【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
例えば、自動車などの車両には、車室内に各種のスイッチ(スイッチ装置)が設けられている。
図1(〜
図6)に示すように、このようなスイッチ装置100を、
内奥部に光源101およびスイッチ接点部102を有する角筒状のケース103と、
ケース103の手前側の開口部104(
図4)を覆うように設置されて、ケース103の軸線方向105への移動および透過照明が可能なスイッチノブ106と、
ケース103の内部に配設されて、スイッチノブ106の軸線方向105への移動によってスイッチ接点部102を押すスライド部材107と、を有するものとする。
【0013】
ここで、車室内に設けられるスイッチ装置100には、例えば、ハザードランプの点灯・消灯を操作するためのハザードスイッチや、エアコンやオーデイオなどのスイッチや、車両の機能をコントロールするためのスイッチなど各種のものが存在している。
【0014】
光源101には、LEDやその他のものを使用することができる。スイッチ接点部102は、タクトスイッチなどの小型の押し釦スイッチやその他のものを使用することができる。タクトスイッチなどのスイッチ接点部102は、内部に押込み前の状態に復帰させるための復帰バネを有している。光源101およびスイッチ接点部102は、基板108に取付けた状態で、ケース103の奥側の開口部109内などに配置することができる。
【0015】
光源101は、基板108の幅方向の中央部などに設けられて、ケース103の中央部寄りの位置などに配設される。スイッチ接点部102は、基板108の幅方向の側部などに設けられて、ケース103の側面111〜114(
図5または
図6)寄りの位置、例えば、一側面111寄りの位置などに設けられる。基板108の奥側の面には、基板108へ電源や信号を送る配線などを接続するためのターミナルとなる部材(ターミナルブロック115)が設置されている。
【0016】
角筒状のケース103は、上記したように4つの側面111〜114を有すると共に、両端部に開口部104,109を有するものとされている。ケース103の軸線方向105の中間部には、外方へ張出すフランジ部116が設けられる。ケース103は、軸線方向105の全域に渡って均一な大きさや断面形状などとしても良いが、例えば、フランジ部116を境として手前側の部分(ケース手前部117)と奥側の部分(ケース奥部118)との大きさや断面形状などを変えることもできる。この実施例では、フランジ部116の位置に段差部を設けて、ケース手前部117をケース奥部118よりも大きく形成している。
【0017】
スイッチノブ106は、透明な樹脂でできたキャップ状の部材とすることができる。スイッチノブ106は、手前側に押圧面121を有し、押圧面121の周縁部に奥側へ延びる外周壁部122を有している。押圧面121には、スイッチ装置100の操作内容を示す記号や図形や文字などの表示部123を形成することができる。そして、塗装などにより、表示部123を透光性とし(透過照明部)、その他の部分を遮光性とする(遮光部)ことで、光源101を点灯することによって表示部123を透過照明する(表示部123を光らせる)ことができる。
【0018】
スイッチノブ106の外周壁部122よりも内側には、外周壁部122と間隔を有して内周壁部124が設けられている。内周壁部124は、押圧面121の裏面側から軸線方向105へ向けて一体に延設される。内周壁部124は、ケース103の手前側の部分(ケース手前部117)に外嵌される。なお、内周壁部124と外周壁部122とは完全に分離させても良いが、一部を連結したり、一部を共通化したりしても良い。内周壁部124はフランジ部116と、ほぼ同じ外形に形成される。外周壁部122はフランジ部116よりも大きなものとされる。スイッチノブ106の押圧面121の裏面側からはスライド部材107を押すための押込用突起部125が一体に突設される。
【0019】
スイッチノブ106は、ケース103に対し、スライド部材107がスイッチ接点部102を押して止まるまで(またはスイッチ接点部102の押込みストロークの分だけ)軸線方向105へ移動し得るようになっている。スイッチノブ106は、スイッチ接点部102内部に設けた復帰バネの弾性復帰力によって初期位置へ復帰させることができる。
【0020】
スライド部材107は、スイッチノブ106の押圧操作によってスイッチ接点部102を押圧できるのであれば、どのようなものとしても良いが、好ましくは以下のようにする。
【0021】
(1)スライド部材107(
図7、
図8)は、スイッチノブ106から分離されるようにする。スライド部材107は、ケース103の一側面111に沿って延びる本体部131と、本体部131の奥部に位置してスイッチ接点部102を押すスイッチ押圧部132と、本体部131の手前側に位置してスイッチノブ106によって押込まれるノブ当接部133とを有するものとされる。
ノブ当接部133は、スイッチ押圧部132に対して、ケース103の一側面111寄りにオフセットされる(オフセット量134、
図2)。
【0022】
ここで、スライド部材107は、ケース103とは別部品として形成されて、ケース103とは別個に軸線方向105へ移動可能にケース103内に収容される。
【0023】
本体部131は、ケース103の一側面111と平行な板状に形成される。
本体部131は、ケース手前部117とケース奥部118との間に跨って設置されている。
【0024】
スイッチ押圧部132は、本体部131の奥側の端部に形成された、基板108と平行な屈曲部135を有する。屈曲部135の奥側には、必要に応じて、スイッチ接点部102を押すための突起部136を設けることができる。屈曲部135は、ケース103の内方へ向かって屈曲されると共に、スイッチ接点部102をほぼ覆い得る大きさや形状に設けられる。この実施例では、屈曲部135は面状のものとされている(屈曲面部)。屈曲部135や突起部136は、スイッチ接点部102を直接押すことができる位置に形成される。
【0025】
ノブ当接部133は、本体部131の手前側の端部に形成された、一側面111側へ向かって屈曲された別の屈曲部137を有する。別の屈曲部137の手前側には、必要に応じて、別の突起部138を設けることができる。別の屈曲部137は、本体部131に対して部分的に設けることができる。この実施例では、別の屈曲部137は、本体部131の片側に設けられたブロック状のものとされている(ブロック状部)。このブロック状の別の屈曲部137は、ケース手前部117とケース奥部118との段差形状を利用して、ケース手前部117の位置に設けられている。
【0026】
スライド部材107は、奥側の突起部136がスイッチ接点部102に接触され、手前側の別の突起部138が押込用突起部125に接触された状態で、スイッチ接点部102とスイッチノブ106との間に介在されている。
【0027】
オフセットは、ノブ当接部133とスイッチ押圧部132との位置が、押圧面121の面方向(軸線方向105と垂直な方向)にズレていることである。スライド部材107のノブ当接部133およびスイッチ押圧部132は、スライド部材107の本体部131に関して、面直方向の反対側に配置されることで、本体部131と面直な方向にオフセットされている。
【0028】
(2)ケース103と、スライド部材107との間には、スライド部材107の軸線方向105への移動を案内するガイド部141を設けるのが好ましい。
ガイド部141は、本体部131の手前側の部分を案内する第一ガイド142と、本体部131を案内する第二ガイド143(
図5)と、を有するのが好ましい。
【0029】
ここで、ガイド部141は、スライド部材用ガイドとしてケース103の内部などに設けられる。
【0030】
図4に示すように、第一ガイド142は、別の屈曲部137の側面やその反対側に位置する本体部131の手前側の側面と、ケース103の対向する側面112,113との間に形成される。第一ガイド142は、ケース103の対向する側面112,113に形成された軸線方向105へ延びる切込部144と、別の屈曲部137の側面やその反対側に位置する本体部131の手前側の側面から延びて切込部144内へ摺動可能に嵌合されるガイドリブ145などとすることができる。
【0031】
図5に示すように、第二ガイド143は、本体部131の(第一ガイド142以外の部分などの)両側面146と、ケース103の対向する側面112,113との間に形成される。第二ガイド143は、ケース103の対向する側面112,113に形成された軸線方向105へ延びるガイドリブ147やガイド用の凹溝部などとすることができる。ガイドリブ147は、本体部131の両側面146を挟むように一対設けられ、本体部131の両側面146を摺動可能に支持する。
【0032】
第一ガイド142のガイドリブ145は、ケース103の外壁面に達する長さに形成され、第二ガイド143となる本体部131の両側面146は、ケース103の内壁面に達しない長さに形成される。第一ガイド142と第二ガイド143は、両方設けるのが好ましいが、一方のみ(特に、第二ガイド143)設けることも構造的には可能である。
【0033】
(3)ガイド部141は、ケース103の一側面111とスライド部材107の対向面との間に第三ガイド151を有しても良い。
【0034】
ここで、スライド部材107の対向面は、本体部131の一側面111側の面のことである。
【0035】
第三ガイド151は、本体部131の一側面111側の面から突設された軸線方向105へ延びるガイドリブ152と、ケース103の一側面111の内面側に形成された軸線方向105へ延びるガイド凹部153とを有するものなどとしても良い。ガイドリブ152は、本体部131の一側面111側の面の別の屈曲部137を避けた幅方向の反対側の位置に、1本または数本設けることができる。ガイド凹部153は、ガイドリブ152の両側面を挟むように設けられ、ガイドリブ152を摺動可能に支持する。なお、上記とは反対に、ガイドリブ152をケース103に、ガイド凹部153を本体部131に設けることも可能である。
【0036】
(4)
図7に示すように、スライド部材107は、本体部131とスイッチ押圧部132との間に補強リブ161を有するのが好ましい。補強リブ161は、手前側へ進むに従い一側面111の側へ向かう傾斜部162を有するのが好ましい。
【0037】
ここで、補強リブ161は、本体部131(のガイドリブ152とは反対側の面)とスイッチ押圧部132の屈曲部135(の手前側の面)との間に跨るように、ケース103の中央へ向けて設けられる。補強リブ161は、スライド部材107の両側部近傍(のガイド凹部153の先端部よりも本体部131の内側となる位置)に一対設けられる。
【0038】
傾斜部162は、補強リブ161の縁部の全域に亘って設けても良い。これによって、補強リブ161は三角リブとなる。また、傾斜部162は、補強リブ161の手前側の縁部に設けて、補強リブ161の奥側の縁部を軸線方向105と平行に形成しても良い。これによって、補強リブ161は台形状のリブとなり、所要の補強効果を保持しつつリブ幅を小さくすることができる。三角リブと台形状のリブは、どちらか一方のみとすることもできるし、適宜組み合わせて設けることもできる。
【0039】
(5)
図1に示すように、ケース103と、スイッチノブ106との間に、スイッチノブ106を軸線方向105へ移動可能に係止する係止部171が設けられても良い。
図5に示すように、ケース103の外側面と、スイッチノブ106の内側面との間に、スイッチノブ106の軸線方向105への移動を案内する別のガイド部172が設けられても良い。
【0040】
ここで、係止部171は、ケース手前部117とスイッチノブ106の内周壁部124との間に設けられる。係止部171は、ケース手前部117に設けられた係止爪173と、スイッチノブ106の内周壁部124に形成された係止穴174とを有しても良い。係止穴174は、スイッチノブ106が軸線方向105へ移動できるように、スイッチノブ106の移動量と略同じかそれよりも長く軸線方向105へ延びる長穴などとされる。スイッチノブ106の外周壁部122には、係止穴174と対向する位置に、係止穴を外部に露出させるための切欠部175などを設けても良い。係止部171は、ケース103の一側面111と他側面114とに対してそれぞれ設けることができる。
【0041】
そして、別のガイド部172は、スイッチノブ用ガイドとして設けられる。別のガイド部172は、スイッチノブ106の内周壁部124の内面側に設けられた軸線方向105へ延びるガイドリブ176と、ケース手前部117の各側面111〜114の外側に設けられた軸線方向105へ延びるガイド凹部177とを有するものなどとしても良い。ガイドリブ176は、ガイド凹部177に摺動可能に嵌合される。別のガイド部172は、矩形状をしたケース103の各面に対してそれぞれ設けるのが、押込み時のスイッチノブ106の傾きを抑制する上で好ましい。ケース103の各面に設けられる別のガイド部172は、対向面に設けられる別のガイド部172と同じ位置に設けても良いが、互いに位置をズラして設けるのが、スイッチノブ106の傾きをより少なくする上で好ましい。なお、上記とは反対に、ガイドリブ176をケース103に、ガイド凹部177を内周壁部124に設けることも可能である。
【0042】
なお、その他の構成として、ケース奥部118には、車体側パネルに対して取付けるための係止爪部181を設けても良い(
図1)。係止爪部181は、ケース103の一側面111と他側面114とに対してそれぞれ設けることができる。少なくとも、ケース奥部118には、一側面111のコーナー部分に一方の係止爪部181を取り囲むようにU字状のリブ182(
図3)を形成することができる。U字状のリブ182は、フランジ部116を含むように形成するのが好ましい。また、ケース奥部118には、他側面114のコーナー部分に、C面状の切欠部183(
図4)を設けることができる。これらのU字状のリブ182やC面状の切欠部183は、ケース103の剛性を高めると共に、車体側パネルに対する逆組み(正しい部品の向き違いでの組付け)を防止するために有効である。
【0043】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0044】
スイッチ装置100は、スイッチノブ106を押すことで、スライド部材107を介してスイッチ接点部102が押されるようになっている。そして、光源101を点灯することにより、スイッチノブ106の表示部123を透過照明できるようになっている。
【0045】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
(効果1)スライド部材107をケース103の一側面111に沿って延びる形状にした。これにより、スライド部材107の本体部131をケース103の一側面111と平行な板状にできるため、ケース103の残りの三面がスライド部材107で覆われなくなるので、スイッチノブ106に対する照明範囲を拡大することができる。よって、照明範囲を所要の大きさに確保しつつスイッチ装置100(のスイッチノブ106を除いたユニット部分)の小型化を図ることが可能になる。この際、スライド部材107の本体部131が板状となるので、四角い照明範囲を確保することができる。
【0047】
スライド部材107のノブ当接部133を、スイッチ押圧部132に対してオフセットさせた。これにより、ノブ当接部133が光源101からの光の妨げになり難くなるので、照明範囲を更に拡大することができる。
【0048】
スライド部材107を、スイッチノブ106から分離した。これにより、スライド部材107の機能をスイッチ接点部102の操作のみに特化できる。よって、スライド部材107を簡略化できる。
【0049】
スイッチノブ106からスライド部材107を分離したことで、スイッチノブ106とケース103とが一対一の関係になり、スライド部材107を考慮する必要がなくなるため、スイッチノブ106とケース103との間のガタつき精度の設定や調整が容易になる。また、スイッチノブ106からスライド部材107を分離したことで、スイッチ装置100は、スイッチノブ106を最後に組み立てられるようになる。また、スイッチノブ106が付いていないスイッチ装置100(スイッチ装置100のユニット部分)を予め製造しておき、このユニット部分に仕様違いのスイッチノブ106を組み付けることで、様々なスイッチ装置100を作り分けることなどが可能になる。
【0050】
(効果2)スライド部材107のためのガイド部141を第一ガイド142と第二ガイド143に分けて設けても良い。これにより、ガイド部141全体のガイド長を長くして、スライド部材107の傾きを抑制することができる。
【0051】
ノブ当接部133とスイッチ押圧部132とがオフセットされているスライド部材107は、スイッチノブ106を押す力の偏り(偏荷重)によって面外方向などへの倒れが生じるおそれがあるが、ガイド部141を第一ガイド142と第二ガイド143に分けてスライド部材107の傾きを抑制することで、偏荷重によるスライド部材107の倒れを防止できる。よって、スイッチノブ106のスタック(引っかかって動き難く成ること)や、スイッチ接点部102に対するスイッチ押圧部132の位置ズレを防止できる。
【0052】
ガイド部141を第一ガイド142と第二ガイド143に分けたことで、スライド部材107やガイド部141のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0053】
(効果3)ガイド部141は、ケース103の一側面111とスライド部材107の対向面との間に第三ガイド151を有しても良い。これにより、スライド部材107の横倒れを防止することができる。
【0054】
(効果4)スライド部材107は、本体部131とスイッチ押圧部132との間に補強リブ161を有しても良い。これにより、スライド部材107の本体部131に対してスイッチ押圧部132を補強することができる。そのため、スイッチ押圧部132をオフセットさせて設けても、スイッチ押圧部132で支障なくスイッチ接点部102を押すことができる。
【0055】
補強リブ161は、手前側へ進むに従いケース103の一側面111の側へ向かう傾斜部162を有しても良い。これにより、補強リブ161が光源101からの光の妨げになるのを傾斜部162で回避し、照明範囲が狭まるのを防止できる。
【0056】
(効果5)ケース103とスイッチノブ106との間に係止部171を設けても良い。これにより、係止部171によって簡単にケース103にスイッチノブ106を係止させることができると共に、スイッチノブ106の着脱が容易になる。よって、スイッチノブ106のリペアや差し替えなどをやり易くできる。
【0057】
ケース103の外側面とスイッチノブ106の内側面との間に別のガイド部172を設けても良い。これにより、スイッチノブ106の押し込みを案内するための別のガイド部172を、ケース103の内側からなくせるので、その分、照明範囲を拡大することができる。よって、スイッチ装置100(のユニット部分)の小型化を図ることができる。
【0058】
ケース103の外側面にスイッチノブ106を案内するための別のガイド部172を設けたことで、別のガイド部172への潤滑油の塗布が容易になると共に、別のガイド部172への潤滑油の塗布を最後の段階(スイッチノブ106を取付ける時)で行うことができる。
【0059】
別のガイド部172がスイッチノブ106の内側面に存在することで、スイッチノブ106に塗装によって表示部123などを形成する際に、スイッチノブ106にマスキングを行う必要をなくすことができる。