特許第6602143号(P6602143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602143
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】炊飯方法及び炊飯設備
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   A47J27/00 109G
   A47J27/00 109F
   A47J27/00 109R
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-200274(P2015-200274)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-70565(P2017-70565A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】冨田 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】竹森 利和
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−229942(JP,A)
【文献】 特開2005−013428(JP,A)
【文献】 特開2014−097125(JP,A)
【文献】 特開2014−083203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定して炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を求め、前記飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定浸水時間を求め、求めた推定浸水時間が短いほど、前記炊飯工程において、高い熱量で炊飯する炊飯方法。
【請求項2】
炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定して炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を求め、前記飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定浸水時間を求め、求めた推定浸水時間が短いほど、前記炊飯工程において、大量の水で炊飯する炊飯方法。
【請求項3】
前記含水率関連情報が、炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の吸水に伴う透過光強度の変化から求められる含水率である請求項1または2に記載の炊飯方法。
【請求項4】
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を求める監視部を備えるとともに、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定される推定浸水時間に基づき、炊飯装置における炊飯火力を調節する火力制御装置を備えた炊飯設備。
【請求項5】
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を求める監視部を備えるとともに、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定される推定浸水時間に基づき、炊飯装置における炊飯水量を調節する水量調節装置を備えた炊飯設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法、および、炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炊飯された米の食味を評価する方法が検討されており、米をおいしく炊く技術が検討されている。一般的に米の食味を左右する代表的な要因として炊飯米の硬さ、炊飯米の粘り等に基づく食感が挙げられるが、炊飯米の硬さ、炊飯米の粘りを直接測定して炊き上がり状態を制御することは困難であるため、炊飯前の米の状態を測定し炊き上がりの食感を制御することが考えられる。また、炊飯方法によっても炊飯米の食感は大きく変わり、米の洗浄、浸漬、炊飯(加熱)の工程を制御することによりコメの炊き上がり品質は大きく左右される。ここで、米の炊飯前の水への浸漬工程は、炊飯後の米飯の食感を制御するうえで、特に重要な工程である。
【0003】
浸漬工程を行う際の浸漬条件(時間、温度、濃度など)により米の含水状態は大きく変わることが知られている。一般的に、米の含水状態は、浸漬後のサンプルを水分率計で測定する方法により評価されている(たとえば特許文献1等参照)。
【0004】
また、含水状態を左右する要因として炊飯米の内部構造をMRI(核磁気共鳴マイクロイメージング)により評価する試みもなされている(たとえば特許文献2、非特許文献1等参照)。
【0005】
特許文献1に記載の測定方法によれば、浸漬後の米粒を、測定のたびにサンプリングする必要があるので、同一の米粒について連続的に経時的な変化を測定することが困難である。また、水に浸漬された米粒から余分な水分を拭き取って重量変化を測定する作業が必要になるので、水分の除去程度のばらつきがそのまま測定値に大きく影響してしまう。そのため、上記測定方法は、複雑で誤差も大きく、経時的な含水状態の変化を把握するのに不向きである。したがって、浸漬工程の都度、コメの含水状態を評価するために煩雑な作業が必要になり、信頼性高く含水状態を評価するには熟練を要し、正確な含水率を求めるには信頼性が不十分という現状にある。
【0006】
また、MRIによる測定を行う場合にあっても、浸漬後の同一の米粒について連続的に経時的な変化を測定することができるものの、装置構成が大掛かりになるとともに、特殊なサンプリングが必要になるなど、測定に煩雑な作業を要するため、簡便に含水状態の変化を把握できないものであった。
【0007】
さらに、浸漬工程を、炊飯釜毎に炊飯対象米を計量して必要量の水に浸漬して行ういわゆる一釜式の浸漬工程を行う場合には、炊飯対象米の浸水時間は釜ごとに管理できるので、炊飯される炊飯対象米ごとの浸水時間が大きくばらつくのを抑制できる。しかし、大容量のタンクに炊飯対象米を水に浸漬状態で収容し、炊飯可能な浸水時間に達した炊飯対象米を炊飯釜に払い出し、計量して順次炊飯するいわゆるタンク式の浸漬工程を行う場合には、大容量のタンクから、最初に払い出される炊飯対象米と、最後に払い出される炊飯対象米との間には、浸水時間に大きな差が生じる場合がある(特許文献3参照)。したがって、炊飯対象米の浸水時間を一定に管理することは困難であり、炊飯後のご飯の品質にある程度のばらつきが生じてもやむを得ない状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−323418号公報
【特許文献2】特開2000−065768号公報
【特許文献3】特開平07−327617号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Mitsuru Yoshida,“Observation of Moisture Distribution Affecting Texture of Food by MRI”, Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol.59,No.9,478〜483 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
つまり、最初に払い出される炊飯対象米と、最後に払い出される炊飯対象米との間には、浸水時間に大きな差が生じる。含水率を正確に求め炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を設定して炊飯対象米の払い出しを始めたとしても、払い出し作業が完了する時点では炊飯対象米が飽和浸水時間に比べ長時間浸漬される過浸漬状態となっており、このような炊飯対象米を炊いてもべたついた食感になり、おいしいと評価されるご飯を提供することが困難になる場合があった。実際にタンクから払い出される炊飯対象米の浸水時間は、払い出し初めから終わりにかけて、60〜90分の差が生じる場合があった。
そこで、実際にタンクから払い出される炊飯対象米の平均浸水時間が最適な飽和浸水時間となるように、炊飯対象米の払い出しタイミングを調節することも考えられる。しかし、払い出し初めの炊飯対象米が浸漬不足気味になっているため、このような炊飯対象米を炊いても固い芯が残り、おいしいと評価されるご飯を提供することが困難になる場合がある。そのため、払い出しタイミングを最適化したとしても、炊飯されたご飯の品質がばらつくことに変わりなく、より適正に炊飯する技術が求められている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、タンク式の浸漬工程を行う場合など、浸水時間にばらつきのある炊飯対象米を炊飯する場合であっても、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を炊飯できる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の炊飯方法の特徴構成は、
炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定して炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を求め、前記飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定浸水時間を求め、求めた推定浸水時間が短いほど、前記炊飯工程において、高い熱量で炊飯する点にある。
【0013】
〔作用効果1〕
炊飯対象米を水に浸漬した状態に配置すると、その米には水が浸透してコメの含水率が次第に上昇する。このとき、米は水分を吸収することによって膨張したり、透過光強度(色調)が変化したりする。以下、コメの吸水に伴いこのように状態変化する情報を「含水率関連情報」と称する。
【0014】
また、「水に浸漬する」という場合、水としては、常温の水に限らず、冷却、加熱した水も含み、水に浸漬する温度は問わないものである。また、米のみを水に浸漬する場合の他、炊き込みご飯のように、米以外の具材等をともに浸漬している場合や、水に調味料、果汁等の他の成分が溶解している場合についても、「水に浸漬する」状態に含まれるものとする。
【0015】
含水率関連情報は光学的に監視することができ、含水率関連情報に対応してコメの含水率を求めることができる。そのため、水に浸漬された米を光学的に監視することによって、米の含水率の変化を経時的に観測することができる。この含水率の経時的な変化が少なくなると、米が通常含水できる水分を十分吸水して飽和した状態になったものと考えられ、この時点で米は炊飯に適した含水率となっている。この時点より以前では、含水率が不十分で炊飯してもごわごわした食感の炊飯米になるし、含水が飽和してなお、水への浸漬状態を維持し続けると、米への含水が過飽和になって、炊飯してもべとべとした食感の炊飯米となるなど、食味が低下する。
【0016】
したがって、米の含水率の飽和状態を検知することにより、米が炊飯に適した状態であると判定することができる。すなわち、米を光学的に監視するだけの簡便な構成により、米が炊飯に適した状態であることを定量的に判定することができる。
【0017】
また、米を光学的に観測することにより米の含水状態を判定するものであるから、炊き込みご飯など、米以外の材料をともに含んだ状態での炊飯の場合であっても、米以外の材料や溶解成分の影響を受けることなく含水率を測定することができるので、有効に利用することができる。
【0018】
このように炊飯に適した含水状態であると判定された米を炊飯すると、食感に優れ、おいしいとの評価を得られやすい炊飯米として提供できるようになる。
【0019】
この米の含水率を、含水率関連情報から推定される、炊飯対象米を浸漬工程に供して以降の経過時間(推定浸水時間)で管理する場合、まさに炊飯に供する炊飯対象米の浸水時間が、炊飯対象米の含水率が飽和(含水率がはぼ一定になり変化が見られにくくなる状態)に達する米の銘柄(種類)、産地、収穫時期等により適切に設定された適正時間となるように制御すれば炊き上がったご飯の状態は、ばらつきなく、おいしいご飯に炊きあがるものと考えられる。しかし、いわゆるタンク式の浸漬工程を行う場合等で、大容量のタンクから、最初に払い出される炊飯対象米と、最後に払い出される炊飯対象米との間には、大きな浸水時間の差が生じる。
すると、浸水時間の短い炊飯対象米(以下浸漬不足米)は炊飯しても固いごわごわした食感のご飯となり、浸水時間の長い炊飯対象米(以下過浸漬米)は炊飯しても柔らかくべとべとした食感のご飯となる。
【0020】
このような場合、推定浸水時間が少ない浸漬不足米を高い熱量で炊飯することによって、炊飯対象米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において高い熱量で炊飯すると、高温の水が炊飯対象米に作用することになり、多くの熱量が炊飯対象米に作用することになって、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。そのため、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
なお、「高い熱量」という場合、沸騰時間を長くする(火力を弱くして長時間かけて水を沸騰させる)ことで高い熱量を実現することもでき、同じ加熱温度でも炊飯完了までの加熱維持時間を長くする(沸騰状態を長時間維持する)、あるいは、水量を多くして炊飯完了までの加熱維持時間を長くすることでも高い熱量を実現することもできる。
また、推定浸水時間はあらかじめ求められた、浸漬対象米が飽和状態に達する浸水時間(飽和浸水時間)に基づき浸漬開始からの時間で代用することもできるし、リアルタイムに米を光学的に監視し、含水率関連情報をモニタすることによって求めることもできる。浸漬開始からの時間で代用すると、簡便な装置構成で浸漬工程を行うことができ、含水率関連情報をモニタすることによって求めると、より正確な推定浸水時間を適用することができるようになる。
【0021】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【0022】
なお、米の含水率が飽和状態になったかどうかは、種々公知の手法を用いることができる。たとえば、含水率に対応する測定値自体の値が所定の閾値を超えた時点で飽和状態と判定する方法、含水率に対応する測定値の変化率が所定の閾値よりも小さくなった時点で飽和状態と判定する方法などである。このような場合に用いられる閾値としても、慣用されているように、測定誤差、炊飯時における影響度などを踏まえて設定される許容範囲を考慮した値などを適宜採用することができる。
【0023】
また、含水率関連情報の測定方法についても以下に例示されるように吸水に伴う透過光強度の変化を求める方法や、吸水に伴う炊飯対象米の膨張率の変化を求める方法、さらには、炊飯対象米の含水率が飽和に達する飽和浸水時間に基づき設定される浸水時間を含水率関連情報として利用するなど種々の方法を採用することができる。
【0024】
〔構成2〕
また、上記目的を達成するための本発明の炊飯方法の特徴構成は、
炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定して炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を求め、前記飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定浸水時間を求め、求めた推定浸水時間が短いほど、前記炊飯工程において、大量の水で炊飯する点にある。
【0025】
〔作用効果2〕
推定浸水時間が少ない浸漬不足米を大量の水とともに炊飯することで、炊飯対象米の炊飯完了までに要する時間が長くなり、炊飯工程においても浸漬不足米の吸水時間を確保して、浸漬不足米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において多めの水とともに炊飯すると、大量の水が炊飯対象米に作用することになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。また、通常の炊飯時と火力を変えないものとすると、炊飯に要する時間が長くなり(水が沸騰して気化するまでに必要な時間も増し)、水が炊飯対象米に作用する時間が増すことになるため、より高い熱量で炊飯できることになるとも考えられる。そのため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となって、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
【0026】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【0027】
〔構成3〕
また、前記含水率関連情報が、炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の吸水に伴う透過光強度の変化から求められる含水率とすることができる。
【0028】
〔作用効果3〕
米からの光として透過光を監視した場合、米が吸水するのに伴って、透過光の強度が変化する。すなわち、米からの透過光を監視すると炊飯対象米の吸水に伴う光透過度が変化するので、その米の吸水に伴う透過光強度を求めることができる。米の光透過度は、含水率の向上に伴うでんぷん質の物性変化により光の透過性が損なわれることにより低下するものと推定される(理論に拘泥されるものではないが、でんぷんの結晶構造を構成するでんぷん鎖の間に水分子が浸入することによって、でんぷん鎖の間隔が開き、透過光の散乱を促し、透過光強度が低下するものと説明できる)から、透過光強度は、米の含水率と相関を有する含水率関連情報として取り扱うことができる。したがって、透過光強度を含水率関連情報として含水率を推定し炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知すれば、米が炊飯に適した含水状態であると判定できる。
【0029】
したがって、たとえば光学顕微鏡装置のような透過光監視可能な簡便な装置によって、米が炊飯に適した含水状態であることを正確に判定することができる。また、簡便な構成をもって判定することができるから、炊飯設備に対しても容易に適用することができ、炊飯後の米飯の食感を好適に制御するのに利用することができる。
【0030】
〔構成4〕
また、本発明の炊飯設備の特徴構成は、
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を求める監視部を備えるとともに、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定される推定浸水時間に基づき、炊飯装置における炊飯火力を調節する火力制御装置を備えた点にある。
【0031】
〔作用効果4〕
上記炊飯設備は浸漬装置を備えるから、米を水に浸漬して炊飯に適した含水状態にまで含水させる浸漬工程を行うことができ、吸水した米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えるから、吸水した米を炊いて炊飯米を得る炊飯工程を行うことができる。
【0032】
ここで、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視する監視部を設けたから、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。
これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。また、含水率関連情報は、米の含水率と相関のある情報であるから、含水率関連情報から米の含水率を推定することができる。その結果、含水率関連情報を基に米の含水率の経時変化を解析することにより、米の含水率の飽和状態となる飽和浸水時間を知ることができ、また、飽和浸水時間と含水率関連情報との関係から推定浸水時間を知ることができる。
【0033】
炊飯装置における炊飯火力を調節する火力制御装置を備えたから、浸漬装置に浸漬された炊飯対象米の推定浸水時間と、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間との差に基づき、炊飯装置における炊飯火力を調節できる。
【0034】
すると、推定浸水時間が少ない浸漬不足米を高い熱量で炊飯することによって、炊飯対象米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において高い熱量で炊飯すると、高温の水が炊飯対象米に作用することになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。そのため、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
【0035】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【0036】
〔構成5〕
また、本発明の炊飯設備の特徴構成は、
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を求める監視部を備えるとともに、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定される推定浸水時間に基づき、炊飯装置における炊飯水量を調節する水量調節装置を備えた点にある。
【0037】
〔作用効果5〕
上記炊飯設備は浸漬装置を備えるから、米を水に浸漬して炊飯に適した含水状態にまで含水させる浸漬工程を行うことができ、吸水した米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えるから、吸水した米を炊いて炊飯米を得る炊飯工程を行うことができる。
【0038】
ここで、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視する監視部を設けたから、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。
これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。また、含水率関連情報は、米の含水率と相関のある情報であるから、含水率関連情報から米の含水率を推定することができる。その結果、含水率関連情報を基に米の含水率の経時変化を解析することにより、米の含水率の飽和状態となる飽和浸水時間を知ることができ、また、飽和浸水時間と含水率関連情報との関係から推定浸水時間を知ることができる。
【0039】
炊飯装置における炊飯水量を調節する水量調節装置を備えたから、含水率関連情報に基づき推定される、浸漬装置に浸漬された炊飯対象米の推定浸水時間と、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間との差に基づき、炊飯装置における炊飯水量を調節できる。
【0040】
すると、推定浸水時間が少ない浸漬不足米を炊飯対象米の実際の浸水時間が短いほど、大量の水で炊飯することによって、炊飯対象米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において多めの水とともに炊飯すると、大量の水が炊飯対象米に作用することになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。また、通常の炊飯時と火力を変えないものとすると、水が沸騰して気化するまでに必要な時間も増し、水が炊飯対象米に作用する時間が増すことになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。そのため、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
【0041】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、大量の水で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【発明の効果】
【0042】
したがって、タンク式の浸漬工程を行う場合など、浸水時間にばらつきのある炊飯対象米を炊飯する場合であっても、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を炊飯できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】炊飯設備の概略図
図2】未浸漬米と浸漬米との透過光強度の分布を示すグラフ
図3】光学的に求めた米の暗割合の経時変化を示すグラフ
図4】暗割合と含水率の相関を示すグラフ
図5】別実施形態の浸漬装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の実施形態にかかる炊飯方法及び炊飯設備を説明する。尚、以下に好適な実施形態を記すが、これら実施形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0045】
〔炊飯方法〕
本発明の炊飯方法は、炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う。
炊飯工程において、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯する。
もしくは、炊飯工程において、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、大量の水で炊飯する。
【0046】
このとき、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定し、含水率関連情報に基づき浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間を求める。
【0047】
含水率関連情報は、たとえば、炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の吸水に伴う透過光強度の変化から求められる含水率として求められる。また、炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の吸水に伴う炊飯対象米の大きさの変化から膨張率として含水率関連情報を求めることもできる。
【0048】
〔含水率関連情報の測定〕
炊飯対象米の含水状態は、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米をたとえば光学顕微鏡装置としてのDMS(デジタルマイクロスコープ)等を用いて光学的に監視して、米の含水率に関連する含水率関連情報として、たとえば米の透過光強度の変化等を経時的に測定し、炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知して、炊飯対象米が炊飯に適した含水状態であると判定することができる。
【0049】
なお、透過光強度は、たとえば、炊飯対象米からの透過光を顕微鏡装置にて監視して、得られる炊飯対象米の吸水に伴う透過光強度を測定することにより得られる。例えば、吸水前の炊飯対象米に対して、光を照射して、背景(明)領域を255、不透明(暗)領域を0とする256階調に数値化することにより、炊飯対象米の透過光強度の分布を測定することができる。
【0050】
このような炊飯対象米の含水状態判定方法を行うための炊飯設備の具体的な実施形態の例を以下に示す。
【0051】
〔炊飯設備〕
本発明の実施形態にかかる炊飯設備は、図1に示すように、たとえば洗米機1から供給される炊飯対象米(以下単に米と称する場合もある)rを水に浸漬する浸漬装置2を備えるとともに、浸漬装置2において吸水した炊飯対象米rを受け入れて加熱炊飯する炊飯装置3を備え、浸漬装置2において浸漬された米rを炊飯装置3に移送する移送装置5を備える。
また、浸漬装置2において炊飯対象米rの含水率が飽和状態に達するのに要する飽和浸水時間を求め、浸漬装置2から炊飯装置3に移送される炊飯対象米rの推定浸水時間を測定する浸水時間判定装置4を備える。
さらに、移送装置5の動作を制御する米移送制御部62、炊飯装置3の火加減を制御する加熱制御部63等を備えてなる制御装置6を備える。
この制御装置6は、CPU、メモリー等を備えたマイコンから構成され、各浸漬装置2、浸水時間判定装置4、移送装置5、炊飯装置3の動作制御を行うことにより、浸漬装置2、浸水時間判定装置4、移送装置5、炊飯装置3の一部として機能する。
【0052】
〔浸水時間判定装置〕
浸水時間判定装置4は、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視する監視部42bを備え、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定する。また、浸水時間判定装置4は、含水率関連情報から推定される炊飯対象米の推定浸水時間、および、炊飯対象米の含水率が飽和状態に達するのに要する飽和浸水時間を求める浸水時間演算部61を備える。
飽和浸水時間は、たとえば、浸漬対象米の炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の吸水に伴う透過光強度の変化から求められる含水率がほぼ一定になるのに要する時間として求め、実際の含水率変化率が所定値以下になる時点をもって飽和浸水時間としてもよいし、含水率の変化率から予測される含水率がほぼ一定になるのに要する時間として求めてもよい。また、推定浸水時間は、飽和含水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報とを比較して得られる浸水時間であり、たとえば含水率関連情報の変化率から推定することができる。
そして、含水率関連情報に基づき推定される、浸漬装置2に浸漬された炊飯対象米の推定浸水時間と、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間との差に基づき、炊飯装置3における炊飯火力を調節する火力制御装置63aを備える。また、含水率関連情報に基づき推定される、浸漬装置2に浸漬された炊飯対象米の推定浸水時間と、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間との差に基づき、炊飯装置3における炊飯水量を調節する水量調節装置63bを備える。
なお、火力制御装置63aおよび水量調節装置63bは両方備えることが望ましいが、いずれか一方のみであってもよい。
【0053】
具体的に監視部42bは、炊飯対象米rの一部をサンプリングして洗米するとともに、水に浸漬した状態に配置する米保持部41を備えるとともに、吸水に伴う炊飯対象米rの透過光強度の変化を経時的に監視測定する監視部42bとしてDMS42を備えて構成してある。監視部42bでは、炊飯対象米を水に浸漬して光を照射し、DMSで米の透過光を観察し、得られた画像をデジタル処理した。デジタル処理として、米の輪郭線に囲まれる領域を多数のピクセルに分割するともに、そのピクセルごとに濃淡を、背景(明)領域を255、不透明(暗)領域を0とする256階調に数値化した。濃淡がそれぞれの階調に含まれるピクセル数をカウントする。
その結果、得られた含水率関連情報としての透過光強度の変化率が一定値になったと判断される時点を飽和浸水時間として求め、飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報との関係から推定浸水時間を求めることができる。
【0054】
火力制御装置63aは、含水率関連情報に基づき求められる推定浸水時間が短いほど、炊飯工程において、高い熱量で炊飯する。炊飯工程において高い熱量で炊飯するには、炊飯時間を延長することによって炊飯に要する熱量を増加させればよい。具体的には火力を弱め、長時間沸騰状態を維持するように炊飯することにより高い熱量で炊飯できる。
なお、推定浸水時間と飽和浸水時間との差が大きいほど熱量を増加させるように熱量を比例的に調節する制御とすることもできるし、段階的に調節する制御とすることもできる。
【0055】
また、水量調節装置63bは含水率関連情報に基づき求められる推定浸水時間が短いほど、炊飯工程において、大量の水で炊飯する。炊飯工程において大量の水で炊飯するためには、炊飯釜30に投入される米rに対する水量を増やせばよい。
なお、推定浸水時間と飽和浸水時間との差が大きいほど水量を増加させるように水量を比例的に調節する制御とすることもできるし、段階的に調節する制御とすることもできる。
【0056】
〔浸漬装置〕
浸漬装置2は、洗米機1から供給される洗浄済みの米rを計量して受け入れるとともに、米重量に応じた水を受け入れて米rを水に浸漬保持するタンク21を備える。そのタンク21には、浸漬済みの米rを取り出す取り出し口22を備えるとともにその取り出し口22に開閉制御弁23を設けてある。これにより、浸水時間演算部61が推定浸水時間を求めて、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間よりやや短く設定させる設定浸水時間となった時点で浸漬を完了し、水に浸漬された米rをタンク21から排出自在に構成してある。なお、米rの払い出し完了時期は飽和浸漬時間に近似して設定され、多少の過浸漬であっても炊飯された炊飯米が不良と判定されない程度の良好な炊き上がりを確保できるように設定されている(後の実施例では炊き上がりは良好と判定される程度の過浸漬とされている)。
【0057】
このような構成により、タンク21に供給された米rは、計量後水に浸漬されることになり、浸漬は浸水時間演算部61の演算結果に基づく開閉制御弁23の開動作により完了させられる。
【0058】
〔移送装置〕
移送装置5は、浸漬装置2の取り出し口22から排出された浸漬済みの米rを、水切りする水切り部51を備え、水切りされた浸漬済みの米rを、炊飯装置3に移送する移送部52を備える。
【0059】
このような構成により、浸漬済みの米rは水切りされた後、後述の炊飯装置3に設けられる計量部31に設けられた炊飯釜30に投入することができる。
【0060】
〔炊飯装置〕
炊飯装置3は、炊飯釜30に投入された米rを計量して、米rの量に応じて水量調節装置63bにより求められた水を加えて炊飯準備を行う計量部31と、加熱装置32aにより炊飯釜30に投入された米rを火力制御装置63aに基づく火力にて加熱炊飯する加熱部32と、炊飯された米rをほぐして、取り出し可能にする取り出し部33とを備える。
【0061】
計量部31で炊飯準備された炊飯釜30は、制御装置6の米移送制御部62により動作制御される搬送装置34により、順次加熱部32、取り出し部33へと搬送される。
【0062】
このような構成により、移送装置5から受け入れた米rは、制御装置6の加熱制御部63により適切な火加減で順次加熱されて、炊飯米に加工され、たとえば、弁当などの容器に個別に包装する下流側の装置等に受け渡すことができる。
【0063】
このような構成により、移送装置5から受け入れた米rは、制御装置6の加熱制御部63により適切な火加減で順次加熱されて、炊飯米に加工され、たとえば、弁当などの容器に個別に包装する下流側の装置等に受け渡すことができる。
【0064】
〔実験例〕
以下に、上述の炊飯方法および炊飯設備によって炊飯される炊飯米の含水率の測定と炊飯結果との関係について調べた実験例について詳述する。
【0065】
〔実験例:透過光強度〕
炊飯対象米を水に浸漬して光を照射し、DMSで米の透過光を観察し、得られた画像をデジタル処理した。デジタル処理として、米の輪郭線に囲まれる領域を多数のピクセルに分割するとともに、そのピクセルごとに濃淡を、背景(明)領域を255、不透明(暗)領域を0とする256階調に数値化した。濃淡がそれぞれの階調に含まれるピクセル数をカウントしたところ、水に未浸漬の米(未浸漬米)は、130〜180程度の濃淡値をピークとする濃度分布を示し、120分以上水に浸漬した米(浸漬米)は、70〜120程度の濃淡値をピークとする濃度分布を示すことが分かった(図2参照)。
【0066】
そこで、米の輪郭線に囲まれる領域(ピクセル)に占める濃淡値として130(閾値)以下の領域(ピクセル)の占める割合(暗割合)について、実施例1同様に経時変化を調べたところ図3のようになった。すなわち、暗割合は、浸漬開始初期に速やかに大きくなり、60〜90分で飽和に達していることがわかる。
また、水温を種々変更して同様に割合(暗割合)の傾向を調べたところ、この傾向は、水温に拠らず同様であるが、水温が低いほど、暗割合の増加速度が低いが最終割合はほぼ同じであることがわかる。なお、図3では、水温を、10℃、25℃、40℃、55℃に変更して割合(暗割合)を調べた。
なお、米の透過光を測定する際、DMSで観察するのに代えて、通常の光学顕微鏡装置を用いても同様に暗割合を測定することができる。透過光としても、可視光の透過光強度や、特定波長の光の透過光強度を適用することもできるし、さらにその光の偏光等を測定することにより暗割合を求めることもできる。要するに米の含水に伴う透過光の強度変化や偏光度合いの変化等を定量的に把握できる観察方法であれば、種々公知の技術を採用することができる。
【0067】
〔比較実験例〕
上記暗割合と含水率との相関関係を調べるため、上記実験例で用いた炊飯対象米と同じロットの炊飯対象米を水に浸漬し、従来と同様に水分率計を用いて米の含水率の経時変化を調べたところ、図4のようになった(ただし図4においては暗割合を評価する閾値を110としている)。すなわち、暗割合と含水率との間には高い相関性があり、米の透過光強度は、含水率関連情報として有効に利用でき、米を適した含水状態で炊飯することにより炊飯米の食感を好適に制御できることがわかった。
【0068】
水分率計による含水率の測定結果を参照すると、いずれの温度で浸漬を行った場合であっても、米の含水率が飽和状態に達した時点で炊飯に適した含水状態となっていることが確認されているので、米の透過光強度を経時的に測定し、透過光強度から推定される炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知して、炊飯対象米が炊飯に適した含水状態であると判定できることが分かった。
【0069】
〔実施例〕
上記浸漬装置で米を浸漬する場合、定量払い出しを行った場合に、いっぱいに収容された浸漬対象米が、全部払い出されるまでに60分かかるタンクを用いた場合に、飽和浸水時間が60分〜90分であり、60分〜90分の浸水時間で最適含水率となる米を用いて炊飯を行った場合、米の払い出しを浸漬開始から40分経過時から始め、100分経過時までに完了する運転を行った。なお、ここで用いた炊飯対象米は、飽和浸水時間で払い出された0.3Kgの米を0.48Lの水とともに、0.48Lの水が8分で沸騰状態に達する火力条件(以下これを標準火力と呼ぶ)で、20分間炊飯(沸騰状態を維持)すれば最適な炊飯が行えることがあらかじめ分かっている。ここで、火力制御装置と水量調節装置とは、浸漬装置における炊飯対象米の浸漬開始時からの経過時間や、飽和浸水時間における透過光強度との比較により設定される透過光強度を含水率関連情報として推定浸水時間として炊飯工程における火力及び水量を調節するとともに炊飯時間を調節する。以下では、含水率関連情報として既知の飽和浸水時間に基づく実際の浸水時間を推定浸水時間として利用し、火力及び水量とともに炊飯時間を調節している。
【0070】
40分経過時から60分経過時に、炊飯釜に投入し始められた炊飯対象米0.3Kgを0.48Lの水とともに標準火力で、20分間炊飯したところ、固くてごわごわしたご飯に炊きあがった。これに対して、標準火力で、23分間炊飯したところ、食感の優れたおいしいご飯を炊き上げることができることが分かった。
【0071】
また、60分経過時から90分経過時に炊飯釜に払い出された炊飯対象米0.3Kgを0.48Lの水とともに標準火力で、20分間炊飯したところ、食感の優れたおいしいご飯を炊き上げることができた。
【0072】
また、90分経過時から100分経過時に炊飯釜に払い出された炊飯対象米0.3Kgを0.48Lの水とともに標準火力で20分間炊飯したところ、べとべとしたご飯に炊きあがった。これに対して、標準火力で17分間炊飯したところ、食感の優れたおいしいご飯を炊き上げることができることが分かった。
【0073】
これらの比較により、含水率関連情報に基づき求められる推定浸水時間が短いほど、炊飯工程において、高い熱量で炊飯することにより、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できることがわかった。
【0074】
〔実験例3:ご飯の食感〕
種々の炊飯条件で炊飯したご飯の食感を、炊飯直後に、クリープメータ(山電製RE2−33005B)を用いて,一粒法により破断強度試験を測定した。破断強度試験による測定には,飯粒一粒をくさび形プランジャ(接触面積2.0mm2)を使用し,圧縮速度1.0mm/sec,測定歪率100%,格納ピッチ0.02secの条件で圧力及び歪率の変化を測定した。試験はそれぞれ炊飯完了後40分以内に行い,1回の試験で各10粒測定した。米は実施例にて用いたものを用い、種々の浸水時間で払い出された0.3Kgの米を0.48Lの水とともに、標準火力で20分間炊飯(沸騰状態を維持)する標準熱量条件で炊飯したものと、標準熱量条件よりも3分間追加炊飯を行った高熱量条件で炊飯したものとを比較した。
その結果、表1のようになった。
【0075】
【表1】
【0076】
表より、同じ浸水時間では標準熱量よりも高熱量のほうが柔らかいご飯が得られていることがわかるが、浸水時間20分の浸漬不足米では標準熱量の場合と高熱量の場合で破断エネルギーが大きく異なるのに対して、浸水時間120分の過浸漬米ではあまり大きな差が見られないことが見て取れる。
したがって、炊飯工程における熱量でご飯の炊きあがり固さを制御する場合、積極的に浸漬不足米が生じる払い出し条件で浸漬工程を終了し、推定浸水時間が短い(浸漬不足米)ほど、炊飯工程において、高い熱量で炊飯するように炊飯することで、より効果的に炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できることが明らかになった。
【0077】
なお、過浸漬米を炊飯する場合には、先の例とは逆に、炊飯熱量を低くする、炊飯を少な目の水量で行う等の制御を行って炊飯することにより、炊飯後のご飯の品質を一定に近づけることができる。
【0078】
〔別実施形態〕
(1)
上述の実施形態では、炊飯設備は、浸水時間判定装置4により求められた飽和浸水時間にしたがって、自動で設定浸水時間が設定され、洗米機1、浸漬装置2、炊飯装置3を順次運転するものとしたが、これに代えて、測定された飽和浸水時間に基づき設定浸水時間を手動で入力するための浸水時間入力部を備えた構成とすることもできる。すなわち、米の生産地、銘柄、収穫時期、保管方法、期間等が明らかな共通のロットでは、共通の飽和浸水時間となっているものと考えることができるから、同じロットの米を共通の飽和浸水時間を有するものとして炊飯する場合の設定浸水時間を手動で設定できることになり、より簡易かつ確実に適した含水状態の米を炊飯することができる。
【0079】
(2)
また、上記構成では、浸水時間判定装置4を浸漬装置2とは別途設けた例を示したが、業務用の連続式のものでは、浸漬装置2とは別途飽和浸水時間を求める浸水時間判定装置4を設ける構成とするほうが汎用性に優れ、浸水時間判定用の米を必要に応じてサンプリングして用いるのが効率面で有利と考えられるのに対し、小規模のものであれば、炊飯ごとに確実に設定浸水時間の最適化が行われる方が好ましいと考えられる場合もある。このような場合、以下のように構成することもできる。
【0080】
〔炊飯設備〕
この実施形態にかかる炊飯設備は、本実施形態と共通する部分については同様の構成を採用することができるので説明を省略するが、図5に示すように、浸漬装置2が炊飯対象米rの一部をサンプリングするサンプリング部41bと、サンプリング部41bに採取された炊飯対象米rを水に浸漬した状態で光学的に監視する光学カメラ装置42等を備えた監視部42bと、を備え、
監視部42bで炊飯対象米rの大きさや透過光強度を経時的に測定し、含水率関連情報から推定される炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知して、炊飯対象米rを浸漬装置2から取り出して炊飯装置3に移送させる浸水時間演算部61を備えて構成してある。
【0081】
この例では、サンプリング部41bは、浸漬装置2のタンク21の壁部に設けた透光窓21a近傍にメッシュ状壁部材21bで区画された隙間領域21cで構成されている。また、浸漬装置2に米rを投入する際には、サンプリング部41b近傍に自動的に米が採取され、また、米rの投入完了後には、メッシュ状壁部材21bが透光窓21aに対して押し当てられることで、複数の米rが透光窓21aに密着して並列された状態に保持されるように構成してある。この状態で、米rを水に浸漬する際にはサンプリング部41b内部の米rが水に浸漬された状態になる。また、メッシュ状壁部材21bは、浸漬装置2から水に浸漬済みの米rを排出する際に、透光窓21aから離間して隙間領域21cに採取した米rも容易に同時に排出できる構成となる。これにより、サンプリング部41bに採取した米rの含水状態は、透光窓21aから監視部42bにより監視することができる。
【0082】
この場合、浸漬装置2自体がサンプリング部41bを備えるとともに、サンプリング部41bに採取した米rを監視する監視部42bを備えるので、浸漬装置2内部に浸漬されている米rの状態を直接観察することができる。そのため、米rの浸漬を行いながら、米rの含水率が飽和状態に達するのに要する飽和浸水時間を浸漬装置2における米の浸漬と同時進行で求めることができる。また、サンプリング部41bに米rを採取する作業を、浸漬装置2に米rを投入する作業を行う際に自動的に行える構成とできるから、簡易な構成でより確実に適切な米の飽和浸水時間を管理できるようになるので好ましい。また、浸漬装置2のタンク21壁部に透光窓21aを設けて外側から監視部42bにより監視する構成とすれば、監視部42b自体の防水等を考慮する必要が少なく、保守管理容易とできる。
【0083】
(3)
米を光学的に経時的に測定するのに、上述の実施形態ではDMSを用いたが、汎用性のあるカメラ装置や、光学顕微鏡装置を採用することができる。また、経時的に測定するという場合、カメラ装置で映像を観察することのみを意味するものではなく、実際的には画像を観察するものとし、数秒〜数十秒程度の間隔でとらえた撮像を連続的に観察する場合についても、「経時的に測定」とみなすものとする。
【0084】
(4)
また、飽和浸水時間は環境温度に依存することから、浸漬装置および/または浸水時間判定装置に温度計と温度制御装置とを設けて、浸漬装置における浸漬条件と浸水時間判定装置における浸漬条件が同一温度になるよう制御することもできる。また、浸漬装置の温度と浸水時間判定装置の温度が異なった場合、測定温度により設定浸水時間を補正することもできる。さらに、設定浸水時間として確保できる時間が飽和浸水時間に比べて短い場合(たとえば、炊き上がり目標時刻までに十分な時間がなく、短い設定浸水時間で炊飯を開始しなければならない状況など)、浸漬温度を制御することにより、あらかじめ決められた設定浸水時間が、米の含水率が飽和状態に達す飽和浸水時間になるように浸漬温度を制御することもできる。
【0085】
(5)
また、本発明にいう炊飯対象米は、ご飯として提供される白米に限らず、玄米であってもよいし、もち米等であってもよい。さらに、炊飯対象米の用途としても、ご飯など直接食する米以外であっても、種々用途で加熱加工される米を対象として含水状態の判定に利用することができる。例えば、米を原料とする菓子類の炊飯前の浸漬工程や、日本酒製造時の麹づくり前の浸漬工程などにも本発明を利用することができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の炊飯対象米の含水状態判定方法および炊飯設備は、食感に優れた炊飯米を提供するのに利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 :洗米機
2 :浸漬装置
21 :タンク
22 :取り出し口
23 :開閉制御弁
3 :炊飯装置
30 :炊飯釜
31 :計量部
32 :加熱部
32a :加熱装置
33 :取り出し部
34 :搬送装置
4 :浸水時間判定装置
41 :米保持部
42 :DMS(監視部)
5 :移送装置
51 :水切り部
52 :移送部
6 :制御装置
61 :浸水時間演算部
62 :米移送制御部
63 :加熱制御部
r :炊飯対象米(米)
図1
図2
図3
図4
図5