特許第6602122号(P6602122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602122
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】弾性ストッキング
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/08 20060101AFI20191028BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   A61F13/08
   A41B11/00 G
   A41B11/00 B
   A41B11/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-177526(P2015-177526)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-51415(P2017-51415A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】505297633
【氏名又は名称】株式会社コーポレーションパールスター
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(73)【特許権者】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】公立大学法人県立広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】新宅 光男
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04149274(US,A)
【文献】 特開昭52−126332(JP,A)
【文献】 特開2014−088633(JP,A)
【文献】 特開平08−150172(JP,A)
【文献】 特表2000−512176(JP,A)
【文献】 特開2014−163006(JP,A)
【文献】 特開2009−275300(JP,A)
【文献】 米国特許第03329972(US,A)
【文献】 米国特許第02655660(US,A)
【文献】 米国特許第05067179(US,A)
【文献】 登録実用新案第3123605(JP,U)
【文献】 実開昭59−149902(JP,U)
【文献】 特開2005−076166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/08
A41B 11/00 − 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足首部から膝方向に向かって漸減的な圧迫力を作用させる編地により脚部を覆う圧縮編地部と、低伸縮性の編地により足甲部を覆う形状保持編地部と、高伸縮性の編地により踵部、足底部及び足指部を覆う伸縮編地部とを有してなる弾性ストッキングであって、
前記足指部を覆う伸縮編地部前記形状保持編地部とが継合わされる側の形状保持編地部の端部に、足指変色の有無を点検する観察窓部を設けた弾性ストッキング。
ここで、低伸縮性の編地の伸縮の度合いは伸び率で30〜100%、高伸縮性の編地の伸縮の度合いは伸び率で80〜200%である。
【請求項2】
観察窓部を開閉するカバーが設けられた請求項1に記載の弾性ストッキング。
【請求項3】
カバーは、その先端部又は周縁部が形状保持編地部に係着するようになっている請求項2に記載の弾性ストッキング。
【請求項4】
伸縮編地部の足底部と足指部の境界部分に当たる部分に、足幅にわたりその伸縮編地部よりさらに高い伸縮性を有する編地からなる屈曲編地部を設けた請求項1〜3の何れか一項に記載の弾性ストッキング。
【請求項5】
足指部を覆う伸縮編地部は、第一足趾部分と第二足趾から第五足趾部分を収容するものの二股状、または、第一足趾から第五足趾を収容する1つの袋状になっている請求項1〜4の何れか一項に記載の弾性ストッキング。
【請求項6】
伸縮編地部は畦編みにより編成され、形状保持編地部はタック編みにより編成されるものである請求項1〜5の何れか一項に記載の弾性ストッキング。
【請求項7】
足首部から膝方向に向かって漸減的な圧迫力を作用させる編地により脚部を覆う圧縮編地部と、低伸縮性の編地により足甲部を覆う形状保持編地部と、高伸縮性の編地により踵部、足底部及び足指部を覆う伸縮編地部とを有してなる弾性ストッキングであって、
前記伸縮編地部の前記足底部と足指部の境界部分に当たる部分に足指変色の有無を点検する観察窓部を設けた弾性ストッキング。
ここで、低伸縮性の編地の伸縮の度合いは伸び率で30〜100%、高伸縮性の編地の伸縮の度合いは伸び率で80〜200%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四肢の静脈血、リンパ液のうっ滞を軽減又は予防する等、静脈還流の促進を目的に使用される医療用の弾性ストッキングに好適に使用される弾性ストッキングに関する。
【背景技術】
【0002】
中分類が理学療法用機械器具に属し一般名称が弾性ストッキングとされる医療用の弾性ストッキングは、四肢の静脈血、リンパ液のうっ滞を軽減又は予防する等、静脈還流の促進を目的に使用され、末梢から中枢に向かい漸減的に圧迫を加える機能を有するものであると規定されている。この弾性ストッキングは、静脈瘤、静脈血栓後遺症などの静脈還流障害の治療において欠かせないものであり、リンパ浮腫の治療にも使用される。また、静脈血栓症や静脈瘤の予防に有用であり、長時間の立ち仕事をする人、特に高齢者や女性に対し、下肢のむくみ予防に有用であるとされる。
【0003】
このような弾性ストッキングの機能、性能を高めるために種々の提案がされている。例えば、特許文献1に、下肢循環器系疾患治療に使用され、脚部の全部または一部を圧して支持するのに適し、足首から徐々に圧縮力を減らす機能を有する靴下タイプの整形術具であって、足または踵部を除いた脚部を覆う圧縮性の連続円筒状編み物部位と、これに連なり少なくとも足の部位では圧することなく覆うことができる非圧縮性筒状部位と、を有してなる整形術具が提案されている。この整形術具の圧縮力のない非圧縮性筒状部位は、自由な状態では単純な筒状要素を構成するが、足を包み込むことができるほどの十分な伸縮性を有しており、足指の付け根までの足の主要部を覆うに十分なものであるとされる。
【0004】
特許文献2に、くるぶしに対して有効な圧縮力を付与するためのくるぶし部分と、足部に前記くるぶし部分の圧縮力の約0.41%ないし約0.83%の範囲の圧縮力を付与するための足部分とを有することを特徴とする、下肢の静脈疾患治療用ストッキングが提案されている。この静脈疾患治療用ストッキングは、縁飾り部分とつま先部分を除いては全てニット地でつくることができ、縁飾り部分とつま先部分は従来のジャージーでつくることができるとされる。また、この静脈疾患治療用ストッキングは、くるぶし部分に最も高い圧力を与えて筋肉を通して末梢静脈(深部)を支持し、収縮期の間深部および交通系の逆流を減じるようになっているとされる。そして、くるぶし部分の圧縮力をストッキングの準拠点とすると、履き心地を良くし止血効果を回避するために足部分の圧縮力は、くるぶし部分の41〜85%がよいとされる。
【0005】
特許文献3に、下肢のための圧縮装具であって、前記装具がストッキング、ソックス、またはタイツのタイプの編物の形態であり、足首から上に延びる脚部であって、治療上の圧力を脚に加えるようにして選択されるメッシュ構造および寸法の圧縮性の筒状部分である脚部と、くるぶし領域からつま先領域まで延び、甲領域を包含する足部であって、一旦装具を肢に嵌めたら弾性的に足を包むように選択されるメッシュ構造および寸法の形状部分である足部とを含み、前記足部の前記メッシュ構造および寸法が、一旦装具を肢に嵌めたら、0<Px<Pm<PbかつPm<36mmHgとなり、Pxが前記甲の装具レベルによって加えられる圧力であり、Pmが前記くるぶし領域の装具レベルによって加えられる圧力であり、Pbが前記足首の装具レベルによって加えられる前記治療上の圧力であるようにして選択されることを特徴とする装具が提案されている。そして、この装具は、例えば5mmHgに等しい甲における圧力、すなわち、非医療用の編み地によって与えられる圧力に近く、足を包むことが可能であり対象の邪魔をせずに装具を適位置に保持するのに十分な値を与えるように設計されるとされる。
【0006】
特許文献4に、静脈血栓塞栓症発症予防のための医療用弾性ストッキングであって、膝部から下の脚部を圧して覆うように形成された圧縮性の覆い部を有し、前記覆い部の踵部とつま先部がカットされて露出されている、ことを特徴とする医療用弾性ストッキングが提案されている。この医療用弾性ストッキングは、従来の医療用弾性ストッキングにおける着用時の滑りによる転倒の問題を解決することができ、本来の静脈血栓塞栓症発症予防の効果を失うことがないとされる。そして、踵部とつま先部が覆われた従来型の医療用弾性ストッキングと、本発明に係る医療用弾性ストッキングの下肢血流速度は、20分後、40分後においていずれも統計学的に有意差は認められなかったとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2000-512176号公報
【特許文献2】特開平08-150172号公報
【特許文献3】特表2008-539844号公報
【特許文献4】特開2014-188116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療用の弾性ストッキングは、足首部に最も高い圧迫力が作用し、膝又は上腿部に向かって漸減的な圧迫力が作用するように形成されており、その圧迫力の強さの程度は足首部の圧迫力で表示されている。静脈瘤、静脈血栓後遺症の治療においては、30〜40mmHgの圧迫力を有する弾性ストッキングが必要であるとされ、皮膚の硬化、色素沈着あるいは潰瘍を形成しやすい場合には40〜50mmHgの圧迫力を有する弾性ストッキングが必要とされる。このため、特許文献1〜4に示すように、弾性ストッキングにおいてどのように所要の圧迫力を形成するかが提案の趣旨となる。しかしながら、高齢者や関節障害のある患者が、圧迫力が30〜50mmHgの弾性ストッキングを履くのは容易でなく、苦痛を伴う。このため、所要の機能を発揮するともに、少しでも容易に履くことができ、苦痛の少ない弾性ストッキングが求められる。
【0009】
一方、弾性ストッキングにおいて、その足部分の構成については、特に言及しないか、
従来の靴下又はストッキングと同等のものであれば足りるとされるものなど様々である。例えば、特許文献1に記載の整形術具は、足の部位は非圧縮性筒状部位となっており、足指の付け根までの足の主要部を覆うもので充分とされる。特許文献2に記載の静脈疾患治療用ストッキングは、足部分は履き心地をよくし止血効果を回避するため、くるぶし部分の圧縮力の41〜85%がよいとされる。特許文献3に記載の装具は、足の甲に非医療用の編地により与えられる程度の圧縮力を与えるように設計されているとされるが、つま先部分については何らの記載もない。特許文献4に記載の医療用弾性ストッキングは、つま先部分がないので従来の医療用ストッキングのように装着者が滑って転倒する恐れがなく、下肢血流速度はつま先があるものと有意差がないとされる。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、所要の機能を発揮するともに、高齢者や関節障害のある患者が容易に履くことができ、苦痛を和らげることができる弾性ストッキングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、弾性ストッキングにおいて足指伸展機能を付与することにより、いわゆるふくらはぎの筋肉によるポンプ作用(筋肉ポンプ機能)を高めることができることに着目して本発明を完成させた。
【0012】
本発明に係る弾性ストッキングは、足首部から膝方向に向かって漸減的な圧迫力を作用させる編地により脚部を覆う圧縮編地部と、低伸縮性の編地により足甲部を覆う形状保持編地部と、高伸縮性の編地により踵部、足底部及び足指部を覆う伸縮編地部とを有してなる弾性ストッキングであって、前記足指部を覆う伸縮編地部の前記形状保持編地部に継合わされる側の端部に、足指変色の有無を点検する観察窓部を設けている。
【0013】
上記発明において、観察窓部を開閉するカバーが設けられた弾性ストッキングが好ましい。そして、このカバーは、その先端部又は周縁部が形状保持編地部に係着するようになっているものとすることができる。
【0014】
また、上記発明において、伸縮編地部の足底部と足指部の境界部分に当たる部分に、足幅にわたりその伸縮編地部よりさらに高い伸縮性を有する編地からなる弾性ストッキングが好ましい。
【0015】
また、上記発明において、足指部を覆う伸縮編地部は、第一足趾部分と第二足趾から第五足趾部分を収容するものの二股状、または、第一足趾から第五足趾を収容する1つの袋状になっているもととすることができる。
【0016】
また、上記発明において、伸縮編地部は畦編みにより編成され、形状保持編地部はタック編みにより編成されるものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る弾性ストッキングは、足首部から膝方向に向かって漸減的な圧迫力を作用させる編地により脚部を覆う圧縮編地部と、低伸縮性の編地により足甲部を覆う形状保持編地部と、高伸縮性の編地により踵部、足底部及び足指部を覆う伸縮編地部とを有してなる弾性ストッキングであって、前記伸縮編地部の前記足底部と足指部の境界部分に当たる部分に足指変色の有無を点検する観察窓部を設けたものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る弾性ストッキングは、所要の機能を発揮するともに、高齢者や関節障害のある患者が容易に履くことができ、苦痛を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】下肢の各部位を示す模式図である。
図2】本発明に係る弾性ストッキングの模式図である。
図3図2の足裏側を示す模式図である。
図4図2のカバーを開けた状態を示す模式図である
図5】足指部が二股状になった弾性ストッキングの足裏側を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。図1は下肢の各部位を示し、図2は本発明に係る弾性ストッキングを示す。本発明に係る弾性ストッキングは、つま先から膝の下まで、あるいは上腿部分までを覆う弾性ストッキングとして使用することができ、足首部24から膝下又は上腿部分まで(脚部22)、足甲部25、踵部26、足底部27及び足指部28の各部分を覆うようになっている。すなわち、本弾性ストッキング10は、図2に示すように、足首部24から膝方向に向かって漸減的な圧迫力を作用させる編地により脚部22を覆う圧縮編地部11と、低伸縮性の編地により足甲部25を覆う形状保持編地部12と、高伸縮性の編地により踵部26、足底部27及び足指部28を覆う伸縮編地部13とを有している。そして、本弾性ストッキング10は、足指部28を覆う伸縮編地部13の形状保持編地部12に継合わされる側の端部に、足指変色の有無を点検する観察窓部14が設けられている。
【0021】
圧縮編地部11は、足首部24に最も高い圧迫力が作用し、足首部24から膝又は上腿部分に向かって漸減的な圧迫力が作用するような編成される。従って、一般に、弾性ストッキングの仕様又は性能は足首部に作用する圧迫力をもって表示されるので、足首部24に作用する圧迫力が定まると、脚部22は、通常のストッキングの製造に使用される手法と同様な方法で編成される。
【0022】
形状保持編地部12は、足甲部25を覆う低伸縮性の編地により編成されており、その形状・大きさがほとんど変わらない。形状保持編地部12は、タック編みにより編成することができる。伸縮編地部13は、踵部26、足底部27及び足指部28を覆う高伸縮性の編地により編成されており、畦編みにより編成することができる。足の側面部分は、高伸縮性の編地により覆うのがよい。低伸縮性の編地の伸縮の度合いは伸び率で30〜100%、高伸縮性の編地の伸縮の度合いは伸び率で80〜200%とすることができる。高伸縮性の編地の伸び率は、低伸縮性の編地の伸び率に対して1.0〜3.0倍とすることができ、1.5〜2.5倍が好ましい。
【0023】
本弾性ストッキング10は、足が、足甲部25を覆う形状保持編地部12と、踵部26、足底部27及び足指部28を覆う伸縮編地部13とにより覆われている。形状保持編地部12は低伸縮性で形状、大きさがほとんど変わらないのに対し、伸縮編地部13は高伸縮性で、形状保持編地部12よりも1.0〜3.0倍の伸び率を有している。このため、足指を上に持ち上げる力が作用するようになる。すなわち、本弾性ストッキング10は足を背屈させる伸展機能を有しており、この伸展機能により筋肉ポンプ機能を高めることができる。また、本弾性ストッキング10は、形状、大きさがほとんど変わらない形状保持編地部12を有しているので、先ずこの形状保持編地部12を足甲部25に合わせるようにして足に被せ、その後脚部22に圧縮編地部11を引き上げるように被せていくことにより容易に装着することができる。このため、高齢者や関節障害のある患者が容易に履くことができる。
【0024】
本弾性ストッキング10の伸展機能は、足の足底部27と足指部28の境界部分、すなわちMP関節に相当する部分を、伸縮編地部13よりもさらに高伸縮性の編地により覆うことにより高めることができる。例えば、伸縮編地部13の足裏側において、図3に示すように、足底部27を覆う伸縮編地部13の足底編地部133と足指部28を覆う伸縮編地部13の足指編地部135との間に、伸縮編地部13よりも高伸縮性の編地からなる屈曲編地部137を設けることができる。この屈曲編地部137は、MP関節に当たる部分を覆っている。
【0025】
本弾性ストッキング10は、上述のように、足指部28を覆う伸縮編地部13が形状保持編地部12に継合わされる側の端部に、足指変色の有無を点検する観察窓部14が設けられている。この観察窓部14の回りの詳細を図4に示す。図4に示すように、この例は、観察窓部14を開閉するカバー15が設けられている。カバー15は、伸縮編地部13と同様の編地により編成することができ、カバー15の開閉は、カバー15に編み込んだ面ファスナ155により行うことができる。面ファスナ155は、カバー15の先端部又は周縁部に設けることができ、形状保持編地部12に係着させるようにするのがよい。面ファスナ155によりカバー15を確実に形状保持編地部12に係着させるために、形状保持編地部12に継合せ編地部125を設けることができる。かかるカバー15を観察窓部14に設け、カバー15が係着される継合せ編地部125の係着位置を調整することにより、足の背屈の程度を調整することができ、本弾性ストッキング10の足指伸展機能を調整することができる。
【0026】
観察窓部14は、上述のように足指変色の有無を点検するために設けられており、足指の肌や爪などの変色の有無を点検し、弾性ストッキング10が適正に使用されているか否かを確認することができる。観察窓部14は、図5に示すように、足裏側に設けることもできる。この例は、伸縮編地部13の足指部28を覆う部分が、図2に示すような一足趾から第五足趾を収容する1つの袋状の形態ではなく、第一足趾部分と第二足趾から第五足趾部分を収容する二股状の形態をした例であり、さらに、カバー15のない例である。
【0027】
図5において、観察窓部14が伸縮編地部13の足底編地部133と足指編地部135との間に設けられており、ちょうど足底部27と足指部28の境界部分、すなわちMP関節部分が開放された形態をしている。このため、足指を伸展又は屈曲させても観察窓部14が移動することもなく、足指が弾性ストッキング10から飛び出すようなこともない。なお、足指編地部135の形態が1つの袋状になったものであっても、足指が弾性ストッキング10から飛び出すようなことはない。
【0028】
以上、本発明に係る弾性ストッキング10について説明した。本弾性ストッキング10は、足指の伸展機能を有し、静静血、リンパ液のうっ滞を軽減又は予防を効果的に行うことができる。また、本弾性ストッキング10は、一般に血行が悪く冷え易いつま先においても保温性に優れ、血行を促進させる効果がある。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る図5に示す形態の弾性ストッキングを装着したとき(発明例1)、特表2000-512176号公報の図2に示す形態の市販品(設定圧迫力18mmHg)の弾性ストッキングを装着したとき(比較例1)、裸足(比較例2)、本願発明に係る図2に示す形態の弾性ストッキングにおいて観察窓部14が設けられていない、すなわち足指部28がすべて伸縮編地部13で覆われた弾性ストッキングを装着したとき(参考例)の膝窩静脈の血流速度測定試験を行った。血流速度測定試験は、平均年齢42.2才の医療職者と看護学生の女性7人の被験者について、枕なしでベッドに横たわった状態の仰臥位で東芝メディカルシステムズ株式会社社製NEM10 XG超音波画像診断装置により、右足の膝窩静脈の血流速度を測定した。膝窩静脈は深呼吸やふくらはぎの圧迫による血流の変化、抽出された血流の波形の特徴によって判別した。
【0030】
血流速度測定試験の結果を表1に示す。表1において、各測定値は、3回測定を行った平均値である。番号は、被験者の番号を示す。倍率は、比較例2(裸足)の平均値に対する発明例、比較例1又は参考例の平均値の比である。表1によると、発明例1は比較例1(市販品)と同等以上の血流速度を示していることが分かる。しかしながら、発明例1は、通常の靴下のような感覚で容易に装着することができるのに対し、比較例1の場合はまず足部に被せるのが容易でなく、脚部22に引き上げるのはかなりの力をもって引っ張り上げるように被せていかなければならず、比較例1の装着はかなり面倒である。
【0031】
【表1】
【0032】
また、表1によると、参考例の血流速度は、発明例1又は比較例1の血流速度より約10%早くなっている。この結果は、観察窓部14の有無に起因しており、足部は保温すること又は冷却させないことが好ましいものと解される。各個人間の血流速度を比較すると、装着する弾性ストッキングの効果は個人的に特徴があるように観察される。しかしながら、各弾性ストッキングにおける標準偏差は0.47〜0.60の範囲に入っており、血流速度によって判断する弾性ストッキングの効果は、平均値により判断すれば足りると解される。すなわち、本発明に係る弾性ストッキングを装着することにより、血流速度は裸足の場合より1.6倍速くすることができ、1.8倍以上に速くすることも可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0033】
10 弾性ストッキング
11 圧縮編地部
12 形状保持編地部
125 継合せ編地部
13 伸縮編地部
133 足底編地部
135 足指編地部
137 屈曲編地部
14 観察窓部
15 カバー
155 面ファスナ
22 脚部
24 足首部
25 足甲部
26 踵部
27 足底部
28 足指部
図1
図2
図3
図4
図5