(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
融雪が完了した後、さらに水蒸気が供給され続けることで増大しようとする融雪屋根パネルの内圧を、融雪屋根パネルに供給される水蒸気を、バイパスを通じて融雪屋根パネル外部に排出することにより、融雪屋根パネルが膨張しないようにする融雪屋根パネルの内圧を緩和する内圧緩和装置であって、
水蒸気が供給される融雪屋根パネルと、
前記融雪屋根パネルに水蒸気を通過させないように設置したバイパスと、
前記融雪屋根パネルの底面に穿設する水蒸気吐き出し口と、
前記水蒸気吐き出し口から延伸する水蒸気導入路と、
前記水蒸気導入路の終端に隣接するように設置する内圧緩和バルブと、
前記内圧緩和バルブから前記バイパスへと延伸する水蒸気排出路を備えることを特徴とする内圧緩和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る熱感知式切り替え弁(特許文献1:発明の名称)は、融雪が完了した融雪屋根パネルに対して、これ以上水蒸気が供給されないように水蒸気の進路を、切り替え弁を作動させることにより切り替えるものであるが、実際に試作を行ったところ、完全に融雪が完了する直前であっても、ボイラーから供給される水蒸気(の一部)が融雪という仕事に使われなくなり、再液化しなくなり始めると融雪屋根パネルの内圧が上昇してしまい融雪屋根パネル内圧を下げるためにボイラーの蒸気圧を下げなければならなかったし、内圧上昇対策として、ネジ止め強度を確保するためにネジ止め箇所をさらに増やすなどの対策をしなければならなかった。
【0006】
本発明の目的は、融雪屋根パネルの融雪が完了する直前であっても(水蒸気の供給が切り替えわる前において)融雪屋根パネルに供給される水蒸気の一部を融雪屋根パネル外に排出することで融雪屋根パネルの内圧を緩和するための内圧緩和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、融雪が完了した後、さらに水蒸気が供給され続けることで増大しようとする融雪屋根パネルの内圧を、融雪屋根パネルに供給される水蒸気を、バイパスを通じて融雪屋根パネル外部に排出することにより、融雪屋根パネルが膨張しないようにする融雪屋根パネルの内圧を緩和する内圧緩和装置であって、
水蒸気が供給される融雪屋根パネルと、前記融雪屋根パネルに水蒸気を通過させないように設置したバイパスと、前記融雪屋根パネルの底面に穿設する水蒸気吐き出し口と、前記水蒸気吐き出し口から延伸する水蒸気導入路と、前記水蒸気導入路の終端に隣接するように設置する内圧緩和バルブと、前記内圧緩和バルブから前記バイパスへと延伸する水蒸気排出路を備えることを特徴とする内圧緩和装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の内圧緩和装置は、融雪屋根パネルの底面に穿設する水蒸気吐き出し口と、水蒸気吐き出し口から伸びる水蒸気導入路と、水蒸気導入路の終端に隣接するように設置する内圧緩和バルブと、内圧緩和バルブからバイパスへと延伸する水蒸気排出路を備えている。
【0010】
融雪途中の段階では水蒸気から再液化した水の一部(水蒸気も混じっている)が水蒸気吐き出し口から内圧緩和装置に流入するが、水蒸気導入路と水蒸気排出路を経由してバイパスに排出されるため、内圧緩和装置の内部に溜まることはない。なぜならば、融雪が完了する直前の段階では、水蒸気において、水蒸気の有する熱エネルギーが融雪という仕事をする必要が無くなる。即ち、水蒸気が再液化することが無くなり、融雪屋根パネルの内圧が上昇(水から水蒸気に相転移すると約1700倍の体積に膨張)するため、水蒸気(水蒸気から再液化された水の一部も混ざっている)は融雪屋根パネル本体から、水蒸気吐き出し口から水蒸気導入路に入ってくる。
【0011】
そして、水蒸気(水蒸気から再液化された水の一部も混ざっている)の圧力により水蒸気導入路の終端に隣接するように設置した内圧緩和バルブを押す(コイルバネ等の弾性体により付勢された弾性力に対抗する)ことにより、水蒸気の通路(バイパスに繋がる水蒸気排出路に通じる)を形成する。そうすると、水蒸気(水蒸気から再液化された水の一部も混ざっている)は、水蒸気排出路からバイパスへと排出されることになるため、融雪屋根パネルの内圧を上昇し過ぎないように緩和することができる。従って、ボイラーから供給する水蒸気の圧力を下げる必要もないし、螺子止め強度を確保するために、螺子止め箇所をさらに増やす等の対策をする必要が無くなった。
【0012】
請求項2に記載の内圧緩和装置の内圧緩和バルブは、円筒形状の中心軸に沿って貫通穴が形成されており、該貫通穴面の一部、及び外周面の一部に螺子溝を備えた基底螺子部材と、円筒形状の中心軸に沿って貫通穴が形成されており、該円筒形状の外周面に溝状凹部を備えており、さらに該円筒形状の一端に円錐形状の蓋部材を固着させた先端部材と、一部に螺子溝が形成された棒状基軸部材と、先端部材を付勢する弾性体(棒状基軸部材を貫通させてから、基底螺子部材と先端部材との間に設置する)から構成されている。
【0013】
融雪屋根パネルの内圧が上昇(水から水蒸気に相転移すると約1700倍の体積に膨張)することにより、水蒸気(水蒸気から再液化した水の一部も混ざっている)が融雪屋根パネル本体の水蒸気吐き出し口から水蒸気導入路に圧力を持ちつつ侵入して来ると、内圧緩和バルブの先端部材(弾性体により付勢)が押されて、水蒸気の通路(バイパスに繋がる水蒸気排出路)を形成するため、水蒸気排出路からバイパスへと排出される。さらに、融雪が完了して、水蒸気通路の切り替えが終わった後は、水蒸気は融雪屋根パネルに供給されずバイパスを通過することになる。本発明に係る内圧緩和装置によれば、内圧緩和バルブの先端部材を付勢する弾性体により、内圧緩和バルブが水蒸気導入路側に向かって押されることで水蒸気導入路を閉じているため、バイパス側から侵入した水蒸気が水蒸気排出路を通じて逆流するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<内圧緩和装置の構造>
本発明に係る内圧緩和装置10の構造を説明する前に、内圧緩和装置10の融雪屋根パネルにおける設置場所について説明する。
図9は、融雪屋根パネルに内圧緩和装置10を設置した状態を説明するための図である。
図9に記載したように、内圧緩和装置10の主要部材は、融雪屋根パネルの水蒸気排出口側の直下でバイパス60(融雪屋根パネル本体に水蒸気を通過させないように設置した)よりも高い位置に設置されている。実際に融雪屋根パネルを屋根に設置する際は、屋根の傾斜があるのでバイパス60が最も低い位置に来るようになる。
【0016】
以下、本発明に係る内圧緩和装置10の一実施形態について、
図1〜
図8に基づいて詳細に説明する。本発明に係る内圧緩和装置10は、融雪屋根パネルの融雪作業開始から一定の時間が経過して、融雪が完了する直前の段階であって、切り替え弁を作動させて水蒸気の流路が他の融雪屋根パネルに切り替える前(水蒸気は供給されている状態)に、引き続き融雪屋根パネルに水蒸気が供給され続けることで、融雪屋根パネル内部の圧力が上昇し過ぎてしまい、融雪屋根パネルを組み立てるための止めネジ等が外れたり、破損したりすることが無いように、融雪屋根パネルに供給される過剰な水蒸気を、バイパス60を通じて融雪屋根パネル外部に排出することにより、融雪屋根パネルの内圧が上昇するのを阻止することで、融雪屋根パネルの内圧を緩和する内圧緩和装置10である。
【0017】
図1は、本実施例に係る内圧緩和装置10の全体図(内圧緩和バルブ40は図示しない)である。内圧緩和装置10は、融雪屋根パネルの下側(
図9参照)に取り付けた箱形状の本体120(内圧緩和バルブ40を設置するための収納スペース150を有する)を備えている。収納スペース150の突出部入り口付近(
図1において右端)には内圧緩和バルブ40の基底螺子部材70を螺子止めするための螺子溝が形成されている。内圧緩和装置10は、
図1に記載したような箱形状の本体120に各部材を取り付けることにより形成されている。
【0018】
内圧緩和装置10は、融雪屋根パネルの底面の一部分に穴を空けて、その位置に合わせて設置する水蒸気吐き出し口20と、水蒸気吐き出し口20から箱形状の本体120内部に延伸する水蒸気導入路30と、水蒸気導入路30の終端に設置する内圧緩和バルブ40(
図1においては内圧緩和バルブ40の収納スペース150しか図示されていない)を備えている。さらに、内圧緩和バルブ40(
図1においては内圧緩和バルブ40の収納スペース150しか図示されていない)とバイパス60とを繋ぐ水蒸気排出路50を備えている。
【0019】
水蒸気吐き出し口20と水蒸気導入路30の直径の比較において特徴的なのは、水蒸気吐き出し口20の水蒸気導入路30側においては、水蒸気導入路30に向かって徐々に直径が絞り込まれており、要するに、水蒸気吐き出し口20から水蒸気導入路30に向かって直径が小さくなっていることが挙げられる。内圧緩和バルブ40(
図1においては内圧緩和バルブ40の収納スペース150しか図示されていない)は、水蒸気排出路50に蓋をする位置に弾性体(コイルバネ110)で水蒸気導入路30側に向かって付勢された状態で設置されており、融雪時(内圧緩和装置10の作動時)には、水蒸気排出路50へ水蒸気(或いは、再液化した水、水蒸気と再液化した水との混合物の場合もある)の開閉弁として働くことになる。
【0020】
<内圧緩和バルブの構造>
本発明に係る内圧緩和装置10において最も重要な部材である内圧緩和バルブ40について、
図2〜
図4を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
図2は、本実施例に係る内圧緩和バルブ40の分解図である。
【0021】
内圧緩和バルブ40は、各部材を組み立てることにより形成される部材である。以下に内圧緩和バルブ40を構成する各部材について、
図2を参照しつつ詳細を説明する。基底螺子部材70は、略円筒形状(内圧緩和バルブ40の一端側であって、調整ツマミとしての機能を有する部分(端面から7mm〜15mm程度の部分:
図4参照)は、円筒径が他の部分よりも大きくなっている)の中心軸に沿って貫通穴130(基底螺子部材70の貫通穴)が形成されており、内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150に、外面側の一部に形成された螺子溝71(外面側)により螺子止めすることにより本体120に固定される部材である。尚、基底螺子部材70は内面側の一部にも螺子溝72(内面側)を備えている(
図4参照)。
【0022】
先端部材90は、円筒形状の中心軸に沿って貫通穴140(先端部材90の円筒形状部分の貫通穴)を備えた円筒形状部分の一端に円錐形状(角度45°〜60°)の蓋部材91が固着させた部材であり、円筒形状部分の外周面(蓋部材91と反対の端面側)に複数の溝状凹部80を備えている。棒状基軸部材100は、貫通穴130(基底螺子部材70の貫通穴)、及び貫通穴140(先端部材90の貫通穴)に挿入させる棒状の部材である。中心部付近に螺子溝101(及び、O−リング170)を備えている。さらに、棒状基軸部材100を貫通させて、基底螺子部材70と先端部材90の間に設置する弾性体であるコイルバネ110を備えている。
【0023】
図3は、本実施例に係る内圧緩和バルブ40の先端部材90の正面図(下)、及び下面図(上)である。先端部材90は
図3に記載したように、先端の形状が円錐型(角度40°〜60°)をした蓋部材91を固着させた略円筒形状である。先端に位置する蓋部材91以外の外周面の一部(蓋部材91と反対の端面側)の全周に亘って、複数の溝状凹部80が形成されている。蓋部材91の形状(円錐型:角度40°〜60°)は、内圧緩和装置10の収納スペース150の先端(水蒸気導入路30の終端と隣接する箇所)の形状にピッタリ合うように設計されているし(
図1参照)、溝状凹部80と溝状凹部80の境界部分160が、内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150の内壁に接するように設計されている。溝状凹部90は、長さ30mm〜40mmで、幅5mm〜7mmで、境界部分160からの深さ1mm〜2mmの凹形状をしている。
【0024】
図4は、本実施例に係る内圧緩和バルブ40の組み付け全体図である。内圧緩和バルブ40は、
図4に記載したように、基底螺子部材70、先端部材90、棒状基軸部材100、コイルバネ110等の各部材を、内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150に組み付けることにより設置する。内圧緩和バルブ40を内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150に設置する際は、内圧緩和装置10の本体120であって、水蒸気導入路30の終端部に隣接するように設けた円筒形状の収納スペース150に基底螺子部材70を螺子止め(螺子溝71と収納スペースに形成した螺子溝)して、さらに、棒状基軸部材100を基底螺子部材70の貫通穴130に挿入して螺子止め(螺子溝72と螺子溝101)する。
【0025】
そして、コイルバネ110を棒状基軸部材100に通した後、先端部材90を棒状基軸部材100に通しつつ設置する。要するに、内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150に基底螺子部材70を螺子止めにより固定して(螺子止めの位置の選択により、内圧緩和バルブ40の弾性力を調整することができる)、さらに、棒状基軸部材100を基底螺子部材70の貫通穴130に挿入して螺子止めにより固定して(螺子止めの位置の選択により、内圧緩和バルブ40の先端部材90のスライド範囲を調整することができる)。
【0026】
基底螺子部材70と棒状基軸部材100の其々には、O−リング170(断面が円形の環型をした密封に使用される部品であり、材質にはゴムが使用される)が設置されている。尚、O−リング170は基底螺子部材70と棒状基軸部材100の其々に1個ずつ設置されていても良いが、水漏れ(
図4において、収納スペース150内壁と基底螺子部材70の隙間、及び基底螺子部材70と棒状基軸部材100の隙間)をより確実に阻止しようとするならば、中心軸方向に沿って本実施例のように、基底螺子部材70と棒状基軸部材100の其々に2個ずつ設置することが望ましい。
【0027】
尚、内圧緩和装置10の作動時において、基底螺子部材70の本体から外部に突出した部分(円筒の径が大きくなっている部分)は、水蒸気の圧力等の条件に合わせて、内圧緩和バルブ40の弾性力を調整する「調整用ツマミ」としての機能を有しており、基底螺子部材70と棒状基軸部材100の螺子溝101は、先端部材90の収納スペース150内におけるスライド範囲を調整する機能を有している。
【0028】
<内圧緩和装置の作動状態>
図5〜
図8は、本発明に係る内圧緩和装置10の作動状態を説明するための図である。
図5は、融雪前の状態(初期状態)を説明するための図であり、
図6は、融雪中の状態を説明するための図であり、
図7は、融雪完了時の状態を説明するための図であり、
図8は、融雪が完了して他の融雪屋根パネルに水蒸気が供給されている状態を説明するための図である。
【0029】
融雪屋根パネル上の融雪が完了すると、水蒸気の有する熱エネルギーが融雪という仕事をする必要がなくなる。要するに、水蒸気が再液化することが無くなる。この状態でさらに、融雪のために融雪屋根パネルに供給された水蒸気により、融雪屋根パネル内部の蒸気圧が上昇(水から水蒸気に相転移すると約1700倍の体積に膨張することは、ボイルシャルルの法則等から明らかである。)するため、融雪屋根パネルの内圧が上昇することになる。本発明に係る内圧緩和装置10は、かかる状況になった際、水蒸気を融雪屋根パネル本体から、水蒸気取り込み口20を経て水蒸気供給路30に水蒸気を排出(最終的にはバイパス60に排出)させることにより、融雪屋根パネルの内圧上昇を防止する。
【0030】
図5に記載したように、融雪前の状態(初期状態)においては、融雪屋根パネルの水蒸気排出口側の直下でバイパス60(融雪屋根パネル本体を通過させないように設置した)よりも高い位置(融雪屋根パネルを屋根に設置する際は、屋根の傾斜があるのでバイパス60が最も低い位置になる)に設置した内圧緩和装置10は、内圧緩和バルブ40の先端部材90がコイルバネ110の弾性力により左方向に押されている。先端部材90の先端に固着された蓋部材91の形状(円錐型:角度40°〜60°)は、内圧緩和装置10の収納スペース150(
図1参照)の先端の水蒸気導入路30と接する箇所の形状にピッタリ合うように設計されている。従って、水蒸気導入路30から水蒸気排出路50へは水蒸気や再液化した水が侵入できないように蓋がなされた状態にある。即ち、水蒸気導入路30と水蒸気排出路50の間に内圧緩和バルブ40が位置しており、水蒸気導入路30から先の水蒸気排出路50には水蒸気(又は再液化した水)が侵入できないように、内圧緩和バルブ40により閉じられた状態になっている。
【0031】
図6に記載したように、融雪中の状態においては(融雪屋根パネル上の融雪が完了していない状態においては)、融雪屋根パネル内部の蒸気圧は、低い状態を維持しているので、融雪屋根パネルの内圧が上昇し過ぎて融雪屋根パネルの止め螺子が破損することは無いものの、融雪という仕事をした水蒸気から再液化した水の一部が、水蒸気導入路30に溜まってくるので、水蒸気導入路30を経由して水蒸気排出路50(最終的にはバイパス60)に排出する必要がある。
【0032】
かかる場合であっても、本実施例に係る内圧緩和装置10であれば、融雪屋根パネルに供給された水蒸気の一部が再液化した水と混ざりつつ、水蒸気導入路30に流れて来る
ことにより、水蒸気と再液化した水の混合物が有する圧力が内圧緩和バルブ40の有する弾性力に打ち勝って、内圧緩和バルブ40を少し押し下げることになる(
図4において少し右側に移動する)。水蒸気導入路30から水蒸気と再液化した水の混合物が、内圧緩和バルブ40を押し下げたことにより、
図6に記載したように、水蒸気排出路50(最終的にはバイパス60)への通路が開けられるので再液化した水(一部水蒸気)が通過することができるようになる。
【0033】
図7は、融雪完了時の状態を説明するための図である。融雪開始時から融雪完了前は、水蒸気の熱エネルギーは融雪という仕事に費やされるため(融雪という仕事をしているため、蒸気ボイラーから送られてきた水蒸気が再液化するため、全体として蒸気圧は低い)、即ち、融雪屋根パネルから内圧緩和装置10に向かう流れにおいて蒸気圧は小さい。しかしながら、融雪屋根パネル上の融雪が完了すると融雪屋根パネル内部の蒸気圧が上昇する。融雪屋根パネル上の雪が残っていない状態、即ち、融雪が完了して水蒸気の蒸気圧が高くなってくる(融雪という仕事が完了しており、蒸気ボイラーから送られてきた水蒸気が再液化することが無いため、全体として蒸気圧は高い。水が水蒸気になると約1700倍の体積になることは、ボイルシャルルの法則等から明らかである。)と、融雪屋根パネルから、高圧になった水蒸気が排出されるようになる。
【0034】
融雪が完了すると融雪屋根パネル内部の蒸気圧が上昇し、水蒸気が排出されることになる。かかる場合においては、本実施例に係る内圧緩和装置10において、融雪屋根パネルから排出されてくる水蒸気による圧力が、内圧緩和バルブ40を完全に限界(コイルバネ110の最小ピッチ)まで押し下げる。要するに、水蒸気導入路30から先の水蒸気排出路50には水蒸気(又は再液化した水)が侵入できないように、内圧緩和バルブ40により閉じられた状態、もしくは少し開かれた状態から、水蒸気導入路30から先の水蒸気排出路50への通路が完全に開かれた状態(水蒸気を最大限排出できるフルオープンな状態)になり、過剰な水蒸気が融雪屋根パネル内部に溜まろうとすることなく、融雪屋根パネル外部に排出させることができる。
【0035】
融雪が完了して他の融雪屋根パネルに水蒸気が供給されている状態においては、
図8に記載したように、バイパス60から水蒸気排出路50へと水蒸気が逆流して来るが、本実施例に係る内圧緩和装置10の内圧緩和バルブ40が、水蒸気導入路30へ水蒸気の開閉弁(閉じた状態をキープ)として働くので、水蒸気排出路50から水蒸気導入路30への逆流を防止することができる。
【0036】
さらに、水蒸気排出路50から先端部材90の外周面に形成した(外周面の根本側の全周に亘って形成)複数の溝状凹部80を通じて、バイパス60から水蒸気排出路50へと逆流して来る水蒸気を内圧緩和バルブ40の先端部材90と基底螺子部材70との間(即ち、コイルバネ110の配置場所)に敢えて侵入させることにより(但し、О−リング170により、これ以上侵入できないようになっている)、コイルバネ110の配置場所における内圧が上昇するので、コイルバネの弾性力の働く向きと同じ方向に圧力が掛かるようになっている。要するに、内圧緩和バルブ40の水蒸気導入路30側への力(閉じる力)を補填することができるように工夫されている。
【0037】
<内圧緩和装置の効果>
本発明に係る内圧緩和装置10により、融雪屋根パネル内部の圧力が上昇し過ぎてしまって、融雪屋根パネルを組み立てるための止めネジ等が外れたり、破損したりする(極端に言えば、融雪屋根パネルが破裂する)ことが無いようにするために、予め余分な水蒸気をバイパスに逃がすことができるようになったので、ボイラーから供給する水蒸気の圧力を下げる必要も無いし、螺子止め強度を確保するために螺子止めの箇所をさらに増やす等の対策をする必要が無くなった。
【0038】
本発明に係る内圧緩和装置10は、融雪途中の段階(水蒸気が融雪という仕事をしており供給された水蒸気の殆どが再液化して水になる)では水蒸気から再液化した水の一部(水蒸気も混じっている)が、水蒸気吐き出し口20から水蒸気導入路30を通じて流入するが、水蒸気導入路30と水蒸気排出路50を経由してバイパス60に排出されるため、内圧緩和装置10内部に溜まることは無い。
【0039】
融雪が完了する直前の段階では、水蒸気の有する熱エネルギーが融雪という仕事をする必要が無くなり、即ち、水蒸気が再液化することが無くなり、融雪屋根パネルの内圧が上昇(水から水蒸気に相転移すると約1700倍の体積に膨張)するため、一部の水蒸気(水蒸気から再液化された水の一部も混ざっている)は一定の圧力を保持しつつ、融雪屋根パネル本体から水蒸気吐き出し口20を通じて水蒸気導入路30に入ってくる。そして、一部の水蒸気(水蒸気から再液化された水の一部も混ざっている)の圧力により水蒸気導入路30の終端に隣接するように設置した内圧緩和バルブ40を押すことにより、水蒸気の通路(バイパスに繋がる水蒸気排出路50に通じる)を形成する。
【0040】
余分な水蒸気が、水蒸気排出路50からバイパス60へと排出されるため、融雪屋根パネルの内圧が上昇すること無く、内圧を緩和することができる。従って、ボイラーから供給する水蒸気の圧力を下げる必要もないし、ねじ止め強度を確保するためにねじ止めの箇所をさらに増やすなどの対策をする必要が無くなった。さらに、融雪が完了して、水蒸気通路の切り替えが終わった後は、水蒸気は融雪屋根パネルに供給されず、バイパス60を通過することになるのであるが、内圧緩和装置10の内圧緩和バルブ40により、バイパス60側から水蒸気が逆流するのを防ぐことができる。
【0041】
先端部材90は、先端に円錐形状の蓋部材91を固着させており、先端以外の円筒部の外周面全体に亘って複数の溝状凹部80が形成されている。溝状凹部80と溝状凹部80の境界部分160が、内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150に接するようになっているので、内圧緩和装置10本体の収納スペース150の内側に線で接することになるので、内圧緩和バルブ40が、水蒸気導入路30から噴き出す水蒸気(再液化した水も混じっている)の圧力で押される際に、内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150の内壁との摩擦を少なくすることができるので、内圧緩和バルブ40の(左右の)動きをスムーズにすることができる。
【0042】
内圧緩和装置10の本体120の収納スペース150に基底螺子部材70を螺子止めにより固定しているため、螺子止めの位置の選択により、内圧緩和バルブ40の弾性力を調整することができるし、棒状基軸部材90を基底螺子部材70の貫通穴130に挿入して螺子止めにより固定しているため、螺子止めの位置の選択により、内圧緩和バルブ40の先端部材80のスライド範囲調整することができる。そして、内圧緩和バルブ40には、O−リング170が棒状基軸部材100に形成したO−リング170が設置されているので(
図2参照)、O−リング170を設置した位置よりも再液化した水が浸入することが無いので、螺子溝71,螺子溝72,螺子溝101等が凍結により破壊することが無くなった。
【0043】
<内圧緩和装置の変更例>
本発明に係る内圧緩和装置は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、水蒸気吐き出し口、水蒸気導入路、内圧緩和バルブ、水蒸気排出路、バイパス、基底螺子部材、螺子溝(外面側)、螺子溝(内面側)、溝状凹部、先端部材、蓋部材、棒状基軸部材、螺子溝、コイルバネ(弾性体)、本体(内圧緩和装置)、貫通穴(基底螺子部材の貫通穴)、貫通穴(先端部材の円筒形状部分の貫通穴)、収納スペース、境界部分、O−リング、O−リング溝等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0044】
例えば、水蒸気から再液化した水を水蒸気導入路から水蒸気排出路を経由してバイパスに排出する際の内圧緩和バルブを付勢するコイルバネの弾性力は、比較的弱い方が良く、水蒸気を水蒸気導入路から水蒸気排出路を経由してバイパスに排出する際の内圧緩和バルブを付勢するコイルバネの弾性力は、比較的大きい方が好ましいので、荷重とたわみが比例する線形のバネでは無く、荷重とたわみ比例しない非線形のバネを使用しても良い。
【0045】
さらに、コイルバネに使用する材質等を自由に選択することで、内圧緩和装置の最も重要な部材である内圧緩和バルブの弾性力特性を環境等の変化に応じて調整をすることができる。これらの目的に合うようにコイルバネの材料は、汎用品に広く用いられている金属、鉄鋼以外にも、ゴム、プラスチック、セラミックスといった非金属材料を使用しても良いし、形状記憶合金製バネを使用することもできる。