず、いかなる方法でもよいが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、CVD法(例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法など)、コーティング法、ゾル・ゲル法等を用いることができる。これらのうち、緻密な膜を形成できる点から、大気圧又は大気圧近傍でのプラズマCVD処理による方法が好ましい。
【0163】
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0164】
(陽極)
有機EL素子の陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、金属の電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。
【0165】
ここで、「金属の電気伝導性化合物」とは、金属と他の物質との化合物のうち電気伝導性を有するものをいい、具体的には、例えば、金属の酸化物、ハロゲン化物等であって電気伝導性を有するものをいう。
【0166】
このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。上記陽極は、これらの電極物質からなる薄膜を、蒸着やスパッタリング等の公知の方法により、前記基板上に形成させることで作製することができる。
【0167】
また、この薄膜にフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、また、パターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0168】
陽極から発光を取り出す場合には、光透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましい。さらに陽極の膜厚は、構成する材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0169】
(有機機能層)
有機機能層(「有機EL層」、「有機化合物層」ともいう。)には少なくとも発光層が含まれるが、発光層とは広義には、陰極と陽極とからなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指し、具体的には、陰極と陽極とからなる電極に電流を流した際に発光する有機化合物を含有する層を指す。
【0170】
本発明に用いられる有機EL素子は、必要に応じ、発光層の他に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層及び電子輸送層を有していてもよく、これらの層が陰極と陽極とで挟持された構造をとる。
【0171】
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
等の構造が挙げられる。
【0172】
さらに、電子注入層と陰極との間に、陰極バッファー層(例えば、フッ化リチウム等)を挿入してもよく、陽極と正孔注入層との間に、陽極バッファー層(例えば、銅フタロシアニン等)を挿入してもよい。
【0173】
(発光層)
発光層は、電極又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。発光層は単一の組成を持つ層であってもよいし、同一又は異なる組成をもつ複数の層からなる積層構造であってもよい。
【0174】
この発光層自体に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層及び電子輸送層等の機能を付与してもよい。すなわち、発光層に(1)電界印加時に、陽極又は正孔注入層により正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能のうちの少なくとも一つの機能を付与してもよい。なお、発光層は、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送機能に大小があってもよいが、少なくともどちらか一方の電荷を移動させる機能を有するものが好ましい。
【0175】
この発光層に用いられる発光材料の種類については、特に制限はなく、従来、有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Symp.125巻17〜26頁に記載の化合物が挙げられる。また、発光材料はp−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でもよく、さらに前記発光材料を側鎖に導入した高分子材料や前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。なお、上述したように、発光材料は、発光性能の他に、正孔注入機能や電子注入機能を併せ持っていてもよいため、後述する正孔注入材料や電子注入材料のほとんどが発光材料としても使用できる。
【0176】
有機EL素子を構成する層において、その層が2種以上の有機化合物で構成されるとき、主成分をホスト、その他の成分をドーパントといい、発光層においてホストとドーパントを併用する場合、主成分であるホスト化合物に対する発光層のドーパント(以下発光ドーパントともいう)の混合比は好ましくは質量で0.1〜30質量%未満である。
【0177】
発光層に用いるドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
【0178】
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体、その他公知の蛍光性化合物等が挙げられる。
【0179】
本発明においては、少なくとも1層の発光層がリン光性化合物を含有するのが好ましい。
【0180】
本発明においてリン光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.001以上の化合物である。
【0181】
リン光量子収率は、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
【0182】
リン光性ドーパントはリン光性化合物であり、その代表例としては、好ましくは元素の周期律表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも好ましくはイリジウム化合物、ロジウム化合物、白金化合物であり、最も好ましくはイリジウム化合物である。
【0183】
ドーパントの例としては、以下の文献又は特許公報に記載されている化合物である。J.Am.Chem.Soc.123巻4304〜4312頁、国際公開第2000/70655号、同2001/93642号、同2002/02714号、同2002/15645号、同2002/44189号、同2002/081488号、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、同2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、同2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等。
【0184】
発光ドーパントは1種のみを用いてもよいし、複数種類を用いてもよく、これらドーパントからの発光を同時に取り出すことにより、複数の発光極大波長を持つ発光素子を構成することもできる。また、例えばリン光性ドーパントと、蛍光性ドーパントの両方が加えられていてもよい。複数の発光層を積層して有機EL素子を構成する場合、それぞれの層に含有される発光ドーパントは同じであっても異なっていても、単一種類であっても複数種類であってもよい。
【0185】
さらには、前記発光ドーパントを高分子鎖に導入した、又は前記発光ドーパントを高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
【0186】
上記ホスト化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するものが挙げられ、後述の電子輸送材料及び正孔輸送材料もその相応しい一例として挙げられる。
【0187】
青色又は白色の発光素子、表示装置及び照明装置に適用する場合には、ホスト化合物の蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましく、リン光性ドーパントを用いる場合、ホスト化合物のリン光の0−0バンドが450nm以下であることがさらに好ましい。発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0188】
発光ホストの具体例としては、例えば以下の文献に記載されている化合物が好適である。
【0189】
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0190】
発光ドーパントはホスト化合物を含有する層全体に分散されていてもよいし、部分的に分散されていてもよい。発光層にはさらに別の機能を有する化合物が加えられていてもよい。
【0191】
上記の材料を用いて、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェッ ト法)、インクジェットプリント法、印刷法等の公知の方法により薄膜化することにより、発光層を形成することができるが、形成された発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。
【0192】
ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜とLB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは、凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0193】
本発明においては、上記の発光材料であるリン光性ドーパント及びホスト化合物を本発明の電子デバイス用有機材料として用いることが好ましい。すなわち、発光層を、当該リン光性ドーパント及びホスト化合物と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む溶液(電子デバイス作製用組成物)を、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の塗布によって形成することが、分子堆積膜からなる発光層を形成することができるため好ましい。中でも、均質な膜が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の観点から、インクジェットプリント法が好ましい。
【0194】
そして、当該リン光性ドーパント及びホスト化合物と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む塗布液において、50℃以下、大気圧条件下での有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度を1ppm〜前記有機溶媒に対する飽和濃度とすることが好ましい。溶存二酸化炭素濃度を上記範囲とする手段としては、リン光性ドーパント及びホスト化合物と、有機溶媒とを含む溶液に炭酸ガスをバブリングする方法、又は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いた超臨界クロマトグラフィー法が挙げられる。
【0195】
(正孔注入層及び正孔輸送層)
正孔注入層に用いられる正孔注入材料は、正孔の注入、電子の障壁性のいずれかを有するものである。また、正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料は、電子の障壁性を有するとともに正孔を発光層まで輸送する働きを有するものである。したがって、本発明においては、正孔輸送層は正孔注入層に含まれる。
【0196】
これら正孔注入材料及び正孔輸送材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。具体的には、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、ポルフィリン化合物、チオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。これらのうちでは、アリールアミン誘導体及びポルフィリン化合物が好ましい。
【0197】
アリールアミン誘導体の中では、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物が好ましく、芳香族第三級アミン化合物がより好ましい。
【0198】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(以下、α−NPDと略す。)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
【0199】
また、本発明においては、正孔輸送層の正孔輸送材料は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0200】
正孔注入層及び正孔輸送層は、上記正孔注入材料及び正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、プリント法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0201】
本発明においては、上記正孔注入材料及び正孔輸送材料を、本発明の電子デバイス用有機材料として用いることが好ましい。そして、上記正孔注入材料及び正孔輸送材料と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む溶液(電子デバイス作製用組成物)を、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の塗布によって形成することが好ましい。中でも、均質な膜が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の観点から、インクジェットプリント法が好ましい。
【0202】
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さについては、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。なお、上記正孔注入層及び正孔輸送層は、それぞれ上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。また、正孔注入層と正孔輸送層を両方設ける場合には、上記の材料のうち、通常、異なる材料を用いるが、同一の材料を用いてもよい。
【0203】
(電子注入層及び電子輸送層)
電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0204】
この電子注入層に用いられる材料(以下、電子注入材料ともいう)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0205】
また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、本発明者らが検討の結果、電子注入材料として用いうることが分かった。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子注入材料として用いることができる。
【0206】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq
3と略す。)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子注入材料として用いることができる。
【0207】
その他、メタルフリーやメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも電子注入材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子注入材料として用いることができる。
【0208】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる化合物は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0209】
電子注入層は、上記電子注入材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、プリント法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0210】
本発明においては、上記電子注入材料を、本発明の電子デバイス用有機材料として用いることが好ましい。そして、上記電子注入材料と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む溶液(電子デバイス作製用組成物)を、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の塗布によって形成することが好ましい。中でも、均質な膜が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の観点から、インクジェット法が好ましい。
【0211】
また、電子注入層としての厚さは特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子注入層は、これらの電子注入材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよいし、又は同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0212】
なお、本明細書においては、前記電子注入層のうち、発光層と比較してイオン化エネルギーが大きい場合には、特に電子輸送層と呼ぶこととする。したがって、本明細書においては、電子輸送層は電子注入層に含まれる。
【0213】
上記電子輸送層は、正孔阻止層(ホールブロック層)ともいわれ、例えば、国際公開第2000/70655号、特開2001−313178号公報、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されているものが挙げられる。特に発光層にオルトメタル錯体系ドーパントを用いるいわゆる「リン光発光素子」においては、前記(v)及び(vi)のように電子輸送層(正孔阻止層)を有する構成を採ることが好ましい。
【0214】
(バッファー層)
陽極と発光層又は正孔注入層の間、及び、陰極と発光層又は電子注入層との間には、バッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0215】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0216】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0217】
陰極バッファー層は、特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0218】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その厚さは0.1〜100nmの範囲が好ましい。さらに、上記基本構成層の他に、必要に応じてその他の機能を有する層を適宜積層してもよい。
【0219】
(陰極)
上述のように有機EL素子の陰極としては、一般に仕事関数の小さい(4eV未満)金属(以下、電子注入性金属と称する)、合金、金属の電気伝導性化合物又はこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
【0220】
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、インジウム、希土類金属、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。
【0221】
本発明においては、上記に列挙したものを陰極の電極物質として用いてもよいが、陰極は第13族金属元素を含有してなることが好ましい。すなわち本発明では、後述するように陰極の表面をプラズマ状態の酸素ガスで酸化して、陰極表面に酸化皮膜を形成することにより、それ以上の陰極の酸化を防止し、陰極の耐久性を向上させることができる。
【0222】
したがって、陰極の電極物質としては、陰極に要求される好ましい電子注入性を有する金属であって、緻密な酸化皮膜を形成しうる金属であることが好ましい。
【0223】
前記第13族金属元素を含有してなる陰極の電極物質としては、具体的には、例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。なお、上記混合物の各成分の混合比率は、有機EL素子の陰極として従来公知の比率を採用することができるが、特にこれに限定されない。上記陰極は、上記の電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、前記有機化合物層(有機EL層)上に薄膜形成することにより、作製することができる。
【0224】
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光光を透過させるために、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方を透明又は半透明にすると、発光効率が向上して好ましい。
【0225】
[有機EL素子の製造方法]
有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製方法について説明する。
【0226】
まず適当な基材上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの厚さになるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層の有機化合物薄膜(有機薄膜)を形成させる。
【0227】
これらの有機薄膜の薄膜化の方法としては、上述したように、スピンコート法、キャスト法、インクジェットプリント法、スプレー法、蒸着法、印刷法、スロットコート法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の点と、本発明においては、本発明の電子デバイス作製用組成物を用いることができる点でインクジェットプリント法が好ましい。
【0228】
また、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10
−6〜10
−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0229】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の厚さになるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、1回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0230】
[有機EL素子の封止]
有機EL素子の封止手段としては、特に限られないが、例えば、有機EL素子の外周部を封止用接着剤で封止した後、有機EL素子の発光領域を覆うように封止部材を配置する方法が挙げられる。
【0231】
封止用接着剤としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0232】
封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。ポリマーフィルムの場合は、前述のガスバリアー性を付与することが好ましい。
【0233】
封止構造としては、有機EL素子と封止部材の間が中空になっている構造や、有機EL素子と封止部材の間に接着剤等のシール材が充填されている充填封止構造が挙げられる。
【0234】
封止部材と有機EL素子の発光領域との間隙には、封止用接着剤の他には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコーンオイルのような不活性液体を注入することもできる。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙を真空とすることや、間隙に不活性ガスを封入したり、乾燥剤を配置することもできる。
【0235】
[有機EL表示装置]
上記有機EL素子を用いる有機EL表示装置(以下、表示装置ともいう。)は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通にすれば、シャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
【0236】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェットプリント法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0237】
また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0238】
このようにして得られた表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0239】
表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0240】
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0241】
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0242】
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
【0243】
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0244】
本発明に係る有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0245】
〔4.2〕光電変換素子及び太陽電池
本発明の有機薄膜及又は有機薄膜とその他の有機薄膜との有機積層膜は、例えば、光電変換素子の有機機能層の封止膜として適用することが好ましい。
【0246】
以下、光電変換素子及び太陽電池の詳細を説明する。図では、本発明の有機薄膜、又は有機積層膜は省略して図示しているが、前述の有機EL素子と同様に素子全体が有機薄膜又は有機積層膜によって覆われている。
【0247】
図2は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなるシングル構成(バルクヘテロジャンクション層が1層の構成)の太陽電池の一例を示す断面図である。
【0248】
図2において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子(200)は、基板(201)の一方面上に、透明電極(陽極202)、正孔輸送層(207)、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部(204)、電子輸送層(又はバッファー層ともいう。208)及び対極(陰極203)が順次積層されている。
【0249】
基板(201)は、順次積層された透明電極(202)、光電変換部(204)及び対極(203)を保持する部材である。本実施形態では、基板(201)側から光電変換される光が入射するので、基板(201)は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板(201)は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板(201)は、必須ではなく、例えば、光電変換部(204)の両面に透明電極(202)及び対極(203)を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子(200)が構成されてもよい。
【0250】
光電変換部(204)は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与又は受容するものではなく、光反応によって、電子を供与又は受容するものである。
【0251】
図2において、基板(201)を介して透明電極(202)から入射された光は、光電変換部(204)のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体又は電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極(202)と対極(203)の仕事関数が異なる場合では透明電極(202)と対極(203)との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ光電流が検出される。例えば、透明電極(202)の仕事関数が対極(203)の仕事関数よりも大きい場合では、電子は透明電極(202)へ、正孔は対極(203)へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば、電子と正孔はこれとは逆方向に輸送される。また、透明電極(202)と対極(203)との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0252】
なお、
図2には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、又は平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0253】
また、さらなる太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成(バルクヘテロジャンクション層を複数有する構成)であってもよい。
【0254】
図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板(201)上に、順次透明電極(202)、第1の光電変換部(209)を積層した後、電荷再結合層(中間電極205)を積層した後、第2の光変換部(206)、次いで対極(203)を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。
【0255】
上記のような層に用いることができる材料については、例えば、特開2015−149483号公報の段落0045〜0113に記載のn型半導体材料、及びp型半導体材料が挙げられる。
【0256】
(バルクヘテロジャンクション層の形成方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0257】
本発明においては、上記のバルクヘテロジャンクション層を構成するn型半導体材料及びp型半導体材料を本発明の電子デバイス用有機材料として用いることができる。すなわち、バルクヘテロジャンクション層を、当該n型半導体材料及びp型半導体材料と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む溶液を、塗布によって形成することが好ましく、当該n型半導体材料及びp型半導体材料と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む塗布液において、50℃以下、大気圧条件下での有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度を1ppm〜前記有機溶媒に対する飽和濃度とすることが好ましい。
【0258】
溶存二酸化炭素濃度を上記範囲とする手段としては、上述したように、n型半導体材料及びp型半導体材料と、有機溶媒と、セルロースナノファイバーを含む溶液に炭酸ガスをバブリングする方法、又は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いた超臨界クロマトグラフィー法が挙げられる。
【0259】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が配列又は結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0260】
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)204は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
【0261】
次に、有機光電変換素子を構成する電極について説明する。
【0262】
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で生成した正電荷と負電荷とが、それぞれp型有機半導体材料、及びn型有機半導体材料を経由して、それぞれ透明電極及び対極から取り出され、電池として機能するものである。それぞれの電極には、電極を通過するキャリアに適した特性が求められる。
【0263】
(対極)
本発明において対極(陰極)とは、電子を取り出す電極のことが好ましい。例えば、陰極として用いる場合、導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。
【0264】
対極材料としては、十分な導電性を有し、かつ前記n型半導体材料と接合したときにショットキーバリアーを形成しない程度に近い仕事関数を有し、かつ劣化しないことが求められる。つまりバルクヘテロジャンクション層に用いるn型半導体材料のLUMOよりも0〜0.3eV大きい仕事関数を有する金属であることが好ましく、4.0〜5.1eVの仕事関数であることが好ましい。他方で正孔を取り出す透明電極(陽極)より仕事関数が深くなることは好ましくなく、n型半導体材料より浅い仕事関数の金属では層間抵抗が発生することがあるため、実際には4.2〜4.8eVの仕事関数を有する金属であることが好ましい。したがって、アルミニウム、金、銀、銅、インジウム、又は酸化亜鉛、ITO、酸化チタン等の酸化物系の材料でも好ましい。より好ましくは、アルミニウム、銀、銅であり、さらに好ましくは銀である。
【0265】
なおこれらの金属の仕事関数は、同様に紫外光電子分光法(UPS)を利用して測定することができる。
【0266】
なお、必要に応じて合金にしてもよく、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0267】
また、対極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対極とすることができる。
【0268】
(透明電極)
本発明において透明電極とは、正孔を取り出す電極のことが好ましい。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO
2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0269】
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0270】
(中間電極)
また、タンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層又はナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0271】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0272】
次に、電極及びバルクヘテロジャンクション層以外を構成する材料について述べる。
【0273】
(正孔輸送層及び電子ブロック層)
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、バルクヘテロジャンクション層と透明電極との中間には正孔輸送層・電子ブロック層を有していることが好ましい。
【0274】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層としては、ヘレウス社製Clevious等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号等に記載のシアン化合物等を用いることができる。
【0275】
なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を透明電極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0276】
(電子輸送層、正孔ブロック層及びバッファー層)
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と対極との中間には電子輸送層・正孔ブロック層・バッファー層を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0277】
また、電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を対極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層等を用いることもできる。
【0278】
また、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
【0279】
これらの中でも、さらに有機半導体分子をドープし、前記金属電極(陰極)との電気的接合を改善する機能も有する、アルカリ金属化合物を用いることが好ましい。アルカリ金属化合物層の場合には、特にバッファー層ということもある。
【0280】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
【0281】
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0282】
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、特に好ましい。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0283】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0284】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアーコート層があらかじめリン光形成されていてもよい。
【0285】
(光学機能層)
有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、対極で反射した光を散乱させて再度バルクヘテロジャンクション層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0286】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0287】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、又はいわゆる集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0288】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
【0289】
また、光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属又は各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0290】
(パターニング)
前記電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0291】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェットプリント法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
【0292】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングしたりすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
【0293】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、本発明の有機薄膜や有機積層膜以外の、有機光電変換素子や有機EL素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミ又はガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリアー層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法、ガスバリアー性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリアー性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)又は有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0294】
〔4.3〕有機薄膜トランジスター
図4は、有機薄膜トランジスターの構成を示した概略断面図である。図では、本発明の有機薄膜、又は有機積層膜は省略して図示しているが、前述の有機EL素子と同様に素子全体が有機薄膜又は有機積層膜によって覆われている。
【0295】
図4Aは、支持体(306)上に金属箔等によりソース電極(302)、ドレイン電極(303)を形成し、両電極間に、再表2009/101862号公報に記載の有機半導体材料として、6,13−ビストリイソプロピルシリルエチニルペンタセンからなる電荷移動性薄膜(有機半導体層301)を形成し、その上に絶縁層(305)を形成し、さらにその上にゲート電極(304)を形成して電界効果トランジスターを形成したものである。
【0296】
図4Bは、有機半導体層(301)を、
図4Aでは電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極及び支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。
【0297】
図4Cは、支持体(306)上にまずコート法等を用いて、有機半導体層(301)を形成し、その後ソース電極(302)、ドレイン電極(303)、絶縁層(305)、及びゲート電極(304)を形成したものを表す。
【0298】
図4Dは、支持体(306)上にゲート電極(304)を金属箔等で形成した後、絶縁層(305)を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極(302)及びドレイン電極(303)を形成し、該電極間に本発明の発光性組成物により形成された有機半導体層(301)を形成する。
【0299】
その他、
図4E及び
図4Fに示すような構成を取ることもできる。
【実施例】
【0300】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0301】
実施例1
(有機EL素子の作製)
陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を100nm製膜したガラス基板を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥及びUVオゾン洗浄を行い、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0302】
次いで、HAT−CN(1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)を10nm蒸着して正孔注入輸送層を設けた。
【0303】
次いで、α−NPD(4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)を前記正孔注入層上に蒸着し、厚さ40nmの正孔輸送層を設けた。
【0304】
ホスト材料としてmCP(1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン)と、発光性化合物としてBis[2−(4,6−difluorophenyl)pyridinato−C2,N](picolinato)iridium(III)(FIrpic)とを、それぞれ94%、6%の体積%になるように共蒸着し、厚さ30nmの発光層を設けた。
【0305】
その後、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を蒸着し、厚330nmの電子輸送層を設けた。
【0306】
さらに、銀100nmをさらに蒸着して陰極を設けた。
【0307】
(封止膜1の作製)
水分濃度1ppm以下の乾燥窒素雰囲気下のグローブボックス内で、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(OiPr)
4)の3質量%脱水テトラフルオロプロパノール(例示化合物F−1)溶液を調液し、湿度30%の大気に1分間開放し、すぐにグローブボックス内に戻した溶液をゾル・ゲル液とした。
【0308】
ゾル・ゲル液と溶出防止膜から成る有機積層膜を下記表Iに示すような各条件で有機EL素子の陰極上に塗布成膜した。
【0309】
前記有機積層膜は、まずポリジメチルシロキサン(PDMS)を含有する塗布液を、前記陰極上に膜厚250nmで塗布成膜させ、UVを1分照射し、続いてVUVを1分照射させた後、さらに前記ゾル・ゲル液を上記PDMSを含有する膜上に膜厚100nmで塗布し、UV、VUV又は加熱により膜形成して、有機薄膜同士を重ねた積層膜を指す。
【0310】
次に、有機EL素子全体の封止部材として下記ガスバリアーフィルムを作製した。
【0311】
ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製)の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiO
xからなる無機物のガスバリアー層を層厚500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m
2・24h・atm)以下、水蒸気透過度0.001g/(m
2・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性のガスバリアーフィルムを作製した。ガスバリアーフィルムの片面に、封止樹脂層として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで形成した。そして、この封止樹脂層を設けたガスバリアーフィルムを、前記ゾル・ゲル液を塗布成膜した素子に重ね合わせた。このとき、陽極及び陰極の取出し部の端部が外に出るように、ガスバリアーフィルムの封止樹脂層形成面を、有機EL素子の封止面側に連続的に重ね合わせた。
【0312】
次に、ガスバリアーフィルムを貼り合せた試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
【0313】
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。以上の方法により、有機EL素子を封止した封止膜1を作製した。当該有機EL素子の断面図を
図1に示す。
【0314】
(封止膜2〜26の作製)
溶出防止膜有無、ゾル・ゲル液の原料種類、成膜条件、有機EL素子構成を表Iに示すように変更した以外は封止膜1と同様にして封止膜2〜26を作製した。有機EL素子の断面図を
図1、
図5〜
図9に示した。
【0315】
なお、封止膜25で使用した比較例の化合物は、特開2005−000792号公報記載の化学式(化1)で表される構造を有する化合物であり、下記構造を有する化合物を用いた。
【0316】
【化13】
【0317】
また、加熱は、グローブボックス内でホットプレートを用いて行った。また、UV照射は、グローブボックス内で、低圧水銀灯を37mW/cm
2の強度で照射した。また、VUV照射は、グローブボックス内で、キセノンエキシマー光を65mW/cm
2の強度で照射した。
【0318】
<評価>)
60℃、90%RHで1週間放置した後の発光状態を観察し、封止性能の評価を行った。具体的には、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)で、有機EL素子の発光部の一部分を拡大して撮影した。次に、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
【0319】
5:ダークスポットの発生は全く認められない
4:ダークスポットの発生面積が、0.1%以上、1.0%未満である
3:ダークスポットの発生面積が、1.0%以上、3.0%未満である
2:ダークスポットの発生面積が、3.0%以上、6.0%未満である
1:ダークスポットの発生面積が、6.0%以上である
封止膜の構成及び評価結果を下記表Iに示す。
【0320】
【表1】
【0321】
上記評価結果から、
参考例に係る塗布成膜による封止膜により高い封止性能が得られることが認められた。
【0322】
実施例2
実施例1の封止膜1と同様の構成を用いて、封止膜に使用する金属アルコキシド原料を表IIに示すように変更して、封止膜2−1〜2−8を作製し、封止性能の評価(ダークスポット耐性)を行った。封止膜2−5と2−6では、2種の金属アルコキシドを50:50のモル比で混合した。
【0323】
比較の封止膜2−7及び2−8はアルコールとして、イソプロパノール(IPA)を用いた。
【0324】
その際、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
【0325】
6:ダークスポットの発生は全く認められない
5:ダークスポットの発生面積が、0.1%以上、0.5%未満である
4:ダークスポットの発生面積が、0.5%以上、1.0%未満である
3:ダークスポットの発生面積が、1.0%以上、3.0%未満である
2:ダークスポットの発生面積が、3.0%以上、6.0%未満である
1:ダークスポットの発生面積が、6.0%以上である
封止膜の構成及び評価結果を表IIに示す。
【0326】
【表2】
【0327】
上記評価結果から、本発明に係る金属アルコキシド原料を変化させても、実施例1と同様に高い封止性能が得られることが認められた。中でも第2族元素のSrを用いることがより好ましいことが分かった。
【0328】
実施例3
実施例1で使用したゾル・ゲル液をシリコンウェハ上に膜厚100nmで塗布し、実施例1と同様な成膜条件で薄膜を作製した。作製した薄膜を、前述のSEM・EDS(Energy Dispersive X−ray Spectoroscopy:エネルギー分散型X線分析装置)による元素分析により下記式(a)の値を求めた。SEM・EDS装置はJSM−IT100(日本電子社製)を用いた。
【0329】
SEM・EDS(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析し、下記式(a)で求めた値を表IIIに示す。
【0330】
式(a) F/(C+F)
(式(a)中、F及びCは、それぞれフッ素原子及び炭素原子の濃度を表す。)
【表3】
【0331】
表IIIの結果より、実施例1のゾル・ゲル液から作製した薄膜が、フッ素原子をある割
合で膜中に留めていることが認められた。
【0332】
実施例4
次に、実施例4では、インクジェットプリント法で作製した、青色蛍光発光する照明装置(及び素子)の封止性について確認した。
【0333】
<評価用照明装置の作製>
(基材の準備)
まず、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製)の陽極を形成する側の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOxからなる無機物のガスバリアー層を層厚500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m
2・24h・atm)以下、水蒸気透過度0.001g/(m
2・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性の基材を作製した。
【0334】
(陽極の形成)
上記基材上に厚さ120nmのITO(インジウム・スズ酸化物)をスパッタ法により製膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が5cm×5cmになるようなパターンとした。
【0335】
(正孔注入層の形成)
陽極を形成した基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)
/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をインクジェットプリント法にて塗布、80℃で5分乾燥し、層厚40nmの正孔注入層を形成した。
【0336】
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層を形成した基材を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、下記組成の正孔輸送層形成用塗布液を用いて、インクジェットプリント法にて塗布、150℃で30分乾燥し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0337】
〈正孔輸送層形成用塗布液〉
正孔輸送材料 HT−3(重量平均分子量Mw=80000)
10質量部
パラ(p)−キシレン 3000質量部
(発光層の形成)
次に、正孔輸送層を形成した基材を、下記組成の発光層形成用塗布液を用い、インクジェット法にて塗布し、130℃で30分間乾燥し、層厚50nmの発光層を形成した。
【0338】
〈発光層形成用塗布液〉
ホスト化合物 H−4 9質量部
金属錯体CD−2 1質量部
蛍光材料F−1 0.1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
(ブロック層の形成)
次に、発光層を形成した基材を、下記組成のブロック層形成用塗布液を用い、インクジェット法にて塗布し、80℃で30分間乾燥し、層厚10nmのブロック層を形成した。
【0339】
〈ブロック層形成用塗布液〉
HB−4 2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 1500質量部
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール
500質量部
(電子輸送層の形成)
次に、ブロック層を形成した基材を、下記組成の電子輸送層形成用塗布液を用い、インクジェットプリント法にて塗布し、80℃で30分間乾燥し、層厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0340】
〈電子輸送層形成用塗布液〉
ET−1 6質量部
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 2000質量部
(電子注入層、陰極の形成)
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10
−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に蒸着し、膜厚1nmの薄膜を形成した。同様に、フッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム薄膜上に蒸着し、層厚1.5nmの電子注入層を形成した。
【0341】
引き続き、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
【0342】
その後、実施例1の溶出防止膜及びゾル・ゲル液(封止膜1に使った条件)を用いた封止膜をインクジェットプリント法により陰極上に作製し、その後実施例1に記載のガスバリアーフィルムを貼合させ、インクジェットプリント法を活用した有機EL素子を作製した。なお、用いた化合物を下記に示す。
【0343】
【化14】
【0344】
<評価>
封止膜1を施した有機EL素子は、ゾル・ゲル液による封止膜を成膜していない有機EL素子(実施例1封止膜21及び封止膜22)に比べて、60℃、90%RHで1週間放置した状態でのダークスポット耐性が、実施例1と同様に改善されていた。以上から、インクジェットプリント法で作製した照明装置においても、本発明に係る塗布成膜による封止膜により高い封止性能が得られることが認められた。
【0345】
実施例5
シリコンウェハ上に実施例1のゾル・ゲル液(封止膜1に使った条件)を膜厚100nmで塗布成膜し、得られた有機薄膜を60℃、90%RHで1時間放置した前後の純水の接触角を下記液適法で測定した。その結果、放置前は純水との接触角が40°であったのに対して、放置後、接触角が60°に増加していた。以上の結果から、上記ゾル・ゲル液から作製した有機薄膜が水分に触れたことで疎水性(撥水性)物質を放出し、それが膜表面に配向したことで表面の疎水性(撥水性)が高まったことが認められた。
【0346】
<接触角の測定>
有機薄膜表面の純水の接触角の測定は、JIS−R3257に基づいて、60℃、90%RHで1時間放置した前後の有機薄膜試料に対して、23℃、55%RHの雰囲気下で、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名DropMaster DM100)を用いて、純水1μLを滴下し1分後における接触角を測定した。なお、測定は有機薄膜幅手方向に対して等間隔で10点測定して、最大値及び最小値を除いてその平均値を接触角とした。
【0347】
実施例6
参考例の塗布成膜による封止膜を使用し、有機薄膜太陽電池(有機光電変換素子)を作製した。
【0348】
〈有機光電変換素子の作製〉
陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を100nm製膜したガラス基板を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥及びUVオゾン洗浄を行い、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0349】
真空蒸着装置内の真空度を1×10
−4Paまで減圧した後、陽極の上に銅フタロシアニン(CuPC)とアントラ[9,1,2−c,d,e:10,5,6−c′,d′,e′][ビス[ベンゾイミダゾロ[2,1−a]イソキノリン]]−10,21−ジオン(PTCBI)をCuCP:PTCBI=1:1の割合で共蒸着し、400nmの厚さでバルクヘテロジャンクション層を設けた。
【0350】
続いて陰極としてアルミニウム(100nm)を蒸着した。
【0351】
続いて陰極上に実施例1の封止膜1の条件で溶出防止膜及び封止膜をこの順に作製して、有機光電変換素子を作製した。
【0352】
<評価>
得られた有機光電変換素子を、60℃、90%RHに10日間放置した状態でソーラーシミュレーターの100mW/cm
2の強度の光を照射したところ、封止膜1を施した有機光電変換素子は、ゾル・ゲル液を成膜していない有機光電変換素子(実施例1封止膜21及び封止膜22)に比べて、初期状態時の光電流が維持されていた。以上の結果から、有機光電変換素子においても
参考例の塗布成膜による封止膜によって、高い封止性能が得られることが認められた。
【0353】
実施例7
参考例の塗布成膜による封止膜を使用し、有機薄膜トランジスターを作製した。
【0354】
<有機薄膜トランジスターの作製>
図4Aに従い、支持体(306)上に金属箔等によりソース電極(302)、ドレイン電極(303)を形成し、両電極間に、再表2009/101862号公報に記載の有機半導体材料として、6,13−ビストリイソプロピルシリルエチニルペンタセンから
なる電荷移動性薄膜(有機半導体層301)として厚さ約30nmの有機半導体層形成し、その上に絶縁層(305)を形成し、さらにその上にゲート電極(304)を形成して有機薄膜トランジスターを作製した。
【0355】
続いて絶縁層(305)及びゲート電極(304)上に実施例1の封止膜1の条件で溶出防止膜及び封止膜をこの順に作製して、有機薄膜トランジスターを作製した。
【0356】
<評価>
得られた有機薄膜トランジスターを、60℃、90%RHに10日間放置した状態で、pチャネルのエンハンスメント型FET(Field−Effect Transistor)の動作特性を評価したところ、封止膜1を施した有機薄膜トランジスターは、ゾル・ゲル液を成膜していない有機薄膜トランジスター(実施例1封止膜21及び封止膜22)に比べて、良好な動作特性及びキャリア移動特性を示した。以上の結果から、有機薄膜トランジスターにおいても
参考例の塗布成膜による封止膜によって、高い封止性能が得られることが認められた。
【0357】
実施例8
本発明に係るゾル・ゲル液の吸水性を下記方法にしたがって測定した。
【0358】
〈有機金属酸化物の調製〉
水分濃度1ppm以下の乾燥窒素雰囲気下のグローブボックス内で、表IVに示す各種金属アルコキシド(M(OR)
x)の3質量%脱水テトラフルオロプロパノール(例示化合物F−1)溶液を調液し、湿度50%の大気を40mLバブリングした後、すぐにグローブボックス内に戻した溶液をゾル・ゲル液とした。金属アルコキシドを2種用いた水準は、当該2種を50:50のモル比で混合した。
【0359】
<評価>
(吸水量の評価)
下記方法により吸水量を評価した。
【0360】
重水(D
2O)と金属アルコキシドとの反応により、撥水性又は疎水性物質であるフッ化アルコール(R′−OD)が生成することから、R′−ODを検出することにより吸水量を測定した。すなわち、D
2O雰囲気下に3時間放置後のR′−ODを検出した。検出は、昇温脱離分析装置TDS1200(電子科学株式会社製)を用いた。
【0361】
以上の結果を表IVに示す。
【0362】
なお、吸水量は金属アルコキシドの何倍のモル数のR′−ODを検出したかで下記基準で判断した
〇:1≦R′−OD≦2
◎:2<R′−OD
【0363】
【表4】
【0364】
表IVの結果から、本発明のゾル・ゲル液は、吸水量が多いことから吸水性に優れており、中でも第2族元素のSrを用いた水準はさらに吸水性に優れた結果を示した。