(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602307
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】従来の駐車ブレーキ、またはデュオサーボモードで動作する駐車ブレーキを備えるのに適したドラムブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/22 20060101AFI20191028BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20191028BHJP
F16D 51/48 20060101ALI20191028BHJP
F16D 65/00 20060101ALI20191028BHJP
F16D 65/09 20060101ALI20191028BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20191028BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20191028BHJP
F16D 123/00 20120101ALN20191028BHJP
【FI】
F16D65/22
B60T13/74 G
F16D51/48
F16D65/00 E
F16D65/09 H
F16D121:04
F16D121:24
F16D123:00
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-544619(P2016-544619)
(86)(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公表番号】特表2017-502231(P2017-502231A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2014078023
(87)【国際公開番号】WO2015101484
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】1363701
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516197230
【氏名又は名称】シャシー ブレイクス インターナショナル ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】CHASSIS BRAKES INTERNATIONAL B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ギニョン セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ルー ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】デュパ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】パスケ ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】モリナーロ アルベールト
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−124696(JP,A)
【文献】
米国特許第06405838(US,B1)
【文献】
特開2001−234957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00−13/74
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して回転運動するドラムとバッキングプレート(10)との間に、一方は、シリンダを形成し、前記ドラムの内面によって支持されている制動面と、もう一方は、摩擦ライニング(123、133)との間の摩擦の効果で、エネルギーを吸収することによって制動トルクを生成するタイプの、自動車用のドラムブレーキ装置(1)であって、前記摩擦ライニング(123、133)は、前記シリンダの内側に配置された第1のシュー(12)および第2のシュー(13)によって支持され、前記バッキングプレート(10)に対して前記シュー用の停止部を形成する、アンカーと呼ばれる少なくとも1つの部品によって、前記シューと前記バッキングプレート(10)との間に、少なくとも部分的に前記制動トルクを伝達し、前記摩擦は、少なくとも1つの第1のアクチュエータ(11)の効果で、少なくとも1つの前記シュー(12、13)を外向きに離間させることによって得られ、これによって第1の動作モードでブレーキ機能を提供し、
前記装置は、前記バッキングプレート(10)に対して移動可能で、移動端(121、131)と呼ばれる、前記シュー(12、13)の向かい合った2つの前記端部を互いに離しておくために配置された、スペーサ部品(14)と呼ばれる部品を備えることを特徴とし、
前記装置の前記第1の動作モードでの作動中に、前記シュー(12、13)の、前記移動端の反対側に置かれた、停止端(122、132)と呼ばれる前記端部が同時に押すことができる、1つ以上の停止部品(19)か、あるいは、
主ハウジング(21)によって前記バッキングプレートに固定された、少なくとも1つの第2のアクチュエータ(2)のいずれかを、前記バッキングプレートにしっかりと固定することによって受けるために設けられた、位置決めおよび締結手段をさらに備えることを特徴とし、
前記第2のアクチュエータ(2)は、前記停止端(122、123)を互いに離間させるために配置され、これによって前記シュー(12、13)を前記ドラムの前記制動面に押圧して、摩擦によって前記ドラムと前記シュー(12、13)の1つとの間に制動または保持トルクを伝達することを可能にし、前記移動端(121、131)は、前記スペーサ部品(14)を押し、前記スペーサ部品(14)は、前記もう1つのシュー(12、13)の前記移動端(121、131)を押し、前記もう1つのシュー(12、13)は、前記停止端(122、132)で前記主ハウジング(21)を押すことによって、前記制動または保持トルクを前記バッキングプレート(10)に伝達し、これによってブレーキ機能を第2の動作モードで提供する、ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項2】
前記バッキングプレート(10)が、前記位置決めおよび締結手段を形成し、1又は複数の前記停止部品(19)、あるいは前記少なくとも1つの第2のアクチュエータ(11)の前記主ハウジング(21)のいずれかを受けられるようにする、少なくとも1つの貫通開口部(100)を有することを特徴とする、請求項1に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項3】
前記主ハウジング(21)が、主ベアリング面(210)を備え、前記主ベアリング面(210)は好ましくは平坦で、前記少なくとも1つの開口部(100)の周囲で、2つの対向する側に置かれた少なくとも2つの領域で、相補的な接触によって前記バッキングプレート(10)を押圧するために配置されることを特徴とする、請求項2に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項4】
前記第2のアクチュエータ(2)の前記主ハウジング(21)が、少なくとも1つ以上、特に2つの締結タブ(218)を備え、それぞれが、前記バッキングプレート(10)に対して前記第2のアクチュエータ(2)をクランプする手段を受ける目的で、前記バッキングプレートのオリフィスと係合するために配置された、少なくとも1つの締結オリフィス(219)を有することを特徴とする、請求項3に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項5】
前記主ハウジング(21)が、前記主ベアリング面(210)から延びる少なくとも1つの第1の延長部(211)によって、前記開口部(100)に配置されることを特徴とする、請求項3または4に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項6】
前記第2のアクチュエータ(2)が、前記バッキングプレートの前記開口部(100)を貫通する第2のハウジング(23)に、前記主ハウジング(21)を組み付けることによって囲まれ、かつ前記主ハウジングの前記第1の延長部(211)から始まる肩部によって形成された第2のベアリング面(212)から延びる、少なくとも1つの第2の延長部(213)と接触して配置することによって前記主ハウジング(21)に組み付けられ、前記第2のハウジング(23)が、前記第2のベアリング面(212)を押圧することを特徴とする、請求項5に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項7】
前記第2のハウジング(23)が、前記バッキングプレート(10)と前記主ハウジング(21)との間を把持することによって締結され、前記主ハウジング(21)は、それぞれが前記第2のハウジング(23)の締結ラグ(232)を受けるために、前記バッキングプレートの前記開口部(100)を通り、前記主ハウジングの側で前記バッキングプレートの表面に延びる、1つ以上のキャビティ(214)を周囲に有し、これによって前記第2のハウジング(23)の前記締結ラグ(232)は、前記主ハウジング(21)と前記バッキングプレート(10)との間でクランプされることを特徴とする、請求項6に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項8】
前記第2のハウジング(23)が、単一の締結部品、特に単一のねじ(231)によって前記主ハウジング(21)に締結されることを特徴とする、請求項7に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項9】
細長い形状のギヤード・モータ・ユニット(5)を囲み、前記第2のアクチュエータを駆動させるギヤード・モータ・ハウジングが、前記第2のハウジング(23)に締結され、前記ギヤード・モータ・ユニット(5)が、前記バッキングプレート(10)の回転軸A1に対してほぼ垂直な方向で、かつ前記バッキングプレート(10)に対して前記主ハウジング(21)の反対側に、長手方向に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項10】
前記ギヤード・モータ・ユニット(5)が、1つの端部によって締結され、前記第2のハウジング(23)に対して片持ちの状態であることを特徴とする、請求項9に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項11】
前記主ハウジング(21)が、プラスチック材料または鋳造アルミニウムで作られることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項12】
前記第2のハウジング(23)が、プラスチック材料または鋳造アルミニウムで作られることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項13】
前記ギヤード・モータ・ハウジングが、プラスチック材料または鋳造アルミニウムで作られることを特徴とする、請求項9に記載の車両ドラムブレーキ装置(1)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のドラムブレーキ装置(1)を備える、車両または車両サブアセンブリ。
【請求項15】
ドラムブレーキ機構(1)を組み立てる方法であって、前記ドラムブレーキ機構は、外向きの摩擦ライニング(123、133)を装備した第1のシュー(12)および第2のシュー(13)を備え、前記第1のシュー(12)および第2のシュー(13)は、ドラムに覆われ、バッキングプレート(10)に取り付けられて、その結果、移動端と呼ばれる前記シュー(12、13)の端部(121、131)が、第1のアクチュエータ(11)の効果で外向きに離間されるときに、前記ドラムの内側によって支持されている円筒形の制動面との摩擦の効果によるエネルギー吸収によって、制動または保持トルクを前記バッキングプレートに伝達できる一方で、停止端と呼ばれる反対側の端部が、前記バッキングプレートにしっかりと固定された少なくとも1つのアンカーを同時に押圧し、
前記方法は、
数種のアンカーのいずれか1つを受けられるようにする、位置決めおよび締結手段を含む、バッキングプレートを製造または提供するステップと、
アンカーを選択するステップであって、前記アンカーを形成するために配置された受動的な当接板(19)、および停止部品(21)が前記アンカーを形成するために配置された第2のアクチュエータ(2)を含む選択肢から、アンカーを選択するステップと、
当接板の場合、前記第1のアクチュエータ(11)の作動中に、複数の前記停止端の同時圧力を受けられる位置で、前記当接板(19)を前記バッキングプレート(10)に取り付けおよび締結するステップか、あるいは、
第2のアクチュエータの場合、
前記第1のアクチュエータ(11)の作動中に、複数の前記停止端の前記同時圧力を停止部品(21)で受けることができ、これにより第1のブレーキモード、特に常用ブレーキモードを提供する、(特に「単動」として知られているタイプのモードによる)第1の動作モードを生成する位置、および
前記停止端(122、132)を互いに離間させて、前記シュー(12、13)を前記ドラムの前記制動面に押圧することにより、摩擦によって前記ドラムと前記シュー(12、13)のうちの1つとの間に制動または保持トルクを伝達できるようにし、前記シューの前記移動端が、前記バッキングプレート(10)に対して移動可能なスペーサ部品(14)を押し、前記スペーサ部品が、前記もう1つのシュー(12、13)の前記移動端を押して、前記制動または保持トルクを前記バッキングプレート(10)に伝達し、前記もう1つのシュー(12、13)の前記停止端で前記第2のアクチュエータの前記停止部品(21)を押すことによって、第2のブレーキモード、特に駐車ブレーキおよび/または緊急ブレーキモードを提供する、(特に「デュオサーボ」として知られているタイプのモードによる)第2の動作モードを生成することが可能な位置に、
前記第2のアクチュエータを取り付けおよび締結するステップとを、この順序または別の順序で含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のドラムブレーキ装置を生成するために、前記バッキングプレートおよび前記第2のアクチュエータが選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のアクチュエータ(2)を取り付けおよび締結する前記ステップが、
前記第2のアクチュエータの第2のハウジングを、前記バッキングプレート(10)の表面と相補的な形状の主ベアリング面(210)を有する、前記第2のアクチュエータの主ハウジングに組み付ける工程と、
前記第2のアクチュエータ(2)の前記第2のハウジング(23)を前記バッキングプレート(10)の貫通開口部(100)の中に挿入し、前記バッキングプレートの前記開口部(100)の周囲と、前記主ハウジング(21)の前記主ベアリング面(210)から延びる第1の延長部(211)の外面との間の接触を中心にすることによって、前記第2のアクチュエータを位置決めする工程と、
前記開口部(100)を貫通して、前記バッキングプレートと、前記主当接面(210)との間に配置された1つ以上の(214)に入る、前記第2のハウジングの1つ以上の締結ラグ(232)を把持するように、前記主ベアリング面(210)を前記バッキングプレート(10)の前記表面に対してクランプすることによって、前記主ハウジング(21)を締結する工程とを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ギヤード・モータ・ユニット(5)を、ギヤード・モータ・ハウジングを介して、前記バッキングプレートの反対側で、前記第2のアクチュエータ(2)の前記第2のハウジング(23)の、前記ギヤードモータ用の凹部で、前記主ハウジング(21)に位置決めおよび締結する、後続のステップをさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のドラムブレーキ装置を組み立てるステップおよび/または取り付けるステップ、もしくは請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法を含むことを特徴とする、車両または車両サブアセンブリを組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路車両用、特に自動車用のドラムブレーキ装置に関する。本ドラムブレーキは、常用ブレーキ機能、ならびに駐車または緊急ブレーキ機能を提供する。
【0002】
常用ブレーキモードでは、第1のアクチュエータが、ドラムに対して回転移動可能なプレートに取り付けられた、シューの2つの移動端を離間させる一方で、シューの反対側の端部が、両方ともアンカーを押圧して、「単動」型の動作を行う。
【0003】
本発明によれば、本ドラムブレーキのこの機構は、以下から選択したものを受けられるように設けられた、プレートに取り付けられる:
第1のアクチュエータの作動による常用ブレーキモードで、かつケーブルで作動するレバーを引くことによる駐車ブレーキモードで、単動モード用のアンカーとして作用する当接板;あるいは、
複数の移動端が、プレートに対して自由なスペーサ部品を介して互いに押圧している間に、シューの停止端を互いに離間させ、「デュオサーボ」型の機能を実行する、第2のアクチュエータ。
【0004】
また、本発明は、このようなドラムブレーキを組み込んだ車両、ならびに簡素な当接板を取り付けるか、または第2のアクチュエータを取り付けるかを選択するステップを含む、このようなドラムブレーキを組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0005】
自動車において、常用ブレーキの機能は、車両の速度を落とし、これを停止させることからなる。今日の大部分の自動車において、常用ブレーキは、ドラムブレーキまたはディスクブレーキ、もしくは前方アクスルのディスクブレーキと、後方アクスルのドラムブレーキとの組み合わせによって提供される。
【0006】
図1は、ドラムブレーキ9の一般的な例を示し、ホイールと同軸に、ホイールにしっかりと固定して取り付けられたドラム95を備え、ドラム95は、内側の制動面96を支持するスカートを有する。このスカートは、ホイールハブの軸線A9と同軸にプレート90に取り付けられた機構を覆い、ハブを保持するハーフアクスルにしっかりと固定される。
【0007】
この機構は、ドラムの回転軸A9の周囲に向かい合って取り付けられた、円弧を形成する2つのシュー92、93を備える。シューの外面では、シューが外向きに離間されたときに、摩擦ライニング923、933が、ドラムの制動面を押圧する。
【0008】
「単動」および「複動」と呼ばれるモードでは、各シューは、アクチュエータ91によって1つの端部で離間され、もう1つの端部は、通常はリベット留めによってプレート90にしっかりと固定されている当接板94を、回転の接線方向に押す。シューがドラムの制動面に押圧されると、ホイールの回転運動または回転力がシューに回転トルクを与え、シューはこの停止板を介して、これをバッキングプレートに伝える。「単動」構成では、2つのシューは、通常は、バッキングプレートに締結された同一の二重ピストン油圧アクチュエータ91によって、同じ側の2つの端部で作動される。これが従来のモードであり、簡素で、信頼性の高い規則的な動作をもたらす。
【0009】
駐車ブレーキの機能は、車両を長時間継続的に不動のまま保持することからなる。
図1に示すように、それ自身はラチェット機構によって保持されるケーブル99によって引かれるレバー97を用いて、同一のドラムブレーキで、この機能を常用ブレーキ用として提供することが、長い間知られてきた。このレバーは、シュー92の移動端で枢動し、反応ロッド98によって、これをもう1つのシューから離間させる。
【0010】
緊急ブレーキ機能は、常用ブレーキの制御回路が故障した場合等の特別な状況下で、動いている車両を減速することからなる。この機能は、駐車ブレーキと同一の機構によって実行されることが非常に多い。
【0011】
常用ブレーキとして十分であり、費用対効果が高いとはいえ、このタイプのドラムブレーキの制動トルクは、駐車ブレーキとして、また緊急ブレーキとしても不十分な場合がある。
【0012】
ドラムブレーキについては、「デュオサーボ」と呼ばれる別の動作モードが知られており、これは、アクチュエータが第1のシューの1つの端部を離間させるものである。この端部がドラムを押す一方で、シューのもう一方の端部は浮動しており、浮動するリンクを介し、同様に浮動するリンクの反対側の端部を介して、第2のシューを押す。第2のシューのもう1つの端部は、したがって、唯一当接板を押す。このモードは、著しく効率的であるが、調整がより困難で、不均一に摩耗する等の他の欠点がある。これは、常用ブレーキとしては広く用いられていない。
【0013】
デュオサーボ型のドラムブレーキは、例えば、常用ブレーキとして作用するディスクの中央ハットの内側をドラムとして用いる、「ドラムインハット」と呼ばれる組み合わせによって、もっぱら駐車ブレーキとして用いられることがあり、これは、欧州特許第0416760号明細書で説明されている。
【0014】
しばらく前から、単動モードで常用ブレーキとして、ならびにデュオサーボモードで駐車ブレーキとして動作するドラムブレーキを製造することが提案されてきた。様々な組み合わせの中で、仏国特許出願公開第2697599号明細書は、停止板の近くに機械式アクチュエータを追加することを提案している。このアクチュエータの片側は、第1のシューの1つの端部を押し、互いに離間させるために、もう一方の側が、追加されたレバーの端部を押す。このレバーは、もう1つのシューに沿って自在にスライドし、その反対側の端部がリンクロッドを押し、レバー自身は第1のシューの移動端を押す。
【0015】
異なるブレーキモデルを組み込むことによって、制約や多大なコストが生じ、全てのメーカーのモデル、または製造ラインで製造されたモデルにとって、必ずしも望ましくない。
【0016】
米国特許第5269396号明細書では、例えば、2ピースのプレートに締結したドラムブレーキについて説明している。
【0017】
本発明の目的は、常用ブレーキ、駐車ブレーキ、および緊急ブレーキ機能を実行するために、異なる既存部品の取り付けに柔軟性をもたらす、ドラムブレーキ装置を提案することである。
【0018】
また、例えば電気的制御による、自動車部品の制御方法における技術開発と両立するような装置を提案することを目的とする。
【0019】
さらに、本装置の車両への適合を多様かつ容易にし、このような車両の組み立て工程に柔軟に組み込めるようにすることを目的とする。
【0020】
本発明の別の目的は、上述した異なる装置のより効率的な密封方法を提案することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、単動、複動、およびデュオサーボモードの利点の全てまたは一部を維持しながら、部品点数を削減し、製造および/または組み立ておよび/または保守が容易かつ経済的な、費用対効果が高い装置を提案することである。
【発明の概要】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、自動車用のドラムブレーキ装置は、一方は、シリンダを形成し、ドラムの内面によって支持されている制動面と、もう一方は、摩擦ライニングとの間の摩擦の効果で、エネルギーを吸収することによって、互いに対して回転運動するドラムとバッキングプレートとの間に制動トルクを生成するタイプであって、摩擦ライニングは、シリンダの内側に配置された第1のシューおよび第2のシューによって支持され、バッキングプレートに対してシュー用の停止部を形成する、アンカーと呼ばれる少なくとも1つの部品を介して、シューとバッキングプレートとの間に少なくとも部分的に制動トルクを伝達し、摩擦は、少なくとも1つの第1の固定されたアクチュエータの効果で、少なくとも1つのシューを外向きに離間させることによって得られ、これによって第1の動作モードでブレーキ機能を提供する。
【0023】
本発明によれば、この装置は、スペーサ部品と呼ばれる部品を備え、これは、プレートに対して移動可能な、移動端と呼ばれる互いに向かい合うシューの2つの端部を離しておくために配置される。
【0024】
本発明の第1の態様によれば、この装置は:
装置の第1の動作モードでの作動中に、移動端の反対側に置かれた、停止端と呼ばれる複数のシューの複数の端部が同時に押す、1つ以上の停止部品か、または、
主ハウジングによってプレートに締結された、少なくとも1つの第2のアクチュエータであって、第2のアクチュエータは、停止端を互いに離間させることができるように配置され、これによって、シューをドラムの制動面に押圧し、摩擦によって、ドラムと1つのシューとの間に制動または保持トルクを伝達できるようにし、1つのシューの移動端はスペーサ部品を押し、スペーサ部品はもう1つのシューの移動端を押し、もう1つのシューの移動端は、その停止端を介してハウジングを押すことによって、制動または保持トルクをバッキングプレートに伝達し、これによって、第2の動作モードでブレーキ機能を提供する、第2のアクチュエータのいずれかを、
プレートにしっかりと固定することによって受けるために設けられた、位置決めおよび締結手段をさらに備える。
【0025】
本発明によるドラムブレーキは、常用ブレーキ、駐車ブレーキ、および緊急ブレーキ機能を実行するために、異なる既存および将来の部品の取り付けに対して、柔軟性をもたらす装置の提案を可能にする。
【0026】
好ましくは、バッキングプレートは、位置決めおよび締結手段を形成し、1又は複数の停止部品、あるいは少なくとも1つの第2のアクチュエータの主ハウジングのいずれかを受けられるようにする、少なくとも1つの貫通開口部を有する。したがって、例えばバッキングプレート全体の設計を修正することなく、アクチュエータまたは停止部品等の異なる部品から選択したものを収容することが可能である。
【0027】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの開口部は、ほぼ長方形の形状を有する。他の実施形態によれば、少なくとも1つの開口部は、ほぼ三角形または円形であってもよく、もしくは平行四辺形や平行六面体の形状を有していてもよい。また、他の実施形態によれば、少なくとも1つの開口部は、バッキングプレートに収容される部品に応じて可変の寸法を有していてもよい。これには、異なる既存の部品の統合、さらに将来の新しい部品の統合を容易にする利点がある。
【0028】
好ましい実施形態によれば、主ハウジングは、主ベアリング面を備え、これは好ましくは平坦で、少なくとも1つの開口部の周囲で、2つの対向する側に置かれた少なくとも2つの領域で、相補的な接触によってバッキングプレートを押圧するために配置される。主ベアリング面は、開口部の縁部を越えて延びることが好ましい。このようにして、外部環境と、一方では主ハウジングの内部、もう一方ではドラム内部の空間とが、塵に対して密封される。
【0029】
本発明によれば、第2のアクチュエータの主ハウジングは、少なくとも1つ以上、および特に2つの締結タブを備え、それぞれが、バッキングプレートに対して第2のアクチュエータをクランプする手段を受ける目的で、プレートのオリフィスと係合するために配置された、少なくとも1つの締結オリフィスを有する。
【0030】
主ハウジングは、2つの締結タブを備えることが好ましく、これは、主ベアリング面と同一の平面で延び、開口部の周囲でバッキングプレートを押圧する。また、締結オリフィスは、各締結タブに従って作られる。好適には、締結オリフィスは、バッキングプレートに作られた穴に対応し、その結果、好ましくはリベット留めによって、第2のアクチュエータをプレートにしっかりと固定する。いくつかのタブおよびいくつかの締結オリフィスを設けた、他の実施形態が考えられる。
【0031】
好適には、主ハウジングは、主ベアリング面から延びる少なくとも1つの第1の延長部によって、開口部に配置される。好ましい実施形態によれば、第1の延長部は、好ましくは主ベアリング面の平面に垂直に、主ベアリング面からほぼ横方向に延び、第1の延長部が開口部のリムを押圧できるように、非ゼロの高さを有し、主ベアリング面は、バッキングプレートの表面を押圧する。
【0032】
また、第2のアクチュエータは、プレートの開口部を貫通する第2のハウジングに、主ハウジングを組み付けることによって囲まれ、かつ主ハウジングの第1の延長部から始まる肩部によって形成された第2のベアリング面から延びる、少なくとも1つの第2の延長部と接触して位置決めすることによって主ハウジングに組み付けられ、第2のハウジングは、第2のベアリング面を押圧し、主ハウジングおよび第2のハウジングは、第2のアクチュエータを囲む。好ましい実施形態によれば、第2の延長部は、好ましくは主ベアリング面の平面に垂直に、第1の延長部から始まる第2のベアリング面からほぼ横方向に延び、第2の延長部が第2のハウジングの内面を押圧できるように、非ゼロの高さを有し、第2のハウジングは、第1の延長部から始まる第2のベアリング面を押圧する。第1の延長部から始まる第2のベアリング面は、主ベアリング面の平面と平行な平面に延びる、平坦な表面に対応する。好ましい実施形態によれば、第2のベアリング面は、非ゼロの幅を有し、5〜25ミリメートルの幅であることが好ましい。
【0033】
このような特徴により、一方において、異なる部品間、特に開口部に対する主ハウジングの中央合わせが非常に良好になり、もう一方において、さらなる密封手段を追加することなく、外部環境と、ドラム内の空間およびハウジング内の空間との間を、塵に対して密封するという利点がある。
【0034】
本発明によれば、第2のハウジングは、バッキングプレートと主ハウジングとの間を把持することによって締結され、主ハウジングは、その周囲に1つ以上のキャビティを有し、それぞれが第2のハウジングの締結ラグを受けるためにプレートの開口部を通って、主ハウジングの側でプレートの表面に延び、これによって第2のハウジングの締結ラグは、主ハウジングとバッキングプレートとの間でクランプされる。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのキャビティが2つの延長部を通り、第2のハウジングから延びる締結ラグが、その中に嵌合する。キャビティは、主ハウジングの主ベアリング面に入るまで続き、この締結ラグの端部を受ける。
【0035】
ラグは、主ハウジングとプレートとが互いに締結されるときに、この2つの間にしっかりとクランプされるように、キャビティに対して十分な厚さで設計される。
他の実施形態によれば、バッキングプレートは、第2のハウジングの少なくとも1つの締結ラグを受けるために、少なくとも1つの開口部の周囲に、少なくとも1つのキャビティを有することができる。
【0036】
このような配置には、確実に密封するという利点に加えて、前述のように、例えばねじおよび/またはナットの数を限定して、装置の異なる部品の組み立て工程を容易にするという利点がある。
【0037】
好適には、第2のハウジングは、単一の締結部品、特に単一のねじによって主ハウジングに締結される。
【0038】
本発明によれば、細長い形状のギヤードモータを囲み、第2のアクチュエータを駆動させるギヤード・モータ・ハウジングは、第2のハウジングに締結され、ギヤード・モータ・ユニットは、バッキングプレートの軸線に対してほぼ垂直な方向で、かつプレートに対して主ハウジングの反対側に、長手方向に配置される。
【0039】
好ましい実施形態によれば、ギヤード・モータ・ハウジングは、ほぼ水平方向に延びる。
【0040】
別の特定の実施形態によれば、ギヤード・モータ・ユニットは、1つの端部によって締結され、第2のハウジングに対して片持ちの状態である。
【0041】
本発明の特徴によれば、主ハウジング、第2のハウジング、および/またはギヤード・モータ・ハウジングは、プラスチック材料で作られる。変形例として、主ハウジングは金属、特に鋳造アルミニウムで作られる。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、第1の態様によるドラムブレーキ装置を備える、車両または車両サブアセンブリを提案する。
【0043】
本発明の第3の態様によれば、特に前述の態様によれば、本発明は、外向きの摩擦ライニングを装備した第1のシューおよび第2のシューを備え、第1のシューおよび第2のシューは、ドラムに覆われ、プレートに取り付けられて、その結果、移動端と呼ばれるシューの端部が、第1のアクチュエータの効果で外向きに離間されるときに、ドラムの内側によって支持されている円筒形の制動面との摩擦の効果によるエネルギー吸収によって、制動または保持トルクをプレートに伝達できる一方で、停止端と呼ばれる反対側の端部が、プレートにしっかりと固定された少なくとも1つのアンカーを同時に押圧する、ドラムブレーキ機構を組み立てる方法を提案する。
【0044】
この方法は、以下の順序または別の順序で、以下のステップを含む:
数種のアンカーのいずれか1つを受けられるようにする、位置決めおよび締結手段を含む、プレートを製造または提供するステップ;
アンカーを形成するために配置された受動的な当接板、およびその停止部品がアンカーを形成するために配置された、第2のアクチュエータを含む選択肢から、アンカーを選択するステップ;
当接板の場合:第1のアクチュエータの作動中に、複数の停止端の同時圧力を受けられる位置で、当接板をバッキングプレートに取り付けおよび締結するステップか、あるいは、
第2のアクチュエータの場合:
第1のアクチュエータの作動中に、複数の停止端の同時圧力を停止部品で受けることができ、これにより第1のブレーキモード、特に常用ブレーキモードを提供する、(特に「単動」として知られているタイプのモードによる)第1の動作モードを生成する位置、および
停止端を互いに離間させて、シューをドラムの制動面に押圧することにより、摩擦によってドラムとシューのうちの1つとの間に制動または保持トルクを伝達できるようにし、シューの移動端が、プレートに対して移動可能なスペーサ部品を押し、スペーサ部品が、もう1つのシューの移動端を押して、このシューの停止端で第2のアクチュエータの停止部品を押すことによって、制動または保持トルクをバッキングプレートに伝達し、第2のブレーキモード、特に駐車ブレーキおよび/または緊急ブレーキモードを提供する、(特に「デュオサーボ」として知られているタイプのモードによる)第2の動作モードを生成することが可能な位置に、第2のアクチュエータを取り付けおよび締結するステップ。
【0045】
このようにして、ドラムブレーキ装置の組み立て工程に異なる部品を組み込むことが容易になる。
【0046】
第4の態様によれば、本発明は、特に前述の態様による方法を提案し、第1の態様によるドラムブレーキ装置を生成するために、プレートおよび第2のアクチュエータが選択される。
【0047】
また、本発明の第5の態様によれば、特に上述の2つの態様の1つ以上によれば、第2のアクチュエータを取り付けおよび締結する方法が提供され、以下のステップを含む:
第2のアクチュエータの第2のハウジングを、プレートの表面と相補的な形状の主ベアリング面を有する、第2のアクチュエータの主ハウジングに組み付けるステップ。
第2のアクチュエータの第2のハウジングをプレートの貫通開口部の中に挿入し、プレートの開口部の周囲と、主ハウジングの主ベアリング面から延びる第1の延長部の外面との間の接触を中心にすることによって、第2のアクチュエータを位置決めするステップ。
開口部を貫通して、プレートと主ベアリング面との間に配置された1つ以上のキャビティに入る、第2のハウジングの1つ以上の締結ラグを把持するように、主ベアリング面をプレートの表面に対してクランプすることによって、主ハウジングを締結するステップ。
【0048】
本発明の第6の態様によれば、特に上述の3つの態様の1つ以上によれば、この方法は、ギヤード・モータ・ユニットを、ギヤード・モータ・ハウジングを介して、プレートの反対側で、第2のアクチュエータの第2のハウジングのギヤードモータ凹部で、主ハウジングに位置決めおよび締結する、後続のステップをさらに含む。
【0049】
本発明のさらに別の態様によれば、特に上述の態様の1つ以上によれば、本発明は、本明細書に開示されるようなドラムブレーキ装置を組み立てるステップおよび/または取り付けるステップを含む、車両または車両サブアセンブリを組み立てる方法を提案する。
【0050】
このような特徴は、本発明にいくつかの利点をもたらす。これらの特徴により、1つの方法または別の方法によって常用ブレーキおよび駐車ブレーキ機能を実行するために、異なる既存の部品を取り付ける際の選択に柔軟性をもたらすことが可能になる。また、バッキングプレートの標準的な形状により、バッキングプレートは、例えば電動による自動車部品の制御手段における、技術開発の結果生じ得る部品に適合する。さらに、異なる部品は、リベット留め等の、当接板が現在バッキングプレートに締結されているのとほぼ同じ方法で締結しなければならないので、行われる修正は簡単なものである。したがって、本装置は、既存の装置の利点の全てまたは一部を維持しながら、費用対効果は高いまま構成され、かつ部品点数の削減、容易で経済的な製造および/または組み立ておよび/または保守をもたらす。バッキングプレートに対する、第2のハウジングと組み合わせた停止部および主ハウジングの相補的な形状により、シューからバッキングプレートへと制動力または保持力を伝達する能力を維持しながら、外部環境とドラム内の空間との間が密封される。
【0051】
本発明は、異なる選択肢を有する様々なモデルまたはアセンブリに有効な、ブレーキおよびこれを含む車両の設計、および製造ラインにおける製造の柔軟性の向上を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の他の利点および特徴は、決して限定的ではない実施形態の詳細な説明、および添付の図を考察することによって明らかになるであろう。
【
図1】ケーブルで作動するレバーによって駐車ブレーキ機能が得られる、単動型のドラムブレーキ機構の従来技術の例を示す、回転軸に沿った前面図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態における「デュアルモード」のドラムブレーキ機構の斜視図である。
【
図3】単一のバッキングプレートに、当接板または第2のアクチュエータを取り付ける、本発明による異なるドラムブレーキ取り付けの選択肢を示す斜視図である。
【
図4】好ましい実施形態による、特に第2のハウジングおよび主ハウジングを有する、第2のアクチュエータの分解斜視図である。
【
図5】第2のアクチュエータ、およびそのギヤード・モータ・ユニットのバッキングプレートへの取り付けを示す分解斜視図である。
【
図6】バッキングプレートに締結された、第2のアクチュエータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
これらの実施形態は、決して限定的なものではないため、以下に記載された特徴からのある選択のみを含み、この特徴の選択が、技術的な利点を与えるのに十分であるか、あるいは本発明を最新技術に対して区別するのに十分であれば、本発明の変形例が考えられる。
【0054】
図2は、本発明の例示的な実施形態における「デュアルモード」のドラムブレーキ機構を示し、より詳細には、バッキングプレート10が、第2のアクチュエータ2を収容するための開口部を有している。この実施形態は、常用ブレーキモード用の様々なタイプのアクチュエータ、ならびに駐車または緊急ブレーキのアクチュエータ用の様々なタイプの駆動部品で実現することができる。
【0055】
このドラムブレーキ1は、回転軸A1の周囲で互いに対して回転運動することにより、ドラム(図示せず)とプレート10との間に制動トルクを生成する。従来の道路車両のアーキテクチャでは、プレート10は、通常は懸架されたアクスルまたはハーフアクスルを介して、回転するように車両のシャーシに固定されている。ドラムは、ホイールにしっかりと固定され、かつハブおよびベアリング(図示せず)によって、軸線A1の周囲で平行移動するように固定され、かつ回転するようにガイドされる。
【0056】
常用ブレーキモードでは、制動トルクは、以下のもの同士の間の摩擦効果による、エネルギーの吸収によって生成される。
一方は、
図1のドラムと同様に、ドラムの内面によって支持されている制動面。
もう一方は、第1のシュー12および第2のシュー13によって支持されている摩擦ライニング123、133。
【0057】
この摩擦は、第1のアクチュエータ11、ここではプレート10に締結できる油圧シリンダの効果で、シューを外向きに押して離間させることによって得られる。アイドル位置から、または駐車ブレーキ位置から、この第1のアクチュエータ11は、このようにしてこの機構を常用ブレーキ位置にし、この機構は、
図2に示すように、例えば2つのシューを結合する戻りばねによってアイドル位置に戻る。
【0058】
この例では、ドラムブレーキは、常用ブレーキとして作動されるときに、単動モードで動作するために配置されている。第1のアクチュエータ11は、2つの対向するピストン111を有する「ホイールシリンダ」であり、そのそれぞれは、向かい合う2つの端部121、131、すなわち回転軸A1の同じ側にあり、本明細書では「移動端」と呼ばれて図の上部にある端部を互いに離間させることによって、シュー12、13のうちの1つを作動させる。停止端と呼ばれる対向する端部122、132で、各シューは、アンカーによってプレート10を押し、アンカーは、プレートにしっかりと固定されて、このシューの停止部を形成する。アンカーは、シューとプレート10との間に制動トルクを伝達するための部品として機能する。この例では、2つのシューは、本明細書ではシュースペーサと呼ばれる、第2のアクチュエータ2のハウジング21によって固定される。第2のアクチュエータ2は、そのハウジング21によってプレート10に締結される。
図1に示す例では、アンカーは、通常はバッキングプレート10にリベット留めされた当接板94によって生成される。
【0059】
シュースペーサ2は、作動アセンブリを備え、これは、駐車または緊急ブレーキモードにおいて、シュー12、13の停止端122、132を互いに離間させるように押して、シューがドラムの制動面を押圧するようにする。
【0060】
アイドル位置から、または常用ブレーキ位置から、この第2のアクチュエータ2は、このようにしてこの機構を駐車ブレーキ位置にし、この機構は、例えば、常用ブレーキについて既に説明した戻りばねによってアイドル位置に戻る。
【0061】
図3は、好適には数種のドラムブレーキを作ることができる、バッキングプレート10を示す。
【0062】
本発明は、設計工程中、ならびに工場生産中においても、いくつかの選択肢からの選択を可能にし、場合によっては、プレートが既に車両または車両サブアセンブリに固定されているときでも選択が可能である。
【0063】
別の特徴によれば、バッキングプレートは、いくつかの予め切断された同軸の開口部を有する。したがって、組み込まれる部品に応じて所望の開口部を得るために、組み立てには、バッキングプレートに型押しする作業が含まれる。
【0064】
想定される1つの選択肢は、常用ブレーキとして単動モードで、および電動式の駐車または緊急ブレーキとしてデュオサーボモードで動作するデュアルモードドラムブレーキを製造するために、上述したように、シュースペーサ2をプレートの開口部100に固定することである。シュースペーサ2は、2つの締結タブ218を備え、これは、締結オリフィス219を含み、シュースペーサ2をバッキングプレート10に配置および締結できるようにする。
【0065】
想定される別の選択肢は、同じプレートの開口部100に、この目的のために事前に製造された、受動的な当接板19を締結することである。このような当接板は、当接板の2つの締結ラグに作られた締結オリフィス199をさらに含み、同様に、当接板19をバッキングプレート10に配置および締結することが可能になる。
【0066】
当接板のラグ、およびシュースペーサのタブのそれぞれの締結オリフィス199または219は、バッキングプレート10に配置されると、バッキングプレートに作られた穴に面する。
【0067】
また、バッキングプレート10に接触する当接板19の面、および第2のアクチュエータ2の面、あるいは別の部品は、上述した異なる部品を選択的に同一の開口部100に取り付けることを可能にする、同一の組み立て手段を有し、したがって選択的に、例えば、
図1のような制御ケーブル99によって作動される駐車ブレーキレバー97を用いた、単動モードでのみ動作する、知られているタイプのドラムブレーキ9の簡素で柔軟な製造を可能にする。
【0068】
図4は、バッキングプレート10および第2のハウジング23に対する、シュースペーサ2の組み立て手段をより詳細に示す。
【0069】
主ハウジング21は、このハウジングの主ベアリング面210によってバッキングプレート10に固定されて、プレートに圧接する。ベアリング面210は、ほぼ平坦で、開口部100の周囲でバッキングプレート10を押圧し、開口部100の縁部を越えて延びる。
図4に示すように、このベアリング面210は、第1の延長部211を有し、これはベアリング面210から突出して、開口部100を貫通し、プレート10上での位置決めをする。この第1の延長部211の外面は、プレートの締結開口部100の外周と係合し、この開口部100に対して主ハウジング21を中央合わせするために決定された輪郭を有する。示されている実施形態によれば、第1の延長部211は、主ベアリング面からほぼ横方向に、好ましくは主ベアリング面210の平面に垂直に延び、第1の延長部が開口部100のリムを押圧できるように、非ゼロの高さを有する。
【0070】
この第1の延長部211は、第2のベアリング面212を形成する肩部で終わり、これに対して、シュースペーサ2の第2のハウジング23が押圧される。この第2のベアリング面212は、第2の延長部213を有し、第2のベアリング面212に対して突出して、第2のハウジング23の凹部の中に延びる。この第2の延長部213の外面は、第2のハウジングの凹部の開口部の外周と係合し、主ハウジング21に対して第2のハウジング23を中央合わせするために決定された輪郭を有する。同様に、示されている実施形態によれば、第2の延長部213は、第2のベアリング面212から、主ベアリング面210の平面にほぼ垂直な(もしくは少なくとも45度、または60度)方向に延びる。この第2の延長部は、第2のハウジング23の凹部の開口部を押圧するように、非ゼロの高さを有する。
【0071】
主ハウジング21の伝達装置凹部22の4つの側面のうちのいくつか、またはそれぞれで、少なくとも1つのキャビティ214が2つの延長部211、213を通っており、第2のハウジング23から延びる締結ラグ232が、その中に嵌合する。キャビティは、主ハウジング21の主ベアリング面210に入るまで続き、この締結ラグ232の外側に曲げられた端部を受ける。ラグは、主ハウジング21とプレート10とが互いに締結されるときに、この2つの間にしっかりとクランプされるように、キャビティ214に対して十分な厚さのある寸法にされる。締結ラグ232は、主ベアリング面210の平面で、ほぼ長方形一般的な形状を有することが好ましい。
【0072】
したがって、主ハウジング21をプレートに締結することによって、そのアセンブリも第2のハウジングにクランプする。組み立てる前の2つのハウジング21、23のアセンブリは、わずかな締結手段、例えば簡単な留め具、または
図4に示すような1つのねじ231が必要であるか、または締結手段を必要としない。
【0073】
図5に示すように、シュースペーサ2は、バッキングプレート10に取り付けられて締結され、密封状態で、プレートの内側の開口部100と係合する。次に、ギヤード・モータ・ユニット5が、ギヤード・モータ・ハウジングによって、シュースペーサ2の第2のハウジング23の部分でシュースペーサ2に組み付けられ、第2のハウジング23は、シューの反対側、すなわちプレートの「背面」側で、プレートから延びている。
【0074】
図6では、第2のアクチュエータ2が、バッキングプレート10に締結されている。ギヤード・モータ・ユニットは、バッキングプレート10の軸線A1に対してほぼ垂直方向に、より正確には、主ベアリング面210の平面と平行な方向に配置される。また、ギヤード・モータ・ユニット5は、第2のハウジング23に対して片持ちされた状態になる。
【0075】
したがって、シュースペーサ2と互換性のあるプレート10を用いることによって、かつこのプレートに適した簡単な当接板19を設けることによって、電動式駐車ブレーキにデュアルモードブレーキを取り付ける選択肢からの利益を常に得ながら、従来型のドラムブレーキを装備した車両の製造を想定または継続できるようになる。
【0076】
プレート10および当接板19は、非常に低コストであり、設計または製造上の制約が少ないかまたは皆無である。
【0077】
したがって、例えば、ブレーキタイプの異なる選択肢を有する車両範囲を想定すること、供給を1つの組み立てラインに限定すること、あるいはこのような異なる選択肢を与えるために、既存のラインまたは既存の車両モデルに、柔軟かつ低コストで適合させることが可能である。
【0078】
無論、本発明は、説明した例に限定されることはなく、本発明の範囲を超えることなくこれらの例に多くの調整を行うことが可能である。また、本発明の様々な特徴、形態、変形、および実施形態は、それらが適合しないか、または互いに矛盾しない限りにおいて、様々な組み合わせで互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ドラムブレーキ
10 バッキングプレート
100 ベアリング点を締結するための開口部
11 第1のアクチュエータ−ホイールシリンダ−常用ブレーキ
111 ホイールシリンダピストン
12,13 シュー
121,131 シューの移動端
122,132 シューの停止端
123,133 摩擦ライニング
14 スペーサ部品−調整ストラット
16 ドラムの制動面
19 純粋な単動型のブレーキ当接板
199 当接板締結オリフィス
2 第2のアクチュエータ−シュースペーサ−駐車ブレーキ
21 シュースペーサの主ハウジング
210 主ベアリング面(第1のリベート)
211 プレートで中央合わせされる第1の延長部(第1のリベート)
212 第2のベアリング面を形成する肩部(第2のリベート)
213 第2のハウジングを中央合わせする第2の延長部(第2のリベート)
214 第2のハウジングの締結ラグを受けるキャビティ
218 主ハウジング締結タブ
219 主ハウジング締結オリフィス
22 主ハウジングのカートリッジ凹部
23 シュースペーサの第2のハウジング
231 第2のハウジングを主ハウジングに締結するためのねじ
232 第2のハウジングの締結ラグ
5 ギヤード・モータ・ユニット(モータギヤユニット)
従来技術
9 ドラムブレーキ
90 バッキングプレート
91 アクチュエータ
92,93 シュー
923,933 摩擦ライニング
94 当接板
95 ホイールドラム
96 ドラムの制動面
97 駐車ブレーキレバー
98 駐車ブレーキ反応部材
99 駐車ブレーキ制御ケーブル