(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602135
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 71/08 20060101AFI20191028BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20191028BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20191028BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20191028BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20191028BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20191028BHJP
B29C 43/02 20060101ALI20191028BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20191028BHJP
B29C 43/56 20060101ALI20191028BHJP
F16K 5/06 20060101ALI20191028BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
C08L71/08
C08K5/13
C08K5/17
C08L27/12
C08K3/00
C08J5/18
B29C43/02
B29C43/34
B29C43/56
F16K5/06 A
F16J15/10 X
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-193703(P2015-193703)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66281(P2017-66281A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 充
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−097147(JP,A)
【文献】
特表2002−529562(JP,A)
【文献】
特開平10−061777(JP,A)
【文献】
特表2013−503764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
B29C
F16J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルエーテルケトン及びラジカル重合抑制剤を含み、
前記ラジカル重合抑制剤が、アミン系化合物及びフェノール系化合物から選択される1以上である、成形体(但し、二軸延伸フィルムを除く)。
【請求項2】
前記ラジカル重合抑制剤の含有量が0.01〜10重量%である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
さらに、フッ素系樹脂を含む請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記フッ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から選択される1以上である請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂の含有量が、0重量%を超えて30重量%以下である請求項3又は4に記載の成形体。
【請求項6】
さらに、カーボンブラック、カーボンファイバー、グラファイト、アルミナ、酸化チタン、ガラスファイバー、ガラスビーズ、マイカ及び二硫化モリブデンから選択される1以上を含む請求項1〜5のいずれかに記載の成形体。
【請求項7】
シール材である請求項1〜6のいずれかに記載の成形体。
【請求項8】
ボールバルブ用シール材である請求項1〜7のいずれかに記載の成形体。
【請求項9】
耐モノマー用シール材である請求項1〜8のいずれかに記載の成形体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の成形体の製造方法であって、
ポリエーテルエーテルケトンと、
アミン系化合物及びフェノール系化合物から選択される1以上であるラジカル重合抑制剤と、を含む原料を金型に充填し、
常温圧縮成形した後、圧縮溶融成形する、成形体の製造方法。
【請求項11】
前記圧縮溶融成形して得られた成形体の外側表面から少なくとも3mmまでの厚みの部分を除去する請求項10に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
前記圧縮溶融成形を、酸素遮蔽板で原料又は金型全体の外側表面を覆って実施する請求項10又は11に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
前記圧縮溶融成形を、酸素低減又は不存在下で実施する請求項10又は11に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及びその製造方法に関し、特にシール材に適した成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シール材は、石油化学、石油精製、電力、製紙等の各種プラント配管の継ぎ手として使用され、その隙間を塞ぐと同時に、流体の漏れ又は外部からの異物の進入を防止するものである。
【0003】
シール材として、軟らかく、密着する部材とのなじみがよいためシール性が高く、耐薬品性の高いフッ素系樹脂が用いられている(特許文献1,2)。
【0004】
しかしながら、このようなフッ素系樹脂からなるシール材を、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル等のモノマー製造プラントに使用した場合に、製造したモノマーがシール材に浸透し、シール材内で重合することで、シール材が膨潤して配管を塞いだり、シール材自体が破壊される問題があった。加えて、モノマーが漏洩したり、膨潤したシール材が剥離して製品に混入する問題もあった。このため、特許文献1,2では、膨潤抑制材をフッ素系樹脂に添加している。
【0005】
また、フッ素系樹脂からなるシール材は耐クリープ性が悪く、高い締め付け圧力が要求される条件又は繰り返し応力がかかる条件でのシール材としての使用は不適であった。耐クリープ性を向上させるために、フッ素系樹脂に添加する、カーボンファイバー、ガラスファイバー、カーボンブラック等の充填材の量を増やすと、シートが多孔質となり表面積が増加しモノマーが浸透しやすくなり、結果的に耐膨潤性が低下する不具合があった。
【0006】
一方、高い疲労強度や低い摩擦係数を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いた平軸受が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−7157号公報
【特許文献2】特開2000−179712号公報
【特許文献3】特開昭59−182843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、使用期間が長く耐クリープ性が高いシール材を形成し得る成形体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、高い耐クリープ性が求められるボールバルブ用のシール材として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いたシール材を鋭意研究した。PEEKのシール材は、表面にモノマー等が付着して固化し、ボールの動きが悪くなったり漏洩が生じたりし、使用期間が短く頻繁に交換する必要があった。本発明者は、ポリエーテルエーテルケトンに重合抑制剤を添加してシール材を製造すると、シール材へのモノマーの固着が軽減し、使用期間を大幅に延ばせることを見い出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の成形体及びその製造方法が提供される。
1.ポリエーテルエーテルケトン及び重合抑制剤を含む成形体。
2.前記重合抑制剤が、アミン系化合物及びフェノール系化合物から選択される1以上である1に記載の成形体。
3.前記重合抑制剤の含有量が0.01〜10重量%である1又は2に記載の成形体。
4.さらに、フッ素系樹脂を含む1〜3のいずれかに記載の成形体。
5.前記フッ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から選択される1以上である4に記載の成形体。
6.前記フッ素系樹脂の含有量が、0重量%を超えて30重量%以下である4又は5に記載の成形体。
7.さらに、カーボンブラック、カーボンファイバー、グラファイト、アルミナ、酸化チタン、ガラスファイバー、ガラスビーズ、マイカ及び二硫化モリブデンから選択される1以上を含む1〜6のいずれかに記載の成形体。
8.シール材である1〜7のいずれかに記載の成形体。
9.ボールバルブ用シール材である1〜8のいずれかに記載の成形体。
10.耐モノマー用シール材である1〜9のいずれかに記載の成形体。
11.ポリエーテルエーテルケトンと重合抑制剤を含む原料を金型に充填し、
常温圧縮成形した後、圧縮溶融成形する、成形体の製造方法。
12.前記圧縮溶融成形して得られた成形体の外側表面から少なくとも3mmまでの厚みの部分を除去する11に記載の成形体の製造方法。
13.前記圧縮溶融成形を、酸素遮蔽板で原料又は金型全体の外側表面を覆って実施する11又は12に記載の成形体の製造方法。
14.前記圧縮溶融成形を、酸素低減又は不存在下で実施する11又は12に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用期間が長く耐クリープ性が高いシール材を形成し得る成形体及びその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例で用いた応力緩和試験装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[成形体]
本発明の成形体は、ポリエーテルエーテルケトン及び重合抑制剤を含む。
重合抑制剤を含むことにより、成形体を、例えばモノマー製造プラントにシール材として使用した場合であっても、モノマーが成形体に固着してシール性が劣化することを抑制できる。また、ボールバルブに使用した場合は、固着によりボールの動きが阻害されることが抑制される。このため、シール材の使用期間が長くなり、交換頻度を低くすることができ、プラントの稼働率を高めることができる。
【0013】
成形体の形状としては、ボールバルブシート、パッキン、ガスケット、ライニング、容器等が挙げられる。
【0014】
本発明の成形体は、耐熱性、耐膨潤性、耐薬品性に優れ、シール材として使用できる。特に、モノマーを製造する装置において、製造されるモノマーと接触する部材に使用するシール材(モノマー用シール材)として使用できる。本発明の成形体は耐クリープに優れるので、ボールバルブシートとして使用するのに適する。
【0015】
以下、本発明の成分について説明する。
1.ポリエーテルエーテルケトン
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、下記式(1)で表される構造(式中、nは繰り返し数である)を有する化合物である。
【化1】
【0016】
PTFEを用いて成形体を製造することにより、成形体の耐クリープが優れる。さらに、成形体をモノマー製造装置のシール材として使用するとき、モノマー凝集物の付着性が低下し、シール性とすべり性が向上する。従って、シール性を保ちつつ摺動させる部位に使用するのに適する。また、成形後の脱型もPTFEの含有により型離れが良くなり、製造作業性が向上する。
【0017】
成形体におけるポリエーテルエーテルケトンの含有量は、例えば99.99〜60重量%であり、好ましくは99.9〜75重量%、より好ましくは95〜90重量%である。
【0018】
2.重合抑制剤
重合抑制剤としては、アミン系化合物(アミン系重合抑制剤)、フェノール系化合物(フェノール系重合抑制剤)等が使用でき、好ましくは、アミン系化合物、フェノール系化合物である。
【0020】
アミン系化合物は、上記の他、芳香族第2ジアミン系化合物である、N−フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン等を使用できる。また、ノクラックODA及びノクラックODA−N(いずれも大内新興化学工業製)も使用することができる。
【0021】
フェノール系化合物としては、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【化3】
【0022】
重合抑制剤は上述の化合物群から選択される1以上であればよく、好ましくはDNPDである。
【0023】
成形体における重合抑制剤の含有量は、好ましくは0.01〜10.0重量%であり、より好ましくは0.05〜8.0重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%である。
成形体中の重合抑制材の含有量はガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS分析)により確認できる。
【0024】
尚、成形体に含まれる重合抑制剤の含有量と、成形体の製造のために用いた原料に含まれる重合抑制剤の配合量は必ずしも一致しない。これは、例えば成形体を加熱成形して製造する場合、成形時の熱と酸素によって、原料として使用した重合抑制剤は熱分解によって一部が変化するためである。
例えば重合抑制剤DNPDが熱分解して以下のように構造が変化していると推測される。
【化4】
【0025】
従って、本発明の成形体は、変性していない重合抑制剤を上記の量で含むことが好ましい。そのためには、後述するように、製造方法を工夫する必要がある。
成形体が変性していない重合抑制剤を含むと、例えばモノマー製造プラントに使用した場合であっても、モノマーが成形体に浸透した場合に成形体内での重合を効果的に防止し、成形体が膨潤して配管を塞ぐことや、膨潤によって成形体自体の破壊を防ぐことができる。このことにより成形体の寿命が長くなり、交換頻度を低くすることができ、プラントの稼働率を高めることができる。
【0026】
3.フッ素系樹脂
本発明の成形体に、フッ素系樹脂を含有させると、フランジ等の被シール材に対する密着性(シール性)が良くなり、好ましい。
【0027】
フッ素系樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であり、より好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。
ポリテトラフルオロエチレンには、一旦焼成された成形体を粉末状にした再生ポリテトラフルオロエチレンも含まれる。
【0028】
フッ素系樹脂の成形体における含有量は、例えば、0重量%を超えて30重量%以下である。好ましくは0.5重量%〜40重量%であり、より好ましくは2重量%〜20重量%である。
【0029】
4.その他の成分
本発明の成形体は、充填剤を含んでもよい。モノマーの耐浸透性を低下させない程度が好ましい。このような充填剤としては、カーボンブラック、カーボンファイバー、グラファイト、アルミナ、酸化チタン、ガラスファイバー、ガラスビーズ、マイカ、二硫化モリブデン等が挙げられる。これら充填剤は、1種又は2種以上を使用できる。
【0030】
充填剤の含有量は、例えば0.1〜20重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0031】
本発明の成形体は、本質的に、PEEK、重合抑制剤及び任意にフッ素樹脂と上記の充填剤からなってもよい(consisting essentially of)。本発明の成形体の、例えば、80%重量以上、90重量%以上、95重量%以上又は98重量%以上が、PEEK、重合抑制剤及び任意にフッ素樹脂であってもよい。また、本発明の組成物は、PEEK、重合抑制剤及び任意にフッ素樹脂のみからなってもよい(consisting of)。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0032】
[成形体の製造方法]
本発明の成形体は、下記(1)〜(3)の工程を含む方法で製造できる。
(1)ポリエーテルエーテルケトン(好ましくは99.99〜60重量%、より好ましくは99.9〜75重量%、さらに好ましくは95〜90重量%)及び重合抑制材(好ましくは0.01〜10.0重量%、より好ましくは0.1〜5.0重量%)を含む原料を金型に充填する工程
(2)充填した原料を、圧縮成形する(通常、常温)(好ましくは面圧20〜60MPa、より好ましくは面圧30〜40MPa)(通常4〜10分)工程
(3)圧縮成形体を圧縮溶融成形する(好ましくは300〜400℃、より好ましくは320〜380℃)(好ましくは0.05〜10MPa、より好ましくは0.1〜5MPa)(好ましくは4〜30分、より好ましくは5〜10分)工程
【0033】
得られた成形体は、所望の形状に加工できる。例えば、円筒状の金型を用いて得られた円筒状の形成体を、機械加工してシート状にする。ガスケットとする場合は、シートから円環状に打ち抜く。ボールバルブとする場合は、機械(旋盤)加工する。
【0034】
重合抑制剤は反応系に発生したラジカルを捕捉し、重合抑制材自身が重合して二量体化や環化する等によって重合を抑制する。従って、成形体を製造する際に、原料を酸素存在下で溶融又は加熱すると、重合抑制材が酸素と熱に曝され、酸素のラジカルと熱によって重合抑制剤が変性して、ラジカルキャッチ機能のほとんどが損なわれてしまう。
【0035】
上記の製造方法では、ポリエーテルエーテルケトン及び重合抑制材を含む原料に予め常温又は低温で圧縮成形し、成形体中の酸素が除き、その後、加熱溶融成形することで、重合抑制材の変性を抑制できる。しかしながら、外表面は、変性しやすいため、外表面は機械加工により取り除くことが好ましい。
【0036】
また、金型に充填した原料を、20〜100MPaで常温圧縮成形した後、圧力を20〜100MPaに保ちながら、250℃まで昇温し、次に、圧力を低下しながら昇温して圧縮溶融成形すると、重合抑制材の変性を防ぐことができる。
【0037】
さらに、加熱成形するとき、好ましくは原料を金型に投入直後に酸素遮蔽板で覆って成形、加熱する、又は酸素低減下もしくは酸素不存在下で成形加熱する。これにより重合抑制剤の変性を抑制できる。酸素低減下での焼成としては、例えば、窒素導入下での焼成が挙げられ、酸素不存在下での焼成としては、例えば、窒素雰囲気中での焼成が挙げられる。
【0038】
このようにすると、完成した成形体中に、変性されていない重合抑制材を多く存在させられる。
【実施例】
【0039】
実施例1
ポリエーテルエーテルケトン及びDNPDをヘンシェルミキサーで混合して、DNPDの含有量が1.0重量%である混合バウダーを得た。得られた混合パウダーを金型に充填して、上下からプレス圧力35MPaで5分間常温で圧縮成形し、その後圧力を35MPaに維持しながらヒーターで上下プレス面を250℃まで昇温し、次いで圧力を2MPaに下降した後、上下プレス面を370℃まで加熱した。370℃で10分間保持した後徐冷を行い円筒状の成形体を得た。得られた円筒状成形を旋盤加工し、1.5mm厚のシートを製造した。尚、成形体の外表面3mmの厚さ部分を取り除いてシートを製造した。
得られたシートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[浸漬前後の重量変化率]
得られたシートからASTMマイクロ型ダンベル試験片を打ち抜き、浸漬試験用サンプルを製造した。このサンプルを金属製容器中にセットし、スチレンモノマー液をサンプルが完全に隠れるまで投入した。
常圧下100℃で1日4時間浸漬しこれを5日間に実施した後にサンプル取り出し乾燥した。乾燥させたサンプルの浸漬後の重量を測定し、浸漬前のサンプルからの重量増加分を測定した。尚、当該増加分は、スチレンモノマーがサンプル中で重合することで生じた固形分に由来するものである。
【0041】
[固化スチレン剥れ性]
上記浸漬試験を5日間行うと試験片表面には固化(重合)したスチレンモノマーが堆積する。この堆積物の除去し易さについて比較を行った。
評価は下記に示す4段階とした。
非常に除去し易い:手で直ぐ剥がせる
除去し易い:手で何とか剥がせる
除去し難い:手では剥がせない、刃物等で剥がす
除去できない:内部にスチレンが浸透し表面のスチレンと一体化している
【0042】
[応力緩和率]
得られたシートから、幅10mm、長さ32mm、厚さ1.5mmのサンプルを作製した。
図1に示すJPN株式会社(旧東洋ゲージ株式会社)製のゲージを使用した応力緩和試験装置を用いて、ニチアス株式会社試験規格AS5−6−0087d(応力緩和試験)に従い、以下の手順で応力緩和率を測定し、耐クリープ性について評価した。
100℃,150℃及び200℃で22時間加熱し、加熱前後の応力緩和率を求めた、
【0043】
試験手順
1)平円板の表面を清掃し、座金及びボルトのねじには、低粘度の油(呉工業株式会社製CRC5−56No1005又は同等品)を軽く塗布する。
2)
図1のように、試験片を平円板に挟み、座金を入れて、ナットを指で締める。
3)万力に試験装置固定専用治具を設置し、試験装置固定専用治具の中央に試験装置のボルト頭部を入れ、万力で試験装置固定専用治具を締め試験装置を固定する。
4)ダイヤルゲージアセンブリをボルトにねじ込み、それを指の力で締め付けた後、ダイヤルゲージの零調整棒を数回上下させ、かつダイヤルゲージの外枠回転部を回転調整することによって目盛を零に設定する。
5)ボルトの伸びをダイヤルゲージで確認しながら、締め付け専用レンチでナットを締め、ダイヤルゲージの読みが所定値(D
0mm)に達するまで試験片に応力をかける。
6)締め付け専用レンチによる応力のかけ方は、3秒以内に連続した一動作でかけ、更に同一応力を約3秒間保持する。
7)ダイヤルゲージアセンブリを取外し、ユニット(
図1の応力緩和試験装置からダイヤルゲージアセンブリを除いたもの)を、100℃,150℃又は200℃で22時間、熱風循環炉中で熱処理を行う。
8)熱処理を行ったユニットを炉から取出し、試験室内で扇風機により2.5時間かけて強制冷却し、ユニット温度を試験室温度(25±5℃)と同温度にする。冷却の均一化を図るため冷却開始1時間後に各ユニットの位置変えを行う。
9)強制冷却されたユニットを、3)の手順と同様にしてユニットを万力に固定する。
10)ユニットに再びダイヤルゲージアセンブリをねじ込み、それを指の力で締付けた後、ダイヤルゲージの目盛りを4)と同方法で零に設定する。
11)ダイヤルゲージアセンブリに影響を与えないように締め付け専用レンチでナットを緩め、熱処理冷却後のボルトの伸び(D
fmm)をダイヤルゲージで読取る。
12)応力緩和率は、次の式によって算出する。
応力緩和率(%)=(D
0−D
f)/D
0×100
式中、D
0:試料熱処理前のボルト伸び(mm)
D
f:試料熱処理冷却後のボルト伸び(mm)
【0044】
実施例2
成形体の製造に用いる混合バウダーのDNPDの含有量を5.0重量%とした他は、実施例1と同様にしてシートを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
成形体の製造に用いる混合バウダーがテトラフルオロエチレン(PTFE)を10重量%含む他は、実施例1と同様にしてシートを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に、DNPDを、含有量が1.0重量%となるように配合した。常温で35MPaで成形後、365℃で焼成、機械加工して1.5mm厚のシートを製造した。
得られたシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
比較例2
テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)に、DNPDを1.0重量%、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)を0.5重量%となるように配合して、熱プレスを用いて360℃で溶融成形し、機械加工して1.5mm厚のシートを製造した。
得られたシートについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
比較例3
ポリエーテルエーテルケトンを金型に充填して、上下からプレス圧力35MPaで5分間常温で圧縮成形し、圧力を2MPaに下降した後上下プレス面をヒーターで370℃まで加熱した。370℃10分間保持した後徐冷を行い円筒状の成形体を得た。得られた成形体を旋盤加工して1.5mm厚のシートを製造した。
得られたシートについて、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例4
成形体の製造に用いる混合バウダーがテトラフルオロエチレン(PTFE)を10重量%含む他は、比較例3と同様にしてシートを作製し、評価した。結果を表1に示す
【0050】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の成形体は、浸透性を有するモノマーを製造する石油化学プラントの配管、バルブに使用されるシール材として好適に使用される。