【文献】
日本臨床増刊号 抗がん剤の副作用と支持療法−より適切な抗がん剤の安全使用をめざして−,2015年 2月20日,Vol.73,増刊号2(通巻第1073号),pp.198-203
【文献】
Xu X et al,Biochemical Pharmacology,1999年,Vol.58,p.1405-13
【文献】
MINI-REVIEWS IN MEDICINAL CHEMISTRY,2011年,Vol.11, No.12,pp.1039-1055
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、前記式(1)中、
R
2は、4−トリハロゲノメチル基である。
【0011】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、前記式(1)中、
R
1は、前記式(2)である。
【0012】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、前記式(1)中、
R
1は、前記式(3)である。
【0013】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、さらに、メチル基転移酵素阻害剤を含む。前記メチル基転移酵素阻害剤が、アザシチジンであることが好ましい。
【0014】
本発明の抗がん剤は、例えば、前記がんが、血液腫瘍、卵巣がん、および肺がんからなる群から選択された少なくとも一つである。
【0015】
本発明の抗がん剤は、例えば、前記血液腫瘍が、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、および悪性リンパ腫からなる群から選択された少なくとも一つである。
【0016】
本発明の抗がん剤は、例えば、前記肺がんが、肺腺がんおよび肺小細胞がんの少なくとも一方である。
【0017】
本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤は、例えば、前記メチル基転移酵素阻害剤が、アザシチジンである。
【0018】
(細胞増殖抑制剤)
本発明の細胞増殖抑制剤は、前述のように、下記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体を含むことを特徴とする。
【化1】
前記式(1)中、
R
1は、下記式(2)、式(3)または式(4)であり、
【化2】
【化3】
【化4】
R
2は、水素原子、ハロゲン基、トリハロゲノメチル基、アセチル基、メチルオキシ基、またはハロゲノメチルアミド基である。
【0019】
本発明の細胞増殖抑制剤は、前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の細胞増殖抑制剤は、細胞増殖を抑制でき、具体的には、がん細胞の増殖を抑制できる。
【0020】
本発明らは、鋭意研究の結果、テリフルノミドが、以下に示すように、種々のがん細胞の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、メカニズムは不明であるが、テリフルノミドが、抗がん剤として使用されているメチル基転移酵素阻害剤に対するがんの感受性を増強することを見出した。このため、前記メチル基転移酵素阻害剤に対する耐性を有するがんに対しても、例えば、本発明の細胞増殖抑制剤と前記メチル基転移酵素阻害剤とを併用することにより、効果的に治療ができる。さらに、テリフルノミドまたはその誘導体は、例えば、多発性硬化症治療薬として公知であるが、前述の本発明における効果は、本発明者が初めて見出したことである。テリフルノミドまたはその誘導体は、多発性硬化症治療薬として承認されていることから、その安全性も信頼性に優れる。
【0021】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、後述するように、抗がん剤またはメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤として使用できる。
【0022】
本発明において、テリフルノミドまたはその誘導体は、例えば、テリフルノミドまたはその誘導体の塩、水和物または溶媒和物でもよい。また、本発明において、テリフルノミドまたはその誘導体は、例えば、テリフルノミドまたはその誘導体の異性体でもよく、具体的には、テリフルノミドまたはその誘導体の立体異性体または互変異性体でもよい。以下、テリフルノミドに関する記載は、特に言及しない限り、前記誘導体に援用できる。
【0023】
前記式(1)において、R
1は、前記式(2)、前記式(3)または前記式(4)であり、好ましくは、前記式(2)または前記式(3)である。
【0024】
前記式(1)において、R
2は、水素原子(H)、ハロゲン基、トリハロゲノメチル基、アセチル基(COOH)、メチルオキシ基(OCH
3)、またはハロゲノメチルアミド基であり、好ましくは、トリハロゲノメチル基であり、より好ましくは、トリフルオロメチル基である。前記ハロゲン基は、例えば、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)等があげられる。前記トリハロゲノメチル基は、例えば、トリフルオロメチル基(CF
3)、トリクロロメチル基(CCl
3)、トリブロモメチル基(CBr
3)、トリヨードメチル基(CI
3)等があげられる。前記ハロゲノメチルアミド基は、例えば、フルオロメチルアミド基(NH−CO−CH
2F)、クロロメチルアミド基(NH−CO−CH
2Cl)、ブロモメチルアミド基(NH−CO−CH
2Br)、ヨードメチルアミド基(NH−CO−CH
2I)等があげられる。前記式(1)において、R
2の個数は、例えば、1〜5個、1〜3個、1または2個、1個である。前記式(1)において、R
2の結合位置は、環AのC2〜C6のいずれか1つ以上の炭素原子である。具体的に、前記式(1)において、R
2は、例えば、2−Cl、3−Cl、4−Cl、2,4−(Cl)
2、2−F、3−F、4−F、2,4−(F)
2、2−Br、3−Br、4−Br、2,4−(Br)
2、3−CF
3、4−CF
3、2、4−(CF
3)
2、2−COOH、3−COOH、4−COOH、2、4−(COOH)
2、3−OCH
3、4−OCH
3、3,4,5−(OCH
3)
3、2−NH−CO−CH
2Cl、4−NH−CO−CH
2Cl、2−NH−CO−CH
2Br、4−NH−CO−CH
2Br等があげられる。
【0025】
前記式(1)において、R
1とR
2との組合せは、特に制限されない。R
1が前記式(2)の場合、R
2は、例えば、4−トリハロゲノメチル基であり、好ましくは、4−CF
3である。R
1が前記式(3)の場合、R
2は、例えば、4−トリハロゲノメチル基であり、好ましくは、4−CF
3である。R
1が前記式(4)の場合、R
2は、例えば、水素原子、ハロゲン基、トリハロゲノメチル基、アセチル基、メチルオキシ基、またはハロゲノメチルアミド基であり、好ましくは、2−Cl、3−Cl、4−Cl、2,4−(Cl)
2、2−F、3−F、4−F、2,4−(F)
2、2−Br、3−Br、4−Br、2,4−(Br)
2、3−CF
3、4−CF
3、2、4−(CF
3)
2、2−COOH、3−COOH、4−COOH、2、4−(COOH)
2、3−OCH
3、4−OCH
3、3,4,5−(OCH
3)
3、2−NH−CO−CH
2Cl、4−NH−CO−CH
2Cl、2−NH−CO−CH
2Br、または4−NH−CO−CH
2Brである。
【0026】
前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体は、下記式(5)で表されるテリフルノミドまたは下記式(6)で表されるテリフルノミド誘導体であることが好ましい。以下、前記式(6)で表されるテリフルノミド誘導体は、レフルノミドともいう。
【0028】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、さらに、メチル基転移酵素阻害剤を含んでもよい。前記メチル基転移酵素阻害剤は、例えば、アザシチジン、デシタビン、チオグアニン、ゼブラリン、およびプロカインアミド等があげられ、好ましくは、アザシチジンである。
【0029】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、
in vivoで使用してもよいし、
in vitroで使用してもよい。本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、研究用試薬として使用することもでき、医薬品として使用することもできる。
【0030】
本発明の細胞増殖抑制剤の投与対象は、特に制限されない。本発明の転移細胞増殖抑制剤を
in vivoで使用する場合、前記投与対象は、例えば、ヒト、または、ヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ウマ、ネコ、ヤギ、サル、およびモルモット等の非ヒト哺乳動物等があげられる。前記本発明の細胞増殖抑制剤を
in vitroで使用する場合、前記投与対象は、例えば、細胞、組織、器官等があげられ、前記細胞は、生体から採取した細胞、培養細胞等があげられる。
【0031】
本発明の細胞増殖抑制剤の使用条件(以下、「投与条件」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類等に応じて、投与形態、投与時期、投与量等を適宜設定できる。
【0032】
本発明の細胞増殖抑制剤の使用量等は、特に制限されない。本発明の細胞増殖抑制剤を
in vivoで使用する場合、例えば、投与対象の種類、症状、年齢、投与方法等により適宜決定できる。
【0033】
具体例として、前記細胞増殖抑制剤をヒトに投与する場合、1日あたりの投与量合計は、例えば、1〜100mg、10〜100mg、20〜80mgである。1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回である。テリフルノミドをヒトに投与する場合、1日あたりの投与量合計は、例えば、1〜100mg、10〜100mg、20〜80mgである。1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回である。レフルノミドをヒトに投与する場合、1日あたりの投与量合計は、例えば、1〜100mg、10〜100mg、20〜80mgである。1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回である。
【0034】
前記細胞増殖抑制剤と前記メチル基転移酵素阻害剤をヒトに投与する場合、前記細胞増殖抑制剤の1日あたりの投与量合計は、例えば、1〜100mg、2〜20mgであり、前記メチル基転移酵素阻害剤の1日あたりの投与量合計は、例えば、75〜150mg、97.5〜127.5mgである。前記細胞増殖抑制剤の1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回であり、前記メチル基転移酵素阻害剤の1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回、である。前記細胞増殖抑制剤と前記メチル基転位酵素阻害剤とを投与する場合、前記細胞増殖抑制剤と前記メチル基転移酵素阻害剤とは、例えば、別々に投与してもよいし、同時に投与してもよい(以下、同様)。前記細胞増殖抑制剤がテリフルノミドである場合、テリフルノミドの1日あたりの投与量合計は、例えば、1〜100mg、2〜20mgである。テリフルノミドの1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回、である。前記細胞増殖抑制剤がレフルノミドである場合、レフルノミドの1日あたりの投与量合計は、例えば、1〜100mg、2〜20mgである。レフルノミドの1日あたりの投与回数は、例えば、1〜5回、2〜3回である。
【0035】
前記細胞増殖抑制剤における各薬剤の含有量は、特に制限されず、例えば、前述の投与条件に応じて適宜設定できる。
【0036】
本発明の細胞増殖抑制剤の投与形態は、特に制限されない。本発明の細胞増殖抑制剤を
in vivoで投与する場合、例えば、経口投与でもよいし、非経口投与でもよい。前記非経口投与は、例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、腹腔内投与、局所投与等があげられる。
【0037】
本発明の細胞増殖抑制剤の剤型は、特に制限されず、例えば、前記投与形態に応じて適宜決定できる。前記剤型は、例えば、液体状、固体状があげられる。経口投与の場合、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等があげられる。非経口投与の場合、前記剤型は、例えば、注射用製剤、点滴用製剤等があげられる。経皮投与の場合、前記剤型は、例えば、貼付剤、塗布剤、軟膏、クリーム、ローション等の外用薬があげられる。
【0038】
本発明の細胞増殖抑制剤は、例えば、必要に応じて、添加剤を含んでもよく、本発明の細胞増殖抑制剤を医薬として使用する場合、前記添加剤は、薬学上許容される添加剤が好ましい。前記添加剤は、特に制限されず、例えば、基剤原料、賦形剤、着色剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、保存剤、香料等の矯味矯臭剤等があげられる。本発明において、前記添加剤の配合量は、前記細胞増殖抑制剤の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。
【0039】
前記賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、αデンプン、デキストリン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン等の有機系賦形剤;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウム等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム等の硫酸塩等の無機系賦形剤があげられる。前記滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;タルク;ポリエチレングリコール;シリカ;硬化植物油等があげられる。前記矯味矯臭剤は、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等の香料、甘味料、酸味料等があげられる。前記結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等があげられる。前記崩壊剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾デンプン、および化学修飾セルロース類等があげられる。前記安定化剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾール等のフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸等があげられる。
【0040】
(抗がん剤)
本発明の抗がん剤は、前述のように、本発明の細胞増殖抑制剤を含むことを特徴とする。本発明の抗がん剤は、前記本発明の細胞増殖抑制剤、すなわち、前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体を含むことが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の抗がん剤は、前記本発明の細胞増殖抑制剤等の記載を援用できる。
【0041】
本発明の抗がん剤は、がんの予防、治療および/または予後の改善に使用できる。本発明の抗がん剤は、例えば、がんの治療剤、予防剤または改善剤ということもできる。
【0042】
本発明の抗がん剤の投与対象であるがんは、特に制限されず、例えば、血液腫瘍、卵巣がん、および肺がん等があげられる。前記血液腫瘍は、例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、および悪性リンパ腫等があげられる。前記肺がんは、例えば、肺腺がんおよび肺小細胞がん等があげられる。前記がんは、例えば、乳がんおよび前立腺がんを除く。
【0043】
(メチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤)
本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤は、前述のように、前記本発明の細胞増殖抑制を含むことを特徴とする。本発明は、前記本発明の細胞増殖抑制、すなわち、前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体を含むことが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤は、前記本発明の細胞増殖抑制剤等の記載を援用できる。前記メチル基転移酵素阻害剤は、例えば、アザシチジン、デシタビン、チオグアニン、ゼブラリン、およびプロカインアミド等があげられる。本発明において、感受性増強は、例えば、感受性の向上でもよいし、非感受性(耐性)を感受性とすること、すなわち、感受性の回復でもよい。後者の場合、本発明の感受性増強剤は、例えば、感受性回復剤ということもできる。
【0044】
(細胞増殖の抑制方法)
本発明の細胞増殖の抑制方法は、投与対象に、前記本発明の細胞増殖抑制剤を投与することを特徴とする。本発明は、前記本発明の細胞増殖抑制剤を投与することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の細胞増殖抑制剤は、前述の通りである。本発明の細胞増殖抑制剤の投与条件等は、特に制限されず、例えば、本発明の細胞増殖抑制剤における記載と同様である。
【0045】
(がんの治療方法)
本発明のがんの治療方法は、投与対象に、前記本発明の抗がん剤を投与することを特徴とする。本発明は、前記本発明の抗がん剤を投与することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の抗がん剤は、前述の通りである。本発明の抗がん剤の投与条件は、特に制限されず、例えば、本発明の細胞増殖抑制剤における記載と同様である。
【0046】
(メチル基転移酵素阻害剤に対する感受性の増強方法)
本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性の増強方法は、投与対象に、前記本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤を投与することを特徴とする。本発明は、前記本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤を投与することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤は、前述の通りである。本発明のメチル基転移酵素阻害剤に対する感受性増強剤の投与条件は、特に制限されず、例えば、本発明の細胞増殖抑制剤における記載と同様である。
【0047】
(テリフルノミドまたはその誘導体の使用)
本発明は、前記細胞増殖の抑制のための前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体の使用であり、また、がんの治療のための前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体の使用であり、また、前記メチル基転移酵素阻害剤に対する感受性の増強のための前記式(1)で表されるテリフルノミドまたはその誘導体の使用である。
【0048】
本発明において、がんの治療は、例えば、がんの予防、がんの治療、がんの予後の改善の意味を含む。
【実施例】
【0049】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0050】
[実施例1]
本発明の細胞増殖抑制剤が、細胞増殖抑制効果を奏することを確認した。
【0051】
まず、多発性骨髄腫細胞(RPMI8226、医薬基盤研究所)、悪性リンパ腫細胞(SUDHL4、ヒューマンサイエンス研究資源バンク)、卵巣がん細胞(KURAMOCHI、ヒューマンサイエンス研究資源バンク)、肺がん細胞(RERF−LC−Ad2、ヒューマンサイエンス研究資源バンク)、肺小細胞がん細胞(STC1、医薬基盤研究所)、急性リンパ性白血病患者由来末梢血細胞、および急性骨髄性白血病患者由来末梢血細胞を、96ウェルマイクロプレートに、それぞれ、1.5×10
5細胞/100μL/ウェルとなるように播種した。つぎに、前記培養液に、テリフルノミド(Sellckchem社製)を、濃度が、所定濃度(0、6.25、12.5、25、または50μmol/L)となるように添加し、37℃、5%CO
2下で72時間培養した。各がん細胞の培養液は、ウシ胎仔血清を10%含むRPMI1640(Lifetechnologies社製)を使用した。
【0052】
そして、前記培養後の各がん細胞の細胞数の相対値を、Cell Counting Kit 8(同仁化学研究所)を用い、吸光度として測定した。また、テリフルノミドの濃度が0μmol/Lの場合の吸光度の値を1とし、これに対する相対値として、各テリフルノミドの濃度における吸光度の相対値を算出した。
【0053】
これらの結果を、
図1に示す。
図1は、前記各がん細胞における吸光度を示すグラフである。
図1において、(A)は、多発性骨髄腫細胞の結果を、(B)は、悪性リンパ腫細胞の結果を、(C)は、卵巣がん細胞の結果を、(D)は、肺がん細胞の結果を、(E)は、肺小細胞がん細胞の結果を、(F)は、急性リンパ性白血病患者由来末梢血細胞の結果を、(G)は、急性骨髄性白血病患者由来末梢血細胞の結果を示す。
図1(A)〜(G)において、縦軸は、吸光度を示し、横軸は、テリフルノミドの濃度を示す。
図1に示すように、
図1(A)〜(G)に示すように、いずれのがんにおいてもテリフルノミドの濃度依存的に吸光度、すなわち、細胞数が減少していた。これらの結果から、本発明の細胞増殖抑制剤が、細胞増殖抑制効果を奏することがわかった。
【0054】
[実施例2]
本発明の細胞増殖抑制剤が、メチル基転移酵素阻害剤に対する感受性を増強させることを確認した。
【0055】
まず、白血病細胞(HL−60、医薬基盤研究所)、アザシチジンに対して耐性を獲得した白血病細胞(R−U937、白血病細胞(U937)より東京医科大学医学総合研究所にて樹立)、およびアザシチジンに対して耐性を獲得した白血病細胞(R−HL−60、前記白血病細胞(HL−60)より東京医科大学医学総合研究所にて樹立)を、96ウェルマイクロプレートに、それぞれ、1.5×10
5細胞/100μL/ウェルとなるように播種した。そして、前記白血病細胞(HL−60)に関しては、その培養液に、前記アザシチジンを、濃度が、所定濃度(0または1μmol/L)となるように、また、前記テリフルノミドを、濃度が、所定濃度(0または1000nmol/L)となるように添加した。前記アザシチジン耐性白血病細胞(R−U937)および前記アザシチジン耐性白血病細胞(R−HL−60)に関しては、その培養液に、前記アザシチジンを、濃度が、所定濃度(0または5μmol/L)となるように、また、前記テリフルノミドを、濃度が、所定濃度(0または12.5μmol/L)となるように添加した。そして、各培養液を、実施例1と同じ条件で培養した。各がん細胞の培養液は、実施例1と同じものを使用した。
【0056】
そして、前記培養後の各がん細胞の細胞数の相対値を、前記実施例1と同様にして、算出した。
【0057】
これらの結果を、
図2に示す。
図2は、前記各がん細胞における吸光度を示すグラフである。
図2において、(A)は、前記白血病細胞(HL−60)の結果を、(B)は、前記アザシチジン耐性白血病細胞(R−U937)の結果を、(C)は、前記アザシチジン耐性白血病細胞(R−HL−60)の結果を示す。
図2(A)、(B)および(C)において、縦軸は、吸光度を示し、横軸は、添加した薬剤の組合せおよび濃度を示す。
図2(A)に示すように、アザシチジンを単独で添加したHL−60では、アザシチジンおよびテリフルノミド未添加のコントロールと比べて、細胞数がわずかに減少していた。
図2(B)および(C)に示すように、アザシチジンを単独で添加したR−U937およびR−HL−60では、コントロールと比べて細胞数が減少しておらず、アザシチジン耐性を示した。また、
図2(A)、(B)および(C)に示すように、テリフルノミドを単独で添加したHL−60、R−U937およびR−HL−60では、コントロールと比べて細胞数が減少していた。さらに、
図2(A)、(B)および(C)に示すように、アザシチジンおよびテリフルノミドを添加したHL−60、R−U937およびR−HL−60では、細胞数が大きく減少しており、各細胞において、減少した細胞数は、両薬剤の単独添加時に減少した細胞数の総和より大きな値を示した。すなわち、テリフルノミドを併用することにより、アザシチジンに対して低感受性または耐性を有する細胞のアザシチジンに対する感受性を増強できることがわかった。これらの結果から、本発明の細胞増殖抑制剤が、メチル基転移酵素阻害剤に対する感受性を増強させることがわかった。
【0058】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。