(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601904
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】蓄電池用接続体
(51)【国際特許分類】
H01M 2/20 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
H01M2/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-142114(P2015-142114)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-27677(P2017-27677A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大出 康樹
【審査官】
儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−115150(JP,A)
【文献】
実公平05−044424(JP,Y2)
【文献】
実公平07−002942(JP,Y2)
【文献】
特開2006−128116(JP,A)
【文献】
特開2008−071733(JP,A)
【文献】
特開2009−277605(JP,A)
【文献】
実公平05−044423(JP,Y2)
【文献】
実公平07−031714(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に締結具挿通孔を有し、両端を互いに接続される蓄電池の出力端子に夫々当接した際に、該締結具挿通孔を夫々蓄電池の出力端子に形成された締結具挿通孔と連通させ、両締結具挿通孔に締結具を挿通締結して蓄電池同士を接続するための導体から形成される蓄電池用接続体であって、
a)該接続体は複数に分割された接続部品からなり、各接続部品の両端面にはいずれも締結具挿通孔が穿設され、前記接続部品は互いに接続される蓄電池の出力端子に直接取り付けられる端子取付部品と、該端子取付部品に取り付けられて該端子取付部品間を接続する部品間部品からなり、
b)前記端子取付部品は平板形状の導体板をL字形状に折り曲げて形成され、出力端子に当接する端面の締結具挿通孔は該端子取付部品の長辺に対して水平な長孔が穿設され、部品間部品と当接する端面には長辺に対し垂直な長孔が穿設され、
c)前記部品間部品は、平板形状の導体板の両端部が折り曲げられて中間面と両端面とが形成され、該両端面は互いに逆向きに平行となる様に折り曲げられ、かつ該両端面は互いに接続される蓄電池の出力端子に前記端子取付部品が当接して締結された際に該端子取付部品の部品間部品と当接する夫々の端面とも平行になる様に形成され、更に、該両端面の締結具挿通孔は該部品間部品の長辺に対し水平な長孔が穿設され、
d)前記端子取付部品を接続する蓄電池の出力端子に夫々当接する際は、出力端子に当接させる端面は互いに向かい合い、部品間部品と当接する端面は互いに反対側を向く様に当接して互いの端子取付部品が点対称となる様にし、該部品間部品と当接する端面に該部品間部品の端面を当接して、締結具挿通孔を互いに連通させて締結具を挿通締結し、蓄電池同士を電気的に接続してなること、
を特徴とする蓄電池用接続体。
【請求項2】
少なくとも一つの長孔の形状は一端を開口させたU字型の切り欠き形状であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池用接続体。
【請求項3】
蓄電池の出力端子に当接される接続部品は、2枚の導体板によって該出力端子を挟持する様に当接することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の蓄電池用接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の蓄電池同士を電気的に接続する接続体に関するものであって、特に蓄電池を並べた際に生じる位置ずれを吸収可能な蓄電池用接続体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータを核とした社会の高度情報化は、産業の電力への依存度を極めて高めた。特に、病院などの医療施設や大型のデータサーバを保有・運用する通信サービス事業などの分野では、電力供給の一瞬の空白や瞬時の電圧低下は重大な事故や損失を招きかねない。
【0003】
蓄電池は、しばしば上記の様な非常時に備えたバックアップ電源として用いられる。複数個の蓄電池を導体で出来た接続体で直列や並列、またはその両方を利用して接続し、停電時には電力が復旧するまでの間、これを用いる機器が機能を賄うだけの要求電圧を維持し続けられる様に設計される。
【0004】
ここで、蓄電池の一例として
図6に2種類の制御弁式鉛蓄電池の外観図を示し、簡単に構造を説明する。蓄電池1は、電槽2に電極群からなる発電要素が収納され、蓋体3に穿設された貫通孔に前記発電要素から外部へと電気を取り出すための平板状の出力端子4が挿通された状態で、該電槽2が該蓋体3によって封止されて形成される。さらに該出力端子4には締結具挿通孔として貫通孔41を形成し、ボルト締めにより簡単に外部と接続して電気を取り出せる様にしている。なお符号5は、ガス発生により内圧が急激に高まった際に、安全に放圧するために設けられた排気栓である。他方、蓄電池1aは出力端子4aを円柱形状に形成し、ナットインサート等により締結具挿通孔として雌ネジ部41aを穿設した例を図示した。
【0005】
従来、前記蓄電池を複数個接続する際は、例えば
図7に示す様に、平板形状の導体からなる接続体6が用いられている。この接続体6は両端部に締結具挿通孔61が穿設され、一方の蓄電池1のプラス側の出力端子4と他方の蓄電池1のマイナス側の出力端子4との間を渡す様に当接され、ボルト7が該出力端子4の貫通孔41と締結具挿通孔61に夫々挿通されて座金72を介してナット71で締結することで、隣接する蓄電池1同士が電気的に接続される。なお、
図7では2枚の接続体6で出力端子4を両側から挟み挟持する様に当接されているが、これは大電流を流すためのものであって、比較的電流が小さい用途で使用する場合は1枚で良い。
【0006】
前記接続体6に穿設する締結具挿通孔61を図示の様に該接続体6の長辺に対し水平な小判型の長円形状に形成すれば(以下、この様な形状の長孔を「小判孔」と表記する。)、
図8の如く蓄電池1が列の前後方向に対し離れて置かれ隙間9が生じた場合にも、該隙間9が小判孔の長辺の長さよりも小さい範囲において、出力端子4の貫通孔41と該接続体6の小判孔61とが連通した状態を維持しボルト7を挿通できるので、列に対して前後方向への位置ずれを吸収し問題なく締結できる。
【0007】
一方、
図9に示した様に、出力端子4が蓄電池1の列に対し略直交する様に配置する場合は、接続体6aの端子接続面62が出力端子4の面と略平行になるように予め折り曲げておくことで、該接続体6aの端子接続面62を該出力端子4に当接させ、締結具挿通孔61と貫通孔41とが連通した状態でボルト7を挿通し座金72を介してナット71で締結して隣接する蓄電池同士を接続できる。
【0008】
また、該端子接続面62に前記接続体6aの長辺に対し水平な小判孔61を形成しておくことで、
図10の様に蓄電池1が列の左右方向に対しずれて置かれはみ出し10が生じた場合でも、該はみ出し10が小判孔61の長辺の長さよりも小さい範囲において、出力端子4の貫通孔41と該接続体6aの小判孔61とが連通した状態を維持しボルト7を挿通できるので、列に対して左右方向への位置ずれを吸収し締結することが可能である。
【0009】
更に
図11に示した様に蓄電池1aの出力端子4aを円柱形状に形成した場合は、該出力端子4aにナットを鋳込むかタップ孔を設けることで雌ネジ部41aを形成し、平板形状の接続体6bを該出力端子4aに当接させ、該接続体6bに穿設した締結具挿通孔61と前記出力端子4aの雌ネジ部41aとが連通した状態でボルト7を挿通し締結することで隣接する蓄電池1a同士を接続できる。
【0010】
上記の接続構造では、前記接続体6bに該接続体6bの長辺に対し水平な小判孔61を形成しておくことで、
図12に図示した様に蓄電池1aの列に対して隙間9aが生じたりはみ出し10aが生じたりしても、該隙間9aの大きさ及び該はみ出し10aの大きさの二乗和の平方が該前記小判孔61の長辺の長さよりも小さい範囲において、出力端子4aの貫通孔41aと該小判孔61とが連通した状態を維持しボルト7を挿通できるので、列に対して前後左右方向の位置ずれを吸収し締結できる。
【0011】
上記の他にも、特許文献1や特許文献2の様な接続構造が知られている。特許文献1は、第1の蓄電池上面の出力端子と第2の蓄電池側面の出力端子とを、長孔を設け断面L字に形成した接続体で接続することにより、上下左右及び前後の位置ずれを調整吸収するというものである。一方、特許文献2は重ね合わせたバスバーと接続プレートの端部に夫々長孔を形成して直交させ、ボルトで係合することで平面内の全方向に対する位置ずれを吸収できるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5009030号公報
【特許文献2】特許第3409239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら前述の夫々の接続体を用いた際、
図13の様に蓄電池1が列からはみ出して置かれて隙間9bを生じたり、
図14の様に蓄電池1が離れて置かれて隙間9cを生じたり、または
図15に示した様に蓄電池載置部の凹凸などの原因により隣の蓄電池1aの出力端子4aとの高さに差が生じ列の上下方向に対して接続体6bと出力端子4aの隙間9dが生じたりすると、長孔による締結位置の自由度が意味を成さず、確実な締結ができなくなる。
【0014】
蓄電池は、商用電源のバックアップや自家発電装置のエンジン始動用などの用途では大きな放電電流で使われるので、接続体は溶断しないように銅等の金属板に一定の幅と厚みを持たせて形成され、作業者の手では容易に曲げられない硬さである場合が多い。蓄電池自体も、容量によって1個あたりの重量が数十kgから数百kgもあるので、これを数ミリ単位で正確に動かして個々の蓄電池の位置や高さを微調整したうえで接続するのは作業が煩わしくなる。特に
図7乃至図15では例として蓄電池を3個だけ接続した状態を描いたが、実際に定置用電源として使用する場合等には蓄電池が1列あたり数十個用いられ、それが複数列、複数段に配置され、全部で数百個接続する場合もあるので位置の調整作業には大変な労力を要する。
【0015】
つまり前述の通り大容量の蓄電池は非常に重いため、位置ずれが生じた場合に蓄電池を置き直して調整することは大変な労力を要する。しかし接続体は硬質な金属平板を加工して形成されるために、蓄電池を動かさずに無理に取り付けようと過大な力で締結すると、蓄電池の出力端子に過剰な力が加わり、出力端子や電槽蓋にヒビ割れや欠損等を生じる問題があった。
【0016】
もちろん位置ずれが小さければ、強く締結しても破損に至る心配は少ない。しかし、ボルトの締め付けにより接続体が多少撓んで見かけ上は正常に取り付けられたとしても、実際には出力端子と接続体の密着が充分でなく、該箇所の接触による電気抵抗が増大してしまう。この状態のまま大きな放電電流を流すと、接続体が過熱し最悪の場合は溶断に至る恐れもあった。
【0017】
特許文献1の接続方法は、確かに隣接する電池同士の位置ずれについて、上下、前後、左右の各方向について調整が可能なように思われる。しかし該特許文献1は[発明が解決しようとする課題]の[0005]項に記載の通り、2つの電池を横方向に並べる際に、両電池の相対位置関係の調整が可能に電池を配設できる組電池を提供することが課題であって、実際、位置ずれの調整は接続体を接続部上で摺動させるだけでなく、同時に電池を移動・回転させることによって行う必要があった。したがって大型で重量があり、矩形である蓄電池などに対しては、設置後に位置ずれを調整し吸収することは非常に困難である。
【0018】
一方特許文献2の方法では、分割された接続体の長孔が直交するようにボルト等で係合するため、水平面内のずれ方向に対して調整できるものの、高さ方向のずれには対応できない。
【0019】
本発明は、蓄電池を並べた際に前後左右上下のいずれの方向に対して位置ずれが生じても、蓄電池を動かすことなく係る位置ずれを吸収し、問題なく締結し接続可能な接続体を提供することを目的とする。更に本発明は、締結作業の際に締結具の取り落とし等を抑制し、施工が容易な接続体を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に係る発明は、蓄電池同士を接続するための導体から形成される蓄電池用接続体であって、該接続体は
、複数に分割された接続部品からなり、各接続部品の両端面にはいずれも締結具挿通孔が穿設され、前記接続部品は互いに接続される蓄電池の出力端子に直接取り付けられる端子取付部品と、該端子取付部品に取り付けられて該端子取付部品間を接続する部品間部品からなる複数に分割された接続部品を組み合わせて形成される。前記端子取付部品は平板形状の導体板がL字形状に折り曲げて形成され、該端子取付部品の出力端子に当接する端面の締結具挿通孔は該端子取付部品の長辺に対し水平な長孔として穿設され、他方の部品間部品と当接する端面の締結具挿通孔は該長辺に対し垂直な長孔として穿設される。また前記部品間部品は、平板形状の導体板の両端部が折り曲げられて中間面と両端面とが形成され、該両端面は互いに逆向きに平行となる様に折り曲げられて、接続される蓄電池の出力端子に取り付けられる端子取付部品を出力端子に当接して締結された際に該端子取付部品の部品間部品と当接する夫々の端面と平行になる様に形成され、更に、該両端面の締結具挿通孔は該部品間部品の長辺に対し水平な長孔が穿設され、前記端子取付部品を接続する蓄電池の出力端子に夫々当接する際は、出力端子に当接させる端面は互いに向かい合い、部品間部品と当接する端面は互いに反対側を向く様に当接して点対称となる様にし、該部品間部品と当接する端面に部品間部品の端面を当接して、締結具挿通孔を互いに連通させて締結具を挿通締結し、蓄電池同士を電気的に接続してなることを特徴とする。
【0021】
本発明の
請求項2に係る発明は、少なくとも一つの長孔の形状が一端を開口させたU字型の切り欠き形状(以下「U字孔」と表記する。)であることを特徴とする
請求項1に記載の蓄電池用接続体である。
【0022】
本発明の
請求項3に係る発明は、蓄電池の出力端子に当接される接続部品が、2枚の導体板によって該出力端子を挟持する様にしたことを特徴とする
請求項1乃至請求項2に記載の蓄電池用接続体である。
【発明の効果】
【0023】
以上の通り、本発明は、蓄電池同士を接続する蓄電池用接続体を
L字状に折り曲げられた端子取付部品と両端部を互いに逆向きに平行となる様に折り曲げて中間面と両端面とが形成された部品間部品とで形成し、端子取付部品の出力端子に当接させる端面は互いに向かい合い、部品間部品と当接する端面は互いに反対側を向く様に当接し、
該端子取付部品の出力端子に当接する端面の締結具挿通孔は該端子取付部品の長辺に対し水平な長孔として穿設され、他方の部品間部品と当接する端面の締結具挿通孔は該長辺に対し垂直な長孔として穿設されることで、接続部品同士が当接する端面には当接した際に互いの締結具挿通孔が交差する様に、互いに異なった向きに形成された長孔が穿設されているので、接続すべき蓄電池間に前後左右上下の全ての方向に蓄電池の位置ずれがあっても、長孔の長辺の長さの範囲で接続部品を摺動させ締結具挿通孔が連通した状態を維持できるので、蓄電池を動かすことなく締結具を挿通し簡単に蓄電池同士の接続作業を行える。
本発明は特に、大型で重量のある産業用の蓄電池に用いる場合に特に有効である。
【0024】
更に、接続体をL字状に折り曲げられた端子取付部品と両端部を互いに逆向きに平行となる様に折り曲げて中間面と両端面とが形成された部品間部品とで形成し、端子取付部品の出力端子に当接させる端面は互いに向かい合い、部品間部品と当接する端面は互いに反対側を向く様に当接して互いの端子取付部品が点対称となる様にし、部品間部品と当接する端面に部品間部品の端面を当接して締結具を挿通締結することで、締結具の位置を互いに接続される蓄電池の境界から遠ざけて出力端子近傍に集中させられるので、蓄電池に異物の接触・侵入・付着等を防ぐため保護用の覆い蓋等を施す場合に、該覆い蓋に接続体を挿通するための開口部を小さく形成しても、締結具が該覆い蓋と干渉しない様にできる。更に地震等で複数の蓄電池を接続した組電池を載置した架台に振動が加わった場合も、本発明の接続体を用いれば締結具が該覆い蓋の開口部から離れているため、締結具が接触することによる該覆い蓋の破損も防止できる。
【0025】
更に接続体に穿設される長孔の少なくとも一つの形状を、一端が開口したU字孔とした場合は、締結具を締結具挿通孔に挿通した状態で接続部品を着脱できる。すなわち互いに接続される接続部品の一方のU字孔でない締結具挿通孔に締結具を遊嵌状態で挿通し、他方のU字孔の一端の開口部に該締結具の挿通部を当接させ摺動させることで嵌合状態とし、該締結具を強く締結することでこれらの接続部品を接続できる。上記の様に接続部品に穿設された長孔の少なくとも一つをU字孔とすることで、予め他方の接続部品に締結具を遊嵌状態としておけば、締結作業中に作業者が締結具を蓄電池間の狭い隙間等に取り落とす心配がなくなり作業性に優れる効果を奏する。
【0026】
特にボルトとナット、座金の様な部品が小さくかつ多い締結具を使用する場合には、本発明はより好ましい効果を奏するものである。
【0027】
更に、蓄電池の出力端子に当接される接続部品を夫々2枚の導体板が該出力端子を挟持する様にすれば、該接続部品の重量当たりの表面積を大きくすることができるので、充放電の際に大きな熱が発生しても該接続部品と空気との熱交換により早期に冷却され、該接続部品の溶断等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第一の実施形態を
説明する斜視図である。
【
図2】本発明の第
一の実施形態を
説明する斜視図である。
【
図3】本発明の第
一の実施形態を示した斜視図である。
【
図4】本発明の第
一の実施形態を説明する斜視図である。
【
図5】
蓄電池へ保護用の覆い蓋を冠着する方法を説明する斜視図である。
【
図7】
従来の蓄電池用接続体の一例を示した斜視図である。
【
図8】
従来の蓄電池用接続体の一例を説明する斜視図である。
【
図9】
従来の蓄電池用接続体の他の例を示した斜視図である。
【
図10】
従来の蓄電池用接続体の他の例を説明する斜視図である。
【
図11】
従来の蓄電池用接続体の更に他の例を示す斜視図である。
【
図12】
従来の蓄電池用接続体の更に他の例を説明する斜視図である。
【
図13】
図7で示した従来の蓄電池用接続体では問題があることを説明する斜視図である。
【
図14】
図9で示した従来の蓄電池用接続体では問題があることを説明する斜視図である。
【
図15】
図11で示した従来の蓄電池用接続体では問題があることを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
図1乃至図4は一列に配列された複数の蓄電池1を3個の接続部品によって接続した本発明の第
一の実施形態による蓄電池用接続体を示した斜視図であり、該蓄電池用接続体が出力端子に直接取り付ける2個の
接続部品(以下、「端子取付部品」と表記する。)12と、該端子取付部品12に取り付けられて該端子取付部品間を接続する
接続部品(以下、「部品間部品」と表記する。)13を組み合わせて形成される場合を示し、該蓄電池1は板状の出力端子4が垂直に形成され、該蓄電池1のマイナス側の出力端子4と隣接する蓄電池1のプラス側の出力端子4とが互いの面を平行に対向させて配列される場合を図示したものである。
【0031】
該端子取付部品12は、銅等の金属からなる長辺と短辺とを有する長方形状の導体板を、長辺で略直角に折り曲げて断面L字形状にし、該端子取付部品12の出力端子4に当接する
夫々の端面(以下、「A端面」と表記する。)には
締結具挿通孔として該端子取付部品12の長辺に対し水平な小判孔121を穿設し、他方の
端面(以下、「B端面」と表記する。)には
締結具挿通孔として夫々該端子取付部品12の長辺に対し垂直かつ該端子取付部品12の上方の長辺に一端を開口したU字孔122を穿設した。この様な端子取付部品を長さと折り曲げ位置を異ならせて2種類用意した。
【0032】
前記部品間部品13は、銅等の平板形状の導体板を、その長辺を2箇所で折り曲げて中間面131とその両端面132とを形成し、該両端面132は互いに略平行となる様に中間面131との境界で夫々反対の方向に折り曲げ、該中間面131と該両端面132とのなす角度は、隣接した蓄電池1の出力端子4に夫々端子取付部品12を取り付けた際に該端子取付部品12のB端面に該両端面132が平行する様に形成し、該両端面132には、
締結具挿通孔として該部品間部品13の長辺に対し水平な小判孔133を穿設した。
【0033】
これらを取り付ける際は、まず前記端子取付部品12のA端面を蓄電池1の出力端子4を挟み込む様に夫々当接させ、該A端面の小判孔121と出力端子4の貫通孔41とが連通した部分にボルト7を挿通し、該ボルト7に座金72を介してナット72を螺合して遊嵌状態とした。この時、種類の異なる端子取付部品12のB端面は互いに当接し、該B端面に穿設されたU字孔が重なり合う様に形成されている。ここで、該端子取付部品12が蓄電池1の出力端子4に当接する際は、夫々のB端面が互いに反対側を向く様にして、端子取付部品が互いに点対称の位置関係になる様にした。
【0034】
更に、前記部品間部品13の両端面132の小判孔133にボルト7を挿通し、該ボルト7に座金72を介してナット71を螺合して遊嵌状態とし、該端子取付部品12の夫々のB端面と該部品間部品13の両端面132とが当接する様に該端子取付部品12の夫々のA端面を蓄電池1の出力端子4の当接面上で摺動させ、該部品間部品13の両端面132と該端子取付部品12のB端面とが当接した際に該B端面の夫々のU字孔122に両端面132の小判孔133に遊嵌状態のボルト7の軸部をU字孔内へ摺動させることで緩嵌合状態とし、出力端子4の部分も含め夫々ボルトにナットを螺合して強く締結することで、隣接した蓄電池1同士を電気的に接続した。
【0035】
このような蓄電池用接続体を用いることで、蓄電池1の列に、列方向に直行する左右のずれがあった場合は、端子4と当接する端子取付部品12のA端面もそれぞれ左右にずれるが、該A端面に穿設された水平な小判孔121により、端子4の貫通孔41との連通は保たれ、ずれが吸収されて接続が可能であり、蓄電池1の列に、蓄電池1間の上下のずれがあった場合は、端子取付部品12のB端面も互いに上下にずれるが、該B端面に穿設された垂直なU字孔122により、部品間部品13の水平な小判孔131との連通は保たれ、ずれが吸収されて接続が可能であり、更に蓄電池1の列に、蓄電池1間の隙間が生じ前後のずれがあった場合は、部品間部品13の水平な小判孔131により端子取付部品12のB端面に形成されたU字孔122との連通は保たれ、ずれが吸収されて接続可能であり、従って、左右、上下、前後いずれの場合も位置ずれを吸収することができる。
【0036】
なお、端子取付部品のB端面に穿設されるU字孔の向きは上記の実施形態に制限されず、該端子取付部品の長辺に対し水平に形成しても良い。その場合、部品間部品の両端面に穿設される小判孔は該U字孔と直交する様に、該部品間部品の長辺に対し垂直に形成されるものである。また、
図1乃至図4に示した本発明の実施形態では2枚の端子取付部品12で出力端子4を挟持しているが、これは大電流を流した際の放熱性を良好にするためのものであって、比較的電流が小さい用途で使用する場合は1枚で良い。
【0037】
また、蓄電池には異物の接触・侵入・付着等による短絡を防ぐため保護用の覆い蓋を施しても良い。例えば
図5に図示した様に、下方に開口した直方体形状の蓋体30をポリプロピレンやポリエチレン、ABS樹脂等の樹脂で形成し、該覆い蓋30の短側面31の中央には下端に開口した台形形状の切り欠き部311を、該覆い蓋30が蓄電池1に冠着された際に、部品間部品13と干渉しない様な高さと幅に形成した。該覆い蓋30は蓄電池1の電槽蓋3に嵌合させて冠着できる。
【0038】
更に
図5に図示した様に、接続体をL字状に折り曲げられた端子取付部品12と両端部を互いに逆向きに平行となる様に折り曲げて中間面と両端面とが形成された部品間部品13とで形成し、端子取付部品12の出力端子4に当接させる端面は互いに向かい合い、部品間部品13と当接する端面は互いに反対側を向く様に当接して互いの端子取付部品12が点対称となる様にし、部品間部品13と当接する端面に部品間部品13の端面を当接してボルト7を挿通し座金72を介してナット71を螺合して締結することで、該ボルト7等の締結具の位置を互いに接続される蓄電池1の境界から遠ざけて出力端子4近傍に集中させられるので、前記覆い蓋30の切り欠き部311を小さく形成しても、締結具が該覆い蓋30と干渉しない様にできる。更に地震等で複数の蓄電池を接続した組電池を載置した架台に振動が加わった場合も、締結具が該覆い蓋の開口部から離れているため、締結具が接触することによる該覆い蓋の破損も防止できる。
【0039】
以上の通り、本発明は、蓄電池同士を接続する蓄電池用接続体を複数の接続部品に分割し、これらを折り曲げて、折り曲げられた両端部には締結具挿通孔が形成され、蓄電池の出力端子と当接する端面の少なくとも一方に水平な長孔を穿設し、接続部品同士が当接する端面には締結具挿通孔が交差する様に、互いに異なる向きの長孔が形成されているので、接続すべき蓄電池間に前後左右上下の全ての方向に蓄電池の位置ずれがあっても、長孔の長辺の長さの範囲で接続部品を摺動させ締結具挿通孔が連通した状態を維持できるので、蓄電池を動かすことなく締結具を挿通し簡単に蓄電池同士の接続作業を行える。
【0040】
例えば
図13に図示した様に、蓄電池の列が完全に真っ直ぐではなく多少のはみ出しが有っても、接続部品のB端面の交差する小判孔の範囲内でボルトの締結位置を左右方向に調整することで、係る隙間を吸収して問題なく接続体を締結できる。
【0041】
また
図14に図示した様に、ある箇所の蓄電池だけ離れて置かれ、隣の電池との間隔が不均等になっていても、接続部品の締結具挿通孔の内、蓄電池の列の前後方向に対し水平な向きに穿設された小判孔の範囲内で、ボルトの締結位置を列に対して前後方向に調整すれば良い。
【0042】
更に
図15に図示した様に、電池載置部に凹凸が有り隣の電池の出力端子との高さに差が有る場合には、端子取付部品同士が互いに当接する端面の交差する小判孔の範囲内でボルトの締結位置を上下方向に調整すれば良い。
【0043】
以上より、本発明の蓄電池接続体を使用すれば、蓄電池を並べた際に位置ずれが生じた場合であっても、蓄電池を一切動かすことなく、また接続体のボルト締めを過大な力によって行い硬い接続体を撓ませて無理に締結することなく、前記位置ずれを吸収し、隣接する蓄電池同士を電気的に接続できる。
本発明は特に、大型で重量のある産業用の蓄電池に用いる場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0044】
1、1a 蓄電池
4 出力端子
41 貫通孔
7 ボルト
71 ナット
72 座金
12 接続部品(端子取付部品)
12a 接続部品
121、121a、121b、133 小判孔
122 U字孔
13 接続部品(部品間部品)
131 中間面
132 両端面