(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水圧転写フィルムを水面に浮遊させ、該水圧転写フィルムの表層の転写層の上から被転写体を押圧して、該被転写体に前記転写層を水圧によって転写する水圧転写方法において、
前記被転写体の被転写面が、ガラス質又は無極性高分子から形成され、
前記水圧転写の前処理として、前記被転写面に有機無機複合化合物による表面改質処理を行ない、
前記有機無機複合化合物が3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする水圧転写方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水圧転写方法は、立体的な面を有する被転写体へ印刷模様等の転写が可能であるため、様々な組成のものへの転写が期待される。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといった無極性高分子は分子間力による結合力が弱く、釉薬などのセラミックスやガラス質といった表面がち密な材料は機械的な結合力が弱く、これらは被密着性が劣る。従って、これらに水圧転写フィルムの転写層を密着させるには、転写層の被転写体への密着力の向上が要求される。
【0006】
しかし、水圧転写方法は、水圧転写の際の水による色のにじみや膨潤を防ぐため、乾式のフィルムを用いるものである。乾式という条件により、使用することができる原材料に制約があり、転写層の被転写体への密着力を向上させることは難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は、被転写面が、被密着性に劣るガラス質又は無極性高分子であっても、水圧転写をすることが可能となる、水圧転写方法及び水圧転写装飾品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水圧転写方法は、水圧転写フィルムを水面に浮遊させ、該水圧転写フィルムの表層の転写層上から被転写体を押圧して、該被転写体に前記転写層を水圧によって転写する水圧転写方法において、前記被転写体の被転写面が、ガラス質又は無極性高分子から形成され、前記水圧転写の前処理として、前記被転写面に有機無機複合化合物による表面改質処理を行うこととしている。
【0009】
本発明の水圧転写方法では、被転写面として被密着性に劣るガラス質又は無極性高分子に、有機無機複合化合物による表面改質処理が行われることにより、被密着性を改善し、これら被転写面に水圧転写をすることが可能となる。
【0010】
また、前記有機無機複合化合物がシランカップリング剤であることにより、上記効果に加え、シランカップリング剤の縮合性によって、水圧転写装飾品は、耐水性や耐アルカリ性などの耐久性に優れたものとなる。
【0011】
また、前記表面改質処理が、静電塗装処理、加圧塗装処理又は燃焼塗装処理のいずれか一つであることにより、上記効果に加え、その他の表面処理と比較して、処理を行う設備のエネルギー消費を小さくすることができる。
【0012】
また、水圧転写装飾品は、上記に記載の水圧転写方法で得られることにより、被転写体が、ガラス質又は無極性高分子であっても、表面改質処理により、印刷模様等がきれいに転写された装飾品とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における水圧転写方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の水圧転写方法は当該構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0015】
本発明は、水圧転写フィルム10を水面に浮遊させ、水圧転写フィルム10の表層の転写層12の上から被転写体30を押圧して、被転写体30に転写層12を水圧によって転写する水圧転写方法において、被転写体30の被転写面30Aが、ガラス質又は無極性高分子から形成され、水圧転写の前処理として、被転写面30Aに有機無機複合化合物による表面改質処理を行うことを特徴とするものである。
【0016】
本実施形態の水圧転写方法を用いることによって、被転写体30は、表面改質処理、下塗材塗装、水圧転写、上塗材塗装の順で処理等がなされ、水圧転写装飾品となる。
【0017】
(被転写体)
被転写体30とは、水圧転写フィルム10によって装飾されるものである。そしてその組成は、特に限定されるものではないが、本発明においては、水圧転写フィルム10の転写層12を密着させることが困難である特殊な下地として、ガラス質からなるもの、無極性高分子からなるものなどが対象となる。
【0018】
ガラス質とは、非晶質の酸化物を意味するものであるが、技術常識の通り、その一部が結晶化していてもガラス質であるものとする。ガラス質は一般に、SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2などの金属酸化物を、700〜1300℃の温度範囲まで昇温し溶解させた後、冷却し、ガラス化させてち密な表面構造のものとしている。ち密な表面構造のため、ガラス質は、機械的結合力が弱く、水圧転写フィルム10の転写層12を密着させることが困難であるものである。ガラス質である物として、非晶質固体(ガラス)、陶磁器、衛生陶器、琺瑯などがある。
【0019】
衛生陶器とは、建築の衛生設備に用いられる陶磁器製器具のことであり、洗面器、便器、流しなどがある。衛生陶器は、水が流れる部分として、例えば、便器のボウル部などは、異物等の付着による汚れを防ぐため、その表面は機械的結合力の弱いガラス質である必要がある部分である。しかし、その他の部分として、例えば、便器の外側部などは、水圧転写フィルム10の転写層12によって装飾されることが望まれる部分である。そして、汎用のマスキングテープなどを用いることにより、これら部分に応じて装飾部と非装飾部とに分けることができる。
【0020】
無極性高分子とは、永久双極子を持たない高分子物質であって、通常程度の不純物や技術常識として通常加えられる添加剤などに由来する永久双極子を含んだものであっても、無極性高分子とする。無極性高分子の例として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂などがある。無極性高分子は、極性が無いが故に分子間力が弱く、これらに水圧転写フィルム10の転写層12を密着させることが困難なものである。
【0021】
(表面改質処理)
表面改質処理とは、被転写体30の表面を改質させる処理のことであり、後述する有機無機複合化合物を均一に被転写体30の被転写面30Aにコーティングするものである。なお、表面改質処理を行う前に、被転写体30は、エタノールなどによる脱脂により脂分などの不純物が除去されるのが好ましい。
【0022】
表面改質処理の方法として、静電塗装処理、加圧塗装処理、燃焼塗装処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、オゾン処理、レーザー照射処理、電子線照射処理などの方法を使用することができる。これら表面改質処理の方法の中でも、その他の表面処理と比較して、処理を行う設備のエネルギー消費が小さい、静電塗装処理、加圧塗装処理、燃焼塗装処理がより好ましい。また、有機無機複合化合物の所要量が少なく済む、静電塗装処理、燃焼塗装処理がさらに好ましい。
【0023】
静電塗装処理とは、一般に、表面改質処理剤を負の極性に帯電させて、アースされた被転写体30に向けて噴出し、静電界の電気力線によって誘導させて、被転写体30に対して塗着させる塗装処理である。汎用の静電塗装機を用いて塗装処理することができる。
【0024】
加圧塗装処理とは、いわゆるエアー塗装であり、表面改質処理剤と希釈剤とを均一に混合させた状態で、加圧された空気の力で被転写体30に向けて噴射し、表面改質処理剤を被転写体30に対して均一に塗着させる塗装処理である。汎用のエアー塗装機を用いて塗装処理することができる。
【0025】
燃焼塗装処理とは、表面改質処理剤と燃焼剤とを均一に混合させた状態で燃焼させ、燃焼させた火炎を被転写体30に向けて噴射し、表面改質処理剤を被転写体30に対して均一に塗着させる塗装処理である。燃焼塗装処理は、フレーム塗装処理、火炎塗装処理ともいう。汎用の燃焼塗装機を用いて塗装処理することができる。
【0026】
(有機無機複合化合物)
有機無機複合化合物とは、本明細書において、金属原子、半導体原子又は非金属原子に、1以上の有機基が結合した化合物であり、被転写体30であるガラス質や無極性高分子の表面の被密着性を改質するものである。
【0027】
有機無機複合化合物に含まれる金属原子として、チタン、アルミ、ケイ素、などが挙げられる。これら金属原子が含まれることによって、有機無機複合化合物が被転写体30に密着し易くなる。
【0028】
有機無機複合化合物に含まれる有機基として、アルキル基、アルコキシ基、などが挙げられる。これら有機基が含まれることによって、転写層12が有機無機複合化合物(被転写体30)に密着し易くなる。
【0029】
アルキル基を含む有機無機複合化合物として、テトラメチルチタン、テトラメチルアルミニウム、テトラメチルシラン、テトラエチルチタン、テトラエチルアルミニウム、テトラエチルシラン、1,2−ジクロロテトラメチルチタン、1,2−ジクロロテトラメチルアルミニウム、1,2−ジクロロテトラメチルシラン、1,2−ジクロロテトラエチルチタン、1,2−ジクロロテトラエチルアルミニウム、1,2−ジクロロテトラエチルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどを使用することができる。
【0030】
また、アルコキシ基を含む有機無機複合化合物として、シランカップリング剤も使用することができる。シランカップリング剤とは、有機官能基、加水分解性と縮合性とを有する基(アルコキシ基)、を含有する化合物であり、例えば、一般式:R
1−(CH
2)
n−Si(OR
2)
mで表されるものである。R
1は有機官能基であり、R
2はメチル基又はエチル基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。シランカップリング剤を使用することによって、被転写体30への被密着性を改質することに加え、シランカップリング剤の縮合性によって、水圧転写装飾品は耐水性や耐アルカリ性などの耐久性に優れたものとなる。
【0031】
シランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを使用することができる。
【0032】
有機無機複合化合物は、上記各々の表面改質処理に通常必要とされる成分を加えて、表面改質処理に使用する。表面改質処理に通常必要とされる成分とは、静電塗装処理では溶媒としての水、加圧塗装処理では水やエタノールやブタノールなどの希釈剤、燃焼塗装処理ではエタノールやブタノールなどの燃焼剤、プラズマ処理ではアルゴン、オゾン処理では酸素やオゾン、などが挙げられる。
【0033】
(下塗材塗装)
上記表面改質処理後に、被転写体30に下塗材を塗装することが好ましい。水圧転写フィルム10の密着性をより向上させるためである。下塗材には汎用の合成樹脂系下塗材を使用し、ウレタン系やアクリル系の合成樹脂下塗材を好適に使用することができ、熱硬化型、常温硬化型のどちらも使用することができる。また、希釈剤の違いによる水系塗料であっても溶剤系塗料であっても使用することができる。一例を挙げると、ネオペイントウレタン#7000AB(ウレタン系、常温硬化型、溶剤系、亜細亜工業株式会社製)、キクスイプライマーバンノウS(アクリル系、常温硬化型、溶剤系、菊水化学工業株式会社製)などを使用することができる。
【0034】
下塗材塗装は、汎用のエアー塗装機を用いて下塗材塗装することができる。また、希釈剤などは、各々の下塗材の塗装仕様書に従う。
【0035】
(水圧転写フィルム)
水圧転写フィルム10とは、水圧転写を行うフィルムであり、水溶性または水剥離性を有する支持体層11と、被転写体30に転写される印刷模様等が施された転写層12と、が積層されたフィルムである。
【0036】
支持体層11には、水溶性または水剥離性を有するビニルアルコール樹脂などを使用する。転写層12には、耐水性(非水溶性且つ非水膨潤性)に優れる、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂などを使用する。転写層12は、インクジェット印刷により印刷をすることができるものである。これにより、一般的な印刷であるグラビア印刷のように印刷柄ごとのシリンダ(版胴)を必要としないため、小数量からの水圧転写に適したものとなっている。インクジェット印刷に用いられるインクには、耐候性の高い顔料と合成樹脂とを使用する。
【0037】
水圧転写フィルム10の形成物のうち被転写体30に転写されるものは、転写層12である。そして、水圧転写の際の水による色のにじみや膨潤を防ぐため、これらは乾燥した状態のフィルムになっている。乾式した状態という限られた条件であるため、使用可能な原材料にも制約があり、被転写体30への密着性向上に困難性があるものである。
【0038】
水圧転写フィルム10は市販品を用いることができ、一例を挙げると、アクアトランサ(DIC株式会社製)、カールフィット(大日本印刷株式会社製)、インクジェット用紙デコレーション用水圧転写フィルム(プラス株式会社製)、インクジェット用水転写紙(株式会社和紙のイシカワ製)などを使用することができる。
【0039】
(水圧転写)
水圧転写とは、被転写体30の表面に、水圧転写フィルム10を用いて、水圧により印刷模様等を転写印刷する方法である。水圧転写は、平面的な形状のみならず立体的な形状に対しても転写印刷が可能という利点を有する。
【0040】
転写方法の一例を以下に記載する。28〜32℃の温水21が入った水槽20に、水溶性または水剥離性の支持体層11側を下にして水圧転写フィルム10を水面に浮遊させる。皺の発生を防ぐため、適宜、型枠22によって水圧転写フィルム10を固定する。水溶性であるため、支持体層11は、水に溶け、又は、転写層12から剥離する。支持体層11が溶かされ又は剥離されることによって、転写層12が水面に遊離する。
【0041】
必要により、活性剤塗布機26を用いて、活性剤25を転写層12に噴霧することができる。活性剤25とは、転写層12の一部を溶解又は膨潤させて、被転写体30への密着力を高める薬剤である。活性剤25として、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジブチルフタレート又はこれらの混合物を使用することができる。
【0042】
水面上の転写層12に被転写体30を押圧して、被転写体30に転写層12を水圧によって転写する。なお、被転写体30には、落下を防止するために固定治具31を取り付ける。
【0043】
(上塗材塗装)
上塗材とは、水圧転写を施した被転写体30の上に塗装するもので、耐候性や耐水性を付与するものである。上塗材には汎用の合成樹脂系上塗材を使用し、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系の合成樹脂上塗材を好適に使用することができ、熱硬化型、常温硬化型のどちらも使用することができる。また、水系塗料であっても溶剤系塗料であっても使用することができる。一例を挙げると、スーパーラックエコ(アクリル系、熱硬化型、溶剤系、日本ペイント株式会社製)、ウレタンクリヤーUC−810F(ウレタン系、常温硬化型、溶剤系、亜細亜工業株式会社製)、シリコンクリヤーSC−310PE(シリコン系、常温硬化型、溶剤系、亜細亜工業株式会社製)、クリーンマイルドフッソ(フッ素系、常温硬化型、溶剤系、エスケー化研株式会社製)などを使用することができる。
【0044】
上塗材塗装は、汎用のエアー塗装機を用いて上塗材塗装することができる。また、希釈剤などは、各々の上塗材の塗装仕様書に従う。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0046】
(被転写体)
被転写体30として、被転写体A:衛生陶器(ガラス質)、被転写体B:ポリプロピレン容器(無極性高分子)を用いた。被転写体30は脂分を除去するため、エタノールによる脱脂を行った。衛生陶器には便器を使用し、水が流れる部分であるボウル部は養生テープで覆い、水圧転写フィルム10による装飾が施されないようにした。
【0047】
(表面改質処理)
表1に記載の表面改質処理剤及び表面改質処理を行った。静電塗装処理では、汎用の水性静電塗装機を用い、出力電圧DC30KVで行った。加圧塗装処理では、汎用のエアースプレーガンを用い、エアー圧0.2MPaで行った。燃焼塗装処理では、汎用の燃焼塗装機を用い、有機無機複合化合物と燃焼剤との合計流量1g/minで行った。
【0048】
【表1】
【0049】
(下塗材)
下塗材として、以下のものを使用した。下塗材P(ネオペイントウレタン#7000AB(亜細亜工業株式会社製))。
【0050】
(水圧転写)
図1に示す設備、及び表2に記載の水圧転写フィルム10及び条件で水圧転写を行った。なお、活性剤25には、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジブチルフタレートの混合溶液を用いた。
【0051】
【表2】
【0052】
(上塗材)
上塗材として、以下のものを使用した。上塗材T(ウレタンクリヤーUC−810F(亜細亜工業株式会社製))。
【0053】
(試験例)
表3及び4に記載の試験例に従い、被転写体30としてガラス質又は無極性高分子に水圧転写を行い、性能確認試験として、密着力と耐アルカリ性を試験した。なお、試験例1〜7及び9〜15は実施例であり、試験例8及び16は比較例である。
【0054】
(密着力)
密着力は、付着性(JIS K 5600−6−6:1999(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)))に準拠して測定した。そして、試験結果の分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。)〜5(剥がれの面積が35%を上回る。)で評価した。
【0055】
(耐アルカリ性)
耐アルカリ性は、JIS A 6909:2014(建築用仕上塗材)7.16耐アルカリ性試験A法に準拠して測定した。ただし、試験基材は、被塗装体をおよそ150×50×4mmとなる大きさに切断したものを使用した。そして、剥がれ及び膨れの発生がないもの(以下、異常がないものとする。)を○、膨れの発生があるものを△、膨れ及び剥がれの発生があるものを×、として評価した。
【0056】
(試験例1〜8)
試験例1〜8は、表3に示すように、被転写体30としてガラス質の衛生陶器に水圧転写を行ったものである。表面改質処理と下塗材塗装を行った試験例1〜6は、密着性は分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。)であり、耐アルカリ性は異常がなかった。表面改質処理を行い、下塗材塗装を行わなかった試験例7は、密着性は分類2(剥がれの面積が5%を超えるが15%を上回ることはない。)であるが、耐アルカリ性は異常がなかった。表面改質処理を行わず下塗材塗装を行った試験例8は、密着性は分類5(剥がれの面積が35%を上回る。)であり、耐アルカリ性は膨れ及び剥がれの発生が確認できた。
【0057】
【表3】
【0058】
(試験例9〜16)
試験例9〜16は、表4に示すように、被転写体30として無極性高分子のポリプロピレン容器に水圧転写を行ったものである。表面改質処理と下塗材塗装を行った試験例9〜14は、密着性は分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。)であり、耐アルカリ性は異常がなかった。表面改質処理を行い、下塗材塗装を行わなかった試験例15は、密着性は分類2(剥がれの面積が5%を超えるが15%を上回ることはない。)であるが、耐アルカリ性は異常がなかった。表面改質処理を行わず下塗材塗装を行った試験例16は、密着性は分類5(剥がれの面積が35%を上回る。)であり、耐アルカリ性は膨れ及び剥がれの発生が確認できた。
【0059】
【表4】