(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
図1は、実施形態の半導体発光装置の模式断面図である。
図2(a)は、実施形態の半導体発光装置におけるp側電極16と、n側電極17との平面レイアウトの一例を示す模式平面図である。
図1は、
図2(a)におけるA−A’断面に対応する。
図2(a)は、
図1における配線部41、43、樹脂層25、絶縁膜18、および反射膜51を取り除いて半導体層15の第2の側15bを見た図に対応する。
図2(b)は、実施形態の半導体発光装置の実装面(
図1の半導体発光装置の下面)の一例を示す模式平面図である。
【0010】
実施形態の半導体発光装置は、発光層13を有する半導体層15を備えている。半導体層15は、第1の側15aと、その反対側の第2の側15bとを有する。
【0011】
半導体層15の第2の側15bは、発光層13を含む部分(発光領域)15eと、発光層13を含まない部分(非発光領域)15fとを有する。発光層13を含む部分15eは、半導体層15のうちで、発光層13が積層されている部分である。発光層13を含まない部分15fは、半導体層15のうちで、発光層13が積層されていない部分である。発光層13を含む部分15eは、発光層13の発光光を外部に取り出し可能な積層構造となっている領域を示す。
【0012】
第2の側15bにおいて、発光層13を含む部分15eの上に、第1の電極としてp側電極16が設けられ、発光層を含まない部分15fの上に、第2の電極としてn側電極17が設けられている。
【0013】
図2(a)に示す例では、発光層13を含まない部分15fが発光層13を含む部分15eを囲んでおり、n側電極17がp側電極16を囲んでいる。
【0014】
p側電極16とn側電極17とを通じて発光層13に電流が供給され、発光層13は発光する。そして、発光層13から放射される光は、第1の側15aから半導体発光装置の外部に出射される。
【0015】
半導体層15の第2の側15bには、
図1に示すように支持体100が設けられている。半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子は、第2の側15bに設けられた支持体100によって支持されている。
【0016】
半導体層15の第1の側15aには、半導体発光装置の放出光に所望の光学特性を与える蛍光体層30(光学層)が設けられている。蛍光体層30は、発光層13の放射光に対して透過性を有する。
【0017】
例えば、蛍光体層30と、半導体層15との間には、密着性を有する絶縁層19(透明層)が設けられている。蛍光体層30は、例えば半導体層15と接していてもよい。
【0018】
蛍光体層30は、複数の粒子状の蛍光体31を含む。蛍光体31は、発光層13の放射光により励起され、その放射光とは異なる波長の光を放射する。
【0019】
複数の蛍光体31は、結合材32により一体化されている。結合材32は、発光層13の放射光および蛍光体31の放射光を透過する。ここで「透過」とは、透過率が100%であることに限らず、光の一部を吸収する場合も含む。
【0020】
半導体層15は、第1の半導体層11と、第2の半導体層12と、発光層13とを有する。発光層13は、第1の半導体層11と、第2の半導体層12との間に設けられている。第1の半導体層11および第2の半導体層12は、例えば、窒化ガリウムを含む。
【0021】
第1の半導体層11は、例えば、下地バッファ層、n型GaN層を含む。第2の半導体層12は、例えば、p型GaN層を含む。発光層13は、青、紫、青紫、紫外光などを発光する材料を含む。発光層13の発光ピーク波長は、例えば、430〜470nmである。
【0022】
半導体層15の第2の側15bは、凹凸形状に加工される。その凸部は、発光層13を含む部分15eであり、凹部は、発光層13を含まない部分15fである。発光層13を含む部分15eの表面は第2の半導体層12の表面であり、第2の半導体層12の表面にp側電極16が設けられている。発光層13を含まない部分15fの表面は第1の半導体層11の表面であり、第1の半導体層11の表面にn側電極17が設けられている。
【0023】
半導体層15の第2の側15bにおいて、発光層13を含む部分15eの面積は、発光層13を含まない部分15fの面積よりも広い。また、発光層13を含む部分15eの表面に設けられたp側電極16の面積は、発光層13を含まない部分15fの表面に設けられたn側電極17の面積よりも広い。これにより、広い発光面が得られ、光出力を高くできる。
【0024】
図2(a)に示すように、n側電極17は例えば4本の直線部を有し、そのうちの1本の直線部には、その直線部の幅方向に突出したコンタクト部17cが設けられている。そのコンタクト部17cの表面には、
図1に示すようにn側配線層22のビア22aが接続される。
【0025】
半導体層15の第2の側15b、p側電極16およびn側電極17は、
図1に示すように、絶縁膜18で覆われている。絶縁膜18は、例えば、シリコン酸化膜などの無機絶縁膜である。絶縁膜18は、発光層13の側面及び第2の半導体層12の側面にも設けられ、それら側面を覆っている。
【0026】
また、絶縁膜18は、半導体層15における第1の側15aから続く側面(第1の半導体層11の側面)15cにも設けられ、その側面15cを覆っている。
【0027】
さらに、絶縁膜18は、半導体層15の側面15cの周囲のチップ外周部にも設けられている。チップ外周部に設けられた絶縁膜18は、第1の側15aで、側面15cから遠ざかる方向に延在している。
【0028】
第2の側15bの絶縁膜18上には、第1の配線層としてのp側配線層21と、第2の配線層としてのn側配線層22とが互いに分離して設けられている。絶縁膜18には、p側電極16に通じる複数の第1の開口と、n側電極17のコンタクト部17cに通じる第2の開口とが形成される。なお、第1の開口は、より大きな1つの開口でも良い。
【0029】
p側配線層21は、絶縁膜18上および第1の開口の内部に設けられている。p側配線層21は、第1の開口内に設けられたビア21aを介してp側電極16と電気的に接続されている。
【0030】
n側配線層22は、絶縁膜18上および第2の開口の内部に設けられている。n側配線層22は、第2の開口内に設けられたビア22aを介してn側電極17のコンタクト部17cと電気的に接続されている。
【0031】
p側配線層21及びn側配線層22が、第2の側の領域の大部分を占めて絶縁膜18上に広がっている。p側配線層21は、複数のビア21aを介してp側電極16と接続している。
【0032】
また、半導体層15の側面15cを、絶縁膜18を介して反射膜51(金属膜)が覆っている。反射膜51は側面15cに接しておらず、半導体層15に対して電気的に接続されていない。反射膜51は、p側配線層21及びn側配線層22に対して分離している。反射膜51は、発光層13の放射光及び蛍光体31の放射光に対して反射性を有する。
【0033】
反射膜51、p側配線層21およびn側配線層22は、共通の金属膜上に例えばめっき法により同時に形成される銅膜を含む。
【0034】
なお、半導体層15の側面15cに隣接するチップ外周部においては、金属膜上にめっき膜(銅膜)を形成せずに、金属膜で反射膜51を形成してもよい。反射膜51は、少なくともアルミニウム膜を含むことで、発光層13の放射光及び蛍光体31の放射光に対して高い反射率を有する。
【0035】
また、p側配線層21及びn側配線層22の下にも下地金属膜(アルミニウム膜)が残されるので、第2の側15bの大部分の領域にアルミニウム膜が広がって形成されている。これにより、蛍光体層30側に向かう光の量を増大できる。
【0036】
p側配線層21における半導体層15とは反対側の面には、第1の金属ピラーとしてp側金属ピラー23が設けられている。p側配線層21及びp側金属ピラー23は、p側配線部41を形成している。
【0037】
n側配線層22における半導体層15とは反対側の面には、第2の金属ピラーとしてn側金属ピラー24が設けられている。n側配線層22及びn側金属ピラー24は、n側配線部43を形成している。
【0038】
p側配線部41とn側配線部43との間には、第2の絶縁膜として樹脂層25が設けられている。樹脂層25は、p側金属ピラー23の側面とn側金属ピラー24の側面に接するように、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に設けられている。すなわち、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に、樹脂層25が充填されている。
【0039】
また、樹脂層25は、p側配線層21とn側配線層22との間、p側配線層21と反射膜51との間、およびn側配線層22と反射膜51との間に設けられている。
【0040】
樹脂層25は、p側金属ピラー23の周囲およびn側金属ピラー24の周囲に設けられ、p側金属ピラー23の側面およびn側金属ピラー24の側面を覆っている。
【0041】
また、樹脂層25は、半導体層15の側面15cに隣接するチップ外周部にも設けられ、反射膜51を覆っている。
【0042】
p側金属ピラー23におけるp側配線層21とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なp側外部端子23aとして機能する。n側金属ピラー24におけるn側配線層22とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なn側外部端子24aとして機能する。p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、例えば、はんだ、または導電性の接合材を介して、実装基板のランドパターンに接合される。
【0043】
図2(b)に示すように、p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、樹脂層25の同じ面内で離間して並んで形成されている。p側外部端子23aは例えば矩形状に形成され、n側外部端子24aは、p側外部端子23aの矩形と同じサイズの矩形における2つの角を切り欠いた形状に形成されている。これにより、外部端子の極性を判別できる。例えば、n側外部端子24aを矩形状にし、p側外部端子23aを矩形の角を切り欠いた形状にしてもよい。
【0044】
p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、絶縁膜18上におけるp側配線層21とn側配線層22との間隔よりも広い。p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、実装時のはんだの広がりよりも大きくする。これにより、はんだを通じた、p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間の短絡を防ぐことができる。
【0045】
これに対し、p側配線層21とn側配線層22との間隔は、プロセス上の限界まで狭くすることができる。このため、p側配線層21の面積、およびp側配線層21とp側金属ピラー23との接触面積の拡大を図れる。これにより、発光層13の熱の放散を促進できる。
【0046】
また、複数のビア21aを通じてp側配線層21がp側電極16と接する面積は、ビア22aを通じてn側配線層22がn側電極17と接する面積よりも広い。これにより、発光層13に流れる電流の分布を均一化できる。
【0047】
絶縁膜18上で広がるn側配線層22の面積は、n側電極17の面積よりも広くできる。そして、n側配線層22の上に設けられるn側金属ピラー24の面積(n側外部端子24aの面積)をn側電極17よりも広くできる。これにより、信頼性の高い実装に十分なn側外部端子24aの面積を確保しつつ、n側電極17の面積を小さくすることが可能となる。すなわち、半導体層15における発光層13を含まない部分15fの面積を縮小し、発光層13を含む部分15eの面積を広げて光出力を向上させることが可能となる。
【0048】
第1の半導体層11は、n側電極17及びn側配線層22を介してn側金属ピラー24と電気的に接続されている。第2の半導体層12は、p側電極16及びp側配線層21を介してp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0049】
p側金属ピラー23の厚さ(p側配線層21とp側外部端子23aとを結ぶ方向の厚さ)は、p側配線層21の厚さよりも厚い。n側金属ピラー24の厚さ(n側配線層22とn側外部端子24aとを結ぶ方向の厚さ)は、n側配線層22の厚さよりも厚い。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25のそれぞれの厚さは、半導体層15よりも厚い。
【0050】
金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は、1以上であっても良いし、1より小さくても良い。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズより厚くても良いし、薄くても良い。
【0051】
p側配線層21、n側配線層22、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25を含む支持体100の厚さは、半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子(LEDチップ)の厚さよりも厚い。
【0052】
半導体層15は、例えば基板上にエピタキシャル成長法により形成される。その基板は、支持体100を形成した後に除去され、半導体層15は第1の側15aに基板を含まない。半導体層15は、剛直な板状の基板にではなく、金属ピラー23、24と樹脂層25との複合体からなる支持体100によって支持されている。
【0053】
p側配線部41及びn側配線部43の材料として、例えば、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性および絶縁材料に対する密着性を向上させることができる。
【0054】
樹脂層25は、p側金属ピラー23およびn側金属ピラー24を補強する。樹脂層25は、実装基板と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。そのような樹脂層25として、例えば、エポキシ樹脂を主に含む樹脂、シリコーン樹脂を主に含む樹脂、フッ素樹脂を主に含む樹脂を挙げることができる。
【0055】
また、樹脂層25におけるベースとなる樹脂に遮光材(光吸収剤、光反射剤、光散乱剤など)が含まれ、樹脂層25は発光層13の発光光に対して遮光性を有する。これにより、支持体100の側面及び実装面側からの光漏れを抑制することができる。
【0056】
半導体発光装置の実装時の熱サイクルにより、p側外部端子23aおよびn側外部端子24aを実装基板のランドに接合させるはんだ等に起因する応力が半導体層15に加わる。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25は、その応力を吸収し緩和する。特に、半導体層15よりも柔軟な樹脂層25を支持体100の一部として用いることで、応力緩和効果を高めることができる。
【0057】
反射膜51は、p側配線部41及びn側配線部43に対して分離している。このため、実装時にp側金属ピラー23及びn側金属ピラー24に加わる応力は、反射膜51には伝達されない。したがって、反射膜51の剥離を抑制することができる。また、半導体層15の側面15c側に加わる応力を抑制することができる。
【0058】
例えば、半導体層15の形成に用いた基板は、半導体層15から除去される。これにより、半導体発光装置は低背化される。また、基板の除去により、半導体層15の第1の側15aに微小凹凸を形成することができ、光取り出し効率の向上を図れる。
【0059】
例えば、第1の側15aに対して、アルカリ系溶液を使ったウェットエッチングを行い、微小凹凸を形成する。これにより、第1の側15aでの全反射成分を減らして、光取り出し効率を向上できる。
【0060】
基板が除去された後、第1の側15a上に絶縁層19を介して蛍光体層30が形成される。絶縁層19は、半導体層15と蛍光体層30との密着性を高める密着層として機能し、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜である。絶縁層19の厚さは、例えば0μmよりも大きく、10μm以下である。
【0061】
蛍光体層30は、結合材32中に複数の粒子状の蛍光体31が分散された構造を有する。結合材32には、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。
【0062】
蛍光体層30は、半導体層15の側面15cの周囲のチップ外周部上にも形成される。したがって、蛍光体層30の平面サイズは半導体層15の平面サイズよりも大きい。チップ外周部においては、絶縁膜(例えばシリコン酸化膜)18上に蛍光体層30が設けられている。例えば、絶縁膜18上に設けられた蛍光体層30の幅は、10μm以上30μm以下である。
【0063】
なお、上述した「平面サイズ」とは、半導体層15から支持体100の方向に見たときの平面積を示す。また、上述した「蛍光体層30の幅」とは、半導体層15の側面15cからチップ外周部までの距離を示す。
【0064】
蛍光体層30は、半導体層15の第1の側15a、および半導体層15の側面15cに隣接する領域上に限定され、半導体層15の第2の側15b、金属ピラー23、24の周囲、および支持体100の側面にまわりこんで形成されていない。蛍光体層30の側面と、支持体100の側面(樹脂層25の側面)とが揃っている。すなわち、
図2(b)に示した幅W1、W2は、蛍光体層30の幅を示す。例えば、幅W1は、幅W2と同等でもよく、幅W2より大きくてもよい。
【0065】
すなわち、実施形態の半導体発光装置は、チップサイズパッケージ構造の非常に小型の半導体発光装置である。このため、例えば照明用灯具などへの適用に際して、灯具デザインの自由度が高まる。
【0066】
また、光を外部に取り出さない実装面側には蛍光体層30が無駄に形成されず、コスト低減が図れる。また、第1の側15aに基板がなくても、第2の側に広がるp側配線層21及びn側配線層22を介して発光層13の熱を実装基板側に放散させることができ、小型でありながらも放熱性に優れている。
【0067】
例えば、一般的なフリップチップ実装では、LEDチップを実装基板にバンプなどを介して実装した後に、チップ全体を覆うように蛍光体層が形成される。あるいは、バンプ間に樹脂がアンダーフィルされる。
【0068】
これに対して実施形態によれば、実装前の状態で、p側金属ピラー23の周囲及びn側金属ピラー24の周囲には、蛍光体層30とは異なる樹脂層25が設けられ、実装面側に応力緩和に適した特性を与えることができる。また、実装面側にすでに樹脂層25が設けられているため、実装後のアンダーフィルが不要となる。
【0069】
第1の側15aには、光取り出し効率、色変換効率、配光特性などを優先した設計の層が設けられ、実装面側には、実装時の応力緩和や、基板に代わる支持体としての特性を優先した層が設けられる。例えば、樹脂層25は、ベースとなる樹脂にシリカ粒子などのフィラーが高密度充填された構造を有し、支持体として適切な硬さに調整されている。
【0070】
発光層13から第1の側15aに放射された光は蛍光体層30に入射し、一部の光は蛍光体31を励起し、発光層13の光と、蛍光体31の光との混合光として例えば白色光が得られる。
【0071】
ここで、第1の側15a上に基板があると、蛍光体層30に入射せずに、基板の側面から外部に漏れる光が生じる。すなわち、基板の側面から発光層13の光の色みの強い光が漏れ、蛍光体層30を上面から見た場合に、外縁側に青色光のリングが見える現象など、色割れや色ムラの原因になり得る。
【0072】
これに対して、実施形態によれば、第1の側15aと蛍光体層30との間には基板がないため、基板側面から発光層13の光の色みが強い光が漏れることによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0073】
さらに、実施形態によれば、半導体層15の側面15cに、絶縁膜18を介して反射膜51が設けられている。発光層13から半導体層15の側面15cに向かった光は、反射膜51で反射し、外部に漏れない。このため、基板が第1の側15aにない特徴とあいまって、半導体発光装置の側面側からの光漏れによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0074】
反射膜51が設けられた半導体層15の側面15cは、第1の側15a(の平坦部)に対して傾斜している。また、側面15cは第2の側15bに対して傾斜している。したがって、側面に設けられた反射面が第1の側15a及び第2の側15bに対して傾斜している。側面15cの延長線は、蛍光体層30と絶縁膜18との界面に対して鈍角を形成して傾斜している。
【0075】
反射膜51と、半導体層15の側面15cとの間に設けられた絶縁膜18は、反射膜51に含まれる金属の半導体層15への拡散を防止する。これにより、半導体層15の例えばGaNの金属汚染を防ぐことができ、半導体層15の劣化を防ぐことができる。
【0076】
また、反射膜51と蛍光体層30との間、および樹脂層25と蛍光体層30との間に設けられた絶縁膜18は、反射膜51と蛍光体層30との密着性、および樹脂層25と蛍光体層30との密着性を高める。
【0077】
絶縁膜18は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜などの無機絶縁膜である。すなわち、半導体層15の第1の側15a、第2の側15b、第1の半導体層11の側面15c、第2の半導体層12の側面、発光層13の側面は、無機絶縁膜で覆われている。無機絶縁膜は半導体層15を囲み、金属や水分などから半導体層15をブロックする。
【0078】
図3(a)〜
図5を参照して、実施形態の半導体発光装置の光学特性について説明する。
図3(a)〜
図3(c)は、半導体発光装置の色度を示すグラフである。
【0079】
図3(a)〜
図3(c)における横軸は、照射角度(deg)を表している。0degは、半導体発光装置の第1の側15aの面に平行な正面側を示し、90degおよび−90degは、半導体発光装置の第1の側15aの面に垂直な側面側を示している。
【0080】
図3(a)〜
図3(c)における縦軸は、色度Cxを表している。0degのときの色度を基準0.00としたときの相対値を示す。例えば、色度の絶対値が大きい場合、半導体発光装置の色合いのずれが大きく、色割れが発生し得る。
【0081】
図3(a)に示すように、各々の照射角度における色度Cxは、−0.035より大きく、0.035未満を示している。このとき、半導体発光装置の色合いのずれは小さく、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、全体に白色光が見える。
【0082】
図3(b)に示すように、照射角度の拡大に伴い色度Cxは増加し、90degおよび−90degにおける色度Cxは、0.035以上を示している。このとき、半導体発光装置の色合いのずれは大きく、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、外縁側に黄色光のリングが見える(イエローリング)。
【0083】
図3(c)に示すように、照射角度の拡大に伴い、色度Cxは減少し、90degおよび−90degにおける色度Cxは、−0.035以下を示している。このとき、半導体発光装置の色合いのずれは大きく、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、外縁側に青色のリングが見える(青割れ)。
【0084】
なお、色度Cyに関しても色度Cxと同様の傾向を示すため、説明を省略する。
【0085】
図4は、半導体発光装置の色度の測定結果を示すグラフである。
図4における横軸は、蛍光体層30のアスペクト比ARを表しており、縦軸は色度Ctを表している。
【0086】
アスペクト比ARは、蛍光体層30の厚さD1(μm)と、蛍光体層30の幅W1(μm)とを用いて式(1)で表される。
AR=D1/W1 (1)
なお、蛍光体層30が異なる辺(例えば長辺の幅W1および短辺の幅W2)を有する場合、幅W1、W2のいずれかが用いられる。また、蛍光体層30の厚さD1は、半導体層15上に設けられた蛍光体層30の下面から上面までの距離を示す。
【0087】
アスペクト比ARは、式(2)を満たす。
0.02<AR<1 (2)
例えば、AR≦0.02のとき、蛍光体層30内に分散された蛍光体31の密度分布が不均一となり、色合いのずれが大きくなり得る。さらに、蛍光体粒子の直径程度以下となる場合は、均一な蛍光体樹脂膜が形成できない可能性が高くなる。
【0088】
例えば、1≦ARのとき、応力が蛍光体層30に集中し易くなり、実装部上に形成する工程において、蛍光体層30が破損する原因となり得る。さらに、実装時に部品が倒れ易くなり、実装不良の原因となり得る。
【0089】
色度Ctは、色度Cxと、色度Cyとを用いて式(3)で表される。
Ct=±{(Cx)
2+(Cy)
2}
1/2 (3)
式(3)の符号±は、色度Cx、Cyが正の場合には正を示し、色度Cx、Cyが負の場合には負を示す。
【0090】
図3(a)〜
図3(c)に示したように、色度Cx、Cyの値が−0.035よりも大きく0.035未満のとき、半導体発光装置の色合いのずれが小さい。すなわち式(3)より、色度Ctの値が−0.05よりも大きく0.05未満のとき、半導体発光装置の色合いのずれが小さい。
【0091】
グラフ内の異なるプロット形状は、蛍光体層30内に設けられた蛍光体31の個数の違いにより分類されている。直線は、蛍光体層30のアスペクト比ARに対する色度Ctの関係における線形近似を表している。
【0092】
白抜きの丸でプロットされた結果の線形近似は、細実線で示している。黒塗りの三角でプロットされた結果の線形近似は、一点鎖線で示している。白抜きの四角でプロットされた結果の線形近似は、破線で示している。黒塗りの丸でプロットされた結果の線形近似は、二点鎖線で示している。黒塗りの四角でプロットされた結果の線形近似は、太実線で示している。
【0093】
それぞれの線は、蛍光体層30のアスペクト比ARが大きくなると、色度Ctの値が小さくなり、負の値に大きくなる傾向を示す。すなわち、蛍光体31の個数の違いに関わらず、蛍光体層30のアスペクト比ARと、色度Ctとの関係は、それぞれ同じ傾向を示す。
【0094】
実施形態において、発明者らは、LED光測定器MCPD9800(大塚電子製)を用いて各照射角度における相対色度を観測し、上述した結果を確認した。
【0095】
図4に示した測定結果に基づき、任意のアスペクト比ARと、任意の蛍光体31の個数Npと、定数A、B、Cと、を用いて、式(4)により半導体発光装置の色度Ctを導くことができる。
Ct=A×(AR)+B×(Np)+C (4)
式(4)における定数A、B、Cは、それぞれ下記の範囲を満たす。
−0.149055−(3×0.011797)≦A≦−0.149055+(3×0.011797)
−0.000192−(3×0.00002461)≦B≦−0.000192+(3×0.00002461)
0.0818492−(3×0.005708)≦C≦0.0818492+(3×0.005708)
蛍光体31の個数Npは、蛍光体樹脂体積V(μm^3)と、蛍光体樹脂濃度v(%)と、体積換算の粒径r(μm)とを用いて式(5)で表される。
Np=V×v×3/(4×π×R) (5)
R=(r/2)^3
例えば、蛍光体31の蛍光体樹脂濃度vおよび体積換算の粒径rを求める方法として、X線CTが用いられる。X線CTは、蛍光体層30の構造を3次元画像に表すことが可能であり、蛍光体層30に含まれる蛍光体粒子を鮮明に表すことができる。したがって、CTスキャンにより蛍光体31の位置を3次元測定し、そのデータを統計処理することにより、蛍光体樹脂濃度vおよび体積換算の粒径rを求めることができる。なお、体積換算の粒径rは、粒子径分布におけるメジアン径(D50)を示す。例えば、式(4)における蛍光体31の個数Npは、0<Np≦3800(D50=5μm)の範囲を満たすことが好ましい。
【0096】
式(4)において、式(6)を満たすとき、半導体発光装置の色合いのずれは小さい。
−0.05<Ct<0.05 (6)
このとき、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、全体に白色光が見える。
【0097】
式(4)において、色度Ct≧0.05の場合、半導体発光装置の色合いのずれは大きい。このとき、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、外縁側に黄色光のリングが見える。
【0098】
式(4)において、色度Ct≦−0.05の場合、半導体発光装置の色合いのずれは大きい。このとき、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、外縁側に青色光のリングが見える。
【0099】
より好ましくは、式(4)の定数A、B、Cは、それぞれ下記を満たす。これにより、より精度の高い色度Ctの値を導出することが可能となる。
A=−0.149055
B=−0.000192
C=0.0818492
なお、アスペクト比ARに用いられる蛍光体層30が長辺および短辺を有数場合、長辺の幅W1および短辺の幅W2のいずれかが式(4)を満たしていればよい。
【0100】
図5は、
図4を基に導出した半導体発光装置の色合いのずれの範囲を示すグラフである。
図5における横軸は、蛍光体31の個数Npを表しており、縦軸は蛍光体層30のアスペクト比ARを表している。
【0101】
グラフの上部側に示す実線は、色度Ct=−0.05を満たす蛍光体31の個数Npに対するアスペクト比ARの関係を示している。この実線よりも上の領域(図の網掛け領域)は、色度Ct<−0.05を満たす蛍光体31の個数Npに対するアスペクト比ARの関係の範囲を示している。
【0102】
すなわち、蛍光体31の個数Npと、アスペクト比ARとの関係が、グラフの上部に示す実線以上の領域に該当するとき、半導体発光装置の色合いのずれは大きい。このとき、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、外縁側に青色光のリングが見える。
【0103】
グラフの下部に示す実線は、色度Ct=0.05を満たす蛍光体31の個数Npに対するアスペクト比ARの関係を示している。この実線よりも下の領域(図の網掛け領域)は、色度Ct>0.05を満たす蛍光体31の個数Npに対するアスペクト比ARの関係の範囲を示している。
【0104】
すなわち、蛍光体31の個数Npと、アスペクト比ARとの関係が、グラフの下部に示す実線以下の領域に該当するとき、半導体発光装置の色合いのずれは大きい。このとき、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、外縁側に黄色光のリングが見える。
【0105】
グラフの上部および下部に示す実線の間の領域は、−0.05<色度Ct<0.05を満たす蛍光体31の個数Npに対するアスペクト比ARの関係の範囲を示している。
【0106】
すなわち、蛍光体31の個数Npと、アスペクト比ARとの関係が、グラフの上部の実線と、下部の実線との間の領域に該当するとき、半導体発光装置の色合いのずれは小さい。このとき、例えば半導体発光装置を上面から見た場合に、全体に白色光が見える。
【0107】
実施形態によれば、蛍光体31の個数Npと、アスペクト比ARとを用いて、式(4)により色度Ctを導くことが可能となる。これにより、半導体発光装置の色度Ctの値を−0.05<Ct<0.05となるように設定することができる。すなわち、色度Ctのずれを抑えることができ、光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。
【0108】
さらに、式(4)に用いる定数A、B、Cの範囲を狭めることにより、導かれる色度Ctの値の精度を高めることができる。これにより、さらに光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。
【0109】
上記に加え、例えば蛍光体層30の平面サイズは、半導体層15の平面サイズよりも大きい。そして、半導体層15の側面は、絶縁膜18に覆われ、半導体層15上および絶縁膜18上には、蛍光体層30が連続して設けられている。これにより、半導体層15の側面から放出される光を抑制することができ、さらに光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。
【0110】
さらに、半導体層15の側面は、絶縁膜18を介して反射膜51が設けられている。これにより、半導体層15の側面から放出される光をさらに抑制することができ、さらに光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。
【0111】
そして、例えば蛍光体層30と、半導体層15との間には、絶縁層19が設けられている。これにより、蛍光体層30と、半導体層15との間の密着性を高めることができる。そのため、半導体層15から蛍光体層30に放射される光の減衰を抑制することができ、さらに光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。
【0112】
図6(a)〜
図6(c)を参照して、それぞれ蛍光体層30および半導体層15の構成が異なる半導体発光装置について説明する。
図6(a)〜
図6(c)は、実施形態の半導体発光装置の模式断面図である。
図6(a)〜
図6(c)は、半導体層15および蛍光体層30の構成が異なる半導体発光装置の一例を示している。なお、半導体発光装置の詳細な構成は、
図1に示した構成と同様のため、説明を一部省略する。また、半導体層15および蛍光体層30以外の図示も、一部省略する。
【0113】
図6(a)に示すように、半導体層15の上面は、支持体100の上面よりも下に設けられている。そのため、半導体層15上における蛍光体層30の厚さは、支持体100上における蛍光体層30の厚さよりも厚い。
【0114】
上記構造の形成方法は、例えば半導体層15をエッチングするとき、半導体層15の成長基板を同時にエッチングする。次に、支持体100を形成し、成長基板を除去する。その後、半導体層15の成長基板と接していた表面をフロスト加工することにより形成される。
【0115】
図6(b)に示すように、半導体層15の上面は、支持体100の上面と同一平面上に設けられている。そのため、半導体層15上における蛍光体層30の厚さは、支持体100上における蛍光体層30の厚さと等しい。
【0116】
上記構造の形成方法は、例えば半導体層15をエッチングするとき、成長基板をエッチングしない。次に、支持体100を形成し、成長基板を除去することにより形成される。
【0117】
図6(c)に示すように、半導体層15の上面は、支持体100の上面よりも上に設けられている。そのため、半導体層15上における蛍光体層30の厚さは、支持体100上における蛍光体層30の厚さよりも薄い。
【0118】
上記構造の形成方法は、例えば半導体層15をエッチングするとき、成長基板に達する前にエッチングを終了する。次に、支持体100を形成し、成長基板を除去する。その後、半導体層15の成長基板と接していた表面をフロスト加工することにより形成される。
【0119】
図6(a)〜
図6(c)に示したいずれの構成においても、式(4)を用いて色度Ctを導くことが可能となる。これにより、半導体発光装置の色度Ctの値を−0.05<Ct<0.05となるように設定することができる。すなわち、色度Ctのずれを抑えることができ、光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。なお、
図6(a)〜
図6(c)に示したいずれの構成においても、蛍光体層30の厚さD1は、半導体層15上に設けられた蛍光体層30の下面から上面までの距離である。
【0120】
図7(a)〜
図7(c)を参照して、他の実施形態の半導体発光装置について説明する。
図7(a)〜
図7(c)は、他の実施形態の半導体発光装置の模式断面図である。
図7(a)〜
図7(c)は、実装部150の構成が異なる半導体発光装置の一例を示している。なお、上述した実施形態と同様の構成に関しては、説明を省略する。
【0121】
図7(a)に示すように、実装部150上には、支持基板171を介して半導体層115が設けられている。実装部150上および半導体層115上には、蛍光体層130が一体に設けられている。
【0122】
半導体層115は、配線143nを介して実装部150の有するn側配線部143と電気的に接続されている。半導体層115は、支持基板171を介して実装部150の有するp側配線部141と電気的に接続されている。
【0123】
上記構造の形成方法は、例えば実装部150上に支持基板171が形成され、支持基板171上には、半導体層115が形成される。その後、半導体層115と、n側配線部143とを電気的に接続する配線143nが形成される。
【0124】
図7(b)に示すように、実装部150上には、金属層173p、173nを介して半導体層115が設けられている。金属層173pは、金属層173nと離間している。実装部150上および半導体層115上には、蛍光体層130が一体に設けられている。
【0125】
半導体層115は、金属層173nを介して実装部150の有するn側配線部143と電気的に接続されている。半導体層115は、金属層173pを介して実装部150の有するp側配線部141と電気的に接続されている。
【0126】
上記構造の形成方法は、例えば図示しない成長基板上にエピタキシャル成長法を用いて半導体層115を形成する。次に、半導体層115の上面を、金属層173p、173nを介して実装部150に接続する。その後、成長基板を例えばレーザーリフトオフ法を用いて半導体層115から除去する。
【0127】
図7(c)に示すように、実装部150上には、金属層173pを介して半導体層115が設けられている。実装部150上および半導体層115上には、蛍光体層130が一体に設けられている。
【0128】
半導体層115は、配線143nを介して実装部150の有するn側配線部143と電気的に接続されている。半導体層115は、金属層173pを介して実装部150の有するp側配線部141と電気的に接続されている。
【0129】
上記構造の形成方法は、例えば実装部150上に金属層173pが形成され、金属層173p上には、半導体層115が形成される。その後、半導体層115と、n側配線部143とを電気的に接続する配線143nが形成される。
【0130】
図7(a)〜
図7(c)に示したいずれの構造においても、上述した実施形態と同様に、式(4)により色度Ctを導くことが可能となる。これにより、半導体発光装置の色度Ctの値を−0.05<Ct<0.05となるように設定することができる。すなわち、色度Ctのずれを抑えることができ、光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。なお、
図7(a)〜
図7(c)に示したいずれの構成においても、蛍光体層30の厚さD2は、半導体層115上に設けられた蛍光体層130の下面から上面までの距離である。
【0131】
さらに、式(4)に用いる定数A、B、Cの範囲を狭めることにより、導かれる色度Ctの値の精度を高めることができる。これにより、さらに光学特性に優れた半導体発光装置を提供することが可能となる。
【0132】
そして、例えば蛍光体層130と、半導体層115との間には、絶縁層19が設けられている。これにより、蛍光体層130と、半導体層115との密着性を高めることができる。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。