(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱硬化性樹脂の含有割合が54〜63質量%であり、前記プリプレグ1枚当たりの平均厚みが0.05〜3.0mmになるように熱圧プレス成形する請求項6に記載の断熱材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の断熱材は、耐熱性ペーパーに熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形されてなる断熱材であって、繊維状物32〜64質量%と熱硬化性樹脂36〜68質量%とを含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーとしては、耐熱性を有する無機ペーパーまたは有機ペーパーを挙げることができる。耐熱性ペーパーが耐熱性を有する無機ペーパーである場合、当該無機ペーパーは繊維状物として無機繊維を含み、耐熱性ペーパーが耐熱性を有する有機ペーパーである場合、当該有機ペーパーは繊維状物として有機繊維を含む。
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーとしては、耐熱性を有する無機ペーパーであることが好ましい。耐熱性を有する無機ペーパーは、バルク状の無機繊維に適宜少量の有機バインダーを加え、抄造機により紙状に加工されるもので、柔軟性に富み、簡単に折り曲げ使用することができるものである。
【0014】
耐熱性を有する無機ペーパーを構成する無機繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、炭化珪素繊維、ロックウール等を挙げることができる。
【0015】
耐熱性を有する無機ペーパーを構成する有機バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
なお、耐熱性を有する無機ペーパーは、上記有機バインダーとして熱硬化性樹脂を含む場合もあるが、この場合、断熱材(またはプリプレグ)を構成する熱硬化性樹脂には、上記有機バインダーも含まれるものとする。
【0016】
本発明の断熱材において、耐熱性を有する無機ペーパーは、無機繊維の含有割合が45〜100質量%であるものが好ましく、74〜94質量%であるものがより好ましく、82〜88質量%であるものがさらに好ましい。
本発明の断熱材において、耐熱性を有する無機ペーパーは、有機バインダーの含有割合が0〜55質量%であるものが好ましく、6〜26質量%であるものがより好ましく、12〜18質量%であるものがさらに好ましい。
【0017】
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーの平均厚さは、0.2〜6mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましく、0.71〜0.85mmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、耐熱性ペーパーの平均厚さは、ノギス又はマイクロメータで任意の8箇所の厚みを測定したときの算術平均値を意味する。
【0018】
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーの坪量は、20〜430g/m
2であることが好ましく、50〜350g/m
2であることがより好ましく、100〜120g/m
2であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、耐熱性ペーパーの坪量(g/m
2)は、JIS P 8124の規定に基づいて算出される値を意味するものとする。
【0019】
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーとして、具体的には、例えば、ニチアス(株)製ファインフレックス(登録商標)1300ペーパーT、オリベスト(株)製RAP−110C等を挙げることができる。
【0020】
本発明の断熱材は、耐熱性ペーパーを基材とするプリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形されてなるものであり、上記プリプレグが厚さの薄い耐熱性ペーパーを基材とするものであることから、熱硬化性樹脂が均質に分散されたプリプレグが、熱圧成形時に熱ムラ(加熱温度のバラツキ)の発生を抑制しつつプレス成形されてなるものであると考えられる。
このために、本発明の断熱材は、同量の繊維状物および熱硬化性樹脂を含有する断熱材に比較して、精度の高い良好な加工性を有するとともに、優れた曲げ強度、靱性、厚さ精度等を発揮し得ると考えられる。
【0021】
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーに含浸される熱硬化性樹脂は、特に制限されない。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂バインダーから選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0022】
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーに含浸される熱硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂バインダーを硬化剤や硬化促進剤の存在下に熱硬化してなるものである場合、熱硬化樹脂には、硬化剤や硬化促進剤も含まれるものとする。
硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類や、フェノール樹脂硬化剤、有機過酸化物等の過酸化物等を挙げることができる。
硬化促進剤としては、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩などから選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0023】
本発明の断熱材において、プリプレグは、耐熱性ペーパーに熱硬化性樹脂を含浸してなるものである。
本発明の断熱材において、断熱材の形成材料となるプリプレグは、繊維状物を32〜64質量%含むものであることが好ましく、37〜46質量%含むものであることがより好ましく、40〜44質量%含むものであることがさらに好ましい。
また、本発明の断熱材において、断熱材の形成材料となるプリプレグは、熱硬化性樹脂を、36〜68質量%含むものであることが好ましく、54〜63質量%含むものであることがより好ましく、56〜60質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の断熱材において、プリプレグは、粉末状の無機充填材を含むものであってもよい。
上記無機充填材としては、シリカ、炭酸カルシウム等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明の断熱材において、プリプレグが無機充填材を含むものであることにより、補強効果を発揮したり、密度、熱伝導率、クリープ性を容易に所望範囲に制御することができる。
【0025】
本発明の断熱材において、断熱材の形成材料となるプリプレグは、無機充填材を0〜32質量%含むものであることが好ましく、5〜20質量%含むものであることがより好ましく、7〜15質量%含むものであることがさらに好ましい。
【0026】
上記無機充填材は、プリプレグの作製時に、熱硬化性樹脂とともに耐熱性ペーパーに含浸させることにより、プリプレグ中に容易に含有させることができる。
【0027】
本発明の断熱材において、プリプレグの平均厚みは、0.2〜6mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましく、0.71〜0.85mmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、プリプレグの平均厚みは、ノギス又はマイクロメータで任意の8箇所の厚みを測定したときの算術平均値を意味する。
【0028】
本発明の断熱材において、プリプレグの坪量は、30〜690g/m
2であることが好ましく、50〜550g/m
2であることがより好ましく、210〜230g/m
2であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、プリプレグの坪量(g/m
2)は、100cm四方の正方形状のプリプレグの質量(g)から算出される値を意味するものとする。
【0029】
本発明の断熱材において、プリプレグは、例えば、熱硬化性樹脂(および必要に応じさらに無機充填材等)を満たした含浸容器中に所定時間耐熱性ペーパーを浸漬することにより作製することができる。
【0030】
図1は、本発明の断熱材の構成材料となるプリプレグの製造形態例を示す模式図である。
図1に示す例においては、耐熱性ペーパー1を巻回した状態で保持するホルダーHから耐熱性ペーパー1をローラー等により引き出しつつ、熱硬化性樹脂2(および必要に応じさらに無機充填材等)を満たした含浸槽Tに浸漬して所定量の熱硬化性樹脂2(および必要に応じさらに無機充填材等)を含浸させ、その後、乾燥機Dで乾燥した後に、切断機Cで所定サイズに切断することにより、目的とするプリプレグ3を製造することができる。
【0031】
本発明の断熱材は、プリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形されてなるものであり、上記プリプレグが厚みの薄い耐熱性ペーパーを基材とするものであることから、プリプレグも厚みが薄く熱硬化性樹脂が均質に分散されたものとなり、このために、本発明の断熱材は、以下に記述する熱圧成形時に熱ムラ(加熱温度のバラツキ)を抑制しつつ均一にプレス成形されてなるものであると考えられる。
上記理由により、本発明の断熱材は、同量の繊維状物および熱硬化性樹脂を含有する断熱材に比較して、良好な加工性を有するとともに、優れた曲げ強度、靱性、加工精度および厚さ精度等を発揮し得ると考えられる。
【0032】
本発明の断熱材は、上記プリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形されてなるものである。
本発明の断熱材において、熱圧プレス成形されたプリプレグの積層枚数は特に制限されないが、本発明の断熱材は、厚さ10mmあたり、3〜200枚のプリプレグが積層された状態で熱圧成形されてなるものであることが適当であり、10〜200枚のプリプレグが積層された状態で熱圧成形されてなるものであることがより適当であり、30〜100枚のプリプレグが積層された状態で熱圧成形されてなるものであることがさらに適当であり、30〜80枚のプリプレグが積層された状態で熱圧成形されてなるものであることが一層適当であり、40〜80枚のプリプレグが積層された状態で熱圧成形されてなるものであることがより一層適当であり、40〜60枚のプリプレグが積層された状態で熱圧成形されてなるものであることがより特に適当である。
【0033】
本発明の断熱材は、繊維状物を、32〜64質量%含むものであり、37〜46質量%含むものであることが好ましく、40〜44量%含むものであることがさらに好ましい。
本発明の断熱材において、耐熱性ペーパーが耐熱性を有する無機ペーパーである場合には、上記繊維状物は、当該無機ペーパーを構成する無機繊維等の繊維に相当し、耐熱性ペーパーが耐熱性を有する有機ペーパーである場合には、上記繊維状物は、当該有機ペーパーを構成する有機繊維等の繊維に相当する。
本発明の断熱材は、繊維状物を上記割合で含むものであることにより、良好な加工性、耐熱性、機械的強度、靱性等を発揮することができる。
【0034】
本発明の断熱材は、熱硬化性樹脂を、36〜68質量%含むものであり、54〜63質量%含むものであることが好ましく、56〜60質量%含むものであることがさらに好ましい。
本発明の断熱材において、熱硬化性樹脂は、繊維状物のバインダーとして機能するものであり、熱硬化性樹脂を上記範囲で含有することにより、耐熱性ペーパーに由来する繊維状物を好適に結着して、所望の耐熱性、機械的強度、靱性、厚さ精度等を発揮することができる。
【0035】
本発明の断熱材は、上記プリプレグ1枚当たりの平均厚みが、0.05〜3.0mmになるまで熱圧プレス成形されてなるものであることが好ましく、0.05〜0.28mmになるまで熱圧プレス成形されてなるものであることがより好ましく、0.18〜0.25mmになるまで熱圧プレス成形されてなるものであることがさらに好ましく、0.20〜0.23mmになるまで熱圧プレス成形されてなるものであることが一層好ましい。
本発明の断熱材は、熱圧プレス成形後のプリプレグ1枚当たりの平均厚みが上記範囲内にあることにより、プリプレグを所望厚みまで熱圧成形して、所定の耐熱性、機械的強度、靱性、厚さ精度等を発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記熱圧成形後におけるプリプレグ1枚当たりの平均厚みは、ノギス又はマイクロメータで断熱材の任意の8箇所の厚みを測定して算術平均値T(mm)を求めるとともに、断熱材の断面を観察して積層数nを求めた上で、算出式T/nにより求めることができる。
【0036】
また、本発明の断熱材は、熱圧成形前後におけるプリプレグの圧縮率が、15〜50%であるものが適当であり、15〜33%であるものがより適当であり、21〜29%であるものがさらに適当であり、22〜27%であるものが一層適当である。
本発明の断熱材は、熱圧プレス成形前後におけるプリプレグの圧縮率が上記範囲内にあることにより、プリプレグを所望厚みまで熱圧成形して、所定の耐熱性、機械的強度、靱性、厚さ精度等を容易に発揮することができる。
【0037】
なお、本出願書類において、上記熱圧成形前後におけるプリプレグの圧縮率は、下記式により算出された値を意味するものとする。
圧縮率(%)=(熱圧成形後のプリプレグ1枚あたりの平均厚み(mm)/熱圧成形に供したプリプレグ1枚の平均厚み(mm))×100
【0038】
本発明の断熱材は、密度が、800〜1650kg/m
3であるものが好ましく、900〜1250kg/m
3であるものがより好ましく、1000〜1100kg/m
3であるものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、断熱材の密度は、縦120mm×横40mm×得られた断熱材の厚さに切り出した試験片の寸法(m
3)および重量(kg)から求めた値を意味する。
【0039】
本発明の断熱材は、空気雰囲気下、200℃で24時間加熱したときに割れや欠けを生じない耐熱性を有するものであることが好ましく、260℃で24時間加熱したときに割れや欠けを生じない耐熱性を有するものであることがより好ましい。
【0040】
本発明の断熱材は、熱伝導率が、0.25W/(m・K)以下であるものが好ましく、0.18W/(m・K)以下であるものがより好ましく、0.12W/(m・K)であるものがさらに好ましい。
本発明の断熱材は、熱伝導率が上記範囲内にあるものであることにより、所望の断熱性を発揮することができる。
【0041】
なお、本出願書類において、断熱材の熱伝導率は、JIS A 1412−2:1999第2部 熱流計法HFM法で測定した値を意味するものとする。
【0042】
本発明の断熱材は、曲げ強度が、30MPa以上であるものが好ましく、45MPa以上であるものがより好ましく、70MPa以上であるものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、曲げ強度は、JIS C2210−1975の繊維強化樹脂の曲げ試験に基づいて測定した値を意味する。
【0043】
本発明の断熱材は、プリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形されてなるものであり、上記プリプレグが厚みの薄い耐熱性ペーパーを基材とするものであることから、プリプレグも厚みが薄く熱硬化性樹脂が均質に分散されたものとなり、このために、本発明の断熱材は、熱圧成形時に熱ムラ(加熱温度のバラツキ)を抑制しつつ均一にプレス成形されてなるものであると考えられる。
上記理由により、本発明の断熱材は、同量の繊維状物および熱硬化性樹脂を含有する断熱材に比較して、優れた曲げ強度発揮し得ると考えられる。
【0044】
本発明の断熱材は、JIS K 6911により測定したときのシャルピー衝撃値が10kJ/m
2以上であるものが好ましく、25kJ/m
2以上であるものがより好ましく、29kJ/m
2以上であるものがさらに好ましい。
シャルピー衝撃値が上記範囲内にあることにより、十分な靱性を発揮することができる。
【0045】
本発明の断熱材は、ノギスにより任意の8箇所の厚さを測定したときに、厚さの差が±5mm以内である厚さ精度を有するものが好ましく、厚さの差が±3mm以内である厚さ精度を有するものがより好ましく、厚さの差が±1mm以内である厚さ精度を有するものがさらに好ましく、厚さの差が±0.1mm以内である厚さ精度を有するものが一層好ましく、厚さの差が±0.05mm以内である厚さ精度を有するものがより一層好ましい。
【0046】
本発明の断熱材は、プリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形されてなるものであり、上記プリプレグが厚みの薄い耐熱性ペーパーを基材とするものであることから、プリプレグも厚みが薄く熱硬化性樹脂が均質に分散されたものとなり、このために、本発明の断熱材は、熱圧成形時に熱ムラ(加熱温度のバラツキ)を抑制しつつ均一にプレス成形されてなるものであると考えられる。
上記理由により、本発明の断熱材は、マット状物をプレス成形してなる断熱材に比較して、加工時の精度に優れるとともに、優れた厚さ精度を発揮し得ると考えられる。
【0047】
本発明の断熱材は、良好な加工性を有しつつ、耐熱性、機械的強度、靱性等に優れ、加工精度および厚さ精度に優れた断熱材を提供することができる。
【0048】
次に、本発明の断熱材の製造方法について説明する。
本発明の断熱材の製造方法は、耐熱性ペーパーに熱硬化性樹脂を含浸してなる、繊維状物32〜64質量%と熱硬化性樹脂36〜68質量%とを含み、平均厚みが0.2〜6mmであるプリプレグを複数枚積層し、前記熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度雰囲気下、熱圧プレス成形することを特徴とするものである。
【0049】
本発明の製造方法において、耐熱性ペーパー、熱硬化性樹脂、プリプレグの詳細は、上述したとおりである。
【0050】
本発明の製造方法において、熱圧プレス成形に供するプリプレグの積層数(得られる断熱材を構成するプリプレグの枚数)は特に制限されないが、得ようとする断熱材の厚さ10mmあたり、3〜200枚であることが好ましく、10〜200枚であることがより好ましく、30〜100枚であることがさらに好ましく、30〜80枚であることが一層好ましく、40〜80枚であることがより一層好ましく、40〜60枚であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の製造方法は、プリプレグ1枚当たりの平均厚みが、0.05〜3.0mmになるまで熱圧プレス成形するものであることが好ましく、0.05〜0.28mmになるまで熱圧プレス成形するものであることがより好ましく、0.18〜0.25mmになるまで熱圧プレス成形することがさらに好ましく、0.20〜0.23mmになるまで熱圧プレス成形することが一層好ましい。
【0052】
本発明の製造方法は、成形後のプリプレグ1枚当たりの平均厚みが上記範囲内になるように熱圧成形することにより、加工性に優れ、所望の耐熱性、機械的強度、靱性、厚さ精度等を発揮する断熱材を作製することができる。
【0053】
また、本発明の製造方法においては、熱圧成形前後におけるプリプレグの圧縮率が、15〜50%になるように熱圧プレス成形することが好ましく、15〜33%になるように熱圧プレス成形することがより好ましく、21〜29%になるように熱圧プレス成形することがさらに好ましく、22〜27%になるように熱圧プレス成形することが一層好ましい。
本発明の製造方法においては、成形前後におけるプリプレグの圧縮率が上記範囲内になるように熱圧プレス処理することにより、プリプレグを所望厚みまで熱圧成形して、加工性に優れ、所望の耐熱性、機械的強度、靱性、厚さ精度等を容易に発揮することができる。
【0054】
本発明の製造方法において、熱圧プレス成形時の温度は、プリプレグを構成する熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上の温度であり、例えば、100〜200℃であることが好ましく、130〜180℃であることがより好ましく、145〜155℃であることがさらに好ましい。
【0055】
本発明の製造方法において、熱圧プレス成形時の加圧時間は、プリプレグを構成する熱硬化性樹脂が熱硬化し得る時間であれば特に制限されず、例えば、30分間以上であることが好ましく、60分間以上であることがより好ましく、120分間以上であることがさらに好ましい。
【0056】
本発明の製造方法においては、上記熱圧プレス成形後して得られた熱圧成形物を、必要に応じて更に機械加工してもよく、また、必要に応じて、適宜所定温度に加熱してアフターキュアを行ってもよい。
【0057】
図2は、本発明の製造方法の一形態例を示す模式図である。
図2に示す例においては、耐熱性ペーパーに熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグ3を所望枚数枚積層して積層物Lを5個形成し、得られた5個のプリプレグの積層物Lを、各積層物間にスペーサーを介した状態でプレス機Pのプレス板間に積み重ねた上で、プリプレグを構成する熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上の温度条件下、プリプレグ1枚当たりの平均厚みが所望厚みになるように加圧して熱圧プレスすることにより、目的とする断熱材4を得ることができる。
図2に示す態様においては、上記積層物Lを5個積み重ねた状態で熱圧プレス成形しているが、積層物Lは、通常、1〜20個程度積み重ねた状態で熱圧プレス成形することができる。
【0058】
本発明の製造方法においては、このようにして断熱材を作製することができる。
本発明の製造方法で得られる断熱材の詳細は、本発明の断熱材の説明で述べたとおりである。
【0059】
本発明の製造方法は、プリプレグを複数枚積層した状態で熱圧プレス成形するものであり、上記プリプレグが厚さの薄い耐熱性ペーパーを基材とするものであることから、プリプレグ内に熱硬化性樹脂を均質に分散させることができるとともに、熱圧成形時における熱ムラ(加熱温度のバラツキ)の発生を抑制しつつプレス成形することができると考えられる。
このために、本発明の製造方法によれば、同量の繊維状物および熱硬化性樹脂を含有する断熱材に比較して、良好な加工性を有し、優れた曲げ強度、靱性、加工精度および厚さ精度等を発揮し得る断熱材を製造し得ると考えられる。
【0060】
本発明によれば、良好な加工性を有しつつ、耐熱性、機械的強度、靱性等に優れ、加工精度および厚さ精度に優れた断熱材を提供するとともに、該断熱材を簡便に製造する方法を提供することができる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0062】
(実施例1)
(1)プリプレグの作製
図1に示す装置を用い、ホルダーHに巻き付けた耐熱性ペーパー1であるガラス繊維製ペーパー(平均厚さ0.78mm、坪量110g/m
2)をローラーで引き出しつつ、熱硬化性樹脂2であるレゾール型フェノール樹脂(熱硬化温度150℃)を満たした含浸槽Tに浸漬した後、乾燥機Dで60〜130℃で乾燥し、次いで切断機Cで切断することにより、ガラス繊維製ペーパーに由来する繊維状物42質量%、レゾール型フェノール樹脂50質量%を含有する、平均厚さ0.84mm、坪量220g/m
2の縦2110mm、横1050mmのプリプレグ3を複数枚作製した。
【0063】
(2)断熱材の作製
(1)で得たプリプレグ3を57枚積層した積層物Lを5個作製し、得られた5個の積層物Lを、
図2に示すように、各積層物間にスペーサーを介した状態でプレス機Pのプレス板間に積み重ねた上で、プリプレグ1枚当たりの平均厚みが0.21mmになるように、150℃の温度条件下、2時間熱圧プレス成形することにより、縦2070mm、横1020mm、厚さ12mmの断熱材4を得た。
得られた断熱材5は、ガラス繊維製ペーパーに由来する繊維状物42質量%、レゾール型フェノール樹脂50質量%を含有し、密度が1050kg/m
3、空気雰囲気下、200℃で24時間加熱したときに割れや欠けを生じない耐熱性を有し、熱伝導率が0.12W/(m・K)、曲げ強度が 60MPa、JIS K 6911により測定したときのシャルピー衝撃値が29kJ/m
2であり、ノギスにより任意の8箇所の厚さを測定したときに、厚さの差が0.2mm以内である厚さ精度を有し、切削加工したときに、割れや欠け等を生じることなく容易に加工し得る優れた加工性や加工精度を有するものであった。
【0064】
(実施例2)
実施例1(2)の断熱材の作製工程において、プリプレグ3を105枚積層した積層物Lを5個作製し、プリプレグ1枚当たりの平均厚みが0.21mmになるように、150℃の温度条件下、2時間熱圧プレス成形した以外は、実施例1(2)と同様に熱圧プレス成形することにより、縦2070mm、横1020mm、厚さ22mmの断熱材4を得た。
得られた断熱材5は、ガラス繊維製ペーパーに由来する繊維状物42質量%、レゾール型フェノール樹脂50質量%を含有し、密度が1050kg/m
3、空気雰囲気下、200℃で24時間加熱したときに割れや欠けを生じない耐熱性を有し、熱伝導率が0.12W/(m・K)、曲げ強度が 60MPa、JIS K 6911により測定したときのシャルピー衝撃値が29kJ/m
2であり、ノギスにより任意の8箇所の厚さを測定したときに、厚さの差が0.2mm以内である厚さ精度を有し、切削加工したときに、割れや欠け等を生じることなく容易に加工し得る優れた加工性や加工精度を有するものであった。
【0065】
(実施例3)
実施例1(2)の断熱材の作製工程において、プリプレグ3を133枚積層した積層物Lを5個作製し、プリプレグ1枚当たりの平均厚みが0.21mmになるように、150℃の温度条件下、2時間熱圧プレス成形した以外は、実施例1(2)と同様に熱圧プレス成形することにより、縦2070mm、横1020mm、厚さ28mmの断熱材4を得た。
得られた断熱材5は、ガラス繊維製ペーパーに由来する繊維状物42質量%、レゾール型フェノール樹脂50質量%を含有し、密度が1050kg/m
3、空気雰囲気下、200℃で24時間加熱したときに割れや欠けを生じない耐熱性を有し、熱伝導率が0.12W/(m・K)、曲げ強度が 60MPa、JIS K 6911により測定したときのシャルピー衝撃値が29kJ/m
2であり、ノギスにより任意の8箇所の厚さを測定したときに、厚さの差が0.3mm以内である厚さ精度を有し、切削加工したときに、割れや欠け等を生じることなく容易に加工し得る優れた加工性や加工精度を有するものであった。
【0066】
実施例1〜実施例3で得られた断熱材は、耐熱性ペーパーに熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグを複数枚積層した状態で熱圧成形されてなるものであり、耐熱性ペーパーに由来する繊維状物と熱硬化性樹脂を所定割合で含有するものであることから、熱硬化性樹脂中に繊維状物を均質に含有し、良好な加工性を有しつつ、耐熱性、機械的強度、靱性、加工精度および厚さ精度等に優れるものであることが分かる。