【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の炊飯対象米の含水状態判定方法の特徴構成は、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米
の米粒を光学的に監視して、炊飯対象米
の米粒ごとの含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定し、前記含水率関連情報から推定される炊飯対象米の
米粒ごとの含水率の飽和状態を検知して、炊飯対象米が炊飯に適した含水状態であると判定する点にある。
【0011】
炊飯対象米を水に浸漬した状態に配置すると、その米には水が浸透してコメの含水率が次第に上昇する。このとき、米は水分を吸収することによって膨張したり、透過光強度が変化したりする。以下、コメの吸水に伴いこのように状態変化する情報を「含水率関連情報」と称する。
【0012】
また、「水に浸漬する」という場合、水としては、常温の水に限らず、冷却、加熱した水も含み、水に浸漬する温度は問わないものである。また、米のみを水に浸漬する場合の他、炊き込みご飯のように、米以外の具材等をともに浸漬している場合や、水に調味料、果汁等の他の成分が溶解している場合についても、「水に浸漬する」状態に含まれるものとする。
【0013】
この時の米の含水率の変化は、米の銘柄(種類)、産地、収穫時期等によって異なり、さらに、保管状態、保管期間等によっても変化するため、一概に水に浸漬した時間で管理できるものではない。そのため、同一銘柄の米を同一の設定浸漬時間で炊飯した場合でも、米の含水率が十分にならなければ、ごわごわした食感の炊飯米となり、また、含水率が高くなってしまうと、べとべとした食感の炊飯米となるなど、食味に大きな差が現れる場合がある。
【0014】
この含水率関連情報は光学的に監視することができ、含水率関連情報に対応してコメの含水率を求めることができる。そのため、水に浸漬された米を光学的に監視することによって、米の含水率の変化を経時的に観測することができる。この含水率の経時的な変化が少なくなると、米が通常含水できる水分を十分吸水して飽和した状態になったものと考えられ、この時点で米は炊飯に適した含水率となっている。この時点より以前では、含水率が不十分で炊飯してもごわごわした食感の炊飯米になるし、含水が飽和してなお、水への浸漬状態を維持し続けると、米への含水が過飽和になって、炊飯してもべとべとした食感の炊飯米となるなど、食味が低下する。
【0015】
したがって、米の含水率の飽和状態を検知することにより、米が炊飯に適した含水状態であると判定することができる。すなわち、米を光学的に監視するだけの簡便な方法・装置により、米が炊飯に適した含水状態であることを定量的に判定することができる。
【0016】
また、米を光学的に観測することにより含水状態を判定するものであるから、炊き込みご飯など、米以外の材料をともに含んだ状態での炊飯の場合であっても、米以外の材料や溶解成分の影響を受けることなく含水率を測定することができるので、有効に利用することができる。
【0017】
このように炊飯に適した含水状態であると判定された米を炊飯すると、食感に優れ、おいしいとの評価を得られやすい炊飯米として提供できるようになる。
【0018】
なお、米の含水率が飽和状態になったかどうかは、種々の手法を用いることができる。たとえば、含水率に対応する測定値自体の値が所定の閾値を超えた時点で飽和状態と判定する方法、含水率に対応する測定値の変化率が所定の閾値よりも小さくなった時点で飽和状態と判定する方法などである。このような場合に用いられる閾値としても、慣用されているように、測定誤差、炊飯時における影響度などを踏まえて設定される許容範囲を考慮した値などを適宜採用することができる。
【0019】
また、含水率関連情報の測定方法についても以下に例示されるように種々の方法を採用することができる。
【0020】
前記含水率関連情報が、炊飯対象米からの光を監視して得られる炊飯対象米の
米粒ごとの吸水に伴う炊飯対象米の
米粒ごとの大きさの変化から求められる膨張率とすることができる。
【0021】
炊飯対象米からの光を監視した場合、米が吸水するのに伴って、米が膨張する現象を観測することができる。すなわち、米からの光を監視すると炊飯対象米の吸水に伴う炊飯対象米の大きさが変化するので、その米の膨張率が測定できる。米の膨張率は、米の含水率と相関を有する含水率関連情報として取り扱うことができる。したがって、膨張率を含水率関連情報として含水率を推定し炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知すれば、米が炊飯に適した含水状態であると判定できる。なお炊飯対象米の大きさは、平面視すなわち鉛直方向上方からの監視により得てもよいし、側面視すなわち鉛直方向に直交する方向からの監視により得てもよいし、他の方向からの観測により得てもよい。
【0022】
したがって、たとえば光学カメラ装置のような炊飯対象米からの光を監視可能な簡便な装置によって、炊飯対象米が炊飯に適した含水状態であることを判定することができる。
また、簡便な構成をもって判定することができるから、炊飯設備に対しても容易に適用することができ、炊飯後の米飯の食感を好適に制御するのに利用することができる。
【0023】
前記含水率関連情報が、炊飯対象米からの透過光を監視して得られる炊飯対象米の
米粒ごとの吸水に伴う透過光強度とすることができる。
【0024】
米からの光として透過光を監視した場合、米が吸水するのに伴って、透過光の強度が変化する。すなわち、米からの透過光を監視すると炊飯対象米の吸水に伴う光透過度が変化するので、その米の吸水に伴う透過光強度を求めることができる。米の光透過度は、含水率の向上に伴うでんぷん質の物性変化により光の透過性が損なわれることにより低下するものと推定される(理論に拘泥されるものではないが、でんぷんの結晶構造を構成するでんぷん鎖の間に水分子が浸入することによって、でんぷん鎖の間隔が開き、透過光の散乱を促し、透過光強度が低下するものと説明できる)から、透過光強度は、米の含水率と相関を有する含水率関連情報として取り扱うことができる。したがって、透過光強度を含水率関連情報として含水率を推定し炊飯対象米の含水率の飽和状態を検知すれば、米が炊飯に適した含水状態であると判定できる。
【0025】
したがって、たとえば光学顕微鏡装置のような透過光監視可能な簡便な装置によって、米が炊飯に適した含水状態であることを判定することができる。また、簡便な構成をもって判定することができるから、炊飯設備に対しても容易に適用することができ、炊飯後の米飯の食感を好適に制御するのに利用することができる。
【0026】
上記目的を達成するための本発明の浸漬時間判定装置の特徴構成は、
水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米
の米粒を光学的に監視する監視部を備え、炊飯対象米の
米粒ごとの含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定し、前記含水率関連情報から推定される炊飯対象米の
米粒ごとの含水率が飽和状態に達するのに要する飽和浸漬時間を求める飽和浸漬時間演算部を備えた点にある。
【0027】
ここで、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視することにより、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。また、含水率関連情報は、米の含水率と相関のある情報であるから、含水率関連情報から米の含水率を推定することができる。したがって、飽和浸漬時間演算部により、含水率関連情報を基に米の含水率の経時変化を解析することにより、米の含水率が飽和状態に達するのに要する飽和浸漬時間を求めることができる。
【0028】
したがって、米が炊飯に適した含水状態であることを判定することができ、その飽和浸漬時間に基づき、米を水に浸漬するための設定浸漬時間を設定するのに利用することができる。そのため、浸漬炊飯設備に対しても容易に適用することができ、炊飯後の米飯の食感を好適に制御するのに利用することができる。
【0029】
上記目的を達成するための本発明の炊飯設備の特徴構成は、
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
前記浸漬時間判定装置を備え、前記飽和浸漬時間演算部により求められる前記飽和浸漬時間に基づき設定浸漬時間を設定し、前記浸漬装置に浸漬された炊飯対象米が前記設定浸漬時間水に浸漬されたことを検知して、炊飯対象米を前記浸漬装置から取り出して炊飯装置に移送させる浸漬完了制御部を備えた点にある。
【0030】
上記炊飯設備は浸漬装置を備えるから、米を水に浸漬して炊飯に適した含水状態にまで含水させることができ、吸水した米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えるから、吸水した米を炊いて炊飯米を得ることができる。
【0031】
ここで、浸漬時間判定装置を備えるから、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視して、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。したがって、浸漬時間判定装置により、飽和浸漬時間を求めることができる。
【0032】
そこで、得られた飽和浸漬時間に基づき設定浸漬時間を設定し、浸漬装置に浸漬された炊飯対象米を設定浸漬時間だけ水に浸漬すると得られた米は、含水率が飽和状態に達して炊飯に適した含水状態となっているといえる。そのため、浸漬時間判定装置が、米が設定浸漬時間浸漬されたことを検知することにより米の含水率を適切に制御することができる。このようにして得られた米を浸漬完了制御部により浸漬装置から取り出して炊飯装置に移送させると、適切な含水率となった米を速やかに炊飯することができる。そのため、米を光学的に監視するだけの簡便な装置により、米が炊飯に適した含水状態であることを判定できるとともに、食感の優れた炊飯米を提供できるようになる。
【0033】
また、前記浸漬完了制御部に設定浸漬時間を入力する浸漬時間入力部を備えてもよい。
【0034】
浸漬時間判定装置により求められた設定浸漬時間を浸漬完了制御部に入力すると、浸漬完了制御部は、設定浸漬時間だけ米を浸漬することにより、含水率が飽和状態に達して米を炊飯に適した含水状態にすることができる。
【0035】
ここで、浸漬完了制御部は、炊飯に際して、炊飯対象米を炊飯に適した含水状態とするために水に浸漬させる毎に、各回の炊飯対象米について浸漬時間判定装置から飽和浸漬時間を取得して、各飽和浸漬時間に基づいて直接各設定浸漬時間を設定してもよい。
一方で、浸漬時間入力部を備える場合には、水に炊飯対象米を一度だけ浸漬させて炊飯に適した含水状態とし、浸漬時間判定装置から飽和浸漬時間を一度だけ取得して設定浸漬時間を設定し、その後の炊飯対象米の設定浸漬時間に関しては、浸漬時間入力部に入力される設定浸漬時間を設定浸漬時間として設定したものを用いる構成とすることができる。
【0036】
このような場合、米の生産地、銘柄、収穫時期、保管方法、期間等が明らかな共通のロットでは、共通の設定浸漬時間を採用して炊飯を行うことができると考えられるから、同じロットの米に対して共通の設定浸漬時間を適用して炊飯する場合の設定浸漬時間を手動で設定できることになり、より簡易かつ確実に適した含水状態の米を炊飯することができる。
【0037】
上記目的を達成するための本発明の別の炊飯設備の特徴構成は、
炊飯対象米を水に浸漬する浸漬装置を備えるとともに、浸漬装置において吸水した炊飯対象米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えた炊飯設備であって、
前記浸漬装置が炊飯対象米の一部をサンプリングするサンプリング部と、サンプリング部に採取された炊飯対象米を水に浸漬した状態で
炊飯対象米の米粒を光学的に監視する監視部と、を備え、
前記監視部で炊飯対象米の
米粒ごとの含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定し、前記含水率関連情報から推定される炊飯対象米の
米粒ごとの含水率の飽和状態を検知して、炊飯対象米を前記浸漬装置から取り出して炊飯装置に移送させる浸漬完了制御部を備えた点にある。
【0038】
上記炊飯設備は浸漬装置を備えるから、米を水に浸漬して炊飯に適した含水状態にまで含水させることができ、吸水した米を受け入れて炊飯する炊飯装置を備えるから、吸水した米を炊いて炊飯米を得ることができる。
【0039】
ここで、水に浸漬した状態に配置された炊飯対象米を光学的に監視する監視部を設けたから、炊飯対象米の含水率に関連する含水率関連情報を経時的に測定することができる。
これにより、米の含水状態を経時的に観察することができる。また、含水率関連情報は、米の含水率と相関のある情報であるから、含水率関連情報から米の含水率を推定することができる。その結果、含水率関連情報を基に米の含水率の経時変化を解析することにより、米の含水率の飽和状態を検知することができる。
【0040】
また、本構成においては、浸漬装置が炊飯対象米の一部をサンプリングするサンプリング部を設けてあり、前記サンプリング部で採取された米を監視対象とするから、浸漬装置内部に浸漬されている米の状態を直接観察することができる。そのため、米の浸漬を行いながら、米の含水率の飽和状態を検知するのに基づき設定浸漬時間を同時に求めることができる。
【0041】
そこで、得られた設定浸漬時間に基づき、前記浸漬装置に浸漬された炊飯対象米を水に浸漬すると、得られた米は、先述の炊飯対象米の含水状態判定方法により炊飯に適した含水状態であると判定できる。そのため、米の含水率を適切に制御することができる。このようにして得られた米を浸漬完了制御部により浸漬装置から取り出して炊飯装置に移送させると、適切な含水率となった米を速やかに炊飯調理することができる。したがって、正確な時間水に浸漬できるとともに、浸漬から炊飯に移行できる。そのため、米を光学的に監視するだけの簡便な装置により、米が炊飯に適した含水状態であることを判定できるとともに、食感の優れた炊飯米を提供できるようになる。