特許第6602610号(P6602610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6602610基板、膜形成基板の製造方法及び塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602610
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】基板、膜形成基板の製造方法及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20191028BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20191028BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20191028BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20191028BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   G02F1/1333 500
   G02F1/1333 505
   G02F1/13 101
   B05D1/26 Z
   B05D7/00 P
   B05C5/00 101
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-175722(P2015-175722)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2016-71352(P2016-71352A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-197486(P2014-197486)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】西中 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】梶原 慎二
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−133137(JP,A)
【文献】 特開2007−114586(JP,A)
【文献】 特開2014−061498(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0235310(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102236208(CN,A)
【文献】 国際公開第2007/129489(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/045581(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/129065(WO,A1)
【文献】 特開2007−322627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
G02F 1/1337
G02F 1/1368
G02F 1/1345
G02F 1/13 101
B05C 5/00
B05D 1/26
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜形成領域の外周に沿う凹溝が形成された基板であって、
前記凹溝と前記膜形成領域との間に、複数の凹部が並置された凹部群を備え、
前記凹部群は、頂角が鋭角で、底辺が、前記凹溝の延在方向に平行で、かつ前記凹溝側に位置するように配置される二等辺三角形の凹部であることを特徴とする基板。
【請求項2】
前記凹部群は、長い方の対角線が、前記凹溝の延在方向に直交するように配置される菱形の凹部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
膜形成領域の外周に沿う凹溝が形成された基板であって、
前記凹溝と前記膜形成領域との間に、複数の凹部が並置された凹部群を備えるとともに、
前記凹溝は、前記膜形成領域の外周に互いに離隔する複数重をなすように設けられる凹溝群を形成し、前記膜形成領域の外周から離隔する外側の凹溝ほど溝幅が小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の基板を用いて、前記基板の前記膜形成領域に、膜形成材料である液体の液滴を滴下して塗布することを特徴とする膜形成基板の製造方法。
【請求項5】
前記液体の液滴は、前記凹溝に滴下した後に、前記膜形成領域に滴下することを特徴とする請求項4に記載の膜形成基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板、膜形成基板の製造方法及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置では、基板の表示領域及びその周辺の領域からなる膜形成領域に、膜形成材料である液体(ここでは、配向膜材料液)がインクジェット法により塗布される。そして、基板の膜形成領域の周囲に一定の間隔をおいた位置にシール剤がディスペンス法により環状に塗布され、基板上のシール剤で囲まれた領域に液晶材料がディスペンス法により滴下塗布される。
【0003】
ところで、インクジェット法で上述の膜形成材料である液体を基板の膜形成領域に塗布すると、この液体が基板上で濡れ広がり、シール剤を形成する領域まで到達してしまうことがある。液体がシール剤の形成領域まで広がって、シール剤形成領域に配向膜が形成されてしまうと、この配向膜の部分でシール剤の基板に対する密着性が悪くなる。
【0004】
そこで、基板に塗布される膜形成材料の液体の膜形成領域外側への濡れ広がりを抑制するため、特許文献1に記載のように、基板上の膜形成領域と、それよりも外側のシール剤塗布領域との間に、膜形成領域を囲む凹溝を形成したものがある。基板上の凹溝より内側に塗布された液体が、周辺に向って濡れ広がる過程で、シール剤塗布領域まで濡れ広がらないように、液体の濡れ広がりを凹溝で止めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−322627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の動向として、携帯電話に代表される携帯端末等の液晶表示装置では、製品本体の大きさに対して表示領域の大きさをできるだけ大きくとることが要求されている。この結果、基板の一定の外形寸法の範囲内で、表示領域の外側領域が狭くなる傾向がある。
【0007】
従って、基板上で膜形成領域を囲む領域に形成される凹溝と、表示領域との距離が近くなる。このため、基板上で凹溝より内側に滴下され、外側周辺に向けて濡れ広がる膜形成材料の液体が、凹溝に達するまでの過程で液量を減少せず、凹溝の縁で生ずる表面張力によって凹溝際に土手状に盛り上がった液溜まりを一時的に形成する。この液溜まりができると、基板上の内側から外側周縁に濡れ広がってきた液体の一部が、該液溜まりで跳ね返り、膜形成領域の内側に向って逆流する。これにより、表示領域の内部にまで、膜形成材料の膜厚のむらを生ずる。
【0008】
本発明の課題は、膜形成領域に生ずる膜厚のむらを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、膜形成領域の外周に沿う凹溝が形成された基板であって、前記凹溝と前記膜形成領域との間に、複数の凹部が並置された凹部群を備え、前記凹部群は、頂角が鋭角で、底辺が、前記凹溝の延在方向に平行で、かつ前記凹溝側に位置するように配置される二等辺三角形の凹部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膜形成領域に生ずる膜厚のむらを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明が適用されてなる液晶表示パネルの一例を示す模式平面図である。
図2図2は塗布装置の一例を示す模式斜視図である。
図3図3は実施例1の基板を示す模式断面図である。
図4図4は実施例1の基板の要部を示す模式平面図である。
図5図5は実施例2の基板の要部を示す模式平面図である。
図6図6は実施例3の基板の要部を示す模式平面図である。
図7図7は実施例4の基板の要部を示す模式平面図である。
図8図8は実施例5の基板の要部を示す模式平面図である。
図9図9は実施例6の基板の要部を示す模式平面図である。
図10図10は液滴の凹溝への滴下状態を示す模式図である。
図11図11は凹溝、凹部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)(図1図4
本発明が適用されてなる液晶表示パネルは、図1に示すように、一点鎖線で示す膜形成領域2が、矩形状の基板1の表示領域DA及びその周辺の僅かな領域からなり、この膜形成領域2に、膜形成材料である液体(ここでは、配向膜材料液)が図2に示したインクジェット塗布装置100により塗布される。そして、基板1の膜形成領域2の周囲には、一定の間隔をおいた位置にシール剤3がディスペンス法により環状に塗布され、基板1上のシール剤3で囲まれた領域に液晶材料(不図示)がディスペンス法により滴下塗布される。その後、対向基板(不図示)がシール剤3を介して貼り合わされて液晶材料が封入され、液晶表示パネルが形成される。なお「膜形成領域2」とは、塗布された液体によって膜が形成された領域ではなく、膜を形成する領域として設定した設計上の領域のことである。
【0013】
塗布装置100は、図2に示す通り、架台101の上にY軸方向移動ステージ102を備え、Y軸方向移動ステージ102の上面に設けた基板保持部材103の上に基板1を支持する。架台101の上には、Y軸方向移動ステージ102を跨ぐ門型フレーム104が設けられ、門型フレーム104はX軸方向に並置された複数の塗布ヘッド105を備える。塗布装置100は、Y軸方向移動ステージ102によって基板1をY軸方向に移動しつつ、塗布ヘッド105のX軸方向に一定の間隔で設けられている多数のノズルから滴下される膜形成材料の液体を基板1のY軸方向に沿う各位置に滴下塗布する。塗布装置100は、Y軸方向移動ステージ102の移動、塗布ヘッド105の各ノズルからの液滴の滴下(ノズルから滴下される液滴の量や液滴の滴下間隔(周波数)等)を制御する制御装置106を備えている。
【0014】
図3図1に示した基板1のA−A断面を示し、図4図1に示した基板1のAR領域を示す。即ち、基板1にあっては、膜形成領域2の外周の辺に沿って、所定深さの長尺状をなす凹溝10を形成し、本実施例では複数の凹溝10が並置されてなる凹溝群10Nを形成している。凹溝群10Nは、膜形成領域2の外周に沿って互いに離隔する複数の凹溝10(第1〜第n凹溝11、12、13…1n(不図示))からなる。各凹溝11、12、13…は、膜形成領域2の外周の各辺に平行に形成され、互いに複数重をなす。塗布装置100は、凹溝群10Nの各凹溝11、12、13…が形成された基板1に、膜形成材料である液体を滴下塗布するものである。
【0015】
以下、本実施例をより詳細に説明する。
(a)塗布装置100の塗布ヘッド105から滴下される膜形成材料の液体が、基板1の膜形成領域2に塗布されるのに先立って、膜形成領域2の外周に形成した凹溝10(第1〜第n凹溝11、12、13…1n)にも塗布される。従って、膜形成領域2に塗布され、外側周辺に向って濡れ広がり、凹溝10の縁に到達した液体は、この凹溝10の縁が既にこの凹溝10内に塗布された液体で濡れているので、この凹溝10の縁の液体と接触し一体化して、液溜りを形成することなくこの凹溝10内に浸入する。
【0016】
具体的には、図2の塗布装置100に、まず、基板1が供給される。このとき、基板1は、長辺方向がY方向と平行になるように、基板保持部材103の上に供給される。基板保持部材103は、基板1の搬入/搬出ポジションである図2のY軸方向手前側に位置づけられている。基板1の供給が完了すると制御装置106が、Y軸方向移動ステージ102を制御して基板保持部材103を図2のY軸方向奥側に向かって移動を開始させる。この移動中に、基板1上の凹溝群10Nのうち、最も表示領域DAに近い側、つまり、最も内側の凹溝11に対して、塗布ヘッド105の各ノズルから液滴が吐出されて滴下される。
【0017】
凹溝11は、X方向に沿う凹溝と、Y方向に沿う凹溝があるが、X方向に沿う凹溝に対しては、基板1の先頭側に位置するX方向に沿う凹溝と後方側に位置する凹溝それぞれについて、その凹溝が塗布ヘッド105の各ノズルの下を通過するタイミングに合わせて、X方向に沿う凹溝に対応して位置する各ノズルから液滴を吐出させる。また、Y方向に沿う凹溝については、その凹溝の先頭側の端部が塗布ヘッド105の下に到達してから後方側の端部が塗布ヘッド105の下を通過するまでの期間中、その凹溝に対向して位置するノズルから、液滴をY方向において予め設定された配置間隔で吐出させる。この液滴の滴下は、制御装置106によって制御される。つまり、制御装置106は、液体の液滴を、膜形成領域2に滴下する前に、凹溝10に滴下するように、塗布ヘッド105を制御する。
【0018】
基板保持部材103が図2のY軸方向奥側の端部あるいは基板1が塗布ヘッド105を通過しきった位置に到達したら、今度は、搬入/搬出ポジションのある側へ向けて基板保持部材103が移動され、この移動中に、膜形成領域2内に対する液体の滴下塗布が行なわれる。この液体の滴下塗布は、塗布ヘッド105の下を基板1の膜形成領域2が通過するタイミングに合わせて、膜形成領域2に対向して位置する塗布ヘッド105における各ノズルから、膜形成領域2に対して予め設定された配置間隔で液滴が滴下されるように液滴を吐出させる。つまり、制御装置106は、液体の液滴を、凹溝10に滴下した後に、膜形成領域2に滴下するように塗布ヘッド105を制御する。
【0019】
基板1が塗布ヘッド105の下を通過し終わり、基板1に対する液体の滴下塗布が完了し、基板保持部材103が搬入/搬出ポジションに到達すると、液体が塗布された基板1が搬出される。続いて処理する基板1があるのなら、入れ替わりに次の基板1が基板保持部材103に供給され、続いて処理する基板1が無くなるまで、上述の動作が繰り返し行なわれる。
【0020】
また、上述の凹溝10に滴下する液滴の量は、滴下された液滴が凹溝10における内側(表示領域DAに近い側)に位置する縁部に接する量で滴下するものとし、その量(大きさ)は、実験によって決定することができ、凹溝の深さが大きくなる程、必要な液滴の量は大きくなる。上述の凹溝10に滴下する液滴の量は、凹溝10の同じ位置に滴下する液滴の量のことで、1滴で滴下しても、同じ位置に複数回滴下するようにしてもよい。
【0021】
このとき、液滴は、図10の(A)又は(B)に示すように凹溝10の溝幅全体に行き渡っても良いし、図10の(C)又は(D)に示すように凹溝10の溝幅全体に行き渡らなくても良い。液滴は、少なくとも凹溝10における内側(表示領域DAに近い側)の縁に接するような位置となるように滴下すると良い。また、液滴は、凹溝10に対して、連続して連なって滴下されても良いし、間隔をおいて滴下されても良い。間隔をおいて滴下されていても、膜形成領域2から濡れ広がってくる液体は、凹溝10に滴下されて濡れている部分から液溜りを形成することなく凹溝10内に侵入する。いずれにしても、凹溝10内に、膜形成領域2から濡れ広がってきた液体を収容するスペースを確保できれば、膜形成領域2の内側から濡れ広がってきた液体の広がりを抑制できる。したがって、この点を考慮して凹溝10へ滴下する液滴の量や液滴の滴下間隔を決める。この液滴の量や滴下間隔についても、実験で求めることができる。また、凹溝10内における場所によって滴下量を変えても良い。
【0022】
更に、図10では凹溝10の最も内側の凹溝11だけに液滴を滴下する例を示したがこれに限られず、それよりも外側の凹溝12、13…1nにも液体を滴下しても良い。こうすることで、例え一番内側の凹溝11を乗り越えて液体が濡れ広がったとしても、その外側の凹溝12、13…1nのいずれかで濡れ広がりを留めることができる。もちろん、すべての凹溝10に液滴を滴下することも、任意の凹溝10のみに液滴を滴下することも同様である。膜形成領域2の液体の濡れ広がり状態によって適宜決定すれば良い。ただし、凹溝11の縁に生じる液溜りによって、濡れ広がってきた液体の一部が跳ね返って表示領域DAに及ぶことにより生じる膜形成材料の膜厚むらを効果的に抑制するためには、一番内側の凹溝11に液滴を滴下しておくことが有効である。
【0023】
また、凹溝10に対する液体の滴下と、膜形成領域2に対する液体の滴下とを別々に行なう例で説明したが、一緒に行なうようにしても良い。すなわち、基板1が塗布ヘッド105直下を通過する際に、凹溝10への液滴の滴下を行うとともに、基板1の膜形成領域2にも液体の滴下を行う。これにより一回の基板保持部材103の移動で塗布が完了し、効率的な塗布ができる。また、Y軸方向移動ステージ102の移動両端を基板1の搬入/搬出ポジションとすることで、さらに効率的に繰り返し基板1への塗布が行うことができる。
【0024】
塗布装置100による上述(a)の液体の塗布は、凹溝10に塗布(液滴を滴下)した後に、膜形成領域2に塗布する。つまり、膜形成領域2に塗布された液体が外側周辺に濡れ広がって凹溝10の縁に到達するときには、すでに先行して凹溝10に塗布済の液体が凹溝10の縁を確実に濡らしている。従って、凹溝10の縁に到達した液体による液溜りの形成を確実に生じにくくし、この液溜りによる液体の跳ね返りを確実に抑制し、膜厚むらの発生を確実に抑制できる。
【0025】
また、凹溝10は、膜形成領域2の内側から表示領域DAを超えて濡れ広がってきた液体がその中に浸入する分だけ、より外側の周辺に濡れ広がる液量を少なくし、シール剤塗布領域への濡れ広がりを抑制する効果も大きい。
【0026】
(b)基板1に形成された上述(a)の凹溝10は、前述したように膜形成領域2の外周に互いに離隔する複数重をなすように設けられる凹溝群10Nを形成し、更に、膜形成領域2の外周から離隔する外側の凹溝10ほど溝幅Li(i=1、2、3…)が小さいものとする。即ち、凹溝群10Nを形成する複数の第1凹溝11〜第n凹溝1nのうち、膜形成領域2の外周に最も近接する第1凹溝11の溝幅L1を最も大きくするものになり、濡れ広がってくる多量の液体を広幅の第1凹溝11に受容して跳ね返り及び濡れ広がりを抑制し、その後、各凹溝11、12、13…を通過してより少量となる液体をより狭幅L2、L3…の各凹溝12、13…内に順に受容して跳ね返り及び濡れ広がりを抑制する(L1>L2>L3…)。
【0027】
つまり、液体を各凹溝11、12、13…内に確実に受容し、塗布液のシール材塗布領域への濡れ広がりおよび、各凹溝11、12、13…による上述(a)の液体跳ね返りの抑制効果によって膜形成領域2内の膜厚むらの発生を抑制しつつ、凹溝群10Nが膜形成領域2の外周に直交する方向に沿ってなす全幅Wを、全ての凹溝10が広幅とされる場合に比して小寸法化でき、製品本体内における凹溝群10Nの占有スペースを小さくし、製品本体に対してより大きな表示領域DAを確保できる。
【0028】
(c)基板1に形成された上述(b)の相隣る凹溝10と凹溝10の間の間隔Si(i=1、2…)は、凹溝10の溝幅Liよりも小さい。これにより、上述(b)の凹溝群10Nにおいて、凹溝10と凹溝10の間の間隔Siを凹溝10の溝幅Li以上としたものに比し、各溝幅Liの合計値に相隣る凹溝10の間隔Siの合計値を加えた凹溝群10Nの全幅Wを一層小寸法化できる。従って、製品本体内における凹溝群10Nの占有スペースを一層小さくし、製品本体に対して一層大きな表示領域DAを確保できる。
【0029】
本実施例の凹溝群10Nでは、第1凹溝11〜第3凹溝13の溝幅L1〜L3を、L1=0.18mm、L2=0.09mm、L3=0.06mmとしている。また、第1凹溝11と第2凹溝12の間隔S1、第2凹溝12と第3凹溝13の間隔S2を、S1=S2=0.01mmとしている。このような寸法の凹溝10を形成した基板1に対して、上述の塗布を行なったところ、表示領域DA内に形成された配向膜のむらを抑制することができた。
【0030】
(実施例2)(図5
実施例2の基板1を説明する。
(d)基板1に形成された凹溝10と表示領域DAとの間に、所定深さの複数の凹部20が並置された凹部群20Nを配置し、各凹部20の形状は、膜形成領域2に塗布された液体が膜形成領域2から凹溝10に向かう方向に比べて、その反対方向である凹溝10から膜形成領域2に向かう方向の方が流れ難くなる形状からなる。なお、本実施例において、各凹部20は、膜形成領域2の外周縁に沿って所定のピッチ間隔で配置される。
【0031】
凹部群20Nは、膜形成領域2の内側から外側への液体の流れに比べ、その反対方向への逆流を流れ難くする。具体的には、凹部群20Nの各凹部20によって形成される各凹部20の間が、膜形成領域2に塗布された液体が濡れ広がる時の主な道筋となる。そして、各凹部20の間は、膜形成領域2内側(表示領域DAに近い側)が広く、外側に向かって狭まるように構成する。また、表示領域DAに向かう側は、凹部20を形成する面が表示領域DAに対して平行とならないように構成する。すなわち、凹溝10側から表示領域DA側に向かっては各凹部20の間は狭くなっているので、液体が流れにくくなっていて、膜形成領域2の内側から濡れ広がって凹溝10の溝際に液溜まりができ、この液溜まりで液の流れの跳ね返りが生じたとしても、その跳ね返りのために生じた内側へ向かう流れ(逆流)を抑制する(減衰させる)ものになる。
【0032】
凹部群20Nは、凹部群20Nが無い場合に比べて、外側(膜形成領域2から凹溝10に向かう方向)に向かって濡れ広がる流れに対して抵抗になるので、凹溝10の溝際に到達するときの流れの速さを、凹部群20Nが無い場合と比べて低減させることができる。液体が液溜まりにぶつかる速度が遅いほど液の流れの跳ね返りは小さくなるので、結果的に、凹部群20Nは跳ね返りの抑制に寄与する。更に、濡れ広がる液体は凹部群20Nを通過するときに各凹部20内に流れ込むので、このことによって、凹溝群10Nに向かって流れる液体の量が低減され、結果として、凹溝10の縁際での液体の跳ね返りが抑制され、膜形成領域2内に生ずる膜厚のむらを抑制できる。
【0033】
また、凹部20に液体が流れ込んで、凹部20に液体が溜まった状態になったときでも、凹溝10側から膜形成領域2に向かう方向への流れを抑制する効果が得られることは実験によって確認されている。基板1の表面および凹部20を覆った液体の膜を観察したところ、凹部20の輪郭に沿って液体膜に土手状の盛り上がりが認められ、凹部20の輪郭に沿って形成された液体膜の盛り上がり部分が、凹溝10側から膜形成領域2に向かう方向への流れに対して抵抗となり、この流れが抑制されていると推測される。
【0034】
凹部20内に液体が侵入していてもしていなくても、凹部20の輪郭で液体が盛り上がるが、その輪郭を形成する線は、表示領域DAと平行とならず角度をなしている。このため、この凹部20の輪郭部での液体の盛り上がりによって生じる跳ね返りは、直接表示領域DA側に向かわず、また並置される各凹部20の輪郭からの跳ね返り同士が干渉し合い弱めるので、膜形成領域2内に生ずる膜厚のむらを抑制できる。
【0035】
(e)基板1に形成された上述の凹部群20Nを構成する各凹部20は、頂角が鋭角の二等辺三角形からなる凹部21であり、底辺が、凹溝10の延在方向に平行かつ凹溝10側に位置するように配置することにより、上述(d)の液体の流れを確実に形成できる。
【0036】
尚、膜形成領域2の外周縁において、相直交する2辺(縦辺と横辺)のコーナー部に直に臨む位置には二等辺三角形からなる凹部22が配置される。凹部22は、凹部21と同一形状の二等辺三角形をなし、底辺が凹溝10側に位置し、底辺に直交する中心軸が膜形成領域2の外周の縦辺と横辺に対して45度をなすように斜めに配置される。
【0037】
また、膜形成領域2の外周において、相直交する二辺(縦辺と横辺)のコーナー部に直に臨む位置で、上述の二等辺三角形からなる凹部22の両側には、凹部21、22よりも例えば辺の長さを半分とした小形状の二等辺三角形からなる凹部23が配置される。凹部23は、底辺が凹溝10の延在方向に平行で、凹溝10側に位置するように配置される。各凹部23の底辺は各凹部21の底辺と同一直線上に配置される。
【0038】
本実施例の凹部群20Nでは、凹部21、22の底辺の長さa、高さbを、a=0.06mm、b=0.10mmとし、凹部23の長さc、高さdを、c=0.03mm、d=0.05mmとしている。また、相隣る凹部21のピッチ間隔p1を、p1=0.1mmとし、相隣る凹部21と凹部23の配置間隔pcを、pc=0.085mmとしている。このような寸法の凹部群20Nを形成することで、表示領域DA内に形成された配向膜のむらがより一層抑制された。
【0039】
尚、凹部群20Nにあっては、例えば相隣る二等辺三角形からなる凹部21のピッチ間隔p1を、p1=0.08mmとし、凹部21の密度を大きくすることもできる。
【0040】
(実施例3)(図6
実施例3が実施例1と異なる点は、基板1に形成される凹部群20Nの構成である。実施例3の凹部群20Nは、相隣る凹部21と凹部21の間、及び相隣る凹部21と凹部22の間に、凹部22の両側に配置した凹部23と同一形状である小形状の二等辺三角形からなる凹部24を配置したことにある。各凹部24の頂点は各凹部21、22の頂点と同一直線上に配置され、かつ相隣る凹部21、22の間の中央、及び相隣る凹部21と凹部22の間の中央に配置される。相隣る凹部24のピッチ間隔p2を、p2=0.1mmとしている。このような寸法で凹部24を配置したことによっても、表示領域DA内に形成された配向膜のむらが抑制された。
【0041】
(実施例4)(図7
実施例4が実施例3と異なる点は、基板1に形成される凹部群20Nの構成である。実施例4の凹部群20Nは、相隣る凹部21と凹部21の間、及び相隣る凹部21と凹部22の間に配置される各凹部24の頂点を、各凹部21、22の頂点を結ぶ直線よりも凹溝10の側に距離e=0.025mmだけ後退させたものである。このような寸法で凹部24を配置したことによっても、実施例3と同様に、表示領域DA内に形成された配向膜のむらが抑制された。
【0042】
(実施例5)(図8
実施例5が実施例1と異なる点は、基板1に形成される凹部群20Nの構成にある。実施例5の凹部群20Nは、相隣る凹部21と凹部21の間、及び相隣る凹部21と凹部22の間に、菱形からなる凹部25を配置したものである。凹部25の短い方の対角線の長さf、長い方の対角線の長さgを、f=0.03mm、g=0.10mmとしている。各凹部25の長い方の対角線上にある2つの頂点のそれぞれは各凹部21、22の頂点と底辺のそれぞれと同一直線上に配置され、かつ相隣る凹部21と凹部21の間の中央、及び相隣る凹部21と凹部22の間の中央に配置される。このような形状及び寸法で凹部25を配置した場合でも、表示領域DA内に形成された配向膜のむらが抑制された。
【0043】
(実施例6)(図9
実施例6が実施例4と異なる点は、基板1に形成される凹部群20Nの構成にある。実施例6の凹部群20Nは、実施例4の凹部群20Nにおける各凹部21を、実施例5で用いた凹部25と同一形状の菱形からなる凹部26に代えたものである。このような形状および寸法で凹部26を配置した場合でも、実施例3と同様に、表示領域DA内に形成された配向膜のむらが抑制された。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の基板1は、複数の凹溝10からなる凹溝群10Nを配置するものに限らず、単一の凹溝10を配置してなるものでも良い。
【0045】
また、上述の実施例2〜6では、膜形成領域2の外周縁に沿って、相直交する2辺(縦辺と横辺)のコーナー部に直に臨む位置に、二等辺三角形からなる凹部22が配置されている。但し、この凹部22は、配置されていなくても良い。また、上述の実施例2〜6では、相隣る凹部21と凹部22の間であって、凹部22の両側に、小形状の二等辺三角形の凹部23が配置されている。また、実施例3、4では、相隣る凹部21と凹部21の間及び相隣る凹部21と凹部22の間に、凹部23と同一形状である凹部24が配置されている。これらの凹部23、凹部24についても、必ずしも配置しなくても良い。さらに、上述の実施例におけるコーナー部に、三角形状の凹部22、凹部23、凹部24、菱形の凹部25又は凹部26を適宜置き換えて配置しても良く、あるいはこれらを適宜組み合わせて配置しても良い。
【0046】
また、実施例2では、膜形成領域2への液体の塗布に先立って、凹溝10への液滴の滴下を行うことは必ずしも必要ではない。但し、凹部20に、実施例1のように、塗布すべき液体の液滴を、膜形成領域2への塗布に先立って、凹部20に滴下しておいても良い。このようにすれば、膜形成領域2への液体の滴下によって濡れ広がる液体が、凹部群20Nを通過するときに、各凹部20内に流れ込むことを促進できる。もちろん、膜形成領域2への滴下の前に、実施例1と同様に、凹溝10に液滴を滴下しておいても良い。これにより、凹溝10の縁際での液体の跳ね返りがより一層抑制され、膜形成領域2内に生ずる膜厚のむらを抑制できる。
【0047】
さらに、実施例1と同様に、凹部20を有する基板の凹溝10の幅を、膜形成領域2より遠ざかるに従って狭くなるようにしても良いし、相隣る凹溝10と凹溝10の間の間隔Siを、凹溝10の溝幅Liよりも小さくしても良い。これにより、実施例1と同様に、表示領域DA内に形成された配向膜のむらを抑制しつつ、製品本体内における凹溝群10Nの占有スペースを小さくし、製品本体に対してより大きな表示領域DAを確保できる。
【0048】
尚、凹溝は、膜形成領域2の外周を囲む環状であっても良いし、長尺な凹溝を複数配列したものであっても良い。また、凹溝10は、膜形成領域2の外周で閉じた環状とすることには限定されず、一部に隙間がある形状であってもよい。
【0049】
また、前述の実施例では凹部群を二等辺三角形及び菱形の凹部で構成したが、他の形状、例えば、円形、楕円形、三角形や菱形以外の多角形、星型等であっても良い。各凹部20の形状は、膜形成領域2に塗布された液体が、膜形成領域2から凹溝10に向かう方向に比べて、凹溝10から膜形成領域2に向かう方向の方が流れ難くなる形状、配置であればよく、異なる形状、配置の組合せであっても良い。
【0050】
また、凹溝や凹部の縁は曲面あるいは斜面を有していてもよい。例えば、膜形成領域2の外周に沿う凹溝10が形成された基板1であって、凹溝10と膜形成領域2との間に、複数の凹部20が並置された凹部群20Nを備えるとともに、この凹部群20Nの各凹部20の形状は、基板1上に塗布された液体が、膜形成領域2から凹溝10に向かう方向に比べて凹溝10から膜形成領域2に向かう方向には流れ難い形状をなし、凹溝10及び凹部20の一方若しくは双方の縁に、曲面若しくは斜面を有する基板1であってもよい。図11に、基板1の凹溝10、凹部20の縁に垂直面を有する例(A)、斜面を有する例(B)、曲面を有する例(C)を示す。
【0051】
このように曲面あるいは斜面とすることで、縁に生じる表面張力を弱めて、凹溝10や凹部20の輪郭部での液体の盛り上がりが抑制され、この盛り上がりによって生じる液体の跳ね返りも抑制される。また、液体の凹溝10や凹部20内への侵入が容易となり、液体の濡れ広がりを受容して濡れ広がりを抑制することがより確実にできる。このような曲面あるいは斜面は、凹溝10や凹部20の全周あるいはすべての縁に設けてもよいし、縁の一部、例えば、表示領域DA側の縁にのみ設けてもよい。表示領域DA側の縁に設けると、液体の表示領域DA側への跳ね返りを抑制しつつ、より外側の周辺に濡れ広がる液量を少なくし、シール剤塗布領域への濡れ広がりを抑制する効果も大きい。もちろん、凹溝10や凹部20の縁を曲面あるいは斜面としたうえで、実施例1同様に液滴を滴下してもよい。これにより、上記の効果をさらに高めることができる。
【0052】
また、膜形成領域の外周に沿う第1の流動調整部が形成された基板1であって、第1の流動調整部と膜形成領域2との間に、複数の第2の流動調整部が並置された第2の流動調整部群を備えるとともに、各第2の流動調整部の形状は、基板1上に塗布された液体が、膜形成領域2から第1の流動調整部に向かう方向に比べて、第1の流動調整部から膜形成領域2に向かう方向には流れ難い形状をなす基板1であってもよい。
【0053】
第1の流動調整部、第2の流動調整部における「流動調整」は、液体の流動を抑制又は促進することをいう。ここで、第1の流動調整部、第2の流動調整部は、凹部20であっても、凸部であってもよい。つまり、基板1における表示領域DAと同一の高さの平坦面に対して、窪んでいるか、突出しているかは問わない。第1の流動調整部及び第2の流動調整部が双方とも凹部20であってもよいし、双方とも凸部であってもよい。第1の流動調整部及び第2の流動調整部のいずれか一方が凹部20で、他方が凸部であってもよい。
【0054】
また、第2の流動調整部は、頂角が鋭角の二等辺三角形で、この二等辺三角形の底辺が、第1の流動調整部の延在方向に平行で、かつ第1の流動調整部側に位置するように配置されていてもよい。
【0055】
第1の流動調整部は、膜形成領域の外周に互いに離隔する複数重をなすように設けられる第1の流動調整部群を形成し、膜形成領域2の外周から離隔する外側の第1の流動調整部ほど幅が小さくてもよい。
【0056】
さらに、第1の流動調整部、第2の流動調整部における縁に、曲面あるいは斜面を有してもよい。例えば、第1の流動調整部又は第2の流動調整部が凸部の場合に、縁部の側面を曲面あるいは傾斜面を有する形状としてもよい。
【0057】
また、前述の実施例では、インクジェット式の塗布ヘッドを用いる例で説明したが、液体を液滴状にして滴下するものであれば、他の方式の塗布ヘッドを用いるものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 基板
2 膜形成領域
10N 凹溝群
10、11、12、13 凹溝
20N 凹部群
20、21、22、23、24、25、26 凹部
100 塗布装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11