(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記骨盤アタッチメントは、患者の骨盤における左右の上前腸骨棘及び恥骨結合部に皮膚上から当接する3つのポールを備えており、それらポールの間隔を、前記左右の上前腸骨棘及び恥骨結合部の間隔に対応して調整する間隔調整手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の関節置換術用手術具。
患者の下肢を完全に進展させた状態を前額面から見たときに、患者の左右の上前腸骨棘を結ぶ線と、前記接続ロッドで示される線と、前記中心指示ロッドで示される線とが、直角三角形を構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の関節置換術用手術具。
前記大腿骨遠位端アタッチメントは、患者の膝関節を展開して露出した大腿骨遠位端における大腿骨前面に当接するとともに、膝関節部の顆間窩に設けられる取付孔に固定されて、患者の側副靭帯の付着部を結ぶ軸に対して平行、あるいは3次元手術計画の角度となるように前記第2のロッド受け手段を回旋する回旋手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の関節置換術用手術具。
前記足関節アタッチメントは、患者の足関節における左右の果を皮膚上から挟んだ中点を回旋中心として、横断面における前記支柱の回旋設置を調整する回旋調整手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の関節置換術用手術具。
前記足関節アタッチメントの前記果に皮膚上から当接する部位に、果の位置の変動方向に形成された長穴を有する当接環を設けたことを特徴とする請求項7記載の関節置換術用手術具。
患者の膝関節を展開して露出した脛骨上位端における脛骨粗面の解剖学的指標点に押し当てるピンによって規定される点を回動中心として、前記脛骨上位端アタッチメントの矢状面内における後方傾斜を調整する後方傾斜調整手段を、前記支柱に設けたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の関節置換術用手術具。
請求項1〜5のいずれか一項に記載の大腿骨遠位端の関節置換術用手術具と、請求項6〜10のいずれか一項に記載の脛骨上位端の関節置換術用手術具を含むことを特徴とする関節置換術用手術具。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例は、患者の骨盤に皮膚上から設置する骨盤アタッチメントと、患者の膝部分を開いて設置する大腿骨遠位端アタッチメントによって構成されている。最初に、
図1〜
図3を参照しながら、本発明の実施例の骨盤アタッチメントについて説明する。
図1には骨盤アタッチメントの全体が示されており、それを裏面側から見た状態が
図2に示されている。また、
図3には、骨盤上に設置した状態が示されている。
【0023】
これらの図において、骨盤アタッチメント100は、連結体110を中心に構成されており、その左右に腕120,130が延設され、それらと直交する方向に腕140が延設されている。また、腕140には伸縮腕141が設けられている。これら腕120,130及び伸縮腕141の先端には、ポール122,132,142がそれぞれ設けられている。これらのうち、ポール122,132の先端122a,132aは、患者の骨盤BAにおける左右の上前腸骨棘BAa,BAbに皮膚上からそれぞれ当接する。また、ポール142の先端142aは、患者の骨盤BAにおける恥骨結合部BAcに皮膚上から当接する。ポール122,132,142は、それらの間隔を患者の骨格に合わせて自由に調整して、仰臥位の患者の骨盤BA上に骨盤アタッチメント100を設置できるようになっている。
【0024】
以上の各部のうち、連結体110は、内側にボールねじ111が設けられており、これが回転すると互いに反対方向にスライドするスライダ112,113が設けられている。スライダ112,113には、上述した腕120,130の端部がそれぞれ固定されており、ボールねじ111にはつまみ114が設けられている。また、連結体110の側面には、スケール(目盛)115が設けられている。
【0025】
つまみ114を回すと、ボールねじ111が回転し、スライダ112,113が逆方向にスライドして腕120,130も矢印FA方向に逆にスライドし、それら先端のポール122,132の間隔を調整することができるようになっている。このときの間隔は、スケール115を参照することで、知ることができる。本実施例では、CT画像データなどから術前に患者の上前腸骨棘BAa,BAbの間隔を計測し、前記ポール122,132の間隔が計測値となるように予め調整しておく。
【0026】
一方、前記連結体110の前記ボールねじ111と直交する方向に形成された腕140には、ボルト・ナット117が設けられている。このボルト・ナット117に、伸縮腕141の長穴144を貫通させて固定することで、腕140に対して伸縮腕141を伸縮できるようになっている。これにより、伸縮腕141の先端に設けられたポール142と前記ポール122,132との間隔(距離)を調整することができる。本実施例では、CT画像データなどから術前に患者の上前腸骨棘BAa,BAbと恥骨結合部BAcとの間隔を計測し、前記ポール122,132とポール142の間隔が計測値となるように予め調整しておく。
【0027】
前記ポール142は、ボルトのようにネジが形成されており、これに前記伸縮腕141の先端に設けられた高さ調整ナット145が螺合している。この高さ調整ナット145を回転させることでポール142が上下動し、恥骨結合部BAcに対する骨盤アタッチメント100の高さ位置の調整が行われるようになっている。これにより、骨盤BAに対する骨盤アタッチメント100の傾きの調整が可能である。この調整は術中に行われ、手術台(図示せず)に対して骨盤アタッチメント100がほぼ平行になるように行われる。
【0028】
上述した左右の腕120,130上には、一端がポール122,132を中心として矢印FB方向に回転可能な回転板124,134がそれぞれ設けられている。これら回転板124,134には、患者の手術対象の膝に対応して、ロッド支持リング150がスライド可能に取り付けられる。例えば、手術部位が患者の左足の場合、ロッド支持リング150は、左側の回転板134に取り付けられる。ロッド支持リング150は、例えば球面滑り軸受けの構造となっており、挿通されるロッドが自在に方向を変更できるようになっている。また、回転板124,134のポール122,132側には、それらの長手方向に直交する方向に後述する接続ロッド162を取り付けるためのロッド受け125,135がそれぞれ設けられている。なお、接続ロッド162は、大腿骨BBの解剖軸に対応している。
【0029】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、大腿骨遠位端アタッチメント200について説明する。
図4には大腿骨遠位端アタッチメントの全体が示されており、それを裏面から見た状態が
図5に示されている。これらの図において、大腿骨遠位端アタッチメント200は、大腿骨BBの前面BBaに当接して固定される基軸210と、大腿骨BBの遠位端の内側顆BBcと外側顆BBdの間の顆間窩BBeに設けられる取付孔BBfに固定されるL字状のロッド支持体230を中心に構成されている。脚部211を大腿骨BBの前面BBaに押し当てることで、大腿骨遠位端アタッチメント200全体を大腿骨前面BBaに圧接し、位置決めできるようになっている。
【0030】
前記基軸210は、大腿骨BBの前面BBaに当接する略T字状の脚部211と、それから直交方向に延設された柱部212を備えており、この柱部212の先端には、弧状の腕を有する回旋支持体213が設けられている。この回旋支持体213には、前記柱部212に沿って長穴214が形成されており、つまみ215を緩めることで、柱部212に対して回旋支持体213が伸縮可能となっている。
【0031】
前記回旋支持体213には、円弧スライダ216が取り付けられており、つまみ217を回すことで、回旋支持体213に対する円弧スライダ216の回旋設置位置ないし角度を調整できるようになっている。円弧スライダ216は、後述するピン232を中心とする円弧上に形成されており、ピン232を中心とする回旋設置位置ないし角度を知ることができるスケール218が設けられている。
【0032】
前記ロッド支持体230は、主柱231を中心に構成されており、上述した円弧スライダ216の中央に設けられた支持枠219によって、機能軸方向にスライド可能に支持されている。前記主柱231の一端には、大腿骨BBに設けられる取付孔BBfに挿入されるピン232が設けられており、他端にはスリット229を介してロッド支持リング233が設けられている。このロッド支持リング233は、骨盤BA上に設置される骨盤アタッチメント100のロッド受け125,135と接続ロッド162がスリット229を介して挿通される。
【0033】
前記ロッド支持リング233は、ロッド支持体230のシリンダ内に差し込まれており、ロッド支持体230を軸として、スリット229,腕235,角度表示板237が、接続ロッド162の方向に対応して、矢印FC方向(
図4参照)に回転する構造になっている。腕234は、ロッド支持体230からL字状に伸びて、上述した円弧スライダ216の支持枠219をスライド可能に貫通しており、ねじ220を緩めることで矢印FD方向(
図5参照)にスライドする。腕234の先端には、長円状の開口238を有するロッド受け236が設けられており、骨盤側のロッド支持リング150に、後述する中心指示ロッド160で連結される。中心指示ロッド160と接続ロッド162との角度BBθ(
図3参照)の値は、CT画像データから術前に求められており、角度表示板237によって読み取れる構造になっている。
【0034】
前記ロッド支持体230の基軸210側には、切断用のドリルを挿入するためのドリルガイド250が取り付けられており、ボタン252を押すことで、大腿骨遠位端アタッチメント200をドリルガイド250から簡単に切り離すことができるようになっている。
【0035】
ここで、大腿骨遠位端アタッチメント200の作用を説明する。大腿骨前面BBaと、側副靭帯の付着部を結ぶ軸との傾き具合は、予めCT画像データ等から術前計画で知ることができる。それを利用して、回旋支持体213に対する円弧スライダ216の回旋設置位置ないし角度を調整することで、側副靭帯の付着部を結ぶ軸に対して平行ロッド支持体230が平行、あるいは3次元手術計画の角度となるように調整することができる。次に、中心指示ロッド160及び接続ロッド162が、術前計画で決めた角度BBθとなるように、ロッド支持体230を軸として回転する腕235の角度表示板237がロッド受け236の中心のなす角度を調整することで、腕234の方向に大腿骨BBの骨頭中心Pbbが位置するようになる。これらにより、ドリルガイド250の切断面が、膝関節の回転中心となる側副靭帯の付着部を結ぶ軸に対して平行あるいは3次元手術計画の角度となるとともに、体重が大腿骨骨頭中心,膝関節中心,足関節中心を通過する機能軸に対して垂直となる。
【0036】
次に、
図6も参照しながら、本実施例の全体の作用を説明する。以下、患者の左側の膝関節について置換術を行う場合を例として説明する。
図6には、骨盤BA上に設置した骨盤アタッチメント100と、大腿骨BBの遠位端に設置した大腿骨遠位端アタッチメント200との結合状態が示されている。患者の骨盤BAにおけるポール122,132,142の相対的な位置関係は、患者の骨盤BAのCT画像等から事前に計測しておくことができるので、その計測結果に基づいて、骨盤アタッチメント100の各部を調整し、ポール122,132,142を位置決めする。一方、患者の骨盤BAの上前腸骨棘BAa,BAb,の位置は、皮膚上から触って知ることができる。そこで、ポール122,132,142の先端122a,132a,142aをそれぞれ骨盤BAの上前腸骨棘BAa,BAb,恥骨結合部BAcに皮膚上から当接するようにして、骨盤アタッチメント100を仰臥位の患者に設置する。なお、骨盤アタッチメント100が患者の腹部に干渉しないように離すために、ポール122,132,142の高さを設定する。
【0037】
大腿骨遠位端アタッチメント200については、患者の膝関節を切開し、大腿骨BBの膝関節部の内側顆BBcと外側顆BBdの間の顆間窩BBeに、ドリルを使用して孔BBfを手術前計画で術者が設定した位置、例えば大腿骨前面BBaから15mm離れた位置であって、顆間窩のホワイトサイドライン上に形成する。一方、術前計画で設定した回旋設置角度に回旋支持体213を円弧スライダ216の回旋角度表示に合わせて回旋してつまみ217で固定しておき、主柱231のピン232を前記取付孔BBfに挿入する。つまみ215を緩め、大腿骨遠位端アタッチメント200の基軸210の脚部211を、大腿骨BBの前面BBaに当接させることで、大腿骨遠位端アタッチメント200を術前計画の回旋設置位置とする。これにより、人工膝関節の回旋設置計画位置と主軸231の位置が一致するようになる。また、基軸210の脚部211を大腿骨前面BBaに沿わせることで、人工膝関節の屈曲方向の設置位置が大腿骨前面BBaに平行になるように誘導される。これらにより、側副靭帯の付着部を結ぶ軸に対して平行ロッド支持体230が平行あるいは3次元手術計画の角度となる。
【0038】
次に、患者の骨盤BAの例えば左側に着目すると、上前腸骨棘BAbから大腿骨BBの骨頭BBbの中心Pbbまでの正面側における距離LA(
図3参照)は、予めCT画像データから得ることができる。一方、患者の骨盤BAに対して下肢を完全に進展させた状態、すなわち上前腸骨棘BAbのポール132を軸として回転する回転板134が腕130と平行に一致した状態において患者正面から見ると、大腿骨BBの骨頭中心Pbb上を中心指示ロッド160が通過するようにロッド支持リング150の位置を調整することができ、その位置を示すポール132からの距離LB(
図3参照)を、予めCT画像データから術前計画で計算することができる。
【0039】
次に、上述した骨盤アタッチメント100と、大腿骨遠位端アタッチメント200を、接続ロッド162で接続する。すなわち、接続ロッド162の一端を、骨盤アタッチメント100のポール132側のロッド受け135に挟み込むとともに、他端を、大腿骨遠位端アタッチメント200のロッド支持リング233にスリット229を介して挿入する。ロッド受け135は回転板134に設けられており、ロッド支持リング233は回転可能となっているので、接続ロッド162の取り付けは容易に行うことができる。
【0040】
次に、位置決めされた骨盤アタッチメント100のロッド支持リング150に対して、中心指示ロッド160を貫通させるとともに、その先端を、大腿骨遠位端アタッチメント200のロッド受け236の開口238内に挿入する。
【0041】
この状態で、骨盤BAに対して下肢を完全に進展させた状態、すなわち上前腸骨棘BAbのポール132を軸として回転する回転板134が腕130と平行に一致した状態において患者正面から見ると、大腿骨BBの骨頭中心Pbbは、必ず中心指示ロッド160上に位置することになり、術者は、大腿骨骨頭付近を切開することなく、骨頭中心Pbbを知ることができる。そして、ロッド受け236の方向は、必ず骨頭中心Pbbの方向を向いていることになる。これを患者正面から見ると、回転板134,中心指示ロッド160,接続ロッド162によって直角三角形が構成される状態となる。
【0042】
上述したように、人体の膝関節機能軸は、前額面方向において、大腿骨骨頭中心→膝関節の中心→足関節の中心を通る。これらのうち、大腿骨骨頭中心Pbbは、中心指示ロッド160上にあり、ロッド受け236の方向は必ず骨頭中心Pbbの方向を向いているので、その方向に対して垂直の方向に膝関節の大腿骨遠位端を切断すれば、機能軸に対して垂直の方向に膝関節の大腿骨遠位端を切断することになる。具体的には、大腿骨遠位端アタッチメント200のドリルガイド250を大腿骨BBの遠位端に位置決めして固定し、ボタン252を押して大腿骨遠位端アタッチメント200の全体を取り外す。
【0043】
術者は、以上のようにして方向を決定することで、側副靭帯の付着部を結ぶ軸に対して平行、あるいは3次元手術計画の角度であって、機能軸に対しては垂直となるように、ドリルガイド250に沿って大腿骨BBの遠位端を切断することができる。
【0044】
なお、この骨盤BAに対して下肢を完全に進展させた状態における中心指示ロッド160と接続ロッド162との角度BBθも、予めCT画像データから術前計画で求めておくことができるので、その角度データも参考にして、角度BBθの一致を術中で確認すれば、ミスが生じないようにでき、好都合である。
【0045】
以上のように、本実施例によれば、骨盤アタッチメント100及び大腿骨遠位端アタッチメント200を使用することで、術中に患者が動いたとしても、良好に大腿骨頭中心と大腿骨の3次元的な肢位を知ることができる。このため、大腿骨BBの内外反・回旋・屈曲の3次元的肢位を把握し、側副靭帯の付着部を結ぶ軸に対して平行、あるいは3次元手術計画の角度であって、機能軸に対しては垂直となるように、大腿骨遠位端を切断することができ、更には、良好な人工関節の大腿骨コンポーネントへの置換が可能となる。
【実施例2】
【0046】
次に、
図7〜
図10を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。上記実施例は、大腿骨遠位端側の置換術の場合であるが、本実施例は脛骨上位端側の置換術の場合である。上述したように、人体の機能軸は、大腿骨骨頭の中心→膝関節の中心→足関節の中心を通る。足関節に着目すると、患者の果を結ぶ軸の中点に対して機能軸が直交する。人体の脛骨関節面は、膝が曲がる前後方向に後方傾斜(矢状面において屈曲)しており、横断面での軸が存在する。この軸に人工関節の回旋設置方向を合わせなければ屈曲機能を妨げることがある。この設置すべき回旋目標角度と足関節の果を結ぶ軸のなす角度(横断面における回旋角度)は、術前計画においてCT画像データから測定しておくことができる。そこで、本実施例では、足関節アタッチメントを利用して、脛骨側の回旋位置と機能軸の中心点を特定することとしている。また、矢状面における屈曲・伸展角度は、術者が術前計画の中で適宜設定する。
【0047】
図7には、本実施例の足関節アタッチメント300が示されており、その裏面から見た様子が
図8に示されている。これらの図において、足関節アタッチメント300は、センターブロック310を中心に構成されており、このセンターブロック310内には、つまみ320によって回転するピニオンギアが設けられており、これを挟んで、ラックバー322,323が平行に、センターブロック310の側面を貫通して設けられている。すなわち、つまみ320を回転させると、ラックバー322,323が互いに逆方向に移動するようになっている。
【0048】
ラックバー322,323の先端には、患者の足関節BCの果BCa,BCbを挟む腕332,333がそれぞれ設けられている。すなわち、センターブロック310のつまみ320を回転することで、腕332,333の間隔が開いたり、閉じたりするように構成されている。腕332,333は、好ましくは左右均等に患者の足関節BCの果BCa,BCbを挟むようにする。
【0049】
センターブロック310の頂面には、果BCa,BCbの中点(機能軸中心点)を頂点とする円弧状のスリットガイド340が設けられており、このスリットガイド340には、直方体状のスライダ341が円弧状にスライド可能に設けられている(矢印FE参照)。スライダ341は、つまみ342を回すことで移動,固定を行うことができる。スライダ341の前端には支柱343が立設されており、後端には長穴344が設けられている。長穴344は、スリットガイド340の円弧に対して法線方向に延設されている。
【0050】
次に、前記支柱343の先端には、直方体状の延長ブロック350が設けられている。延長ブロック350は、前記スライダ341と平行に保持・固定されており、先端側に延長支柱351が設けられており、後端側にスリット352が設けられている。このスリット352は、前記スライダ341の長穴344に沿って平行に設けられている。
【0051】
図9には、脛骨上位端アタッチメント400が示されており、全体が略十字状の中心ブロック410を中心に構成されている。中心ブロック410の脛骨BD側の腕411と突起412には、それらに当接するようにガイド固定具420が取り付けられており、つまみ422を引くことで、その取り外しができるようになっている。ガイド固定具420は、脛骨BD側の端部に立設部421が設けられており、この立設部421の外側にピン425が設けられている。この立設部421と平行に、ナット及びボルトによるドリルガイド取付部423が設けられており、これによってドリルガイド430の高さ調整を行うことができるようになっている。前記中心ブロック410の反対側の腕413にはスリット414が形成されており、下側の脚415には、延長脚440が接続されている。
【0052】
延長脚440は、前記脚415に接続する柱上部441と柱下部442の間に、ピン425の先端を中心とする円弧(
図10参照)をもつ扇状部443が設けられており、柱下部442の先端に先端部444が設けられた構成となっている。柱下部442には、つまみ445が設けられている。なお、ピン425の先端に限定されるものではなく、ピン425によって規定される点を中心としてよい。
【0053】
図10には、前記足関節アタッチメント300と、前記脛骨上位端アタッチメント400を結合した状態が示されている。これらのうち、足関節アタッチメント300は、患者の足関節BCの果BCa,BCb上に、皮膚の上から設置するのに対し、脛骨上位端アタッチメント400は、患者の膝部分を皮切り・展開し、脛骨BDにおける解剖学的位置の指標である脛骨粗面上の参照点(脛骨粗面の解剖学的指標点)BDaにピン425を押し当てるようにして設置する。脛骨BDの脛骨粗面参照点BDaを脛骨粗面上のどの位置とするかは、術者によって術前計画時に決定される。
【0054】
足関節アタッチメント300の延長支柱351と、脛骨上位端アタッチメント400の延長脚440は、扇状の結合体370によって結合されている。すなわち、延長支柱351が結合体370を貫通するとともに、延長脚440の扇状部443と先端部444を挟み込むことで、両者を結合している。結合体370には、前記ピン425の先端を中心とする円弧に沿ったスリット372が設けられており、つまみ445を緩めることで、延長支柱351に対する脛骨上位端アタッチメント400の傾きを調整できるようになっている(矢印FF参照)。
【0055】
次に、本実施例の全体の作用を説明する。術者は、足関節アタッチメント300のつまみ320を回転させ、腕332,333によって、患者の足関節BCの果BCa,BCbを挟むようにする。上述したように、足関節BCの果BCa,BCbを結ぶ軸の中点に対して垂直の方向が機能軸の方向となっている。従って、果BCa,BCbを挟むように足関節アタッチメント300を取り付けることで、支柱343の方向が機能軸と平行になる。次に、術者は、つまみ342によって、スライダ341の位置を手術計画の回旋位置に調整する。すなわち、支柱343の位置が、患者の脛骨BDの正面となるように調整する。
【0056】
次に、上述した足関節アタッチメント300の延長ブロック350の前側では、前記延長支柱351の先端に扇状の結合体370を取り付けるとともに、結合体370で脛骨上位端アタッチメント400の延長脚440の扇状部443と先端部444を挟み込み、つまみ445で結合する。ここで、足関節アタッチメント300の支柱343の方向が機能軸となっているので、脛骨上位端アタッチメント400の延長脚440の方向が、前記支柱343の方向と一致していれば、それに直交する方向が、機能軸に対して直交する方向となる。その結果、脛骨上位端アタッチメント400に取り付けるドリルガイド430のドリルの方向は、機能軸に直交する方向となる。なお、この方向は、患者の膝を前額面から見たときの方向である。
【0057】
一方、足関節アタッチメント300の延長ブロック350の後側では、ロッド360を、スライダ341の長穴344,延長ブロック350のスリット352,脛骨上位端アタッチメント400のスリット414の順に貫通させ、全体を固定する。
【0058】
ところで、脛骨BDの上端の骨切除において、機能軸に対して直交する方向に切断して人工関節の脛骨インプラントを設置するのであるが、矢状面(
図10が相当)の方向については、患者の膝が曲がる前後方向に傾斜を設ける場合があり、どの程度の傾斜を設けるかは術者が術前計画,あるいは術中に軟部組織の緊張を判断して設定する。本実施例によれば、脛骨上位端アタッチメント400は、円弧結合体370のスリット372に設けたつまみ445を緩めて調整することで、脛骨BDの切断角度を患者の前額面から見たときは機能軸と直交する方向と高さを変化させることなく、矢状面における角度のみを適宜調整することができる。また、このような構造とすることで、機能軸と3次元的に平行に一致している足関節アタッチメント300の支柱343の方向や高さを変化させることなく目標とする矢状面内の後方傾斜角度のみを調整することができる。
【0059】
以上のようにして脛骨上位端アタッチメント400を位置決めした時点で、ドリルガイド430を脛骨上位端に固定し、つまみ422を引くことで、脛骨上位端アタッチメント400の全体を取り外す。術者は、以上のようにして方向を決定することで、機能軸に直交する方向であって、必要な矢状面内における所望の傾斜を有するように、ドリルガイド430に沿って脛骨上位端を切断することができる。
【0060】
以上のように、本実施例によれば、足関節アタッチメント300及び脛骨上位端アタッチメント400によって、術前計画を3次元的に誘導し、前額面においては機能軸に垂直に、矢状面においては術者の判断に応じて適切な後方傾斜をつけて脛骨上位端の切断を行うことができる。
【実施例3】
【0061】
次に、
図11〜
図13を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。
図11及び
図12は、いずれも患者の左側の膝関節について置換術を行う場合を示している。本実施例は、前記実施例1における骨盤アタッチメント100の代わりに、市販されているものを使用した例である。
図11,
図12には、本実施例の骨盤アタッチメント500が示されている。骨盤アタッチメント500は、市販のレキシー社製のヒップコンパス502を利用して構成されている。ヒップコンパス502は、全体が略T字状に構成されており、中心から左右に腕510,520が延設されており、それらと直交する方向に腕530が延設されている。各腕510,520,530には、それぞれ長穴512,522,531が形成されている。これらのうち、腕530の長穴531には、ポール532が摺動固定具534を介して取り付けられている。すなわち、ポール532は、その軸方向及び長穴531の方向に摺動可能に、摺動固定具534によって立設固定されている。摺動固定具534は、長穴531内で腕530を上下から挟むボルト・ナット機構をポール532が貫通する構造となっている。
【0062】
以上のようなヒップコンパス502に対して、腕510,520に、それぞれ追加部品540,550,560,570が取り付けられる。
図13には、それら追加部品540,550,560,570が拡大して示されている。追加部品540,560は同じ構造となっており、追加部品550,570は同じ構造となっている。追加部品540,550は腕510の長穴512に取り付けられており、追加部品560,570は、腕520の長穴522に取り付けられている。
【0063】
これらのうち、追加部品540は、ポール542を、その軸方向及び長穴512の方向に摺動可能に立設・固定する構造となっている。同様に、追加部品560は、ポール562を、その軸方向及び長穴522の方向に摺動可能に立設・固定する構造となっている。追加部品540は、腕510を上下から挟むボルト・ナット機構544をポール542が貫通する構造となっている。ボルト・ナット機構544には、ロッド受け546が設けられている。追加部品560も同様に、腕520を上下から挟む挟持機構564をポール562が貫通する構造となっている。挟持機構564には、円筒状のロッド受け566が設けられている。
【0064】
次に、追加部品550は、貫通する腕510を表裏から挟む摺動固定具552を備えている。ロッド支持リング554の脚は、摺動固定具552を、長穴512を介して貫通する。この摺動固定具552によって、ロッド支持リング554が腕510の長穴521の方向に摺動可能に固定された構造となっている。追加部品570の摺動固定具572とロッド支持リング574についても同様である。摺動固定具552,572には、ロッドガイド556,576がそれぞれ設けられている。ロッド支持リング554,574によるロッド支持方向と、ロッドガイド556,576によるガイド方向は、一致するようになっている。
【0065】
上述したポール542,562の先端542a,562aは、患者の骨盤BAにおける左右の上前腸骨棘BAa,BAbに皮膚上からそれぞれ当接する。また、ポール532の先端532aは、患者の骨盤BAにおける恥骨結合部BAcに皮膚上から当接する。ポール532,542,562は、それらの間隔を患者の骨格に合わせて自由に調整して、仰臥位の患者の骨盤BA上に骨盤アタッチメント500を設置できるようになっている。
【0066】
一方、大腿骨遠位端アタッチメント600は、基本的には上述した実施例1の大腿骨遠位端アタッチメント200と同様の構造であるが、スリット229の代わりにロッドガイド229aが腕235に設けられている点で異なる。しかし、ロッドガイド229aの作用は、スリット229と同じである。
【0067】
次に、本実施例の作用を説明する。前記実施例1と同様に、患者の骨盤BAの事前の計測結果に基づいて、骨盤アタッチメント500の各部を調整し、ポール532,542,562を、仰臥位の患者に設置する。一方、大腿骨遠位端アタッチメント600についても、前記実施例1と同様に、患者の膝関節を切開して設置する。本実施例においても、大腿骨BBの骨頭中心Pbb上を通過する中心指示ロッド160は、大腿骨遠位端アタッチメント600のロッド受け236から追加部品570のロッド支持リング574を貫通している。また、接続ロッド162は、骨盤アタッチメント500の追加部品560のロッド受け566から大腿骨遠位端アタッチメント600のロッドガイド229a,ロッド支持リング233を貫通している。
【0068】
本実施例においても、大腿骨BBの骨頭中心Pbbは、必ず中心指示ロッド160上に位置することになり、術者は、大腿骨骨頭付近を切開することなく、骨頭中心Pbbを知ることができる。上述したように、人体の膝関節機能軸は、前額面内において、大腿骨骨頭中心→膝関節の中心→足関節の中心を通る。これらのうち、大腿骨骨頭中心Pbbは、中心指示ロッド160上にあり、ロッド受け236の方向は必ず骨頭中心Pbbの方向を向いているので、その方向に対して垂直の方向に膝関節の大腿骨遠位端を切断すれば、機能軸に対して垂直の方向に膝関節の大腿骨遠位端を切断することができる。
【0069】
なお、実施例1は、上前腸骨棘上のポ−ル122(左)ないしは132(右)から膝関節中心を結ぶ接続ロッド162が骨盤BAの水平線に対して垂直となる下肢位を術中に誘導するための構造であるのに対し、実施例3は、大腿骨BBの骨頭中心Pbb上にある摺動固定具552(左)ないしは572(右)から膝関節中心を結ぶ接続ロッド160が骨盤BAの水平線に対して垂直となる下肢位を術中に誘導するための構造である。
【0070】
このように、本実施例によれば、市販のヒップコンパス502に対して、追加部品540,550,560,570を追加することで、上述した実施例の1の骨盤アタッチメント100と同様の機能を得ることができる。
【実施例4】
【0071】
次に、
図14〜
図17を参照しながら、本発明の実施例4を説明する。本実施例は、足関節アタッチメント及び脛骨上位端アタッチメントの他の実施例であり、
図14は斜視図、
図15は平面図である。また、
図16は足関節アタッチメントの取付方法の一例を示す図、
図17は脛骨上位端アタッチメントの主要部を示す図である。なお、上述した実施例2と対応する構成要素には同一の符号を用いる。
【0072】
図14及び
図15において、足関節アタッチメント700は、センターブロック310を中心に構成されており、このセンターブロック310内には、つまみ320(図示せず)によって回転するピニオンギアが設けられており、これを挟んで、ラックバー322(図示せず),323が平行に、センターブロック310の側面を貫通して設けられている。すなわち、つまみ320を回転させると、ラックバー322,323が互いに逆方向に移動するようになっている。ラックバー322,323の先端には、患者の足関節BCの果BCa,BCbを挟む腕332,333がそれぞれ設けられている。すなわち、センターブロック310のつまみ320を回転することで、腕332,333の間隔が開いたり、閉じたりするように構成されている。以上の点は、前記実施例2と同様である。
【0073】
ところで、本実施例では、腕332,333と、足関節BCの果BCa,BCbとの接触部分に、長穴を有する長円ないし楕円形状の当接環332a,333a(図示せず)が設けられている。
図16には、その取付手法の一例が示されている。術者は、手術前に予め患者の足関節BCの果BCaの最内側部および,果BCbの最外側部を触診して、市販の心電計用の電極880を貼り付ける。心電計用電極880は、裏面に粘着テープを有する樹脂製のシール882の中央に凸状の電極884を備えた構造となっており、これを貼り付けることで、患者の足関節BCの果BCa,BCbの位置を的確に把握することができる。なお、患者の足関節BCの果BCa,BCbの位置を把握できれば、心電計用電極880以外のものを用いてもよい。
【0074】
一方、足関節アタッチメント700は、足の左右に対応してそれぞれ作製してもよいが、一般的には、左右何れにも適用できる左右兼用の構造とすれば好都合である。また、患者の足関節BCの果BCa,BCbの高さは、患者によっても異なる。このような理由から、足関節BCの果BCa,BCbの高さは変動することになり、このような変動があっても、的確に足関節アタッチメント700の位置決めができるような構造が好ましい。そこで、本実施例の足関節アタッチメント700では、当接環332a,333aを長円形状とし、手術中において、この長円の穴の中に前記心電計用電極880の電極884の凸状が入り込むように配置することで、患者の足関節BCの果BCa,BCbに対して足関節アタッチメント700の抹消端を的確に位置決めするようにしている。
【0075】
前記センターブロック310の頂面には、果BCa,BCbの中点(機能軸中心点)を頂点とする円弧状のスリットガイド340が設けられており、このスリットガイド340には、スライダ741が円弧状にスライド可能に設けられている。スライダ741は、つまみ342を回すことで移動,固定を行うことができる。本実施例のスライダ741は、略L字形状となっており、該L字形状に沿うように、略L字形状の支柱保持ブロック780がつまみ782によってスライド可能に固定されている。支柱保持ブロック780には、スケール784が設けられており、スライダ741に対する支柱保持ブロック780のスライド量を知ることができるようになっている。
【0076】
前記支柱保持ブロック780には、その前端及び後端に、支柱751,760が立設されており、途中に延長ブロック750が設けられている。これらは、前記実施例2の支柱351,360,延長ブロック350に、それぞれ対応している。
【0077】
次に、本実施例における脛骨上位端アタッチメント800について説明する。なお、主要部を
図17に示している。
図17(A)に対して、矢印FP方向に位置決めベース810を移動させ、矢印FQ方向に回動部840を回動し、矢印FR方向にスライド体844をスライドさせた状態が、同図(B)に示している。なお、
図17中、位置決めピン820,822は、一部を省略している。
【0078】
脛骨上位端アタッチメント800は、上述した支柱751,760に対して垂直(図では水平)に固定支持されている支持板802に対して位置決めベース810が垂下固定された構造となっている。支持板802の先端には、脛骨上位端の顆間隆起のくぼみに設置される位置決めピン804が設けられており、この位置決めピン804は、つまみ806によって上下方向に位置調整可能となっている。支持板802には、長方形の長穴808が設けられており、この長穴808に、位置決めベース810がスライド固定具812によって長穴808の方向(
図17(B)の矢印FP方向)にスライド可能に固定されている。すなわち、スライド固定具812のつまみ812a,812bを緩めることで位置決めベース810をスライドさせ、つまみ812a,812bを締めることで位置決めベース810を固定できるようになっている。
【0079】
位置決めベース810は、略S字形状のプレート814a,814bを所定間隔で平行に設けた垂下体814を中心に構成されており、その上端部816がスライド固定具812によって支持板802にスライド可能に固定されている。垂下体814の前方(脛骨側)には位置決めピン817が突出して設けられており、垂下体814の側方には、位置決めピン820,822を保持するための位置決めピン保持アーム824が延設されている。更に、垂下体814の下方には、回動軸840aを中心とする円弧の一部を構成し、扇状の長穴を有する扇状の回動結合部830が設けられており、スケール832が設けられている。脛骨上位端の顆間隆起のくぼみに設置される位置決めピン804の中心と位置決めピン817の先端との距離LC1(
図15参照)や、脛骨前面と位置決めピン820,822の先端との距離LC2,LC3(
図14参照)は、予め術前計画で知ることができる。
【0080】
垂下体814の背面側には、回動軸840aを中心として回動する回動部840が設けられている(
図17(B)の矢印FQ参照)。回動部840の背面側にはスライド体844が設けられており、回動部840の下方には骨切り高さ調整ネジ軸846が延長形成されている。この骨切り高さ調整ネジ軸846は、前記スライド体844の下部845を貫通しており、その先には骨切り高さ調整ネジ848が設けられている。骨切り高さ調整ネジ848を回すことで、スライド体844が、
図17(B)の矢印FR方向にスライド可能となっている。
【0081】
一方、スライド体844の上側には、骨切りガイド842が設けられており、骨切りガイド842には、ガイド溝842aが上述した支柱751,760の方向に対して直交する方向に形成されている。回動部840は、骨切ガイド842のガイド方向の傾斜(膝が曲がる前後方向における後方傾斜)を調整するためのもので、回動部840を矢印FQ方向に回動すると、スライド体844も回動し、更には骨切りガイド842も回動する。このときの傾きの程度は、回動結合部830の長穴に当接するスケールピン850と、前記スケール832とによって知ることができる。
【0082】
次に、本実施例の全体の作用を説明する。術者は、足関節アタッチメント700を、患者の足関節BCの果BCa,BCb上に、皮膚の上から設置する。すなわち、
図16に示したように心電計用電極880を利用し、足関節アタッチメント700のつまみ320を回転させて腕332,333の間隔を調整し、それらの当接環332a,333aで患者の足関節BCの果BCa,BCbを挟むようにする。上述したように、足関節BCの果BCa,BCbを結ぶ軸の中点に対して垂直の方向が機能軸の方向となっている。従って、果BCa,BCbを挟むように足関節アタッチメント700を取り付けることで、支柱751,760の方向が機能軸と平行となる。
【0083】
次に、術者は、つまみ342によって、スライダ741の位置を術前計画で定めた回旋位置に調整するとともに、つまみ782によって、スライダ741に対する支柱保持ブロック780の位置を調整する。これにより、支柱751,760の位置が、患者の脛骨BDの正面となるように調整される。
【0084】
一方、脛骨上位端アタッチメント800は、患者の膝部分を皮切り・展開し、脛骨BDにおける解剖学的位置の指標である脛骨粗面上の参照点(脛骨粗面の解剖学的指標点)に位置決めピン817を押し当てるようにして設置する。脛骨BDの脛骨粗面参照点を脛骨粗面上のどの位置とするかは、術者によって術前計画時に決定される。
【0085】
上述したように、支柱751,760の位置は、患者の脛骨BDの矢状面の位置となるように調整されている。患者の正面から見て、脛骨上位端の顆間隆起のくぼみに設置される位置決めピン804の中心と、位置決めピン817の先端との距離LC1は、予め術前計画で知ることができるので、スライド固定具812によって位置決めベース810を矢印FP方向にスライドさせ、垂下体814の位置決めピン817の位置を調整する。更に、脛骨前面と位置決めピン820,822の先端との距離LC2,LC3も、予め術前計画で知ることができるので、その長さとなるように、位置決めピン保持アーム824からの位置決めピン820,822の突出量を調整して脛骨BDに押し当てて、脛骨上位端アタッチメント800の姿勢を保つようにする。
【0086】
このように、LC1,LC2,LC3を術前計画で知り得た長さに調整し、位置決めピン817,820,822を脛骨BDに押し当てることで、足関節アタッチメント700の支柱751,760の方向が機能軸となっていることから、支柱751,760に固定支持されている支持板802の方向が、機能軸に対して直交する方向となる。従って、支持板802の方向に沿って骨切りガイド842を固定して切断を行うことで、脛骨上位端を機能軸に直交する方向に切断することができる。骨切りガイド842の高さは、術前計画に基づいて、骨切り高さ調整ネジ848を回してスライド体844をスライドさせることで調整する。
【0087】
なお、上述したように、脛骨BDの上端の骨切除において、機能軸に対して直交する方向に切断して人工関節の脛骨インプラントを設置するのであるが、矢状面(
図15が相当)の切除方向については、患者の膝が曲がる前後方向に傾斜を設ける場合があり、どの程度の傾斜を設けるかは術者が術前計画,あるいは術中で軟部組織の緊張を判断して設定する。本実施例では、回動部840の角度を調整することで、目標とする矢状面内の後方傾斜角度が調整される。
【0088】
以上のようにして脛骨上位端アタッチメント800を位置決めした時点で、骨切りガイド842を脛骨上位端に固定する。これにより、機能軸に直交する方向であって、必要な矢状面内における所望の後方傾斜を有するように、骨切りガイド842が固定される。従って、この骨切りガイド842に沿って骨切りを行うことで、機能軸に直交する方向であって所望の後方傾斜を有する方向に脛骨上位端を切断することができる。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示したアタッチメント構造は一例であり、スライド機構,回旋機構など、同様の作用を奏するように各種変形可能である。
(2)前記実施例では、骨盤アタッチメントと大腿骨遠位端アタッチメントによって大腿骨遠位端の骨切りガイド位置決めを行い、足関節アタッチメントと脛骨上位端アタッチメントによって脛骨上位端の骨切りガイド位置決めを行ったが、両者は必ずしも一緒に適用する必要はなく、いずれか一方の骨切りガイド位置決めについて本発明を適用し、他方の骨切ガイド位置決めについては他の方法を適用するようにしてもよい。また、前記実施例を組み合わせるようにしてもよい。
(3)前記実施例で示した骨盤アタッチメント,大腿骨遠位端アタッチメント,足関節アタッチメント,脛骨上位端アタッチメントを更にロッドで連結することにより、術中の患者骨盤BAに対する下肢全体の肢位を可視化し、術者が下肢全体把握するようにしてもよい。その際に、レーザ光を出力する水準器をロッドの替わりとして用いてもよい。
(4)市販の靭帯のバランスを計測するKNEEバランサーと併用することも可能であり、軟部組織の緊張のバランスによる下肢の肢位の変化を可視化して明確できるため、術者の判断をより確実に助長できる。
(5)前記実施例で示したスケールは一例であり、回転ないし回動する部分やスライドする部分に、必要に応じてスケールを設けるようにしてよい。