(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の医療機器用電子基板について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の医療機器用電子基板の構成例を示す模式的な平面図である。
図2は、
図1におけるA−A断面図である。
【0015】
図1に示す本実施形態の医療機器用電子基板11は、図示略の医療機器に用いられる電子回路を構成する複数の電子部品が実装されている。医療機器用電子基板11が用いられる医療機器は、特に限定されない。医療機器用電子基板11が使用される医療機器の例としては、例えば、内視鏡装置、処置具、超音波メス、レーザーメス、歯科用LED照明、手術用センサー類(パルスオキシメーターなど)などが挙げられる。
医療機器用電子基板11を用いることが特に好適である医療機器としては、例えば、オートクレーブ滅菌処理等の加熱滅菌処理が施される医療機器が挙げられる。
図1、
図2に示すように、医療機器用電子基板11は、回路基板1(電子回路基板)、電子部品2A、2B、2C、封止材3(
図2参照)、および熱膨張抑制部材4を備える。
【0016】
回路基板1には、後述する電子部品2A、2B、2Cを実装する配線パターン(図示略)が形成されている。
回路基板1の材質としては、後述する封止材3よりも熱膨張しにくい材質が用いられる。回路基板1の線膨張係数α1(第1の線膨張係数)は、後述する封止材3の線膨張係数α2(第2の線膨張係数)よりも小さい。例えば、回路基板1の材質としては、ガラスエポキシ基板(FR−4)、セラミック基板、半導体基板(Si)などが用いられてもよい。
例えば、ガラスエポキシ基板の線膨張係数は、種類にもよるが、13×10
−6(K
−1)程度である。セラミック基板の線膨張係数は、種類にもよるが、7.3×10
−6(K
−1)程度である。Si基板の線膨張係数は、種類にもよるが、2.4×10
−6(K
−1)程度である。
【0017】
回路基板1の基板構造は特に限定されない。例えば、回路基板1は、片面基板でもよいし、両面基板でもよい。回路基板1は、単層基板でもよいし、多層基板でもよい。
図1には、一例として、回路基板1が平面視矩形状の場合の例が図示されているが、回路基板1の外形は矩形には限定されない。
【0018】
電子部品2A、2B、2Cは、回路基板1の図示略の配線パターンに実装されている。
電子部品2A、2B、2Cの種類は、図示略の医療機器に用いる電子回路の一部を構成する部品であれば特に限定されない。例えば、電子部品2A、2B、2Cは、IC、コンデンサ、チップ抵抗などであってもよい。
図1には、医療機器用電子基板11の電子部品が電子部品2A、2B、2Cの3個の場合の例が示されているがこれは一例である。医療機器用電子基板11の電子部品の個数は、必要な電子回路に応じて、2個以上の適宜個数が用いられてもよい。
【0019】
以下では、一例として、電子部品2A、2B、2Cは、表面実装型のICであるとして説明する。
電子部品2A、2B、2Cは、それぞれのパッケージから延出されたリードを備えている。電子部品2A、2B、2Cは、各リードが、回路基板1上の図示略のランドパターンに半田付けされている。
電子部品2A、2B、2Cは、回路基板1に実装された状態で、それぞれの部品上面2a、2b、2cが回路基板1の基板表面1aと略平行に配置されている。
図2では、一例として、基板表面1aに対する部品上面2a、2b、2cの実装高さが、それぞれh1になっている。
【0020】
封止材3は、回路基板1上の電子部品2A、2B、2Cを封止する部材である。
封止材3は、回路基板1の基板表面1aおよび電子部品2A、2B、2Cの表面(リードの表面を含む)を覆うように配置されている。すなわち、封止材3の下面3bは、回路基板1の基板表面1aに密着しており、封止材3の下面3bから上面3aまでの距離を層厚h2とすると、h2>h1である。本実施形態では、電子部品2A、2B、2Cの部品上面2a、2b、2c上には、厚さがh2−h1の封止材3の層状部が形成されている。
封止材3は、電子部品2A、2B、2Cの下面と基板表面1aとの間にも隙間なく充填されている。
回路基板1の基板表面1aおよび電子部品2A、2B、2Cの表面と当接する封止材3は、回路基板1の基板表面1aおよび電子部品2A、2B、2Cの表面に固着した状態で固化している。
【0021】
封止材3の材質としては、上述の線膨張係数α2(α2>α1)を有し、電子部品2A、2B、2Cを封止可能であって、滅菌処理などの際に医療機器用電子基板11に加えられる加熱温度に耐える耐熱性と、電気絶縁性とを有する材料が用いられる。
さらに、封止材3の線膨張係数α2は、後述する熱膨張抑制部材4の線膨張係数α3(第3の線膨張係数)よりも大きい。
封止材3は、水分または滅菌処理に使用するガスが浸透しにくい材質であることがより好ましい。
封止材3に用いることができる樹脂材料の例としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。封止材3に用いる樹脂材料は、熱硬化性樹脂であってもよい。
封止材3に好適に用いることができるエポキシ樹脂系の材料の例としては、コーティング剤1570−2、1057系、1033系、1020系(商品名;ナミックス(株)製)が挙げられる。
封止材3に好適に用いることができるエポキシ樹脂系の材料の他例としては、耐衝撃(ヒートサイクル)性2液型エポキシ樹脂EX−565/H−565(商品名;サンユレック(株)製)が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は高い耐熱性を有しており、高温の滅菌処理に対して有用である。
【0022】
封止材3に用いる樹脂材料には、適宜の添加剤が添加されていてもよい。添加剤の例としては、例えば、充填剤、着色剤、カップリング剤、酸化防止剤などが挙げられる。ただし、添加剤を含む場合には、塗布時の作業性を低下させないように、粘度が高くなりすぎない程度の含有量にする。
後述するように、本実施形態では、熱膨張抑制部材4によって封止材3の熱膨張が抑制されるため、線膨張係数を低減する目的の充填剤は、封止材3に添加されなくてもよい。
【0023】
図1、2に示すように、熱膨張抑制部材4は、回路基板1との間に封止材3を挟んで電子部品2A、2B、2Cを覆った状態で、封止材3に固着している。本実施形態では、熱膨張抑制部材4の固着面4bが、封止材3の上面3aに固着している。
図1、2に示すように、本実施形態では、熱膨張抑制部材4の平面視の外形が封止材3の平面視の外形と一致している。ただし、熱膨張抑制部材4は、少なくとも電子部品2A、2B、2Cの全体を覆う一続きの部材であれば封止材3の平面視の外形と異なる形状であってもよい。例えば、封止材3の一部は、熱膨張抑制部材4の外形よりも外側に形成されていてもよい。封止材3の全体は、熱膨張抑制部材4の外形よりも内側に固着していてもよい。
熱膨張抑制部材4の線膨張係数α3は、上述したように、α3<α2の関係にある。熱膨張抑制部材4の線膨張係数α3と、回路基板1の線膨張係数α1とは、同程度であることがより好ましい。ただし、後述する滅菌サイクルによる熱変形によって、電子部品2A、2B、2Cおよび回路基板1の配線パターンの破損などが生じない程度の差は許容できる。
【0024】
熱膨張抑制部材4の形状は、封止材3に固着できれば特に限定されない。
図2に示す熱膨張抑制部材4は、一例として平板が用いられている。
熱膨張抑制部材4の材質は、上述した線膨張係数α3の条件が満たされていれば、特に限定されない。例えば、熱膨張抑制部材4に好適な材質としては、ステンレス鋼(線膨張係数:17.3×10
−6(K
−1))、アルミニウム合金(線膨張係数:23.5×10
−6(K
−1))などの金属、セラミックス、あるいは補強繊維等によって線膨張係数が調整された樹脂などが用いられてもよい。さらに、熱膨張抑制部材4は、これらの材質を適宜組み合わせた複合材料で構成されてもよい。
熱膨張抑制部材4に好適なセラミックスとしては、例えば、SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2などの酸化物系セラミックスが挙げられる。これらの酸化物系セラミックスは、封止材3との密着性が良好となるため、高い耐久性が得られる。
熱膨張抑制部材4に好適な樹脂材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。例えば、ガラス繊維あるいは金属繊維などが編まれた布状の補強材は、編まれた構造により変形しやすい方向が決まっているため、熱膨張係数の異方性が生じやすい。さらに、これらの布状の補強材は座屈しやすいため、繊維方向における引っ張りに比べると繊維方向の圧縮に弱い。このため、封止材3が低温下で収縮する場合のように、熱膨張抑制部材4の固着面4bに沿って圧縮応力を受けると、変形しやすくなる。これらの理由によって、布状の補強材を含む樹脂材料は、熱膨張抑制部材4としては好適とは言えない。
しかし、ガラスエポキシ基板のように、繊維方向の異なる複数の布が重ねられた構造を有している場合には、線膨張係数および剛性の違法が低減されるため、熱膨張抑制部材として用いることができる。
熱膨張抑制部材4として、回路基板1と同材質のガラスエポキシ基板を用いる場合には、α1=α3となるため、熱膨張による医療機器用電子基板11の反り変形が抑制される。
【0025】
熱膨張抑制部材4の線膨張係数α3と回路基板1の線膨張係数α1との差が大きい場合には、熱膨張抑制部材4の剛性が、回路基板1の剛性よりも高くなるようにすることがより好ましい。熱膨張抑制部材4の剛性は、後述する滅菌サイクルによる医療機器用電子基板11の熱変形が、電子部品2A、2B、2Cおよび回路基板1の配線パターンの破損などが生じない大きさとする。
熱膨張抑制部材4に必要な剛性は、医療機器用電子基板11の熱変形解析を行うなどして、算出することができる。
【0026】
熱膨張抑制部材4の材質は、水分または滅菌処理に使用するガスを浸透させない材質であってもよい。この場合、封止材3に固着する領域において、水分または滅菌処理に使用するガスに対する耐浸透性が向上する。
熱膨張抑制部材4の材質は、導電性を有する材質であってもよい。この場合、熱膨張抑制部材4を電磁波シールド用の導体として用いることが可能になるため、良好なEMC特性を実現することが可能になる。
熱膨張抑制部材4の材質としては、水分または滅菌処理に使用するガスを浸透させず、導電性を有し、かつ高剛性が得られる点で、ステンレスを用いることがより好ましい。
【0027】
このような構成の医療機器用電子基板11は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、回路基板1の基板表面1aに、電子部品2A、2B、2Cが半田付けされる。
この後、硬化後に封止材3となる塗液が、基板表面1a上において電子部品2A、2B、2Cを覆う範囲に塗布される。
塗布方法は特に限定されない。例えば、電子部品2A、2B、2Cを囲むように基板表面1a上に塗布用枠を配置してから、ディスペンサによって塗布枠の内側に塗液を吐出する塗布方法が用いられてもよい。この場合、塗液の粘度が低くても電子部品2A、2B、2Cを確実に覆う所定高さに塗液を塗布することができる。本実施形態の場合、塗布用枠の高さは、封止材3の層厚よりも高い。塗布用枠の内周面の平面視形状は、封止材3の形成範囲および熱膨張抑制部材4の外形に等しい。
塗布用枠としては、例えば、封止材3との離型性が良好な樹脂を硬化させて形成された樹脂枠などが用いられてもよい。例えば、封止材3をエポキシ樹脂で構成する場合には、塗布用枠として、シリコーン樹脂枠が用いられてもよい。
【0028】
塗液は、塗布用枠の内部で流動できるため、例えば、電子部品2A、2B、2Cと基板表面1aとの間の隙間にも容易に浸透できる。このため、塗液は、電子部品2A、2B、2Cの表面の全体に密着する。
【0029】
この後、熱膨張抑制部材4が塗液上に載置される。例えば、上述の塗布用枠が用いられる場合、熱膨張抑制部材4は、塗布用枠の内周面に上方から挿入することで、塗布用枠内の塗液の表面全体を覆うように載置される。熱膨張抑制部材4は、自重によって塗液の表面を押圧する。これにより、熱膨張抑制部材4の固着面4bは、塗液の表面と密着する。
熱膨張抑制部材4は、塗布用枠に嵌合した状態で塗液に対して位置決めされる。
熱膨張抑制部材4の平面視の外形が塗布用枠の上側の開口よりも大きい場合には、例えば、塗液を塗布用枠の上端からわずかに盛り上がるように塗布した後、塗布用枠の上端に熱膨張抑制部材4を重ねればよい。
【0030】
このように、熱膨張抑制部材4が塗液上に載置されたら、塗液を硬化させる。
塗液の硬化方法は、塗液の材質に応じて適宜の硬化方法が用いられる。例えば、塗液が熱硬化性樹脂の場合には、熱硬化樹脂が硬化する温度まで塗液を加熱する。
塗液が硬化すると封止材3が形成される。封止材3の下面3bは、回路基板1の基板表面1aと固着する。封止材3の上面3aは、熱膨張抑制部材4の固着面4bと固着する。
塗液の硬化が終了したら、塗布用枠を除去する。
このようにして、医療機器用電子基板11が製造される。
【0031】
医療機器用電子基板11の作用について説明する。
封止材3は、電子部品2A、2B、2Cの表面全体に密着した状態で、回路基板1の基板表面1aと熱膨張抑制部材4の固着面4bとの間で硬化している。この結果、封止材3は、基板表面1a上の電子部品2A、2B、2Cを封止している。封止材3は、加熱による滅菌処理に耐える材質からなるため、滅菌処理の間も、電子部品2A、2B、2Cと封止材3で覆われた基板表面1aとが、封止材3によって保護される。例えば、封止材3がエポキシ樹脂などの耐熱性、耐浸透性を有する材質である場合には、例えば、オートクレーブ滅菌などの高温高湿環境であっても、水蒸気の浸透を防止できる。
【0032】
加熱による滅菌処理が行われると、医療機器用電子基板11を構成する各部材は熱膨張する。滅菌処理では医療機器用電子基板11の全体が略一定の温度に加熱されるため、各部材は、それぞれの線膨張係数に応じて熱膨張する。
ここで、回路基板1に半田付けされた電子部品2A、2B、2Cは、回路基板1、封止材3、および熱膨張抑制部材4に比べて小さく、封止材3の線膨張係数α2に比べると線膨張係数も小さいため、回路基板1と一体に動くと考えてよい。
【0033】
回路基板1、封止材3、および熱膨張抑制部材4は、互いに略平行(平行の場合を含む)に積層した状態で層の界面で互いに固着して一体化している。回路基板1、封止材3、および熱膨張抑制部材4は、それぞれの線膨張係数に応じて、板厚方向(層厚方向)に直交する方向(以下、面方向と言う)に伸びようとする。
しかし、回路基板1、封止材3、および熱膨張抑制部材4のうち、最も大きい線膨張係数α2を有する封止材3は、より線膨張係数が小さい回路基板1および熱膨張抑制部材4に固着している。封止材3の面方向の変形は、回路基板1および熱膨張抑制部材4によって拘束される。すなわち、回路基板1および熱膨張抑制部材4にそれぞれ固着している封止材3の下面3bおよび上面3aの面方向の熱膨張量は、それぞれ線膨張係数α1、α3に対応する基板表面1aおよび平面部成形面4bの面方向の熱膨張量に等しい。
【0034】
例えば、封止材3が熱膨張抑制部材4によって拘束されていない場合、α2>α1であるため、封止材3から回路基板1に、基板表面1aが凸となる反り変形を起こす応力が作用する。このため、基板表面1a上の配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cにも応力が作用する。この応力負荷は、滅菌が終了すると消失する。
このように、熱膨張抑制部材4を有しない場合には、滅菌処理が繰り返されると、基板表面1a上の配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cが、繰り返し応力を受ける。この結果、配線パターンが疲労して断線したり、電子部品2A、2B、2Cが破損したりする可能性がある。
このような繰り返し応力が作用すると、封止材3が回路基板1および電子部品2A、2B、2Cから剥離することによって隙間が発生する可能性もある。この場合、封止材3による封止状態が損なわれて水分および得薬液が封止材3に浸透しやすくなる。配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cは、封止材3に浸透した水分および薬液は、配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cを腐食させるおそれがある。
【0035】
しかし、本実施形態の医療機器用電子基板11では、封止材3の上面3aに熱膨張抑制部材4が固着している。α3<α2であるため、封止材3の上面3aの面方向の熱膨張が抑制される。この結果、回路基板1の反り変形が抑制されて、基板表面1a上の配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cの応力負荷も低減される。
この結果、配線パターンが疲労して断線したり、電子部品2A、2B、2Cが破損したりする可能性が低減される。さらに、滅菌処理が繰り返されても、封止材3による封止状態も良好に保たれるため、配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cの腐食の進行が抑制される。
このようにして、医療機器用電子基板11によれば、加熱による滅菌処理に対する耐久性が向上する。
【0036】
熱膨張抑制部材4が水分または滅菌処理に使用するガスを浸透させない材質で構成される場合には、封止材3に固着する領域において、水分または滅菌処理に使用するガスに対する耐浸透性が向上する。このため、医療機器用電子基板11の耐久性をさらに向上することができる。
熱膨張抑制部材4が導電性を有する金属を含む場合には、熱膨張抑制部材4を電磁波シールド用の導体として用いることができる。
熱膨張抑制部材4の材質として、ステンレス鋼板など高剛性の材質が用いられる場合には、熱膨張抑制部材4の板厚を低減することができるため、医療機器用電子基板11を軽量化することができる。
【0037】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の医療機器用電子基板について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態の医療機器用電子基板の構成例を示す模式的な平面図である。
図4は、
図2におけるB−B断面図である。
【0038】
図3、
図4に示すように、本実施形態の医療機器用電子基板12は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11の熱膨張抑制部材4、封止材3に代えて、熱膨張抑制部材24、封止材23を備える。
医療機器用電子基板12は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11が用いられる医療機器において、医療機器用電子基板11に代えて用いることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0039】
熱膨張抑制部材24は、上記第1の実施形態における熱膨張抑制部材4において、板厚方向に貫通する複数の貫通孔24cが形成されて構成されている。貫通孔24cは、熱膨張抑制部材24の固着面4bに対する凹部になっている。
上記第1の実施形態と同様、熱膨張抑制部材24の平面視の外形は、後述する封止材23の平面視の外形と同じでもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。
図3、
図4には、一例として、熱膨張抑制部材24の平面視の外形が、封止材23の平面視の外形よりも小さい場合の例が示されている。熱膨張抑制部材24がこのような大きさであると、熱膨張抑制部材24の外周部が封止材23の内部に埋もれる。このため、熱膨張抑制部材24の外周部のエッジが封止材23よって被覆される。
【0040】
貫通孔24cの孔形状、個数は限定されない。
図3に示された貫通孔24cは、一例として、等ピッチの正方格子状に配列された多数の円孔である。貫通孔24cの個数は、多い程、封止材3に対する固着性が高まるため、後述する封止材3の熱膨張を抑制する作用が高まる。ただし、貫通孔24cの個数が多すぎると、熱膨張抑制部材24の剛性が低下する。熱膨張抑制部材24の剛性が低下すると、後述するように封止材3が熱変形する際の医療機器用電子基板12の反り変形を充分に抑制できなくなるおそれがある。このため、貫通孔24cの個数は熱膨張抑制部材24に必要な剛性を考慮して適宜の個数にする。
各貫通孔24c配列ピッチおよび孔径は、電子部品2A、2B、2Cの平面視の外形の短手方向の長さよりも小さい。ただし、各貫通孔24cの孔径は、後述する封止材23を形成する材料が進入可能な大きさである。
熱膨張抑制部材24は、例えば、パンチングメタル、セラミックス成形品、樹脂成形品などが用いられてもよい。
【0041】
封止材23は、上記第1の実施形態の封止材3と同じ材質で構成される。ただし、上記第1の実施形態における封止材3は、回路基板1と熱膨張抑制部材4との間に挟まれているのに対して、封止材23は、熱膨張抑制部材24の貫通孔24cの内側に入り込んでいる点が上記第1の実施形態と異なる。
図4では、一例として、貫通孔24c内の封止材23の上面23aが、熱膨張抑制部材24の外面4aと同じ高さになっている例が示されている。しかし、貫通孔24c内の封止材23の上面23aは、熱膨張抑制部材24の固着面4bよりも高ければ、外面4aより低くてもよいし、外面4aよりも高くてもよい。貫通孔24c内の封止材23の上面23aが、外面4aよりも高い場合、一部の封止材23は、貫通孔24cの開口の周囲にはみ出していてもよい。
【0042】
このような構成の医療機器用電子基板12は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11と同様にして製造される。
【0043】
本実施形態の医療機器用電子基板12において、封止材23は、上記第1の実施形態における封止材3と同様に、電子部品2A、2B、2Cの表面全体に密着した状態で、回路基板1の基板表面1aと熱膨張抑制部材24の固着面4bとの間で硬化している。
このため、封止材23は、上記第1の実施形態における封止材3と同様に、滅菌処理の間も、電子部品2A、2B、2Cと封止材23で覆われた基板表面1aとを保護することができる。
熱膨張抑制部材24は上記第1の実施形態における熱膨張抑制部材4と同一の材質であるため、上記第1の実施形態と同様に、加熱を受けた場合の医療機器用電子基板12の反り変形が抑制される。この結果、回路基板1の反り変形が抑制されて、基板表面1a上の配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cの応力負荷が低減される。さらに、滅菌処理が繰り返されても、封止材23による封止状態も良好に保たれるため、配線パターンおよび電子部品2A、2B、2Cの腐食の進行が抑制される。
このようにして、医療機器用電子基板12によれば、加熱による滅菌処理に対する耐久性が向上する。
【0044】
[第1変形例]
本発明の第2の実施形態の変形例(第1変形例)の医療機器用電子基板について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の変形例(第1変形例)の医療機器用電子基板の構成例を示す模式的な平面図である。
図6は、
図5におけるC−C断面図である。
【0045】
図5、
図6に示すように、本変形例の医療機器用電子基板13は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板12の封止材23に代えて、封止材33を備える。
医療機器用電子基板13は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11が用いられる医療機器において、医療機器用電子基板11に代えて用いることができる。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0046】
封止材33は、貫通孔24cの内部に貫入するとともに、熱膨張抑制部材24の外面4a全体を覆っている点が、上記第2の実施形態における封止材23と異なる。
本変形例の封止材33は、熱膨張抑制部材24も内部に封止している。
本変形例は、封止材33の上面33aが、熱膨張抑制部材24の外面4aを覆っている場合の例になっている。
【0047】
このような構成の医療機器用電子基板13は、封止材33を形成するための塗液を、熱膨張抑制部材24の外面4aを覆うように塗布する点を除いて、上記第2の実施形態の医療機器用電子基板12と同様にして製造される。
【0048】
本変形例の医療機器用電子基板13によれば、上記第2の実施形態の医療機器用電子基板12と同様に、加熱による滅菌処理に対する耐久性が向上する。
さらに、本変形例の医療機器用電子基板13によれば、封止材33が熱膨張抑制部材24も封止している。封止材33の材質が滅菌処理に対する耐性を有する材質であれば、滅菌処理の間、封止材33によって、熱膨張抑制部材24が保護される。この場合、熱膨張抑制部材24の材質として、滅菌処理に対する耐性を有しない材質を使用することもできる。
【0049】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の医療機器用電子基板について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態の医療機器用電子基板の構成例を示す模式的な縦断面図である。
【0050】
図7に示すように、本実施形態の医療機器用電子基板14は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11の電子部品2B、熱膨張抑制部材4、封止材3に代えて、電子部品42B、熱膨張抑制部材44、封止材43を備える。
医療機器用電子基板14は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11が用いられる医療機器において、医療機器用電子基板11に代えて用いることができる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0051】
電子部品42Bは、部品上面42bの基板表面1aからの実装高さが、電子部品2A、2Cの部品上面2a、2cの実装高さh1よりも高いh3である点が、上記第1の実施形態における電子部品2Bと異なる。
【0052】
熱膨張抑制部材44は、上記第1の実施形態における熱膨張抑制部材4が平板であるのに対して、平板の一部に凹状部44A、44B、44Cが形成されている板部材である点が、熱膨張抑制部材4と異なる。
凹状部44A、44B、44Cは、後述する封止材43と固着する平面である下面44bに対する凹部である。本実施形態では、熱膨張抑制部材44は均一肉厚を有するため、凹状部44A、44B、44Cは、下面44bと反対側の上面44aに対しては凸部である。
凹状部44A、44B、44Cは、それぞれ電子部品2A、42B、2Cと重なる範囲に形成されている。
凹状部44A、44B、44Cの下面44b側の底面44c、44d、44eは、それぞれ電子部品2A、42B、2Cの部品上面2a、42b、2cと対向している。
底面44c、44d、44eをそれぞれ囲む凹状部44A、44B、44Cの内周面は、下面44bおよび底面44c、44d、44eに垂直でもよいし、適宜の傾斜が設けられていてもよい。本実施形態では、一例として、凹状部44A、44B、44Cの内周面は、底面44c、44d、44eから下面44bに向かって外側に拡がる傾斜を有している。
以下では、特に断らない限り、熱膨張抑制部材44の主面である下面44bを構成する平板部の板厚方向および面方向を、それぞれ熱膨張抑制部材44の板厚方向および面方向として説明する。
【0053】
下面44bに対する底面44c、44d、44eの段差の大きさは、電子部品2A、42B、2Cの部品上面2a、42b、2cの基板表面1aからの実装高さ、h1、h3、h1に応じて決められている。
下面44bに対する底面44c、44d、44eの段差の大きさを適宜に設定することで、底面44c、44d、44eと電子部品2A、42B、2Cの部品上面2a、42b、2cとの間に挟まれる後述の封止材43の層厚が変えられる。
本実施形態では、基板表面1aから測った下面44bの高さがh4とされたとき、基板表面1aから測った底面44c、44d、44eの高さは、それぞれ、h1+ta、h3+tb、h1+taとなっている。ただし、ta≧tbである。taは、h4と同じか、またはh4に近い値であることがより好ましい。
【0054】
封止材43は、回路基板1と熱膨張抑制部材44との間に挟まれて、回路基板1上の電子部品2A、2B、2Cを封止する部材である。封止材43は、上記第1の実施形態の封止材3と同じ材質で構成される。
封止材43の下面3bは、上記第1の実施形態と同様に、基板表面1aと固着している。
封止材43の上面43aは、熱膨張抑制部材44の下面44bと、凹状部44A、44B、44Cの内面とに密着して固着している。
封止材43の層厚は、本実施形態では、基板表面1aと下面44bとの間ではh4、部品上面2aと底面44cとの間ではta、部品上面42bと底面44dとの間ではtb、部品上面2
cと底面44eとの間ではtaである。
【0055】
このような構成の医療機器用電子基板14は、必要な変更を適宜行った上で、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11と略同様にして製造される。
例えば、塗液の粘度や電子部品の形状によっては、熱膨張抑制部材44を塗液上に載置しただけでは、凹状部44A、44B、44Cの内部に封止材43となる塗液が充填されにくい場合がある。この場合、例えば、上記第1の実施形態と上下を逆さにして塗液の塗布が行われてもよい。例えば、塗布用枠に下面44bが上を向くように熱膨張抑制部材44が配置されて、熱膨張抑制部材44の下面44bおよび凹状部44A、44B、44Cの内部に塗液が塗布される。その後、電子部品2A、42B、2Cが実装された回路基板1の実装面が塗液上に載置される。回路基板1の載置後、硬化を開始する前に、必要に応じて脱泡処理が行われてもよい。
【0056】
本実施形態の医療機器用電子基板14の作用について説明する。
図8は、熱膨張抑制部材を平板に代えた場合の作用を説明する模式図である。
【0057】
医療機器用電子基板14において、封止材43の封止に関する作用と、熱膨張抑制部材44が面方向における熱膨張を抑制する作用とは、上記第1の実施形態における封止材3、熱膨張抑制部材4の作用と同様である。このため、医療機器用電子基板14によれば、上記第1の実施形態と同様にして、加熱による滅菌処理に対する耐久性が向上する。
以下では、第1の実施形態と異なる熱膨張抑制部材44の板厚方向における作用を中心に説明する。
【0058】
図8に示す医療機器用電子基板15は、上記第1の実施形態において、電子部品2Bを電子部品42Bに置換した構成例である。ここで、封止材3は、電子部品42Bを封止するため、h2>h3の関係にある。
電子部品42Bの部品上面42bの基板表面1aからの高さh3が、封止材3の層厚h2に近いと、電子部品42Bの外周における基板表面1aと固着面4bとの間の封止材3Aの層厚h2と、部品上面42bと固着面4bとの間の封止材3Bの層厚(h2−h3)との差が大きくなる。このため、医療機器用電子基板15が加熱されると、層厚方向において、封止材3Aの膨張量が封止材3Bの膨張量に比べて格段に大きくなる。
一方、電子部品42Bは、封止材3よりも線膨張係数が小さくかつ、回路基板1上に半田付けされているため、電子部品42Bの部品上面42bの高さの変化は無視できる。
この結果、電子部品42Bの外周部では、封止材3Aの熱膨張によって、回路基板1および熱膨張抑制部材4が、層厚方向において互い離間する方向に押圧される。しかし、封止材3Bの熱膨張量は封止材3Aの熱膨張量に比べて小さいため、封止材3Bは、部品上面42bおよび熱膨張抑制部材4から層厚方向に引っ張られる。
このため、層厚h2と層厚(h2−h3)との差が大きくなりすぎると、部品上面42bと封止材3Bとの間、あるいは固着面4bと封止材3Bとの間が剥離しやすくなる。
【0059】
このように、電子部品の実装高さにばらつきがある場合でも、各電子部品の部品上面と熱膨張抑制部材4との間の封止材3の層厚を厚くすれば、層厚方向における熱膨張量の相対的な差が低減される。
しかし、電子部品のいずれかの実装高さが突出して高い場合、封止材3の使用量が増大し、かつ封止材3の硬化時間も増大するおそれがあるため、部品コスト、製造コストが増大するおそれがある。
【0060】
本実施形態の医療機器用電子基板14においては、熱膨張抑制部材44が電子部品2A、42B、2Cを覆う範囲に、凹状部44A、44B、44Cを備えるため、部品上面2a、42b、2cと熱膨張抑制部材44との間の封止材43の層厚を、それぞれ独立に代えることができる。
例えば、h4=ta=tbとすることによって、封止材43の熱膨張によって、層厚方向に作用する押圧力を、実質的に均一にすることができる。
ただし、上述のような各部位における封止材43の層厚差によって生じる熱応力が封止材43の剥がれ強度以下になっていれば、h4とta(tb)とは互いに異なる値でもよい。h4、ta、およびtbの値は、例えば、有限要素法等の数値解析ソフトによって熱応力解析を行うなどして、適正に決めることができる。
【0061】
例えば、実装高さが高い電子部品は、大型の電子部品であることが多いため、回路基板1側により確実に押圧されていることが好ましい。例えば、電子部品42Bが押圧されることが好ましい電子部品であるとする。
この場合、tb>h4とすると、加熱時に電子部品42Bが常に回路基板1側に押圧されるため、電子部品42Bにおける封止材43の剥離をより確実に防止できる。
このとき、電子部品42Bの周囲のより実装高さの低い電子部品2A、2Cにおいても、ta>h4としてもよい。しかし、電子部品の数が多いと、押圧力の合力も大きくなってくるため、実装高さに応じて、tb>ta、あるいは、tb>ta=h4としてもよい。
【0062】
[第2変形例〜第5変形例]
本発明の第1の実施形態の変形例(第2変形例〜第5変形例)の医療機器用電子基板について説明する。
図9(a)は、本発明の第1の実施形態の変形例(第2変形例、第3変形例)の医療機器用電子基板に用いる熱膨張抑制部材の模式的な拡大断面図である。
図9(b)、(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例(第4変形例、第5変形例)の医療機器用電子基板に用いる熱膨張抑制部材の模式的な拡大断面図である。
【0063】
図1、
図2に示す本発明の第1の実施形態の第2変形例〜第5変形例の医療機器用電子基板16、17、18、19は、いずれも熱膨張抑制部材の表面に複数の凹部および複数の凸部の少なくとも一方(図示略)が形成されている点のみが、上記第1の実施形態と異なる。
以下、各変形例について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
第2変形例の医療機器用電子基板16は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11の熱膨張抑制部材4に代えて、熱膨張抑制部材54を備える。
図9(a)に示すように、熱膨張抑制部材54は、固着面4bに、複数の凸部54cが形成されている。凸部54cの反対側には、凹部がなくてもよいが、本変形例では、一例として、凹部54dが形成されている。このような凸部54c、凹部54dは、金属板の場合には半抜き加工などによって、セラミックス板および樹脂板の場合には成形などによって形成される。
凸部54cの形状、大きさ、配列パターン、個数などは、平板状の固着面4bに比べて、面方向における封止材3の拘束力を高めることができれば限定されない。
例えば、凸部54cの平面視の形状、大きさ、配列パターン、個数は、上記第2の実施形態の熱膨張抑制部材24の貫通孔24cの平面視の形状、大きさ、配列パターン、個数と同じでもよい。
例えば、凸部54cの形状は、図示例とは異なり、円錐状、角錐状、角柱状、半球状などであってもよい。
【0065】
本変形例の医療機器用電子基板16は、熱膨張抑制部材54の固着面4bに複数の凸部54cが形成されているため、封止材3の内部に複数の凸部54cが食い込む。熱膨張抑制部材54は、凸部54cが形成されていない場合に比べて、封止材3に対する面方向における拘束力が向上する。このため、医療機器用電子基板16が加熱された場合に、熱膨張抑制部材54は、固着面4bおよび凸部54cに固着している封止材3をより確実に面方向に拘束することができる。
【0066】
図1、
図2に示すように、第3変形例の医療機器用電子基板17は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11の熱膨張抑制部材4に代えて、熱膨張抑制部材64を備える。
図9(a)に示すように、熱膨張抑制部材64は、固着面4bに、複数の凹部64cが形成されている。凹部64cの反対側には、凸部がなくてもよいが、本変形例では、一例として、凸部64dが形成されている。このような凹部64c、凸部64dは、例えば、凹部64cは、金属板の場合には半抜き加工などによって、セラミックス板および樹脂板の場合には成形などによって形成される。
凹部64cの形状、大きさ、配列パターン、個数などは、平板状の固着面4bに比べて、面方向における封止材3の拘束力を高めることができれば限定されない。
例えば、凹部64cの平面視の形状、大きさ、配列パターン、個数は、上記第2の実施形態の熱膨張抑制部材24の貫通孔24cの平面視の形状、大きさ、配列パターン、個数と同じでもよい。
例えば、凹部64cの形状は、図示例とは異なり、円錐穴状、角錐穴状、角穴状、半球穴状などであってもよい。
【0067】
本変形例の医療機器用電子基板17は、熱膨張抑制部材64の固着面4bに複数の凹部64cが形成されているため、封止材3の一部が複数の凹部64cが入り込む。熱膨張抑制部材64は、凹部64cが形成されていない場合に比べて、封止材3に対する面方向における拘束力が向上する。このため、医療機器用電子基板17が加熱された場合に、熱膨張抑制部材64は、固着面4bおよび凹部64cに固着している封止材3をより確実に面方向に拘束することができる。
【0068】
図1、
図2に示すように、第4変形例の医療機器用電子基板18は、上記第1の実施形態の医療機器用電子基板11の熱膨張抑制部材4に代えて、熱膨張抑制部材74を備える。
図9(b)に示すように、熱膨張抑制部材74は、平面状の固着面4bに代えて、粗面からなる固着面74bが形成されている。例えば、固着面74bは、平板の表面をブラスト加工、エッチング処理などの粗面加工によって、粗面化することによって形成される。
固着面74bの表面粗さは、熱膨張抑制部材74に必要な拘束力に応じて適宜に決めることができる。例えば、固着面74bの表面粗さは、算術平均粗さRaで、100μm以上、500μm以下とされてもよい。
【0069】
本変形例の医療機器用電子基板18は、固着面74bが粗面であるため、平滑面に比べて、封止材3に対する固着力が高まる。この結果、固着面が平滑面である場合に比べて、封止材3に対する面方向における拘束力が向上する。このため、医療機器用電子基板18が加熱された場合に、熱膨張抑制部材74は、固着面74bに固着している封止材3をより確実に面方向に拘束することができる。
【0070】
図1、
図2に示すように、第5変形例の医療機器用電子基板19は、上記第1の実施形の医療機器用電子基板11の熱膨張抑制部材4に代えて、熱膨張抑制部材84を備える。
図9(
c)に示すように、熱膨張抑制部材84は、熱膨張抑制部材4と同様の平板における外面4aと反対側の表面84bに、下地層84cが形成されている。
下地層84cは、適宜の化学的な表面処理によって形成された、封止材3との密着性を向上する層状部である。
下地層84cを形成する表面処理の例としては、例えば、シランカップリング処理が挙げられる。
【0071】
本変形例の医療機器用電子基板19は、熱膨張抑制部材84の表面に下地層84cが形成されているため、封止材3に対する密着性および固着力が高まる。この結果、下地層84cが形成されていない場合に比べて、封止材3に対する面方向における拘束力が向上する。このため、医療機器用電子基板19が加熱された場合に、熱膨張抑制部材84は、下地層84cを介して熱膨張抑制部材84に固着している封止材3をより確実に面方向に拘束することができる。
【0072】
なお、上記第1、第2の実施形態および各変形例では、熱膨張抑制部材の形状が平板状の場合の例で説明した。しかし、熱膨張抑制部材の形状は、平板状には限定されない。例えば、熱膨張抑制部材は、湾曲板、波板、チャンネル材、平板の外周に側壁を設けられた部材、皿状部材などであってもよい。
これらの平板状以外の形状の熱膨張抑制部材において、表面に複数の凹部および複数の凸部の少なくとも一方が形成されていてもよい。複数の凹部が形成される場合、複数の凹部は貫通孔で形成されていてもよい。
【0073】
上記第3の実施形態の説明では、電子部品の実装高さが異なる場合に、各電子部品に対向する凹状部が形成された場合の例で説明した。しかし、例えば、第1の実施形態のように、電子部品の実装高さが異なる場合に、各電子部品に対向する凹状部が形成されてもよい。
【0074】
上記第3の実施形態の説明では、電子部品と熱膨張抑制部材との間の封止材の層厚と、電子部品の外周部における未実装領域の電子回路基板と熱膨張抑制部材との間の層厚とを適宜の寸法に調整するため、熱膨張抑制部材に電子部品に対向する凹状部が形成された例で説明した。しかし、例えば、封止材の層厚を適宜寸法にするための形状は、熱膨張抑制部材に段差が形成されていればよい。例えば、熱膨張抑制部材には、平板部に対する凸状部が含まれていてもよい。
【0075】
上記各実施形態、各変形例の説明では、医療機器用電子基板の熱変形に関して、常温時と、滅菌時の加熱による熱膨張時との間の膨張収縮の例で説明した。しかし、医療機器用電子基板の熱変形の抑制作用は、常温時と、低温時との間の膨張収縮の際にも同様に機能する。このため、上記各実施形態、各変形例の医療機器用電子基板は、例えば、寒冷地など低温で保存されることが多い場合にも、耐久性を向上することができる。
【実施例】
【0076】
次に、上述した第1の実施形態の第5変形例、第1変形例、および第3の実施形態に対応する医療機器用電子基板の実施例1〜3について、比較例1、2とともに説明する。下記[表1]に、各実施例、比較例の概略構成および評価結果を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
[実施例1]
実施例1は、上記第1の実施形態の第5変形例の医療機器用電子基板19の実施例である。
本実施例の回路基板1としては、FR−4規格のガラスエポキシ基板が用いられた。回路基板1の外形は30mm×50mm、板厚は1mmとされた。回路基板1の線膨張係数は、α1=13×10
−6(K
−1)である。
本実施例の電子部品としては、コンデンサ、チップ抵抗、IC部品が用いられた。これらの電子部品は、回路基板1の中央付近の20mm×30mmの矩形状範囲の内側に表面実装された。それぞれの実装高さは、0.5mm、1.0mm、1.5mmであった。
[表1]に示すように、封止材3([表1]では符号は省略されている。以下、他の部材の符号も同じ)は、エポキシ樹脂系のコーティング剤1570−2(商品名;ナミックス(株)製)が用いられた。1570−2の硬化後の線膨張係数は、α2=32×10
−6(K
−1)である。
封止材3の回路基板1と後述する熱膨張抑制部材84との間の層厚は、4.0mmとされた。このため、各電子部品の部品上面と固着面4bとの間の封止材3の層厚は、それぞれ、3.5mm、3.0mm、2.5mmであった。
熱膨張抑制部材84は、外形が20mm×30mm、板厚1mmのステンレス鋼板が用いられた。熱膨張抑制部材84の具体的な材質は、SUS304が用いられた。SUS304の線膨張係数は、α3=13×10
−6(K
−1)である。
熱膨張抑制部材84の下地層84cは、シランカップリング剤KBM−403(商品名;信越化学工業(株)製)を用いたシランカップリング処理によって形成された。
【0079】
本実施例の医療機器用電子基板19は、以下のようにして製造された。
電子部品が表面実装された回路基板1において、塗布用枠として、電子部品が搭載されたエリアを囲うように高さ5mmシリコーン樹脂枠が配置された。このシリコーン樹脂枠は、両面テープによって回路基板1の基板表面1a上に固定された。
ディスペンサを用いて、シリコーン樹脂枠の内部に、硬化後にコーティング剤1570−2が塗布された。塗布量は、硬化後に基板表面1aからの高さが4mmとなる量とされた。これにより、各電子部品はコーティング剤1570−2によって覆われた。
この後、下地層84cが形成されている熱膨張抑制部材84が、下地層84cが塗布されたコーティング剤1570−2に向いた姿勢で、コーティング剤1570−2上に載置された。
この状態で、例えば、加熱炉などを用いて、220℃で30分間の加熱が行われた。これにより、コーティング剤1570−2が硬化し、封止材3が形成された。冷却後に、シリコーン樹脂枠が除去され、実施例1の医療機器用電子基板19が製造された。
【0080】
[実施例2]
実施例2は、上記第1の実施形態の第1変形例の医療機器用電子基板12の実施例である。
実施例2は、上記実施例1の熱膨張抑制部材84に代えて、熱膨張抑制部材24が用いられた点が上記実施例1と異なる。
熱膨張抑制部材24は、外形が20mm×30mm、板厚0.5mmのSUS304に、貫通孔24cとして直径1mmの円孔が板厚方向に貫通されたパンチングメタル材である。貫通孔24cの配列ピッチは、3mmとされた。
【0081】
[実施例3]
実施例3は、上記第3の実施形態の医療機器用電子基板14の下面44bと凹状部44A、44B、44Cの内面に、上記第5変形例と同様の下地層84cを形成した実施例である。
医療機器用電子基板14は、板厚1mmのSUS304を絞り加工することによって形成された。凹状部44A、44B、44Cの底面44c、44d、44eは、下面44bをh4=3.0(mm)の高さに配置したとき、各電子部品上の封止材3の層厚が、各電子部品の実装高さに等しくなるように形成された。
下地層84cは、上記実施例1と同様にして形成された。
本実施例の熱膨張抑制部材84は、上記実施例1の熱膨張抑制部材4に比べると凹状部44A、44B、44Cを有するため曲げ剛性が大きくなっているため、熱膨張抑制部材84に対して、回路基板1の曲げ剛性が相対的に低下してしまう。そこで、本実施例では、回路基板1の板厚は、2mmとされた。
【0082】
本実施例の医療機器用電子基板は、上記第3の実施形態において説明したように、熱膨張抑制部材44の下面44bを上に向けて、コーティング剤1570−2が塗布されてから、部品実装面を下に向けた回路基板1がコーティング剤1570−2上に載置されて製造された。
熱膨張抑制部材44の載置位置は、下面44bと基板表面1aとの間における硬化後の封止材43の層厚がh4=3.0(mm)となる位置とされた。これにより、各電子部品の部品上面と各凹状部の底面との間の硬化後の封止材43の層厚は、各電子部品の実装高さに等しい層厚であった。
【0083】
[比較例1、2]
[表1]に示すように、比較例1の医療機器用電子基板は、回路基板1上の各電子部品を上記実施例1と同様の層厚の封止材3が覆う構成とされた。比較例1は、上記実施例1の熱膨張抑制部材4が削除されたのと同様の構成である。
比較例2は、上記比較例1において、封止材3の材質を、シリコーン樹脂系のシール材であるダウ コーニング(登録商標)SE 9186(商品名;東レダウコーニング(株)製)に代えた点が比較例1と異なる。SE 9186の硬化体の線膨張係数は、α2=250×10
−6(K
−1)である。
【0084】
[評価方法]
これら実施例1〜3、比較例1、2の医療機器用電子基板を供試サンプルとして、オートクレーブ滅菌処理に対する耐久性の評価が行われた。
オートクレーブ滅菌は、130℃、2気圧の水蒸気ガスに供試サンプルを30分曝す処理を1例(1回)とした。各実施例、各比較例の供試サンプルは、それぞれ5個を一組として、10例、100例、300例のオートクレーブ滅菌処理が実施された。オートクレーブ滅菌処理の各例の間は、供試サンプルは、25℃60%RHの環境に60分間放置された。
それぞれのオートクレーブ滅菌処理のすべて終了した後、各供試サンプルの通電試験が行われた。通電試験の結果、5個の供試サンプルすべての電気特性に異常がない場合には、良([表1]には、○(good)と記載)と評価し、1個以上の供試サンプルの電気特性が不良になった場合には、不良([表1]には、×(no good)と記載)と評価した。[表1]には、良品の個数をn(n=0,…,5)、評価個数をN(=5)として、(n/N)のように試験結果が示されている。
【0085】
[評価結果]
[表1]に示すように、実施例1〜3は、いずれも、10例、100例、300例のオートクレーブ滅菌処理が行われても供試サンプルの全数の電気特性に異常が現れることが無かった。
これに対して、比較例1の供試サンプルは、10例で良品が1つ存在したのみで、100例、300例では、全数の電気特性が不良になった。
比較例2の供試サンプルは、10例の場合、良と評価されたが、100例、300例では、それぞれ、2個、4個の電気特性が不良になったため、不良と評価された。
比較例1、2の不良は、電子部品のハンダ実装部にクラックが生じていることで発生した電気特性の不良であった。これらの不良は、滅菌処理サイクルによって熱膨張が繰り返されることによって、生じたと考えられる。
また、比較例2の不良は、ガラスエポキシ基板上の配線が腐食することで導通不良を起したことによる不良であった。この不良は、封止樹脂を水蒸気が透過して内部に侵入してしまったために生じたと考えられる。
これに対して、実施例1〜3は、いずれも、熱膨張抑制部材によって、封止材の熱膨張に起因する熱応力、あるいは回路基板の繰り返しの反り変形に起因する応力負荷が低減されたため、耐久性が向上したと考えられる。また、水蒸気透過性が低いが弾性率の高い封止樹脂を採用できるため、水蒸気の透過を効果的に防ぐことが出来たと考えられる。
【0086】
以上、本発明の好ましい各実施形態、各変形例を、各実施例とともに説明したが、本発明はこれらの各実施形態、各変形例、各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。