【課題を解決するための手段】
【0012】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の炊飯方法の特徴構成は、
炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定し
て炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を求め、前記飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報
との関係から推定浸水時間
を求め、求めた推定浸水時間が短いほど、前記炊飯工程において、高い熱量で炊飯する点にある。
【0013】
〔作用効果1〕
炊飯対象米を水に浸漬した状態に配置すると、その米には水が浸透してコメの含水率が次第に上昇する。このとき、米は水分を吸収することによって膨張したり、透過光強度(色調)が変化したりする。以下、コメの吸水に伴いこのように状態変化する情報を「含水率関連情報」と称する。
【0014】
また、「水に浸漬する」という場合、水としては、常温の水に限らず、冷却、加熱した水も含み、水に浸漬する温度は問わないものである。また、米のみを水に浸漬する場合の他、炊き込みご飯のように、米以外の具材等をともに浸漬している場合や、水に調味料、果汁等の他の成分が溶解している場合についても、「水に浸漬する」状態に含まれるものとする。
【0015】
含水率関連情報は光学的に監視することができ、含水率関連情報に対応してコメの含水率を求めることができる。そのため、水に浸漬された米を光学的に監視することによって、米の含水率の変化を経時的に観測することができる。この含水率の経時的な変化が少なくなると、米が通常含水できる水分を十分吸水して飽和した状態になったものと考えられ、この時点で米は炊飯に適した含水率となっている。この時点より以前では、含水率が不十分で炊飯してもごわごわした食感の炊飯米になるし、含水が飽和してなお、水への浸漬状態を維持し続けると、米への含水が過飽和になって、炊飯してもべとべとした食感の炊飯米となるなど、食味が低下する。
【0016】
したがって、米の含水率の飽和状態を検知することにより、米が炊飯に適した状態であると判定することができる。すなわち、米を光学的に監視するだけの簡便な構成により、米が炊飯に適した状態であることを定量的に判定することができる。
【0017】
また、米を光学的に観測することにより米の含水状態を判定するものであるから、炊き込みご飯など、米以外の材料をともに含んだ状態での炊飯の場合であっても、米以外の材料や溶解成分の影響を受けることなく含水率を測定することができるので、有効に利用することができる。
【0018】
このように炊飯に適した含水状態であると判定された米を炊飯すると、食感に優れ、おいしいとの評価を得られやすい炊飯米として提供できるようになる。
【0019】
この米の含水率を、含水率関連情報から推定される、炊飯対象米を浸漬工程に供して以降の経過時間(推定浸水時間)で管理する場合、まさに炊飯に供する炊飯対象米の浸水時間が、炊飯対象米の含水率が飽和(含水率がはぼ一定になり変化が見られにくくなる状態)に達する米の銘柄(種類)、産地、収穫時期等により適切に設定された適正時間となるように制御すれば炊き上がったご飯の状態は、ばらつきなく、おいしいご飯に炊きあがるものと考えられる。しかし、いわゆるタンク式の浸漬工程を行う場合等で、大容量のタンクから、最初に払い出される炊飯対象米と、最後に払い出される炊飯対象米との間には、大きな浸水時間の差が生じる。
すると、浸水時間の短い炊飯対象米(以下浸漬不足米)は炊飯しても固いごわごわした食感のご飯となり、浸水時間の長い炊飯対象米(以下過浸漬米)は炊飯しても柔らかくべとべとした食感のご飯となる。
【0020】
このような場合、推定浸水時間が少ない浸漬不足米を高い熱量で炊飯することによって、炊飯対象米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において高い熱量で炊飯すると、高温の水が炊飯対象米に作用することになり、多くの熱量が炊飯対象米に作用することになって、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。そのため、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
なお、「高い熱量」という場合、沸騰時間を長くする(火力を弱くして長時間かけて水を沸騰させる)ことで高い熱量を実現することもでき、同じ加熱温度でも炊飯完了までの加熱維持時間を長くする(沸騰状態を長時間維持する)、あるいは、水量を多くして炊飯完了までの加熱維持時間を長くすることでも高い熱量を実現することもできる。
また、推定浸水時間はあらかじめ求められた、浸漬対象米が飽和状態に達する浸水時間(飽和浸水時間)に基づき浸漬開始からの時間で代用することもできるし、リアルタイムに米を光学的に監視し、含水率関連情報をモニタすることによって求めることもできる。浸漬開始からの時間で代用すると、簡便な装置構成で浸漬工程を行うことができ、含水率関連情報をモニタすることによって求めると、より正確な推定浸水時間を適用することができるようになる。
【0021】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【0022】
なお、米の含水率が飽和状態になったかどうかは、種々公知の手法を用いることができる。たとえば、含水率に対応する測定値自体の値が所定の閾値を超えた時点で飽和状態と判定する方法、含水率に対応する測定値の変化率が所定の閾値よりも小さくなった時点で飽和状態と判定する方法などである。このような場合に用いられる閾値としても、慣用されているように、測定誤差、炊飯時における影響度などを踏まえて設定される許容範囲を考慮した値などを適宜採用することができる。
【0023】
また、含水率関連情報の測定方法についても以下に例示されるように吸水に伴う透過光強度の変化を求める方法や、吸水に伴う炊飯対象米の膨張率の変化を求める方法、さらには、炊飯対象米の含水率が飽和に達する飽和浸水時間に基づき設定される浸水時間を含水率関連情報として利用するなど種々の方法を採用することができる。
【0024】
〔構成2〕
また、上記目的を達成するための本発明の炊飯方法の特徴構成は、
炊飯対象米をタンク内にて水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された炊飯対象米をタンクから取り出した後、炊飯対象米を水とともに加熱して炊飯する炊飯工程とを順に行う炊飯方法であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定し
て炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間を求め、前記飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報
との関係から推定浸水時間
を求め、求めた推定浸水時間が短いほど、前記炊飯工程において、大量の水で炊飯する点にある。
【0025】
〔作用効果2〕
推定浸水時間が少ない浸漬不足米を大量の水とともに炊飯することで、炊飯対象米の炊飯完了までに要する時間が長くなり、炊飯工程においても浸漬不足米の吸水時間を確保して、浸漬不足米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において多めの水とともに炊飯すると、大量の水が炊飯対象米に作用することになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。また、通常の炊飯時と火力を変えないものとすると、炊飯に要する時間が長くなり(水が沸騰して気化するまでに必要な時間も増し)、水が炊飯対象米に作用する時間が増すことになるため、より高い熱量で炊飯できることになるとも考えられる。そのため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となって、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
【0026】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【0027】
〔構成3〕
また、前記含水率関連情報が、炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の吸水に伴う透過光強度の変化から求められる含水率とすることができる。
【0028】
〔作用効果3〕
米からの光として透過光を監視した場合、米が吸水するのに伴って、透過光の強度が変化する。すなわち、米からの透過光を監視すると炊飯対象米の吸水に伴う光透過度が変化するので、その米の吸水に伴う透過光強度を求めることができる。米の光透過度は、含水率の向上に伴うでんぷん質の物性変化により光の透過性が損なわれることにより低下するものと推定される(理論に拘泥されるものではないが、でんぷんの結晶構造を構成するでんぷん鎖の間に水分子が浸入することによって、でんぷん鎖の間隔が開き、透過光の散乱を促し、透過光強度が低下するものと説明できる)から、透過光強度は、米の含水率と相関を有する含水率関連情報として取り扱うことができる。したがって、透過光強度を含水率関連情報として含水率を推定し炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知すれば、米が炊飯に適した含水状態であると判定できる。
【0029】
したがって、たとえば光学顕微鏡装置のような透過光監視可能な簡便な装置によって、米が炊飯に適した含水状態であることを正確に判定することができる。また、簡便な構成をもって判定することができるから、炊飯設備に対しても容易に適用することができ、炊飯後の米飯の食感を好適に制御するのに利用することができる。
【0030】
〔構成4〕
また、本発明の炊飯設備の特徴構成は、
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を求める監視部を備えるとともに、
炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報
との関係から推定される推定浸水時間に基づき、炊飯装置における炊飯火力を調節する火力制御装置を備えた点にある。
【0031】
〔作用効果4〕
上記炊飯設備は浸漬装置を備えるから、米を水に浸漬して炊飯に適した含水状態にまで含水させる浸漬工程を行うことができ、吸水した米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えるから、吸水した米を炊いて炊飯米を得る炊飯工程を行うことができる。
【0032】
ここで、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視する監視部を設けたから、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。
これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。また、含水率関連情報は、米の含水率と相関のある情報であるから、含水率関連情報から米の含水率を推定することができる。その結果、含水率関連情報を基に米の含水率の経時変化を解析することにより、米の含水率の飽和状態となる飽和浸水時間を知ることができ、また、飽和浸水時間と含水率関連情報との関係から推定浸水時間を知ることができる。
【0033】
炊飯装置における炊飯火力を調節する火力制御装置を備えたから、浸漬装置に浸漬された炊飯対象米の推定浸水時間と、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間との差に基づき、炊飯装置における炊飯火力を調節できる。
【0034】
すると、推定浸水時間が少ない浸漬不足米を高い熱量で炊飯することによって、炊飯対象米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において高い熱量で炊飯すると、高温の水が炊飯対象米に作用することになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。そのため、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
【0035】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、高い熱量で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。
【0036】
〔構成5〕
また、本発明の炊飯設備の特徴構成は、
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を求める監視部を備えるとともに、
炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間における含水率関連情報と現在の含水率関連情報
との関係から推定される推定浸水時間に基づき、炊飯装置における炊飯水量を調節する水量調節装置を備えた点にある。
【0037】
〔作用効果5〕
上記炊飯設備は浸漬装置を備えるから、米を水に浸漬して炊飯に適した含水状態にまで含水させる浸漬工程を行うことができ、吸水した米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えるから、吸水した米を炊いて炊飯米を得る炊飯工程を行うことができる。
【0038】
ここで、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視する監視部を設けたから、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。
これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。また、含水率関連情報は、米の含水率と相関のある情報であるから、含水率関連情報から米の含水率を推定することができる。その結果、含水率関連情報を基に米の含水率の経時変化を解析することにより、米の含水率の飽和状態となる飽和浸水時間を知ることができ、また、飽和浸水時間と含水率関連情報との関係から推定浸水時間を知ることができる。
【0039】
炊飯装置における炊飯水量を調節する水量調節装置を備えたから、含水率関連情報に基づき推定される、浸漬装置に浸漬された炊飯対象米の推定浸水時間と、炊飯対象米の含水率が飽和状態となる飽和浸水時間との差に基づき、炊飯装置における炊飯水量を調節できる。
【0040】
すると、推定浸水時間が少ない浸漬不足米を炊飯対象米の実際の浸水時間が短いほど、大量の水で炊飯することによって、炊飯対象米の吸水を促すことができる。すなわち、炊飯工程において多めの水とともに炊飯すると、大量の水が炊飯対象米に作用することになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。また、通常の炊飯時と火力を変えないものとすると、水が沸騰して気化するまでに必要な時間も増し、水が炊飯対象米に作用する時間が増すことになるため、炊飯対象米が吸水しやすい環境となるのである。そのため、浸漬不足米であっても十分に吸水させることができ、固いごわごわした食感とならないように炊飯できるようになる。
【0041】
したがって、浸漬工程における炊飯対象米の推定浸水時間が短いほど、大量の水で炊飯することで、実際の浸水時間の異なる炊飯対象米であっても炊き上がりに大きな差が生じにくいように炊飯することができ、炊飯後の品質にばらつきの少ないご飯を提供できるようになった。