特許第6602023号(P6602023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6602023表面被覆が形成されたチタン銅合金材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602023
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】表面被覆が形成されたチタン銅合金材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/00 20060101AFI20191028BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20191028BHJP
   C23C 8/36 20060101ALI20191028BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20191028BHJP
【FI】
   C22C9/00
   C22F1/08 C
   C23C8/36
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 613
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 630C
   !C22F1/00 630D
   !C22F1/00 630F
   !C22F1/00 630G
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 681
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 686Z
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 691Z
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/00 671
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-38099(P2015-38099)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-193914(P2015-193914A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-59830(P2014-59830)
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年11月8日、11月9日開催 日本銅学会 第54回講演大会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 東北大学金属材料研究所附属研究施設関西センター News Letter 2015 Vol.32 冬号、2015年1月5日発行で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年11月6日〜2014年11月27日開催産学連携オフィス企画展で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】千星 聡
(72)【発明者】
【氏名】高 維林
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242881(JP,A)
【文献】 特開昭63−310952(JP,A)
【文献】 特開昭54−112739(JP,A)
【文献】 特開2006−009038(JP,A)
【文献】 特開2010−215934(JP,A)
【文献】 特開昭61−003876(JP,A)
【文献】 特開昭51−064441(JP,A)
【文献】 特開平06−299307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/00
C22F 1/08
C23C 8/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti:1.0〜4.8質量%、残部:Cuおよび不可避的不純物から成る組成の母相の表面にCuTiO層が形成され、
前記CuTiO層上にTiN層が形成され、
前記TiN層の厚さが50nm〜1000nmであり、
前記CuTiO層の厚さが100nm〜3000nmである、チタン銅合金材。
【請求項2】
前記母相は、さらに、Ni、Co、Fe、Sn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの1種以上を合計で0.01質量%以上、1.0質量%以下の範囲で含有する、請求項1に記載のチタン銅合金材。
【請求項3】
試験荷重を10gとして評価した、前記チタン銅合金材の表面のマイクロビッカース硬さがHV400以上である、請求項1または2に記載のチタン銅合金材。
【請求項4】
母相の硬さがHV200以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタン銅合金材。
【請求項5】
板材または線材であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか一項に記載のチタン銅合金材。
【請求項6】
相手材がクロム高炭素軸受鋼、荷重を300g、速度を1200mm/min、時間を30minとした条件下で実施した動摩擦摩耗試験後の摩耗量が10μm以下である、請求項1〜5いずれか一項に記載のチタン銅合金材。
【請求項7】
前記チタン銅合金材の表面をX線回折により分析してCuO(−111)とTiN(111)の回折ピークを同定し、それぞれのピーク強度をICuO、ITiNとしたときのX線回折強度比ICuO/ITiNが0.1〜1.0である、請求項1〜6いずれか一項に記載のチタン銅合金材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のチタン銅合金材の製造方法であって、
Ti:1.0〜4.8質量%、残部:Cuおよび不可避的不純物から成る鋳片に対して、950〜500℃での熱間圧延、被圧延材の表層の酸化層の面削、冷間圧延、750〜1000℃での溶体化処理を順次施し、
プラズマ処理炉の炉圧を0.1Pa以下とした状態で、炉温が750〜900℃となるまで加熱し、
加熱された炉内をN2/H2ガス雰囲気(ガス体積率でNが40〜60%、ガス雰囲気圧力100〜500Pa)にした後、
プラズマ電圧を100〜1000V、処理時間を1〜10時間として前記溶体化処理された被処理体のプラズマ窒化処理を行う、チタン銅合金材の製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ窒化処理後に、400〜500℃で0.5時間以上の時効処理を施す、請求項8に記載のチタン銅合金材の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理を大気雰囲気で行う、請求項9に記載のチタン銅合金材の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のチタン銅合金材を用いたコネクター端子。
【請求項12】
請求項11に記載のコネクター端子の製造方法であって、
Ti:1.0〜4.8質量%、残部:Cuおよび不可避的不純物から成る鋳片に対して、950〜500℃での熱間圧延、被圧延材の表層の酸化層の面削、冷間圧延、750〜1000℃での溶体化処理を順次施し、
その後、プレス成形加工を行い、
プラズマ処理炉の炉圧を0.1Pa以下とした状態で、炉温が750〜900℃となるまで加熱し、
加熱された炉内をN2/H2ガス雰囲気(ガス体積率でNが40〜60%、ガス雰囲気圧力100〜500Pa)にした後、
プラズマ電圧を100〜1000V、処理時間を1〜10時間として前記溶体化処理された被処理体のプラズマ窒化処理を行う工程を経て製造される、コネクター端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に適したCu−Ti系銅合金材であって、特に高強度と優れた耐応力緩和性を維持しながら、耐摩耗性と耐疲労特性を呈する銅合金材およびその製造法、さらにこの銅合金材を用いたコネクター端子およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品を構成するコネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの部品に使用される材料には、電気・電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い「強度」が要求される。また、電気・電子部品間の接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象(応力緩和)に対する耐久性、すなわち「耐応力緩和性」に優れることが要求される。さらに、ジャックなど繰返し挿抜が必要な電気・電子部品間の接触信頼性を確保するために、「耐摩耗性」と「耐疲労特性」に優れることも要求される。
【0003】
特に近年、電気・電子部品は高集積化、小型化および軽量化が進む傾向にあり、それに伴って素材である銅および銅合金には薄肉化の要求が高まっている。そのため、素材に要求される「強度」のレベルは一層厳しいものとなっている。
【0004】
また、電気・電子部品が過酷な環境で使用される用途の増加に伴い「耐応力緩和性」に対する要求も厳しくなっている。例えば、自動車用コネクターのように高温に曝される環境下で使用される場合は「耐応力緩和性」が特に重要となる。
【0005】
さらに、「強度」の増大に伴い、ジャックなど繰返し挿抜や、リレーなど摺動が必要な電気・電子部品間の接触信頼性を確保するために、「耐摩耗性」と「耐疲労特性」に優れることも要求される。
【0006】
Cu−Ti系銅合金は、銅合金中でCu−Be系合金に次ぐ高強度を有し、Cu−Be系合金を凌ぐ耐応力緩和性を有する。また、コストと環境負荷の視点からCu−Be系合金より有利である。このためCu−Ti系銅合金は、一部のCu−Be系合金の代替材としてコネクター材などに使用されている。しかし、Cu−Ti系合金は、Cu−Be系合金と比べて、「強度」、「耐摩耗性」、「耐疲労特性」がまだ及ばないことが一般に知られている。
【0007】
例えば、代表的なCu−Be系銅合金C17200(Cu−2.0wt%Be−0.2wt%Co)は、最高強度がビッカース硬さでHV350〜400に達するが、代表的なCu−Ti系銅合金C19900(Cu−3.2wt%Ti)は、最高強度がHV300〜350に留まる。したがって、Cu−Be系銅合金の代替材となるCu−Ti系合金の代替性を向上させるためには、Cu−Ti系合金の強度を向上させることが求められる。
【0008】
従来のCu−Ti系合金の強度向上手段としては、表面にプラズマ窒化処理を施す方法が提案されている。例えば、特許文献1には、銅合金の表面にプラズマイオン窒化処理により、窒化物硬化層(TiN層)を形成し、銅合金の表面硬さを向上させている。また、 非特許文献1では、Ti含有量と窒化処理後の表面硬さとの関係を詳細に調査している。この非特許文献1には、窒化処理後の表面硬さは、Ti含有量の増加に伴って増大し、表面硬さをHV350以上にするためには、Ti含有量を5wt%以上とする必要があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−310952号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】中田一博他3名,「イオン窒化法による銅合金の表面硬化」,表面技術, Vol. 44 ,No.11,(1993)p.944-949.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、Ti含有量が過剰(5.0質量%以上)になると、溶解鋳造中のTi酸化や熱間と冷間加工過程中に割れが発生しやすく、生産性の低下を招きやすい。例えば、板厚0.3mm以下の板状製品を製造するのが困難となる。また、溶体化処理が可能な温度域が狭くなり良好な特性を引き出すことが困難になる。
【0012】
さらに、Ti含有量が過剰になると、結晶粒界に沿って不連続析出、いわゆる「粒界反応型析出」が発生しやすい。「粒界反応型析出」が生じた部分は、非常に弱い部分であるため、銅合金強度の低下を招く。また、疲労破壊や曲げ割れの起点となり、総合特性を著しく損壊する。
【0013】
特に、銅合金材を電子部品材料として用いる場合、Ti含有量が3質量%前後のものが使用されるため、この組成領域で表面硬度を確保できることが好ましい。
【0014】
Cu−Be系合金のほとんどは、Co,Niを添加することにより、添加元素が粒界に偏析し、「粒界反応型析出」が抑制される。しかしながら、Cu−Ti系銅合金では、Tiが他の添加元素と非常に反応しやすい活性化元素であるので、ほとんどの添加元素と化合物を生成し、「粒界反応型析出」による抑制効果が低い。また、Cu−Ti系銅合金の強化は、主に固溶Tiの変調構造(スピノーダル構造)に因るものであるため、多量な元素を添加すれば、Cu−Ti系銅合金の良さを相殺してしまう。
【0015】
したがって、高強度Cu−Be系合金を代替できる、同等以上の「強度」、「耐摩耗性」、「耐疲労特性」を達成できる銅合金材がまだ無いのが現状である。
【0016】
本発明はこのような現状において、「高強度」、「耐摩耗性」、「耐疲労特性」を同時に改善できるCu−Ti系銅合金材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明者らは、詳細な検討の結果、所定成分のCu−Ti系銅合金に対し、プラズマ窒化処理を施して、合金表面に硬質なTiN層を被覆することで、「高強度」、優れた「耐摩耗性」、「耐疲労特性」を同時に達成できることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
【0018】
すなわち本発明では、Ti:1.0〜4.8質量%、残部:Cuおよび不可避的不純物から成る組成の母相の表面にCuTiO層が形成され、前記CuTiO層上にTiN層が形成され、前記TiN層の厚さが50nm〜1000nmであり、前記CuTiO層の厚さが100nm〜3000nmである、チタン銅合金材が提供される。
【0020】
上記銅合金母相の組成において、さらに、Ni、Co、Fe、Sn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの1種以上を合計1.0質量%以下の範囲で含有する組成を有していても良い。
【0021】
試験荷重を10gとして評価した、前記チタン銅合金材の表面のマイクロビッカース硬さがHV400以上であっても良い。
【0022】
相手材がクロム高炭素軸受鋼、荷重を300g、速度を1200mm/min、時間を30minとした条件下で実施した摩耗試験後の摩耗量が10μm以下である耐摩耗性を備えたものが好適な対象となる。
【0023】
前記チタン銅合金材の表面をX線回折により分析してCuO(−111)とTiN(111)の回折ピークを同定し、それぞれのピーク強度をICuO、ITiNとしたときのX線回折強度比ICuO/ITiNが0.1〜1.0であっても良い。
【0024】
別の観点による本発明によれば、上記のチタン銅合金材の製造方法であって、Ti:1.0〜4.8質量%、残部:Cuおよび不可避的不純物から成る鋳片に対して、950〜500℃での熱間圧延、被圧延材の表層の酸化層の面削、冷間圧延、750〜1000℃での溶体化処理を順次施し、プラズマ処理炉の炉圧を0.1Pa以下とした状態で、炉温が750〜900℃となるまで加熱し、加熱された炉内をN2/H2ガス雰囲気(ガス体積率でNが40〜60%、ガス雰囲気圧力100〜500Pa)にした後、プラズマ電圧を100〜1000V、処理時間を1〜10時間として前記溶体化処理された被処理体のプラズマ窒化処理を行う、チタン銅合金材の製造方法が提供される。
【0025】
必要に応じさらに、400〜500℃で0.5時間以上の時効処理を施す工程を備えていても良い。前記時効処理を大気雰囲気で行っても良い。
【0026】
また、曲げ加工性に対する要求が厳しい電気・電子部品について、前記溶体化処理後の柔らかい状態で、プレス成形加工を行い、その後に、プラズマ窒化処理を行うこともできる。
【0027】
また、別の観点による本発明によれば、上記のチタン銅合金材を用いたコネクター端子が提供される。
【0028】
また、別の観点による本発明によれば、上記のコネクター端子の製造方法であって、Ti:1.0〜4.8質量%、残部:Cuおよび不可避的不純物から成る鋳片に対して、950〜500℃での熱間圧延、被圧延材の表層の酸化層の面削、冷間圧延、750〜1000℃での溶体化処理を順次施し、その後、プレス成形加工を行い、プラズマ処理炉の炉圧を0.1Pa以下とした状態で、炉温が750〜900℃となるまで加熱し、加熱された炉内をN2/H2ガス雰囲気(ガス体積率でNが40〜60%、ガス雰囲気圧力100〜500Pa)にした後、プラズマ電圧を100〜1000V、処理時間を1〜10時間として前記溶体化処理された被処理体のプラズマ窒化処理を行う工程を経て製造される、コネクター端子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に必要な基本特性を具備するCu−Ti系銅合金材が、高強度(例えば、表面硬さHV400以上)を有し、かつ優れた「耐摩耗性」と「耐疲労特性」を同時に有することが可能となる。さらに、優れた成形性(特に曲げ加工性)も同時に達成が可能である。このような高強度レベルを維持しながら「耐摩耗性」と「耐疲労特性」及び曲げ加工性を安定して顕著に向上させることは、従来のCu−Ti系銅合金製造技術では困難であった。
本発明は、今後ますます進展が予想される電気・電子部品の小型化、薄肉化のニーズに対応し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1における試験片の断面TEM像および制限視野電子線回折図形を示す図である。
図2】実施例2における試験片の断面TEM像を示す図である。
図3】摩耗試験後の各試験片の表面写真と表面粗さのプロファイルを示す図である。
図4】時効処理後における各試験片の表面の色を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態に係る銅合金材は、主としてCu−Ti系銅合金板材の表面にプラズマ窒化処理により硬質なTiN層を被覆することによって、「強度」、「耐応力緩和性」、「耐摩耗性」、「耐疲労特性」の同時改善を可能にするものである。
【0032】
以下、本実施形態に係る銅合金板材の構成について説明する。
【0033】
《TiN膜》
切削工具や金型などの硬度と耐摩耗性が要求される機械部品には,鋼に比べて硬く耐摩耗性の高いTiN膜などの窒化物系硬質被膜が広く用いられている。TiNは、極めて高い強度(硬度:HV2000〜2500)、高導電性(導電率:8%IACS)、高耐熱性(耐熱温度:600℃以上)を有し、銅合金材料の「耐摩耗性」と「耐疲労特性」を格段に向上できる。
【0034】
銅合金板材の最表面のTiN層の厚さは、50nm〜1000nmとすることが好ましく、100nm〜500nmの範囲に調整することが一層好ましい。TiN層の厚さが薄すぎると、上記作用を十分に発揮することができず、厚すぎると、母相との密接性が弱くなり、TiN層が剥離しやすくなる。
【0035】
《過渡層》
銅合金板材の最表面のTiN層の下に、TiNとCu−Ti系銅合金母相の間の強度を有する過渡層が必要である。この過渡層がないと、TiNとCu−Ti系銅合金母相の強度差があまりにも大きくなり、応力負荷下において界面に応力集中が発生しやすく、TiN層が剥離しやすくなる。
【0036】
この過渡層は、Cu−Ti−Oの化合物(CuTiO)で構成される。母相とTiN層との間にCuTiO層が形成されることにより、TiN層が母相表面に直接形成される場合に比べ、表面硬さを大きくすることが可能となる。CuTiO層の厚さは、100nm〜3000nmとすることが好ましく、300nm〜2000nmの範囲に調整することが一層好ましい。CuTiO層の厚さが薄すぎると、TiN層とCu−Ti系銅合金母相との接合強度が弱くなりやすく、厚すぎると、母相との密接性が弱くなり、TiN層が剥離しやすくなる。
【0037】
《母相合金組成》
本発明では、Cu−Tiの2元系基本成分に、必要に応じてNi、Co、Fe等、あるいはその他の合金元素を配合したCu−Ti系銅合金を採用する。
【0038】
Tiは、Cuマトリックスにおいて時効硬化作用が高い元素であり、強度上昇および耐応力緩和性向上に寄与する。また、母相に固溶Ti原子が存在すると、表面プラズマ窒化処理において、Nイオンが表面から浸透し、断面(板材の厚さ方向)に沿ってTiと連続的にTiNが生成される。Ti含有量が1.0質量%未満では、上記効果を十分に引き出すことが難しい。一方、Ti含有量が5.0質量%以上になると、熱間と冷間加工過程中に割れが発生しやすく、生産性の低下を招きやすい。また、溶体化処理が可能な温度域が狭くなり良好な特性を引き出すことが困難になる。種々検討の結果、Ti含有量は4.8質量%以下とする必要がある。したがって、Ti含有量は1.0〜4.8質量%に規定される。Ti含有量は、2.0〜4.8質量%とすることがより好ましく、2.5〜4.0質量%とすることが更に好ましく、2.5〜3.5質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
【0039】
さらに、必要に応じ、Ni、Co、Fe、Sn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの1種以上を含有させることができる。例えば、Ni、Co、Fe、Zr、CrはCu−Ti系銅合金の「粒界反応型析出」を抑制する効果がある。Sn、Zn、Mg、Al、Mnは固溶強化効果がある。また、B、P、Zr、Vは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。
【0040】
Ni、Co、Fe、Sn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの1種以上を含有させる場合は、各元素の作用を十分に得るためにこれらの総量が0.01質量%以上となるように含有させることが効果的である。ただし、多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪影響を与える。したがって、Ni、Co、Fe、Sn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの合計含有量は、1.0質量%以下に抑えることが望ましく、0.5質量%以下に抑えることが更に望ましい。
【0041】
《特性》
「表面硬さ」
表面硬さが高いほど銅合金板材の全体強度が高くなる。特に耐摩耗性や疲労強度は格段に高くなる。マイクロビッカース硬さ試験で、試験荷重を10gとして評価した表面硬さがHV400以上であることが好ましく、HV500以上であることがより好ましく、HV600以上であることが一層好ましい。
【0042】
「母相硬さ」
母相硬さは通常のCu−Ti系銅合金と同等以上の強度を有することが好ましい。具体的には、母相硬さはHV200以上であることが好ましく、HV250以上であることがより好ましく、HV300以上であることが一層好ましい。
【0043】
「耐摩耗性」
動摩擦摩耗試験により耐摩耗性を評価した際、相手材がクロム高炭素軸受鋼、荷重が300g、速度が1200mm/min、時間が30minとした条件下で、摩耗試験後の銅合金材の摩耗量が10μm以下、さらには5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることが一層好ましい。
【0044】
《製造法》
以上のような本実施形態に係る銅合金板材は、銅合金の一般的な製造方法、例えば以下のような製造工程により作ることができる。
「溶解・鋳造→熱間圧延(熱間加工)→冷間圧延(冷間加工)→溶体化処理」
ただし、後述のようにいくつかの工程での製造条件を工夫することが重要である。なお、上記工程中には記載していないが、溶解・鋳造後には必要に応じて均熱処理(又は熱間鍛造)が行われ、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいはさらに脱脂が行われる。
【0045】
上記溶体化処理に続いて、溶体化処理された銅合金板材のプラズマ窒化処理を行う。これにより、銅合金板材の強度を高めることができる。強度要求がさらに高い用途に対しては、プラズマ窒化処理後に、さらに時効処理を行っても良い。
【0046】
以下、各工程について説明する。
【0047】
〔溶解・鋳造〜溶体化処理〕
まず、連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造する。Tiの酸化を防止するためには、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で溶解を行うのがよい。
【0048】
次に、製造された鋳片を一般的な熱間圧延工程により熱間圧延する。鋳片を熱間圧延する際には、再結晶が発生しやすい700℃以上の高温域で最初の圧延パスを実施することによって、鋳造組織が破壊され、成分と組織の均一化を図ることができる。また、熱間圧延工程中における完全再結晶の発生を確実に行うためには、950℃〜500℃の温度域で圧延率60%以上の熱間圧延を行うことが有効である。これによって組織の均一化が一層促進される。なお、圧延工程では多パス圧延が実施されるが、析出物の生成と粗大化を防止するためには、熱間圧延の最終パス温度は600℃以上であることが効果的である。また、熱間圧延後には、被圧延材を水冷することが望ましい。
【0049】
続いて、熱間圧延後の被圧延材が目標板厚となるまで冷間圧延を行う。冷間圧延率の上限はミルパワー等により必然的に制約を受けるので、特に規定する必要はないが、エッジ割れなどを防止する観点から概ね99%以下でよい。また、下限は90%以上であることが好ましい。なお、必要に応じて、冷間圧延の中間に高温軟化熱処理を行ってもよい。
【0050】
続いて、冷間圧延後の被圧延材を処理炉において溶体化処理する。溶体化処理は、溶質元素のマトリックス中への再固溶を主目的として、該当合金組成の固溶線(平衡状態図で確定できる)よりも30℃以上高い炉温で行うことが必要である。炉温が低すぎると溶質元素の固溶が不十分であり、炉温が高すぎると結晶粒が粗大化してしまう。具体的には、本発明で規定する化学組成の合金では、750〜1000℃の炉温で5sec〜5min保持する加熱条件において適正条件を設定できる。溶体化処理後の冷却は、冷却途中にTiの析出を防止するために急冷却することが好ましい。また、溶体化処理後の平均結晶粒径を8〜15μmとすることが好ましい。
【0051】
〔プラズマ窒化処理〕
次に、溶体化処理が施された被処理体のプラズマ窒化処理を行う。まず、プラズマ処理炉内を圧力0.1Pa以下の真空状態とし、炉内温度を750〜900℃の温度範囲まで加熱する。この昇温時において、炉内の真空度が0.1Paを超える低真空であると、銅合金板材が酸化しやすく、良好なTiN層が得られにくい。その後、炉内にN2ガスとH2ガスを供給し続け、炉内をN2とH2混合ガス雰囲気(ガス体積率でNが40〜60%、ガス雰囲気圧力100〜500Pa)とする。そして、その状態の炉内において、プラズマ電圧を100〜1000V、処理時間を1〜10時間としてプラズマ窒化処理を行う。
【0052】
プラズマ窒化処理時の温度、ガス雰囲気の圧力とプラズマ電圧はTiN層の生成に極めて重要である。温度、ガス雰囲気の圧力またはプラズマ電圧が低すぎると、TiN層とCu−Ti−O化合物の過渡層が生成しないか、または膜厚が目標層厚さとなるまで長時間を要してしまう。
【0053】
一方で、N2とH2からなる混合ガス雰囲気中のN体積率、温度、ガス雰囲気の圧力またはプラズマ電圧が高すぎると、TiN層の生成速度が速く、均一かつ緻密なTiN膜が得られにくく、表面硬さの低下を招きやすい。また、TiN膜厚とCu−Ti−O化合物の過渡層の厚さのバランスをコントロールしにくい。そのため、N体積率は40〜60%であることが望ましく、45〜55%が一層好ましい。また、プラズマ窒化処理温度は、750〜900℃の範囲にある炉温で行うことが望ましく、800〜850℃の範囲が一層好ましい。特に、ガス雰囲気の圧力が高過ぎると、Cu−Ti−O化合物の過渡層が生成しなくなる。Cu−Ti−O化合物生成の機構はまだ調査中であるが、母相表面層付近に残留した微量のTi−O化合物が特定の表面ガス雰囲気の圧力下にしかCu−Ti−O化合物に変換しないと推測される。そのため、ガス雰囲気の圧力が100〜500Paであることが好ましい。また、プラズマ電圧が100〜1000Vであることが好ましく、300〜700Vであることが一層好ましい。
【0054】
〔時効処理〕
前記溶体化処理後にプラズマ窒化処理した場合、母相の硬さはHV200以上に達する。母相の強度として更なる高強度が要求される場合、プラズマ窒化処理後に、400〜500℃で0.5時間以上の時効処理を行うことが好ましい。この温度範囲内で時効処理する場合、母相の強度を向上できると同時に、TiN層とCu−Ti−O化合物の過渡層にほとんど影響を与えない。時効処理中における表面酸化膜の形成を極力抑制する場合には、水素、窒素またはアルゴン雰囲気を使うことが好ましい。また、時効処理は大気雰囲気で行っても良い。
【0055】
時効処理を大気雰囲気で行うと、TiN層の表面に酸化層が形成される。酸化層の厚みは、時効処理時間が長くなるにつれて厚くなり、形成された酸化層の厚みによって銅合金板材の表面の色が変化する。このような時効処理を行うことによって、母相の強度を向上させることができると共に、銅合金板材の意匠性を向上させることができる。これにより、例えば、加工された銅合金板材が外観に現れる製品において、銅合金板材の色を他部品と同一色にして統一感を生み出したり(装飾性)、色の違いによって銅合金板材の加工や搬送の際に誤った合金材を選択しないようにすることができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上記実施形態では、銅合金材を製造する方法として、板材を例に挙げて説明したが、銅合金材は線材であっても良い。
【0058】
また、一部の複雑な曲げ加工が必要な電子部品を製造する際には、溶体化処理後の軟質な状態でプレス・曲げ加工により銅合金板材を加工した後、プラズマ窒化処理およびさらに時効処理を行っても良い。その後、従来の方法を用いて、コネクター端子を製造しても良い。
【実施例】
【0059】
本発明に係る銅合金材の特性評価を行うため、下記の方法で銅合金板材を製造した。なお、本実施例の実験条件は一例であり、本発明は以下の実験条件に限定されるものではない。
【0060】
まず、Ti:3.2質量%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を950℃に加熱したのち抽出して、熱間圧延を開始した。熱間圧延の最終パス温度は600℃〜500℃の間にあり、熱間圧延終了後は水冷した。熱間圧延開始からのトータルの熱間圧延率は約95%である。熱間圧延後、被圧延材の表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)し、厚さ10mmの圧延板が得られた。次いで、その圧延版に対して圧延率97%で冷間圧延を行った後、得られた厚さ約0.3mmの板材に900℃×1minで溶体化処理して、プラズマ窒化処理に供した。溶体化処理後の平均結晶粒径は約10μmであった。また、各供試材の組成を確認のため分析したところ、Tiの含有率は実施例1が3.22質量%、実施例2が3.18質量%、比較例1が3.20質量%、比較例2が3.24質量%であった。なお、平均結晶粒径は、供試材の圧延方向に垂直に切断した断面を研磨したのちエッチングし、その面を光学顕微鏡で観察し、JIS
H0501の切断法で測定した。
【0061】
プラズマ窒化処理においては、まず、真空度が圧力0.1Paの処理炉において、850℃(実施例1)と800℃(実施例2)の2温度水準まで加熱した後、N2ガスとH2ガスを供給し、炉内をN2とH2混合ガス雰囲気(ガス体積率でNが50%、つまりNとHのガス体積比1:1、ガス雰囲気圧力200Pa)とした。その後、プラズマ電圧500Vで6時間プラズマ窒化処理を実施して供試材を得た。
【0062】
なお、比較例としては、プラズマ窒化処理前の供試材(比較例1)と、480℃の温度でプラズマ窒化処理(ほかの条件は実施例と同様である)を施した供試材(比較例2)を準備した。
【0063】
実施例1,2と比較例1,2の各供試材から試験片を採取して、断面において各分層部の厚さと結晶構造、表面硬さと母相硬さ、耐摩耗性を調べた。
【0064】
試験片の組織、特性の調査は以下の方法で行った。
〔断面観察〕
プラズマ窒化した試験片表面層を集束イオンビーム加工にて断面の薄膜化を行い、透過型電子顕微鏡(TEM)にて25000〜30000倍で観察した。また、電子線回折図形解析より、各分層部の結晶構造を同定した。
【0065】
〔表面硬さと母相硬さ〕
試験片の表面硬さはマイクロビッカース硬さ試験により評価した。試験荷重を10g、荷重負荷時間を10sとした。室温で10点の測定を行って、その平均値を表面硬さとした。試験片の断面中心付近の母相においては、試験荷重を300g、荷重負荷時間を10sで測定したビッカース硬さを母相硬さとした。
【0066】
〔耐摩耗性〕
耐摩耗性を動摩擦摩耗試験法にて評価した。測定装置は、表面性測定器(新東科学(株)製、トライボギア Type:14FW)であり、相手材としてクロム高炭素軸受鋼(SUJ2)を用い、荷重を300g、移動速度を1200mm/min、試験時間を30minとして摩耗試験を行った。摩耗試験後の各試験片の表面粗さをプロファイルメーターで測定し、耐摩耗性については摩耗痕の深さ(摩耗痕付近のプロファイル上の最高点と最低点との差)で評価した。表面粗さのプロファイル上に摩耗痕が見られない場合、摩耗痕の深さを「0」とした。
【0067】
試験片の組織、特性の調査結果は以下の通りである。
【0068】
図1には、実施例1の試験片の断面TEM像および制限視野電子線回折図形を示す。図1に示す通り、試験片の最表面は、厚さ約350nmのTiN層(立方晶: 格子定数a=0.4238nm)であり、その直下が厚さ約2μmのCuTiO層(立方晶: a=1.124nm)であった。図2には、実施例2の試験片の断面TEM像を示す。実施例2の試験片についても、実施例1と同様に、試験片最表面の厚さ約280nmの層がTiN層であると同定でき、その直下が厚さ約400nmのCuTiO層であると同定できた。一方、比較例1と2の断面TEM像には、TiN層とCuTiO層が観察されなかった。
【0069】
図3には、摩耗試験後の表面写真と表面粗さのプロファイルを示す。実施例1の試験片は、摩耗部と周辺の表面粗さプロファイルの違いが分からない程度の優れた耐摩耗性を示す。実施例2の試験片は、摩耗部が若干粗くなる程度で、削れる程の摩耗痕が見られない。
一方、窒化処理を実施しない比較例1の試験片は、表面と内部ともに比較的柔らかいので、摩耗部に約40μm程度の摩耗痕が生じ、摩耗部の周りが凸状になった。比較例2の試験片は、HV280程度の高い硬度を有するにもかかわらず、約35μmの深さの摩耗痕が認められた。
【0070】
以上の結果をまとめると表1のようになる。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す通り、試験片の母相表面にCu3Ti3O層が形成され、Cu3Ti3O層上にTiN層が形成されている場合(実施例1,2)には、Cu3Ti3O層とTiN層が形成されていない場合(比較例1,2)よりも、表面硬さが硬くなることがわかる。また、実施例1と実施例2を比較すると、TiN層とCu3Ti3O層の膜厚が厚い方が、表面硬さを向上させられることがわかる。
【0073】
また、実施例1,2と比較例1,2を比較すると、母相表面にTiN層とCu3Ti3O層が形成された実施例1,2の試験片においては摩耗痕が確認されなかったのに対し、比較例1,2では35μm以上の摩耗痕が確認された。なお、図3に示す実施例2の表面プロファイルを見ると、プロファイル図の中央部に部分的に凹んでいる箇所があり、一見摩耗しているようにも見える。しかし、表面が摩耗している場合には、比較例1や比較例2のようにプロファイルがベースラインに対して均等に凹む状態となることから、実施例2におけるプロファイルの凹みは、計測時のノイズであると判断される。
【0074】
本実施例の結果によれば、Cu−Ti系銅合金材のTi含有量が少なくても、表面にTiN層とCu3Ti3O層が形成されることにより、銅合金材の表面硬さ、耐摩耗性、ひいては耐疲労特性を向上させられることがわかる。
【0075】
(大気雰囲気下における時効処理)
上記実施例1で得られた供試材から複数の試験片を採取し、各試験片に対して大気雰囲気下で時効処理を施した。処理温度は450℃とした。処理時間は試験片ごとに異なる時間(0.5〜64時間)とし、時効処理後の各試験片の表面の色を観察した。その結果を表2に示す。また、時効処理後の各試験片を図4に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示す通り、時効処理時間の違いによって、各試験片の表面の色が変化していくことがわかる。即ち、表中の色およびマンセル値で示されるように、本発明に係る銅合金材は色相が10Y〜(10P)〜10G、明度が1〜10、彩度が1〜14の色調を呈することができる。本実施例のように、プラズマ窒化後のチタン銅合金材を大気雰囲気下で時効処理することによって、母相の強度を向上させることができると共に銅合金材の意匠性を向上させることが可能となる。
【0078】
また、各試験片の表面において薄膜X線回折装置によりCuO/TiNの回折X線を測定し、そのピーク強度比を算出した。なお、測定装置、測定条件は下記の通りである。
測定装置 : PANalytical X’Pert diffractometer
入射X線 : CuKα(波長:0.15418nm)
印加電流 : 45mA、電圧:40kV
X線入射角: 0.5°
測定間隔 : 0.01°
測定範囲 : 20〜80°
【0079】
上記の測定装置および測定条件によりCuO(−111)とTiN(111)の回折ピークを同定し、それぞれのピーク強度(最高回折強度の値−ベースライン強度の値)をICuO、ITiNとした場合におけるX線回折強度比をICuO/ITiNと定義して、複数の試験片のX線回折強度比を算出した。その結果についても表2に示している。表2に示す通り、試験片表面の色調が変化し、意匠性を向上させるためには、X線回折強度比を0.1〜1.0とすることが好ましいことがわかった。
【0080】
また、上記実施例1や上記薄膜X線回折および他の分析結果により、プラズマ窒化後は表面にTiN層(表面層)が形成され、母相と表面層の間にCuTiO層(第二層)が形成されていることがわかった。このため、プラズマ窒化後に大気中で時効処理(熱処理)した試験片には、TiN層(表面層)と第二層としてCuTiOとCuOからなる層が形成されていると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る銅合金材は、コネクター、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品の材料として用いることができる。
図1
図2
図3
図4