特許第6602182号(P6602182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602182
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】固形化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20191028BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61Q1/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-233085(P2015-233085)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-100963(P2017-100963A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167900
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 仁
(72)【発明者】
【氏名】渡部 友絵
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−023047(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157643(WO,A1)
【文献】 特開2002−047135(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/101729(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01325692(EP,A1)
【文献】 米国特許第06058942(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A45D 33/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状を有する固形化粧料の製造方法であって、
所定の形状を有する第1の化粧料片を配置する第1のステップと、
所定の形状を有し、前記第1の化粧料片に少なくとも一部を当接させることによって、前記第1の化粧料片にて支持される第2の化粧料片を配置する第2のステップとを備え、
前記第1の化粧料片および前記第2の化粧料片を含む複数の化粧料片の組み合わせにより、立体形状が形成され
前記第1のステップおよび前記第2のステップは、ノズルから溶融化粧料を所定の形状に吐出することによって、前記第1の化粧料片および前記第2の化粧料片を台座に配置し、
前記溶融化粧料は、前記ノズルから吐出された後に所定の形状を保持する応力数値に設定されていることを特徴とする固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載された固形化粧料の製造方法において、
前記溶融化粧料の応力数値は、前記ノズルから吐出される際の最大荷重値が0.001N以上かつ3.5N以下となるように設定されていることを特徴とする固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
請求項または請求項に記載された固形化粧料の製造方法において、
前記第1のステップおよび前記第2のステップは、周囲温度よりも低い温度に冷却した前記台座に前記第1の化粧料片および前記第2の化粧料片を配置することを特徴とする固形化粧料の製造方法。
【請求項4】
請求項から請求項のいずれかに記載された固形化粧料の製造方法において、
前記複数の化粧料片の少なくとも一部を覆うことによって、前記複数の化粧料片の立体形状を固定する固定用化粧料を配置する第3のステップを備えることを特徴とする固形化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体形状を有する固形化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体形状を有する固形化粧料が知られている。例えば、特許文献1に記載された凸型固形粉体化粧料の製造方法は、凹型を有するプレスヘッドにて化粧料を打型することによって、この凹型に対応する凸面(立体形状)を有する凸型固形粉体化粧料を製造している。また、例えば、特許文献2に記載された化粧料の成型方法は、中央をくり抜いた形状を有するシリコンゴム製のラバーモールドの内部に化粧料を流し込み、固化させた後、このラバーモールドを撓ませてラバーモールドから固化した化粧料を離型させることによって、ドーム状に盛り上がった円盤形状(立体形状)を有する化粧料を成型している。なお、特許文献2に記載された化粧料の成型方法は、ラバーモールドの内部に凹凸模様を形成しておくことによって、円盤形状の表面に花模様などを付した化粧料を成型することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−201829号公報
【特許文献2】特開2010−105962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、プレスヘッドにて化粧料を打型した後、このプレスヘッドを化粧料から離間させなければならないので、プレスヘッドを離間させるときに、プレスヘッドにて化粧料の形状を変形させてしまうような複雑な立体形状(例えば、複数の花弁を有するバラの立体形状)を有する化粧料を製造することはできないという問題がある。
また、特許文献2に記載された発明は、ラバーモールドの内部に凹凸模様を形成しておくことによって、円盤形状の表面に花模様などを付した化粧料を成型することができるが、化粧料をラバーモールドから離型させるときのラバーモールドの撓みには限界があり、化粧料をラバーモールドから離型させるときに、ラバーモールドにて化粧料の形状を変形させてしまうような複雑な立体形状を有する化粧料を成型することはできないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、複雑な立体形状を形成することができる固形化粧料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固形化粧料の製造方法は、立体形状を有する固形化粧料の製造方法であって、所定の形状を有する第1の化粧料片を配置する第1のステップと、所定の形状を有し、第1の化粧料片に少なくとも一部を当接させることによって、第1の化粧料片にて支持される第2の化粧料片を配置する第2のステップとを備え、第1の化粧料片および第2の化粧料片を含む複数の化粧料片の組み合わせにより、立体形状が形成され、第1のステップおよび第2のステップは、ノズルから溶融化粧料を所定の形状に吐出することによって、第1の化粧料片および第2の化粧料片を台座に配置し、溶融化粧料は、ノズルから吐出された後に所定の形状を保持する応力数値に設定されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、固形化粧料の製造方法は、第1のステップと、第2のステップとを備え、第1の化粧料片および第2の化粧料片を含む複数の化粧料片の組み合わせにより立体形状が形成されるので、プレスヘッドや、ラバーモールドなどの型を用いる必要がない。したがって、型などで固形化粧料の形状を変形させてしまうことなく、複雑な立体形状の固形化粧料を安定した状態で形成することができる。
【0013】
そして、このような構成によれば、ノズルから溶融化粧料を所定の形状に吐出することによって、第1の化粧料片および第2の化粧料片を、所定の形状に台座に配置することができる。また、第1の化粧料片および第2の化粧料片は、ノズルから吐出されて台座に配置された後、所定の形状を保持することができるので、複雑な立体形状の固形化粧料を容易に形成することができる。
【0014】
本発明では、溶融化粧料の応力数値は、ノズルから吐出される際の最大荷重値が0.001N以上かつ3.5N以下となるように設定されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、溶融化粧料の応力数値が、ノズルから吐出される際の最大荷重値が0.001N以上となるように設定されているので、第1の化粧料片および第2の化粧料片を、ノズルからスムーズに吐出することができる。
なお、ノズルから吐出される際の最大荷重値が0.001N未満となるように溶融化粧料の応力数値を設定した場合には、第1の化粧料片および第2の化粧料片が、その形状を保持することができなくなるおそれがある。
【0016】
また、このような構成によれば、溶融化粧料の応力数値が、ノズルから吐出される際の最大荷重値が3.5N以下となるように設定されているので、溶融化粧料を、所定の形状に容易に形成することができる。
なお、ノズルから吐出する際の最大荷重値が3.5Nを超えるように溶融化粧料の応力数値を設定した場合には、溶融化粧料を所定の形状に形成しにくくなり、ひいてはノズルから吐出することが困難となってしまうおそれがある。
【0017】
本発明では、第1のステップおよび第2のステップは、周囲温度よりも低い温度に冷却した台座に第1の化粧料片および第2の化粧料片を配置することが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、第1の化粧料片および第2の化粧料片を台座に配置したときに固化するスピードが速くなり、ノズルから吐出したままの所定の形状を維持しやすくなる。そして、これら第1の化粧料片および第2の化粧料片がしっかりと形状を維持するとともに、次の化粧料片を配置する際に溶融しにくくなっているため、固形化粧料が所望の形状を保持することができる。
【0019】
本発明では、複数の化粧料片の少なくとも一部を覆うことによって、複数の化粧料片の立体形状を固定する固定用化粧料を配置する第3のステップを備えることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、固定用化粧料にて複数の化粧料片の立体形状を固定することができるので、固形化粧料の立体形状が振動や落下などに起因して崩れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る固形化粧料を示す斜視図
図2】花芯部を化粧皿に配置している状態を示す図
図3】ノズルの外観を示す斜視図
図4】花弁部を化粧皿に配置している状態を示す図
図5】花弁部を化粧皿に更に配置している状態を示す図
図6】複数の化粧料片を化粧皿に配置した状態を示す図
図7】固定用化粧料を化粧皿に充填している状態を示す図
図8】ノズルの変形例を示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る固形化粧料を示す斜視図である。
固形化粧料1は、図1に示すように、円盤状の化粧皿10に収容されている。この固形化粧料1は、化粧皿10の略中央に配置された複数の化粧料片2と、複数の化粧料片2の周囲に充填された固定用化粧料3とを備えている。
【0023】
この複数の化粧料片2は、油性成分を配合してなるファンデーション、アイシャドウ、口紅、チークなどの油性化粧料である。
【0024】
複数の化粧料片2は、化粧皿10の略中央に配置された花芯部21と、この花芯部21の周囲に立て掛けられるようにして配置された複数の花弁部22とを備え、全体としてバラの形状を模した立体形状を有している。複数の花弁部22は、花芯部21に当接する4枚の内花弁部22Aと、これらの内花弁部22Aに当接する4枚の外花弁部22Bとを備えている。
【0025】
このように、本実施形態では、固形化粧料1は、所定の形状を有する第1の化粧料片(例えば、花芯部21)と、所定の形状を有し、第1の化粧料片に少なくとも一部が当接した状態で第1の化粧料片にて支持される第2の化粧料片(例えば、内花弁部22A)とを備えている。そして、固形化粧料1は、第1の化粧料片および第2の化粧料片を含む複数の化粧料片2の組み合わせにより、立体形状(バラの形状)が形成されている。
【0026】
固定用化粧料3は、複数の化粧料片2の周囲を覆うことによって、複数の化粧料片2の立体形状を固定している。具体的には、固定用化粧料3は、ワックスやゲル化剤を用いた透明なグロス等の化粧料であり、複数の化粧料片2を常温で安定に固定することができる。
このように、本実施形態では、固定用化粧料3は、複数の化粧料片2の少なくとも一部を覆うことによって、複数の化粧料片2の立体形状を固定している。また、固定用化粧料3は、透明な化粧料を採用しているので、固定用化粧料3を透過して複数の化粧料片2を見ることができ、固形化粧料1の外観を美しくすることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、固定用化粧料3は、複数の化粧料片2の周囲を覆うことによって、複数の化粧料片2の立体形状を固定しているが、複数の化粧料片2の表面の全部を覆うことによって、複数の化粧料片2の立体形状を固定してもよい。要するに、固定用化粧料は、複数の化粧料片の少なくとも一部を覆うことによって、複数の化粧料片の立体形状を固定すればよい。
また、本実施形態では、固定用化粧料3は、透明な化粧料を採用しているが、透明でない化粧料を採用してもよい。この場合には、例えば、固定用化粧料として複数色の化粧料を採用して模様を形成すること等によって、固形化粧料1の外観を美しくするようにしてもよい。
【0028】
以下、固形化粧料1の製造方法を説明する。なお、この固形化粧料1の製造方法は、全ての工程を製造装置にて実施してもよく、各工程に作業者の手作業を介在させて実施してもよい。
【0029】
図2は、花芯部を化粧皿に配置している状態を示す図である。
固形化粧料1を製造するには、まず、図2に示すように、回転台11の台上に、化粧料片を配置する台座としての化粧皿10をセットする。この回転台11は、化粧皿10の皿底の中心を通る軸を回転軸(図中一点鎖線)として回転することによって、化粧皿10を回転させる。そして、回転台11にて化粧皿10を回転させるとともに、ノズル12から均一に溶解した溶解化粧料Cを所定の形状に吐出することによって、溶融化粧料Cで第一の化粧料片(花芯部21)を形成する。
この後の製造方法については、ノズル12の説明および溶融化粧料Cの説明の後で詳細に説明する。
なお、本実施形態では、化粧皿10をノズル12に対して回転させるように構成しているが、ノズル12を化粧皿10に対して回転させるように構成してもよい。要するに、化粧皿10およびノズル12を相対的に回転させるように構成すればよい。
【0030】
図3は、ノズルの外観を示す斜視図である。
ノズル12は、図3に示すように、先端側(図中上方側)に向かうにしたがって縮径する中空略円錐台状に形成されている。このノズル12は、四隅を丸められた略矩形状に開口する吐出口12Aを先端側に有し、円形状に開口する供給口12Bを基端側に有している。
【0031】
ノズル12から溶融化粧料Cを吐出する際には、ノズル12の供給口12Bから供給された溶融化粧料Cが、吐出口12Aから押し出されることによって所定の形状に吐出される。換言すれば、溶融化粧料Cは、ノズル12を通ることによって所定形状に形成される。
なお、ノズル12の吐出口12Aは、四隅を丸められた略矩形状に開口しているので、ノズル12の先端から吐出された溶融化粧料Cは、丸みのある帯状に形成される。
【0032】
以下の表1は、溶融化粧料Cの処方例を示す表である。溶融化粧料Cは、表1に示すように、10%のセレシンと、20%のパルミチン酸デキストリンと、70%のトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルとを配合し、これらを加熱溶解し、均一に混合したものである。
【0033】
【0034】
溶融化粧料Cは、ノズル12から吐出された後に所定の形状を保持しうる応力数値に設定されている。この応力数値は、レオメーター(COMPAC−100II、サン科学社製)にて測定して得られるものである。すなわち、まず所定の試験用容器(20mLプラ壺)に20mLの溶融化粧料Cを充填する。そして、この試験用容器に充填された溶融化粧料Cに円盤を軸方向に沿って挿入することによって、溶融化粧料Cの応力数値を測定することができる。
【0035】
本実施形態では、円盤の直径を10mmとし、溶融化粧料Cの表面から円盤を挿入する深さを10mmとし、円盤の挿入速度を60mm/secとした場合に、溶融化粧料Cの応力数値は、0.001N以上かつ3.5N以下の最大荷重値となるように設定されている。換言すれば、溶融化粧料Cの応力数値は、ノズル12から吐出する際の最大荷重値が0.001N以上かつ3.5N以下となるように設定されている。
【0036】
以下、固形化粧料1の製造方法を具体的に説明する。
固形化粧料1を製造するには、まず、図2に示すように、回転台11を停止させて化粧皿10の回転を停止させる。この化粧皿10は、周囲温度よりも低い温度に冷却された状態となっている。そして、ノズル12を化粧皿10の鉛直上方に位置させるとともに、ノズル12の吐出口12Aから所定量の溶融化粧料Cを吐出することによって、化粧皿10の略中央に花芯部21を配置する。この工程は、所定の形状を有する第1の化粧料片を配置する第1のステップとして機能する。
【0037】
図4は、花弁部を化粧皿に配置している状態を示す図である。
図4に示すように、回転台11を回転させて化粧皿10の回転を開始する(図中時計回り矢印参照)。そして、ノズル12を化粧皿10の径方向に沿って外側に移動させる(図中右向き矢印参照)。その後、ノズル12の吐出口12Aから所定量の溶融化粧料Cを吐出することによって、花芯部21の周囲に立て掛けられ花芯部21を包み込むようにして内花弁部22Aを配置する。この工程は、所定の形状を有し、第1の化粧料片に少なくとも一部を当接させることによって、第1の化粧料片にて支持される第2の化粧料片を台座に配置する第2のステップとして機能する。
【0038】
ここで、前述したように、溶融化粧料Cの応力数値は、ノズル12から吐出する際の最大荷重値が0.001N以上かつ3.5N以下となるように設定されているので、溶融化粧料Cは、ノズル12からスムーズに吐出可能で、ノズル12から吐出される際に、所定形状に形成される応力数値に設定されている。
なお、本実施形態では、溶融化粧料Cの応力数値は、ノズル12から吐出される際の最大荷重値が0.001N以上かつ3.5N以下となるように設定されているが、第1の化粧料片および第2の化粧料片を吐出できる応力数値であれば、これ以外の応力数値に設定してもよい。
【0039】
また、前述したように、化粧皿10は、周囲温度よりも低い温度に冷却された状態となっているので、第1のステップおよび第2のステップにおいて、第1の化粧料片および第2の化粧料片は、周囲温度よりも低い温度に冷却された台座にを配置されている。
なお、本実施形態では、化粧皿10は、周囲温度よりも低い温度に冷却された状態としているが、溶融化粧料の処方によっては、必ずしも冷却の必要はない。
【0040】
図5は、花弁部を化粧皿に更に配置している状態を示す図である。
図5に示すように、回転台11を回転させて化粧皿10の回転を継続した状態において、ノズル12を化粧皿10の径方向に沿って外側に移動させる(図中右向き矢印参照)。その後、ノズル12を化粧皿10の径方向に沿って内側に移動させながらノズル12の吐出口12Aから所定量の溶融化粧料Cを吐出することによって(図中左向き矢印参照)、花芯部21および先の工程にて配置した1枚目の内花弁部22Aに立て掛けられるようにして2枚目の内花弁部22Aを配置する。
【0041】
図6は、複数の化粧料片を化粧皿に配置した状態を示す図である。
上記の工程と同様の工程を繰り返すことによって、花芯部21の周囲に立て掛けられ花芯部21を包み込むようにして全ての花弁部22を配置し、図6に示すように、全体としてバラの形状を模した立体形状の固形化粧料を形成することができる。
このように、固形化粧料1の製造方法では、第1のステップおよび第2のステップを備え、第1の化粧料片および第2の化粧料片を含む複数の化粧料片2の組み合わせにより、複数の化粧料片2にプレス処理などを施すことなく立体形状が形成されている。
【0042】
図7は、固定用化粧料を化粧皿に充填している状態を示す図である。
最後に、図7に示すように、回転台11の回転を停止し、化粧皿10を静止した状態において、固定用化粧料ノズル13を複数の化粧料片2の外側に位置させ、固定用化粧料ノズル13の先端から所定量の固定用化粧料3を吐出することによって、複数の化粧料片2の周囲に固定用化粧料3を充填する。この工程は、複数の化粧料片2の少なくとも一部を覆うことによって、複数の化粧料片2の立体形状を固定する固定用化粧料を配置する第3のステップとして機能する。
【0043】
なお、固定用化粧料3は、化粧皿10に充填する際に複数の化粧料片2が溶融してしまわない温度で充填することができる化粧料である。具体的には、固定用化粧料3は、前述したように、ワックスやゲル化剤を用いた透明なグロス等の化粧料である。
また、本実施形態では、回転台11の回転を停止し、化粧皿10を静止した状態で、複数の化粧料片2の周囲に固定用化粧料3を充填しているが、回転台11を回転させて化粧皿10を回転させながら、複数の化粧料片2の周囲に固定用化粧料3を充填することもできる。
【0044】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)固形化粧料1は、第1の化粧料片および第2の化粧料片を含む複数の化粧料片2の組み合わせにより立体形状が形成されるので、プレスヘッドや、ラバーモールドなどの型を用いることなく、複雑な立体形状の固形化粧料を容易に形成することができる。
(2)固形化粧料1は、固定用化粧料3にて複数の化粧料片2の立体形状を固定することができるので、振動や落下などに起因して立体形状が崩れてしまうことを抑制することができる。
【0045】
(3)固形化粧料1の製造方法は、第1のステップと、第2のステップとを備え、第1の化粧料片および第2の化粧料片を含む複数の化粧料片2の組み合わせにより立体形状が形成されるので、プレスヘッドや、ラバーモールドなどの型を用いる必要がない。したがって、型などで固形化粧料1の形状を変形させてしまうことなく、複雑な立体形状の固形化粧料を安定した状態で形成することができる。
(4)ノズル12から溶融化粧料Cを所定の形状に吐出することによって、第1の化粧料片および第2の化粧料片を、所定の形状に台座に配置することができる。また、第1の化粧料片および第2の化粧料片は、ノズル12から吐出されて化粧皿10に配置された後、所定の形状を保持することができるので、複雑な立体形状の固形化粧料を容易に形成することができる。
【0046】
(5)溶融化粧料Cの応力数値が、ノズル12から吐出される際の最大荷重値が0.001N以上となるように設定されているので、第1の化粧料片および第2の化粧料片を、ノズル12からスムーズに吐出することができる。
(6)溶融化粧料Cの応力数値が、ノズル12から吐出される際の最大荷重値が3.5N以下となるように設定されているので、溶融化粧料Cを、所定の形状に容易に形成することができる。
【0047】
(7)化粧皿10は、周囲温度よりも低い温度に冷却されているので、第1の化粧料片および第2の化粧料片を化粧皿10に配置したときに固化するスピードが速くなり、化粧皿10に配置した後の形崩れが抑制されるため、ノズル12から吐出したままの所定の形状を維持しやすくなる。そして、これら第1の化粧料片および第2の化粧料片がしっかりと形状を維持するとともに、次の化粧料片2を配置する際に溶融しにくくなっているため、固形化粧料1が所望の形状を保持することができる。
(8)固形化粧料1の製造方法は、第3のステップを備え、固定用化粧料3にて複数の化粧料片2の立体形状を固定することができるので、固形化粧料1の立体形状が振動や落下などに起因して崩れてしまうことを抑制することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、化粧皿10を台座とし、第1の化粧料片および第2の化粧料片を化粧皿10に直に配置していたが、化粧皿10とは異なる他の台座に第1の化粧料片および第2の化粧料片を配置し、立体形状を有する固形化粧料を形成した後、この固形化粧料を化粧皿に移し替えるようにしてもよい。
前記実施形態では、固形化粧料1は、複数の化粧料片2の周囲に充填された固定用化粧料3を備えていたが、これを備えていなくてもよい。
【0049】
また、本発明においては、第1の化粧料片と第2の化粧料片とを異なる色とすることにより、例えば花芯部と花弁部との色が異なるバラの形状の固形化粧料を得ることができる。さらに、化粧料片を形成する際に、ノズル内部に仕切りを設けておき、異なる色の溶融化粧料を仕切り付きノズルに供給して吐出することにより、複数色からなる化粧料片が形成され、この化粧料片の組み合わせにより、デザイン性に富んだ華やかな固形化粧料を得ることができる。また、ノズルに複数色の溶融化粧料を供給し、ノズル内で溶融化粧料を適宜混合することにより、グラデーション模様やマーブル模様を呈する化粧料片が形成され、これらの化粧料片を組み合わせることにより、デザインの幅を広げることもできる。
【0050】
前記実施形態では、ノズル12の先端の吐出口12Aから溶融化粧料Cを吐出することによって、第1の化粧料片および第2の化粧料片を所定の形状に形成していたが、型などを利用することによって、第1の化粧料片および第2の化粧料片を所定の形状に形成してもよい。例えば、型などを利用することによって、ドーム形状の第1の化粧料片を2つ形成し、これら2つの第1の化粧料片のうちの一方の第1の化粧料片の平面上に、ノズルから溶融化粧料を吐出することにより第2の化粧料片を載置し、この第2の化粧料片の上に他方の第1の化粧料片を重ね合せることによって、全体としてマカロンの形状を模した立体形状の固形化粧料を形成してもよい。要するに、第1の化粧料片および第2の化粧料片は、所定の形状を有していればよい。
【0051】
前記実施形態では、ノズル12は、四隅を丸められた略矩形状に開口する吐出口12Aを先端側に有し、円形状に開口する供給口12Bを基端側に有し、先端側に向かうにしたがって縮径する中空略円錐台状に形成されていたが、これとは異なる形状のノズルを採用してもよい。
【0052】
図8は、ノズルの変形例を示す外観斜視図である。
ノズル14は、図8に示すように、先端側(図中上方側)に向かうにしたがって縮径する中空略円錐台状に形成されている。このノズル14は、円形状に開口する吐出口14Aを先端側に有し、円形状に開口する供給口14Bを基端側に有している。
ノズル14から溶融化粧料を吐出する際には、ノズル14の供給口14Bから供給された溶融化粧料が、吐出口14Aから押し出されることによって所定の形状に吐出される。換言すれば、溶融化粧料は、ノズル14を通ることによって所定形状に形成される。
なお、ノズル14の吐出口14Aは、円形状に開口しているので、ノズル14の先端から吐出された溶融化粧料は、円柱状に形成される。
このように形状の異なるノズルを採用することによって、複数の化粧料片のそれぞれの形状を多様化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、立体形状を有する固形化粧料の製造方法に好適に利用できる。

【符号の説明】
【0054】
1 固形化粧料
2 複数の化粧料片
3 固定用化粧料
10 化粧皿(台座)
11 回転台
12 ノズル
13 固定用化粧料ノズル
21 花芯部(第1の化粧料片)
22 花弁部
22A 内花弁部(第2の化粧料片)
22B 外花弁部
C 溶融化粧料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8