特許第6602199号(P6602199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602199
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】筆記具用水性インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/17 20140101AFI20191028BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20191028BHJP
   B43L 19/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C09D11/17
   B43K8/02 100
   B43L19/00 G
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-254582(P2015-254582)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-115084(P2017-115084A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和彦
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103319955(CN,A)
【文献】 特開2004−149681(JP,A)
【文献】 特開2014−189725(JP,A)
【文献】 特開2003−138192(JP,A)
【文献】 特開昭56−036560(JP,A)
【文献】 特表2002−527598(JP,A)
【文献】 特開2006−206669(JP,A)
【文献】 特開平11−343443(JP,A)
【文献】 特開2003−221542(JP,A)
【文献】 特開2004−160986(JP,A)
【文献】 特表2010−520934(JP,A)
【文献】 特開昭57−123283(JP,A)
【文献】 特開2000−336315(JP,A)
【文献】 特開2012−241135(JP,A)
【文献】 特開2013−014712(JP,A)
【文献】 特開昭59−217776(JP,A)
【文献】 特開平11−217532(JP,A)
【文献】 特開平11−140369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/17
B43K 8/02
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粒子と、体質材と、凝集分散剤と、凝集コントロール剤と、自己架橋型樹脂エマルションと、ポリオレフィン樹脂粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする、筆記用具用水性インキ組成物。
【請求項2】
前記顔料粒子が酸化チタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸化チタンが酸化アルミナで表面処理されたものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記凝集分散剤が、多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記凝集コントロール剤がセルロース誘導体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記凝集コントロール剤の含有量が、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.05〜1.0質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記自己架橋型樹脂エマルションの含有率が、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.5〜10質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径が、0.1μm〜35μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオレフィン樹脂粒子の含有量が、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜10質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
粘度が、20℃、剪断速度380sec−1、回転速度100rpmで1〜20mPa・sである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
20℃における粘性指数nが、0.6〜1.0である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用水性インキ組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明はインキの保存安定性、筆跡の定着性、耐擦過性、発色性に優れる筆記具用水性インキ組成物に関するものである。また、本発明は、その組成物を用いた筆記具にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、隠蔽性を有する筆跡を得る為に、酸化チタンなどの白色顔料を用いた筆記具用水性インキ組成物が知られている。更に、そのような隠蔽性の高いインキ組成物に補色顔料などを併用することで、下地を隠蔽しながらパステル調や有彩色の筆跡が得られることが知られる様になり、そのような組成物が盛んに検討されている。
【0003】
しかしながら、酸化チタンなどの比重の重い顔料を使用した際には、時間の経過に伴って顔料が沈降して所謂ハードケーキとなってしまうと、再分散が困難になってしまうことがあった。そこで、組成物に用いる各種材料の改質や、分散剤の併用などによる、顔料の沈降防止が試みられている。しかしながら、従来報告されている技術では、沈降速度を遅くすることはできるものの、長期間の経時では、ハードケーキとなることは避けられず、それらの対策は十分な結果に結びついていないのが実情である。更に、所謂ゲル化剤や増粘剤などを用いて、インキ粘度を高くしたり、構造粘性を発現させるなどの対策も検討されている。しかしながら、これらの対策手段を講じたインキ組成物を繊維束やポーラス体などのペン先を用いた筆記具に用いると、インキ吐出量が少なくなることがあった。以上の通り、比重の重い顔料を含むインキ組成物の経時保存安定性ついて、これまでの技術は改良の余地があり、さらなる改良方法の検討がされている。
【0004】
一方、隠蔽性を有する筆跡が得られることから、各種被筆記体への筆記用のインキとして用いられているが、用いる筆記面によっては、その定着性が悪く、また、擦過で筆跡が簡単に剥がれてしまうなど耐擦過性が悪いなどの課題があった。そこで、筆跡を改良する為に、各種検討がされているが、筆跡の定着性や、耐擦過性については、まだ改良の余地があった。
【0005】
特許文献1には、顔料とケイ酸アルミニウムとアクリル系樹脂エマルションとポリエチレンワックスエマルションを用いた、ホワイトボードのような筆記板に用いられるインキが開示されている。顔料としては、酸化チタンが例示されている。このインキは耐水性が低く、水で濡れたもので拭くと筆跡が消去できるので、ホワイトボードなどに筆記するために用いることができることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、白色顔料とポリオレフィンワックスと特定の樹脂を用いた白色インキ組成物が開示されている。樹脂として、スチレンアクリル樹脂が記載されている。そして、この組成物を用いて形成された画像は、滑り性、耐擦過性、および定着性に優れていることが記載されている。
【0007】
特許文献3には、特定の酸化チタンと樹脂粒子、結合剤を用いた筆記用インキが記載されている。そして、樹脂粒子として中空樹脂粒子、およびポリエチレンが記載されている。このインキは再分散性が改良されたものである。
【0008】
特許文献4には、酸化チタンとケイ酸アルミニウムと特定の樹脂を用いた筆記用インキが記載されている。このインキは、分散系の経時安定性が改良されており、筆跡の色調が鮮明であることが記載されている。
【0009】
特許文献5には、酸化チタン、有彩色顔料、シリカ又はアルミノケイ酸塩、水溶性樹脂、特定構造の分散剤、および界面活性剤を含む筆記具用水性顔料インキが記載されている。そして、水溶性樹脂として、カルボキシメチルセルロース、水分散性エマルジョンが記載されている。このインキは、経時的な色別れが少なく、ハードケーキを作らないものであることが記載されている。
【0010】
特許文献6には、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、水溶性樹脂、水に溶解する無機塩、界面活性剤、および水を含む筆記用具顔料インキが記載されている。このインキも、経時的な色別れが少なく、ハードケーキを作らないものであることが記載されている。
【0011】
以上の通り、従来の技術は、筆跡の定着性、耐擦過性、再分散性のいずれかを向上させることに成功している。しかしながら、これらすべてを同時に満足することができる組成物は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−138192号公報
【特許文献2】特開2012−77232号公報
【特許文献3】特開平11−343443号公報
【特許文献4】特開昭59−217776号公報
【特許文献5】特開平11−217532号公報
【特許文献6】特開平11−140369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、顔料などの各種成分が経時により沈降してハードケーキを作ることなく、簡単に再分散する分散状態を作ることが可能であり、非浸透性の筆記面を用いた際にも筆跡の定着性、耐擦過性に優れた筆記用インキ組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による筆記用具用水性インキ組成物は、顔料粒子と、体質材と、凝集分散剤と、凝集コントロール剤と、自己架橋型樹脂エマルションと、ポリオレフィン樹脂粒子と、溶媒とを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による筆記具は、前記組成物を収容してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、筆記具用水性インキ組成物に自己架橋型樹脂エマルションを配合したことなどにより、従来の筆記具と比較して、筆記性や発色性などの特性を従来の筆記具と同等以上に維持しながら、経時安定性、非浸透性の筆記面への筆跡の定着性、耐擦過性に優れた筆記具用水性インキ組成物が得られるなど優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0018】
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により、「水性インキ組成物」または「組成物」と表すことがある。)は、顔料粒子と、体質材と、凝集分散剤と、凝集コントロール剤と、自己架橋型樹脂エマルションと、ポリオレフィン樹脂粒子と、溶媒とを含んでなる。以下、本発明による水性インキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0019】
(顔料粒子)
本発明において、顔料粒子は従来知られている任意のものから選択することができる。顔料としては、金属酸化物または金属塩などの無機顔料、ならびに有機色素顔料またはレーキ顔料などの有機顔料が挙げられる。本発明においては、無機顔料が好ましく用いられる。これらのうち、無機顔料粒子が好ましく、特に金属酸化物粒子が好ましい。特に酸化チタンは白色であるため、後述する補色顔料などと組み合わせることで、多様な色彩を実現できるので好ましい。また、顔料として、光沢のある光輝性顔料、例えばアルミニウム顔料などを用いることもできる。
【0020】
顔料粒子は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、リン酸塩、モリブデン、またはケイ酸塩などの被覆材により表面処理された酸化チタンであることが好ましく、特にアルミナのみで表面処理された酸化チタンが好ましい。このような顔料粒子を用いると、組成物の再分散性が改良され、長時間放置した場合であってもハードケーキが形成されにくい。
【0021】
上記アルミナなどによる顔料粒子の被覆量、すなわち酸化チタンの質量100質量部に対するアルミナ等の被覆材の質量の割合は、0.01%〜20%質量部であることが好ましく、0.1%〜8.0%質量部であることがより好ましい。被覆量が上記数値範囲内であれば、水性インキ組成物のハードケーキ化を十分に防止することができる。
【0022】
顔料粒子の平均粒子径は、0.01μm〜30μmであることが好ましく、0.05μm〜20μmであることがより好ましく、0.1μm〜10μmであることがさらに好ましい。顔料粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、顔料粒子が水性インキ組成物中において沈降した場合であっても、その再分散性を十分に維持できる。また、平均粒子径が上記数値範囲内の顔料粒子を含む水性インキ組成物をマーカーなどの筆記用具に使用した場合、インキ吐出性を向上させることができる。なお、顔料粒子の平均粒子径は、一例としては、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。本明細書では、顔料粒子の「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0023】
水性インキ組成物における顔料粒子の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。顔料粒子の含有量が上記数値範囲内であれば、インキ吐出性の低下を防止することができるとともに、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成させた筆跡の隠蔽性を維持することができる。
【0024】
(体質材)
本発明による水性インキ組成物は、体質材を含んでいる。体質材とは、組成物から形成される筆跡の強度や着色性などを改善するために用いられる材料である。本発明において体質材は従来知られている任意のものから選択することができるが、具体的には、カオリン、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのウィスカーなどを用いることもできる。これらのうち、特にカオリンが好ましい。これは筆記面として紙を用いた場合、カオリンを用いることによって、顔料粒子が紙の繊維間に入り込むことを防ぐことができ、筆跡の発色性が高くなる効果が高いためである。
【0025】
水性インキ組成物における体質材の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、1質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%であることがより好ましい。体質材の含有量が上記数値範囲内であれば、インキ粘度が高くなりすぎること、ハードケーキ化、ならびに筆記する際のインキ吐出性の低下を防止することができる。さらに、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成させた筆跡の隠蔽性を維持することができる。
【0026】
(凝集分散剤)
本発明による水性インキ組成物は、凝集分散剤を含んでなる。ここで凝集分散剤とは顔料粒子の表面に吸着し、顔料粒子を相互に離間させながら、顔料粒子同士の距離を一定以上に保ち、顔料粒子同士が直接凝集することを防ぐことができるものである。この結果、顔料粒子の凝集が抑制され、凝集体が形成される場合であっても、相対的に密度の低い凝集体が形成される。
【0027】
このような凝集分散剤としては、多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩が好ましく用いられる。多塩基酸は、複数の酸基を有していればよいが、より多数の酸基を有する酸性ポリマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、などが挙げられる。また、これ以外にも、クロトン酸などの不飽和脂肪酸を重合させたポリマーも多塩基酸の例である。多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩は、これらの多塩基酸にアルキロールアンモニウムを反応させることにより得ることができる。このような反応によって得られた塩は、下記の様な部分構造を含む。
−C(=O)−N(−R)(−R−OH)
ここで、Rはアルキル基、Rはアルキレン基である。本発明において用いられる分散凝集剤は、このような部分構造を有するポリマーが好ましい。このようなポリマーは、上記の構造を複数有していればよく、その分子量は特に限定されないが、質量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜20,000であることがより好ましい。
【0028】
また、用いられる顔料によっては、カルボキシル基などの酸性基が同様の機能を発揮することもある。すなわち、凝集分散剤として、酸性基を含むポリマー類を用いることもできる。
【0029】
本発明において凝集分散剤は、上記のような基によって顔料粒子の表面に結合し、また他の凝集分散剤分子と水素結合することにより、ポリマーの主鎖構造が顔料粒子間に入り込み、顔料粒子同士を離間させるものと考えられる。
【0030】
このような凝集分散剤は、一般に市販されており、例えばAnti−Terra 203、Anti−Terra 204、Anti−Terra 206、Anti−Terra 250、Anti−Terra U、DISPER BYK−102、DISPER BYK−180、DISPER BYK−191(いずれも商品名、ビックケミー社より市販)、TEGO Disper630、TEGO Disper700(いずれも商品名、エボニックデグサジャパン社より市販)などが挙げられる。
【0031】
(凝集コントロール剤)
本発明による水性インキ組成物は、凝集コントロール剤を含んでなる。凝集コントロール剤は、前記した凝集分散剤により形成された、相対的に密度の低い凝集体に対して結合し、さらに、体質材や後述するポリオレフィン樹脂粒子などを水性インキ組成物中に分散し、嵩高い凝集体を作ることができるものである。この凝集コントロール剤により、水性インキ組成物のハードケーキ化を防止し、嵩高い凝集体を作るため、再分散性を向上させることができる。凝集コントロール剤としては、例えば、セルロース誘導体を用いることができ、2種以上のセルロース誘導体を併用することもできる。
【0032】
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースおよびそれらの塩などが挙げられる。これらのうちカルボキシメチルセルロースは、顔料粒子のハードケーキ化ならびに再分散性の低下を防止することができるので好ましい。これは、カルボキシメチルセルロースに含まれるカルボキシル基が、相対的に密度の低い凝集体に吸着しやすく、組成物中で均一に存在し、顔料粒子同士の凝集を阻害することができるとともに、前記の通り、体質材やポリオレフィン樹脂粒子など分散することができ、凝集体を嵩高いものとすることができるためであると考えられる。また、カルボキシメチルセルロースは、他のセルロース誘導体と比較して熱的安定性が高く、組成物が加熱された際にも物性が変化することがないため好ましい。
【0033】
水性インキ組成物における凝集コントロール剤の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.05〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0034】
(自己架橋型樹脂エマルション)
水性インキ組成物は、自己架橋型樹脂エマルションを含んでなる。本発明において自己架橋型樹脂エマルションとは、樹脂粒子の表面に反応性の官能基をもちこの官能基が架橋反応することにより網目状高分子構造を生成するエマルションで、あらかじめ所定量の樹脂と架橋剤とを含み、かつエマルション状態ではほとんど架橋反応しない1液タイプのエマルションである。
【0035】
また樹脂と架橋剤とは、水性インキ組成物中では軽く適度に架橋反応して分散安定向上に寄与するとともに、筆記後は、筆跡の乾燥に伴って、加熱を必要とせずに常温で速やかに架橋反応して、筆跡を筆記面に、速やかに、かつ良好に定着させることができる。
【0036】
前記自己架橋型樹脂エマルションとしては、ウレタン系樹脂エマルション、アクリル系樹脂エマルション、などが挙げられ、ウレタン系樹脂エマルションとしては、ニッポランWL−530(商品名、日本ポリウレタン工業(株)製)等が挙げられる。
【0037】
また、アクリル系樹脂エマルションとしては、JONCRYL PDX−7164、JONCRYL PDX−7430(いずれも商品名、BASF社製)、アロンNW−400、アロンNW−7060、アロンA−3611(いずれも商品名、東亞合成(株)製)、モビニール710A、718A、730L、731A、742A、952B、966A、975N、6960、LDM7582(いずれも商品名、日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0038】
水性インキ組成物における自己架橋型樹脂エマルションの含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましく、2〜6質量%であることがさらに好ましい。今範囲より少ないと定着性が劣る傾向にあり、この範囲より多いと水性インキ組成物の粘度が高くなる傾向があり、筆記性やキャップオフ性能が悪くなる傾向が見られる。前記範囲にあると、筆跡の定着性、耐擦過性が良好となり、水性インキ組成物としての性能が十分に得られる。
【0039】
(ポリオレフィン樹脂粒子)
本発明による組成物は、必要に応じてポリオレフィン樹脂粒子を含むことができる。ポリオレフィン樹脂粒子の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。また、ポリオレフィンは、直鎖状ポリオレフィン、分岐鎖を有するポリオレフィン、官能基が導入された変性ポリオレフィンなどであってもよい。例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレンを用いる場合には、低密度ポリエチレン、直鎖状低分子ポリエチレン、高密度ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどを用いることができる。これらのポリオレフィンの分子量は特に限定されないが、例えば質量平均分子量が500〜100,000であるポリオレフィンが好ましく、重量平均分子量が800〜5,000であることがさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の質量平均分子量が上記数値範囲内であれば、この水性インキ組成物をマーカーなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。ポリオレフィン樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
【0040】
ポリオレフィン樹脂粒子の形状は、特に限定されず、不定形、球状、針状、板状、方形など任意の形状をとることができる。
【0041】
ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径は、0.1μm〜35μmであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、この水性インキ組成物をマーカーなどの筆記具に用いて筆記を行った場合に、形成される筆記線に対し、より高い滑性と、それに伴う高い耐擦性を付与することができる。また、高い耐擦性を付与するという観点からは、0.1〜25μmであることがより好ましく、0.5μm〜20μmであることがさらに好ましく、0.5μm〜15μmであることが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法により測定することができる。
【0042】
本発明に用いることができるポリオレフィン樹脂粒子としては、具体的には、ケミパールWシリーズ、ケミパールMシリーズ(いずれも商品名、三井化学株式会社より市販)、Ceraflourシリーズ、Aquacerシリーズ、Aquamatシリーズ(いずれも商品名、ビックケミー社より市販)などが挙げられる。
【0043】
水性インキ組成物におけるポリオレフィン樹脂粒子の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であると最も好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子の含有量が上記数値範囲内であれば、インキ吐出性を維持することができるとともに、筆記線に対し、より高い滑性を付与することができる。
【0044】
また、本発明による水性インキ組成物は、ポリオレフィン樹脂粒子を含むことにより、耐擦過性が著しく改良される。この理由は、以下の様な理由によるものと推定される。本発明による水性インキ組成物を用いて形成させた筆跡は、被筆記表面に前記した相対的に密度の低い凝集体とポリオレフィン樹脂粒子とが配置されることで形成されている。ここで、ポリオレフィン樹脂粒子は凝集体に比較して大きいため、筆跡表面が擦過された場合には、まずポリオレフィン樹脂粒子の上部が擦過さる。この時、ポリオレフィン樹脂粒子は摩擦抵抗が低いため、筆跡が剥がれるなどの影響を受けない。そして、擦過が進むと、ポリオレフィン樹脂粒子に力が加わることや摩擦熱などにより変形して、筆跡表面を被覆していく。この結果、筆跡表面がポリオレフィン樹脂で被覆されるが、ポリオレフィン樹脂により、筆跡表面の摩擦係数が低くなり、筆跡が保護されるものと推定される。
【0045】
さらに、前記の通り、自己架橋型樹脂エマルションにより非浸透性の筆記面への定着性が向上していることから、自己架橋型樹脂エマルションとポリオレフィン樹脂粒子の組合せにより、従来と比較して筆跡を保護する効果が高くなる。
【0046】
(溶媒)
溶媒としては、水、および水と有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水としては、イオン交換水、蒸留水および水道水などの慣用の水を用いることができる。また、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ミネラルスピリットなどを用いることができる。グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの比較的沸点の高いジオール類またはトリオール類を用いることができるが、その配合量は少ないことが好ましい。なお、有機溶媒の含有率は、溶媒の総質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。特にジオール類またはトリオール類の含有率は10質量%以下であることが好ましい。
【0047】
水性インキ組成物における溶媒の含有量は、組成物の総質量を基準として、20〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。溶媒の含有量は、上記数値範囲内であれば、各成分を安定的に溶解または分散することができ、水性インキ組成物中で再分散性が容易な嵩高い凝集体を作ることができる。ことができる。
【0048】
(補色顔料)
本発明による水性インキ組成物は、得られる筆記線の色彩を調整するため、補色顔料を含んでいてもよい。特に、主たる顔料粒子として白色の酸化チタンを選択した場合、補色顔料との組み合わせにより種々の発色を実現できる。補色顔料は、特に限定されず、赤、青、黄、緑、白、黒など様々な色の顔料を用いることができる。補色顔料としては、例えば、SPシリーズ(富士色素株式会社製)SandyeSuperColourシリーズ(山陽色素株式会社製)、ルミコールシリーズ(日本蛍光化学株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
水性インキ組成物における補色顔料の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜15質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
【0050】
(その他)
また、水性インキ組成物は、必要に応じて、界面活性剤、防腐剤、濡れ剤、消泡剤、防錆剤、pH調整剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤、剪断減粘性付与剤および粘度調整剤などを含んでいてもよい。
【0051】
(筆記具用水性インキ組成物)
本発明による水性インキ組成物の粘度は低いことが好ましい。組成物の粘度の測定はE型回転粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて行うことができる。具体的には、20℃における水性インキ組成物の粘度は、回転数が100rpm(剪断速度380sec−1)の条件で測定した場合、1〜20mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましい。また、回転数が10rpm(剪断速度38sec−1)の条件で測定した場合、1〜50mPa・sであることが好ましく、10〜40mPa・sであることがより好ましい。水性インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、マーカーなどの筆記用具に使用した場合のインキ吐出性を向上させることができ、またフィルムなど非浸透性の記録媒体への筆記性が向上する。
【0052】
本発明による水性インキ組成物の20℃における粘性指数nは、0.6〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることがより好ましい。ここで、粘性指数nは、S=αDで示される粘性式中のnを指す。なお、Sは剪断応力(dyn/cm=0.1Pa)、Dは剪断速度(s−1)、αは粘性係数を示す。粘性指数nは、E型回転粘度計(DV−II+Pro、コーン型ローターCPE−42、ブルックフィールド社製)を用いてインキ粘度を測定して、算出することができる。水性インキ組成物の粘性指数nが上記数値範囲内であれば、マーカーなどの筆記用具に使用した場合のインキ吐出性を向上させることができ、特にフィルムなど非浸透性の記録媒体への筆記性を向上することができる。
【0053】
水性インキ組成物のpHは、6.0〜10.0であることが好ましく、7.0〜9.0であることがより好ましい。水性インキ組成物のpHが上記数値範囲内であれば、インキの変色やインキ粘度が高くなることなどがなく、インキに影響がなく、用いることができる。本発明において、pHの値は、例えばIM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
【0054】
本願発明による水性インキ組成物が、優れた再分散性を発現する理由は、詳細には解明されていないが、以下の様なメカニズムによるものと推定される。
【0055】
水性インキ組成物として顔料粒子と体質材だけを溶媒に分散させた場合、これらの成分は容易に沈降してハードケーキを形成してしまう。このため、一般的には各成分を分散させるための助剤が添加される。例えば、本発明において用いられる凝集分散剤は、顔料組成物の分散助剤として知られている。この凝集分散剤を顔料粒子および体質材に添加した場合には、凝集分散剤だけでは、顔料粒子と体質材を十分に分散することができず、相対的に比重の大きい顔料粒子が底に沈降し、その上に体質材が堆積して、ハードケーキが形成されてしまう。これは、顔料粒子に凝集分散剤が吸着して、相対的に密度の低い凝集体を形成するが、その凝集体とカオリンとの比重の差と粒子径の差が大きく、分離するためと考えられる。
【0056】
本発明における水性インキ組成物は、さらに凝集コントロール剤と、自己架橋型樹脂エマルションとをさらに組み合わせて、このような課題を解決したものである。
【0057】
本発明による水性インキ組成物の場合、まず顔料粒子に対して凝集分散剤が吸着して、相対的に密度の低い凝集体が形成される。そして、この凝集体の表面に、微小な樹脂粒子が付着する。この樹脂粒子を介して、凝集体と凝集コントロール剤が結合してネットワーク構造を形成し、その隙間に体質材が閉じ込められることにより、凝集コントロール材が形成するネットワーク内に分散される。この結果、本発明による水性インキ組成物は、放置によって分離することも、ハードケーキ化することも少なく、さらに沈降が起こった場合でも、凝集体同士が相互に離間されているために、嵩高い凝集体となっているため、容易に再分散するものと考えられる。事実、本発明の構成要件のいずれかひとつが欠落しても、再分散性は不十分となる。
【0058】
また、自己架橋型樹脂エマルションを用いることにより、インキ組成物中で、顔料粒子の周りに付着するが、補色顔料を用いた際には、顔料粒子の周りに付着した樹脂に補色顔料が付着する。この結果、水性インキ組成物を用いて筆記した際に、隠蔽性を有する顔料粒子の周りに補色顔料が付着した状態で筆跡となるため、筆跡の発色性が向上することができる。
【0059】
なお、本発明による水性インキ組成物は定着性、耐擦過性に優れた筆跡を形成できるものである。したがって、消去されることを予定しない筆跡を形成させるのに適したものである。本発明による水性インキ組成物をホワイトボード用マーカーなどの一時的な筆跡を形成させる筆記具に用いることも可能であるが、その場合には有機溶媒の配合を多くするなどの調整が必要である。
【0060】
本発明による水性インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0061】
(筆記具)
本発明の水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン芯またはボールペンチップなどをペン先としたマーキングペンやボールペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの筆記具に用いることができる。その中でも、フィルムなど非浸透性の記録媒体に対する筆記性を良好にするには、ペン芯が繊維チップ、フェルトチップであることが好ましい。特には、マーキングペンに用いることが好ましい。また、前記ペン芯の気孔率は、50〜80%とすることが好ましい。前記ペン芯の気孔率が上記数値範囲内であれば、前記顔料の目詰まりがなく、適切なインキ吐出量を維持することができる。
【0062】
本発明の筆記具は、水性インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、水性インキ組成物を充填することのできるインキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。
【0063】
本発明の筆記具の出没機構は、特に限定されず、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式、ノック式、回転式およびスライド式などが挙げられる。また、軸筒内にペン先を収容可能な出没式であってもよい。
【0064】
また、筆記具におけるインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、(2)櫛溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、(3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、および(4)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、水性インキ組成物を直接、ペン先に供給する機構などを挙げることができる。
【0065】
一実施形態において、筆記具は、マーキングペンであり、ペン先は、特に限定されず、例えば、繊維チップ、フェルトチップまたはプラスチックチップなどであってよく、さらに、その形状は、砲弾型、チゼル型または筆ペン型などであってよい。
【0066】
一実施形態において、筆記具は、ボールペンであり、インキ逆流防止体を備えたボールペンであることが好ましい。
【0067】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
(実施例1)
下記原材料および配合量にて、室温で1時間攪拌混合することにより、筆記具用インキ組成物を得た。得られた水性インキ組成物の粘度をE型回転粘度計(DV−II+Pro、コーン型ローターCPE−42、ブルックフィールド社製)により測定し、その粘度を元に粘性指数を算出した。具体的には、20℃、剪断速度380sec−1(回転速度100rpm)における粘度は10.8mPa・sであり、剪断速度38sec−1(回転速度10rpm)における粘度は15.4mPa・sであった。これらの粘度から粘性指数は0.85と算出された。さらに、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃にて水性インキ組成物のpHを測定した結果、pHは7.9であった。
・顔料粒子 15質量%
(表面がアルミナ処理された酸化チタン粒子、平均粒子径:0.21μm、テイカ株式会社製、商品名:JR−405)
・体質材 7質量%
(カオリン、 平均粒子径0.8μm、BASF社製、商品名:Satintone 5HB)
・凝集分散剤 1.15質量%
(高分子量酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩、ビックケミー社製、商品名:Anti−Terra 250)
凝集コントロール剤 2質量%
(カルボキシメチルセルロース、10%水溶液、第一工業製薬株式会社製、商品名:F−907A)
・自己架橋型樹脂エマルション 11質量%
(スチレン−アクリル酸共重合体、固形分含有量38%、BASF社製、商品名:JONCRYL PDX−7430)
・アクリル樹脂 3質量%
(スチレン−アクリル酸共重合体、固形分含有量27%、BASF社製、商品名:JONCRYL JDX−6180)
・ポリオレフィン樹脂粒子 2質量%
(変性ポリエチレン、平均粒子径:8μm、固形分:100%、ビックケミー社製、商品名:Ceraflour929)
・補色顔料 20質量%
(青色顔料、山陽色素株式会社製、商品名:SandyeSuperColour BLUE GLL−E)
・濡れ剤 0.4質量%
(アセチレングリコール、日信化学工業株式会社製、商品名:ダイノール604)
・消泡剤 0.1質量%
(ビックケミー製、商品名BYK−024)
・防腐剤 0.2質量%
(ロンザジャパン株式会社製、商品名:プロキセルXL−2)
・イオン交換水 38.05質量%
【0068】
(実施例2〜18、比較例1〜4)
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表1〜2に示したとおりに変更して、実施例2〜19、比較例1〜4のインキ組成物を得た。これらの例で使用した材料の詳細は以下の通りである。
・酸化チタン(1) JR−405(Al処理、平均粒径:0.21μm、テイカ株式会社製)
・酸化チタン(2) JR−600(Al処理、平均粒径:0.25μm、テイカ株式会社製)
・酸化チタン(3) JR−701(ZnO・SiO・Al処理、平均粒径:0.27μm、テイカ株式会社製)
・酸化チタン(4) GTA−100(SiO・Al処理、平均粒径:0.26μm、堺化学工業株式会社製)
・カオリン (Satintone 5HB、平均粒径:0.8μm、BASF社製)
Anti−Terra 250 (高分子量酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩、ビックケミー製)
・DISPER BYK−102(酸性基を含有するコポリマー ビックケミー社製)
CMC F−907A(第一工業製薬株式会社製)
・自己架橋型樹脂エマルション(1) JONCRYL PDX−7430(スチレン−アクリル酸共重合体、固形分含有量38%、BASF社製)
・自己架橋型樹脂エマルション(2) JONCRYL PDX−7164(スチレン−アクリル酸共重合体、固形分含有量47%、BASF社製)
・アクリル樹脂 JONCRYL JDX−6180(スチレン−アクリル酸共重合体、固形分含有量27%、BASF社製)
・ポリエチレンワックス(1) Ceraflour929(変性ポリエチレンワックス、平均粒径:8μm、ビックケミー社製)
・ポリエチレンワックス(2) Ceraflour925(変性ポリエチレンワックス、平均粒径:6μm、ビックケミー社製)
・ポリエチレンワックス(3) ケミパールM200(低密度ポリエチレン、平均粒径:6μm、40%ディスパージョン、三井化学株式会社製)
・ポリエチレンワックス(4) ケミパールW4005(低密度ポリエチレン、平均粒径:0.6μm 40%ディスパージョン 三井化学株式会社製)
・SandyeSuperColour Black C−E(有機顔料 山陽色素株式会社製)
・SandyeSuperColour BLUE GLL−E(有機顔料 山陽色素株式会社製)
・SandyeSuperColour RED 1321−E(有機顔料 山陽色素株式会社製)
・SandyeSuperColour YELLOW GSN−E(有機顔料 山陽色素株式会社製)
・SandyeSuperColour VIOLET BM−E(有機顔料 山陽色素株式会社製)
【0069】
調製した水性インキ組成物について、下記の通り、評価を行った。得られた結果は表1〜2に記載したとおりであった。
(再分散性の評価)
水性インキ組成物を、直径15mmの密閉ガラス試験管に入れて、常温にて14日間放置した。その後、一度沈降した各ガラス試験管を上下に振とうして、水性インキ組成物の再分散状態を目視により観察した。下記基準に従って、凝集状態を評価した。
A:振とうにより、容易に再分散された
B:振とうにより再分散されるが、時間がかかったもの
C:振とうにより十分に再分散されないもの
D:振とうしても再分散しないもの
【0070】
(経時安定性の評価)
水性インキ組成物を、直径15mmの密開閉ガラス試験管に入れて、50℃、14日間放置した。その後、一度沈降した各ガラス試験管を上下に振とうしたのち、インキ粘度測定を行った。下記基準に従って、経時安定性を評価した。
A:粘度変化が±2%以下のもの
B:粘度変化が±5%以下のもの
C:粘度変化が±10%以下のもの
D:粘度変化が±10%より大きいもの
【0071】
(筆記性の評価(1))
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーカーにより、筆記試験用紙に筆記を行った。その際の筆記性能を目視により観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201筆記用紙Aを用いた。
A:かすれもなく、筆跡が良好なもの
B:若干かすれはあるものの実用上問題がないもの
C:かすれがあるが、実用可能なもの
D:かすれがひどく、実用上懸念があるもの
E:かすれがひどく、筆跡の認識ができず、実用不可能なもの
F:インキ出が多すぎ、筆跡の認識ができず、実用不可能なもの
【0072】
(筆記性の評価(2))
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーカーをチップ上向きで14日間放置し、その後、筆記試験用紙に筆記を行った。その際の筆記性能を目視により観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201筆記用紙Aを用いた。
A:筆跡が良好なもの
B:若干初筆が薄くなるが実用上問題がないもの
C:初筆が薄くなるが実用可能なもの
D:初筆が薄くなり、良好な筆跡になるまで時間がかかり実用上懸念があるもの
E:筆記できず、実用不可能なもの
【0073】
(キャップオフ性能の評価)
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーカーのキャップを外し、20℃、50%環境下にて、90分放置した。90分後、非浸透面であるポリプロピレン製シート上に筆記を行った。その際の筆記性能を目視により観察した。
A:かすれもなく、筆跡が良好なもの
B:若干かすれはあるものの実用上問題がないもの
C:かすれがあるが、実用可能なもの
D:かすれがひどく、実用上懸念があるもの
E:かすれがひどく、筆跡の認識ができず、実用不可能なもの
【0074】
(筆跡発色性の評価)
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーカーにより、非浸透面であるポリプロピレン製シート上に筆記を行った。その際の筆跡の発色性を目視により観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201筆記用紙Aを用いた。
A:筆跡に色ムラが無く、良好なもの
B:若干筆跡に色ムラがあるが、実用上問題のないもの
C:筆跡に色ムラがあり、実用上懸念があるもの
【0075】
(筆跡乾燥性の評価)
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーカーにより、筆記試験用紙に筆記を行った。その際の筆記乾燥性を目視により観察した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201筆記用紙Aを用いた。
A:5秒後、筆跡を手で擦っても、筆跡が流れず、問題がないもの
B:10秒後、筆跡を手で擦っても、筆跡が流れず、問題がないもの
C:筆跡が流れなくなるのに、15秒以上かかり、問題があるもの
【0076】
(耐擦性試験の評価)
ペン先には、気孔率60%の砲弾型ポリエステル繊維芯のチップを用いた。このマーカーにより、筆記試験用紙及び非浸透面であるポリプロピレン製シート上に筆記を行った。この筆記線を1日放置後、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)を用いて、荷重500g下・綿布にて50往復擦り、擦った後の筆跡を初期の筆跡と比べて、下記基準に従って、耐擦性を評価した。なお、筆記試験用紙としてJIS P3201筆記用紙Aを用いた。
A:筆跡剥離がないもの
B:筆跡剥離が若干あるものの実用上問題がないもの
C:筆跡剥離があるが、実用可能なもの
D:筆跡剥離があり、実用上懸念があるもの
E:筆跡剥離が多く、実用不可能なもの
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
* 比較例4はペースト状になり、インキ組成物として評価不能であった。