特許第6602564号(P6602564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6602564生地体、この生地体を用いた衣類、その製造方法及びこの生地体を用いた構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602564
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】生地体、この生地体を用いた衣類、その製造方法及びこの生地体を用いた構造体
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20191028BHJP
   A41D 31/14 20190101ALI20191028BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   A41D13/002
   A41D31/14
   A41D27/28 B
   A41D27/28 D
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-119566(P2015-119566)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-2441(P2017-2441A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】515161076
【氏名又は名称】宮國 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】宮國 毅
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144487(JP,A)
【文献】 実開昭61−059614(JP,U)
【文献】 実開昭55−042060(JP,U)
【文献】 米国特許第03228821(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 27/28
A41D 31/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、
柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体と
該通風体を複数有し、同複数の通風体が、互いに前記複数の通気口のいずれか一つが設けられている側の一部を他の通風体のいずれか一つの通気口に通気が可能な隙間を以て差し込むように配置された通風路とを備える
生地体。
【請求項2】
前記通風路が複数並設された
請求項1に記載の生地体。
【請求項3】
柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体と、該通風体を複数有し、同複数の通風体が、互いに前記複数の通気口のいずれか一つが設けられている側の一部を他の通風体のいずれか一つの通気口に通気が可能な隙間を以て差し込むように配置された通風路とを有する生地体を、構成部の全部または一部に備える
衣類。
【請求項4】
柔軟性を有し、衣類を構成する基布に1または複数の開口部を設ける工程と、
柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体を設ける工程と、
該通風体を複数有し、同複数の通風体が、互いに前記複数の通気口のいずれか一つが設けられている側の一部を他の通風体のいずれか一つの通気口に通気が可能な隙間を以て差し込むように配置された通風路を設ける工程とを備える
衣類の製造方法。
【請求項5】
柔軟性を有し、1または複数の開口部が設けられた基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体を複数有し、同複数の通風体が、互いに前記複数の通気口のいずれか一つが設けられている側の一部を他の通風体のいずれか一つの通気口に通気が可能な隙間を以て差し込むように配置された通風路を有する生地体を形成する工程と、
前記生地体を裁断する工程と、
前記裁断された生地体を縫い合わせて衣類を形成する工程とを備える
衣類の製造方法。
【請求項6】
柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体と、該通風体を複数有し、同複数の通風体が、互いに前記複数の通気口のいずれか一つが設けられている側の一部を他の通風体のいずれか一つの通気口に通気が可能な隙間を以て差し込むように配置された通風路と有する生地体を、構成部の全部または一部に備える
構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生地体、この生地体を用いた衣類、その製造方法及びこの生地体を用いた構造体に関する。詳しくは、例えば衣類に用いられる生地体を、換気をしやすい形状に形成することで、衣類の表面及び内部に空気の流れを生じさせ、かつ複数の布を重ね合わせて取り付けることで直射日光による肌へのダメージをやわらげる生地体、この生地体を用いた衣類、その製造方法及びこの生地体を用いた構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類は、人間の身体に合わせて作られているため、着用時の快適さが要求され、特に通気性の点において重要視される。例えば、夏期に着用する機会の多いTシャツやポロシャツなどは、速乾性のある素材だけでなく衣類内部に空気を取り込みやすく、かつ排気しやすい構造のものが求められている。
【0003】
Tシャツやポロシャツなどは、生地自体を通る通気に加え、衿口、両袖口および裾口から通気(換気)を行うようになっているが、着用したときの身体との隙間が比較的小さく、通気効率がよいとはいえない。
【0004】
その対策として、衿口、両袖口および裾口以外にも通気口を設けたものがあり、その一例として特許文献1のベンチレーション付きポロシャツがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登実用新案登録第3106813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベンチレーション付きポロシャツは、通気性は改善されている(文献1における主張)けれども、Tシャツやポロシャツ自体が直射日光にさらされるため熱を持ち、肩口など熱を持った部分に肌が触れることで、より強い暑さを感じやすい点、また、紫外線が強いと、Tシャツやポロシャツの生地を透過しやすく、結局、Tシャツやポロシャツで覆われている部分も日焼けをしてしまう点、など、Tシャツやポロシャツの従来からある根本的な課題が依然として解消できていない。
【0007】
このため、長袖の衣類を着るなどして肌の露出を抑えることで日焼けを防いだり、重ね着をすることで直射日光による肌へのダメージを和らげたり、薄い生地あるいはレース状の生地から作られた、ゆったりとした衣類を着用することで衣類の中の空気の流れを起こし、温度が上昇した空気を衣類の外へ出す、という工夫が日常的に行われている。
【0008】
しかし、長袖の衣類を着用若しくは複数枚の衣類を重ね着すると、日焼けを防ぐことができる代わりに衣類内の空気の温度が上昇し暑さを感じやすく、薄い生地あるいはレース状の生地から作られた衣類を着用すると、衣類の中が透けて見えるため着用することがためらわれる。
【0009】
また、開口部とメッシュ部は後ろ見頃の襟部分と袖部分のみに設けられているため、衣類内部の空気の流れは、着用者の背中側でのみ生じ、衣類内部全体での空気の流れは生じないため、例えば前身頃部分に含まれている空気の流れは生じにくく、着用者は暑さを感じてしまう。
【0010】
本発明は、以上の点を鑑みて発明されたものであり、衣類に用いられる生地体を、換気をしやすい形状に形成することで、衣類の表面及び内部に空気の流れを生じさせ、かつ複数の布を重ね合わせて取り付けることで直射日光による肌へのダメージをやわらげる生地体、この生地体を用いた衣類、その製造方法及びこの生地体を用いた構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の通風体が設けられた生地体は、柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体とを備える。
【0012】
ここで、柔軟性を有する基布と、柔軟性を有する通風体とによって、風を生地内に取り込みやすくなり、生地体内の空気に流れが生じやすくなる。
【0013】
また、1または複数の開口部が形成された基布によって、空気が開口部から出入りしやすくなるので、空気の流れが妨げられにくくなる。
【0014】
また、複数の互いに連通した通気口を有する通風体によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出することができる。
【0015】
さらに、基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられる通風体によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出するだけでなく、開口部からも放出することができるので、スムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0016】
内部に中空部を形成する通風体によって、通風体内に空気を取り込みやすくなる。
【0017】
中空部が開口部及び通気口と連通した通風体によって、一方の通気口から通風体の中空部に取り込まれた空気は開口部及び他方の通気口から放出されるので、更にスムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0018】
前記通風体を複数有し、同複数の通風体が、互いに前記複数の通気口のいずれか一つが設けられている側の一部を他の通風体のいずれか一つの通気口に通気が可能な隙間を以て差し込むように配置されて通風路が設けられた場合には、通風体内に取り込まれた空気が通風路を通り抜けることで、よりスムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0019】
前記通風路が複数並設された場合には、通風体内に取り込まれた空気が複数の通風路を通り抜けることで、さらにスムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0020】
また、開口部がメッシュ素材で覆われた場合には、開口部から流入する空気の勢いをやわらげると共に、肌が露出するのを防ぐことができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の通風体が設けられた生地体を用いた衣類は、柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体とを有する生地体を、構成部の全部または一部に備える。
【0022】
ここで、柔軟性を有する基布と、柔軟性を有する通風体とによって、風を衣類内に取り込みやすくなり、衣類内の空気に流れが生じやすくなる。
【0023】
また、1または複数の開口部が形成された基布によって、空気が開口部から出入りしやすくなるので、衣類内の空気の流れが妨げられにくくなる。
【0024】
複数の互いに連通した通気口を有する通風体によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出することができる。
【0025】
基布の一部であり開口部を含む領域を被覆するように取り付けられる通風体によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出するだけでなく、開口部からも放出することができるので、スムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0026】
内部に中空部を形成する通風体によって、通風体内に空気を取り込みやすくなる。
【0027】
中空部が開口部及び通気口と連通した通風体によって、一方の通気口から通風体の中空部に取り込まれた空気は開口部及び他方の通気口から放出されるので、更にスムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0028】
柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、基布の一部であり開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、中空部は開口部及び通気口と連通した通風体とを有する生地体を、衣類の全部に備えることによって、周囲から流入する風を衣類内部に取り込むことができ、衣類内の空気の流れを創り出すことができる。
【0029】
柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、基布の一部であり開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、中空部は開口部及び通気口と連通した通風体とを有する生地体を、衣類の一部に備えることによって、衣類の一部分からの空気の流入であっても、風を衣類内部に取り込むことができるので、充分に衣類内の空気の流れを創り出すことができる。
【0030】
また、上記課題を解決するために、本発明の通風体が設けられた生地体を用いた衣類の製造方法は、柔軟性を有し、衣類を構成する基布に1または複数の開口部を設ける工程と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体を設ける工程とを備える。
【0031】
ここで、柔軟性を有する基布と、柔軟性を有する通風体とによって、風を衣類内に取り込みやすくなり、衣類内の空気に流れが生じやすくなる。
【0032】
また、衣類を構成する基布に1または複数の開口部を設ける工程によって、空気が開口部から出入りしやすくなるので、衣類内の空気の流れが妨げられにくくなる。
【0033】
複数の互いに連通した通気口を有する通風体を設ける工程によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出することができる。
【0034】
基布の一部であり開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成する通風体を設ける工程によって、通風体内に空気を取り込みやすくなる。
【0035】
中空部が開口部及び通気口と連通した通風体を設ける工程によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出するだけでなく、開口部からも放出することができるので、スムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0036】
また、上記課題を解決するために、本発明の通風体が設けられた生地体を用いた衣類の製造方法は、柔軟性を有し、1または複数の開口部が設けられた基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体とを有する生地体を形成する工程と、前記生地体を裁断する工程と、前記裁断された生地体を縫い合わせて衣類を形成する工程とを備える。
【0037】
ここで、柔軟性を有する基布と、柔軟性を有する通風体とによって、風を衣類内に取り込みやすくなり、衣類内の空気に流れが生じやすくなる。
【0038】
また、1または複数の開口部が設けられた基布と、複数の互いに連通した通気口を有し、基布の一部であり開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体とを有する生地体を形成する工程によって、風を衣類内に取り込みやすくなり、衣類内の空気に流れが生じやすくなる。
【0039】
生地体を裁断し、裁断された生地体を縫い合わせる工程によって、様々なサイズやデザインの衣類を製造することができる。
【0040】
また、上記課題を解決するために、本発明の通風体が設けられた生地体を用いた構造体は、柔軟性を有し、1または複数の開口部が形成された基布と、柔軟性を有し、複数の互いに連通した通気口を有し、前記基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられて内部に中空部を形成すると共に、該中空部は同開口部及び前記通気口と連通した通風体とを有する生地体を、構成部の全部または一部に備える。
【0041】
ここで、柔軟性を有する基布と、柔軟性を有する通風体とによって、風を構造体内に取り込みやすくなり、構造体内の空気に流れが生じやすくなる。
【0042】
また、1または複数の開口部が形成された基布によって、空気が開口部から出入りしやすくなるので、構造体内の空気の流れが妨げられにくくなる。
【0043】
複数の互いに連通した通気口を有する通風体によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出することができる。
【0044】
基布の一部であり前記開口部を含む領域を被覆するように取り付けられる通風体によって、一方の通気口から通風体内に取り込まれた空気を他方の通気口から放出するだけでなく、開口部からも放出することができるので、スムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【0045】
内部に中空部を形成する通風体によって、通風体内に空気を取り込みやすくなる。
【0046】
中空部が同開口部及び前記通気口と連通した通風体によって、一方の通気口から通風体の中空部に取り込まれた空気は開口部及び他方の通気口から放出されるので、更にスムーズな空気の流れを創り出すことができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る生地体、この生地体を用いた衣類、その製造方法及びこの生地体を用いた構造体は、衣類に用いられる生地体を、換気をしやすい形状に形成することで、衣類の表面及び内部に空気の流れを生じさせ、かつ複数の布を重ね合わせて取り付けることで直射日光による肌へのダメージをやわらげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の生地体の一実施の形態を示し、通風体を一部省略した平面視説明図である。
図2図1に示す生地体の一部を拡大した斜視説明図である。
図3図1に示す生地体の一部を拡大し、空気の流れを表した断面説明図である
図4】本発明の衣類Cの第1の実施形態を示し、(a)は正面視説明図、(b)は背面視説明図、(c)は側面視説明図である。
図5】本発明の衣類の第2の実施形態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図1ないし図5を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0050】
図1に示すように、本発明を適用した生地体Aは、柔軟性を有する基布Bの表面上に複数の通風体1が設けられて形成されている。
【0051】
通風体1は、柔軟性を有する布で形成されており、先端10側に設けられた通気口12、及び末端11側に設けられた通気口13を形成している先端縁の形状は略弧状の形状を有している。通風体1は末端11側から先端10側にかけて窄まっており、通風体1は全体として樋状に形成されている。基布Bの表面上に、通風体1はその長手方向に、通気口12が設けられている部分の先端10側を他の通風体1の末端11側の通気口13に一部を差し込んで伏せるようにして配置されている。
【0052】
また、通風体1と隣り合う他の通風体1との間の、開口部14を被覆しない位置にに縫製による取付部16が設けられる。取付部16を設けることで、通風体1が必ず開口部14を覆う位置に設けられるので、通風体1内の空気を開口部14へ確実に流入させることができる。
【0053】
生地体Aの作り方を具体的に述べると、図2に示すように、隣り合う開口部14の間に取付部16が設けられるよう、基布B上に設けられた開口部14の列ごとにリボン状の布Rを縫い付ける。そして、一列目の開口部14に対応し、布Rを基布Bに取り付けることにより作られた通風体1の先端10を含む部分を覆うように、二列目の開口部14に対応する他の布Rを同様に縫い付ける。これを繰り返すことで基布B全体に通風体1及び取付部16が設けられる。
【0054】
なお、通風体1は、必ずしも末端11側から先端10側にかけて窄まった形状を有している必要はない。通風体1の形状は適宜変更可能なものとし、例えば、先端10と末端11が同じ大きさとすることもできる。
【0055】
また、通風体1内に一部を畳み込むことで、通風体1が風などで容易に潰れることがない構造としてもよい。また、通風体1を構成する布は、熱線反射素材や紫外線を妨げる効果のある素材の布を採用することもできる。
【0056】
通風体1の先端10側には内部の空気を排気可能な通気口12が設けられており、末端11側には、外部の空気が流入する通気口13が設けられている。
【0057】
通風体1は柔軟性を有する布で作られており、通気口13が広く開口することができるので、風を取り込みやすい。
【0058】
通気口は、必ずしも二つ設けられる必要はない。通気口の数は空気の通り抜けが可能なように複数設けられていればよく、例えば、三つ以上設けることもできる。また、複数の通気口が設けられる際の配置の方向は、上下、左右(横)、斜めのどの方向でもよいし、それらが混在していてもよい。
【0059】
通風体1は基布Bの表面に立体的に設けられており、基布Bと通風体1の間には空気が通り抜けるのに充分な空間が形成されているので、通風体1の表面が日光で温められても着用者に熱が伝わりにくい。
【0060】
基布Bと通風体1の間に形成された空間の大きさは特に限定するものではなく、適宜変更可能なものとする。
【0061】
基布Bの、通風体1で覆われた部分には、基布Bに設けられた、任意の形状(本実施の形態では四角形状)の孔である開口部14が設けられている。開口部14は、メッシュ素材の布15で覆われており、容易には衣類の内部が見えないようになっている。
【0062】
開口部14を覆う布地は、充分な通気が確保できるものであれば、メッシュ素材に限られるものではなく、例えば目の粗い綿や麻などの他の素材を用いても良く、または開口部14を他の材料で覆わない構造とすることもできる。
【0063】
図2に示すように、通風体1の先端10は他の通風体1の末端11内に差し込まれ、通風体1の先端10は他の通風体1の末端11内に差し込まれている。これを繰り返すことで、全体として列状の通風路2が形成される。
【0064】
通風路2を形成する通風体の数は限定されるものではなく、適宜変更可能なものとする。
【0065】
通風路2に平行して、通風路2と同様に形成された他の通風路2が設けられ、通風路2に平行して、更に他の通風路2が設けられている。これを繰り返すことで、全体として通風体1(通風路2)が基布B上に設けられた生地体Aが形成される。
【0066】
基布Bに設けられる通風路2の数は必ずしも限定されるものではなく、適宜変更可能なものとする。
【0067】
<生地体Aを用いた衣類Cの製造方法>
(衣類Cの前身頃部分の製造方法)
(1)図4(a)に示すように、衣類C(ポロシャツ)を構成している柔軟性のある基布Bに、一定の形状(本実施の形態では四角形状)に切欠かれた孔である、4列の開口部14〜14cを衣類Cの両前身頃に設ける。衣類Cの前身頃である基布B1には、各開口部14〜14c覆うようにメッシュ素材の布15を縫製などにより取り付ける。
【0068】
(2)基布B1の下縁部近傍に整列して設けられた複数の開口部14を覆うように、柔軟性のあるリボン状の布R1を、開口部14を被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B1に縫い付ける。取付部16が設けられることにより、リボンR1は基布B1に確実に縫い付けられると共に、通風体1を必ず開口部14を被覆する位置に設けることが出来る。このとき、通風体1の先端10側が末端11側よりも狭くまたは細くなるように縫い付けると共に、基布Bと通風体1の間には空気が通り抜けるのに充分な空間(符号略)が設けられるように立体的に縫い付けることで、通風体1が形成される。
【0069】
(3)次に、(2)で述べたように、複数の開口部14の列と略平行に設けられた開口部14aの列を覆うように、同様の柔軟性のあるリボン状の布R2を、開口部14aを被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B1に縫い付ける。
【0070】
(4)そして、同様に、複数の開口部14aの列と略平行に設けられた開口部14bの列を覆うように、同様の柔軟性のあるリボン状の布R3を、開口部14bを被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B1に縫い付ける。このとき、リボン状の布R2により形成された、複数の通風体1aの先端10aを、リボン状の布R3により形成された、複数の通風体1bの通気口13bが設けられた部分で覆うように、あるいは先端10aが通気口13bに差し込まれた状態となるように、リボン状の布R3を立体的に基布B1に縫い付ける。
【0071】
(5)最後に、複数の開口部14bの列と略平行に設けられた開口部14cの列を覆うように、同様の柔軟性のあるリボン状の布R4を、開口部14cを被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B1に縫い付ける。このとき、リボン状の布R3により形成された、複数の通風体1bの先端10bを、リボン状の布R4により形成された、複数の通風体1cの通気口13cが設けられた部分で覆うように、あるいは先端10bが通気口13cに差し込まれた状態となるように、リボン状の布R4を立体的に基布B1に縫い付ける。このようにして、衣類Cの前身頃(符号略)が形成される。
【0072】
(衣類Cの後身頃部分の製造方法)
(6)図4(b)に示すように、衣類C(ポロシャツ)を構成している柔軟性のある基布B2に、一定の形状(本実施の形態では四角形状)に切欠かれた孔である、3列の開口部14及び開口部14d〜eを衣類Cの後身頃に設ける。衣類Cの後身頃である基布B2には、各開口部14及び開口部14d〜eを覆うようにメッシュ素材の布15を縫製などにより取り付ける。
【0073】
(7)衣類Cの前見頃部分と同様、基布B2の縁に整列して設けられた複数の開口部14を覆うように、柔軟性のあるリボン状の布R1を、開口部14を被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B2に縫い付ける。
【0074】
(8)次に、(7)で述べたように、複数の開口部14の列と略平行に設けられた開口部14dの列を覆うように、同様の柔軟性のあるリボン状の布R5を、開口部14dを被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B2に縫い付ける。
【0075】
(9)そして、同様に、複数の開口部14dの列と略平行に設けられた開口部14eの列を覆うように、同様の柔軟性のあるリボン状の布R6を、開口部14eを被覆しない位置に取付部16が設けられるよう、基布B2に縫い付ける。このとき、リボン状の布R5により形成された、複数の通風体1dの先端10dを、リボン状の布R6により形成された、複数の通風体1eの通気口13eが設けられた部分で覆うように、あるいは先端10dが通気口13eに差し込まれた状態となるように、リボン状の布R6を立体的に基布B2に縫い付ける。
【0076】
(衣類Cの両袖部分の製造方法)
(10)図4(c)に示すように、衣類C(ポロシャツ)を構成している柔軟性のある基布B3に、一定の形状(本実施の形態では四角形状)に切欠かれた孔である、両袖に一つずつ設けられた開口部14fを衣類Cの両袖にそれぞれ設ける。衣類Cの両袖である基布B3には、各開口部14fを覆うようにメッシュ素材の布15を縫製などにより取り付ける。
【0077】
(11)衣類Cの前見頃部分及び後見頃部分と同様、基布B3の縁に設けられた開口部14fを覆うように、柔軟性のあるリボン状の布R7を基布B3に縫い付けて、通風体1fが設けられる。
【0078】
以上により、図4に示すような衣類Cが製造される。
【0079】
なお、衣類Cの製造において、基布Bに通風体を形成する方法は、上記のように布R1、R2などを縫い付ける方法に限定されるものではなく、例えば四角形状の布を用意しておき、これらを個々に開口部を被覆するように基布に縫い付ける方法を採用してもよく、通風体を形成する布地の形状や縫い付け方は適宜選択することができる。
【0080】
<生地体を用いた衣類(図示せず)の製造方法>
(1)衣類の生地となる、例えば四角形の基布に、一定の形状(本実施の形態では四角形状)に切欠かれた孔である開口部を縦横に整列させて、複数設ける。各開口部はメッシュ素材の布で覆う。
【0081】
(2)衣類の生地に設けられた開口部を覆うように、リボン状の布を基布に縫い付けて、複数の通風体及び複数の取付部を形成することで、生地体が形成される。
(3)生地体を、衣類を構成する各部品の形状に裁断する。
(4)各部品を縫製して、衣類を製造する。
【0082】
以下、図4ないし図5を参照しながら、本発明の衣類Cの作用および使用方法について説明する。
【0083】
衣類Cを着用した使用者の周囲の空気は、使用者が動くことや風の流れによって、例えば、衣類Cの前身頃部分に設けられた通風体1の末端11に設けられた通気口13から通風体1内に流れ込む。
【0084】
通風体1の末端11から通風体1内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1によって覆われた開口部14から使用者の身体側へ流れ込み、衣類C内に空気の流れを生じさせるので、衣類C内の温度が上昇して使用者が不快に感じるのを防ぐことができる。
【0085】
また、通風体1内に流れ込んだ空気の残りは、先端10に設けられた通気口12に向けて通風体1内を通過し、通気口12から外部へ抜け出る。このように、通風体1内の空気は給気と排気が繰り返されるため、通風体1内の温度が上昇して着用者が不快に感じるのを防ぐことができる。
【0086】
図4(a)に示すように、通風体1aの末端11aの通気口13aから末端11a付近の空気が流入し、通風体1a内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1aによって覆われた開口部14aから使用者の身体側へ流れ込む。また、通風体1a内に流れ込んだ空気の残りは、通風体1a内を通過し、先端10aに設けられた通気口12aから外部へ抜け出る。
【0087】
また、通気口12aから排気された空気は、通風体1aの先端10aを覆うように設けられた通風体1bの末端11bに設けられた通気口13bから通風体1b内に流れ込む。通風体1b内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1bによって覆われた開口部14bから使用者の身体側へ流れ込む。
【0088】
このとき、末端11bに設けられた通気口13bからは、通風体1b内に流れ込んだ空気の残りだけでなく、末端11bの付近の空気も流入するので、通風体1b内の空気は勢いを増して通風体1b内を通過し、先端10bに設けられた通気口12bから外部へ排出される。
【0089】
通気口12bから排気された空気は、通風体1bの先端10bを覆うように設けられた通風体1cの末端11cに設けられた通気口13cから通風体1c内に流れ込む。通風体1c内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1cによって覆われた開口部14cから使用者の身体側へ流れ込む。
【0090】
このとき、末端11cに設けられた通気口13cからは、通風体1c内に流れ込んだ空気の残りだけでなく、末端11cの付近の空気も流入するので、通風体1c内の空気は更に勢いを増して通風体1c内を通過し、先端10cに設けられた通気口12cから外部へ排出される。
【0091】
このように、通風体1、通風体1a、通風体1b及び通風体1cは、通気口13から通気口12に向けて空気が流れる方向に整列して配置されて通風路2〜2eを形成しているので、通風体1の通気口13に流れ込んだ空気は、通風体1a、通風体1b及び通風体1c内を迅速に通り抜けるため、衣類Cの内部や表面が体温や日光で温められることで使用者が不快に感じるのを防ぐことができる。
【0092】
また、衣類Cの前身頃部分には通風路2だけでなく、通風路2a、通風路2b、通風路2c、通風路2d及び通風路2eが設けられているので、衣類Cの前身頃部分の全面において迅速な空気の流れが生じ、衣類Cの表面及び内部の温度の上昇を防ぐことができる。
【0093】
また、各通風路内の空気は体温と日光で温められ上昇するので、更に通風路内の空気の流れが強められる。
【0094】
前身頃部分で生じた空気の流れは、衣類Cの後見頃部分でも同様に生じる。
以下、図4(b)を用いて、衣類Cの後身頃部分の表面及び内部の空気の動きを詳細に説明する。
【0095】
衣類Cの後見頃付近の空気は、通風体1dの末端11dに設けられた通気口13dから通風体1d内に流れ込む。通風体1d内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1dによって覆われた開口部14dから使用者の身体側へ流れ込む。通風体1d内に流れ込んだ空気の残りは、通風体1d内を通過し、先端10dに設けられた通気口12dから外部へ排出される。
【0096】
通気口12dから排気された空気は、通風体1dの先端10dを覆うように設けられた通風体1eの末端11eに設けられた通気口13eから通風体1e内に流れ込む。通風体1e内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1eによって覆われた開口部14eから使用者の身体側へ流れ込む。通風体1e内に流れ込んだ空気の残りは、通風体1e内を通過し、先端10eに設けられた通気口12eから外部へ排出される。
【0097】
このように、通風体1d及び通風体1eは連接して設けられ通風路2fを形成しているので、通風体1dに流れ込んだ空気は、通風体1e内を迅速に通り抜けるため、衣類Cが体温や日光で温められることで使用者が不快に感じるのを防ぐことができる。
【0098】
また、衣類Cの後身頃部分には通風路2fだけでなく、通風路2g〜2kが設けられているので、衣類Cの後身頃部分の全面において迅速な空気の流れが生じ、衣類Cの表面及び内部の温度の上昇を防ぐことができる。
【0099】
前身頃部分及び後見頃部分で生じた空気の流れは、衣類Cの両袖部分でも同様に生じる。
以下、図4(c)を用いて、衣類Cの両袖部分の表面及び内部の空気の動きを詳細に説明する。
【0100】
衣類Cの両袖付近の空気は、通風体1fの末端11fに設けられた通気口13fから通風体1f内に流れ込む。通風体1f内に流れ込んだ空気の一部は、通風体1fによって覆われた開口部14fから使用者の身体側へ流れ込む。通風体1f内に流れ込んだ空気の残りは、通風体1f内を通過し、先端10fに設けられた通気口12fから外部へ排出される。
【0101】
この様に、前身頃部分、後見頃部分及び袖部分において、衣類Cの表面及び内部の空気の流れが生じるので、衣類Cが温められることで使用者が不快に感じることを防ぐことが出来る。
【0102】
また、開口部14が複数設けられていることで衣類Cの内部にも空気が流入しやすいので、使用者の汗を迅速に乾かすことができ、使用者は発汗による、不快なべたつきなどを感じにくくなる。
【0103】
また、衣類Cは、基布Bに通風体1が被さっており、外側の通風体で直射日光を遮り、基布の内部側まで紫外線を透過させにくいので、日焼けを防ぎやすくなる。
【0104】
図5に示すように、通風体が前身頃から後見頃部分にわたって、肩口で途切れることなく連続して設けられた衣類Dを着用した場合には、前身頃側の通風体1g内に流入した空気が、通風体1h、1i、1j、1k、1?、1m、1nを順に通り抜け、最終的に後見頃側の通風体1оから排気されるので、使用者はより快適に感じることができる。
【0105】
また、前身頃と後見頃の縫い合わせ部分が通風体によって覆われるので、デザイン性も向上すると共に、着用者の肩部分への日光の熱の伝わりをやわらげることが出来る。さらに、雨天時に肩口から雨がしみこむことを防ぐことができるので、雨具に用いることができる。
【0106】
また、本発明に係る構造体は、充分な通気性を保ちまたは直射日光を防ぐ目的で、例えばテント、日除け、日傘または帽子の襟足を保護する布地部分などに用いることもできる。
【符号の説明】
【0107】
A 生地体
B 基布
C 衣類
D 衣類
R1〜7 リボン状の布
1〜1f 通風体
10〜10f 先端
11〜11f 末端
12〜12f 通気口
13〜13f 通気口
14〜14f 開口部
15 メッシュ素材の布
16 取付部
2〜2o 通風路
図1
図2
図3
図4
図5