(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、燃料噴射器内で燃料と圧縮空気を多量に予混合すると、燃焼室の火炎が燃料噴射器に伝播する「逆火」が発生し、燃料噴射器が焼損するおそれがある。特に、燃料として水素ガスなどの反応性が高いものを使用する場合には、逆火が発生しやすい。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、NOxの発生量を抑えることができ、かつ、逆火の発生を抑えることができる燃料噴射器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料噴射器は、燃焼室に開口する円筒流路と、前記円筒流路の燃焼室側に燃料を導く燃料導入路と、前記円筒流路に燃料が導入される位置よりも上流側において前記円筒流路に圧縮空気を導く空気導入路と、を備え、前記燃料導入路は、横断面視において前記円筒流路の接線方向から燃料を導く。
【0007】
かかる構成によれば、燃料が円筒流路の内周面に沿って旋回しながら燃焼室に噴射され、燃焼室内でシート状(螺旋帯状)に形成される。このとき、一連の燃料の表面積は広く、表面から中央までの距離は短くなるため、燃焼反応時間を短くし、NOxの発生量を抑えることができる。また、円筒流路から燃焼室に向けて圧縮空気が流れるため、円筒流路の出口付近での燃焼ガスの滞留が抑制され、安定燃焼が可能である。さらに、燃料と空気が燃料噴射器内で多量に予混合されないため逆火を抑えることができる。
【0008】
また、上記の燃料噴射器において、前記空気導入路は、前記円筒流路内において圧縮空気を燃料の旋回方向と同じ方向に旋回させるように構成されていてもよい。かかる構成によれば、旋回する圧縮空気により燃料の旋回が一層促され、より確実に燃料をシート状に形成することができる。
【0009】
また、上記の燃料噴射器において、前記各燃料導入路は、前記各円筒流路の中心軸に垂直な方向に対して前記燃焼室側に傾斜した方向に向かって燃料を導くようにしてもよい。かかる構成によれば、円筒流路の出口付近に水素が滞留し難く、水素ガス等の反応性の高いガスを用いた場合であっても逆火リスクを低減できる。
【0010】
また、本発明の他の形態に係る燃料噴射器は、燃焼室に開口する複数の円筒流路と、前記複数の円筒流路の夫々の燃焼室側に燃料を導く複数の燃料導入路と、前記複数の円筒流路の燃料が導入される位置よりも上流側において前記複数の円筒流路の夫々に圧縮空気を導く複数の空気導入路と、を備え、前記各燃料導入路は、横断面視において前記円筒流路の接線方向から燃料を導くものである。
【0011】
本発明に係るガスタービンは、上記のうちいずれかの燃料噴射器を備えている。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、上記の燃料噴射器によれば、NOxの発生量を抑え、かつ、逆火の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
<ガスタービンの構成>
まず、ガスタービン100の全体構成について説明する。
図1は、ガスタービン100の概略構成図である。本実施形態に係るガスタービン100は、発電機101を駆動する発電用のガスタービンである。ガスタービン100は、圧縮器10と、燃焼器11と、燃料供給装置12と、タービン13とを備えている。
【0016】
燃焼器11には、圧縮器10から圧縮空気102が供給されるとともに、燃料供給装置12からは燃料103が供給される。本実施形態では、燃料103として反応性の高い水素ガスの使用を想定しているが、燃料103は天然ガスや液化水素などであってもよい。燃焼器11内では、燃料103と圧縮空気102が燃焼し、これによって生じた高温高圧の燃焼ガス104がタービン13へ供給される。タービン13は燃焼ガス104のエネルギによって回転し、圧縮器10を介して発電機101を駆動する。
【0017】
<燃焼器の構成>
次に、燃焼器11についてさらに説明する。
図2は燃焼器11の概略断面図である。本実施形態に係る燃焼器11は、圧縮空気102と燃焼ガス104が逆方向に流れる逆流缶型であって、ハウジング20と、燃焼筒21と、メイン燃料噴射器22と、追焚き用燃料噴射器23と、を備えている。なお、燃焼器11は、逆流缶型以外の構造を採用してもよい。
【0018】
ハウジング20は、燃焼器11の外郭を形成する部材である。ハウジング20は、円筒状の外管部材24と、外管部材24の一方側(紙面左側)の端部に設けられた円盤状のエンドカバー25を有している。
【0019】
燃焼筒21はハウジング20の内部に収容されており、燃焼筒21の内部には燃焼室26が形成されている。燃焼室26では、燃料103と圧縮空気102が燃焼して燃焼ガス104が生成される。生成された燃焼ガス104は、紙面右側に向かって流れ、タービン13(
図1参照)に供給される。燃焼筒21とハウジング20の間には、環状の空気流路27が形成されており、圧縮器10から供給された圧縮空気102は、この空気流路27を通り、メイン燃料噴射器22に向かって(紙面左側に向かって)流れる。
【0020】
メイン燃料噴射器22は、ハウジング20のエンドカバー25に取り付けられており、空気流路27を軸方向に貫通するように設けられている。メイン燃料噴射器22は、空気流路27を通った圧縮空気102を取り込むことができるように構成されている。そして、燃料供給装置12から供給された燃料103と取り込んだ圧縮空気102を同時に燃焼室26に噴射する。
図2では、メイン燃料噴射器22を1つのみ図示しているが、メイン燃料噴射器22は複数設けられていてもよい。また、メイン燃料噴射器22とは別に、少量の燃料を噴射するパイロット燃料噴射器を設けてもよい。
【0021】
追焚き用燃料噴射器23は、ハウジング20の外管部材24に取り付けられており、空気流路27を半径方向に貫通するように設けられている。追焚き用燃料噴射器23は、空気流路27を通る圧縮空気102の一部を取り込むことができるように構成されている。そして、燃料供給装置12から供給された燃料とともに取り込んだ圧縮空気102を同時に燃焼室26に噴射する。なお、本実施形態では、追焚き用燃料噴射器23は、燃焼器11の周方向に等間隔(例えば、90度おき)で複数配置されている。
【0022】
<燃料噴射器の構成>
次に、追焚き用燃料噴射器23の構成について詳しく説明する。本実施形態に係る追焚き用燃料噴射器23は、燃料103をシート状に形成して噴射する方式(以下、「シート噴射方式」と称する)の燃料噴射器である。以下では、追焚き用燃料噴射器23がシート噴射方式である場合について説明するが、メイン燃料噴射器22及び追焚き用燃料噴射器23の両方がシート噴射方式であってもよく、メイン燃料噴射器22のみがシート噴射方式であってもよい。
【0023】
図3は、追焚き用燃料噴射器23の斜視図であり、
図4は追焚き用燃料噴射器23の縦断面図である。
図3に示すように、追焚き用燃料噴射器23は、基端側(
図3の紙面右上側)に位置する第1円柱部30と、先端側(
図3の紙面左下側)に位置し第1円柱部30よりも径の大きい第2円柱部31と、によって構成されている。
【0024】
図4に示すように、追焚き用燃料噴射器23は、追焚き用燃料噴射器23の軸方向に延びる複数の円筒流路32と、燃料流路33と、複数の燃料導入路34と、複数の空気導入路35と、を備えている。
【0025】
円筒流路32は、燃料103と圧縮空気102を旋回させながら燃焼室26に導入する流路である。円筒流路32は、燃焼室26に開口している。
図3に示すように、複数の円筒流路32のうち、6本の内側円筒流路32Aが追焚き用燃料噴射器23の中心軸周りに周方向に整列して配置されており、12本の外側円筒流路32Bが内側円筒流路32Aの外側で、中心軸周りに周方向に整列して配置されている。
【0026】
また、
図4に示すように、内側円筒流路32Aは、第1円柱部30から第2円柱部31にわたって形成されている一方、外側円筒流路32Bは、第2円柱部31にのみ形成されている。なお、本実施形態では、各円筒流路32は互いに平行になるよう形成されているが、各円筒流路32は必ずしも互いに平行に形成しなくてもよい。例えば、内側円筒流路32Aのみ軸方向に延びるように形成し、外側円筒流路32Bについては軸方向に対して傾斜して半径方向外側に延びるように形成してもよい。
【0027】
燃料流路33は、燃料供給装置12(
図1参照)から供給された燃料103を複数の燃料導入路34に分岐して供給するための流路である。
図4で示すように、燃料流路33は、追焚き用燃料噴射器23の中心軸上に位置しており、軸方向に延びている。
図4に示すように、燃料流路33の内周面には、異なる3つの軸方向位置において、それぞれ6つの燃料排出口36が周方向に等間隔に形成されている。これらの各燃料排出口36には、それぞれ燃料導入路34が接続されている。そのため、燃料流路33内の燃料103は、燃料排出口36を介して燃料導入路34へ流れる。なお、本実施形態では、燃料流路33が1本のみ形成されているが、燃料流路33が複数本形成されていてもよい。
【0028】
燃料導入路34は、各円筒流路32に燃料103を導く流路である。以下では、燃料導入路34のうち、燃焼室26から遠い燃料排出口36に接続されたものから順に、「第1燃料導入路34A」、「第2燃料導入路34B」、「第3燃料導入路34C」と呼ぶこととする。
図5〜
図7は、
図4のA−A矢視断面図であって、それぞれ第1燃料導入路34A、第2燃料導入路34B、第3燃料導入路34Cを図示している。
【0029】
図5に示すように、第1燃料導入路34Aは、燃料流路33から12本ある外側円筒流路32Bのうちの6本の外側円筒流路32Bに向かって延びている。そして、第1燃料導入路34Aの下流端部分は、断面視において円筒流路32の接線方向に延びるようにして外側円筒流路32Bに接続されている。なお、第1燃料導入路34Aの下流端部分は、追焚き用燃料噴射器23の半径方向に対してほぼ平行に延びている。
【0030】
図6に示すように、第2燃料導入路34Bは、燃料流路33から12本ある外側円筒流路32Bのうち、第1燃料導入路34Aが接続されていない残りの6本の外側円筒流路32Bに向かって延びている。本実施形態では、第1燃料導入路34Aが接続される外側円筒流路32Bと、第2燃料導入路34Bが接続される外側円筒流路32Bは、追焚き用燃料噴射器23の周方向において交互に配置されている。また、第2燃料導入路34Bの下流端部分は、断面視において外側円筒流路32Bの接線方向に延びるようにして外側円筒流路32Bに接続されている。ただし、第2燃料導入路34Bの下流端部分は、第1燃料導入路34Aの下流端部とは異なり、追焚き用燃料噴射器23の半径方向に対して傾斜する方向に延びている。
【0031】
図7に示すように、第3燃料導入路34Cは、燃料流路33から6本の内側円筒流路32Aに向かって延びている。そして、第3燃料導入路34Cの下流端部分は、断面視において外側円筒流路32Bの接線方向に延びるようにして内側円筒流路32Aに接続されている。また、第1燃料導入路34A、第2燃料導入路34B、及び第3燃料導入路34Cの下流部分(燃料導入口40)は、円筒流路32の燃焼室26側に位置している。ここでいう「円筒流路32の燃焼室26側」とは、円筒流路32を軸方向に3等分した領域のうちの最も燃焼室26寄りの領域であっても良く、円筒流路32を軸方向に2等分した領域のうちの最も燃焼室26寄りの領域であっても良い。
【0032】
以上のとおり、各燃料導入路34の下流端部分は、いずれも断面視において円筒流路32の接線方向に延びるようにして円筒流路32に接続されている。そのため、円筒流路32の中心軸に垂直な断面視(横断面視)において、円筒流路32の接線方向から円筒流路32に燃料103が導かれることになる。これにより、円筒流路32に導入された燃料103は、円筒流路32の内周面に沿って旋回(
図5〜
図7では時計回りに旋回)した後、燃焼室26に噴射されることになる。このように、燃料103が円筒流路32の内周面に沿って旋回することにより、燃料103はシート状に形成される。
【0033】
また、
図4に示すように、第1燃料導入路34Aは、軸方向に延びる第1縦流路部37を有しており、第2燃料導入路34Bは、第1縦流路部37よりも短く、軸方向に延びる第2縦流路部38を有している。これに対し、第3燃料導入路34Cは、軸方向に延びる流路部を有していない。各燃料導入路34をこのように構成することにより、全ての円筒流路32において、燃料103が導入される燃料導入口40が円筒流路32の出口からほぼ同じ距離となるように構成されている。
【0034】
空気導入路35は、各円筒流路32に圧縮空気102を導く流路である。
図3に示すように、第1円柱部30には内側円筒流路32A用の空気取入口41Aが形成されており、第2円柱部31A、Bには外側円筒流路32B用の空気取入口41Bが形成されている。いずれの空気取入口41A、41Bも軸方向に延びてスリット状に形成されている。
図4に示すように、空気導入路35は、第1円柱部30に形成された空気取入口41Aと内側円筒流路32Aとをつなぐとともに、第2円柱部31に形成された空気取入口41Bと外側円筒流路32Bとをつないでいる。これにより、追焚き用燃料噴射器23の外部の圧縮空気102を各円筒流路32に導入することができる。
【0035】
なお、
図4に示すように、空気導入路35は、燃料導入路34(燃料導入口40)よりも上流側に位置している。これにより、円筒流路32において、圧縮空気102は燃料103よりも上流側に導かれる。そのため、燃料103は圧縮空気102とともに、圧縮空気102に押し出されるようにして燃焼室26へ噴射される。
【0036】
図8は
図4のB−Bの矢視断面図であり、
図9は
図4のC−C矢視断面図である。
図8及び
図9に示すように、空気導入路35は、いずれも断面視において円筒流路32の接線方向に延びるようにして円筒流路32に接続されている。そのため、空気導入路35は、円筒流路32の中心軸に垂直な断面視(横断面視)において、円筒流路32の接線方向から円筒流路32に圧縮空気102を導くことができる。これにより、円筒流路32に導入された圧縮空気102は、円筒流路32の内周面に沿って旋回(
図8及び
図9では時計回りに旋回)しながら燃焼室26に噴射されることになる。
【0037】
ここで、
図10は、燃焼室26側から見た燃料導入路34と空気導入路35の位置関係を示す図である。
図10では、燃料導入路34が円筒流路32の紙面右側に接続されており、空気導入路35が円筒流路32の紙面下側に接続されている。そして、燃料103は紙面下方から円筒流路32の紙面右側に導入され、円筒流路32の内周面に沿って反時計回りに旋回する。一方、圧縮空気102は紙面左方から円筒流路32の紙面下側に導入され、円筒流路32の内周面に沿って反時計回りに旋回する。このように、本実施形態では、圧縮空気102を燃料103の旋回方向と同じ方向に旋回する。そのため、例えば圧縮空気102が軸方向に直線的に流れる場合に比べ、本実施形態では燃料103がより旋回しやすくなり、ひいては燃料103がシート状により形成されやすくなる。
【0038】
なお、各空気導入路35は、各円筒流路32の中心軸に対して垂直な方向に延びている。燃料103の場合とは異なり、旋回した圧縮空気102と導入された圧縮空気102が干渉したとしても、燃料103をシート状に形成することへの影響は少ない。
【0039】
以上が本実施形態の説明である。以上のとおり、本実施形態では、燃料103がシート状に形成されるため、燃料103の表面と燃料103の中心までの距離が短く、燃料103の燃焼反応時間が短い。その結果、NOxの発生を抑えることができる。
【0040】
また、以上では、空気導入部35は、横断面視において円筒流路32の接線方向に延びるようにして円筒流路32に接続されることで、円筒流路32内において圧縮空気102を燃料103の旋回方向と同じ方向に旋回させるように構成されているが、空気導入部35はこのような構成に限定されない。例えば、空気導入部35は、円筒流路32の外周に位置するスワラー(旋回案内翼;swirler)を有し、これにより円筒流路32内において圧縮空気102を燃料103の旋回方向と同じ方向に旋回させるように構成されていてもよい。
【0041】
また、以上では、燃料噴射器23が、複数の円筒流路32、複数の燃料導入路34、及び複数の空気導入路35を備えている場合について説明したが、燃料噴射器23はこれらの構成要素を複数備えていなくてもよい。例えば、燃料噴射器23が1つの円筒流路32、1つの燃料導入路34、及び1つの空気導入路35を備える構成であってもよい。
【0042】
また、以上では、円筒流路32、燃料流路33、及び燃料導入路34が、第1円筒部30及び第2円筒部31に形成されている場合について説明したが、各流路32〜34は必ずしも同一の部材に形成されていなくてもよい。例えば、各流路32〜34は、それぞれ独立した管部材によって形成されており、これらを連結して燃料噴射器23を構成してもよい。
【0043】
また、以上では、燃料噴射器23をガスタービン100に用いる場合について説明したが、ガスタービンに限らすボイラや吸収式冷凍機等に使用してもよい。