【実施例1】
【0013】
以下、本発明のガスしゃ断器の実施例について図面を参照して説明する。
本発明のガスしゃ断器は、以下に示す(1)〜(5)の特徴を有する。
(1)しゃ断動作時に消弧性ガス吹出口から吹き出される消弧性ガスを密閉しガス圧力を高めてアークを吹き消す構造としている。
(2)主固定接触子および主可動接触子は接触圧が均等に掛る構造としている。
(3)固定電極部および可動電極部を硬い金属で構成するため、投入動作時に跳返り力(固定電極部からの反作用で可動電極部を跳ね返す力)が生じるので、跳返り力を吸収するための押込みスプリングを内蔵する構造としている。
(4)主可動接触子および主固定接触子を可動アーク接触子および固定アーク接触子よりも先行して離間させるとともに、主可動接触子と主固定接触子との間にアークが発生しないように主固定接触子と固定アーク接触子との間に絶縁体を配置して電界を遮蔽させる構造としている(主可動接触子と主固定接触子との間ではアークが発生しない構造であるが、主可動接触子が主固定接触子から離脱した後の再点弧を防ぐためにも、絶縁体で遮る構造としている。)。
(5)固定電極部および可動電極部の外形全体に突起がない構造であるため、コロナ放電に対して有効である。
【0014】
そのため、本発明の一実施例によるガスしゃ断器1は、
図1に示すように、固定電極部10と、可動電極部20と、パッファ・ピストン30と、逆止弁40と、固定電極10と離間させたり当接させたりするように可動電極部20を移動させるための操作部とを具備する。
【0015】
ここで、固定電極部10は、先端部が先端面(可動電極部20側の面)に向けて末広がりの円柱状の形状を有し、末端部はガスしゃ断器1の容器(不図示)に固設されている。
固定電極部10の先端面の外周部には、凹曲面部(以下、「固定電極外周凹曲面部」と称する。)が外周に沿って形成されており、固定電極部10の先端外周部が主固定接触子11として機能するようにされている。
固定電極部10の先端面の中央部には、凹曲面部(以下、「固定電極中央凹曲面部」と称する。)が形成されているとともに、固定電極中央凹曲面部の先端中央部には、断面円形状の穴部(以下、「固定電極穴部」と称する。)が形成されており、固定電極部10の先端中央部が固定アーク接触子12として機能するようにされている。
固定電極部10の固定電極外周凹曲面部および固定電極中央凹曲面部間には、絶縁体13(セラミクスや絶縁ポリマーなど)が取り付けられている。
【0016】
可動電極部20は、円柱状の胴部と胴部の中心を貫通する軸部とからなる独楽状の形状を有する。
可動電極部20の胴部の先端面(固定電極部10側の面)の外周部には、ガスしゃ断器1が投入状態(可動電極部20と固定電極部10とが当接した状態)にされた際に固定電極部10の
固定電極外周凹曲面部と当接する凸曲面部(以下、「可動電極外周凸曲面部」と称する。)が外周に沿って形成されており、可動電極部20の胴部の先端外周部が主可動接触子21として機能するようにされている。
可動電極部20の胴部の先端面の中央部には、ガスしゃ断器1が投入状態にされた際に固定電極部10の固定電極中央凹曲面部と当接する凸曲面部(以下、「可動電極中央凸曲面部」と称する。)が形成されている。
可動電極部20の軸部の先端部(可動電極部20の可動電極中央凸曲面部の中央部から突出した部分)は、可動アーク接触子22として機能するようにされている。
なお、可動電極部20の軸部の先端部の長さは、固定電極部10の固定電極穴部の深さよりも短くされている(すなわち、ガスしゃ断器1が投入状態にされた際に可動電極部20の軸部の先端面が固定電極部10の固定電極穴部の底面に当接しないようにされている。)。
【0017】
これにより、ガスしゃ断器1を投入状態にしたときの固定電極部10と可動電極部20との接触面(主固定接触子11と主可動接触子21との接触面および固定アーク接触子21と可動アーク接触子22との接触面)を広く確保することができるため、接触抵抗を低減することができる。
【0018】
なお、放物線は直角を成す線で接している(すなわち、準線上の任意の点から放物線に引いた2本の接線は直角で交わる)ため、主固定接触子11と主可動接触子21との接触圧が均等に掛かるように、
図2に破線で示すように主固定接触子11と主可動接触子21との接触面の外側部を頂点が固定電極部10側とされた回転放物面とするとともに主固定接触子11と主可動接触子21との接触面の内側部を頂点が可動電極部20側とされた回転放物面とするのが好ましい。
同様に、固定電極部10の固定電極中央凹曲面部と可動電極部20の可動電極中央凸曲面部との接触圧が均等に掛かるように、
図2に破線で示すように両者の接触面を頂点が固定電極部10側とされた回転放物面とするのが好ましい。
【0019】
可動アーク接触子22として機能する可動電極部20の軸部の先端面には、SF6吹出口25が形成されている。
可動電極部20の胴部には、パッファ・ピストン30の先端面によって隔てられてパッファ室23および送気室26として機能する円環状の空間が形成されている。
パッファ室23は、SF6吹出流路24を介してSF6吹出口25と連通されているととともに、可動電極部20の周方向に沿って所定の間隔で形成された複数の送気流路27を介して送気室26と連通されている。
【0020】
送気流路27は、圧力を拡散する場合には出口側を広くすることにより素早く放出できSF6ガスの通りを良くできるため、送気室26側よりもパッファ室23側の方が広くされている。
送気流路27の数を多くすることにより、送気流路27のサイズを小さくすることができるとともに、圧縮されたSF6ガスを送気室26からパッファ室23にスムースに入れることができる。
【0021】
可動電極部20の可動電極外周凸曲面部の末端部(固定電極部10と反対側の端部)には、複数のアーク生成物逃し孔29が、可動電極外周凸曲面部の可動電極中央凸曲面部側の面から可動電極部20の外周面まで貫通するように、可動電極部20の周方向に沿って所定の間隔で形成されている。
アーク生成物逃し孔29は、圧力を拡散する場合には出口側を広くすることにより素早く放出できSF6ガスの通りを良くできるため、入口側(可動電極部20の可動電極中央凸曲面部側)よりも出口側(可動電極部20の外周面側)が広くされている。
【0022】
可動電極部20の軸部の末端部内には、操作室28として機能する空間が形成されている。
可動電極部20の胴部の末端部には、パッファ・ピストン30の先端部を貫通させるための円環状の貫通孔が可動電極部20の外周面に沿って形成されている。
【0023】
パッファ・ピストン30(ケーシング導体としても機能する。)は、先端面および外径がパッファ室23および送気室26の外径と同じにされた筒部を備えた円筒状の形状を有し、末端部はガスしゃ断器1の容器に固設されている。
パッファ・ピストン30の先端面の中央部には、可動電極部20の胴部の中央部を貫通させるための貫通孔が形成されている。
パッファ・ピストン30の筒部の先端部には、ガスしゃ断器1が投入状態にされるとパッファ室23と送気室26とを複数の送気流路27を介して連通するための複数の連通孔が可動電極部20の周方向に沿って所定の間隔で形成されている。
【0024】
送気室26とパッファ・ピストン30内の空間とは、可動電極部20の胴部の末端部に可動電極部20の外周面に沿って所定の間隔で取り付けられた複数の逆止弁40(スイング式逆止弁)によって隔てられている。
複数の逆止弁40は、ガスしゃ断器1の大きさ(主可動接触子21の大きさ)に合わせて3〜4個以上配置する。
複数の逆止弁40のヒンジ部は、複数の逆止弁40が重力で落下して閉じるように弁部よりも上側になるように取り付けられているとともに、中央部を可動部とし両端部を固定部とすることにより摩耗してもブレが内部で収まる構造とされている。
逆止弁40の弁部は、ガスしゃ断器1は高速度で動作するため、板状でかつ軽量な構造とされている。
逆止弁40の弁部の板の材質は、主可動接触子21と同じ材質として、電蝕を防ぐようにする。
軽量化を図るために板厚を薄くする場合には、逆止弁40の弁部を送気室26に突出した凸曲面状とすることにより、SF6ガスを圧縮する際に圧力を分散して弁部の変形を防ぐようにする。
【0025】
可動電極部20の軸部の末端面の中央部には、操作ロッド53を貫通させるための貫通孔が形成されている。
押込みスプリング51およびスプリング押え板52は、操作室28内に設けられている。
押込みスプリング51は、操作ロッド53が貫通されるとともに、一端が操作室28に形成された段差に固定され、他端がスプリング押え板52の先端面に固定されている。
スプリング押え板52は、押込みスプリング51よりも可動電極部20の軸部の末端面側になるように、操作ロッド53に固定されている。
【0026】
操作ロッド53の先端部は、操作室28に挿入されており、操作ロッド53の末端部は、パッファ・ピストン30の筒部を貫通する操作ロッド54の先端部に回転自在に取り付けられており、操作ロッド54の末端部は駆動部(不図示)に接続されている。
そのため、パッファ・ピストン30の筒部には、操作ロッド54の可動電極部20の軸方向に沿った移動を可能にさせるための貫通孔が形成されている。
これにより、駆動部を動作させると、操作ロッド54を介して操作ロッド53が可動電極部20の軸方向に沿って移動するようにされている。
【0027】
図3に示すように、バッファ・ピストン30のストローク長を“L1”とし、主固定接触子11と主可動接触子21との横方向の接触長を“L2”とし、固定アーク接触子12と可動アーク接触子22との横方向の接触長を“L3”とし、ガスしゃ断器1を投入状態にするときの主可動接触子21の跳返り余裕(マージン)を“L4”とすると、
L1>L3>L2>L4 (1)
となるようにされている。
【0028】
次に、ガスしゃ断器1をしゃ断状態(固定電極部10と可動電極部20とが離間した状態)にするときのガスしゃ断器1の動作について、
図4(a)〜(c)、
図5および
図6(a),(b)を参照して説明する。
ガスしゃ断器1をしゃ断状態にするときには、駆動部を駆動して操作ロッド53,54を介して可動電極部20を
図4(a)に白矢印で示すように固定電極部10と反対方向に移動させる。
これにより、可動電極部20が固定電極部10と反対方向に移動して固定電極部10から離れていくが、上述の(1)式で示したようにL3>L2とされているため、
図5に示すように可動アーク接触子22が固定アーク接触子12から完全に離脱する前に主可動接触子21が主固定接触子11から完全に離脱するため、主固定接触子11と主可動接触子21との間ではアークが生じることはない。
【0029】
また、パッファ室23内のSF6ガスがパッファ・ピストン30の先端面によって押し出されてSF6吹出流路24を介してSF6吹出口25から吹き出されるが、可動アーク接触子22が固定アーク接触子12から完全に離脱するまでは固定電極部10の固定電極穴部は可動アーク接触子22で密閉された状態となっているため(
図5の破線の丸印参照)、従来のガスしゃ断器のような開放型に比べてパッファ室23内の圧力上昇を素早く行うことができる。
なお、パッファ・ピストン30の筒部が送気流路27の入口側(送気室26側)を完全に閉じるまで送気室26内のSF6ガスが送気流路27を介してパッファ室23に移動するが、この状態でのパッファ室23の容積は送気室26に比べて大きくされているので問題となることはない。
【0030】
可動電極部20が固定電極部10と反対方向に更に移動すると、
図4(b)に示すように可動アーク接触子22が固定アーク接触子12から完全に離脱する。
このとき、
図6(a)に稲妻印で示すように固定電極部10と可動電極部20との間にアークAが発生するが、パッファ室23内のSF6ガスがSF6吹出流路24を介してSF6吹出口25から一気に吹き出されるため、発生したアークAを消弧することができる。
このとき、アークAは発生した直後に消弧することが肝要であり、アークAが成長すると消弧に時間が掛かるようになるが、固定電極部10の固定電極穴部内で圧縮されたSF6ガス(
図5参照)は、
図6(a),(b)に示すように、可動アーク接触子22のSF6吹出口25から吹き出されるSF6ガスを受け止めてアークAに向かわせる機能も備えるため、アークAを発生した直後に消弧することができる。
また、固定電極部10の中央部を凹曲面形状とすることにより、可動アーク接触子22のSF6吹出口25から吹き出されたSF6ガスを反射してアークAが引き伸ばして消弧し易くしている。
このとき、固定電極部10および可動電極部20がアークAによって高温により微量ほど溶けてイオン化するが、SF6ガスでアークAを素早く消弧することができるため、固定電極部10および可動電極部20の損耗を防げるので、ガスしゃ断器1のメンテナンス周期を延伸できる。
【0031】
アークAが消弧されるとイオン化していた微量な金属は冷却されて固形物(以下、「アーク生成物」と称する。)となるため、SF6ガスを可動電極部20の可動電極外周凸曲面部と可動電極中央凸曲面部との間に当ててアーク生成物をSF6ガスと共に複数のアーク生成物逃し口29の入口に導いて複数のアーク生成物逃し口29の出口から吹き出すようにしている(
図4(b)参照)。
また、主固定接触子11および主可動接触子21にアーク生成物が付着しないように、主固定接触子11および主可動接触子21は固定アーク接触子12および可動アーク接触子22の裏面側(固定電極部10および可動電極部20の外周面側)に配置しているとともに、SF6ガスの吹き返しで主固定接触子11が汚れないように、絶縁体13でSF6ガスの流れを抑えている。
なお、アーク生成物は、ガスしゃ断器1の容器の下部に落下するため、ガスしゃ断器1のメンテナンス時に清掃することができる。
パッファ・ピストン30の筒部が送気流路27の入口を完全に閉じると、送気室26内は負圧となるため、複数の逆止弁40が開いて、バッファ・ピストン30内のSF6ガスが送気室26内に取り入れられる(
図4(b)の矢印参照)。
また、ガスしゃ断器1のしゃ断動作が完了して送気室26内の圧力がパッファ・ピストン30内の圧力と同じになると、
図4(c)に示すように複数の逆止弁40は重力で落下して閉じる。
なお、逆止弁40が閉じる際の補助として、弱いスプリングを逆止弁40に装着させるようにしてもよい(強いスプリングを装着させると、送気室26内の負圧ではスイングせず開かなく恐れがある。)。
【0032】
次に、ガスしゃ断器1を投入状態にするときの動作について、
図7(a)〜(c)を参照して説明する。
ガスしゃ断器1を投入状態にするときには、駆動部を駆動して操作ロッド53,54を介して可動電極部20を
図7(a)に白矢印で示すように固定電極部10の方向に移動させる。
【0033】
可動電極部20が固定電極部10の方向に移動すると、パッファ室23の容積が次第に小さくなってパッファ室23内は負圧となるため、
図7(b)に示すようにガスしゃ断器1の容器内のSF6ガスがSF6吹出口25および吹出流路24を介してパッファ室23内に吸入される。
また、送気室26の容積が次第に小さくなって、複数の逆止弁40は閉じた状態のままとなるとともに、送気室26内のSF6ガスが圧縮される。
送気室26内の圧縮されたSF6ガスは、
図7(c)に示すようにパッファ・ピストン30の筒部に形成された連通孔が送気流路27の出口側(パッファ室23側)の位置まで達すると、パッファ室23と送気室26とが送気流路27を介して連通するため、パッファ室23内に一気に送り込まれる結果、送気室26内の圧力はパッファ室23内の圧力と同じになる。
【0034】
固定電極部10および可動電極部20は硬い金属で構成されているため、
図7(c)に示すように固定電極部10と可動電極部20とが当接すると、反作用力が固定電極部10から可動電極部20に掛り、この反作用力は跳返り力となる。
そのため、跳返り力を押込みスプリング51で吸収することにより、可動電極部20のリバウンドを抑えるようにしている。
【0035】
押込みスプリング51は可動電極部20を固定電極部10に向けて押して両者の接触状態を保つため、地震などの外部からの振動(応力)に対して固定電極部10と可動電極部20とが離間することを防止できるとともに、固定電極部10および可動電極部20の銀メッキの摩耗を極力抑えることができる。