(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
上記特許文献2に開示の保護装置は、振動子の第1方向の異常な変位のみならず、振動子の第2方向の異常な変位をも検知して振動子を自動的に停止させるように構成されている。従って、この保護装置は、振動子の第1方向の異常な変位のみを検知する場合に比べて振動子の異常を確実に検知して対処するのに有効である。しかしながら、この保護装置の回動部材は、その回動方向が振動子の直線的な往復振動方向とは異なっており、振動子と相対移動しつつ回動するように構成されている。本構成の場合、振動子の駆動力が回動部材に伝わりにくく保護装置の作動性を高めるのに不利である。
【0006】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、振動子の異常を検知して振動子を自動停止する保護装置を備えた電磁式ポンプにおいて、保護装置の作動性を向上させるのに有効な技術を提供することである。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる電磁式ポンプ(100)は、ダイアフラム(152)と、振動子(140)と、一対の電磁コイル(121a,131a)と、保護装置(200)と、を備える。ダイアフラム(152)は、流体の吸入動作及び吐出動作を行うように弾性変形可能である。振動子(140)は、永久磁石(141a,141b)を有し、ダイアフラム(152)に連結される。一対の電磁コイル(121a,131a)は、振動子(140)を挟んでその両側に配置され、振動子(140)がダイアフラム(152)を弾性変形させつつ往復振動するように当該振動子(140)に磁力を付与する。保護装置(200)は、振動子(140)の異常時に一対の電磁コイル(121a,131a)への電力供給を停止する。この保護装置(200)は、振動子(140)に設けられたストライカー(143)と、ストライカー(143)の移動軸線(L2)上に配置された可動部材(220)と、を備える。可動部材(220)は、振動子(140)の往復振動時の第1方向(X1)の変位が第1基準値(V1)以上である第1の変位状態において、ストライカー(143)との当接によって第1方向(X1)に押圧されて一対の電磁コイル(121a,131a)と電源とを遮断する電源遮断位置(P2)へと振動子(140)と一体となって第1方向(X1)に移動し、振動子(140)が第1方向(X1)と交差する第2方向(Y1)に変位し且つ振動子(140)の往復振動時の第1方向(X1)の変位が第1基準値(V1)よりも小さい第2基準値(V2)以上である第2の変位状態において、前記ストライカー(140)との当接によって第1方向(X1)に押圧されて電源遮断位置(P2)へと振動子(140)と一体となって第1方向(X1)に移動するように構成される。
【0008】
本構成の保護装置は、振動子の第1方向の異常な変位のみならず、振動子の第2方向の異常な変位をも検知して振動子を自動的に停止させることができる。従って、振動子の第1方向の異常な変位のみを検知する場合に比べて振動子の異常を確実に検知して対処するのに有効である。特に、第2の変位状態のときにストライカーが可動部材に当接するまでの振動子の第1方向の変位が第1の変位状態のときの当該変位を下回る。要するに、第2の変位状態のときは、第1の変位状態のときよりも第1方向の変位が小さくても保護装置が作動する。これにより、第2の変位状態において振動子が第2方向に変位した場合に、当該振動子が電磁コイルに接触するのを防止することができ、或いは当該振動子が電磁コイルに接触したとしてもその接触時間を短く抑えることができる。更に、可動部材は、第1の変位状態及び第2の変位状態のいずれも場合でも、ストライカーによって押圧されて振動子と同方向に振動子と一体となって移動するように構成されている。これにより、振動子が一対の電磁コイルから受ける磁気力と当該振動子の慣性力との合力が駆動力となって可動部材に伝わる。その結果、可動部材を電源遮断位置へと確実に移動させることができ、保護装置の作動性を高めることができる。
【0009】
上記構成の電磁式ポンプ(100)では、可動部材(220)は、第2方向(Y2)に延在する係合アーム(224)と、第2方向(Y2)に挿入空間(227)を隔てて互いに離間した状態で係合アーム(224)から第1方向(X1)と第2方向(Y1)の双方と交差する方向に延出する2つの係合突部(225,226)と、を備えるのが好ましい。この可動部材(220)の2つの係合突部(225,226)は、互いに対向する領域に挿入空間(227)を有するゲート構造を構成する。ストライカー(143)は、係合アーム(224)に対向し且つ第2方向(Y1)の大きさが挿入空間(227)を下回るように構成された第1係合部(143a)と、第1方向(X1)について第1係合部(143a)よりも係合アーム(224)から離間した第2係合部(143b)と、を備えるのが好ましい。この場合、振動子(140)の第1の変位状態において、ストライカー(143)の第1係合部(143a)が可動部材(220)の挿入空間(227)に入り込み且つストライカー(143)の第2係合部(143b)が可動部材(220)の係合アーム(224)に当接するのが好ましい。また、振動子(140)の第2の変位状態において、振動子(140)が第1の変位状態のときを下回る変位で第1方向(X1)に動いたときにストライカー(143)の第1係合部(143a)が可動部材(220)の2つの係合突部(225,226)のいずれか一方に当接するのが好ましい。本構成によれば、ゲート構造を有する可動部材を用いることによって、可動部材の構造を簡素化することができる。
【0010】
上記構成の電磁式ポンプ(100)では、ストライカー(143)は、第1係合部(143a)及び第2係合部(143b)が一体状に構成され、且つ第1係合部(143a)のうち可動部材(220)の2つの係合突部(225,226)のいずれか一方に当接する第1係合面(144)と、第2係合部(143b)のうち可動部材(220)の係合アーム(224)に当接する第2係合面(145)とによって段差構造を構成するのが好ましい。本構成によれば、ストライカーの構造を簡素化することができる。
【0011】
上記構成の電磁式ポンプ(100)では、可動部材(220)の係合アーム(224)及び2つの係合突部(225,226)は、第1方向(X1)の板厚が一様な平板形状の部位によって構成されるのが好ましい。本構成によれば、可動部材の構造を簡素化することができる。
【0012】
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、振動子の異常を検知してポンプを停止させる保護装置を備えた電磁式ポンプにおいて、保護装置の作動性を向上させることが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電磁式ポンプの一実施の形態について図面に基づいて説明する。この電磁式ポンプは、典型的には、浄化槽において被処理水に空気を供給するためのエアポンプ、浄化槽において被処理水を移送するためのエアリフトポンプに駆動用の空気を供給するためのエアポンプとして使用される。
【0016】
電磁式ポンプの説明のための図面では、この電磁式ポンプの前後方向(第1方向)を矢印Xで示し、左右方向(第2方向)を矢印Yで示し、上下方向(第3方向)を矢印Zで示している。尚、前後方向Xを左右方向といい、且つ左右方向Yを前後方向ということもできる。前後方向Xは、電磁式ポンプの左右方向Y及び上下方向Zの双方に交差する方向である。この前後方向Xは、電磁式ポンプを構成する後述の振動子が直線的に往復振動する方向に概ね合致している。この前後方向Xのうち、振動子の所定の変位方向を矢印X1で示し、変位方向X1とは反対方向を矢印X2で示している。左右方向Yは、電磁式ポンプの前後方向X及び上下方向Zの双方に交差する方向である。この左右方向Yのうち振動子の所定の変位方向を矢印Y1で示している。
【0017】
図1に示されるように、電磁式ポンプ100は、ポンプ構成要素を収容するケーシング101を備えている。ポンプ構成要素には、ポンプ機構110及び保護装置200が含まれている。ポンプ機構110は、概して流体としての空気を吸入し、圧縮して高圧化し、吐出する機能を果たす。このポンプ機構110は、防振手段(防振ゴムなど)を介してポンプ基台プレート(図示省略)上に配置されている。保護装置200は、概してポンプ保護を図るために、ポンプ機構110(後述の振動子140)の異常を検知して当該ポンプ機構110を停止する機能を果たす。この保護装置100は、ポンプ機構110を自動停止するオートストッパーとも称呼される。
【0018】
ポンプ機構110は、金属板状の2つの電磁石ケース板111a,111aによって構成された電磁石ケース111を備えている。この電磁石ケース111では、2つの電磁石ケース板111a,111aが対向する対向空間に一対の電磁石(ソレノイド)120,130が収容されている。この電磁石ケース111は、電磁石120,130に接触することによって、電磁石120,130による磁気経路を構成している。一方の電磁石120と他方の電磁石130は、左右方向Yについて間隙112を隔てて配置されている。間隙112には、振動子140がこれら電磁石120,130と接触しないように設けられている。電磁石ケース111の前後方向Xの両側にはそれぞれダイアフラム機構150が設けられている。ダイアフラム機構150は、振動子140の本体部141に連結されている。
【0019】
電磁石120は、電磁石ボビン121及び電磁石コア122を備えている。電磁石ボビン121には、電磁コイル(「励磁コイル」ともいう)121aが巻かれている。電磁石ボビン121の挿入空間に電磁石コア122の一部が挿入されている。これにより、電磁コイル121aは、電磁石コア122に保持されている。この電磁石120と同様に、電磁石130は、電磁石ボビン131及び電磁石コア132を備えている。電磁石ボビン131には、電磁コイル(「励磁コイル」ともいう)131aが巻かれている。電磁石ボビン131の挿入空間に電磁石コア132の一部が挿入されている。これにより、電磁コイル131aは、電磁石コア132に保持されている。電磁石120の電磁コイル121aと電磁石130の電磁コイル131aとの協働によって振動子140に対し駆動用の磁力(「磁気力」ともいう)が付与される。その結果、振動子140は、2方向X1,X2に往復振動する。電磁コイル121a及び電磁コイル131aは、振動子140を挟んでその両側に配置され、振動子140が後述のダイアフラム152を弾性変形させつつ往復振動するように当該振動子140に磁力を付与するものであり、本発明の「一対の電磁コイル」に相当する。
【0020】
電磁石ボビン121は、いずれも金属製の接続端子123及び接続端子124を備えている。接続端子123は、電磁コイル121aの一方のコイル端部121bを、交流電源(図示省略)の正極である(+)側の接続配線102に接続する機能を果たす。これに対して、接続端子124は、電磁コイル121aの他方のコイル端部121cを、後述の保護装置200の端子板215に接続する機能を果たす。この電磁石ボビン121と同様に、電磁石ボビン131は、いずれも金属製の接続端子133及び接続端子134を備えている。接続端子133は、電磁コイル131aの一方のコイル端部131bを、交流電源(図示省略)の負極である(−)側の接続配線103に接続する機能を果たす。これに対して、接続端子134は、電磁コイル131aの他方のコイル端部131cを、後述の保護装置200の端子板216に接続する機能を果たす。
【0021】
交流電源から電力が供給される電力供給経路には、(+)側から(−)側に向けて順に、接続配線102、電磁コイル121a、保護装置200(端子板215及び端子板216)、電磁コイル131a、接続配線103が直列状に配置されている。従って、保護装置200の端子板215及び端子板216が接触した状態でこの電力供給経路に電力が供給されると、電磁石120,130の電磁コイル121a,131aに交流電源の周波数と同一回数の磁極の変化(極性変化)が生じる。この磁極の変化が、本体部141に永久磁石(N極及びS極)141a,141bが埋設された振動子140の往復振動を生じさせる。また、この振動子140の往復振動に伴ってダイアフラム機構150,150が作動する。
【0022】
ダイアフラム機構150は、本体部151及びダイアフラム152を備えている。ダイアフラム152は、電磁式ポンプの左右方向Y及び上下方向Zの双方によって規定される平面上に延在する円盤状の部材である。このダイアフラム152の外周縁が本体部151に止着されている。このダイアフラム152は、空気の吸入動作及び吐出動作を行うように弾性変形可能なゴム材料によって形成されている。このダイアフラム152の中央部分は、いずれも振動子140の連結用シャフト142に固定された第1センタープレート153及び第2センタープレート154によって両面から挟み込まれている。このため、ダイアフラム152は、第1センタープレート153及び第2センタープレート154を介して振動子140に間接的に連結されている。このダイアフラム152が本発明の「ダイアフラム」に相当する。
【0023】
ダイアフラム機構150の電磁石ケース111とは反対側に弁ケース体113が設けられている。弁ケース体113は、吸入室114、吐出室115及び圧縮室116を備えている。吸入室114は、吸入ポート(図示省略)からポンプ外部の空気を吸入空気として吸入するための空間である。圧縮室116は、吸入室114から吸入した吸入空気を圧縮するための空間である。吐出室115は、圧縮室116で圧縮した圧縮空気を吐出ポート(図示省略)に向けて吐出するための空間である。弁ケース体113は、吸入室114と圧縮室116とを区画する区画壁113aを備えている。この区画壁113aのうち圧縮室116側の部位に吸入弁117が設けられている。吸入弁117は、弾性を有するゴム材料によって構成され、区画壁113aに形成された連通孔113bの開放及び閉鎖を行う吸入用の弁体(吸入弁機構)を有する。弁ケース体113は、吐出室115と圧縮室116とを区画する区画壁113cを備えている。この区画壁113cのうち吐出室115側の部位に吐出弁118が設けられている。吐出弁118は、吸入弁117と同様に弾性を有するゴム材料によって構成され、区画壁113cに形成された連通孔113dの開放及び閉鎖を行う吐出用の弁体(吐出弁機構)を有する。
【0024】
吸入弁117の弁体の開放状態では、吸入室114と圧縮室116とが互いに連通する。これに対して、吸入弁117の弁体の閉鎖状態では、吸入室114と圧縮室116との連通が阻止される。従って、吸入弁117の弁体の開放状態においてのみ吸入室114から圧縮室116へと吸入空気が流入する。一方で、吐出弁118の弁体の開放状態では、吐出室115と圧縮室116とが互いに連通する。これに対して、吐出弁118の弁体の閉鎖状態では、吐出室115と圧縮室116との連通が阻止される。従って、吸入弁118の弁体の開放状態においてのみ圧縮室116から吐出室115へと圧縮空気が流入する。
【0025】
図2に示されるように、振動子140は、左右方向Yの側面視が方形であり極性の異なる永久磁石(N極及びS極)141a,141bが埋設された本体部141を備えている。本体部141は、前後方向Xの両端部に連結用シャフト142を備えており、この連結用シャフト142を介してダイアフラム152に連結されている。この振動子140が本発明の「振動子」に相当する。本体部141の上端面には、保護装置200を作動させるための左右一対のストライカー143,143が設けられている。このストライカー143が本発明の「ストライカー」に相当する。
【0026】
左右一対のストライカー143,143は、前後方向Xに互いに離間し且つ上下方向Zに沿って延びる中心線L1について線対称となるように配置されている。ストライカー143は、振動子140の本体部141の上端面から突出するように本体部141と一体状に構成されている。このストライカー143は、第1係合部143aと、第1係合部143aよりも高所まで突出した第2係合部143bとが一体化された形状を有する。これにより、ストライカー143は、左右方向Yから視た場合の平面形状が略L字形状をなしている。ストライカー143は、左右方向Yの板厚が一様な平板形状をなしている。従って、第1係合部143a及び第2係合部143bは、左右方向Yの板厚が一様な平板形状の部位によって構成されている。第1係合部143a及び第2係合部143bがそれぞれ、本発明の「第1係合部」及び「第2係合部」に相当する。ストライカー143は、第1係合部143aのうち2つの係合突部225,226のいずれか一方に当接する第1係合面144と、第2係合部143bのうち係合アーム224に当接する第2係合面145とによって段差構造を構成している。本構成によれば、ストライカー143の構造を簡素化することができ、安価な振動子140を実現することができる。
【0027】
尚、振動子140の本体部141の下端面には、左右一対のストライカー146,146が設けられている。ストライカー146は、振動子140の本体部141の下端面から突出するように本体部141と一体状に構成されている。ストライカー146は、ストライカー143と同様に、左右方向Yの板厚が一様な平板形状をなしている。ストライカー146は、振動子140を上下反転させて別の仕様の電磁式ポンプに使用する際にストライカー143に代えて使用される部位である。ストライカー146は、ストライカー143と実質的に同一の機能を発揮する。これにより、1つの振動子140を複数の電磁式ポンプに共通の部品として使用することができる。
【0028】
上記構成のポンプ機構110では、交流電源に接続された電磁石120,130の極性変化に伴い振動子140が2方向X1,X2に往復振動すると、この振動子140の前後方向Xの両側にそれぞれ位置するダイアフラム152は、当該振動子140の往復振動に同期して弾性変形する。即ち、ダイアフラム152は、その外周部分が本体部151側に固定された状態で、その中央部分が振動子140によって前後方向Xに引っ張られたり押し込まれたりする。その結果、ダイアフラム152は、振動子140のストロークと同じ変位量で前後方向Xに弾性変形する。
【0029】
図1が参照されるように、振動子140の第1方向X1への動作時に、左側のダイアフラム152が第1方向X1に弾性変形した場合、左側の圧縮室116が加圧される。この加圧によって左側の吸入弁117が閉鎖され且つ左側の吐出弁118が開放された状態になるため、左側の圧縮室116から連通孔113dを通じて左側の吐出室115へと圧縮空気が吐出される(吐出動作)。また、振動子140の第1方向X1への動作時に、右側のダイアフラム152が第1方向X1に弾性変形した場合、右側の圧縮室116が負圧になる。この負圧によって右側の吐出弁118が閉鎖され且つ右側の吸入弁117が開放された状態になるため、右側の吸入室114から連通孔113bを通じて右側の圧縮室116に空気が吸入される(吸入動作)。一方で、振動子140の第1方向X1とは反対方向X2への動作時に、右側のダイアフラム152が反対方向X2に弾性変形した場合、右側の圧縮室116が加圧される。この加圧によって右側の吸入弁117が閉鎖され且つ右側の吐出弁118が開放された状態になるため、右側の圧縮室116から連通孔113dを通じて右側の吐出室115へと圧縮空気が吐出される(吐出動作)。また、振動子140の反対方向X2への動作時に、左側のダイアフラム152が反対方向X2に弾性変形した場合、左側の圧縮室116が負圧になる。この負圧によって左側の吐出弁118が閉鎖され且つ左側の吸入弁117が開放された状態になるため、左側の吸入室114から連通孔113bを通じて左側の圧縮室116に空気が吸入される(吸入動作)。上記のように、前後のダイアフラム152,152のそれぞれにおいて前述のような吸入動作及び吐出動作が交互に繰り返されることによって、所定の圧力及び流量の圧縮空気が連続的に吐出される。
【0030】
図3〜
図5が参照されるように、保護装置200は、ホルダ210及び可動部材220を備えている。これらホルダ210及び可動部材220は、いずれも樹脂材料によって構成されている。ホルダ210は、前後方向X及び左右方向Yの双方によって規定される平面に沿って延在している。このホルダ210は、可動部材220を保持しつつ前後方向Xのスライド移動を許容するスライド溝(スリット)211を備えている。詳細については後述するが、可動部材220は、そのアーム部222の係合アーム224の左右方向Yの一端に第1突起228を備え、係合アーム224の左右方向Yの他端に第2突起229を備えている。この可動部材220が本発明の「可動部材」に相当する。
【0031】
図3に示されるように、ホルダ210には、いずれも可撓性且つ導電性の金属平板よって構成された端子板215及び端子板216が取り付けられている。端子板215は、接続端子124を介して電磁コイル121aのコイル端部121cに電気的に接続されている。端子板216は、接続端子134を介して電磁コイル131aのコイル端部131cに電気的に接続されている。従って、端子板215の接点215aと端子板216の接点216aとが互いに接触することによって、接続配線102から接続配線103までの電力供給経路に電力が供給されてポンプ機構110が駆動される。
【0032】
図4に示されるように、ホルダ210のスライド溝211は、前後方向Xに延在する第1溝部212と、第1溝部212の前後方向Xの中央部分において交差しつつ左右方向Yに延在する第2溝部213とによって構成されている。第1溝部212は、可動部材220を前後方向Xにガイドする機能を果たす。第2溝部213は、スライド溝211のうち可動部材220のアーム部222が挿入される領域である。ホルダ210のホルダ表面には、第2溝部213の左右方向Yの延長線上に位置決め用表示210aが設けられている。また、ホルダ210は、ホルダ裏面から下向きに延出する係止片214を備えている。この係止片214は、第2溝部213の近傍に設けられている。可動部材220のアーム部222を第2溝部213に挿入する際、位置決め用表示210aに可動部材220の操作部221に設けられた後述の位置決め用表示221aを合わせ、且つ可動部材220のアーム部222の位置を第2溝部213に沿って合わせる。これにより、可動部材220を初期位置に確実にガイドすることができる。可動部材220は、そのアーム部222が第2溝部213に挿入されることによってホルダ210における所定の初期位置に装着される。可動部材220が初期位置にあるとき、第2溝部213に沿って第1突起228及び第2突起229が配置される。
【0033】
図5に示されるように、可動部材220が初期位置P1にあるとき、端子板216の接点216aは端子板215の接点215aに接触するように可動部材220の第1突起228によって押圧される。また、可動部材220が初期位置P1に設定されると、第2突起229が係止片214に係合する。このとき、可動部材220の第2突起229は、係合アーム224が接点216aから受ける弾性回復力によって係止片214に強く押し付けられる。従って、可動部材220のアーム部222は、左右方向Yについて端子板216の接点216aと係止片214とによって挟み込まれる。その結果、可動部材220を初期位置P1に確実に係止することができる。
【0034】
図6に示されるように、振動子140のストライカー143は、左右方向Yについて所定の板幅D1を有する平板状に構成されている。ストライカー143は、第1係合面144の上下方向Zの高さがH1であり、第2係合面145の上下方向Zの高さがH2である。従って、これら高さH1及び高さH2を加えた値がストライカー143の上下方向Zの高さ(最大高さ)になる。
【0035】
可動部材220は、操作部221及びアーム部222を備えている。操作部221は、可動部材220をホルダ210に組み付ける際に作業者の手指によって操作される。この操作部221の上面に前記の位置決め用表示221aが設けられている。アーム部222は、操作部221の下面から延出している。このアーム部222は、一体状の延出アーム223及び係合アーム224を備えている。
【0036】
延出アーム223は、操作部221の下面から下向きに延出している。延出アーム223の延出先端側の領域223aに前記の第2突起229が設けられている。係合アーム224は、左右方向Yに延在している。係合アーム224は、振動子140のストライカー143,143の移動軸線L2上であり、ストライカー143のうち第1係合面144よりも高所に位置する第2係合面145に相当する高さに配置されている。この係合アーム224が本発明の「係合アーム」に相当する。係合アーム224のうち領域223aとは反対側の領域224aに前記の第1突起228が設けられている。これら延出アーム223及び係合アーム224は、前後方向Xから視た場合の平面形状が略L字形状をなしている。
【0037】
係合アーム224は、第1係合突部225及び第2係合突部226を備えている。これら第1係合突部225及び第2係合突部226は、左右方向Yに挿入空間227を隔てて互いに離間した状態で係合アーム224から下向き(前後方向Xと左右方向Yの双方と交差する方向)に延出している。即ち、第1係合突部225及び第2係合突部226は、互いに対向する領域に下方が開口した挿入空間227を有する構造(以下、「ゲート構造」ともいう)を構成している。本構成によれば、ゲート構造を有する可動部材220を用いることによって、可動部材220の構造を簡素化することができる。これら第1係合突部225及び第2係合突部226が本発明の「2つの係合突部」に相当する。また、可動部材220の延出アーム223、係合アーム224及び2つの係合突部225,226は、前後方向Xの板厚が一様な平板形状の部位によって構成されている。本構成によれば、可動部材220の構造を更に簡素化することができ、安価な可動部材220を実現することができる。
【0038】
ストライカー143の第1係合部143aは、係合アーム224に対向し且つ左右方向Yの大きさである幅D1が挿入空間227の空間幅D2を下回るように構成されている。従って、ストライカー143,143の移動軸線L2上に可動部材220の挿入空間227が位置する場合、可動部材220に対する振動子140の前後方向Xの動作によって、ストライカー143の第1係合部143a(第1係合面144を有する部位)が挿入空間227に入り込む(係合アーム224の下方に潜る)ことができる。ストライカー143の第2係合部143bは、第1係合部143aと同一の幅D1を備え、前後方向Xについて第1係合部143aよりも係合アーム224から離間している。
【0039】
以下、上記構成の保護装置200の動作について
図7〜
図15を参照しながら説明する。この保護装置200は、振動子140の異常時(以下、「ポンプ異常時」ともいう)に一対の電磁コイル121a,131aへの電力供給を停止するように動作する。この保護装置200が本発明の「保護装置」に相当する。尚、本実施の形態において、「ポンプ異常時」とは、ダイアフラム152の破損等の原因によって、ポンプ機構110が正常に動いている状態(以下、「ポンプ正常時」ともいう)とは異なる態様で振動子140が往復振動する状態をいう。
【0040】
振動子140は、ポンプ正常時において所定の通常ストロークで前後方向Xに往復振動する。これに対して、振動子140は、ポンプ異常時においては、ポンプ正常時よりも前後方向Xに大きく変位しつつ往復振動する場合(以下、「第1の変位状態」ともいう)、及びポンプ正常時よりも左右方向Yに偏った状態で前後方向Xに往復振動する場合(以下、「第2の変位状態」ともいう)がある。第1の変位状態では、振動子140が前後方向Xに大きく変位して他の部品に接触するような不具合が生じ得る。第2の変位状態では、振動子140が左右方向Yのいずれか一方向に偏ることによって電磁コイル121a或いは電磁コイル131aに接触するような不具合が生じ得る。そこで、本実施の形態の保護装置200は、これら第1の変位状態及び第2の変位状態のいずれにも対処できる機能を有することを特徴としている。
【0041】
(ポンプ正常時)
図7に示されるように、ポンプ正常時において、可動部材220の挿入空間227は、前後方向Xについて振動子140のストライカー143,143の移動軸線L2上に位置している。このときの振動子140の第1方向X1の変位(「ストローク」ともいう)は、振動子140の第2係合面145が可動部材220の係合アーム224に当接するときの変位を下回る。従って、振動子140の前後のストライカー143,143はいずれも、可動部材220の挿入空間227に入り込まないか、或いは
図8に示されるようにストライカー143の第1係合部143a(第1係合面144を有する部位)が可動部材220の挿入空間227に入り込む。この場合、振動子140の前後のストライカー143,143はいずれも可動部材220の係合アーム224に干渉しないため保護装置200は作動せず、可動部材220が初期位置P1に維持される。可動部材220が初期位置P1に位置する場合、接点216aと接点215aとの接触が維持されることによって、一対の電磁コイル121a,131aと交流電源とが遮断されない。その結果、振動子140の往復振動が継続されることによって、前後のダイアフラム152,152による前述の吸入動作及び吐出動作が正常に行われる。
【0042】
(第1の変位状態)
図9に示されるように、振動子140は、第1の変位状態においてポンプ正常時の変位を上回る変位で第1方向X1に移動する。このとき、振動子140は第2方向Y1に変位していないため、ストライカー143,143が可動部材220の挿入空間227の移動軸線L2上に位置する状態が維持されている。従って、振動子140が第1方向X1に動いたとき、
図10に示されるように、一方のストライカー143の第1係合部143aが可動部材220の挿入空間227に入り込み、且つストライカー143の第2係合部143bが第2係合面145にて可動部材220の係合アーム224に当接してこの係合アーム224を第1方向X1に押圧する。尚、他方のストライカー143は、第1方向X1とは反対方向X2に変位したときに可動部材220の係合アーム224に当接する。そして、
図11に示されるように、振動子140の往復振動時の第1方向X1の変位が第1基準値V1以上である第1の変位状態において、可動部材220は、ストライカー143との当接によって第1方向X1に押圧されて初期位置P1から電源遮断位置P2へと振動子140と一体となって第1方向X1に移動する。可動部材220が電源遮断位置P2まで移動する過程では、
図12に示されるように、端子板216の接点216aはその弾性力にしたがって撓み変形前の位置まで矢印R方向に回動する。従って、可動部材220の電源遮断位置P2では、接点216aと接点215aとの接触が解除されることによって、一対の電磁コイル121a,131aと交流電源とが遮断される。その結果、振動子140の往復振動が停止することによって、前後のダイアフラム152,152による前述の吸入動作及び吐出動作が中止される。
【0043】
(第2の変位状態)
図13に示されるように、振動子140は、第2の変位状態において左右方向Yのうちの一方の第2方向Y1に変位量ΔYで変位した偏り状態になる。このとき、可動部材220の挿入空間227は、ストライカー143,143の移動軸線L2から左右方向Yに外れた位置にある。従って、振動子140が第2方向Y1に変位量ΔYで変位し且つ第1の変位状態のときを下回る変位で第1方向X1に変位したとき、
図14に示されるように、一方のストライカー143の第1係合部143aが第1係合面144にて可動部材220の第2係合突部226に当接してこの第2係合突部226を第1方向X1に押圧する。尚、振動子140が第2方向Y1とは反対側に変位した状態では、ストライカー143の第1係合部143aは、可動部材220の第1係合突部225に当接してこの第1係合突部225を第1方向X1に押圧する。そして、
図15に示されるように、振動子140が第2方向Y1に変位量ΔYで変位し且つ振動子140の往復振動時の第1方向X1の変位が第1基準値V1よりも小さい第2基準値V2以上である第2の変位状態において、可動部材220は、ストライカー143との当接によって第1方向X1に押圧されて初期位置P1から電源遮断位置P2へと振動子140と一体となって第1方向X1に移動する。その結果、
図12に示される第1の変位状態の場合と同様に、接点216aと接点215aとの接触が解除されることによって、一対の電磁コイル121a,131aと交流電源とが遮断される。
【0044】
上述のように、本実施の形態の保護装置200は、振動子140の第1方向X1の異常な変位のみならず、振動子の第2方向Y1の異常な変位をも検知して振動子140を自動停止する。従って、振動子140の第1方向X1の異常な変位のみを検知する場合に比べて振動子140の異常を確実に検知して対処するのに有効である。特に、第2の変位状態のときにストライカー143が可動部材220に当接するまでの振動子の第1方向X1の変位が第1の変位状態のときの当該変位を下回る。要するに、第2の変位状態のときは、第1の変位状態のときよりも第1方向X1の変位が小さくても保護装置200が作動する。これにより、第2の変位状態において振動子140が第2方向Y1に変位した場合に、当該振動子140が電磁コイル121a,131aに接触するのを防止することができ、或いは当該振動子140が電磁コイル121a,131aに接触したとしてもその接触時間を短く抑えることができる。更に、可動部材220は、第1の変位状態及び第2の変位状態のいずれも場合でも、ストライカー143によって押圧されて振動子140と同方向に振動子140と一体となって移動するように構成されている。これにより、振動子140が一対の電磁コイルから受ける磁力と当該振動子140の慣性力との合力が駆動力となって可動部材220に効率良く伝達される。その結果、可動部材220を電源遮断位置P2へと確実に移動させることができ、保護装置200の作動性を高めることができる。
【0045】
また、この保護装置200は、前記の段差構造を有する振動子140と前記のゲート構造を有する可動部材220とを組み合わせることによって、第2の変位状態のときにストライカー143が可動部材220に当接するまでの振動子140の第1方向X1の変位が第1の変位状態のときの当該変位を下回るように構成されている。本構成は、本実施の形態の保護装置200以外の構造によっても実現が可能である。例えば、振動子140の段差構造と同様の構造を可動部材220側に設け、且つ可動部材220のゲート構造と同様の構造を振動子140側に設けることができる。
【0046】
また
、参考例として、図16に示される構成のストライカー343及び可動部材420を採用することもできる。この図面において、
図6に示されている要素と同一の要素には同一の符号を付しており、また当該要素についての説明は省略する。ストライカー343は、前記の段差構造を有するストライカー143とは異なり、左右方向Yの側面視が方形であり且つ左右方向Yについて所定の板幅D1を有する平板状に構成されている。可動部材420の係合アーム224は、第1係合突部425及び第2係合突部426を備えている。これら第1係合突部425及び第2係合突部426は、左右方向Yに空間幅D2の挿入空間427を隔てて互いに離間した状態で係合アーム224から前後方向Xに延出している。本構成によれば、第1の変位状態において振動子140が第1方向X1に変位したとき、実線で示されているストライカー343は、可動部材420の挿入空間427に入り込み、且つ可動部材420の係合アーム224に当接してこの係合アーム224を第1方向X1に押圧する。一方で、第2の変位状態において振動子140が第2方向Y1に変位し且つ第1の変位状態のときを下回る変位で第1方向X1に変位したとき、二点鎖線で示されているストライカー343は、可動部材220の第2係合突部426に当接してこの第2係合突部426を第1方向X1に押圧する。従って
、上記参考例によれば、ストライカー343及び可動部材420を採用した場合でも、ストライカー143及び可動部材220を採用した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0048】
上記実施の形態では、第1係合部143a及び第2係合部143bが一体状に構成されたストライカー143について記載したが、本発明では、ストライカーにおいて第1係合部及び第2係合部を別体とし、第1方向について第1係合部と第2係合部を互いに離間させた構造を採用することもできる。
【0049】
上記実施の形態では、振動子140の本体部141の上端面に一対のストライカー143,143を設け、且つ振動子140の本体部141の下端面に一対のストライカー146,146を設ける場合について記載したが、本発明では一対のストライカー146,146を省略してもよい。更に、一対のストライカー143,143のいずれか一方を省略してもよい。また、ストライカー143及びストライカー146の形状として、板厚が一様な平板形状を採用したが、本発明では必要に応じて平板形状以外の種々の形状を採用することもできる。
【0050】
上記実施の形態では、振動子140の両端部のそれぞれにダイアフラム152が連結された磁式ポンプ100について記載したが、振動子140の一端部にのみダイアフラム152が連結された電磁式ポンプに対して本発明を適用することもできる。
【0051】
上記実施の形態では、可動部材220の延出アーム223、係合アーム224及び2つの係合突部225,226は、前後方向Xの板厚が一様な平板形状の部位によって構成される場合について記載したが、本発明では、可動部材220のこれらの各部位の形状を必要に応じて変更することもできる。
【0052】
上記実施の形態では、流体の1つである空気の吸入動作及び吐出動作を行う電磁式ポンプ100について記載したが、空気以外の気体や液体を扱う電磁式ポンプに対して本発明を適用することもできる。