【実施例】
【0019】
以下、本発明を適用したレーザ照射装置及び表面処理方法の実施例について説明する。
本実施例のレーザ照射装置及び表面処理方法は、例えば、原子力プラント内部の壁面等に付着した燃料デブリ等を破砕して回収する除染処理に好適なものであるが、用途はこれに限定されない。
【0020】
図1は、実施例のレーザ照射装置におけるヘッドの外観図である。
レーザ照射装置は、図示しないレーザ発振器、ファイバF、及び、ヘッド10を有して構成されている。
レーザ発振器は、励起源、レーザ媒質、光共振器等を有して構成された光源である。
レーザ発振器は、連続発振(CW)型及びパルス発振型の何れでもよく、例えばアークランプ、フラッシュランプなどを使用することができる。
また、使用する光源に応じて励起電流などを加えて駆動するための駆動手段を備えてもよい。
レーザ媒質は、固体レーザ(ルビーレーザ、YAGレーザ等)や半導体レーザ(レーザダイオード)を採用することが好ましい。
特に固体レーザとして、ファイバーレーザを使用することが好ましい。
なお、レーザ媒質は特に限定されるものではなく、そのほか、気体レーザ(CO2レーザ、エキシマレーザ等)、液体レーザ(色素レーザ)などを利用してもよい。
【0021】
ファイバFは、レーザ発振器が発生したレーザ光を、ヘッド10のレーザ照射ユニット100に伝送するものである。
ファイバFは、コアの周囲をクラッドで被覆した光ファイバの周囲に、補強用、保護用の被覆を形成して構成されている。
ファイバFは、ヘッド10による照射対象物の走査を妨げないよう可撓性を有している。
【0022】
ヘッド10は、照射対象物と隣接して配置され、レーザ発振器が発生しファイバFによって伝達されたレーザ光を照射対象物に対して照射するものである。
ヘッド10は、レーザ照射ユニット100(
図2参照)、照射ユニットハウジング200、筒状ハウジング300、キャップ400等を有して構成されている。
【0023】
図3は、レーザ照射ユニット100の構成を模式的に示す図である。
図3に示すように、レーザ照射ユニット100は、ファイバ接続部110、集光光学系120、偏向光学系130等を有して構成されている。
ファイバ接続部110は、ファイバFのヘッド10側の端部が接続され、伝達されてきたレーザ光を集光光学系120に案内するものである。
【0024】
集光光学系120は、ファイバFから入射されたレーザ光を、所定の焦点FPにおいて収束させるよう集光するものである。
【0025】
偏向光学系130は、集光光学系120から出たレーザ光を、所定の偏角だけ屈曲させるものである。
偏向光学系130は、例えば、ウェッジプリズムを有して構成されている。
偏向光学系130は、例えば電動モータやエアモータ等の駆動用動力源131によって、集光光学系120の光軸と実質的に平行に配置された回転軸回りに、所定の回転速度で回転駆動される。
【0026】
図4は、実施例のレーザ照射装置におけるビームの挙動を示す模式図である。
上述した構成によって、レーザ照射ユニット100から射出されるビームBは、集光光学系120の光軸が通過する偏向光学系130の中央部を頂点とし、偏向光学系130の偏角を半頂角とする円錐の側面に沿って、周方向に旋回する挙動を示す。
このとき、ビームBの焦点FPは、集光光学系120の光軸を中心とし、この光軸と直交する平面に沿った円周上を旋回することになる。
ヘッド10を処理対象面に対して、集光光学系120の光軸が処理対称面と直交しかつ焦点FPが処理対象面上となるように保持すると、ビームBの焦点FPは、円周上を旋回しながら処理対象面を走査する。
このような構成とすることによって、CWレーザを用いた場合であっても、同一箇所に連続的にレーザ光が照射されることを防止できる。
【0027】
照射ユニットハウジング200は、レーザ照射ユニット100を収容する筐体である。
照射ユニットハウジング200は、実質的に円筒状に形成され、レーザ照射ユニット100はその内径側に収容されている。
照射ユニットハウジング200は、例えば、樹脂系材料をインジェクション成型することによって形成され、一例として中心軸を含む平面を境に二分割構成となっている。
照射ユニットハウジング200の外径側には、照射ユニットハウジング200の固定、支持に用いられるブラケット210が形成されている。
【0028】
筒状ハウジング300は、照射ユニットハウジング200におけるレーザ照射ユニット100の出射側の端部から照射対象物側へ突出して形成され、ビームBが内部を通過する部材である。
筒状ハウジング300は、例えば樹脂系材料をインジェクション成型することによって、照射ユニットハウジング200と実質的に同心となる円筒状に形成されている。
キャップ400は、筒状ハウジング300の照射対象物側の端部に設けられ、保護ガラス323等を保持する部材である。
照射ユニットハウジング200及び筒状ハウジング300は、実質的に水密に形成され、液体中で処理を行う際にも液体が内部に侵入しないようシールされている。
【0029】
以下、筒状ハウジング300、キャップ400等の構成についてより詳細に説明する。
図5は、ヘッド10の部分断面斜視図である。
図6は、ヘッド10の照射対象物側の端部近傍における部分断面斜視図である。
図7は、筒状ハウジングの四面図である。
図7(a)は、筒状ハウジング300を照射対象物側から中心軸に沿って見た外観図である。
図7(b)は、
図7(a)のb−b部矢視図である。
図7(c)は、
図7(d)のc−c部矢視図である。
図7(d)は、
図7(c)のd−d部矢視断面図である。
【0030】
筒状ハウジング300は、本体部310及び先端部320を有する。
先端部320は、照射対象物側の端部近傍の一部に形成され、本体部310は先端部320よりも照射ユニットハウジング200側(先端部320以外の実質全部)に形成されている。
【0031】
本体部310には、吐出流路311、吸入流路312、吐出側ポンプ接続部313、吸入側ポンプ接続部314、ハウジング接続部315、ブラケット316等を有して構成されている。
【0032】
吐出流路311は、図示しないポンプの吐出口から供給される液体を、後述するキャップ400の吐出流路440に導入するものである。
吸入流路312は、後述するキャップ400の吸入流路450から導入される液体を、図示しないポンプの吸入口へ導入するものである。
吐出流路311、吸入流路312は、筒状ハウジング300の中心軸を挟んで対向して配置されている。
【0033】
図7(a)に示すように、吐出流路311、吸入流路312は、本体部310における外周面と内周面との間の領域を、本体部310の周方向に所定の幅にわたって形成された空洞部とすることによって、本体部310と一体的に形成されている。
吐出流路311、吸入流路312は、筒状ハウジング300の中心軸方向から見たときに、実質的に円弧状に延在する断面形状を有する。
吸入流路312の流路断面積は、吐出流路311に対して大きく設定されている。
具体的には、吸入流路312は、筒状ハウジング300の中心軸回りにおける範囲(中心角)が、吐出流路311に対して広く(大きく)設定されている。
【0034】
吐出側ポンプ接続部313は、可撓性を有するホース等を介して図示しないポンプの吐出口と接続され、ポンプが吐出する液体を吐出流路311に供給する管路である。
吐出側ポンプ接続部313は、本体部310の照射ユニットハウジング200側の端部近傍における外周面から突出して形成されている。
【0035】
吸入側ポンプ接続部314は、可撓性を有するホース等を介して図示しないポンプの吸入口と接続され、吸入流路312から導入される液体をポンプへ供給する管路である。
吸入側ポンプ接続部314は、本体部310の照射ユニットハウジング200側の端部近傍における外周面から突出して形成されている。
吸入側ポンプ接続部314は、筒状ハウジング300の中心軸に対して吐出側ポンプ接続部313と実質的に軸対象となるように配置、形成されている。
【0036】
ハウジング接続部315は、本体部310の照射ユニットハウジング200側の端部に形成され、本体部310に対して外径が段状に縮小して形成されている。
ハウジング接続部315は、照射ユニットハウジング200の照射対象物O側の端部開口に嵌合する。
ブラケット316は、筒状ハウジング300の支持、固定等に用いられる部分であって、本体部310の外周面から突き出して形成されている。
【0037】
先端部320は、キャップ400が被せられる部分であって、本体部310に対して外径が段状に小さく形成されている。
先端部320の突端部には、筒状ハウジング300の中心軸と同心の円形の開口321が形成されている。
開口321の周囲には、先端部320の端面を段状に凹ませて形成された凹部322が形成されている。
凹部322には、保護ガラス323が着脱可能に挿入される。
【0038】
保護ガラス323は、透明の平板ガラスによって形成された円盤状の部材であって、入射されるビームBを実質的に偏向させることなく透過させるものである。
保護ガラス323は、筒状ハウジング300からキャップ400を取り外すことによって、筒状ハウジング300から着脱可能となっている。
保護ガラス323は、装置の使用によって、異物の付着や焼損等の劣化が生じた場合に交換される。
【0039】
凹部322の外周縁部には、照射対象物と対向する面部を凹ませて形成され、円周状に延在する溝部324が形成されている。
溝部324には、ゴム系の弾性材料によって形成されたOリング325が嵌め込まれている。
Oリング325は、保護ガラス323の外周縁部をシールし、筒状ハウジング300の内部へ液体等が浸入することを防止するものである。
【0040】
キャップ400は、筒状ハウジング300の先端部320に被せられる部材である。
図8は、キャップの四面図である。
図8(a)は、キャップ400を径方向から見た透視図である。
図8(b)は、
図8(a)のb−b部矢視図である。
図8(c)は、
図8(b)のc−c部矢視図(照射対象物側から見た図)である。
図8(d)は、
図8(b)のd−d部矢視図(照射ユニット側から見た図)である。
図9は、キャップの透視斜視図である。
キャップ400は、保護ガラス323の照射対象物側の面部を押圧し、保護ガラス323を保持するとともに、保護ガラス323を介してOリング325に与圧を与えるものである。
【0041】
キャップ400は、外周面部410、端面部420、曲面部430等を有して構成されている。
外周面部410は、筒状ハウジング300の先端部320の外径側に嵌め込まれる実質的に円筒状の部分である。
外周面部410の外径は、筒状ハウジング300の本体部310の外径と実質的に同径とされている。
外周面部410の内径は、筒状ハウジング300の先端部320の外径と実質的に同径とされている。
外周面部410は、例えばビス等の締結手段によって、筒状ハウジング300の先端部320に固定される。
【0042】
端面部420は、キャップ400における照射対象物側の端部に設けられた平板状の部分である。
端面部420は、円盤状に形成され、筒状ハウジング300の中心軸と実質的に直交する平面に沿って形成されている。
端面部420の中央部には、開口421が形成されている。
開口421は、筒状ハウジング300の中心軸と実質的に同心の円形に形成されている。
開口421は、照射対象物へのビーム照射時に、保護ガラス323から出射されたビームBが通過するとともに、照射によって照射対象物から分離し、液体中を浮遊する異物を吸引する機能を有する。
【0043】
曲面部430は、外周面部410の端面部420側の端部と、単面部420の外周縁部との間を接続する部分である。
曲面部430は、キャップ400を径方向に切って見た場合の断面形状が、キャップ400の外側が凸となる円弧状となるように形成されている。
【0044】
キャップ400には、さらに、吐出流路440、吸入流路450が形成されている。
吐出流路440は、筒状ハウジング300の吐出流路311から筒状ハウジング300の長手方向に沿って流れてきた液体流を、曲面部430の内面に沿って約90度偏向させ、保護ガラス323の表面に沿った実質的に層流の液体流として吐出するものである。
吐出流路440は、外周面部410、曲面部430、端面部420のキャップ400内側の面部を溝状に凹ませて形成されている。
【0045】
吸入流路450は、吐出流路440から保護ガラス323の表面部近傍を保護ガラス323の直径方向にほぼ沿って流れた液体流を取り込み、曲面部430の内面に沿って約90度偏向させ、筒状ハウジング300の長手方向に沿った液体流として、筒状ハウジング300の吸入流路312に導入するものである。
吸入流路450は、外周面部410、曲面部430、端面部420のキャップ400内側の面部を溝状に凹ませて形成されている。
吸入流路450は、溝状部の幅を吐出流路440よりも幅広とすることによって、流路断面積を吐出流路450よりも大きくしている。
【0046】
以下、上述したレーザ照射装置を用いて、水中などの液体中に配置された照射対象物の表面に付着した異物を除去する表面処理方法について説明する。
本実施例において、照射対象物は例えば冷却水中に配置された原子力プラントの構造部材であって、除去対象となる異物は、溶融燃料が冷やされて凝固し付着したいわゆる燃料デブリであるが、本発明の適用対象はこれに限定されない。
【0047】
レーザ照射装置のヘッド10は、少なくとも筒状ハウジング300の先端部及びキャップ400が水中に配置される。
このとき、筒状ハウジング300の内部における保護ガラス323よりもレーザ照射ユニット100側の領域は、水の浸入が防止され、空気が充填された状態となっている。
ヘッド10は、照射時においては、保護ガラス323の照射対象物側の面部と、照射対称面との間隔が、例えば10mm以下となるように保持される。
このようなヘッド10の保持は、例えば、予め設定された軌跡に沿ってヘッド10を移動させ、照射対象物を走査可能なロボットを用いることができる。
【0048】
次に、図示しないポンプを用いて、吐出側ポンプ接続部313に水流を供給するとともに、吸入側ポンプ接続部314から水流を吸引する。
このとき、吸入側ポンプ接続部314から吸引される水流の流量は、吐出側ポンプ接続部313に供給される水流の流量と同等か、これよりも多くすることが好ましい。
【0049】
そして、レーザ照射ユニット100から、レーザ光のビームBを照射対象物に対して照射する。
ビームBの焦点FPは、実質的に照射対象物の表面と一致するように調節される。
これによって、照射対象物の表面に付着した燃料デブリは破砕されて照射対象物から剥離し、水中に浮遊する。
水中に浮遊する燃料デブリは、キャップ400の開口421からキャップ400の内側へ吸い込まれ、さらに、吐出流路440から吸入流路450へ向けて保護ガラス323の表面に沿って流れる水流に同伴し、吸入流路450から吸入され、筒状ハウジング300の吸入流路312、吸入側ポンプ接続部314等を介して回収される。
この場合、吸入側ポンプ接続部314からポンプへ至る流路の一部に、フィルタ等の異物回収手段を設けることが好ましい。
【0050】
以上説明したように、本実施例によれば、液体中の照射対象物に対してレーザを照射して表面処理を行う際の処理能力を向上したレーザ照射装置及び表面処理方法を提供することができる。
【0051】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、レーザ照射装置を構成する各部材の構造、材質、形状、数量、配置等は、上述した実施例に限らず、適宜変更することが可能である。
例えば、実施例においては、最対物側光学素子である保護ガラス323を平板状に形成したが、最対物側光学素子がレーザ光線を所定の焦点に集光させる集光光学系の一部を構成するレンズを兼ねるようにしてもよい。これによれば、レーザ光線がこのレンズを通過する段階では光線は未だ集光していないため、レンズの一点に高エネルギが集中して焼損が生じることを防止できる。
また、実施例では最対物側光学素子と照射対象物との間隔を例えば10mm以下に設定しているが、この間隔も特に限定されない。例えば、液体中でも減衰しにくい波長を有するグリーンレーザを利用する場合には、最対物側光学素子と照射対象物との距離をこれより大きく設定した場合であっても性能の低下を抑制できる。
また、処理対象物は、原子力プラントの燃料デブリに限らず、液体も冷却水に限定されない。
例えば、本発明は、上下水道設備における表面クリーニング(一例として苔落とし等)などに用いることが可能である。