【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための超音波メータは、
ガス通流路を通流するガスの流れ方向に対して、当該流れ方向に沿った第1方向及び当該第1方向とは逆方向の第2方向に超音波を伝搬させて、前記第1方向で所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信すると共に前記第2方向で所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信する一対の送受波器を備えると共に、
前記第1方向で超音波が前記所定伝搬距離を伝搬する第1伝搬時間と前記第2方向で前記所定伝搬距離を超音波が伝搬する第2伝搬時間とを計測し、計測された前記第1伝搬時間及び前記第2伝搬時間と前記所定伝搬距離とから前記ガス通流路を通流するガスのガス流速を導出する制御部を備え、
前記制御部が、前記一対の送受波器が送信する超音波の送信強度を、一対の送受波器が受信する超音波の受信強度が目標受信強度となるように調整すると共に、調整された前記送信強度が異常判定閾値を超えた場合に超音波の送受信状態が異常状態にあると判定する超音波メータであって、その特徴構成は、
前記制御部は、前記ガス通流路を通流するガスのガス組成関連値に基づいて、前記異常判定閾値を変更設定する点にある。
【0007】
上記目的を達成するための超音波メータの制御方法は、
ガス通流路を通流するガスの流れ方向に対して、当該流れ方向に沿った第1方向及び当該第1方向とは逆方向の第2方向に超音波を伝搬させて、前記第1方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信すると共に前記第2方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信する一対の送受波器を備え、
前記第1方向の前記所定伝搬距離を超音波が伝搬する第1伝搬時間と前記第2方向の前記所定伝搬距離を超音波が伝搬する第2伝搬時間とを計測し、前記第1伝搬時間又は前記第2伝搬時間である伝搬時間と前記所定伝搬距離とから前記ガス通流路を通流するガスのガス流速を導出し、
前記一対の送受波器が送信する超音波の送信強度を調整すると共に、前記送信強度が異常判定閾値を超えた場合にガスの通流状態が異常状態にあると判定する超音波メータの制御方法であって、その特徴構成は、
前記ガス通流路を通流するガスのガス組成関連値に基づいて、前記異常判定閾値を変更設定する点にある。
【0008】
本願の発明者らは、上述したように、ガス通流路を通流するガス組成関連値(ガス種、ガス組成、熱量、平均分子量等)が変化する場合、超音波メータにおいて、調整される超音波の送信強度が変動するという新たな知見を見出した。説明を追加すると、低熱量(42MJ/m
3)の都市ガス13Aは、通常熱量(45MJ/m
3)の都市ガス13Aと比較的して、超音波の送信強度が高くなる傾向にあることを見出した。
上記構成によれば、制御部は、ガス通流路を通流するガスのガス組成関連値に基づいて、超音波の送受信状態の異常の有無を判定するための異常判定閾値を変更するように構成されているから、ガス通流路を通流するガス組成関連値が変動した場合にも、その変動に対応して異常判定閾値を適切な値に変更できる。
例えば、ガスが通常熱量(45MJ/m
3)から低熱量(42MJ/m
3)へ変化した場合、送信強度が高くなるため、異常判定閾値を高い側へ変更することで、ガス組成関連値の変動に起因した増幅異常警報の発報や、ガス組成関連値の変動に起因したガス通流路の異常遮断が実行されることを防止できる。
これにより、ガスのガス組成関連値(ガス種、ガス組成、熱量、平均分子量)の変動に起因した超音波の送信強度の増幅異常警報の発報や、ガス組成関連値の変動に起因したガス通流路の異常遮断が実行されることを防止でき、ガス組成関連値が変動する場合にも適切に利用できる汎用性の高い超音波メータ、及びその制御方法を提供できる。
【0009】
超音波メータの更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記ガス組成関連値に対応する熱量が低いほど、高い前記異常判定閾値へ変更する点にある。
【0010】
即ち、本願の発明者らは、ガス組成関連値に対応する熱量が低いほど、高い異常判定閾値へ変更することで、ガス通流路を通流するガスのガス組成関連値が変動する場合であっても、当該ガス組成関連値の変動による送信強度の変化の影響を除外した状態で、超音波の送受信状態が異常状態にあるか否かを適切に判定し得る超音波メータを完成したのである。
【0011】
超音波メータの更なる特徴構成は、
前記第1伝搬時間又は前記第2伝搬時間である伝搬時間と前記ガス組成関連値との関係である第1関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、計測した前記伝搬時間と前記第1関係とに基づいて、前記ガス通流路を通流するガスの前記ガス組成関連値を導出する点にある。
【0012】
本願の発明者らは、超音波の第1伝搬時間又は第2伝搬時間である伝搬時間がガス組成関連値に関連することを見出した。例えば、後述の〔表1〕、〔表2〕のテーブルに示すように、低熱量(42MJ/m
3)の都市ガス13Aの伝搬時間は、通常熱量(45MJ/m
3)の都市ガス13Aの伝搬時間に比べ、少なくとも15μs以上(変化率は10%程度以上)は小さいものとなることを見出した。
上記特徴構成によれば、超音波の伝搬時間とガス組成関連値との関係である第1関係を、例えば、テーブル形式(後述する〔表1〕や〔表2〕に示すような形式)や関数形式で保持する記憶部を備えると共に、第1伝搬時間又は第2伝搬時間である伝搬時間と第1関係とから通流するガスのガス組成関連値を導出する制御部とを備えることで、従来の超音波メータが備える装置構成を大きく変更することなく、ガス組成関連値を良好に導出できる。そして、導出したガス組成関連値に対応する形態で、異常判定閾値を良好に変更できる。
【0013】
尚、第1方向d1に沿った超音波の第1伝搬時間t1及び第2方向d2に沿った超音波の第2伝搬時間t2は、
図1に示すように、超音波が伝搬する所定伝搬距離をL(m)、音速をC(m/s)、ガスの流速をV(m/s)、ガスの流れ方向と超音波が伝搬する第1方向及び第2方向が成す角度をθ(°)とした場合、以下の〔式1〕、〔式2〕で示される関係を有する。
t1=L/(C+V・cosθ)・・・〔式1〕
t2=L/(C−V・cosθ)・・・〔式2〕
【0014】
上記〔式1〕、〔式2〕からもわかるように、超音波の伝搬時間は、ガスの流速にも依存するものである。しかしながら、ガスの流速の変化に起因する超音波の伝搬時間の変化率は、超音波メータの所定伝搬距離を70mm程度、ガスの流速の変動が0〜5.5m/sec程度、音速Cを340m/sec程度、取付角度θが40°の一般的な値であると仮定すると、ガスの流速が0から5.5m/secへ変化するときの伝搬時間の変化率は、高々1.2%程度であり、ガスの熱量が低熱量(42MJ/m
3)の都市ガス13Aと通常熱量(45MJ/m
3)の都市ガス13Aとの間で変動する場合の伝搬時間の変化率(10%程度以上)に比べ、十分小さい変化となるため、無視できるものとなる。
【0015】
即ち、上記特徴構成を有する超音波メータによれば、ガス通流路を通流するガスの流速の大小に関わらず、超音波メータにて逐次導出される第1伝搬時間又は第2伝搬時間である伝搬時間に基づいて、ガス組成関連値を適切に導出することができるのである。
【0016】
超音波メータの更なる特徴構成は、
前記記憶部は、前記ガス組成関連値と前記異常判定閾値との関係である第2関係を記憶しており、
前記制御部は、導出した前記ガス組成関連値と前記第2関係とに基づいて、前記ガス組成関連値に対応する前記異常判定閾値を抽出し、抽出した前記異常判定閾値へ変更設定する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、記憶部は、ガス組成関連値と異常判定閾値との第2関係をも記憶するものであるから、制御部は、導出したガス組成関連値と第4関係とから、ガス組成関連値に対応する異常判定閾値を適切に抽出することができ、異常判定閾値をガス組成関連値に対応した異常判定閾値へ、適切に変更設定できる。
これにより、ガス通流路を通流するガスのガス組成関連値に適切に対応した異常判定閾値に基づいて、超音波メータの異常状態の判定を適切に実行できる。
【0018】
超音波メータの更なる特徴構成は、
前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測手段を備え、
前記一対の送受波器にて送受信される前記超音波の音速と、前記ガス通流路を通流する前記ガスの前記ガス組成関連値としての平均分子量と、前記ガス通流路を通流するガスの温度とが有する関係である第3関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記第1伝搬時間又は前記第2伝搬時間である伝搬時間と前記所定伝搬距離とから前記超音波の音速を導出し、導出した音速と、前記温度計測手段が計測した温度と、前記第3関係とから、ガスの前記ガス組成関連値としての前記平均分子量を導出する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、ガス組成関連値としてガスの平均分子量を良好に採用することができる。
即ち、上述した〔式1〕、〔式2〕で導出される第1伝搬時間t1及び第2伝搬時間t2を用いて、超音波の音速Cは、以下の〔式3〕にて表すことができる。
C=L/2・(1/t1+1/t2)・・・・〔式3〕
詳細な説明は省略するが、超音波の伝搬媒体(本明細書においては、ガス)の温度毎に、〔式3〕にて導出された音速Cと伝搬媒体の平均分子量とは、一次の相関関係又は2次の相関関係を有している。
上記特徴構成にあっては、温度毎に当該一次の相関関係又は二次の相関関係を第3関係として記憶部に記憶しており、導出した音速Cと、温度計測手段が計測した温度と、第3関係とから、伝搬媒体(ガス)の平均分子量を導出することができるのである。
【0020】
超音波メータの更なる特徴構成は、
前記記憶部は、前記平均分子量と前記異常判定閾値との関係である第4関係を記憶しており、
前記制御部は、導出したガスの前記平均分子量と前記第4関係とに基づいて、前記平均分子量に対応する前記異常判定閾値を抽出し、抽出した前記異常判定閾値へ変更設定する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、記憶部は、平均分子量と異常判定閾値との第4関係をも記憶するものであるから、制御部は、導出した平均分子量と第4関係とから、平均分子量に対応する異常判定閾値を適切に抽出することができ、異常判定閾値を平均分子量に対応した異常判定閾値へ、適切に変更設定できる。
これにより、ガス通流路を通流するガスの平均分子量に適切に対応した異常判定閾値に基づいて、超音波メータの異常状態の判定を適切に実行できる。
【0022】
超音波メータの更なる特徴構成は、
前記制御部は、外部に設けられる外部サーバと通信ネットワークを介して電気的に接続されており、
前記外部サーバは、前記一対の送受波器が設けられる前記ガス通流路を通流する前記ガスの前記ガス組成関連値を逐次更新記憶するように構成されており、
前記ガス組成関連値と前記異常判定閾値との関係である第2関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記外部サーバから前記ガス組成関連値を取得可能に構成されると共に、取得した前記ガス組成関連値と前記第2関係とに基づいて、前記ガス組成関連値に対応する前記異常判定閾値を抽出し、抽出した前記異常判定閾値へ変更設定する点にある。
【0023】
本発明の超音波メータにあっては、上記特徴構成の如く、自身を通過するガスのガス組成関連値を、外部に設けられる外部サーバから取得するように構成することもでき、制御部は、取得したガス組成関連値と第2関係を用いて、ガス組成関連値に対応する異常判定閾値を抽出し、抽出した異常判定閾値へ変更設定することもできる。
尚、例えば、超音波メータは、外部サーバから、製造所にて切り換えられたガス組成関連値に加え、ガスを送出するガス製造所においてガス組成関連値を切り換えたタイミングを受信するように構成することができる。更に、製造所から超音波メータの設置箇所までのガス導管の長さと、ガス流速とに基づいて、切り換えられたガス組成関連値に係るガスが、超音波メータの設置箇所に到達する時期を導出するように構成できる。超音波メータは、導出した時期に、ガス組成関連値を更新することにより、ガス組成関連値に係るガスが自身に到達する適切な時期に、ガス組成関連値を更新記録できる。