(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のマイクロカプセル顔料は、少なくとも顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を内包したことを特徴とするものである。
【0011】
〈顔料〉
本発明に用いる顔料としては、その種類については特に制限はなく、感熱記録材料、筆記具用インク組成物、スタンプ用インク組成物、インクジェット用インク組成物、印刷用インク組成物等に慣用されている無機系及び有機系顔料の中から任意のものを使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラックや、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、群青などが挙げられる。
また、有機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。
好ましくは、マイクロカプセル化により、更に元の原料(顔料)よりも分散性を容易にし、比重、粒子径を任意にコントロールする点から、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、キナクロドン顔料、並びに、酸化チタン、酸化亜鉛などの比重の大きい顔料が望ましい。
【0012】
〈水難溶性の媒体〉
本発明に用いる媒体は、20℃における比重が1未満である水難溶性の媒体であり、この物性を満たすものであれば、特に限定されないが、20℃における比重が1未満である有機溶媒などの媒体が挙げられる。本発明において、「水難溶性」とは、水100mlに対する溶解度が0.1mg以下のものをいう。
用いることができる20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体としては、例えば、オルトセカンダリーブチルフェノール等のアルキル−フェノール類、ドデシルベンゼン等のアルキルアリール類、オレイン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸イソプロピル等の飽和若しくは不飽和カルボン酸アルキルエステルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アジピン酸ジオクチル等のカルボン酸ジアルキルエステルなどの脂肪族ジカルボン酸ジエステル、トリブチルフォスフェート等のトリアルキルフォスフェートなどのリン酸トリエステル類、安息香酸ブチル等の安息香酸アルキルエステル、フタル酸ジトリデシル等のフタル酸ジアルキルエステルなどの芳香族カルボン酸エステル、ジイソブチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
これらの有機溶媒からなる媒体は、単独でも、2種類以上を適宜の割合に混合して用いてもよい。
【0013】
好ましくは、更なる顔料の分散性の点から、上記物性の媒体としては、脂肪族カルボン酸エステルであり、より好ましくは、下記式(I)で表される1価アルコールエステルが望ましい。
R
1COOR
2 ………(I)
〔上記式(I)中、R
1は炭素数4〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、二重結合を2つ以上有するアルキル基であり、R
2は炭素数1〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、二重結合を2つ以上有するアルキル基である。〕
上記式(I)で表される脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、アラキン酸(炭素数20)などの脂肪酸と、例えば、メチルアルコール(炭素数1)、イソプロピルアルコール(炭素数3)、イソブチルアルコール(炭素数4)、ミリスチルアルコール(炭素数14)、セチルアルコール(炭素数16)、ステアリルアルコール(炭素数18)、エイコサニルアルコール(炭素数20)などのアルコールから得られる、ラウリン酸メチル(比重:0.87)、ミリスチン酸ミリスチル(比重:0.84)、ミリスチン酸オクチルドデシル(比重:0.86)、パルミチン酸2−エチルヘキシル(比重:0.86)、ステアリン酸ステリアル(比重:0.83)、ステアリン酸ブチル(比重:0.86)、パルミチン酸イソプロピル(比重:0.85)、ミリスチン酸イソプロピル(比重:0.85)、ステアリン酸メチル(比重:0.84)、オレイン酸イソブチル(比重:0.86)などを挙げることができる。これらの媒体(1価アルコールエステル)は、比重が0.8から1未満で、水100mlに対する溶解度が0.05mg以下のものである。なお、20℃における比重が1超過となる水難溶性の媒体では、本発明の効果を発揮することができないものとなる。
【0014】
上記物性の媒体としては、上記式(I)で表される脂肪族カルボン酸エステルを用いると、マイクロカプセル顔料の粒度分布(Mv/Mn)が狭くなる傾向となり発色性が向上する。さらに顔料がマイクロカプセル粒子の外側に配向し、結果として更に濃色となる。
Mv/Mnは粒度分布の指標として用いられ、Mvは体積平均粒径であり、Mnは個数平均粒径である。本発明(後述する実施例を含む)においては、マイクロカプセル顔料の粒度分布(Mv/Mn)の値が1に近づくほど顔料の単分散性が高いことを示し、測定装置として粒子径分布解析装置HRA9320−X100(日機装株式会社製)を用いて体積平均粒径(Mv)および個数平均粒径(Mn)を測定し、体積平均粒径(Mv)/個数平均粒径(Mn)から算出される。
【0015】
本発明のマイクロカプセル顔料は、少なくとも上記顔料と20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体とを内包したものであり、例えば、少なくとも上記顔料と20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体とを含むものを、所定の体積平均粒径となるように、マイクロカプセル化、具体的には、壁膜形成物質(壁材)から構成されるシェル層(殻体)に内包することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができる。
【0016】
好ましくは、作製のしやすさの点、品質の点から、マイクロカプセルを構成するシェル成分がエポキシ樹脂、ウレタン、ウレア、もしくはウレアウレタンなどの熱硬化型樹脂が好ましく、特に好ましくは、内包する成分量を多くすることが可能であること、また内包成分の種類の制限が少ない、再分散性に優れるという理由からウレタン、ウレア、もしくはウレアウレタンである。
このシェル層の形成に用いられるウレタン(ポリウレタン樹脂)、ウレア(ポリウレア樹脂)、ウレアウレタン(ポリウレア樹脂/ポリウレタン樹脂)は、イソシアネート成分とアミン成分またはアルコール成分などと反応して形成されるものである。また、シェル層の形成に用いられるエポキシ樹脂は、アミン成分などの硬化剤などと反応して形成されるものである。
【0017】
用いることができるイソシアネート成分としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートカプロン酸、テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、イソシアネートアルキル2,6−ジイソシアネートカプロネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどが挙げられる。
また、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4−ビフェニル−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート等のトリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等のテトライソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物等のイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。これらのイソシアネート成分は単独で用いてもよく、混合して用いても良い。
【0018】
用いることができるアミン成分としては、具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタンミン、イミノビスプロピルアミン、ジアミノエチルエーテル、1,4−ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−ヒドロキシトリメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジアミノプロピルアミン、ジアミノプロパン、2−メチルペンタメチレンジアミン、キシレンジアミン等の脂肪族系アミン、m−フェニレンジアミン、トリアミノベンゼン、3,5−トリレンジアミン、ジアミノジフェニルアミン、ジアミノナフタレン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノフェノール等が挙げられる。中でもフェニレンジアミン、ジアミノフェノール、トリアミノベンゼンなどの芳香族系アミンが好ましい。
【0019】
用いることができるアルコール成分としては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの水酸基を2つ以上有するポリオール等が挙げられる。これらのアルコール成分は単独で用いてもよく、混合して用いても良い。またアルコール成分とアミン成分とを混合して用いても良い。
【0020】
これらのウレタン、ウレア、もしくはウレアウレタンによるシェル層の形成としては、例えば、1)ウレタン、ウレア及びウレタンウレアのうち少なくとも1つのモノマ成分と、顔料成分を分散させた上記特性の水難溶性の媒体中にて界面重合でシェル層を形成したり、あるいは、2)イソシアネート成分とを含む油状成分(油性相)を、水系溶媒(水性相)中に分散させて乳化液を調整する乳化工程と、乳化液にアミン成分及びアルコール成分のうち少なくとも1つを添加して界面重合を行う界面重合工程とを含む製造方法により形成することができる。
【0021】
上記2)の製造方法において、乳化液の調整に際しては、低沸点の溶剤が用いることができる。低沸点の溶剤としては、沸点が100℃以下のものが使用でき、例えば、n−ペンタン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、二硫化炭素、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、クロロホルム、メチルアルコール、エチルアルコール、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、四塩化炭素、メチルエチルケトン、ベンゼン、エチルエーテル、石油エーテル等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。
一方、上記油性相を乳化させるために使用する水性相には、予め保護コロイドを含有させてもよい。保護コロイドとしては、水溶性高分子が使用でき、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができるが、ポリビニルアルコール、ゼラチンおよびセルロース系高分子化合物を含ませるのが特に好ましい。
また、水性相には、界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤の中から、上記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。好ましい界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等を挙げることができる。
上記のようにして作製された油性相を水性相に加え、機械力を用いて乳化した後、必要に応じて系の温度を上昇させることにより油性液滴界面で界面重合を起こし、粒子化することができる。また、同時あるいは界面重合反応終了後、脱溶媒を行うことができる。カプセル粒子は、界面重合反応および脱溶媒を行った後、粒子を水性相から分離、洗浄した後、乾燥することなどにより得られる。
【0022】
また、シェル層の形成に用いられるエポキシ樹脂は、アミン成分などの硬化剤などと反応して形成されるものであり、上記の各マイクロカプセル化法を用いて、例えば、界面重合法により形成することができる。
用いることができるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂で、分子量、分子構造等に制限されることなく一般的に用いられているものを用いることができ、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂のようなビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂、ナフタレン型多官能型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、同グリシジルエステル型エポキシ樹脂、および、シクロヘキサンポリエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のようなシクロヘキサン誘導体等のエポキシ化によって得られる脂環族系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環族系エポキシ樹脂が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0023】
本発明では、上記各形成手段でシェル層を形成することにより、少なくとも顔料と、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を内包したマイクロカプセル顔料が得られるものである。
本発明において、少なくとも顔料、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体の含有量は、分散性、比重、粒子径を任意にコントロールとする点、発色性などから変動するものであるが、マイクロカプセル顔料全量に対して、顔料の含有量は5〜50質量%、上記物性の水難溶性の媒体の含有量は、1〜50質量%とすることが好ましい。なお、上記各含有量の範囲となるようにするためには、マイクロカプセル化の際に用いる各原料(シェル層構成原料成分、顔料、媒体など)を好適な範囲で調整して重合することなどにより行うことができる。
また、本発明において、上記顔料、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体を少なくとも内包したマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル顔料の用途(感熱記録材料用、筆記具用インク、スタンプ用インク、インクジェット用インク、印刷用インク用等)などにより、用途ごとに、所定の体積平均粒径、例えば、平均粒子径0.1〜100μmになるように調整することができ、好ましくは、0.5〜20μmの範囲が上記各用途の実用性を満たすものとなる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0024】
本発明のマイクロカプセル顔料は、一般的なマイクロカプセル顔料とはやや構成が異なる。すなわち、一般的なマイクロカプセル顔料はコア/シェルが異なる組成であるため、両者に明確な界面が存在する。一方、本発明のマイクロカプセル顔料は、シェルを構成する成分が、中心に向かうにしたがって、その密度が低くなる構成となり、これにより、内包される顔料がカプセルの外側に向かって配向しやすくなり、マイクロカプセル顔料が濃色となる。なお、本発明(後述する実施例も含む)において、上記シェルを構成する成分が、中心に向かうにしたがって、その密度が低くなる構成の確認は、マイクロカプセル顔料の断面形状を電子顕微鏡等で観察することにより確認されるが、この方法に限定されるものではない。
また、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体としては、上記式(I)で表される脂肪族カルボン酸エステルを用いると、マイクロカプセル顔料の粒度分布(Mv/Mn)が狭くなる傾向となり発色性が向上する。さらに顔料がマイクロカプセル粒子の外側に配向し、顔料粒子の表面付近にも顔料が存在することとなるので、より濃色な粒子とすることも可能となる。この粒度分布(Mv/Mn)は、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜8となるものが望ましい。Mv/Mnが10を超えると、粒子同士の空隙部分が少なくなることで光の乱反射が減り、明度や隠蔽性などの発色性が低下することとなる。
また、水難溶性の媒体の選択や重合条件の調整、シェルを構成する成分の選択により、粒子形状を真球形状とすることも、表面に凹凸を形成させることも可能である。例えば、酸化チタンを内包し、表面に凹凸が形成された粒子は、凹凸による光の乱反射効果により白色度が高くなる。逆に白以外の顔料を内包する粒子の場合は、真球形状にすることで発色性を高くすることができる。
【0025】
本発明のマイクロカプセル顔料は、酸化チタンなどの比重の大きい顔料や分散性にやや難があるカーボンブラックなどの顔料をマイクロカプセル化したマイクロカプセル顔料であっても、分散性を更に容易にし、比重、粒子径を任意にコントロール可能とするマイクロカプセル顔料が得られることとなるので、例えば、感熱記録材料、筆記具用インク、スタンプ用インク、インクジェット用インク、印刷用インク等に用いる色材として好適に用いることができ、各用途毎に公知の各配合成分を好適に組み合わせ、調製等することにより、感熱記録材料、筆記具用インク組成物、スタンプ用インク組成物、インクジェット用インク組成物、印刷用インク組成物等を得ることができる。
例えば、筆記具用インク組成物では、上記構成のマイクロカプセル顔料、溶媒(水性溶媒、油性溶媒)、筆記具用の添加成分を好適な含有量で含有せしめて、ボールペン、マーキングペン等の筆記具用水性インク組成物、油性インク組成物、ゲルインク組成物などとして好適に用いることができる。
また、印刷用インク組成物では、上記構成のマイクロカプセル顔料、溶媒(水性溶媒、油性溶媒)、印刷インク用の添加成分を好適な含有量で含有せしめて、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、孔版印刷などとして好適に用いることができる。
更に、得られるマイクロカプセル顔料において、シェルを構成する成分が、中心に向かうにしたがって、その密度が低くなる構成とすれば、濃色のマイクロカプセル顔料を得ることができ、また、20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体として脂肪酸カルボン酸エステルを用いたものであれば、粒度分布(Mv/Mn)が狭くなる傾向となって発色性が向上する。さらに顔料がマイクロカプセル粒子の外側に配向し、顔料粒子の表面付近にも顔料が存在することとなるので、より濃色な粒子とすることも可能となり、更に、粒子形状を真球形状や、表面に凹凸を形成させることにより、発色性を更に高くしたり、白色度を更に高くすることができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。なお、下記実施例等の「部」は「質量部」を意味する。
【0027】
〔実施例1〕
油相溶液として、ミリスチン酸ミリスチル(比重:0.84)9.6部を60℃に加温しながら、酸化チタン2.4部を加えて十分に分散させた。次いで、メチレンジフェニル
−4,4´−ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D−109、三井化学社製)9部を加え、更にエチレングリコールモノベンジルエーテル2部を加えた。
水相溶液としては、蒸留水600部に対して、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製)15部を溶解し、これに前記油相溶液を投入し、ホモジナイザーで乳化混合して重合を完了した。
得られた分散体を遠心処理することでマイクロカプセルを回収し、マイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、3.8であり、体積平均粒径(Mv)は0.8μmであった。
【0028】
〔実施例2〕
油相溶液として、ステアリン酸ステアリル(比重:0.83)9.6部を80℃に加温しながら、カーボンブラック1.8部を加えて十分に分散させた。次いで、イソシアネートプレポリマー(タケネートD−110N、三井化学社製)9部を加え、更にエチレングリコールモノベンジルエーテル2部を加えた。
水相溶液としては、蒸留水600部に対して、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製)15部を溶解し、これに前記油相溶液を投入し、更に、ヘキサメチレンジアミン6部を添加後、ホモジナイザーで乳化混合して重合を完了した。
得られた分散体を遠心処理することでマイクロカプセルを回収し、マイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、2.9であり、体積平均粒径(Mv)は1.2μmであった。
【0029】
〔実施例3〕
上記実施例1において、ミリスチン酸ミリスチルをラウリン酸メチル(比重:0.87)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、4.6であり、体積平均粒径(Mv)は1.5μmであった。
【0030】
〔実施例4〕
上記実施例2において、ステアリン酸ステアリルをパルミチン酸2−エチルヘキシル(比重:0.86)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、3.8であり、体積平均粒径(Mv)は1.7μmであった。
【0031】
〔実施例5〕
上記実施例1において、ミリスチン酸ミリスチルをミリスチン酸オクチルドデシル(比重:0.86)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、2.7であり、体積平均粒径(Mv)は1.1μmであった。
【0032】
〔実施例6〕
上記実施例2において、ステアリン酸ステアリルをステアリン酸ブチル(比重:0.86)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、3.2であり、体積平均粒径(Mv)は0.9μmであった。
【0033】
〔実施例7〕
上記実施例1において、ミリスチン酸ミリスチルをジイソブチルケトン(比重:0.81)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、7.5であり、体積平均粒径(Mv)は1.3μmであった。
【0034】
〔実施例8〕
上記実施例2において、ステアリン酸ステアリルをジイソブチルケトン(比重:0.81)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、6.9であり、体積平均粒径(Mv)は0.8μmであった。
【0035】
〔比較例1〕
上記実施例1において、ミリスチン酸ミリスチルを安息香酸ブチル(比重:1.005)に代えた以外は、上記実施例1の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、12.4であり、体積平均粒径(Mv)は1.3μmであった。
【0036】
〔比較例2〕
上記実施例2において、ステアリン酸ステアリルを酢酸ベンジル(比重:1.06)に代えた以外は、上記実施例2の処方にてマイクロカプセル顔料を得た。粒度分布(Mv/Mn)は、8.3であり、体積平均粒径(Mv)は0.9μmであった。
【0037】
上記で得た実施例1〜8及び比較例1〜2の各マイクロカプセル顔料を用いて、下記各評価方法により、経時安定性、粒子断面形状、粒子表面形状及び色濃度の各評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0038】
(経時安定性の評価方法)
得られたマイクロカプセル顔料を10質量%水分散体として、25℃にて3ヵ月保管した後、下記評価基準に基づいて経時安定性(沈降性)を評価した。
評価基準:
○:初期と変わらない。
△:バルク上部に薄い層が確認される。
×:明確な分離が確認される。
【0039】
(粒子断面形状の評価方法)
得られたマイクロカプセル顔料を切断し、その切断面について走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。シェルとコアの境界面について明確に存在しているか、シェルの密度が中心に向かって漸減しているか確認した。
【0040】
(粒子表面形状の評価方法)
得られたマイクロカプセル顔料の表面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
【0041】
(色濃度の評価方法)
実施例3、5、7及び比較例1のマイクロカプセル顔料については、実施例1と比較して明度が同等であれば、○、低い場合は△として評価した。同様に実施例2、4、8及び比較例2のマイクロカプセル顔料については、実施例1と比較して明度が同等であれば、○、高い場合は△として評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1〜8の各マイクロカプセル顔料は、本発明の範囲外となる比較例1〜2の各マイクロカプセル顔料に較べて、経時安定性に優れることが判明した。
また、実施例1〜6のマイクロカプセル顔料は20℃における比重が1未満の水難溶性の媒体として脂肪酸カルボン酸エステルを用いたものであり、実施例7及び8の脂肪酸カルボン酸エステル以外の水難溶性の媒体(ジイソブチルケトン、比重0.81)を用いたものよりも、粒度分布(Mv/Mn)が狭くなった。また、より濃色な粒子となることが判った。