特許第6602149号(P6602149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602149
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】セメント用添加剤およびセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20191028BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20191028BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20191028BHJP
   C04B 103/30 20060101ALN20191028BHJP
【FI】
   C04B24/26 F
   C04B24/26 E
   C04B24/26 H
   C04B28/02
   C08F220/00 510
   C04B103:30
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-204435(P2015-204435)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2017-75076(P2017-75076A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏克
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 猛
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124716(WO,A1)
【文献】 特開2003−342051(JP,A)
【文献】 特開2003−335566(JP,A)
【文献】 特開2008−290932(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0081670(KR,A)
【文献】 特開2001−072453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体を含み、
該一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中の10モル%〜65モル%がアルカノールアミン塩であり、
該アルカノールアミン塩が、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、ジヒドロキシエチルイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン塩、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、
該一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中の0モル%〜90モル%がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、
セメント用添加剤。
【化1】
(一般式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜90の整数であり、xは0〜2の整数である。)
【化2】
(一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中の前記アルカノールアミン塩と前記アルカリ金属塩と前記アルカリ土類金属塩の合計が10モル%〜100モル%である、請求項1に記載のセメント用添加剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセメント用添加剤を含む、セメント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用添加剤およびセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートなどのセメント組成物は、一般に、セメントと骨材と水を含んでおり、流動性を高めて減水させるために、好ましくは減水剤として機能するセメント用添加剤がさらに含まれる(たとえば、特許文献1)。
【0003】
減水剤として機能するセメント用添加剤の使用量をできるだけ減らすことは、コスト面等の観点から、セメント組成物を調製する上での重要なファクターのひとつである。
【0004】
また、セメント用添加剤のポリマー成分として特定のポリカルボン酸系共重合体を用いる場合、該共重合体の製造の際には、開始剤に過硫酸塩を使用し、重合後の中和にNaOHを用いることが一般的である。ところが、重合後の中和にNaOHを用いると、ボウ硝(NaSO)が副生し、低温下ではこのボウ硝が結晶化して各種装置を詰まらせる等のトラブルの原因となっている。他方、ボウ硝の副生を抑制しようとして重合後に中和を行わないと、酸性が強くなり、各種装置を腐食してしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−133241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ボウ硝の副生を抑制でき、セメント組成物とした場合に同じ流動性を達成するための使用量を低減できる、セメント用添加剤を提供することにある。また、そのようなセメント用添加剤を含むセメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセメント用添加剤は、
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体を含み、
該一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中の10モル%〜65モル%がアルカノールアミン塩であり、
該一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中の0モル%〜90モル%がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。
【化1】
(一般式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜90の整数であり、xは0〜2の整数である。)
【化2】
(一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【0008】
一つの実施形態においては、上記一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中の上記アルカノールアミン塩と上記アルカリ金属塩と上記アルカリ土類金属塩の合計が10モル%〜100モル%である。
【0009】
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント用添加剤を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボウ硝の副生を抑制でき、セメント組成物とした場合に同じ流動性を達成するための使用量を低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。また、そのようなセメント用添加剤を含むセメント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。また、本明細書中で「質量」との表現がある場合は、従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」と読み替えてもよく、逆に、本明細書中で「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として慣用されている「質量」と読み替えてもよい。
【0012】
≪セメント用添加剤≫
本発明のセメント用添加剤は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを有するポリカルボン酸系共重合体を含む。
【0013】
本発明のセメント用添加剤中には、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。本発明のセメント用添加剤中の上記ポリカルボン酸系共重合体の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0014】
<ポリカルボン酸系共重合体>
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含む。
【化3】
【化4】
【0015】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、具体的には、下記式で表される。
【化5】
【0016】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、下記式で表される。
【化6】
【0017】
一般式(1)および構造単位(I)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0018】
一般式(1)および構造単位(I)中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Rは、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基である。
【0019】
一般式(1)および構造単位(I)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0020】
一般式(1)および構造単位(I)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数(「鎖長」と称することがある)を表し、1〜90であり、好ましくは2〜70であり、より好ましくは3〜60であり、さらに好ましくは4〜50であり、特に好ましくは5〜40であり、最も好ましくは6〜30である。nが上記範囲内にあることにより、セメント組成物とした場合に、同じ保持率を達成するための使用量を大幅に低減でき、優れた減水性と優れた保持性を両立して発現できる、減水剤として機能するセメント用添加剤を提供することができる。
【0021】
一般式(1)および構造単位(I)中、xは0〜2の整数である。
【0022】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、例えば、炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
【0023】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステルである。
【0024】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
一般式(2)および構造単位(II)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表す。−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していてもよい。zは0〜2の整数である。
【0026】
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0027】
Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0028】
なお、一般式(2)および構造単位(II)においては、後述するように、カルボキシル基のアルカノールアミン塩を必須に有するので、一般式(2)および構造単位(II)中のR〜Rおよび−COOX基の全てがカルボキシル基のアルカノールアミン塩以外(例えば、R〜Rがいずれもメチル基であって−COOX基のXがメチル基である場合など)となることはない。
【0029】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0030】
アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0031】
有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0032】
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、ジヒドロキシエチルイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン塩、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン塩であり、より好ましくは、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩である。
【0033】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0034】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
本発明においては、一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中、アルカノールアミン塩の含有量が10モル%〜65モル%であり、好ましくは10モル%〜60モル%であり、より好ましくは11モル%〜55モル%であり、さらに好ましくは12モル%〜50モル%であり、特に好ましくは13モル%〜45モル%であり、最も好ましくは12モル%〜40モル%である。一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中のアルカノールアミン塩の含有量が上記範囲内にあれば、ボウ硝の副生をより抑制でき、各種装置の腐食性を抑制することができる。
【0036】
本発明においては、一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量が0モル%〜90モル%であり、より好ましくは10モル%〜85モル%であり、さらに好ましくは20モル%〜80モル%であり、特に好ましくは30モル%〜75モル%であり、最も好ましくは35モル%〜70モル%である。一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量が上記範囲内にあれば、ボウ硝の副生をより抑制でき、各種装置の腐食性を抑制することができる。
【0037】
本発明においては、一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中、アルカノールアミン塩とアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩の合計の含有量が、好ましくは10モル%〜100モル%であり、より好ましくは30モル%〜97モル%であり、さらに好ましくは50モル%〜95モル%であり、特に好ましくは70モル%〜93モル%であり、最も好ましくは80モル%〜90モル%である。一般式(2)中の−COOM基および−COOX基の全量中のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩の合計の含有量が上記範囲内にあれば、ボウ硝の副生をより抑制でき、各種装置の腐食性を抑制することができる。
【0038】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合は、好ましくは30質量%〜99質量%であり、より好ましくは40質量%〜95質量%であり、さらに好ましくは50質量%〜90質量%であり、特に好ましくは60質量%〜85質量%であり、最も好ましくは70質量%〜80質量%である。本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に同じ流動性を達成するための使用量をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。
【0039】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(II)の含有割合は、好ましくは1質量%〜70質量%であり、より好ましくは5質量%〜60質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜50質量%であり、特に好ましくは15質量%〜40質量%であり、最も好ましくは20質量%〜30質量%である。本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(II)の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に同じ流動性を達成するための使用量をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。
【0040】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合が上記範囲内にあれば、ボウ硝の副生をより抑制でき、セメント組成物とした場合に同じ保持率を達成するための使用量をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。
【0041】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中には、構造単位(I)と構造単位(II)以外に、他の単量体(c)由来の構造単位(III)を含んでいてもよい。
【0042】
単量体(c)としては、単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な単量体である。単量体(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類;などが挙げられる。
【0044】
本発明のセメント用添加剤に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(III)の含有割合は、好ましくは0質量%〜50質量%であり、より好ましくは0質量%〜40質量%であり、さらに好ましくは0質量%〜30質量%であり、特に好ましくは0質量%〜20質量%であり、最も好ましくは0質量%〜10質量%である。本発明のセメント用添加剤に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物とした場合に同じ流動性を達成するための使用量をより低減できる、セメント用添加剤を提供することができる。
【0045】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合などは、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合などとしてもよい。すなわち、例えば、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)との合計の質量の含有割合を、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合として扱ってよい。
【0046】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体中の構造単位の含有比率を求める場合には、構造単位がカルボキシル基の塩を有する場合には、カルボキシル基の酸部分を全てナトリウム塩に換算して計算を行う。
【0047】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000〜1000000であり、より好ましくは5000〜900000であり、さらに好ましくは10000〜700000であり、特に好ましくは15000〜600000であり、最も好ましくは25000〜100000である。
【0048】
本発明のセメント用添加剤は、それに含まれる固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHが、好ましくは4.0〜10.0であり、より好ましくは5.0〜9.0であり、さらに好ましくは5.5〜8.0であり、特に好ましくは6.0〜7.5であり、最も好ましくは6.5〜7.0である。上記pHが上記範囲内にあれば、酸性が強くなって各種装置を腐食してしまうという問題を低減し得る。
【0049】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法によって製造し得る。本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体は、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)とを含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
【0050】
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、および、必要に応じて、他の単量体(c)の使用量は、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合が前述したものとなるように、適宜調整すればよい。好ましくは、重合反応が定量的に進行するとして、前述した本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合と同じ割合で、各単量体を用いればよい。
【0051】
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
【0052】
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。これらの中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムが好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
重合開始剤の量は、重合性やボウ硝副生の面から、単量体の合計量に対して、好ましくは0.1質量%〜2.5質量%であり、より好ましくは0.15質量%〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.3質量%〜1.0質量%であり、最も好ましくは0.4質量%〜0.7質量%である。
【0054】
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0055】
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0056】
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような投入方法としては、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法等が挙げられる。具体的には、単量体(a)の全量と単量体(b)の全量とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の全量とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部と単量体(b)の一部とを反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の残りとをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法などが挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入質量比を連続的又は段階的に変化させることにより、構造単位(I)と構造単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでも良く、反応容器へ滴下しても良く、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0057】
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0058】
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
【0059】
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、取り扱い性の観点から、ポリカルボン酸系共重合体の製造後の反応溶液のpHを4以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率向上のため、pH4未満で重合を行い、重合後にpHを4以上に調整することが好ましい。
【0060】
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
【0061】
製造されたポリカルボン酸系共重合体は、溶液の形態でそのまま使用してもよいし、粉体化して使用してもよい。
【0062】
≪セメント組成物≫
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント用添加剤を含む。
【0063】
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント用添加剤の他に、好ましくは、セメントと水と骨材を含み、より好ましくは、セメントと水と骨材とセメント混和剤を含む。
【0064】
本発明のセメント組成物中の本発明のセメント用添加剤の含有量は、セメントに対して、固形分で、好ましくは0.001質量%〜1質量%であり、より好ましくは0.005質量%〜0.9質量%であり、さらに好ましくは0.01質量%〜0.8質量%であり、特に好ましくは0.01質量%〜0.7質量%であり、最も好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。
【0065】
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0066】
セメント混和剤は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、好ましくは、セメント混和剤用ポリマーを含む。
【0067】
セメント混和剤は、セメント混和剤用ポリマー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0068】
他の成分としては、例えば、セメント分散剤が挙げられる。セメント分散剤を用いる場合、セメント混和剤用ポリマーとセメント分散剤との配合比(セメント混和剤用ポリマー/セメント分散剤)としては、使用するセメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって、任意の適切な配合比を設定し得る。セメント分散剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0069】
セメント分散剤としては、例えば、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体以外のポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
【0070】
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
【0071】
セメント混和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤(材)を含有することができる。このような他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)〜(12)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。セメント混和剤に含まれ得るセメント混和剤用ポリマーとこのような他のセメント添加剤(材)との配合比は、用いる他のセメント添加剤(材)の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
【0072】
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド等。
【0073】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0074】
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0075】
なお、化合物(A)に対する硬化遅延剤の割合としては、好ましくは1質量%〜10000質量%であり、より好ましくは5質量%〜1000質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜500質量%であり、特に好ましくは30質量%〜300質量%であり、最も好ましくは50質量%〜200質量%である。
【0076】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩等。
【0077】
(5)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0078】
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
【0079】
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0080】
(8)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0081】
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0082】
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0083】
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0084】
(12)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0085】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0086】
本発明のセメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、本発明のセメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていてもよい。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0087】
本発明のセメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m〜185kg/mであり、使用セメント量が250kg/m〜800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m〜175kg/mであり、使用セメント量が270kg/m〜800kg/mであり、水/セメント比(質量比)=0.12〜0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0088】
本発明のセメント組成物がセメント混和剤用ポリマーを含む場合、本発明のセメント組成物中の、セメント混和剤用ポリマーの含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100質量部に対するセメント混和剤用ポリマーの含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0089】
本発明のセメント組成物中のセメント混和剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、セメント100質量部に対するセメント混和剤の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜8質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部である。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0090】
本発明のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
【0091】
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すればよい。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
【0093】
<質量平均分子量分析条件>
質量平均分子量は下記の条件で測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
【0094】
<ボウ硝の副生量の評価>
実施例、比較例で得られたセメント用添加剤を、それに含まれる固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液とし、2℃の条件下で、ボウ硝の副生量を観察した。下記の基準にしたがって、ボウ硝の副生量の評価を行った。
◎:ボウ硝の副生が観察されなかった。
○:ボウ硝の副生がわずかだけ観察された。
×:ボウ硝の副生が多く観察された。
【0095】
<モルタル試験条件>
JIS−R5201−1997に準拠した機械練り用練混ぜ機、さじ、フローテーブル、フローコーンおよび突き棒を使用した。この際、特記しない限りは、JIS−R5201−1997に準拠してモルタル試験を行った。
試験に使用した材料およびモルタルの配合は、太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント587g、JIS−R5201−1997に準拠したセメント強さ試験用標準砂1350g、セメント混和剤用ポリマーの水溶液と消泡剤とを含むイオン交換水264g、である。消泡剤は、気泡がモルタル組成物の強度に及ぼす影響を避けることを目的に添加し、空気量が3.0%以下になるようにした。具体的には、オキシアルキレン系消泡剤を、セメント混和剤用共重合体に対して0.1%になるような量で使用した。なお、モルタルの空気量が3.0%より大きい場合には、空気量が3.0%以下になるように消泡剤の添加量を調節した。
モルタルは、室温(20±2℃)にてホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)を用いて、4分30秒間で調製した。具体的には、練り鉢に規定量のセメントを入れ、練混ぜ機に取り付け低速で始動させた。パドルを始動させて15秒後に規定量のセメント混和剤用ポリマーおよび消泡剤を含んだ水を15秒間で入れた。その後、砂を入れ、低速で30秒間練混ぜた後、高速にして、引き続き30秒間練混ぜを続けた。練り鉢を練混ぜ機から取り外し、120秒間練混ぜを休止した後、再度練り鉢を練混ぜ機へ取り付け、高速で60秒間練混ぜた後(1番始めに低速で始動させてから4分30秒後)、さじで左右各10回かき混ぜた。練混ぜたモルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に分けて詰めた。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げて取り去り、15秒間に15回の落下運動を与え、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。
混練後、フロー値と空気量を測定し、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:50mm×100mm
供試体養生(28日):温度20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面 研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
【0096】
〔実施例1〕
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水:109.2部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個):100部、メタクリル酸:20部、メルカプトプロピオン酸:1.38部、およびイオン交換水:40部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に、過硫酸アンモニウム:1.38部とイオン交換水:28部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下完了後、1時間、70℃に保って重合反応を完結させることにより、ポリカルボン酸系共重合体(1)の水溶液を得た。得られたポリカルボン酸系共重合体(1)の質量平均分子量は12500、pHは1.8であった。
得られたポリカルボン酸系共重合体(1)にトリイソプロパノールアミン(TIPA)を4.9g(COOHに対して11mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を13.1g(COOHに対して68mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(1)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(1)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.4であった。
結果を表1、表2に示した。
【0097】
〔実施例2〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを12.4g(COOHに対して28mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を12.0g(COOHに対して62mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(2)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(2)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.8であった。
結果を表1、表2に示した。
【0098】
〔実施例3〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを23.9g(COOHに対して54mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を7.0g(COOHに対して36mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(3)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(3)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.7であった。
結果を表1、表2に示した。
【0099】
〔実施例4〕
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数23個):110.2部、メタクリル酸:9.8部、メルカプトプロピオン酸:1.13部、およびイオン交換水:40部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に、過硫酸アンモニウム:1.38部とイオン交換水:28.3部の混合溶液を5時間かけて滴下した以外は、実施例1と同様に行い、ポリカルボン酸系共重合体(2)の水溶液を得た。得られたポリカルボン酸系共重合体(2)の質量平均分子量は13300、pHは2.0であった。
得られたポリカルボン酸系共重合体(2)にトリイソプロパノールアミンを7.9g(COOHに対して46mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を2.0g(COOHに対して27mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(2)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(4)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(4)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.4であった。
結果を表1、表2に示した。
【0100】
〔実施例5〕
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個):100部、メタクリル酸:20部、メルカプトプロピオン酸:1.38部、およびイオン交換水:40部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に、過硫酸アンモニウム:0.35部とイオン交換水:29.1部の混合溶液を5時間かけて滴下した以外は、実施例1と同様に行い、ポリカルボン酸系共重合体(3)の水溶液を得た。得られたポリカルボン酸系共重合体(3)の質量平均分子量は15100、pHは1.9であった。
得られたポリカルボン酸系共重合体(3)にトリイソプロパノールアミンを4.9g(COOHに対して11mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を11.8g(COOHに対して61mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(3)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(5)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(5)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.4であった。
結果を表1、表2に示した。
【0101】
〔実施例6〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン(EDIPA)を5.7g(COOHに対して14mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を14.7g(COOHに対して76mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(6)を得た。

また、得られたセメント用添加剤(6)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.8であった。
結果を表1、表2に示した。
【0102】
〔実施例7〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリエタノールアミン(TEA)を19.7g(COOHに対して57mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を6.4g(COOHに対して76mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(7)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(7)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.8であった。
結果を表1、表2に示した。
【0103】
〔実施例8〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにテトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(THETA)を38.6g(COOHに対して57mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を5.0g(COOHに対して26mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(8)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(8)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.7であった。
結果を表1、表2に示した。
【0104】
〔実施例9〕
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個):100部、アクリル酸:20部、メルカプトプロピオン酸:1.38部、およびイオン交換水:40部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に、過硫酸アンモニウム:0.35部とイオン交換水:29.1部の混合溶液を5時間かけて滴下した以外は、実施例1と同様に行い、ポリカルボン酸系共重合体(4)の水溶液を得た。得られたポリカルボン酸系共重合体(4)の質量平均分子量は18200、pHは1.7であった。
得られたポリカルボン酸系共重合体(4)にトリイソプロパノールアミンを6.3g(COOHに対して12mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を18.0g(COOHに対して78mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(4)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(9)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(9)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.7であった。
結果を表1、表2に示した。
【0105】
〔実施例10〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを4.9g(COOHに対して11mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を16.6g(COOHに対して86mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(10)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(10)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは7.0であった。
結果を表1、表2に示した。
【0106】
〔実施例11〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを4.9g(COOHに対して11mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を5.8g(COOHに対して30mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(11)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(11)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは5.6であった。
結果を表1、表2に示した。
【0107】
〔実施例12〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを4.9g(COOHに対して11mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和し、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(12)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(12)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは4.4であった。
結果を表1、表2に示した。
【0108】
〔比較例1〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gに、48%NaOH水溶液を14.7g(COOHに対して30mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカリ金属塩の水溶液であるセメント用添加剤(C1)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(C1)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.4であった。
結果を表1、表2に示した。
【0109】
〔比較例2〕
実施例4で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(2)300gに、48%NaOH水溶液を5.7g(COOHに対して30mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカリ金属塩の水溶液であるセメント用添加剤(C2)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(C2)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.5であった。
結果を表1、表2に示した。
【0110】
〔比較例3〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを31.4g(COOHに対して71mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を3.7g(COOHに対して19mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(C3)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(C3)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.7であった。
結果を表1、表2に示した。
【0111】
〔比較例4〕
実施例1で得られたポリカルボン酸系共重合体水溶液(1)300gにトリイソプロパノールアミンを1.3g(COOHに対して3.0mol%)添加し、COOHの一部をアルカノールアミンで中和した後、48%NaOH水溶液を16.8g(COOHに対して87mol%)加え、ポリカルボン酸系共重合体(1)のアルカノールアミン塩とアルカリ金属塩の混合塩水溶液であるセメント用添加剤(C4)を得た。
また、得られたセメント用添加剤(C4)を固形分の濃度が40質量%となるように調整した水溶液のpHは6.8であった。
結果を表1、表2に示した。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
表1、2より、本発明のセメント用添加剤は、ボウ硝の副生を抑制できるとともに、セメント組成物とした場合に同じ流動性を達成するための使用量を低減できることがわかる。比較例1、2、4では、ボウ硝の副生が多く観察され、比較例3では、実施例と同レベルのフロー値を達成するためのセメント用添加剤の使用量が多くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のセメント用添加剤は、モルタルやコンクリートなどのセメント組成物に好適に用いられる。