特許第6602153号(P6602153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602153
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】粉体圧縮成型装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/08 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
   B30B11/08 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-207100(P2015-207100)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-77574(P2017-77574A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592071679
【氏名又は名称】モリマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】中原 大助
(72)【発明者】
【氏名】布施 光宏
(72)【発明者】
【氏名】住友 順一
(72)【発明者】
【氏名】有馬 健児
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−009590(JP,U)
【文献】 特開昭55−141400(JP,A)
【文献】 特開昭63−299893(JP,A)
【文献】 特公昭48−020103(JP,B1)
【文献】 特公昭46−043072(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/00 − 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心円上に配置された複数の臼を備えた回転盤と、前記回転盤に設けられ且つ前記臼の各々の上方に配置された複数の上杵と、前記回転盤に設けられ且つ前記臼の各々の下方に配置された複数の下杵とを具備し、前記回転盤の回転に応じて前記上杵及び前記下杵が上下動することによって前記臼内で粉体材料を圧縮して成型する粉体圧縮成型装置であって、
前記複数の上杵又は前記複数の下杵に対する気流であって、前記回転盤の回転における径方向の気流を生成する気流生成器をさらに具備し、
前記気流生成器が、少なくとも前記上杵に対する前記気流を生成し、
前記気流生成器が、前記下杵に対する前記気流を生成し、
前記上杵に対する径方向の前記気流が外方向であり、前記下杵に対する径方向の前記気流が内方向であり、
前記上杵に対する径方向の前記気流の風速が、前記下杵に対する径方向の前記気流の風速よりも小さいことを特徴とする粉体圧縮成型装置。
【請求項2】
前記気流が、前記回転盤にも向けられていることを特徴とする請求項に記載の粉体圧縮成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体圧縮成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臼を備えた回転盤と上杵及び下杵とを有し、回転盤の回転に応じて上杵及び下杵が上下動し、臼内で粉体材料を圧縮して錠剤等を成型する粉体圧縮成型装置が公知である。粉体圧縮成型装置を連続運転させると、駆動モータや、駆動モータの回転を回転盤の回転へと変換するウォーム減速機の動作等に起因して、粉体圧縮成型装置を構成する各部材の温度が上昇する。
【0003】
特に、臼、上杵及び下杵の温度が、投入された粉体材料の融点近傍まで上昇すると、臼、上杵及び下杵の表面に粉体材料が付着する、いわゆるスティッキングが発生する。また、温度上昇によって、主として金属材料で製造された臼、上杵及び下杵が熱膨張し、成型された製品の形状や重量等に影響を及ぼす。スティッキング及び各部材の熱膨張は、成型された製品の品質を損なう大きな問題である。
【0004】
そのため、特許文献1に記載の粉体圧縮成型装置では、各部材を冷却するために熱交換器を配設し、装置の内部全体を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−23696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の粉体圧縮成型装置では、回転盤や上杵及び下杵が配置された上部筐体とは隔絶された下部筐体に熱交換器が配設されていることから、回転盤等を冷却するには効率が悪い。
【0007】
ところで、粉体圧縮成型装置において、スティッキング及び各部材の熱膨張以外の問題として、装置内部を浮遊する粉体材料に起因する問題がある。すなわち、圧縮されるべき粉体材料が装置内部を浮遊し、例えば臼の内周面と下杵の外周面のような、各部材間の必要な隙間に入り込み、滞留する。隙間に滞留した不要な粉体材料は、放置すると凝集し、上杵又は下杵の上下動を妨げる摩擦力、すなわち抵抗力となり、成型された製品の品質の安定性を妨げる原因となる。
【0008】
本発明は、回転盤等を効率的に冷却し且つ浮遊する粉体材料による悪影響を防止する粉体圧縮成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、同心円上に配置された複数の臼を備えた回転盤と、前記回転盤に設けられ且つ前記臼の各々の上方に配置された複数の上杵と、前記回転盤に設けられ且つ前記臼の各々の下方に配置された複数の下杵とを具備し、前記回転盤の回転に応じて前記上杵及び前記下杵が上下動することによって前記臼内で粉体材料を圧縮して成型する粉体圧縮成型装置であって、前記複数の上杵又は前記複数の下杵に対する気流であって、前記回転盤の回転における径方向の気流を生成する気流生成器をさらに具備することを特徴とする粉体圧縮成型装置が提供される。
【0010】
本発明の別態様によれば、前記気流生成器が、少なくとも前記上杵に対する前記気流を生成することを特徴とする粉体圧縮成型装置が提供される。
【0011】
本発明の別態様によれば、前記気流生成器が、前記下杵に対する前記気流を生成することを特徴とする粉体圧縮成型装置が提供される。
【0012】
本発明の別態様によれば、前記上杵に対する径方向の前記気流が外方向であり、前記下杵に対する径方向の前記気流が内方向であることを特徴とする粉体圧縮成型装置が提供される。
【0013】
本発明の別態様によれば、前記上杵に対する径方向の前記気流の風速が、前記下杵に対する径方向の前記気流の風速よりも小さいことを特徴とする粉体圧縮成型装置が提供される。
【0014】
本発明の別態様によれば、前記気流が、前記回転盤にも向けられていることを特徴とする粉体圧縮成型装置が提供される。
【0015】
本発明の態様によれば、回転盤等を効率的に冷却し且つ浮遊する粉体材料による悪影響を防止する粉体圧縮成型装置を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による粉体圧縮成型装置の全体を示す略断面図である。
図2図1の粉体圧縮成型装置の要部を示す拡大略断面図である。
図3図2の粉体圧縮成型装置の要部を示す拡大略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。図1は、本発明の実施形態による粉体圧縮成型装置1の全体を示す略断面図であり、図2は、図1の粉体圧縮成型装置1の要部を示す拡大略断面図である。
【0018】
粉体圧縮成型装置1は、ハウジング2によって装置全体が周囲の環境から保護されている。ハウジング2は、下部ハウジング3と上部ハウジング4とを有しており、下部ハウジング3の内部空間と上部ハウジング4の内部空間とは、互いに隔離されている。
【0019】
下部ハウジング3の内部には、下部ハウジング3内の熱を外部へ放出するファン5と、駆動モータ6と、駆動モータ6と協働するウォーム減速機7と、ウォーム減速機7に連結された回転軸8とを有している。回転軸8は、軸受9によって支持されながら、上部ハウジング4の内部に向かって上方へ延在している。すなわち、回転軸8は、鉛直軸線と平行な回転軸線回りに回転可能である。ウォーム減速機7は、駆動モータ6の回転を回転軸8の回転へと変換する。
【0020】
上部ハウジング4の内部には、回転軸8に連結されて一体的に回転する回転盤10と、回転盤10に設けられた臼11と、臼11の上方に配置された上杵12と、臼11の下方に配置された下杵13とを有している。詳細には、回転盤10は、ダイテーブル14と、上ロータ15と、下ロータ16とを有している。ダイテーブル14と、上ロータ15と、下ロータ16とは、螺合等の締結手段によって一体的に結合している。
【0021】
ダイテーブル14は、環状の円板であり、上ロータ15及び下ロータ16間に配置されている。ダイテーブル14には、同心円上に等間隔に配置された複数の貫通孔が設けられ、各貫通孔内には、円筒の内面形状を有する臼11が配置されている。すなわち、ダイテーブル14は、同心円上に配置された複数の臼11を備えている。
【0022】
上ロータ15は、回転軸線方向にダイテーブル14と離間した上フランジ部17を有し、下ロータ16は、回転軸線方向にダイテーブル14と離間した下フランジ部18を有している。上フランジ部17及び下フランジ部18には、ダイテーブル14に配置された複数の臼11の各々に対応する位置に、貫通孔が設けられている。上ロータ15の上フランジ部17の貫通孔の各々には、上杵12が上下に移動可能に配置され、下ロータ16の下フランジ部18の貫通孔の各々には、下杵13が上下に移動可能に配置されている。それによって、対応する臼11、上杵12及び下杵13の組の各々は、同一直線状に整列して配置されている。
【0023】
上杵12は上フランジ部17の厚みより長く、下杵13は下フランジ部18の厚みより長く形成されている。臼11内に挿入される上杵12の前端面には、成型される製品の形状に応じた凹面が形成されており、臼11内に挿入される下杵13の前端面には、成型される製品の形状に応じた凹面が形成されている。上フランジ部17の上方に突出した上杵12の後端には、フランジ状の上杵ヘッド部12aが形成され、下フランジ部18の下方に突出した下杵13の後端には、フランジ状の下杵ヘッド部13aが形成されている。
【0024】
上杵12の上杵ヘッド部12aは、回転盤10の上方に配置された上杵ガイド19によって上下動が案内される。下杵13の下杵ヘッド部13aは、回転盤の下方に配置された下杵ガイド20によって上下動が案内される。上杵ガイド19及び下杵ガイド20は、図示しない支持部材によって支持されており、回転盤10の回転運動からは遮断されている。
【0025】
粉体材料を圧縮成型する位置において、回転盤10の上方には、上杵12の上杵ヘッド部12aと当接し、上杵12を下方へ押圧する上加圧ロール21が配置され、回転盤10の下方には、下杵13の下杵ヘッド部13aと当接し、下杵13を上方へ押圧する下加圧ローラ22が配置されている。
【0026】
上杵12及び下杵13は、回転盤10の回転によって、上杵ガイド19及び下杵ガイド20に沿ってそれぞれ相対的に移動し、上下方向に移動するように案内される。回転する上杵12及び下杵13が、粉体材料を圧縮成型する位置近傍に来ると、下杵13の前端部が下方から臼11内に挿入されて底を形成し、供給された粉体材料を保持する。次いで、上杵12の前端部が上方から臼11内に挿入され、上杵12及び下杵13が、上加圧ロール21及び下加圧ローラ22によってそれぞれ押圧されて、粉体材料の圧縮成型が行われる。
【0027】
環状の上杵ガイド19の径方向内側には、回転盤10の上方を覆う環状のカバー部材23が取り付けられており、カバー部材23は、軸受24によって回転軸8の回転運動からは遮断されている。回転盤10の上ロータ15の上面には凹部が形成されていることから、上ロータ15の上面とカバー部材23の下面とによって、空間25が画成されている。カバー部材23には、空間25に連通する通気孔26が形成されている。
【0028】
カバー部材23の通気孔26には、第1通気管27が接続され、空間25内への空気の供給又は空間25内からの空気の吸引が可能となっている。また、回転盤10の下フランジ部18の外側近傍には、第2通気管28が配置され、空気の供給が可能となっている。図1に示されるように、第1通気管27及び第2通気管28は、1本の第3通気管29に接続され、第3通気管29は、気流生成器30へと接続されている。粉体材料は、ハウジング2の上部に設けられたホッパー31より供給される。
【0029】
本実施形態では、気流生成器30は、粉体圧縮成型装置1のハウジング2内の温度より低温の冷気流を生成し、第3通気管29を介して第1通気管27及び第2通気管28から冷気流(例えば、約18度)を放出する。なお、第1通気管27及び第2通気管28は、独立して気流及び温度が制御できるように、2つの気流生成器にそれぞれ接続されるように構成してもよい。
【0030】
第1通気管27から放出された冷気流は、空間25内に供給され、回転盤10に吹き付けられる。回転盤10に吹き付けられた冷気流は、回転盤10、特に上ロータ15を冷却しながら方向を転じ、径方向外方へと吹き抜ける(矢印A)。それによって、冷気流は、上杵12を、特に上ロータ15の上フランジ部17から上方に突出した上杵12の部分を、回転盤10の回転に応じて順次冷却する。上フランジ部17から上方に突出した上杵12の部分が冷却されると、熱伝導によって上杵12全体も冷却される。また、回転盤10が冷却されると、熱伝導によって臼11も冷却される。
【0031】
上フランジ部17から上方に突出した上杵12の部分に当接した冷気流の一部は、上杵12の外周面と上フランジ部17の貫通孔の内周面との間の隙間を下方へ向かって吹き抜け、それによって、隙間に滞留する不要な粉体材料が一掃される。
【0032】
第2通気管28から放出された冷気流は、回転盤10の回転に対して径方向内方へと吹き抜ける(矢印B)。それによって、冷気流は、下杵13を、特に下ロータ16の下フランジ部18から下方に突出した下杵13の部分を、回転盤10の回転に応じて順次冷却し、さらに回転盤10、特に下ロータ16を冷却する。下フランジ部18の下方に突出した下杵13の部分が冷却されると、熱伝導によって下杵13全体も冷却される。また、回転盤10が冷却されると、熱伝導によって臼11も冷却される。
【0033】
下フランジ部18から下方に突出した下杵13の部分に当接した冷気流の一部は、下杵13の外周面と下フランジ部18の貫通孔の内周面との間の隙間を上方へ向かって吹き抜け、それによって、隙間に滞留する不要な粉体材料が一掃される。
【0034】
さらに、第2通気管28は、下杵13の前端部が下方から臼11内に挿入されて底を形成しているタイミングで、冷気流が上方へ吹き抜けるような位置に配置してもよい。すなわち、このタイミングに合うように配置された第2通気管28から放出された冷気流は、上述したように、下杵13の外周面と下フランジ部18の貫通孔の内周面との間の隙間を上方へ向かって吹き抜けた後、さらに上昇し、下杵13の外周面と臼11の内周面との間の隙間を上方へ向かって吹き抜ける。それによって、下杵13の外周面と臼11の内周面との間の隙間に滞留する不要な粉体材料を一掃することができる。
【0035】
さらに、上述したように隙間を吹き抜ける冷気流がシールの役割を果たし、隙間への進入を防止する効果も奏する。なお、隙間に滞留していて一掃された粉体材料は、図示しない集塵機によって収集される。
【0036】
本発明の実施形態によれば、回転盤10、臼11、上杵12及び下杵13等を効率的に冷却し且つ浮遊する粉体材料による悪影響を防止することが可能となる。すなわち、回転盤10や上杵12及び下杵13に対して、上方及び下方から冷気流が直接的に吹き付けられることから、各部材が効率的に冷却され、スティッキング及び各部材の熱膨張が防止される。また、上方及び下方からの冷気流によって、隙間に入り込む不要な粉体材料の滞留が一掃されることから、上杵12又は下杵13の上下動を妨げる抵抗力の発生を防止することができる。
【0037】
上述した実施形態によれば、気流生成器30は、冷気流を生成したが、粉体材料の融点が高い場合等、室温の気流又は室温より高温の暖気流を生成するようにしてもよい。すなわち、気流生成器30は、所定温度の気流の生成が可能なように構成してもよい。室温の気流又は室温より高温の暖気流であっても、隙間の粉体材料を一掃することができ、抵抗力の発生を防止するという効果を奏する。
【0038】
上述した実施形態によれば、上杵12に対する径方向外方の気流を生成し且つ下杵13に対する径方向内方の気流を生成したが、気流生成器30を吸引するように構成し、上杵12に対する径方向内方の気流を生成し且つ下杵13に対する径方向外方の気流を生成するようにしてもよい。他方、気流生成器30の構成は変えず、第1通気管27を回転盤10の上フランジ部17の外側近傍に配置し、第2通気管28を下ロータ16の直下に配置することで、上杵12に対する径方向内方の気流を生成し且つ下杵13に対する径方向外方の気流を生成するようにしてもよい。
【0039】
第1通気管27及び第2通気管28が配置される向きを揃えて、上杵12及び下杵13に径方向において同一方向の気流、すなわち外方向又は内方向の気流を生成するようにしてもよい。さらに、上述した実施形態又はここで述べた変形例に対し、第1通気管27及び第2通気管28にそれぞれ独立した気流生成器30を用いて、気流の方向及び気流の温度等を任意に組み合わせてもよい。これら変形例はいずれも、回転盤10に気流が向けられるように構成することが好ましい。
【0040】
上杵12に対する径方向の気流の風速が、下杵13に対する径方向の気流の風速よりも小さい方が好ましい。これは、下杵13の方が上杵12よりも臼11内に先に挿入された位置にあることから、第1通気管27の気流は、上杵12と上フランジ部17との間の隙間を一掃すればいいのに対し、第2通気管28の気流は、下杵13と下フランジ部18との隙間及び下杵13と臼11との隙間を一掃しなければいけないことが理由である。また、上杵12と上フランジ部17との隙間から一掃された粉体材料が、下杵13と臼11との隙間に入り込む可能性があることから、これを一掃することも可能となるからである。
【0041】
なお、粉体材料の性質に応じて、第1通気管27又は第2通気管28のいずれか一方のみを配置し、上杵12に対する気流のみを生成するか又は下杵13に対する気流のみを生成するようにしてもよい。
【0042】
本発明の実施形態による冷却効果を検証するために行った実験結果を表1に示す。実験に使用した装置は、モリマシナリー株式会社製の粉体圧縮成型装置(タレット交換式ロータリープレス「MZ400」)(以下、「MZ400」と称す。)であり、当該粉体圧縮成型装置を8時間に亘り連続的に粉体材料の圧縮成型を行った。表1は、各測定部位について、冷気流を供給した場合としなかった場合毎に、すなわち冷気流の有無毎に、装置稼働前と比較して8時間後に上昇した温度を示している。特に、上杵ヘッド部、ダイテーブル及び下杵ヘッド部の温度上昇の差が顕著であり、冷却効果が認められた。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示されるような冷却効果を奏するMZ400を用いてスティッキングの抑制効果について実験を行った。使用した粉体材料は、イブプロフェンを含有する解熱鎮痛剤用の打錠用粉末(融点:約60〜65度)である。圧縮成型開始から1時間毎に上杵及び下杵の表面を目視で観察し、スティッキングの有無を確認した。実験の結果、冷気流が有る場合には、10時間の連続稼働でも、スティッキングは確認されなかった。他方、冷気流がない場合には、5時間後に、45本のうち5本の上杵にスティッキングの初期症状が確認された。よって、冷気流のスティッキング抑制効果が認められた。
【0045】
次に、MZ400を用いて8時間の連続稼働を10回行い、その間に装置が異常停止した回数をカウントし、異常停止した割合を停止率として算出して比較する実験を行った。MZ400は、上杵及び下杵の上下動を阻害する所定以上の抵抗力が加わると、異常として稼働を停止する。抵抗力は、上杵及び下杵にそれぞれ設けられた圧力センサによって測定される。使用した粉体材料は、イブプロフェンを含有する感冒剤用打錠用粉末(融点:約60〜65度)である。実験の結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2によれば、冷気流無しの場合の停止率が80%であるのに対し、冷気流有りの場合の停止率は20%と、大きく改善された。冷気流無しの場合の停止率80%の内訳は、上杵の異常が45%であり、下杵の異常が45%であり、その他が10%であった。冷気流有りの場合の停止率20%の内訳は、上杵の異常が0%であり、下杵の異常が70%であり、その他が30%であった。上杵の異常が0%となったことから、特に第1通気管からの冷気流による改善効果が大きく、すなわち、径方向外方の冷気流が粉体材料を一掃した効果が大きいことが分かった。
【0048】
次いで、別の粉体材料を用いて同様の実験を行った。使用した粉体材料は、複合ビタミン剤用打錠用粉末(融点:約65〜70度)である。実験の結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3によれば、冷気流無しの場合の停止率が100%であるのに対し、冷気流有りの場合の停止率は0%と、格段に改善された。冷気流無しの場合の停止率100%の内訳は、上杵の異常が30%であり、下杵の異常が60%であり、その他が10%であった。
【0051】
上述したMZ400によれば、融点が60度以上である粉体材料の圧縮成型において、特に有利な効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 粉体圧縮成型装置
8 回転軸
10 回転盤
11 臼
12 上杵
13 下杵
14 ダイテーブル
15 上ロータ
16 下ロータ
17 上フランジ部
18 下フランジ部
19 上杵ガイド
20 下杵ガイド
23 カバー部材
24 軸受
25 空間
26 通気孔
27 第1通気管
28 第2通気管
30 気流生成器
図1
図2
図3