(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)高温超伝導線で形成された超伝導コイルと、該超伝導コイルに電流を供給する電源と、前記超伝導コイルの両端部を互いに短絡させる短絡経路を形成可能な保護装置とを備える超伝導磁石装置を設置し、
(B)前記電源からの電流を超伝導状態の前記超伝導コイルに流すことにより、前記超伝導コイルに磁場を発生させ、
(C)前記(B)により前記磁場を発生させた後に、前記超伝導磁石装置の異常が検出された場合、又は、前記電源と前記超伝導コイルとを互いに切り離す場合に、前記保護装置により前記短絡経路を形成し、
前記電源と前記超伝導コイルとが互いに切り離された後、
(D)前記短絡経路と前記超伝導コイルとを電流が循環している状態で、前記電源、または、前記電源に代わる新しい電源から前記超伝導コイルへ電流を再び流し、
(E)前記(D)において前記電源から前記超伝導コイルへ流す電流を増やすことにより、前記短絡経路を流れる電流の大きさが設定値以下になったことを検出したら、前記短絡経路を解除する、超伝導磁石装置の電流低下抑制方法。
前記電源は、一定の電流を前記超伝導コイルに供給する定電流源であり、前記一定の電流は、前記超伝導コイルにおいて、前記超伝導コイルの一端部から他端部への向きに流れ、
前記超伝導コイルに逆並列に接続された逆方向ダイオードを備える、請求項6に記載の超伝導磁石装置。
前記設定条件は、検出された前記大きさがしきい値より大きいという条件であり、または、検出された前記大きさが設定範囲内にあるという条件である、請求項11又は12に記載の超伝導磁石装置。
前記作動装置は、短絡解除信号を受けたら、または、短絡解除信号と短絡解除指令の両方を受けたら、前記保護装置による前記短絡経路を解除する、請求項6及び8〜14のいずれか一項に記載の超伝導磁石装置。
前記電源は、一定の電流を前記超伝導コイルに供給する定電流源であり、前記一定の電流は、前記超伝導コイルにおいて、前記超伝導コイルの一端部から他端部への向きに流れる、請求項7に記載の超伝導磁石装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(高温超伝導線の利点)
図1の超伝導磁石装置では低温超伝導線を用いていたが、高温超伝導線を用いた超伝導磁石装置の実現が望まれる。高温超伝導線では、主に以下の2つの利点があるからである。第1に、高温超伝導線の転移温度は、例えば液体窒素の沸点(77K)以上であり、低温超伝導線の転移温度よりも高い。第2に、高い磁場中においても、高温超伝導線に大きな電流を流すことができる。
【0014】
したがって、液体ヘリウムを用いなくても、例えば液体窒素や小型冷凍機などにより、高温超伝導線で形成した超伝導コイルを超伝導状態にすることができる。また、高温超伝導線の超伝導コイルは、高い磁場中でも(周囲から発生する磁場が高い場合でも)、高温超伝導線の超伝導コイルに大電流を流すことにより強力な磁場が得られる。さらに、高温超伝導線の超伝導コイルを有する超伝導磁石装置では、低温超伝導線を用いた場合よりも小型の構成で、同じ強さの磁場を発生させることができる。
【0015】
(高温超伝導線を用いた装置の構成)
しかし、高温超伝導線を用いた超伝導磁石装置は、永久電流モードで磁場を発生させることができない。高温超伝導線同士を、もしくは高温超伝導線と低温超伝導線とをゼロの電気抵抗で接続することができないからである。すなわち、
図1(C)の超伝導閉回路の電気抵抗はゼロであるが、高温超伝導線を用いた場合には電気抵抗ゼロの閉回路を実現できない。
【0016】
そのため、高温超伝導線を用いた超伝導磁石装置の構成として、永久電流スイッチを使用しない
図2の構成が考えられる。
図2において、超伝導磁石装置は、高温超伝導線で形成された超伝導コイル41と、超伝導コイル41に並列に接続されたダイオード43と、超伝導コイル41に電流を供給する電源45とを有する。超伝導コイル41およびダイオード43を含む回路部分は、例えば冷却容器47内の冷媒(すなわち、液体窒素、液体水素、液体アルゴン、液体ヘリウム、または他の極低温冷媒)や小型冷凍機などにより、高温超伝導線の転移温度以下に冷却される。
【0017】
(高温超伝導線を用いた装置の磁場発生方法)
図2の場合、以下の手順により、超伝導磁石装置に磁場を発生させることが考えられる。
まず、超伝導コイル41およびダイオード43を、上述の冷媒や小型冷凍機などにより、高温超伝導線の転移温度以下に冷却する。
次に、電源45からの電流を、例えば50A〜2000Aの大電流まで増やす。
その後、電源45を超伝導コイル41に接続した状態を維持することにより、超伝導コイル41を流れる電流を一定に維持する。電源45の接続を維持するのは、高温超伝導線を用いた場合には電気抵抗ゼロの超伝導閉回路を実現できないからである。
【0018】
(高温超伝導線を用いた装置の課題)
図2の場合において、例えば次の(1)〜(3)のように、異常が起こると、電源45と超伝導コイル41とが互いに電気的に切り離されることが想定される。
(1)停電または瞬低(瞬時電圧低下)が起こると、電源45からの電流供給が停止され、電源45が超伝導コイル41から切り離された状態になる。
(2)電源45が供給する電流値が許容範囲よりも大きく又は小さくなったことや、電源45を冷却する冷却水の流れが停止したことなどの故障がセンサにより検知された場合に、電源45と超伝導コイル41とを接続するスイッチ(図示せず)がオフにされることにより、両者が互いに切り離される。
(3)他の理由により(例えばメンテナンスを行うために)、電源45と超伝導コイル41とを接続するスイッチがオフにされることにより、両者が互いに切り離される。
【0019】
このような場合、ダイオード43と超伝導コイル41を含む閉回路に電流が流れることにより、超伝導コイル41の電流が一瞬でゼロになることが防止される。しかし、ダイオード43の発熱により、一瞬ではないとしても急速に電流が減少してゼロになってしまう。この場合、ダイオード43により超伝導コイル41の放電破壊が防止されても、次の問題(A)(B)(C)の少なくともいずれか(例えば全て)が生じる。
【0020】
(A)超伝導磁石装置による磁場の利用を継続できなくなる。例えば、超伝導磁石装置をリニアモーターカーの走行に利用している場合には、リニアモーターカーの継続走行ができなくなる。
(B)復旧時に、超伝導コイル41に流れる電流の値をゼロから目標の大電流値まで増やすのに、半日以上(例えば1日〜1ヵ月程度)かかる。超伝導コイル41のインダクタンス(例えば10H〜2000H、好適には50H〜1000H)が大きく、発熱しないように徐々に電流値を増やすからである。
【0021】
(C)以下のように、高温超伝導コイル41のヒステリシス損失により、熱暴走してしまう可能性がある。
高温超伝導線は、素材の性質と作製方法の都合によりそのほとんどがテープ状の線材である。典型的なテープ状高温超伝導線断面のアスペクト比(縦横比)は5ないしは10以上である。さらに、テープ面に薄く広く高温超伝導部分が存在していることが特徴である。そのため、テープ面に垂直な変動磁場に対して、変動磁場を遮蔽するように流れる渦電流(遮蔽電流)が発生しやすい。
低温超伝導線では、これを防ぐために超伝導部分をマルチフィラメント化することが行われている。しかし、高温超伝導線では、テープ形状以外の線材も含めて、マルチフィラメント化することが難しい、もしくは低温超伝導線なみにマルチフィラメント化することができない。マルチフィラメント化されていない、もしくはその量が少ないと、変動磁場中で遮蔽電流によりヒステリシス損失が発生する。したがって、高温超伝導コイル41では低温超伝導コイルに比べてヒステリシス損失が大きく、磁石の励磁、消磁中(磁石電流の増加や減少中)に高温超伝導コイル41内ではより大きなヒステリシス損失による発熱が発生する。
超伝導コイル41内のヒステリシス損失が特に大きい場所では、ヒステリシス損失による発熱により超伝導コイル41の一部がその場所で局所的に温度上昇し場合によっては臨界温度を超えてしまう。
電流が印加されているため、このときの臨界温度は、無磁場、電流が印加されていないときの臨界温度にくらべて大幅に小さくなっている。
このため少しの温度上昇により超伝導が常伝導に転移してしまう。
これにより、超伝導線内部に電気抵抗が発生し、その電気抵抗によりさらなる局所的な発熱が発生する。これによりさらに局所的な温度上昇するという悪循環が発生する。
これを局所的な熱暴走と呼ぶ。
局所的な熱暴走が発生した場所のみで超伝導コイル41の蓄積エネルギーが熱になるため、その温度上昇による超伝導コイル41の断線や焼損など超伝導コイル41に致命的な損傷を与える。
局所的な熱暴走を防ぐためには、励磁や消磁の際に電流の変化速度を遅くすることが通常行われる。これによりヒステリシス損失による局所的な発熱量がその場所の冷却能力を下回ればよい。
しかしダイオード43による保護回路により電流が減少する速度は非常に速く、ダイオード43による保護回路だけでは高温超伝導コイル41特有のヒステリシス損失により、局所的な熱暴走が発生してしまう可能性があることを本願の発明者は見出した。
【0022】
本願の発明者は、上記の検討により、高温超伝導線により形成した超伝導コイルを用いた超伝導磁石装置において、異常な状態により、又は他の理由(例えば電源のメンテナンス)により、電源が超伝導コイルから切り離された場合に、超伝導コイルに流れる電流の減少を抑えることが望ましいという課題を見出した。すなわち、電源が超伝導コイルから切り離された場合に、超伝導コイルを流れる電流の値の減少を抑えることができれば、上記(A)(B)(C)の問題を解決できることを、本願の発明者により見出した。
【0023】
本発明の目的は、超伝導磁石装置において、異常な状態が検出されたことにより、又は他の理由(例えば電源のメンテナンス)により、電源と超伝導コイルとが互いに切り離された場合に、超伝導コイルを流れる電流の減少を抑えることができる方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述の目的を達成するため、本発明によると、
(A)高温超伝導線で形成された超伝導コイルと、該超伝導コイルに電流を供給する電源と、前記超伝導コイルの両端部を互いに短絡させる短絡経路を形成可能な保護装置とを備える超伝導磁石装置を設置し、
(B)前記電源からの電流を超伝導状態の前記超伝導コイルに流すことにより、前記超伝導コイルに磁場を発生させ、
(C)前記(B)により前記磁場を発生させた後に、前記超伝導磁石装置の異常が検出された場合、又は、前記電源と前記超伝導コイルとを互いに切り離す場合に、前記保護装置により前記短絡経路を形成する、超伝導磁石装置の電流低下抑制方法が提供される。
【0025】
この方法によると、超伝導状態の超伝導コイルに電源から電流を流して超伝導コイルに磁場を発生させた後に、超伝導磁石装置の異常が検出された場合、又は、電源と超伝導コイルとを互いに切り離す場合に、保護装置により短絡経路を形成する。その結果、超伝導コイルと短絡経路を含む閉回路が形成される。したがって、超伝導コイルを流れる電流は、この閉回路を循環する。この閉回路の電気抵抗は、非常に小さいので、閉回路を循環する電流の減少を抑えることができる。
【0026】
したがって、電源から超伝導コイルに電流が供給されなくなっても、しばらくの間(例えば、6時間〜数日)、超伝導コイルは、磁場を発生し続けることができる。
【0027】
また、電源からの電流が供給されなくなった後、比較的長い時間(例えば、6時間〜数日)のうちに電源を復旧させれば、復旧の完了時には、上述の閉回路を流れる電流の値は、まだ十分に大きい。したがって、復旧の完了後に、電源からの電流供給を再開させるときに、超伝導コイルを流れる電流の値をゼロから徐々に増加させることが不要になるので、電流値を目標値まで徐々に上昇させるのにかかる時間が短くなる。例えば、上述の異常な状態が真夜中に生じた場合に、その日の午前中に復旧を完了させても、短時間で、電流値を目標値まで上昇させることができる。
【0028】
好ましくは、上述の電流低下抑制方法において、
前記電源と前記超伝導コイルとが互いに切り離された後、
(D)前記短絡経路と前記超伝導コイルとを電流が循環している状態で、前記電源、または、前記電源に代わる新しい電源から前記超伝導コイルへ電流を再び流し、
(E)前記(D)において前記電源から前記超伝導コイルへ流す電流を増やすことにより、前記短絡経路を流れる電流の大きさが設定値以下になったことを検出したら、前記短絡経路を解除する。
【0029】
このように、例えば異常な状態の解消後に、電源から超伝導コイルへの電流供給を開始し、短絡経路を流れる電流の大きさが設定値以下になったことを検出したら、短絡経路を解除して元の状態に戻す。したがって、元の状態に戻す時に、短絡経路の電流により超伝導コイルの電流値が変動してしまうことを抑えることができる。
【0030】
(i)また、上述の目的を達成するため、本発明によると、
高温超伝導線で形成された超伝導コイルと、
超伝導状態の前記超伝導コイルに電流を供給することにより前記超伝導コイルに磁場を発生させる電源と、
前記超伝導コイルの両端部を互いに短絡させる短絡経路を形成可能な保護装置とを備える超伝導磁石装置が提供される。
【0031】
(ii)さらに、上述の目的を達成するため、本発明によると、
高温超伝導線で形成された超伝導コイルと、
超伝導状態の前記超伝導コイルに電源から電流を供給することにより前記超伝導コイルに磁場を発生させた場合に、前記超伝導コイルの両端部を互いに短絡させる短絡経路を形成可能な保護装置とを備える超伝導磁石装置が提供される。すなわち、本発明の超伝導磁石装置は、電源を構成要件に含んでいなくてもよい。
【0032】
このような装置によると、前記超伝導磁石装置の異常が検出された場合、又は、電源と超伝導コイルとを互いに切り離す場合に、保護装置により短絡経路を形成することができる。その結果、超伝導コイルと短絡経路を含む閉回路が形成される。したがって、超伝導コイルを流れる電流は、この閉回路を循環する。この閉回路の電気抵抗は、非常に小さいので、閉回路を循環する電流の減少を抑えることができる。
また、このような超伝導磁石装置は、例えば異常時に電流の減少を抑える保護装置の保護機能を活用しつつ、その使用態様(例えば後述の変更例8)により、電源の使用頻度を抑えることも可能である。この場合、電源を超伝導コイルに接続していない時でも、電流の減少を抑えるもしくは小さくすることができる。
【0033】
上述の超伝導磁石装置は、例えば以下のように構成することができる。
【0034】
(iii)上記(i)または(ii)の超伝導磁石装置は、
前記超伝導磁石装置が異常な状態になったことを検知すると、短絡信号を出力する検出装置と、
前記短絡信号が出力されると、前記保護装置が前記短絡経路を形成するように前記保護装置を作動させる作動装置と、を備える。
【0035】
この構成によれば、異常により電源が超伝導コイルから切り離される場合に、自動的に、超伝導コイルと短絡経路を含む閉回路を形成できる。
【0036】
(iv)上記(iii)において、前記保護装置は、スイッチを含み、該スイッチが閉じられることにより前記短絡経路が形成される。
【0037】
この構成によれば、スイッチによる簡単な構成で、上述のように電流の減少を抑えることができる。
【0038】
(v)上記(i)〜(iv)のいずれかにおいて、前記電源は、一定の電流を前記超伝導コイルに供給する定電流源であり、前記一定の電流は、前記超伝導コイルにおいて、前記超伝導コイルの一端部から他端部への向きに流れ、
上述の超伝導磁石装置は、前記超伝導コイルに逆並列に接続された逆方向ダイオードを備える。
【0039】
逆方向ダイオードを設けない場合には、次のような可能性がある。例えば上述の異常な状態により、電源と超伝導コイルとが互いに切り離された場合に、保護装置が作動する前に、超伝導コイルの電流の行き場所がなくなる。しかし、超伝導コイルは、電流を流し続けようとして、電流が流れられるように、超伝導コイルの両端の電圧(Vc=−Ld/Idt)が大きくなる(例えば1000Vになる)。その結果、放電が生じて、蓄積されていた磁場エネルギーがすべて熱エネルギーになって、超伝導コイルが焼損する。
これに対して、逆方向ダイオードを設けた場合には、この問題が次のようになくなる。例えば上述の異常な状態により、電源と超伝導コイルとが互いに切り離された場合に、保護装置が作動するまでの微小時間の間、超伝導コイルの電流の行き場所がなくなる。しかし、超伝導コイルは、電流を流し続けようとして、電流が流れられるように、超伝導コイルの両端の電圧(Vc=−Ld/Idt)が大きくなる。この電圧が、逆方向ダイオードの順方向電圧よりも大きくなると、電流が、大量に逆方向ダイオードを通って、逆方向ダイオードと超伝導コイルを循環するので、超伝導コイルの電流が一瞬で消失して超伝導コイルが焼損することを防止できる。この時、逆方向ダイオードで発熱が生じるが、直ぐに、保護装置が短絡経路を形成するので、超伝導コイルの電流の経路は、逆方向ダイオードの経路から短絡経路へ切り換わる。したがって、逆方向ダイオードでの発熱量を非常に小さく抑えることができる。
【0040】
(vi)上記(iii)において、前記検出装置は、
前記電源が前記超伝導コイルに供給する電流の大きさを検出する供給電流検出部と、
供給電流検出部が検出した電流の前記大きさが設定条件を満たさなくなったかどうかを判断する供給電流比較部と、
電流の前記大きさが前記設定条件を満たさなくなったと供給電流比較部により判断された場合には、前記異常な状態が生じたとして前記短絡信号を出力する短絡信号出力部とを含む。
【0041】
この構成によれば、供給電流比較部が、検出電流値が設定条件を満たさなくなったと判断した場合に、短絡信号出力部が短絡信号を出力することにより短絡経路が形成される。この場合、異常な状態(例えば電源の故障)が生じると、上述の検出電流値が設定条件を満たさなくなって、上述の短絡経路が形成される。
【0042】
(vii)上記(iii)において、前記検出装置は、
前記電源と前記超伝導コイルとを接続している電流路の2点間の電圧の大きさを検出する電圧検出部と、
電圧検出部が検出した電圧の前記大きさが設定条件を満たさなくなったかどうかを判断する電圧比較部と、
電圧の前記大きさが前記設定条件を満たさなくなったと電圧比較部により判断された場合には、前記異常な状態が生じたとして前記短絡信号を出力する短絡信号出力部とを含む。
【0043】
この構成によれば、異常な状態(例えば電源の故障)が生じると、電圧検出部による検出電圧の大きさが設定条件を満たさなくなって、上述の短絡経路が形成される。
【0044】
(viii)上記(iii)において、前記検出装置は、
前記電源の異常を検出する電源異常検出部と、
前記電源異常検出部が前記電源の異常を検出したら、前記異常な状態が生じたとして前記短絡信号を出力する短絡信号出力部とを含む。
【0045】
この構成によれば、電源異常検出部が電源の異常を検出したら、短絡信号出力部が短絡信号を出力する。これにより、上述の短絡経路が形成される。
【0046】
(ix)上記(iii)において、超伝導磁石装置は、
前記保護装置により形成された前記短絡経路に流れる電流の大きさを検出する短絡電流検出部と、
短絡電流検出部が検出した電流の大きさが、設定値以下であるかどうかを判断する短絡電流比較部と、
短絡電流比較部の判断の結果が肯定である場合には、短絡解除信号を前記作動装置へ出力する解除信号出力部とを備え
前記作動装置は、短絡解除信号を受けたら、または、短絡解除信号と短絡解除指令の両方を受けたら、前記保護装置による前記短絡経路を解除する。
【0047】
この構成によれば、例えば異常な状態の解消後に、短絡経路と超伝導コイルとを電流が循環している状態で、電源から超伝導コイルへの電流供給を再開した場合に、短絡経路を流れる電流の大きさが設定値以下になったら、短絡解除信号が出力される。これにより、前記作動装置は、上述の短絡経路を解除する。したがって、元の状態に戻す時に、短絡経路の電流により超伝導コイルの電流値が変動してしまうことを抑えることができる。
【0048】
(x)上記(iv)において、超伝導磁石装置は、
前記超伝導コイルと前記保護装置とを有する磁場生成装置を複数備え、
前記電源は、前記複数の磁場生成装置に共有され、
各磁場生成装置に設けられ、前記超伝導コイルを流れる電流の大きさ、または、前記超伝導コイルが発生する磁場の大きさを検出するコイル状態検出部と、
各磁場生成装置に設けられ、前記電源から当該磁場生成装置に電流が供給される閉位置と、前記電源から当該磁場生成装置が切り離される開位置との間で動作させられる電流供給スイッチと、
各磁場生成装置において、前記保護装置の前記スイッチが閉じられている状態で、コイル状態検出部により検出された前記大きさが基準値以下になったら、該磁場生成装置の電流供給スイッチを閉位置に動作させる制御装置と、を備える。
【0049】
この超伝導磁石装置では、複数の超伝導コイルに対して1つの電源を設け、超伝導コイルの電流が基準値以下になった時に電源から超伝導コイルに電流を供給するようにしたので、電源の使用頻度と使用数を抑えることができる。この場合でも、例えば異常時に電流の減少を抑える保護装置の保護機能を活用することができる(例えば後述の変更例7)。
また、電源を超伝導コイルに接続していない時でも、電流の減少を抑えるもしくは小さくすることができる。
【発明の効果】
【0050】
上述した本発明によると、超伝導状態の超伝導コイルに電源から電流を流して超伝導コイルに磁場を発生させている時に、超伝導磁石装置の異常が検出された場合、又は、電源と超伝導コイルとを互いに切り離す場合に、保護装置により短絡経路を形成する。これにより、超伝導コイルと短絡経路を含む閉回路が形成される。したがって、超伝導コイルを流れる電流は、この閉回路を循環するようになる。この閉回路の電気抵抗は、非常に小さいので、閉回路を循環する電流の減少を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0053】
図3(A)は、本発明の実施形態による超伝導磁石装置10を示す回路図である。超伝導磁石装置10は、NMR用の磁石またはMRI用の磁石として、磁場(例えば静磁場)を発生させる装置であってよい。または、超伝導磁石装置10は、他の装置(例えば、リニアモーターカーや粒子加速器)において磁場(例えば静磁場)を発生させる装置であってもよい。
【0054】
超伝導磁石装置10は、超伝導コイル3と、電源5と、冷却容器7と、保護装置9と、逆方向ダイオード11aと、順方向ダイオード11bと、検出装置13と、作動装置15と、短絡電流検出部17と、短絡電流比較部19とを備える。
【0055】
超伝導コイル3は、磁場を発生させるために設けられる。超伝導コイル3は、高温超伝導線により形成されている。この高温超伝導線は、例えばテープ状の線材である。このテープ状高温超伝導線(すなわち、テープ状の超伝導コイル3は、)の断面のアスペクト比(縦横比)は、例えば5ないしは10以上である。超伝導コイル3は、その転移温度以下に冷却されると、電気抵抗値がゼロの超伝導状態になる。
【0056】
本明細書において、「高温超伝導線」とは、一般的に無磁場中で約25K以上の臨界温度Tc(転移温度)を持つ超伝導体材料からなる線材であり、銅系などを含む酸化物超伝導体や鉄系超伝導体などの超伝導体材料からなる線材はすべて高温超伝導線である。例えば、イットリウム系超伝導体、ビスマス系超伝導体からなる線材は高温超伝導線であり、化学式YBa
2Cu
3O
7−δで表されるものやその式中の元素Yを希土類系元素を示すReで置き換えたReBa
2Cu
3O
7−δ、Bi
2Sr
2CaCu
2O
8+δ(Bi2212)やBi
2Sr
2Ca
2Cu
3O
10+δ(Bi2223)を含むBi
2Sr
2Ca
n−1Cu
nO
4+2n+δからなる線材は高温超伝導線である。また、上記線材に、ジルコニウムやシスプロシウム等の酸化物ナノ粒子を析出させて臨界電流特性を向上させたものや一部を他の元素で置き換えたものも高温超伝導線である。金属系超伝導体でもMgB
2のように超伝導転移温度が25Kを超えるものからなる線材は高温超伝導線である。
【0057】
本実施形態において、高温超伝導線の転移温度は、低温超伝導線の転移温度よりも高い。高温超伝導線の転移温度は、例えば、25K以上であって153K以下の範囲内の値(例えば液体窒素の沸点77K以上の値)であってよい。ただし、この範囲よりも高い転移温度の高温超伝導線が発見されれば、このような高温超伝導線により超伝導コイル3を形成してもよい。
【0058】
なお、本願の明細書および特許請求の範囲において、「高温超伝導線で形成された超伝導コイル」とは、少なくとも一部(一部または全部)が高温超伝導線で作られたコイルを意味する。
【0059】
電源5は、超伝導コイル3に電流を供給することにより超伝導コイル3に磁場を発生させる。好ましくは、電源5は、一定の電流を超伝導コイル3に供給する定電流源である。電源5が超伝導コイル3に供給する電流の値は、例えば10A以上であって10000A以下の範囲内であり、好適には50A以上であって2000A以下の範囲内の値である。電源5の正極と超伝導コイル3の一端部とは、導電性材料で形成された第1電流路6aにより接続されている。電源5の負極と超伝導コイル3の他端部とは、導電性材料で形成された第2電流路6bにより接続されている。なお、電源5は、電源5を除いた超伝導磁石装置10と別箇に製造販売されて、このような超伝導磁石装置10の設置時に超伝導コイル3に接続させてよい。
【0060】
冷却容器7は、超伝導コイル3を形成する高温超伝導線の転移温度以下に冷却される内部空間7aを有する。この内部空間7aに、超伝導コイル3が配置されている。冷却容器7は、例えば
図3(B)(C)または(D)の構成を有している。
【0061】
図3(B)の場合には、冷却容器7は、二重殻構造として内側容器7bと外側容器7cと有する。内側容器7bは上述の内部空間7aを有し、内部空間7aには、液体の冷媒(すなわち、液体窒素、液体水素、液体アルゴン、液体ヘリウム、または他の極低温冷媒)が溜められている。この冷媒中に超伝導コイル3が配置されている。内側容器7bと外側容器7cとの間には、真空となっている真空層7dが形成されている。
図3(B)の場合には、定期的に(例えば3ヵ月に一度)、内部空間7aへ液体の冷媒を注ぎ足すが、停電が起こっても、冷却容器7には問題が生じない。
【0062】
図3(C)の場合には、冷却容器7は、
図3(B)の場合と同じ構成を有するが、冷却容器7に冷凍機7eが取り付けられている。冷凍機7eは、内部空間7aの冷媒を再凝縮させる。
図3(C)の場合には、冷凍機7eがあるので、定期的に内部空間7aへ液体の冷媒を注ぎ足す必要はないが、停電が起こった場合には、内部空間7a内の冷媒が無くなる前に(例えば7日以内に)、内部空間7aへ液体の冷媒を注ぎ足すか、冷凍機7eへ電力を供給して冷凍機7eの運転を再開させる。
【0063】
図3(D)の場合には、冷却容器7には冷凍機7fが取り付けられている。冷凍機7fと超伝導コイル3とは熱伝導体(金属の板や編線)7gにより熱的に接続されている。
なお、冷却容器7は、冷却容器7を除いた超伝導磁石装置10と別箇に製造販売されて、このような超伝導磁石装置10とともに使用されてもよい。
【0064】
保護装置9は、超伝導コイル3の両端部を互いに短絡させる短絡経路を形成可能である。なお、本実施形態において、短絡経路の短絡とは、電流の減少速度dI/dtが、逆方向ダイオード11aの場合よりも少ないことを意味してよい。言い換えると、同じ値の電流が短絡経路と逆方向ダイオード11aとにそれぞれ流れた場合に、短絡経路の電気抵抗での発熱量(すなわち、この電気抵抗による電流の減少量)が、逆方向ダイオード11aでの発熱量(すなわち、この発熱による電流の減少量)よりも小さい。
【0065】
保護装置9が形成する短絡経路の電気抵抗がゼロでない場合に、この短絡経路を流れる電流値の測定(検出)が容易になる。
【0066】
本実施形態では、保護装置9は、スイッチ9aを含む。スイッチ9aの一端部は、超伝導コイル3の一端部に接続され、スイッチ9aの他端部は、超伝導コイル3の他端部に接続されている。スイッチ9aが閉じられることにより、スイッチ9aを介して、超伝導コイル3の両端部は、互いに短絡した状態になる。
図3(A)では、保護装置9は、第1導電性経路9bと第2導電性経路9cを含む。第1導電性経路9bは、スイッチ9aの一端部と第1電流路6aの途中箇所P1とを接続しており、第2導電性経路9cは、スイッチ9aの他端部と第2電流路6bの途中箇所P2とを接続している。
【0067】
このような保護装置9は、
図3(A)では、冷却容器7の外部に設けられているが、短絡電流検出部17と共に冷却容器7の内部空間7aに設けられてもよいし、その要素が冷却容器7の外部と内部に分散して設けられてもよい。また、保護装置9は、
図3(A)では、電源5の外部に設けられているが、(冷却容器7の外部であって)電源5の内部に設けられてもよいし、その要素が電源5の外部と内部に分散して設けられてもよい。
【0068】
逆方向ダイオード11aは、超伝導コイル3に逆並列に接続されている。すなわち、逆方向ダイオード11aのカソードは、超伝導コイル3の一端部(定電流源5の正極)に接続され、逆方向ダイオード11aのアノードは、超伝導コイル3の他端部(定電流源5の負極)に接続されている。一方、この順方向ダイオード11bのアノードは、超伝導コイル3の一端部(定電流源5の正極)に接続され、順方向ダイオード11bのカソードは、超伝導コイル3の他端部(定電流源5の負極)に接続されている。なお、順方向ダイオード11bは、無くてもよい。
【0069】
検出装置13は、超伝導磁石装置10の異常な状態(例えば、電源5から超伝導コイル3への電流供給が異常な状態)を検知すると、短絡信号を作動装置15に出力する。以下、この異常な状態を単に異常状態という。
【0070】
このような検出装置13は、
図3(A)では、冷却容器7の外部に設けられているが、冷却容器7の内部空間7aに設けられてもよいし、その要素が冷却容器7の外部と内部に分散して設けられてもよい。
【0071】
検出装置13は、本実施形態では、供給電流検出部13aと供給電流比較部13bと短絡信号出力部13cを含む。
供給電流検出部13aは、電源5が超伝導コイル3に供給する電流の大きさを検出する。供給電流検出部13aは電流計であってよい。電流計13aは、
図3(A)では第1電流路6aに設けられているが、第2電流路6bに設けられていてもよい。なお、供給電流検出部13aは、電源5が超伝導コイル3に供給する電流の大きさを検出できればよく、供給電流検出部13aの構成および配置として、様々なものを採用できる。例えば、供給電流検出部13aは、超伝導コイル3の両端の電圧、または、第1電流路6aまたは第2電流路6bに設けた電気抵抗値が既知の抵抗の両端の電圧を計測し、この計測値から、電源5が超伝導コイル3に供給する電流の大きさを検出してもよい。あるいは、供給電流検出部13aは、超伝導コイル3または他の箇所(例えば第1電流路6aまたは第2電流路6b)を流れる電流により発生した磁場の値(強さ)を、例えばDCCTやホール素子やNMR現象などを用いて測定し、測定した磁場の値に基づいて、電源5が超伝導コイル3に供給する電流の大きさを検出してもよい。
供給電流比較部13bは、供給電流検出部13aが検出した電流の大きさが設定条件を満たさなくなったかどうかを判断する。この設定条件は、供給電流検出部13aにより検出された電流の大きさがしきい値よりも大きいという条件であり、または、この電流の大きさが設定範囲内にあるという条件である。このしきい値は、ゼロであってもよいし、ゼロに近い値(例えば、0.1A〜10Aの範囲内の値)であってもよいし、正常時に供給電流検出部13aが検出する電流の大きさの所定割合(例えば、10%以下の任意の割合)であってもよい。設定範囲は、正常時に供給電流検出部13aが検出する電流の大きさの範囲、またはこの範囲に近い範囲であってよい。
短絡信号出力部13cは、供給電流検出部13aによる検出電流値が上述の設定条件を満たさないと供給電流比較部13bにより判断された場合(すなわち、該検出電流値がしきい値以下であり、若しくは、該検出電流値が設定範囲よりも小さい又は大きい場合)には、異常状態が生じたとして短絡信号を作動装置15に出力する。
【0072】
作動装置15は、短絡信号を受けることにより、保護装置9が短絡経路を形成するように保護装置9を作動させる。本実施形態では、保護装置9の作動は、スイッチ9aを閉じる動作である。すなわち、作動装置15は、スイッチ9aを閉じることにより短絡経路を形成する。作動装置15は、機械的に(機械的な動力により)又は磁気的に(電磁力により)スイッチ9aを閉じる。作動装置15は、重力を利用してスイッチ9aを閉じるように構成されていてもよい。
【0073】
短絡電流検出部17は、保護装置9により形成された短絡経路に流れる電流の大きさを検出する。なお、短絡電流検出部17は、短絡経路に流れる電流の大きさを検出できればよく、短絡電流検出部17の構成および配置として、様々なものを採用できる。例えば、短絡電流検出部17は、
図3(A)のように第2導電性経路9cに設けてもよいし、第1導電性経路9bに設けてもよい。別の例では、短絡電流検出部17は、第1導電性経路9bと第2導電性経路9cとの間の電圧を測定し、この測定値と、第1導電性経路9bと第2導電性経路9cとの間の既知の電気抵抗値とから電流の大きさを検出してもよい。さらに別の例では、短絡電流検出部17は、保護装置9(第1導電性経路9bと第2導電性経路9c)以外の2箇所における電流値の差から、短絡経路に流れる電流の大きさを検出してもよい。これらの2箇所は、例えば、途中箇所P1よりも上流側の第1電流路6aの1箇所と、途中箇所P1よりも下流側の第1電流路6aの1箇所であってよい。なお、短絡電流検出部17は、供給電流検出部13aと同様の原理で電流を検出してよい。例えば、短絡電流検出部17は、超伝導コイル3または他の箇所(例えば上記短絡経路)に流れる電流により発生する磁場の値を測定し、この測定値に基づいて、上記短絡経路に流れる電流の大きさを検出してもよい。
【0074】
短絡電流比較部19は、異常状態に対する復旧後に、短絡電流検出部17が検出した電流の大きさが設定値(ゼロまたはゼロに近い値)以下であるかどうかを判断する。この設定値は、例えば、0A以上であって1A以下の範囲内の値である。好ましくは、この設定値は、0A以上であって0.2A以下の範囲内の値である。
【0075】
解除信号出力部21は、短絡電流比較部19による判断の結果が肯定である場合には、短絡解除信号を作動装置15へ出力する。この場合、作動装置15は、短絡解除信号を受けたら、または、短絡解除信号と短絡解除指令の両方を受けたら、保護装置9による短絡経路を解除する。ここで、短絡解除指令は、異常状態に対する復旧後に、指令出力部(図示せず)から作動装置15へ出力される。この指令出力部は、例えば、電源5から超伝導コイル3へ電流供給を再開させることに反応して、または、この再開時に人が適宜の操作部(例えばボタン)を操作することに反応して、短絡解除指令を作動装置15へ出力する。
【0076】
図4は、上述した超伝導磁石装置10の異常時の電流低下抑制方法を示すフローチャートである。
図5と
図6は、この電流低下抑制方法の説明図である。
図5(A)〜(C)と
図6(A)(B)において、電流が流れている経路を太線部分で表わしている。なお、
図5と
図6において、供給電流比較部13bや短絡信号出力部13cなどの図示を省略している。
【0077】
ステップS1で、上述の超伝導磁石装置10を設置する。この状態を
図5(A)に示す。
図5(A)では、まだ電流は流れていない。
【0078】
ステップS2で、次のように超伝導磁石装置10による磁場生成を開始する。ステップS1で、上述のように、冷却容器7内の超伝導コイル3を冷却して、冷却容器7の内部空間7aの温度を、超伝導コイル3を形成する高温超伝導線の転移温度以下にする。これにより、超伝導コイル3が超伝導状態になる。また、ステップS2で、スイッチ9aを開いた状態で、例えばスイッチ8(
図5を参照)を閉じることにより、超伝導状態にされた超伝導コイル3に、電源5から電流を流すことにより、超伝導コイル3に磁場を発生させる。この時、超伝導コイル3のインダクタンス(例えば10H〜2000Hの範囲内の値、好適には50H〜1000Hの範囲内の値)が大きいため、超伝導コイル3が発熱しないように、長い時間(半日以上、例えば1日〜1ヵ月程度)をかけて、超伝導コイル3に流れる電流の値をゼロから目標値の定格電流値(好適には、50A以上であって2000A以下の範囲内の値)まで上昇させる。この状態を
図5(B)に示す。
図5(B)において、電流は、超伝導コイル3と定電流源5とを含む閉回路(すなわち、この図における太線の回路)を流れている。なお、スイッチ8は、
図5では、電源5の正極側に設けられているが、電源5の負極側もしくは正極側と負極側の両方に設けられていてもよい。
【0079】
このように、ステップS2において、定格電流値の電流が超伝導状態の超伝導コイル3に流れることにより、超伝導コイル3が磁場を発生させる。その後、この状態で、ステップS3へ移行する。
【0080】
ステップS3で、超伝導コイル3が磁場を発生させている時に、検出装置13は、電源5から超伝導コイル3への電流供給が異常な状態(異常状態)の発生の有無を判断する。検出装置13は、異常状態を検出したら、ステップS4へ進む。そうでない場合には、ステップS3の判断を繰り返す。
【0081】
異常状態として、例えば電源5の故障がある。電源5が故障すると、
図5と
図6に示すスイッチ8が自動的に開くことにより、電源5が超伝導コイル3から電気的に切り離される。これにより、
図5(B)の状態から
図5(C)の状態に移行する。
図5(C)において、超伝導コイル3の電流は、超伝導コイル3と逆方向ダイオード11aとを含む閉回路(すなわち、この図における太線の回路)を流れる。この異常状態では、供給電流検出部13aが検出する電流値は、上述の定格電流値よりも大幅に小さく、上述の設定条件を満たさなくなるので、この異常状態は、検出装置13により検出される。
【0082】
別の例では、異常状態として停電や瞬低などがある。すなわち、停電または瞬低により電源5に電力が供給されなくなると、電源5が超伝導コイル3に電流を供給できなくなる。このような場合も、
図5(B)の状態から
図5(C)と同等の状態に移行し、この異常状態は、検出装置13により検出される。なお、異常状態が停電または瞬低である場合には、検出装置13や作動装置15などが補助電源により動作してもよいし、電源を失うとスイッチ9aが自動的に閉状態に移行する装置を使ってもよい。
【0083】
ステップS4で、検出装置13は、短絡信号を作動装置15に出力する。これにより、作動装置15は、保護装置9を作動させることにより、超伝導コイル3の両端部を互いに短絡させる短絡経路を形成する。この状態を
図6(A)に示す。
図6(A)では、超伝導コイル3と保護装置9(スイッチ9a)とを含む閉回路(すなわち、この図における太線の回路)を流れている。この閉回路の電気抵抗値は、ゼロであるか、または、ゼロより大きく75mΩ以下であり、好適には、ゼロであるか、または、ゼロより大きく30mΩ以下であることが望ましい。なお、スイッチ9aを含めた閉回路全体を超伝導線(高温超伝導線、または高温超伝導線と低温超伝導線)で形成することにより、この閉回路の抵抗を、ゼロに非常に近い値にしてもよい。この閉回路に低温超伝導線を用いる場合には、例えば冷却容器7の内部空間7aは、ステップS2で、例えば液体ヘリウムにより、低温超伝導線の転移温度以下に冷却されている。この場合、この閉回路全体を内部空間7aに配置するのがよい。ステップS4の後、ステップS5へ移行する。
【0084】
なお、保護装置9の作動時(
図6(A)の状態)における電流の減衰速度が、逆方向ダイオード11aの作動時(
図5(C)の状態)における電流の減衰速度に比べての1/2以下、好適には1/5以下であることが望ましい。保護装置9の作動時(
図6(A)の状態)において保護装置9両端(
図3(A)の途中箇所P1,P2)の間に発生する電圧が0.75V以下、好適には0.3V以下であることが望ましい。
【0085】
好ましくは、上述のステップS2で、超伝導コイル3に流れる電流の値をゼロから目標値の定格電流値まで上昇させている時においても、上述のステップS3の判断が繰り返し行われ、ステップS3で異常状態が検出されたら、上述のステップS4が行われる。この場合も、ステップS4の後、ステップS5へ移行する。
【0086】
ステップS5で、電源5の修理または交換などの復旧作業を人が行う。これにより異常状態が解消され、ステップS6へ移行する。
【0087】
ステップS6で、正常な電源5から超伝導コイル3への電流供給を再開する。すなわち、例えば修理された電源5、または、故障した電源5に代わる新しい電源5から超伝導コイル3へ電流を流す。例えば、ステップS5を行った人が、電源5を作動させるボタンを押すことによりステップS6が行われてよい。ステップS6では、電源5から超伝導コイル3へ供給する電流の値を、次第に大きくしていく。この状態を
図6(B)に示す。
図6(B)において、電流は、超伝導コイル3と定電流源5とを含む閉回路(すなわち、この図における太線の回路)を流れている。
図6(B)に示すように、定電流源5からの電流は、超伝導コイル3へ流れる電流C1と、スイッチ9aへ流れる電流C2とに分かれ、超伝導コイル3を流れた電流C1は、スイッチ9aへ流れる電流C3と、定電流源5へ流れる電流C4とに分かれる。したがって、電流C2と電流C3とは互いに相殺される。電源5からの電流を大きくしていくと、スイッチ9aを流れる電流(C3−C2)が次第に小さくなり、電流C2と電流C3とが同じ大きさになった時に、スイッチ9aを流れる電流がゼロになる。
【0088】
ステップS7で、短絡電流比較部19は短絡経路(スイッチ9a)を流れる電流の大きさを検出し、短絡電流比較部19は、この検出値が、上述の設定値以下になったかどうかを判断する。この設定値は、ゼロまたはゼロに近い値(例えば、0Aより大きく5A以下の値)である。ステップS7の判断の結果が肯定である場合には、ステップS8へ移行し、そうでない場合には、ステップS7の判断を繰り返す。
【0089】
ステップS8で、解除信号出力部21は、解除信号を作動装置15へ出力することにより、作動装置15は、短絡経路を解除する。本実施形態では、ステップS8で、作動装置15は、スイッチ9aを開ける。これにより、
図5(B)の状態に戻る。
次いで、ステップS8では、超伝導コイル3に流れる電流の値が上述の定格電流値になるまで、定電流源5から超伝導コイル3へ供給する電流を増やしていく。これにより、定格電流値の電流が超伝導状態の超伝導コイル3に流れている状態で、ステップS3に戻り、上述したステップS3〜ステップS8の処理を繰り返す。
【0090】
(実施形態の効果)
上述した本発明の実施形態の超伝導磁石装置10と電流低下抑制方法によると、超伝導状態の超伝導コイル3に電源5から電流を流して超伝導コイル3に磁場を発生させている時に、超伝導コイル3への電流供給が異常な状態になったことが検知されたら、保護装置9により短絡経路が形成される。これにより、超伝導コイル3と短絡経路を含む閉回路が形成される。したがって、超伝導コイル3を流れる電流は、この閉回路を循環するようになる。この閉回路の電気抵抗は、非常に小さいので、閉回路を循環する電流の減少を抑えることができる。
【0091】
したがって、超伝導コイル3は、電源5からの電流が供給されなくなっても、しばらくの間(例えば、6時間〜数日)は、(ゼロでない)磁場を発生し続けることができる。
【0092】
さらに、超伝導コイル3に上述したヒステリシス損失が存在する場合でも、ヒステリシス損失による熱暴走を防止できる。
【0093】
また、電源5からの電流が供給されなくなった後、所定の時間(例えば、6時間〜数日)のうちに電源5を復旧させれば、復旧の完了時には、閉回路を流れる電流は、まだ十分に大きい。したがって、復旧の完了後に、電源5からの電流供給を再開させて、超伝導コイル3を流れる電流の値をゼロから増加させることが不要になるので、電流値を目標値まで徐々に上昇させるのにかかる時間が短くなる。例えば、上述の異常状態が真夜中に生じても、朝になってから復旧作業を開始しその日の午前中に復旧を完了させても、復旧後に、電流値を目標値まで徐々に上昇させるのにかかる時間が短くなる。
【0094】
また、上述のステップS7で、短絡経路を流れる電流の大きさが設定値以下になったことが検出されたら、作動装置15は、短絡経路を解除する。これにより、元の状態に戻す時に、短絡経路の電流により超伝導コイル3の電流値が変動してしまうことを抑えることができる。
【0095】
さらに、永久電流モードができない超伝導コイル3を電源で励磁するということは、それだけ長い時間電源5を超伝導コイル3に接続したままにすることになるので、それだけ電源故障や異常に遭遇する確率が非常に高くなるという課題がある。これまで永久電流モードで運転するか、短期的に励磁、消磁を繰り返す超伝導磁石装置しかなかった。低温超伝導磁石では想定されていない当該課題を、超伝導磁石装置10により解決できる。
【0096】
[異常時における電流減少速度の計算]
図3(A)において、電源5が超伝導コイル3から切り離されており、超伝導コイル3と逆方向ダイオード11aを含む閉回路に電流Iが流れている時に、スイッチ9aを閉じた瞬間では、次の式が成り立つ。
Vp=RI+L×dI/dt=0
ここで、Vpは、スイッチ9aを含む短絡経路の両端の電位差であり、Rは、スイッチ9aを閉じることにより形成される閉回路(
図6(A)の太字部分の閉回路。以下、閉回路Xという)の電気抵抗値であり、Lは、超伝導コイル3のインダクタンスである。Rは、第1電流路6aと第2電流路6bの電気抵抗値の大きさ程度であり、ここでは、2.837mΩとする。また、Lは、74Hであるとし、Iは、50Aであるとした。この場合、閉回路Xを流れる電流の減少速度は、1.91×10
−3A/secとなる。
【0097】
[異常時における電流減少速度の計測]
図3(A)において、電源5が超伝導コイル3から切り離されており、超伝導コイル3と逆方向ダイオード11aを含む閉回路に50Aの電流が流れている時に、スイッチ9aを閉じた場合に、閉回路Xを流れる電流の減少速度を計測した。この計測値は、3.97×10
−3A/secであった。
なお、この減少速度の計測値から計算した、閉回路Xの電気抵抗値は、5.87mΩである。電流の減少速度の計測値が、上記の計算値よりも高いのは、保護装置9の非常に小さい電気抵抗値が反映されたからである。
【0098】
比較のため、
図3(A)において、電源5が超伝導コイル3から切り離されており、超伝導コイル3と逆方向ダイオード11aを含む閉回路Yに、上記と同じ50Aの電流が流れている場合に、この閉回路Yを流れる電流の減少速度を計測した。この計測値は、2×10
−2A/secであり、閉回路Xの場合の計測値の5〜10倍であった。
【0099】
また、この場合、逆方向ダイオード11aでの発熱、および、上述したヒステリシス損失による発熱の一方または両方によって、冷却容器7(クライオスタット)内の液体ヘリウムが、蒸発して安全弁から噴出する状態となった。この状態から、保護装置9を作動させたら、ヘリウムガスの噴出が止まり、超伝導コイル3の両端の電位差Vc(=−L×dI/dt)も、1.5V(すなわち、逆方向ダイオード11aの電圧)から0.12Vに下がった。これは、電流の減衰速度(dI/dt=−Vc/L)が1/10以下になったことを意味する。
このように、逆方向ダイオード11aが作動して急速に電流が減衰する危険な状態から、保護装置9により、ゆっくりとした電流減少の安全な状態(つまり、逆方向ダイオード11aでの発熱、および、超伝導コイル3の上述したヒステリシス損失による発熱の一方または両方が冷却能力を下回る状態)に移行できる。これは、保護装置9を室温側に設置した場合でも達成できる。つまり、電気抵抗がゼロではない短絡回路(保護装置9による短絡経路)でも保護回路として十分機能する。
【0100】
図7(A)(B)は、電源5を超伝導コイル3から切り離し、その後、保護装置9を作動させた場合の電流と電圧の変化を示す。
図7(A)において、横軸は時間を示す、縦軸は電流値を示し、破線のグラフは、電源5が超伝導コイル3へ供給する電流の値を示し、実線のグラフは、スイッチ9aを流れる電流の値を示す。
図7(A)において、時点t1から時点t2では、電源5が超伝導コイル3から切り離されたことにより電源5からの電流の値が急低下しており、時点t3から時点t4では、スイッチ9aが閉じられたことによりスイッチ9aを流れる電流の値が急上昇している。時点t4の以降では、電流値の減少速度が低く3×10
−3A/sec程度であるので、時点t1以前に超伝導コイル3へ供給する電流を例えば、500A以上にしておけば、t4から6時間経過しても、まだ、80%以上の値(400A以上)の電流が閉回路Xを流れていることになる。
【0101】
図7(B)において、横軸は時間を示す、縦軸は電圧値を示し、実線のグラフは、
図7(A)の場合におけるスイッチ9aの両端の電圧を示す。
図7(B)において、時点t1から時点t2’では、電源5が超伝導コイル3から切り離されて電流が逆方向ダイオード11aを流れたことにより、スイッチ9aの両端の電位差が急低下しており(電位差の大きさが急上昇しており)、時点t3から時点t4’では、スイッチ9aが閉じられたことにより、スイッチ9aの電位差が急上昇して(電位差の大きさが急低下して)ほぼゼロになっている。
図7(B)において、時点t4’以降のVの大きさが時点t2’〜時点t3’でのVの大きさの1/10以下になっていることと、Vc=−L×dI/dtとを考慮すると、時点t4’以降での電流の減少速度は、時点t2’〜時点t3’での電流の減少速度の1/10以下になっていることが分かる。ここで、Vcは、超伝導コイル3の両端の電位差であり、Lは、超伝導コイル3のインダクタンスであり、dI/dtは、電流の時間微分である。
【0102】
[復旧時における変動電流の計測]
図8は、元の状態に戻した時における超伝導コイル3に流れる電流値の変動を示す。
図8において、破線は、短絡経路を流れる電流が0.1Aの時に、短絡経路を解除した場合に、超伝導コイル3に流れる電圧値(電流値に相当)を示す。
図8において、実線は、短絡経路を流れる電流が0.3Aの時に、短絡経路を解除した場合に、超伝導コイル3に流れる電圧値を示す。
図8において、横軸の時間がゼロの時点は、短絡経路を解除した時点である。
図8から分かるように、短絡経路を流れる電流が小さい場合には、電流値の変動が抑えられる。ここで、各場合の短絡経路の電流値が低いのは、装置が損傷しないようにするためである。
【0103】
[リニアモーターカーへの適用例]
上述の超伝導磁石装置10をリニアモーターカーで用いる適用例を説明する。
【0104】
リニアモーターカーにおける複数(例えば5つ)の車両に、それぞれ、複数(例えば5つ)の超伝導磁石装置10が搭載されている。したがって、各車両には、1つの電源5が搭載されているが、予備電源も、リニアモーターカーに搭載しておく。いずれかの超伝導磁石装置10において異常状態(電源5の異常)が検出装置13により検出されると、リニアモーターカーの制御装置(央制御管理装置)が、当該超伝導磁石装置10において、上述のスイッチ8を開くことにより、電源5を超伝導コイル3から切り離す。次いで、当該制御装置は、当該超伝導磁石装置10において、上述のステップS6で、交換用の電源5としての正常な上記予備電源を超伝導コイル3に電気的に接続することにより、超伝導コイル3への電流供給を再開する。
【0105】
この場合、この制御装置は、各車両の電源5の異常および各車両の超伝導磁石装置10を含む電気回路系の電気的諸量(電流値、電圧値等)の測定結果ないし検出結果を取り込み、予め組み込まれているソフトウエアによって一連の制御動作を実行する。
【0106】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明では、以下の変更例1〜8のいずれかを採用してもよいし、変更例1〜8の2つ以上の可能な任意の組み合わせを採用してもよい。
【0107】
(変更例1)
図9は、本発明の変更例1による超伝導磁石装置10の回路図である。変更例1では、検出装置13は、
図9に示すように、電圧検出部13dと電圧比較部13eと短絡信号出力部13cを有する。
【0108】
電圧検出部13dは、電源5と超伝導コイル3とを接続している電流路(第1電流路6aと第2電流路6b)の2点間の電圧(電位差)を検出する。これらの2点間には、
図8のように、電気抵抗値が既知である電気抵抗16を設けてもよい。
【0109】
好ましくは、電圧検出部13dは、
図8のように第1導電性経路9bと第1電流路6aとの接続箇所P1よりも電源5側における2点の電圧の大きさを、あるいは、第2導電性経路9cと第2電流路6bとの接続箇所P2よりも電源5側における2点の電圧の大きさを検出する。ただし、検出装置13は、電源5と超伝導コイル3とを接続している電流路における他の2点(例えば、第1導電性経路9b上の1点と第2導電性経路9c上の1点)の電圧の大きさを検出するものであってよく、当該2点には、様々なパターンがある。
【0110】
電圧比較部13eは、電圧検出部13dが検出した電圧の大きさが設定条件を満たさなくなったかどうかを判断する。この設定条件は、電圧検出部13dにより検出された電圧の大きさがしきい値よりも大きいという条件であり、または、この電圧の大きさが設定範囲内であるという条件である。このしきい値は、ゼロであってもよいし、ゼロに近い値であってもよいし、正常時に電圧検出部13dが検出する電圧の大きさの所定割合(例えば、10%以下の任意の割合)であってもよい。設定範囲は、正常時に電圧検出部13dが検出する電圧の大きさの範囲、またはこの範囲に近い範囲であってよい。電圧検出部13dが検出した電圧の大きさが上述の設定条件を満たさなくなったと(すなわち、電圧の該大きさがしきい値以下であると、若しくは、電圧の該大きさが設定範囲よりも小さい又は大きいと)電圧比較部13eにより判断された場合には、短絡信号出力部13cは、異常状態が生じたとして、作動装置15へ短絡信号を出力する。これにより、作動装置15は、上述のように保護装置9を作動させる。
【0111】
(変更例2)
図10(A)は、本発明の変更例2による超伝導磁石装置10の回路図である。変更例2では、検出装置13は、
図10(A)に示すように、電源異常検出部13fと停止動作部13gと短絡信号出力部13cを有する。
【0112】
電源異常検出部13fは、電源5の異常を検出する。例えば、電源異常検出部13fは、電源5が供給する電流値が許容範囲よりも大きく又は小さくなったことを、電源5の異常として検出する。あるいは、電源異常検出部13fは、電源5を冷却する冷媒(冷却水または冷却空気)の異常(例えば、流速または温度)が許容範囲外になったことを、電源5の異常として検出する。別の例では、電源異常検出部13fは、電源5の温度が上限値以上になったことを、電源5の異常として検出する。さらに別の例では、電源異常検出部13fは、電源5近傍の磁場が許容範囲よりも大きく又は小さくなったことを、電源5の異常として検出する。
【0113】
停止動作部13gは、電源異常検出部13fが電源5の異常を検出したら、電源5から超伝導コイル3への電流供給を停止させる。すなわち、停止動作部13gは、電源5を、超伝導コイル3から電気的に切り離す。例えば、停止動作部13gは、第1電流路6a(または第2電流路6b)に設けたスイッチ14を開くことにより、超伝導コイル3への電流供給を停止させる。
【0114】
変更例2によると、電源異常検出部13fが電源5の異常を検出したら、短絡信号出力部13cが短絡信号を出力することにより、上述のように作動装置15は短絡経路を形成する。すなわち、短絡信号出力部13cは、電源異常検出部13fが電源5の異常を検出したことに反応して、または、停止動作部13gが上述の電流供給を停止したことに反応して、異常な状態が生じたとして短絡信号を作動装置15へ出力する。
【0115】
あるいは、電源異常検出部13fは、電源5の異常を検出すると、これに反応して、停止動作部13gは、上述のスイッチ14を開くことにより、超伝導コイル3への電流供給を停止させ、その後、短絡信号出力部13cが、保護装置9の作動が必要かどうかを判断し、この作動が必要と判断したら場合に、短絡信号を作動装置15へ出力する。この場合、例えば、センサ13h(
図10(A)を参照)が、冷却容器7の異常を検出したら、その旨の信号を短絡信号出力部13cへ出力することにより、短絡信号出力部13cは短絡信号を作動装置15へ出力する。ここで、冷却容器7の異常とは、冷却容器7の内部空間7aの液体状の冷媒の液面のレベルが下限値より下がったことであってもよいし、他の異常であってもよい。
【0116】
このような検出装置13は、電源5に組み込まれたものであってもよい。
【0117】
また、変更例2において、停止動作部13gが設けられていなくてもよい。この場合、電源異常検出部13fが電源5の異常を検出したことに反応して、短絡信号出力部13cが短絡信号を出力する。この場合、電源5と超伝導コイル3とは、必ずしも互いに切り離されなくてもよい。例えば、
図10(B)のように、停止動作部13gとスイッチ14の代わりに電源5に設けられた安全装置18が作動しそうな時に、電源異常検出部13fが電源5の異常を検出して短絡信号出力部13cが短絡信号を出力することにより保護装置9が短絡経路を形成する場合、この安全装置18は、実際に作動しなくてもよいし、短絡経路の形成後に作動してもよい。なお、この安全装置18が作動することにより電源5が実際に超伝導コイル3から切り離される。
図10(B)は、安全装置18を設けた場合の超伝導磁石装置10の構成を示す。
【0118】
安全装置18は、例えば電源監視部18aと作動部18bとスイッチ18cを有する。電源監視部18aは、電源5の異常を検出すると、作動信号を作動部18bに出力する。作動部18bは、作動信号を作動部18bから受けることにより、スイッチ18cを開くように動作する。
【0119】
電源監視部18aは、電源5が供給する電流値が許容範囲(例えば、電源異常検出部13fが用いる上記許容範囲より広い許容範囲)よりも大きく又は小さくなったことを、電源5の異常として検出する。あるいは、電源監視部18aは、電源5を冷却する冷媒(冷却水または冷却空気)の異常(例えば、流速または温度)が許容範囲(例えば、電源異常検出部13fが用いる上記許容範囲より広い許容範囲)外になったことを、電源5の異常として検出する。別の例では、電源監視部18aは、電源5の温度が上限値(例えば、電源異常検出部13fが用いる上記上限値より高い上限値)以上になったことを、電源5の異常として検出する。なお、電源監視部18aを省略し、電源異常検出部13fが電源5の異常を検出したことに反応して、作動部18bがスイッチ18cを閉じるように動作してもよい。
【0120】
(変更例3)
超伝導コイル3は、他のコイルと組み合わされて使用されてもよい。
例えば、
図11に示すように、冷却容器7の内部空間7aにおいて、超伝導コイル3の外側に、低温超伝導線で形成された低温超伝導コイル31が配置されている。
図11では、超伝導コイル3と低温超伝導コイル31を互いに区別するために、超伝導コイル3を太線で示している。例えば、内部空間7aにおいて、超伝導コイル3と低温超伝導コイル31を同軸に配置している。低温超伝導コイル31に電流を流す回路(すなわち、
図11のダイオード33、電源35、および永久スイッチ37)と、超伝導コイル3に電流を流す回路とは、互いに独立している。この場合、内部空間7aは、例えば液体ヘリウムにより、低温超伝導コイル31の低温超伝導線の転移温度以下に冷却されている。
図11において、低温超伝導コイル31、ダイオード33、電源35、永久スイッチ37、およびヒーター39の構成と機能は、
図1を参照して説明した低温超伝導コイル31、ダイオード33、電源35、永久スイッチ37、およびヒーター39と同じであってよい。低温超伝導コイル31に電流を流す回路を上述のように永久電流モードにすることにより、電源35を低温超伝導コイル31から切り離した状態で、超伝導コイル31は磁場を発生させ続けることも可能である。電源35を低温超伝導コイル31に接続しておいてもよい。
【0121】
この
図11の場合、超伝導コイル3と低温超伝導コイル31との間には、磁気的に相互インダクタンスが存在する。したがって、超伝導コイル3の電流(磁場)が減少すると、それを打ち消すように超伝導コイル31の電流が増加する。超伝導コイル3の電流(磁場)が減少速度が急激な場合、保護装置9が無いと、超伝導コイル31の電流も急激に増加するため対策を行う前に超伝導コイル31がクエンチしてしまう可能性がある。このような事態も、保護装置9により防ぐことができる。
【0122】
(変更例4)
上述の逆方向ダイオード11aは無くてもよい、例えば、異常時に電源5が超伝導コイル3から切り離された場合に、逆方向ダイオード11aに電流が流れ始めるまでに、作動装置15がスイッチ9aを閉じることができる場合には、逆方向ダイオード11aは無くてよい。
【0123】
(変更例5)
保護装置9は、手動で動作させられることにより、上述の短絡経路を形成するものであってもよい。この場合、人が操作可能な操作部(例えば、ボタンまたはレバー)が設けられ、この操作部を人が操作することにより、スイッチ9aが、閉じられ又は開けられてもよい。
一例では、超伝導磁石装置10(例えば電源5または
図3(C)の冷凍機7e)のメンテナンスを行う場合に、上述のステップS2の後に、ステップS3〜S5の代わりに、手動操作によりスイッチ9aを閉じる。この状態でメンテナンスを行う。メンテナンス終了後に、ステップS6〜S8を行う。なお、冷凍機7eのメンテナンスを行う場合、冷凍機7eを停止させても、冷却容器7b内の液体冷媒が無くなるまでは、超伝導コイル3を超伝導状態に保つことができる。
【0124】
この変更例5では、検出装置13は省略されてもよいが、検出装置13も設けられ検出装置13と作動装置15によっても保護装置9が作動させられてもよい。
【0125】
(変更例6)
低温超伝導線で形成された低温超伝導コイルが上述の超伝導コイル3に直列に接続されていてもよい。この場合、冷却容器7の内部空間7aに超伝導コイル3と共に低温超伝導コイルを配置して、内部空間7aを低温超伝導コイルの転移温度以下に冷却する。あるいは、低温超伝導コイルの転移温度以下に冷却される別の冷却容器内に低温超伝導コイルを配置する。
あるいは、冷却容器7の内部空間7aにおいて、超伝導コイル3に、高温超伝導線で形成された1つまたは複数の超伝導コイルが直列に接続されていてもよい。この場合、保護装置9は、超伝導磁石装置10を構成するこれらの超伝導コイルの一部または全体(超伝導コイル3)の両端を短絡させる。
あるいは、超伝導コイル3は、高温超伝導線で形成された複数の超伝導コイルを互いに直列に接続したものであってもよい。
【0126】
(変更例7)
図12は、変更例7による超伝導磁石装置10の構成を示す。以下、変更例7の超伝導磁石装置10を説明する。超伝導磁石装置10は、複数の磁場生成装置20を有している。超伝導磁石装置10が有する磁場生成装置20の数は、図では2つであるが、3つ以上の任意の数であってもよい。各磁場生成装置20は、上述した超伝導コイル3と、冷却容器7と、保護装置9と、逆方向ダイオード11aと、順方向ダイオード11bとを有する。
超伝導磁石装置10は、複数の磁場生成装置20に共有される1つの電源5を有する。
【0127】
また、超伝導磁石装置10は、各磁場生成装置20に設けられ、該磁場生成装置20において超伝導コイル3と閉状態のスイッチ9aとを含む閉回路を流れる電流の値を検出する短絡電流検出部17を備える。ここで、検出される電流の値は、大きさを意味する(以下、同様)。
【0128】
超伝導磁石装置10は、各磁場生成装置20に設けられ、スイッチ9aが閉じられた状態で、超伝導コイル3を流れる電流の値、または、超伝導コイル3が発生する磁場の値を検出するコイル状態検出部17または28を備える。このコイル状態検出部が超伝導コイル3を流れる電流の値を検出する場合には、このコイル状態検出部は、短絡電流検出部17であってよいが、これに限定されない。このコイル状態検出部が超伝導コイル3が発生する磁場の値を検出する場合には、このコイル状態検出部は、短絡電流検出部17とは別個に設けられた磁場検出部28である。ここで、コイル状態検出部17または28により検出される電流または磁場の値は、大きさを意味する(以下、同様)。
【0129】
また、超伝導磁石装置10は、各磁場生成装置20に設けられ、電源5から当該磁場生成装置20(すなわち、
図12の第1電流路6aと第1導電性経路9bとの接続箇所P1)へ供給される電流の値を検出する供給電流検出部22を備える。ここで、検出される電流の値は、大きさを意味する(以下、同様)。供給電流検出部22は、第1電流路6aにおいて接続箇所P1よりも上流側に、または、第2電流路6bにおいて第2電流路6bと第2導電性経路9cとの接続箇所P2よりも下流側に設けられる。なお、
図3(A)の供給電流検出部13aが、第1電流路6aにおいて接続箇所P1よりも上流側に、または、第2電流路6bにおいて接続箇所P2よりも下流側に設けられる場合には、供給電流検出部13aは、供給電流検出部22としても機能してよい。
なお、供給電流検出部22として、供給電流検出部13aと同様に、様々なもの(例えば磁場の測定値を利用するもの)を採用できる。
【0130】
さらに、超伝導磁石装置10は、各磁場生成装置20に設けられ、電源5から当該磁場生成装置20(接続箇所P1)に電流が供給される閉位置と、電源5から当該磁場生成装置20(接続箇所P1)が切り離される開位置との間で動作させられる電流供給スイッチ23を備える。
【0131】
超伝導磁石装置10は、制御装置24を備える。制御装置24は、供給電流検出部22、コイル状態検出部17または28、または、短絡電流検出部17による検出電流値または検出磁場値に基づいて、作動装置15を制御することにより、電流供給スイッチ23とスイッチ9aの各々の位置を閉位置と開位置との間で切り替える。すなわち、制御装置24は、各磁場生成装置20において、保護装置9のスイッチ9aが閉じられた状態で、コイル状態検出部17または28による検出電流値または検出磁場値が基準値(正の値)以下になったら、該磁場生成装置20の電流供給スイッチ23を閉位置に動作させる。その後、制御装置24は、電源5から当該磁場生成装置20へ供給される電流が増えていく過程で短絡電流検出部17による検出電流値が上述の設定値以下になったら、保護装置9のスイッチ9aを開位置に動作させ、その後、電源5から当該磁場生成装置20へ供給される電流がさらに増えていく過程で供給電流検出部22による検出電流値が定格電流値になったら、保護装置9のスイッチ9aを閉位置に動作させ、その後、電源5から当該磁場生成装置20へ供給される電流が減っていく過程で供給電流検出部22による検出電流値がゼロになったら、電流供給スイッチ23を開位置に動作させる。
【0132】
このような超伝導磁石装置10では、各磁場生成装置20に対して、次の(1)〜(5)の動作がこの順で行われる。
【0133】
(1)電源5から超伝導コイル3に電流が供給されておらず、超伝導コイル3の電流値がゼロであり、スイッチ9aが開いている状態から、電流供給スイッチ23が閉じられる。
(2)上記(1)により、超伝導コイル3へ電源5から電流が供給される。この(2)において、当該電流の値を徐々に増やしていく。例えば、制御装置24は、当該電流の値を徐々に増やすように電源5を制御する。
上記(1)(2)は、上述のステップS2のように行われる。
【0134】
(3)上記(2)により、供給電流検出部22による検出電流値が上記目標値である上述の定格電流値になったら、制御装置24は、スイッチ9aを閉位置に動作させる。
【0135】
(4)電源5から磁場生成装置20(接続箇所P1)へ流す電流の値を徐々に減らす。例えば、制御装置24は、当該電流の値を徐々に減らすように電源5を制御する。
【0136】
(5)上記(4)により電源5から磁場生成装置20へ流す電流の値がゼロになったら、すなわち、供給電流検出部22による検出電流値がゼロになったら、制御装置24は、電流供給スイッチ23を開位置へ動作させる。
上記(4)(5)において、スイッチ9aは閉位置に維持される。
【0137】
各磁場生成装置20に対して、上記(1)〜(5)が行われることにより、各磁場生成装置20において、電流供給スイッチ23が開位置にあり、スイッチ9aが閉位置にあり、超伝導コイル3とスイッチ9aを含む閉回路(
図6(A)の太線の回路に相当)に上述の定格電流値(または上記基準値より大きい電流)が流れている状態になる(あるいは、コイル状態検出部28による検出磁場値が上記基準値より大きい状態になる)。この状態を基準状態とする。この基準状態から、超伝導磁石装置10において下記(6)〜(11)の順で動作が行われる。なお、上記基準値は、上記定格電流値よりも小さい。
【0138】
(6)基準状態から、いずれかの磁場生成装置20において、コイル状態検出部17または28により検出された電流または磁場の値が上記基準値以下になったら、制御装置24は、この磁場生成装置20の電流供給スイッチ23を閉位置に動作させる。以下の(7)〜(11)はこの磁場生成装置20について行われる。
【0139】
(7)これにより、超伝導コイル3へ電源5から電流が供給される。この(7)において、電源5は当該電流の値を徐々に増やしていく。例えば、制御装置24は、当該電流の値を徐々に増やすように電源5を制御する。この時、スイッチ9aは閉位置にある。
【0140】
(8)上記(7)により、短絡電流検出部17により検出された電流の値が上記設定値以下になったら、制御装置24は、これに反応してスイッチ9aを開位置に動作させる。
【0141】
(9)その後、電源5は当該電流の値をさらに徐々に増やしていき(例えば、制御装置24は、当該電流の値を徐々に増やすように電源5を制御し)、これにより、供給電流検出部22による検出電流値が上記目標値である上述の定格電流値になったら、制御装置24は、スイッチ9aを閉位置に動作させる。
【0142】
(10)次いで、電源5から超伝導コイル3へ流す電流の値を徐々に減らしていく。例えば、制御装置24は、当該電流の値を徐々に減らすように電源5を制御する。
【0143】
(11)上記(10)により、電源5から磁場生成装置20へ流す電流の値がゼロになったら、すなわち、供給電流検出部22による検出電流値がゼロになったら、制御装置24は、電流供給スイッチ23を開位置へ動作させる。これにより、上述の基準状態に戻る。その後、上記(6)〜(11)が繰り返される。
【0144】
このような超伝導磁石装置10は、リニアモーターカーに設けることができる。すなわち、リニアモーターカー(走行車両)に超伝導磁石装置10を設け、超伝導磁石装置10の複数の超伝導コイル3が生成する磁場が、リニアモーターカーの推進と浮上に用いられる。リニアモーターカーの走行中に、上記の動作(6)〜(11)が行われてよい。リニアモーターカーに、このような超伝導磁石装置10を複数設けてよい。
【0145】
なお、保護装置9と短絡電流検出部17は、
図12では冷却容器7の外部に設けられているが、冷却容器7の内部空間7aに設けられてもよい。
【0146】
変更例7では、1つの電源5を複数の磁場生成装置20で共有するので、電源5の使用数を抑えることができる。
また、各磁場生成装置20において、超伝導コイル3を流れる電流の大きさ、または、超伝導コイル3が発生する磁場の大きさが基準値以下になったら、電源5から磁場生成装置20へ電流を供給するので、電源5の使用頻度を抑えることができる。
さらに、電源5を超伝導コイル3に接続していない時でも、電流の減少を抑えるもしくは小さくすることができる。
【0147】
変更例7においても、各磁場生成装置20に上述の検出装置13や作動装置15が設けられる。したがって、上述の(2)または(9)の動作を行っている時に、異常状態が生じたら検査装置13と作動装置15により保護装置9は上述の短絡経路を形成する。したがって、保護装置9の保護機能を活用できる。
また、変更例7でも、上述の短絡電流比較部19と解除信号出力部21の機能は、制御装置24に組み込まれている。したがって、上記(8)により、短絡電流検出部17の短絡電流検出機能に基づくスイッチ9aの開動作制御を実行できる。
【0148】
(変更例8)
超伝導磁石装置10のリニアモーターカーへの別の適用例を説明する。この場合の電源5は、リニアモーターカー(すなわち、走行車両)に設けられず、車両停止位置(静止構造物)に設けられ、電源5を除いた超伝導磁石装置10をリニアモーターカーに設ける。超伝導磁石装置10の超伝導コイル3が発生する磁場は、リニアモーターカーの推進と浮上に用いられる。
【0149】
この場合、リニアモーターカーは、走行中は、保護装置9により短絡経路が形成されているので、超伝導コイル3を流れる電流の減少を抑えることができる。この変更例8では、保護装置9は、循環電流の低下を抑えるという意味で循環電流を保護する機能を有する。リニアモーターカーが、車両停止位置に来ると、適宜の手段により、電源5を超伝導コイル3(接続箇所P1と接続箇所P2)へ接続して、手動により、または、当該接続に反応して自動で、電流供給スイッチ27(後述の
図13を参照)が閉じられて、電源5から超伝導コイル3へ電流が供給される。超伝導コイル3を流れる電流が上記定格電流値以上になったら、電源5を超伝導コイル3(接続箇所P1と接続箇所P2)から切り離し、リニアモーターカーは、再び走行する。
【0150】
超伝導磁石装置10は、
図13に示すように、供給電流検出部26と電流供給スイッチ27と制御装置25を備える。
供給電流検出部26は、電源5から超伝導コイル3(すなわち、
図13の第1電流路6aと第1導電性経路9bとの接続箇所P1)へ供給される電流の値(大きさ)を検出する。供給電流検出部26の構成と配置は、変更例7の供給電流検出部22と同様である。
電流供給スイッチ27は、電源5から超伝導コイル3(接続箇所P1)に電流が供給される閉位置と、電源5から超伝導コイル3(接続箇所P1)が切り離される開位置との間で動作させられる。電流供給スイッチ27の構成と配置は、変更例7の電流供給スイッチ23と同様である。
制御装置25は、供給電流検出部26による検出電流値に基づいて、作動装置15を制御することにより、電流供給スイッチ27とスイッチ9aの各々の位置を閉位置と開位置との間で切り替える。
【0151】
超伝導コイル3に流れる電流がゼロの状態から、超伝導コイル3へ電流を供給する場合には、以下の(a)〜(f)をこの順で行う。
【0152】
(a)リニアモーターカーが車両停止位置にあり、電源5から超伝導コイル3に電流が供給されておらず、超伝導コイル3の電流値がゼロであり、スイッチ9aが開いている状態から、電流供給スイッチ27が閉じられる。
(b)上記(a)により、超伝導コイル3へ電源5から電流が供給される。この(b)において、当該電流の値を徐々に増やしていく。例えば、制御装置25は、当該電流の値を徐々に増やすように電源5を制御する。
上記(a)(b)は、上述のステップS2のように行われる。
【0153】
(c)上記(b)により、供給電流検出部26による検出電流値が目標値である上述の定格電流値になったら、制御装置25は、スイッチ9aを閉位置に動作させる。
【0154】
(d)次いで、電源5から超伝導コイル3(接続箇所P1)へ流す電流の値を徐々に減らす。例えば、制御装置25は、当該電流の値を徐々に減らすように電源5を制御する。
【0155】
(e)上記(d)により電源5から超伝導コイル3へ流す電流の値がゼロになったら、すなわち、供給電流検出部26による検出電流値がゼロになったら、制御装置25は、電流供給スイッチ27を開位置へ動作させる。これにより、電流は、超伝導コイル3と閉位置のスイッチ9aを含む閉回路を循環する。
【0156】
(f)次いで、電源5が接続箇所P1と接続箇所P2から切り離され、スイッチ9aが閉位置にある状態で、リニアモーターカーは走行する。
【0157】
上記(f)の後、リニアモーターカーが車両停止位置に来たら、電源5と接続箇所P1および接続箇所P2とが接続され、電流供給スイッチ27が閉位置にされて、次の(g)〜(l)の動作が行われる。
【0158】
(g)スイッチ9aが閉位置にある状態で、超伝導コイル3へ電源5から電流が供給される。この(g)において、当該電流の値を徐々に増やしていく。例えば、制御装置25は、当該電流の値を徐々に増やすように電源5を制御する。
【0159】
(h)上記(g)により、短絡電流検出部17により検出された電流の値が上記設定値以下になったら、制御装置25は、これに反応してスイッチ9aを開位置に動作させる。
【0160】
(i)その後、電源5は当該電流の値をさらに徐々に増やしていき(例えば、制御装置25は、当該電流の値を徐々に増やすように電源5を制御し)、これにより、供給電流検出部26による検出電流値が上記目標値である上述の定格電流値になったら、制御装置25は、スイッチ9aを閉位置に動作させる。
【0161】
(j)次いで、電源5から超伝導コイル3(接続箇所P1)へ流す電流の値を徐々に減らす。例えば、制御装置25は、当該電流の値を徐々に減らすように電源5を制御する。
【0162】
(k)上記(j)により電源5から超伝導コイル3へ流す電流の値がゼロになったら、すなわち、供給電流検出部26による検出電流値がゼロになったら、制御装置25は、電流供給スイッチ27を開位置へ動作させる。これにより、電流は、超伝導コイル3と閉位置のスイッチ9aを含む閉回路を循環する。
【0163】
(l)次いで、電源5が接続箇所P1と接続箇所P2から切り離された状態で、リニアモーターカーは走行する。
上記(l)の後、リニアモーターカーが車両停止位置に来たら、電源5と接続箇所P1および接続箇所P2とを接続して、電流供給スイッチ27を閉位置にして、上述の(g)〜(l)の動作を再び行う。
【0164】
なお、保護装置9と短絡電流検出部17は、
図13では冷却容器7の外部に設けられているが、冷却容器7の内部空間7aに設けられてもよい。
【0165】
変更例8では、リニアモーターカーが車両停止位置に来た時に電源5から超伝導コイル3へ電流を供給し、リニアモーターカーの走行中には電源から超伝導コイル3に電流を供給しなくてもよいので、電源5の使用頻度を抑えることができる。
また、電源5を超伝導コイル3に接続していない時でも、電流の減少を抑えるもしくは小さくすることができる。
【0166】
変更例8においても、上述と同様に超伝導磁石装置10に検出装置13や作動装置15が設けられる。したがって、上述の(b)または(i)の動作を行っている時に、異常状態が生じたら検査装置13と作動装置15により保護装置9は上述の短絡経路を形成する。したがって、保護装置9の保護機能を活用できる。
また、変更例8でも、
図13では、短絡電流比較部19と解除信号出力部21の機能は、制御装置25に組み込まれている。したがって、上記(h)により、短絡電流検出部17の短絡電流検出機能に基づくスイッチ9aの開動作制御を実行できる。