特許第6602362号(P6602362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602362
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】高熱伝導率/低熱膨張率を有する複合材
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20191028BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20191028BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20191028BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20191028BHJP
   C01B 32/20 20170101ALI20191028BHJP
【FI】
   H01L23/36 M
   H01L23/36 Z
   H05K7/20 C
   H05K7/20 F
   B32B9/00 A
   B32B15/04 B
   C01B32/20
【請求項の数】33
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-222570(P2017-222570)
(22)【出願日】2017年11月20日
(62)【分割の表示】特願2013-558171(P2013-558171)の分割
【原出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-82180(P2018-82180A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2017年11月20日
(31)【優先権主張番号】13/049,498
(32)【優先日】2011年3月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506390498
【氏名又は名称】モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シャン
(72)【発明者】
【氏名】マリナー ジョン
【審査官】 庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−500692(JP,A)
【文献】 特開平07−109171(JP,A)
【文献】 特開2011−023670(JP,A)
【文献】 特開2007−109880(JP,A)
【文献】 特開平04−250641(JP,A)
【文献】 特開平02−094649(JP,A)
【文献】 特表2009−517321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
B32B 9/00
B32B 15/04
C01B 32/20
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導複合材であって、
第1の金属基板と、
第2の金属基板と、
前記第1の金属基板と前記第2の金属基板との間に配置された高温熱分解グラファイト層と、
を備え、
前記高温熱分解グラファイトは、複数の層状面を有し、前記グラファイトは、前記層状面が前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板の面に対して垂直の方向に配向されるように当該複合材に配置され、
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、前記グラファイト層に結合されるとともに、それぞれが約200GPa以上の弾性係数を有し、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はそれらのうちの2つ以上の組合せから個々に選択され、
前記複合材は、約20体積%〜約90体積%の高温熱分解グラファイトを含み、約13ppm/℃以下の面内方向熱膨張率及び約200W/m−K以上の厚さ方向熱伝導率を有する、
熱伝導複合材。
【請求項2】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、タングステン−銅合金、モリブデン−銅合金又はそれらのうちの2つの組合せから個々に選択される、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項3】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10〜70%の銅を含むタングステン−銅合金から個々に選択される、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項4】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10〜70%の銅を含むモリブデン−銅合金から個々に選択される、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項5】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10%の銅を含むタングステン−銅合金である、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項6】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、15%の銅を含むタングステン−銅合金である、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項7】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、30%の銅を含むモリブデン−銅合金である、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項8】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、約4ppm/℃〜約13ppm/℃の熱膨張率を有する、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項9】
約40体積%〜約80体積%の高温熱分解グラファイトを含む、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項10】
約55体積%〜約87体積%の高温熱分解グラファイトを含む、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項11】
前記基板は、約300GPa以上の弾性係数を有する、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項12】
前記基板は、約400GPa以上の弾性係数を有する、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項13】
約4ppm/℃〜約9ppm/℃の熱膨張率を有する、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項14】
約4ppm/℃〜約7ppm/℃の熱膨張率を有する、請求項1に記載の熱伝導複合材。
【請求項15】
電子構造体であって、
電子装置と、
前記電子装置と熱接触しているヒートシンクアセンブリと、
を備え、
前記ヒートシンクアセンブリは、第1の金属基板と第2の金属基板との間に配置された高温熱分解グラファイト片を備える熱伝導複合材を含み、
前記高温熱分解グラファイトは、複数の層状面を有し、前記グラファイトは、前記層状面が前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板の面に対して垂直の方向に配向されるように当該複合材に配置され、
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、前記グラファイトに結合されるとともに、それぞれ約200GPa以上の弾性係数を有する金属を含み、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はそれらのうちの2つ以上の組合せから個々に選択され、
前記複合材は、約20体積%〜約90体積%の高温熱分解グラファイトを含み、約13ppm/℃以下の熱膨張率及び約200W/m−K以上の厚さ方向熱伝導率を有する、
電子構造体。
【請求項16】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、タングステン−銅合金、モリブデン−銅合金又はそれらのうちの2つの組合せから個々に選択される、請求項15に記載の電子装置。
【請求項17】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10〜70%の銅を含むタングステン−銅合金から個々に選択される、請求項15に記載の電子装置。
【請求項18】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10〜70%の銅を含むモリブデン−銅合金から個々に選択される、請求項15に記載の電子装置。
【請求項19】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10%の銅を含むタングステン−銅合金である、請求項15に記載の電子装置。
【請求項20】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、15%の銅を含むタングステン−銅合金である、請求項15に記載の電子装置。
【請求項21】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、30%の銅を含むモリブデン−銅合金である、請求項15に記載の電子装置。
【請求項22】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板はそれぞれ、約300GPa以上の弾性係数を有する、請求項15に記載の電子装置。
【請求項23】
約40体積%〜約80体積%の高温熱分解グラファイトを含む、請求項15に記載の電子装置。
【請求項24】
複合材シートであって、
タングステン、モリブデン、タングステン合金及びモリブデン合金のうちの少なくとも1つから選択される第1の金属基板と、
タングステン、モリブデン、タングステン合金及びモリブデン合金のうちの少なくとも1つから選択される第2の金属基板と、
前記第1の金属基板と前記第2の金属基板との間に配置された高温熱分解グラファイトシートと、
を備え、
前記高温熱分解グラファイトシートは複数の層状面を有し、前記グラファイトは、前記層状面が前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板の面に対して垂直の方向に配向されるように当該複合材に配置され、
前記複合材シートは、約20体積%〜約90体積%の高温熱分解グラファイトを含み、前記複合材シートは約13ppm/℃以下の熱膨張率及び約200W/m−K以上の厚さ方向熱伝導率を有する、
複合材シート。
【請求項25】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、タングステン−銅合金、モリブデン−銅合金又はそれらのうちの2つの組合せから個々に選択される、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項26】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10〜70%の銅を含むタングステン−銅合金から個々に選択される、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項27】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10〜70%の銅を含むモリブデン−銅合金から個々に選択される、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項28】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、10%の銅を含むタングステン−銅合金である、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項29】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、15%の銅を含むタングステン−銅合金である、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項30】
前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、30%の銅を含むモリブデン−銅合金である、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項31】
約55体積%〜約87体積%の高温熱分解グラファイトを含む、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項32】
約300W/m−K〜約1000W/m−Kの熱伝導率を有する、請求項24に記載の複合材シート。
【請求項33】
前記基板は、前記グラファイトシートに結合される、請求項24に記載の複合材シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、熱管理アセンブリであって、ヒートスプレッダーとも称することができる、熱を熱源から例えばヒートシンクに伝達するために用いることができる熱伝達素子(heat transfer device)と、例えば熱源とヒートシンクとの間に、熱源と接触するヒートスプレッダーを有するアセンブリと、熱を放散するヒートシンクと、を含むがそれらに限定されない、熱管理アセンブリに関する。本発明はまた、熱管理アセンブリを製造する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2011年3月16日に出願された、「HIGH THERMAL CONUCTIVITY/LOW COEFFICIENT OF THERMAL EXPANSION COMPOSITES(高熱伝導率/低熱膨張率を有する複合材)」と題された米国特許出願第13/049,498号の利益を主張する。この米国特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
現在、熱管理の様々な形態が存在しており、それらの全てが、熱を移動させるために伝導、対流又は放射の原理に依拠している。集積回路等の高密度電子部品(electronic component)及び高密度電子装置(electronic device:電子デバイス)からの熱伝達を可能にするためには、良好な熱伝導率が必要である。半導体回路及び半導体システムから熱を放散するために、熱伝達素子において高熱伝導性材料が従来的に使用されている。高熱伝導性材料を有する熱伝達素子は、航空宇宙産業用途及び軍事用途においても使用することができる。元素金属は、現用の半導体回路システムにとって満足のいくものではない。このことが、所望の熱伝導率、強度及び他の必要な特性を有する種々の構造アセンブリになるように作製されている、様々な材料からなる複合材すなわち積層物から形成された、高伝導性熱伝達素子の使用につながっている。
【0004】
ヒートシンクは、熱源から熱エネルギーを伝導するように、熱源に内部連結される材料マスから構成される熱放散素子である。ヒートシンクは通常、集積回路上のヒートスプレッダーから周囲空気に熱を搬送するように設計される。ヒートシンクは、フィン又は一体型ヒートスプレッダーの形態とすることができる。ヒートシンクは、高温領域(例えばプロセッサ)から低温領域(例えばヒートシンク)に熱エネルギーを伝導する。熱エネルギーは次に、ヒートシンクの表面からヒートシンクを包囲する大気に、対流及び放射により放散される。ヒートシンクは通常、主に、空気又は液体と直接接触する表面積を増大させることにより、熱伝達効率を上げるように設計される。これにより、より多くの熱を放散することが可能になり、それにより、素子動作温度が低下する。
【0005】
電子部品を冷却するために使用されるヒートシンクは通常、冷却される素子と直接接する熱伝導ベースプレートと、ベースプレートから延びている1組のプレートフィン又はピンフィンとを備える。フィンは、空気又は液体と直接接触する表面積を増大させ、それにより、熱源と周囲との間の熱伝達効率を上げる。
【0006】
従来のヒートシンクでは、ベース及び/又はフィンは通常、銅又はアルミニウムである。銅及びアルミニウムは比較的高い熱膨張率(CTE)を有する。電子部品は、これらの電子部品の半導体材料を含めて、通常、低CTE(4×l0-6/℃〜7×l0-6/℃)を有する材料から形成される。銅及びアルミニウムは良好な熱伝導率を呈する一方、ヒートシンク材料のCTEと電子部品(複数の場合もある)のCTEとの差異によるかなりのミスマッチにより、搭載された電子部品(例えば半導体チップ)に過度な応力がもたらされる可能性があり、それにより、不具合又は不確実な動作につながる可能性がある。アルミニウムシリコンカーバイド(AlSiC)、モリブデン−銅合金、タングステン−銅合金又は銅−モリブデン積層体等の低CTE材料がヒートシンク用に使用されている。これらの材料は、低熱伝導率を有し、ヒートシンクにおけるこれらの材料の使用は概して、電子部品との良好なCTEのマッチのために、熱伝導率を犠牲にする。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、本発明は、低CTE及び高熱伝導率(TC)を呈する熱伝導複合材料を提供する。別の態様において、本発明は、面内方向及び厚さ方向の双方において低CTE及び優れた熱伝導率を有する材料を提供する。更に別の態様において、本発明は、比較的低いCTE、比較的高い熱伝導率及び低密度を有する複合材料を提供する。これらの複合材料は、例えば、ヒートスプレッダー、ヒートシンク等のような熱伝達素子を含むがそれに限定されない熱管理アセンブリにおける使用に適合されており、そのような使用に特に適している。
【0008】
本発明の1つの態様によれば、熱伝導複合材が、
第1の金属基板と、
第2の金属基板と、
前記第1の金属基板と前記第2の金属基板との間に配置された高温熱分解(thermal pyrolytic)グラファイト層であって、前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、該グラファイト層に結合され、約200GPa以上の弾性係数を有する金属を含み、該複合材は、約13ppm/℃以下の面内方向熱膨張率及び約200W/m−K以上の熱伝導率を有する、高温熱分解グラファイト層と、
を備える。
【0009】
1つの実施形態によれば、前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はそれらのうちの2つ以上の組合せから選択される金属を個々に含む。
【0010】
1つの実施形態によれば、前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板はそれぞれ、約4ppm/℃〜約13ppm/℃の熱膨張率を有する。
【0011】
1つの実施形態によれば、上記複合材は、約20体積%〜約90体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0012】
1つの実施形態によれば、上記複合材は、約40体積%〜約80体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0013】
別の態様において、上記複合材は、約55体積%〜約87体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0014】
1つの実施形態によれば、上記基板は、約300GPa以上の弾性係数を有する。
【0015】
1つの実施形態によれば、上記基板は、約400GPa以上の弾性係数を有する。
【0016】
1つの実施形態によれば、上記複合材は、約4ppm/℃〜約9ppm/℃の熱膨張率を有する。
【0017】
1つの実施形態によれば、上記複合材は、約4ppm/℃〜約7ppm/℃の熱膨張率を有する。
【0018】
1つの実施形態によれば、上記高温熱分解グラファイトは、複数の層状面を有し、前記グラファイトは、前記層状面が前記金属基板の面に対して水平の方向に配向されるように上記複合材に配置される。
【0019】
1つの実施形態によれば、上記高温熱分解グラファイトは、複数の層状面を有し、前記グラファイトは、前記層状面が前記金属基板の面に対して垂直の方向に配向されるように上記複合材に配置される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、電子構造体が、
電子装置と、
前記電子装置と熱接触しているヒートシンクアセンブリであって、該ヒートシンクアセンブリは、第1の金属基板と第2の金属基板との間に配置された高温熱分解グラファイト片を備える熱伝導複合材を含み、前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、前記グラファイトに結合され、約200GPa以上の弾性係数を個々に有する金属を含み、前記複合材は、約13ppm/℃以下の熱膨張率及び約200W/m−K以上の熱伝導率を有するヒートシンクアセンブリと、
を備える。
【0021】
上記電子装置の1つの実施形態によれば、前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板は、タングステン、モリブデン、タングステン合金、モリブデン合金又はそれらのうちの2つ以上の組合せから選択される金属を個々に含む。
【0022】
上記電子装置の1つの実施形態によれば、前記第1の金属基板及び前記第2の金属基板はそれぞれ、約300GPa以上の弾性係数を有する。
【0023】
上記電子装置の1つの実施形態によれば、前記複合材は、約20体積%〜約90体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0024】
上記電子装置の1つの実施形態によれば、前記複合材は、約40体積%〜約80体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0025】
上記電子装置の1つの実施形態によれば、上記高温熱分解グラファイトは、複数の層状面を有し、前記グラファイトは、前記層状面が前記金属基板の面に対して垂直の方向に配向されるように該複合材に配置される。
【0026】
本発明の更に別の態様において、複合材シートが、
タングステン、モリブデン、タングステン合金及びモリブデン合金のうちの少なくとも1つから選択される第1の金属基板と、
タングステン、モリブデン、タングステン合金及びモリブデン合金のうちの少なくとも1つから選択される第2の金属基板と、
前記第1の金属基板と前記第2の金属基板との間に配置された高温熱分解グラファイトシートであって、該高温熱分解グラファイトシートは複数の層状面を有し、前記複合材シートは約13ppm/℃以下の熱膨張率及び約200W/m−K以上の熱伝導率を有する、高温熱分解グラファイトシートと、
を備える。
【0027】
上記複合材の1つの実施形態によれば、該複合材は、約20体積%〜約90体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0028】
上記複合材の1つの実施形態によれば、該複合材は、約55体積%〜約87体積%の高温熱分解グラファイトを含む。
【0029】
上記複合材の1つの実施形態によれば、該複合材は、約300W/m−K〜約1000W/m−Kの熱伝導率を呈する。
【0030】
上記複合材の1つの実施形態によれば、該複合材は、前記グラファイトシートに結合される基板を備える。
【0031】
これらの特徴及び他の特徴は、以下の説明及び添付図面を参照しながら説明される。説明及び図面では、本発明の特定の実施形態を、本発明の原理が用いることができる幾つかの方法を示すものとして詳細に開示しているが、本発明はそのような実施形態に限定されないことが理解される。むしろ、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲の趣旨及び表現内にある全ての変形形態、変更形態及び均等物を含む。
【0032】
1つの実施形態に関して説明又は例示される特徴は、1つ若しくは複数の他の実施形態と同じ方法若しくは同様の方法において、及び/又は他の実施形態の特徴と組合せて若しくはそのような特徴の代わりに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】低CTE及び高熱伝導率を有する熱伝導複合材の概略斜視図である。
図2】本発明の1つの態様による、x−y方向に配向された層状面を有するグラファイト層を有する複合材の概略断面図である。
図3】本発明の1つの態様による、ビアを有する熱伝導複合材の概略斜視図である。
図4図3の複合材の概略断面図である。
図5】本発明の1つの態様による、z方向に配向された層状面を有するグラファイト層を有する熱伝導複合材の概略斜視図である。
図6】本発明による熱伝導複合材を使用する電子アセンブリの概略図である。
図7】本発明の態様による熱伝導複合材の、様々なグラファイト充填量における熱膨張率を示すグラフである。
図8】本発明の態様による熱伝導複合材の、様々なグラファイト充填量における熱伝導率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、本発明の例示的な実施形態を詳細に参照する。本発明の例は、添付図面に示されている。図面は、単に本発明の態様を例示する目的の概略図であり、縮尺どおりに描かれていない。本発明のそれぞれの範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、使用上及び機能上の変更を行うことができることが理解される、そのため、以下の説明は、例示のためにのみ示され、例示の実施形態に対して行うとともに依然として本発明の趣旨及び範囲内にあることができる種々の代替及び変更をいかようにも限定するとは解釈されるべきでない。
【0035】
「ヒートシンク」という用語は、熱を収集するだけでなく放散する機能も実行する素子を指すように、「放熱器」と交換可能に用いることができる。それらの用語は、単数形又は複数形である(be in the singular or plural form)場合があり、1つ又は複数の部材(item)が存在する場合があることを示す。
【0036】
本明細書において用いられるとき、「ヒートスプレッダー」又は「熱伝達積層体」という用語は、熱源及びヒートシンクと接触している素子を指すように、交換可能に用いることができる。
【0037】
また、本明細書において用いられるとき、「高温熱分解グラファイト」(「TPG」)という用語は、「高配向熱分解グラファイト」(「HOPG」)又は「アニール熱分解グラファイト」(「APG」)又は「圧縮アニール高温熱分解グラファイト」(「CAPG」)と交換可能に用いることができる。これらの用語は、かなりのサイズの結晶子を有するグラファイト材料であって、結晶子は、互いに対して高度に整列又は配向されているとともに、良好に整列されているグラフェン層又は好ましい結晶子の高度の配向を有し、面内方向(a−b方向)熱伝導率が約800W/m−Kより大きい、グラファイト材料を指す。1つの実施形態において、TPGは、約1000W/m−Kより大きい面内方向熱伝導率を有し、別の実施形態において、約1500W/m−Kより大きい面内方向熱伝導率を有する。
【0038】
開示される技術は、熱管理アセンブリ、例えばヒートスプレッダー、ヒートシンク等における使用に適した複合材料を提供する。この場合、複合材は比較的低い熱膨張率及び比較的高い熱伝導率を有する。開示される技術はまた、低CTE、高TCの複合材料を使用する熱管理アセンブリを含む電子アセンブリを提供する。
【0039】
図1を参照すると、第1の基板12と、第2の基板14と、基板12及び14間に配置された層16とを備える熱伝導複合材10が示されている。基板12及び14は比較的低いCTEを有する材料から形成され、層16は比較的高い熱伝導率を有する材料(例えばTPG)から形成される。本出願人らは、低CTE金属基板間に挟まれた又は封入されたTPG等の高熱伝導性材料を有する複合材が、比較的低いCTEと比較的高い熱伝導率とを呈する複合材をもたらすことを見出している。
【0040】
基板は、比較的高いスチフネス及び比較的低いCTEを有する金属から形成することができる。1つの実施形態において、基板は、約200GPa以上、別の実施形態において約300GPa以上、更に別の実施形態において約400GPa以上の弾性係数を有する金属を含む。以下で更に論じるように、本発明者らは、高弾性係数及び低CTEを有する金属基板を用いることにより、高熱伝導性材料の濃度が非常に高い組成においてさえも、低CTEを有する複合材がもたらされることを見出している。
【0041】
基板材料は、約13ppm/℃以下の面内方向熱膨張率を有することができる。1つの実施形態において、基板は、約4ppm/℃〜約13ppm/℃の熱膨張率を有する。別の実施形態において、基板は、約4ppm/℃〜約9ppm/℃の熱膨張率を有する。更に別の実施形態において、基板は、約4ppm/℃〜約7ppm/℃の熱膨張率を有する。一方の基板の熱膨張率は、他方の基板の熱膨張率と同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
金属は、特定の目的又は使用意図に関して所望のように選択することができる。金属は、例えばモリブデン、タングステン、モリブデン合金、タングステン合金、それらのうちの2つ以上の組合せ等から選択することができる。複合材においては、それぞれの基板は同じ又は異なる金属から形成することができる(基板は、同じ合金成分を異なるパーセンテージで有する金属合金から形成されている場合、異なる金属から形成されているとみなすことができる)。1つの実施形態において、金属は、約10%〜約70%の銅を含むタングステン−銅合金から選択される)。別の実施形態において、金属は、約10%〜約70%の銅を含むモリブデン−銅合金から選択される。適した金属の非限定的な例には、W−10Cu(10%Cu)、W−15Cu(15%Cu)、Mo−30Cu(30%Cu)等が含まれる。
【0043】
熱伝導材料16は、熱分解グラファイト、高温熱分解グラファイト、アニール熱分解グラファイト、圧縮アニール熱分解グラファイト、高整列熱分解グラファイト等を含む、高熱伝導率を有する任意の材料から選択することができる。高熱伝導性コア材料16の面内方向熱伝導率は、200W/m−Kより大きいものとし、熱分解グラファイト材料のそれぞれについて500W/m−Kより大きいものとすることが望ましい。また、本明細書において用いられるとき、「高温熱分解グラファイト」(「TPG」)という用語は、「高配向熱分解グラファイト」(「HOPG」)、「アニール熱分解グラファイト」(「APG」)及び「圧縮アニール熱分解グラファイト」(「CAPG」)等の材料を包含する。1つの実施形態において、高温熱分解グラファイトという用語はまた、かなりのサイズの結晶子からなるグラファイト材料であって、結晶子は、互いに対して高度に整列又は配向されているとともに、良好に整列されているグラフェン層又は好ましい結晶子の高度の配向を有し、面内方向(本明細書においてa−b方向又はx−y方向と称される)熱伝導率が800W/m−Kより大きい、1つの実施形態において1000W/m−Kより大きい、更に別の実施形態において1500W/m−Kより大きいグラファイト材料を指す。
【0044】
「グラファイト」という総称的な用語を本明細書において用いる場合があるが、ヒートシンクは、用途によって、500W/m−Kより小さい通常の面内方向熱伝導率を有する熱分解グラファイト(PG)又は600W/m−Kより大きい面内方向熱伝導率を有する高温熱分解グラファイト(TPG)のどちらかを用いることができる。1つの実施形態において、出発供給原料は、Panasonic社、Momentive Performance Materials社等を含む供給業者から市販されているグラファイトシートである。
【0045】
グラファイト材料は異方性構造を有し、したがって、高方向性の、例えば熱伝導性、導電性及び流体拡散性等である多くの特性を呈するか又は有する。グラファイトは、炭素原子の六角形アレイ又は六角形ネットワークの層面から形成される。六角形に配置される炭素原子のこれらの層面は、実質的に平坦であり、互いに対して実質的に平行及び等距離であるように配向又は整列されている。炭素原子の、実質的に平坦であり平行した等距離のシートすなわち層は、通常グラフェン層又は基底面と称され、ともに連結又は結合され、それらのグループは結晶子に構成される。グラファイトにおける炭素原子の多重層すなわち積層体は、弱いファンデルワールス力によりともに結合される。
【0046】
熱伝導材料のサイズ及び厚さは特に限定されず、特定の目的又は使用意図に関して所望のように選択することができることが理解される。1つの実施形態において、熱伝導材料は、約1mm〜約5mmの厚さを有するグラファイトシートとして設けることができる。別の実施形態において、熱伝導材料は、「グラファイト層」として設けることができる。「グラファイト層」は、マイクロメートル厚さ又はナノメートル厚さの少なくとも1つのグラフェン層を含む、熱分解グラファイト又は高温熱分解グラファイトの単一の劈開面を指す。グラファイトを劈開して、マイクロメートル厚さのグラファイト層及び/又は極薄ナノメートル厚さを得ることは、米国特許出願第11/555,681号において記載されている。この米国特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0047】
上述したように、グラファイト及びグラファイトシートは、層状面が互いに対して実質的に平行及び等距離であるようにシートにおいて整列されている層状面を有する。本高熱伝導率/低CTEの複合材では、グラファイトシートは、層面が金属基板の面に対して実質的に平行に又は金属基板の面に対して実質的に垂直に配向されるように、金属基板間に配置することができる。1つの実施形態において、グラファイトは、層面が基板の面に対して実質的に平行に(本明細書においてa−b方向(orientation)又はx−y方向と称され、これらの用語は交換可能に用いることができる)配向されるように配向される。層面が金属基板の面に対して実質的に平行であるように層面を配向することにより、主に側方方向にある熱伝導経路を有する複合材及び熱伝達アセンブリがもたらされる。図2を参照すると、金属基板12及び14と高熱伝導性層、例えば金属基板間に配置されたグラファイトシート22とを備える複合材20が示されている。グラファイトシートは層面24を含み、層面24は、金属基板12及び14の面に対して平行な方向(すなわちx−y方向)に配向される(この実施形態における層面24の配向を示す目的のために、層面24は縮尺どおりに描かれておらず、層面24のサイズは拡大されている)。x−y方向に配向されたグラファイトを有する複合材は、良好な面内方向熱伝導率を呈する一方、低い厚さ方向熱伝導率を呈する場合がある。低い厚さ方向熱伝導率は、厚さ方向の短い熱経路が通常、熱経路全体に比べて重大なものでないため、性能全体にいかなる重大な影響も有しない場合がある。
【0048】
特定の用途に関して複合材の厚さ方向伝導性の改善が望ましい場合、複合材には、例えば米国特許出願第12/077,412号に記載されているサーマルビア等のサーマルビアを設けることができる。この米国特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0049】
図3及び図4を参照すると、サーマルビアを有する熱伝達複合材20が示されている。熱伝達複合材20は、第1の基板12と、第2の基板14と、基板12及び14間に配置された高熱伝導性層22とを備える。熱伝導層22は、複数のビア26を有する。
【0050】
ビアの形状及び数は、特定の目的又は使用意図に関して所望のように選択することができる。1つの実施形態において、ビアは、熱伝導材料の約0.1体積%〜約40体積%を占めることができる。ビアにより占められる熱伝導材料の体積パーセントは、ビア充填密度とも称することができる。別の実施形態において、ビア充填密度は、約0.1%〜約20%とすることができる。約0.1%〜約20%のビア充填密度を有する熱伝導材料を設けることにより、優れた機械的強度及び熱伝導率の双方を呈する積層体をもたらすことができる。例えば、約0.1%〜約20%のビア充填密度を有する積層体は、300℃における熱応力に打ち勝つように十分な結合強度(例えば、40psiより大きい)及び優れた面内方向熱伝導率(例えば、1000W/m−Kより大きい)を呈することができる。
【0051】
別の実施形態において、高熱伝導性層は、層面が基板の面に対して実質的に垂直に(本明細書において「z方向」と称する)配向されるように基板間に配置される。図5を参照すると、金属基板12及び14と、基板間に配置される熱伝導層32(例えば、グラファイト層)とを備える複合材30が示されている。熱伝導層32は、層面34を有するグラファイト材料を含むことができ、グラファイト層は、層面34が基板12及び14の面に対して垂直に配向されるように基板間に配置される(層面34は縮尺どおりに描かれておらず、層面34のサイズはこの実施形態における層面34の配向を示す目的のために拡大されている)。グラファイト層面が基板の面に対して垂直に配向される構成により、良好な厚さ方向伝導性及び1つの側方方向における優れた拡散がもたらされる。サーマルビアは、グラファイト基底面における高い厚さ方向伝導性及び高引張強度に起因して、そのような構成においては必要でない。
【0052】
本出願人らは、複合材に比較的広範囲のグラファイト充填(体積基準)を与えるとともに、複合材が依然として優れたCTE及びTCを呈することができることを見出している。1つの実施形態において、熱伝導複合材は、約20体積%〜約90体積%のグラファイトを含む。別の実施形態において、熱伝導複合材は、約40体積%〜約80体積%のグラファイトを含む。更に別の実施形態において、熱伝導複合材は、約55体積%〜約87体積%のグラファイトを含む。
【0053】
グラファイトが、層面が基板の面に対して実質的に垂直であるように(すなわちz方向に)配向される複合材に関して、本出願人らは、優れた熱伝導率及び実質的に低い熱膨張率を有する複合材に、比較的高いグラファイト充填量さえも与えることができることを見出している。グラファイトの熱膨張率の異方性に起因して、z方向に配向されるグラファイトを有する複合材の面内方向熱膨張率は、2つの方向において僅かに異なる可能性がある。特に、x方向における熱膨張率及びy方向における熱膨張率は、複合材のグラファイト充填量が上昇するにつれて、互いから相違していくことが予期される(例えば、Mo−30Cu基板間に配置されるTPGを有する複合材の理論的CTEを示す図7を参照)。そのため、材料の濃度が高いほど複合材のCTEが著しく影響を受けることが予期され、より高いグラファイト充填量により複合材のCTEが損なわれることが予期される。しかし、本出願人らは、高弾性係数を有する基板と、z方向に配向されたグラファイトとを有する複合材が、グラファイト高充填量においてさえも、十分に低い、x方向及びy方向において互いと実質的に同様である熱膨張率を呈することを見出している(図7を参照)。
【0054】
複合材料は、約200W/m−K〜約1100W/m−Kの熱伝導率を有することができる。1つの実施形態において、複合材料は、約300W/m−K〜約1000W/m−Kの熱伝導率を有することができる。更に別の実施形態において、複合材料は、約600W/m−K〜約900W/m−Kの熱伝導率を有する。複合材料は、約13ppm/℃以下の熱膨張率を有することができる。1つの実施形態において、複合材料は、約4ppm/℃〜約13ppm/℃の熱膨張率を有する。別の実施形態において、複合材料は、約4ppm/℃〜約9ppm/℃の熱膨張率を有する。更に別の実施形態において、基板は、約4ppm/℃〜約7ppm/℃の熱膨張率を有する。
【0055】
さらに、高熱伝導率/低熱膨張率を有する複合材に、より高い高温熱分解グラファイト充填量を与えることが可能であることにより、比較的低い密度の複合材に、比重の小さいTPG材料(密度は3gm/cm3より低い)をもたらすことができる。1つの実施形態において、複合材は約3gm/cm3〜約8gm/cm3の密度を有することができる。
【0056】
1つの実施形態において、基板は高熱伝導性層に結合される。1つの態様において、基板は、基板/高熱伝導性層接触面において実質的に滑りが存在しないように高熱伝導性層に結合される。
【0057】
複合材は、基板を熱伝導材料に取着する任意の適した方法により形成することができる。1つの実施形態において、積層体は、金属基板を設けることと、それらの金属基板を熱伝導材料の対向表面に積層することとにより形成することができる。基板は、熱伝導材料のそれぞれの表面に隣接して位置決めすることができ、構造体は、基板を熱伝導材料のそれぞれの表面に積層するようにローラーに通される。結合材料を熱伝導材料の表面に設けて、基板を熱伝導材料に結合させることができる。結合材料は、熱伝導材料の表面における別々のエリアに設けることができるか、又は概して表面全体に塗布することができる。ビアを用いる1つの実施形態において、結合材料は、或る量の結合材料が結合プロセス中にビアを実質的に満たすように、ビアの付近に少なくとも設けられる。結合材料を固めるすなわち硬化させるために硬化作業すなわち機能化(activation)作業が必要とされる場合があることが理解される。その場合、熱伝導エポキシ、ろう、はんだ又は他の同様の材料を用いる1つの実施形態において、TPG板の表面に塗布された結合材料を機能化させるように、加熱ステップを実行することができる。次に、硬化した積層体を、その所望の最終寸法にトリミングすることができる。別の実施形態において、熱伝導エポキシ、ろう、はんだ又は他の同様の材料は、金属基板と熱伝導TPGとをともに接合する前に、機能化温度において接合表面に塗布される。別の実施形態において、結合材料は塗布されず、TPGと金属との結合は、拡散結合により高温及び高圧下で形成される。
【0058】
基板を高熱伝導性層(例えば、グラファイト層)に結合することにより、複合材に熱伝導率及び熱膨張率の双方に関して改善した性能がもたらされる。本出願人らは、モリブデン、タングステン、モリブデン合金、タングステン合金等のような低CTE基板を高熱伝導性層に結合することにより、複合材に優れた熱伝導率及び低熱膨張率がもたらされることを見出している。本出願人らは、金属/高熱伝導性層接触面において良好な機械的結合をもたらすことにより、複合材に低い接触熱抵抗、高い厚さ方向熱伝導率がもたらされ、複合材のCTEが低く金属基板のCTEに近似したままであることが可能になることを見出している。本出願人らは、基板/グラファイト接触面において滑りが存在することが、熱伝導率及び熱膨張の双方に関して複合材の熱特性に悪影響を与える可能性があることを見出している。
【0059】
金属基板は、特定の目的又は使用意図に適するように、任意の適した形態又は厚さで設けることができる。1つの実施形態において、金属基板は、金属箔として設けることができる。1つの実施形態において、基板の厚さは約0.001mm〜約2mmとすることができる。
【0060】
ビアを用いる一実施形態において、穴すなわちビアは、最適な結果をもたらすように所望のサイズ及び間隔で、TPG板に予め穿孔される。熱伝導エポキシ、ろう、はんだ又は任意の他の同様の材料は、TPG板の表面に塗布することができ、ビア穴を部分的に又は完全に満たすように用いることができる。ビアの充填密度は、0.01占有面積%未満〜およそ40占有面積%の範囲とすることができる。別の実施形態において、ビア充填密度は約0.1%〜約20%とすることができる。1つの実施形態において、ビアの間隔は、所望の最適な結果に達するように、約0.5mm〜約125mmの範囲とすることができる。別の実施形態において、ビアの間隔は約1mm〜約25mmの範囲とすることができる。その場合、TPG板は少なくとも2つの金属基板間に積層することができる。1つの実施形態において、コーティングの前に、直径が0.1mm〜5mmのサイズであるとともに間隔が1mm〜25mmで離れている穴すなわちビアが、放電機械加工(EDM)、放電研削(EDG)、レーザー及びプラズマを含む、当該技術分野において既知の方法を用いて、薄いグラファイト層を貫いて穿孔される。別の実施形態において、処理の前に、薄いグラファイトストリップにスリットが作製される。
【0061】
更に別の実施形態において、EDM、EDG、レーザー、プラズマ又は当該技術分野において既知の他の方法のうちのいずれかにより、グラファイト層にルーバー、スリット又はビアが形成されるすなわち孔があけられる。1つの実施形態において、ビアは、熱的性能及び機械的性能を最適にするように、直径が0.1mm〜5mmの任意の数値であるとともに1mm〜25mm離して配置することができる。
【0062】
ビアは、積層体に構造的支持を与えるように、材料で満たすことができる。ビアは、接着材料、はんだ付け金属若しくは金属合金、又はろう付け金属若しくは金属合金等の結合材料で満たすことができる。適した接着材料には、例えば、無機接着剤及び有機接着剤が含まれる。例示的な接着材料はエポキシである。1つの実施形態において、結合材料は熱伝導性特性を呈する、すなわち例えば熱伝導エポキシである。
【0063】
1つの実施形態において、高伝導圧力感受性接着剤により裏打ちされたモリブデン、タングステン、モリブデン−銅合金、タングステン−銅合金等の箔テープを、熱分解グラファイト基板に対して押圧し、少なくとも1つのグラフェン膜すなわちグラフェン層を含む熱分解グラファイトを劈開するように剥離する。1つの実施形態において、金属箔は、約5.0μm〜約25μm厚の厚さを有し、カーボン又はパリレンにより裏打ちされ、次に、高伝導圧力感受性接着剤層により裏打ちされる。金属箔テープは、Chomerics社及びLebow Company社を含む供給業者から市販されている。
【0064】
別の実施形態において、基板は化学蒸着、物理蒸着、プラズマ蒸着、電気めっき、無電解めっき、浸漬、噴霧等のようなコーティングプロセスにより設けることができる。極薄熱伝達積層体の場合、基板は、米国特許出願第11/339,338号において特定されているように設けることができる。この米国特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0065】
複合材料及び積層体は、ヒートシンク材料として使用すること及び電子機器において使用することができる。図6を参照すると、電子構造体40が、高熱伝導率/低熱膨張率を有する複合材料(低CTE基板12及び14並びに熱伝導層16を有する)を含むヒートシンク44と熱接触している電子装置42を備えている。ヒートシンクは、特定の目的又は使用意図のために所望のように任意の形態で設けることができる。1つの態様において、例えば、ヒートシンクは、高熱伝導率/低熱膨張率を有する複合材料のシートを備えることができる。本明細書において説明したように、熱伝導層は、層状面が金属基板の面に対してx−y方向又はz方向に配向されるグラファイト材料の層を有することができる。別の態様において、ヒートシンクは、高熱伝導率/低熱膨張率を有する複合材料を含むベース及び複数のフィンにより形成される。電子装置は、例えばエポキシ、接着剤、はんだ、ろう又はクランプ、ネジ、ボルト等のような締結具を含む、特定の目的に所望であるか又は適しているものとすることができるような任意の適した様式でヒートシンクに取着することができる。
【0066】
ヒートシンク設計は、広範な数学的処理、すなわち有限要素解析、流体力学等を必要とする複雑な作業である可能性がある。ヒートシンクを設計する際、熱抵抗、ヒートシンクの面積、ヒートシンクの形状を含む種々の因子、すなわち、フィン付き設計であるのか又はピン設計であるのか、及びピン又はフィンの高さ、ファンポンプが用いられているのか又は液体ポンプが用いられているのか、及びその空気流量/液体流量、ヒートシンク材料、並びにダイにおいて可能である最大温度が考慮に入れられる。
【0067】
熱抵抗は、ヒートシンク設計の重要なパラメーターである。熱抵抗は、材料の厚さに正比例し、材料の熱伝導率及び熱流の表面積に反比例する。本発明は、グラファイト等の伝導材料を含み、CTEが4ppm/℃〜13ppm/℃であるとともに熱伝導率が400W/m−K以上もの高いヒートシンク又は極薄ヒートシンクをもたらすように使用することができる、最適熱抵抗を有する高度な熱管理システムに関する。
【実施例】
【0068】
本発明は、以下の実施例に鑑みて、更に説明及び理解することができる。実施例は、本発明の例示的な態様の目的のために提供され、本明細書において開示される本発明を、材料、プロセスパラメーター、装置(equipment)、条件等のようないずれの特定の態様に関してもいかようにも限定することは意図していない。
【0069】
金属基板と金属基板間に配置されるTPG板とを備える複合材は、TPGの層面が、金属基板の面に対して垂直に配向されるように設けた。金属基板を、70%のモリブデン及び30%の銅を含むモリブデン−銅合金から形成される金属箔とし、複合材を、ろう付け方法を用いて基板をTPG板に積層することにより形成した。20体積%、50体積%、59体積%、77体積%及び87体積%のグラファイト充填量を有する幾つかの積層体を設けた。実際の熱膨張率及び理論的熱膨張率を、複合材の実際の熱伝導率及び理論的熱伝導率とともに求めた(図7及び図8を参照)。図7に示すように、そのような複合材のx方向及びy方向の熱膨張率は高グラファイト充填量において互いから相違していくことが予期された一方、複合材は高TPG充填量においてさえも双方の方向に優れた熱膨張率を有することが見出された。これは、堅い金属基板による複合材の熱膨張率への影響を決定する、モリブデン−銅基板の別段に高い弾性係数(TPGの11GPa〜30GPaに対して240GPa)に起因するものである。TPG−銅複合材についての同様の研究により、複合材の熱膨張率は、銅の比較的低い弾性係数(110GPa)により、50体積%の充填量付近で相違し始めることが明らかとなった。図8に示すように、種々のTPG充填量での測定された厚さ方向熱伝導率は、計算された値と一致し、これは、極低熱接触抵抗が、ろう付け方法の使用により達成されたことを示す。
【0070】
熱伝導複合材及びそのような複合材を備える電子装置の態様が示され、或る特定の実施形態に関して説明されたが、本明細書を読み理解したとき、当業者であれば均等物及び変更形態に想到することができることが理解される。本発明は、全てのそのような均等物及び変形形態を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8