(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6601905
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】開閉支持装置並びにこの開閉支持装置を用いた各種機器
(51)【国際特許分類】
G03B 27/62 20060101AFI20191028BHJP
E05D 3/06 20060101ALI20191028BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20191028BHJP
E05D 3/18 20060101ALN20191028BHJP
【FI】
G03B27/62
E05D3/06
H04N1/00 D
!E05D3/18 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-163682(P2015-163682)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-40863(P2017-40863A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直和
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−038149(JP,U)
【文献】
特開2006−055624(JP,A)
【文献】
実開昭58−038148(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 27/62
F16C 11/04
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種機器の装置本体と、この装置本体に対して開閉される蓋体との間に設けられた前記蓋体の開閉支持装置であって、
装置本体側の上端部後面側に立たせて取り付けられる取付部材と、この取付部材の前記装置本体側に位置して設けられたヒンジシャフトに回転可能に軸支されたところの前記蓋体へ取り付けられる支持部材と、前記取付部材内に収容固定された第1スプリングケースと、この第1スプリングケース内に収容されその上端部側を前記ヒンジシャフトより後部側に位置させて第1連結ピンを介して搖動可能に前記支持部材に連結された第2スプリングケースと、前記第1スプリングケースと前記第2スプリングケースの間に弾接した弾性部材を備え、前記第1スプリングケースの上端部側に取り付けた第2連結ピンを前記第2スプリングケースの両側に設けたガイド長孔に係合させたことを特徴とする、開閉支持装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記蓋体の後端部に設けた取付穴へ挿入固定される板状の取付板部を有することを特徴とする、請求項1に記載の開閉支持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉支持装置を用いたことを特徴とする、各種機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機の原稿圧着板などの蓋体を開閉支持する際に用いて好適な蓋体の開閉支持装置並びにこの開閉支持装置を用いた各種機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、スキャナー或いは印刷機等の事務機器には、装置本体上にコンタクトガラスが設けられ、このコンタクトガラスに複写或は印刷するために載置された原稿を当該コンタクトガラスに圧着するため原稿圧着板(以下蓋体とも言う。)が設けられ、この蓋体を開閉するために装置本体と蓋体との間に開閉支持装置(原稿圧着板開閉装置ともいう)が設けられている。この開閉支持装置は、一種のヒンジ機構であり、蓋体をヒンジシャフトの軸まわりに回転可能に軸支した構成であり、当該蓋体を閉じた状態では、装置本体の上面に設けたコンタクトガラス上に蓋体を圧着させた状態となり、蓋体を開く際には、蓋体本来の重量を感じさせることなく開くことができ、さらに所定の開閉角度範囲では、蓋体を自然落下しないように停止保持できる機構となっている。
【0003】
このような開閉支持装置は、装置本体に取り付けられる取付部材と、この取付部材にヒンジシャフトを介して回転可能に設けられていると共に蓋体を支持する支持部材と、支持部材と取付部材との間に取付部材内に弾性部材を収容させて設けられ、支持部材を開成方向へ付勢する弾性部材とを備えているが、取付部材を装置本体の後部上面に寝かせて取り付けるタイプのものと、取付部材を装置本体の上部後面側に立たせて取り付けるタイプの2種類があり、本発明は後者に属する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−001619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この後者に属する開閉支持装置は、構成は簡単であるが、
図6(A)に示したように、取付部材に対して支持部材を上方へ回転付勢させるために、取付部材内に収容させた弾性部材の力点をヒンジシャフトの前側に設けていることから、ヒンジシャフトが装置本体に対し後方に位置することになり、その分だけヒンジシャフトに支持部材を介して回転可能に取り付けた蓋体の閉止モーメントが大きくなることから、弾性部材による十分な回転付勢力を得るためにはバネ荷重の大きなものを用意しなければならず、開閉支持装置の小型化の障害となっていた。
【0006】
この発明は、支持部材を上方へ付勢する弾性部材による力点をヒンジシャフトの後側へ設けるように工夫することにより、ヒンジシャフトの位置を装置本体側に近づけることで、装置本体と蓋体との間に極力隙間が生じないように工夫した上で、従来公知の開閉支持装置のものよりバネ荷重の小さなものを用意すれば足りるように成すことにより、小型化を図ることのできる蓋体の開閉支持装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような問題を解決するために、請求項1発明は、各種機器の装置本体と、この装置本体に対して開閉される蓋体との間に設けられた前記蓋体の開閉支持装置であって、装置本体側の上端部後面側に立たせて取り付けられる取付部材と、この取付部材の前記装置本体側に位置して設けられたヒンジシャフトに回転可能に軸支されたところの前記蓋体へ取り付けられる支持部材と、前記取付部材内に収容固定された第1スプリングケースと、この第1スプリングケース内に収容されその上端部側を前記支持部材の前記ヒンジシャフトを挟んだ後部側に第1連結ピンを介して搖動可能に連結された第2スプリングケースと、前記第1スプリングケースと前記第2スプリングケースの間に弾接した弾性部材を備え、前記第1スプリングケースの上端部側に取り付けた第2連結ピンを前記第2スプリングケースの両側に設けたガイド長孔に係合させたことを特徴とする。
【0008】
請求項2発明は、前記支持部材が、前記蓋体の後端部に設けた取付穴へ挿入固定される板状の取付板部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3発明は、各種機器に請求項1に記載の開閉支持装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、支持部材に弾性部材によって付与される付勢力の力点が、ヒンジシャフトの後方に位置するように構成したので、ヒンジシャフトを装置本体側に近づけることが可能となり、ヒンジシャフトの周りに発生させる回転トルクを減少させることができたので、従来よりもバネ荷重の小さな小型の弾性部材で十分な回転付勢を得ることができ、開閉支持装置の小型軽量化を図ることが可能となり、コストダウンを図ることができたものである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、支持部材の構成がより簡単となることから、開閉支持装置の小型軽量化をより一層図ることができるものである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の開閉支持装置を用いることにより、各種機器の製造コストを下げることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の開閉支持装置を用いた複写機の斜視図である。
【
図2】本発明の開閉支持装置を用いて装置本体と蓋体を連結した状態を示し、(A)は蓋体を閉じた状態、(B)は蓋体を開いた状態をそれぞれ示している。
【
図5A】本発明の開閉支持装置の動作状態を正面側から見た状態を示し、(A)は蓋体を閉じた状態、(B)は蓋体を中間開成角度まで開いた状態を、(C)は蓋体の全開状態をそれぞれ示している。
【
図5B】本発明の開閉支持装置の動作状態を断面図にして見た状態を示し、(A)は蓋体を閉じた状態、(B)は蓋体を中間開成角度まで開いた状態を、(C)は蓋体の全開状態をそれぞれ示している。
【
図6】従来公知の開閉支持装置と本発明に係る開閉支持装置の各構成を模式的に示す説明図であり、(A)従来の公知のものを示し、(B)は本発明に係るものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る実施例を複写機の原稿圧着板の開閉支持装置として説明するが、本発明に係る開閉支持装置は、複写機以外のプリンタ、スキャナー、印刷機等の事務機器にも原稿圧着板(蓋体)の重量、機能、構造を考慮した若干の設計変更を加えるのみで、そのまま実施できるものである。また、原稿圧着板以外のものの蓋体(例えばインクカートリッジ収容部のカバー、便器の便座や蓋など)の開閉支持装置としても、そのまま実施できるものである。従って、本発明においては、原稿圧着板を単に蓋体と称し、この蓋体を用いる機器を各種機器とも称することにする。
【0015】
図1は、各種機器の1例としての画像形成装置とも称せられる複写機1の斜視図である。尚、図中において、複写機1の前後方向をY軸方向、左右方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向と
すると共に、X軸方向において、開閉支持装置5及びその構成部材は、装置本体2側に向いている方を前部側とし、その反対側を後部側として以下説明する。複写機1は、装置本体2と蓋体(原稿圧着板)3を備え、装置本体2上のコンタクトガラス4上へ原稿(図示せず)を圧着させるために用いられる本発明に係る蓋体(原稿圧着板)3の開閉支持装置5、5は、左右一対のもので構成され、とくに
図1に示したように、装置本体2の後部上端側に、蓋体3の後部の2点を開閉可能に連結支持させるものである。尚、蓋体3には、図示はしてないが、公知構成の原稿自動送り装置付きのものと、そうでないものとの二種類あるが、本発明に係る開閉支持装置5、5は、どちらの蓋体にも適用できるものである。しかしながら、好ましくは原稿自動送り装置付きでない比較的軽量で、それ自身が中折れするなどして厚物原稿にも対処できるように構成した蓋体3の開閉支持装置5であることが好ましい。以下、同じ構成なので、開閉支持装置5、5の一方のもののみを説明するが、他方を異なる構成とすることは、任意に選択することができることである。
【0016】
図2(A)と(B)は、開閉支持装置5の複写機1ヘの取り付け状態を示す斜視図であり、
図3は開閉支持装置5の拡大斜視図である。この開閉支持装置5は、取付部材6と、取付部材6にヒンジシャフト8を介してZ軸方向へ回転自在に支持された支持部材7とを備えている。取付部材6は、
図2に示されているように、装置本体2の上端部後面2a側に取り付けられ、上端部にヒンジシャフト8が取り付けられている。支持部材7は、蓋体3の後端面に形成された取付穴3aに挿入され、この取付穴3a内で蓋体3に固定されている。このような構成において、支持部材7がヒンジシャフト8を中心に回転することで、
図2(A)に示されているように、蓋体3がコンタクトガラス4を覆う閉成状態と、
図2(B)に示されているように、蓋体3が立ち上がってコンタクトガラス4が露出した状態との間で開閉させられるものである。
【0017】
図4は、開閉支持装置5の分解斜視図である。開閉支持装置5は、さらに詳しくは、取付部材6と、支持部材7と、この支持部材7の後端部を取付部材6の上端部へ回転可能に連結するヒンジシャフト8と、取付部材6内部に揺動かつ摺動可能に収容された第1スプリングケース9と、この第1スプリングケース9内に収容された第2スプリングケース10と、第1スプリングケース9と第2スプリングケース10内に弾設された一対の圧縮コイルスプリング11a、11bから成る弾性部材11と、を備えている。
【0018】
取付部材6は、SUSのような金属プレートをプレス加工することにより製造されたもので、装置本体2のY軸方向に位置する背板部6aと、この背板部6aの両端において略直角に前側Y軸方向に折り曲げて設けられた左右の側板部6b、6bと、この各側板部6b、6bの端部から外側X軸方向へ折り曲げて形成された取付板部6c、6cと、背板部6aと側板部6b、6bの下端に接続された前側に折曲部6jを有する底板部6dとを備え、背板部6aと左右の側板部6b、6bと、底板部6dとによって、内側に画成された収容部6e内に、第1スプリングケース9と第2スプリングケース10が収容されている。
【0019】
取付部材6の各側板部6b、6bの上端部には、それぞれ前側Y軸方向に突出させて連結部6f、6fが設けられ、これらの各連結部6f、6fにはヒンジシャフト8の第1連結孔6g、6gが設けられており、各取付板部6c、6cが装置本体2の上端部後面2a側に図示してない取付ビスで固着されることにより、ヒンジシャフト8の取り付け位置と装置本体2の上端部後面2aとの間に、
図6の(B)に示したように、間隙が生じない構成となっている。また、このことにより、ヒンジシャフト8の回りに創出される回転トルクを減じ、弾性部材11にバネ荷重の小さいものを用いることができるようになることにより、開閉支持装置5の小型軽量化に寄与するものとなっている。さらに、各取付板部6c、6cに指示記号6hで示したものは、取付部材6を装置本体2側へ取り付ける際に用いる取付孔であり、各側板部6b、6bの下方に指示記号6i、6iで示したものは、フランジ部19a付きの第3連結ピン19を挿通させる第4連結孔である。尚、装置本体2の上端部後面2a側とヒンジシャフト8のZ軸方向の間隙は、実施例では0であるが、これをマイナスとすることは任意に選択することのできる事項である。
【0020】
支持部材7は、同じくSUSのような金属プレートをプレス加工することにより製造したもので、板状の取付板部7aと、この取付板部7aの両端部から下側Z軸方向へ屈曲形成して構成された一対の側板部7b、7b(一方のみ表示)とを備えており、この各側板部7b、7bにはさらに後方Y軸方向へ突設させて作動板部7c、7cが設けられている。取付板部7aには、3つの取付孔7d、7d、7dが形成され、
図2(A)に示したように、蓋体3の背側端面に形成された取付穴3aに挿入された際に、取付孔7d、7d、7dを挿通する図示してないネジによって、蓋体3側に締着される。取付板部7aには、後部側に強度補強のための一対の補強リブ7e、7eがプレス加工により形成されている。尚、取付板部7aの両端部に屈曲形成された側板部7b、7bによっても、取付板部7aの強度が補強されている。
【0021】
側板部7b、7bには、それぞれ対向する位置に軸受孔7f、7fが設けられると共に、作動板部7c、7cには第2連結孔7g、7gが設けられている。側板部7b、7bに設けた軸受孔7f、7fには取付部材6に取り付けたヒンジシャフト8が連結され、第2連結孔7g、7gには、第1連結ピン12を介して後述する第2スプリングケース10が連結される構成である。
【0022】
支持部材7の各側板部7b、7bに設けた各軸受孔7f、7fには、一端部側にフランジ部14a、14aを有し、この各フランジ部14a、14aに続いてその外周軸方向に設けた回止め用の凸状部14b、14bを有する一対の軸受部材14,14が非回転状態で取り付けられて、ヒンジシャフト8を挿通軸受するとともに、それぞれ筒状のスペーサー部材15、15が同じくヒンジシャフト8を挿通させつつ取付部材6の側板部6b、6bとの間に配設されている。ヒンジシャフト8は、一端部がフランジ部8a付きのもので、他端部側をかしめることで、抜け出ないようになされている。尚、このかしめに替えてEリングを用いることもできる。尚、各軸受孔7f、7f(一方のみ表示)には、軸受部材14、14に設けた凸状部14b、14bと係合する係止溝7h、7h(一方のみ表示)が設けられている。また、各第2連結孔7g、7gにも後述するフランジ部16a、16a付きの軸受部材16、16の各凸状部16b、16b(一方のみ表示)と係合させる係止溝7j、7jが設けられている。
【0023】
第1スプリングケース9は、同じくSUSのような金属プレートをプレス加工することにより製造したもので、取付部材6の収容部6e内に収容されている。この第1スプリングケース9は、前面側に前板部9aを有し、この前板部9aの左右両端を直角にY軸方向後方へ屈曲形成して構成された一対の側板部9b、9bと、前板部9aの上端部にはY軸方向後方へ折り曲げられて設けられた上板部9cとを備えている。この上板部9cには一対の丸凸部9d、9dが下向きに設けられ、この各丸凸部9d、9dが後述する圧縮コイルスプリング11a、11bの上端部側に嵌め込まれることにより、当該圧縮コイルスプリング11a、11bの設置状態を安定化させている。また、各側板部9b、9bの上板部9cより上方に位置して一対の第3連結孔9e、9eが設けられ、各側板部9b、9bの下端部側には、第5連結孔9f、9f(一方のみ表示)が設けられている。この第5連結孔9f、9f(一方のみ表示)にも軸受部材18、18の凸状部18b、18bと係合する係止溝9g、9g(一方のみ表示)が設けられている。第3連結孔9e、9eは上板部9cの上面と面一に設けられ、この第3連結孔9e、9eに通すフランジ部13a付きの第2連結ピン13の外周部が上板部9cに接することにより、弾性部材11の弾力により上板部9cが上方へ曲がってしまうのを防止している。この第2連結ピン13は一端部側にフランジ部13aを有し、他端部側をかしめることで抜け止め規制されているが、Eリングを用いても良い。
【0024】
第5連結孔9f、9fにはフランジ部18a、18aと凸状部18b、18bを有する軸受部材18、18が取り付けられており、取付部材6の両側板部6b、6bに設けた第4連結孔6i、6iに連結した第3連結ピン19をその各軸受部材18、18に通すことにより、第1スプリングケース9を取付部材6の収容部6e内へ揺動可能に連結させている。この第3連結ピン19は一端部側にフランジ部19aを有し、他端部側をかしめることで抜け止め規制されているが、Eリングを用いても良い。
【0025】
第2スプリングケース10は、同じくSUSのような金属プレートをプレス加工することにより製造したもので、第1スプリングケース9内に収容されつつ当該第1スプリングケース9と共に取付部材6に設けた収容部6e内に収容されている。この第1スプリングケース9は、背面側で取付部材6の背板部6aと重なる位置にある背板部10aと、この背板部10aの左右両端をY軸方向前側へ直角に屈曲形成して構成された一対の側板部10b、10bと、背板部10aと各側板部10b、10bの下端部に設けられた底板部10cとを備えている。この底板部10cには1対の丸凸部10d、10dが上向きに設けられ、この丸凸部10d、10dは後述する圧縮コイルスプリング11a、11bの下端部側に嵌入しその位置の安定性を図っている。
【0026】
さらに、この底板部10cの前側には高さの低いガード板部10eが設けられると共に、各側板部10b、10bの下端部側を内側へ折り曲げて下側から底板部10cを支えることにより、弾性部材11の弾力により底板部10cが下方へ曲がってしまわないように工夫されている。また、各側板部10b、10bには上方に位置して一対のガイド長孔10f、10fが設けられると共に、各側板部10b、10bの上端側には一対の第6連結孔10g、10gが設けられている。これらの第6連結孔10g、10gは、支持部材7の第2連結孔7g、7gに取り付けた軸受部材16、16とスペーサー部材17、17に通したフランジ部12a付きの第1連結ピン12に連結されると共に、第1スプリングケース9の第3連結孔9e、9eを通した第2連結ピン13をガイド長孔10f、10fに通すことにより、第1スプリングケース9に係合されており、第2スプリングケース10は、第1スプリングケース9内に収容されつつ、支持部材7の後端部側に旋回かつ摺動可能に連結されている。
【0027】
弾性部材11は第1スプリングケース9と第2スプリングケース10内に並置した一対の圧縮コイルスプリング11a、11bから成り、第1スプリングケース9の上板部9cと、第2スプリングケース10の底板部10cの間に弾接され、この第2スプリングケース10の各側板部10b、10bの上端部側を連結した支持部材7が上向きの方向へ回転付勢されるように構成されている。この弾性部材11は、実施例では1対の圧縮コイルスプリング11a、11bで構成されているが、1本のもので構成しても良いし、2本の圧縮コイルスプリングを軸方向に重ね合わせて用いても良い。本発明においては、ヒンジシャフト8が従来のものに較べて装置本体側に寄っているので、ヒンジシャフト8の周りに創出される回転トルクが小さくなり、その分だけバネ荷重の小さな小型の圧縮コイルスプリングを用いることができるものである。尚、弾性部材11は、引張コイルスプリングを用いるように構成しても良い。
【0028】
以上のような構成において、本発明の開閉支持装置5の作用を、
図2に示されている斜視図、及び
図5Aと
図5Bに示された動作図に基づいて説明する。
図5Aは開閉支持装置5を正面側から見た動作図であり、
図5Bは
図5Aの状態を側断面図にして見た動作図である。
図2(A)と
図5Aと
図5Bのそれぞれ左側の図(A)は、蓋体3が閉じられた状態における開閉支持装置5の状態を示すものである。この状態においては、蓋体3は、コンタクトガラス4上を覆った状態となっており、自重によりコンタクトガラス4上に圧着されている。この状態において、支持部材7に連結された第1連結ピン12は、最も上方に位置し、同時に第2連結ピン13はガイド長孔10f、10f内において最も下方に位置している。つまり、第2連結ピン13が連結されている第2スプリングケース10は、第1スプリングケース9との協働作用により、上板部9cと底板部10cの間で圧縮コイルスプリング11a、11bから成る弾性部材11を最も圧縮した状態にある。ここで、蓋体3を持ち上げると、
図5Aと
図5Bにおける各中央の図(B)のように、支持部材7が時計回りに上方に回転する。この際、第1連結ピン12が、支持部材7の上方回転とともに、ヒンジシャフト8を支点として、下方(Z軸負方向)へ旋回移動する。同時に第2連結ピン13は、ガイド長孔10f、10f内を上方へ移動するので、圧縮コイルスプリング11a、11bの弾性力によって発生する回転付勢力によって、蓋体3はその本来の重さを感ずることなく開かれることになる。
【0029】
さらに、蓋体3を押し上げ、最も開放された状態とすると、
図2(B)と
図5Aと
図5Bにおけるそれぞれ右側の図(C)のように、支持部材7は、略直立状態となり、第1連結ピン12は、最下位置に旋回移動する。同時に第2連結ピン13もガイド長孔10f、10fに沿って最上位置に移動し、圧縮コイルスプリング11a、11bは圧縮状態を維持しつつ最も伸びた状態となると共に、その開成角度は、第2連結ピン13がガイド長孔10f、10fの上端部に当接することにより規制される。開いた蓋体3を閉じる際には、上記したのと逆の作用により閉じられ、その際に圧縮コイルスプリング11a、11bから成る弾性部材11は、圧縮されることになるので、蓋体3の落下速度は緩和され、急激に落下されて閉じられることはない。蓋体3が、所定角度まで閉じられると、今度は蓋体3の重量が勝ることになるので、該蓋体3は自動的に閉じられ、上述したようにコンタクトガラス4側に圧着されることになる。
【0030】
図6(A)は、従来の開閉支持装置51の構成を模式的に示し、
図6(B)の本発明に係る開閉支持装置5の構成を模式的に示すそれぞれ説明図である。
図6(A)に示す如く、従来の開閉支持装置51の構成では、ヒンジシャフト81と装置本体21との間に弾性部材111による力点を配置し、ヒンジシャフト81と装置本体21の間で、弾性部材111による弾性力を作用させる構成であったため、ヒンジシャフト81と装置本体21の上端部後面21aとの距離Laを長く取る必要があり、ヒンジシャフト81と受圧部材122との間にヒンジシャフト81より前方に位置する距離Maが存在していた。弾性部材111の弾力によってヒンジシャフト81を中心に発生する回転トルクは、装置本体21よりヒンジシャフト81の距離が空いているほど大きくなる。それ故、支持部材71に取り付ける図示してない蓋体を装置本体21に対して開くと、当該ヒンジシャフト81と装置本体21との間の距離Laが広いことから、ヒンジシャフト81の周りに発生する回転トルクが大きくなり、そのため弾性部材111にバネ荷重の大きなものを用いる必要があった。これに対し、
図6(B)に示す如く、本発明の開閉支持装置5では、ヒンジシャフト8と装置本体2との間の距離Lbが0であり、上記した構成
図6(B)の距離Laよりも短くなったことから、支持部材7に取り付ける
図6(B)では図示してない蓋体の開成時においてヒンジシャフト8の周りに発生する回転トルクが減少する。そのため、バネ荷重の小さな弾性部材11を用いればで足りることになったから、装置の小型化をも図ることができたものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は以上のように構成したので、本発明に係る開閉支持装置は、開成時における蓋体とヒンジシャフトとの間の間隙を減少、或は0、或はマイナスにさせることにより、ヒンジシャフトを装置本体側に近づけ、ヒンジシャフトの回りに発生する回転トルクを減少させることができたことで、弾性部材にバネ荷重の大きなものを用いなくともヒンジシャフトの周りに発生する回転トルクを制御できることとなったことから、小型でも十分に蓋体に対する回転付勢力を得ることのできる開閉支持装置として、複写機やプリンタ、スキャナー、或は印刷機などに用いることができるものであり、また、このように構成した開閉支持装置を用いた各種機器として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 複写機
2 装置本体
2a 上端部後面
3 蓋体(原稿圧着板)
3a 取付穴
5 開閉支持装置
6 取付部材
6c 取付板部
7 支持部材
7a 取付板部
8 ヒンジシャフト
9 第1スプリングケース
10 第2スプリングケース
10f ガイド長孔
11 弾性部材
12 第1連結ピン
13 第2連結ピン