(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602648
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】薄板液中搬送装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/06 20060101AFI20191028BHJP
H05K 3/18 20060101ALN20191028BHJP
【FI】
C25D17/06 E
!H05K3/18 N
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-224614(P2015-224614)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-88987(P2017-88987A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】511224852
【氏名又は名称】株式会社ファシリティ
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100169247
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 佳世
(72)【発明者】
【氏名】岸 一之
【審査官】
北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−131869(JP,A)
【文献】
特開平11−349140(JP,A)
【文献】
特開平10−273799(JP,A)
【文献】
特開平11−131294(JP,A)
【文献】
特開2000−017492(JP,A)
【文献】
特開2005−213641(JP,A)
【文献】
特開平09−195093(JP,A)
【文献】
特開2003−193299(JP,A)
【文献】
特開2010−024514(JP,A)
【文献】
米国特許第06071387(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 9/00−9/12
C25D 13/00−21/22
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板を処理液中に浸漬させた状態で搬送させる薄板液中搬送装置であって、
当該処理液を収容する処理槽と、
当該薄板を垂直姿勢のまま水平方向に搬送する薄板搬送手段と、
当該薄板の搬送経路の両側に沿って配列した複数のローラとを備え、
当該ローラは、回転羽根部材を備え、当該薄板と所定間隔離れて位置し、且つ、当該薄板の搬送方向に回転自在であることを特徴とする薄板液中搬送装置。
【請求項2】
前記ローラは、回転子を鉛直方向に所定間隔をあけて複数配置したものである請求項1に記載の薄板液中搬送装置。
【請求項3】
搬送経路を通過する薄板の両面に対して、斜め後方から前記処理液を噴出する処理液噴出手段を備えた請求項1又は請求項2に記載の薄板液中搬送装置。
【請求項4】
前記薄板の搬送経路に沿って延在する薄板ガイド部材を備えた請求項1〜請求項3のいずれかに記載の薄板液中搬送装置。
【請求項5】
前記処理槽は、前記薄板の搬送方向出口側に前記処理液を回収する処理液回収部を設けた請求項1〜請求項4のいずれかに記載の薄板液中搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願に係る発明は、薄板液中搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、基板の表面に薬液を接触させて、めっき、エッチング、洗浄等の処理を行う場合に、当該基板を薬液中に浸漬させた状態で搬送させる薄板液中搬送装置が用いられている。薄板を処理液中で搬送する薄板液中搬送装置には、基板に代表されるような薄板を垂直に立たせた状態で搬送する所謂垂直搬送方式の装置がある。この所謂垂直搬送方式の薄板液中搬送装置は、例えば厚みが薄くフレキシブル性に富んだ基板に上述した薬液処理を施す場合、当該基板の上部を挟持して吊り下げた状態で搬送すると、基板自体が撓んで揺動することにより、安定した薬液処理が出来ない場合がある。そこで、搬送中の基板の垂直姿勢を維持すべく搬送路の両側には、例えば板状のガイド部材が設けられることも考えられている。しかし、このような従来のガイド部材が備わる薄板液中搬送装置は、薄板の処理液中搬送時における揺動に伴う問題が完全に解消されるわけではなく、当該基板が搬送中に当該ガイド部材と接触して傷が付く問題がある。例えば、基板に対して電気めっきを施す場合には、形成されるめっき被膜の表面に傷が発生しやすく、めっき品質の低下を招いてしまう。そのため、従来より、基板等の薄板を処理液中に浸漬させた状態で搬送させる際の当該薄板の垂直姿勢の安定性を維持するために、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板を垂直に立てた状態でめっき槽内のめっき液中を移動させて当該基板にめっきを施す縦型搬送式(所謂垂直搬送式)めっき装置について開示がされている。特許文献1に開示の縦型搬送式めっき装置は、当該基板の上部を挟持して当該基板を当該めっき槽内に垂下させるクリップと、当該めっき槽内の下部に当該基板の移動方向に沿って配置され、中央部に構成されたスリットに当該基板の下部が配置されて当該基板をガイドするガイドレールと、当該基板の下部に取り付けられ、当該基板に重力をかけて補強する基板補強治具とを有することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−24514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の所謂垂直搬送式の薄板液中搬送装置では、基板の大きさに合わせて専用の治具を用いる必要があるため汎用性に欠くという問題や、基板を保持する部分を上部と下部とに設ける必要があるため薬液処理が施されない未処理領域の増大を招くといった問題が生じてしまう。また、特許文献1に開示の所謂垂直搬送式の薄板液中搬送装置は、基板の上部がクリップで挟持され、基板の下部がガイドレールにガイドされた状態で基板が搬送されるが、基板の厚みが薄くなるほど、対流等のめっき液の動きにより基板に圧力がかかって撓みやすくなり、安定的に基板表面に均一にめっき処理を施すことが困難であった。
【0006】
以上のことから、本件発明は、薄板の様々な厚みや寸法に対応でき、且つ、当該薄板を保持する部分の面積を増大させずに、当該薄板を安定した姿勢で搬送することの可能な薄板液中搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に示す薄板液中搬送装置を提供することで、上述した課題を達成出来ることに想到した。
【0008】
本件発明に係る薄板液中搬送装置は、薄板を処理液中に浸漬させた状態で搬送させる薄板液中搬送装置であって、当該処理液を収容する処理槽と、当該薄板を垂直姿勢のまま水平方向に搬送する薄板搬送手段と、当該薄板の搬送経路の両側に沿って配列した複数のローラとを備え、当該ローラは、
回転羽根部材を備え、当該薄板と所定間隔離れて位置し、且つ、当該薄板の搬送方向に回転自在であることを特徴とする。
【0009】
また、本件発明に係る薄板液中搬送装置において、前記ローラは、回転子を鉛直方向に所定間隔をあけて複数配置したものであることが好ましい。
【0010】
また、本件発明に係る薄板液中搬送装置は、搬送経路を通過する薄板の両面に対して、斜め後方から前記処理液を噴出する処理液噴出手段を備えたことが好ましい。
【0011】
また、本件発明に係る薄板液中搬送装置は、前記薄板の搬送経路に沿って延在する薄板ガイド部材を備えたことが好ましい。
【0012】
また、本件発明に係る薄板液中搬送装置は、前記処理槽は、前記薄板の搬送方向出口側に前記処理液を回収する処理液回収部を設けたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本件発明に係る薄板液中搬送装置によれば、薄板の様々な厚みや寸法に対応でき、且つ、当該薄板を保持する部分の面積を増大させず、当該薄板を安定した姿勢で搬送することが可能となる。従って、本件発明に係る薄板液中搬送装置は、例えば基板に対して薬液処理を施すために用いた場合に、当該基板に施す薬液処理を基板の厚みや寸法を問わず均一に行えるため、安定的に高品質の基板を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本件発明の一実施形態に係る薄板液中搬送装置の概略図である。
【
図3】処理液噴出手段からの処理液の噴出角度を説明するために処理液噴出手段を上方からみた図である。
【
図4】処理液噴出手段からの処理液の噴出角度を説明するために処理液噴出手段を側方からみた図である。
【
図5】
図1に示す薄板液中搬送装置をめっき処理装置として採用したときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を用いながら、本件発明に係る薄板液中搬送装置の一実施形態について説明する。
図1は、本件発明の一実施形態に係る薄板液中搬送装置の概略図である。また、
図2は、
図1のA−A線断面図である。
【0016】
薄板液中搬送装置: 本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、薄板Wを処理液14中に浸漬させた状態で搬送させる装置である。ここで、薄板Wとしては、例えばプリント基板を用いることができ、片面基板、両面基板、多層基板、フレキシブル基板、ビルドアップ基板等の種類のものを用いることができ、その材質や構造に関して特に限定されない。そして、本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、処理液14を収容する処理槽2と、薄板Wを垂直姿勢のまま水平方向に搬送する薄板搬送手段(
図1,2中の符号3〜6を参照のこと。)と、薄板Wの搬送経路の両側に沿って配列した複数のローラ7とを構成に備えている。以下に、これらの構成について説明する。
【0017】
処理槽: 本件発明に係る薄板液中搬送装置1を構成する処理槽2は、薄板Wを浸漬する処理液14を収容する。ここで、処理槽2に収容する処理液14としては、めっき液、前処理液、後処理液、デスミア液、洗浄液、触媒付与液、エッチング液等の薬液を用いることができ、特に限定されるものではない。そして、本件発明における処理槽2は、これらの処理液14を収容することで、薄板Wに対して様々な湿式処理を施すことが出来る。
【0018】
本件発明における処理槽2は、薄板Wの搬送方向出口側に処理液14を回収する処理液回収部15を設けることが出来る。例えば
図2に示す如く、処理槽2内の薄板Wの搬送方向突き当たりの壁面に、オーバーフローした処理液14を回収する処理液回収部15を設けることで、処理槽2内に乱流が生まれるのを抑制して処理槽2内の処理液14中で薄板Wを常に安定した姿勢で搬送することが可能となる。ここで、本件発明における処理液回収部15は、
図2に示す形態に限定されず、例えば処理槽2の薄板Wの搬送方向出口側付近にオーバーフローパイプを配置する構成とすることも出来る。なお、処理液回収部15により回収された処理液14は、処理槽2に接続された配管16やポンプ17を介して処理液噴出手段12へ送られ、循環使用させる構成とすることも出来る。また、このときに、処理液回収部15で回収した処理液14を貯留槽(不図示)に収容し、ポンプ17により循環させる構成としてもよい。
【0019】
薄板搬送手段: 本件発明に係る薄板液中搬送装置1を構成する薄板搬送手段5は、薄板Wを垂直姿勢で水平方向に搬送させる構造を備えたものである。本件発明における薄板搬送手段5は、例えば
図1に示す如く、薄板Wの上部をクリップ4で挟持して直立状態に吊り下げることの可能な治具3を用い、この治具3をモータ等の駆動手段(不図示)を駆動させることで薄板Wを搬送方向に移動させる構造とすることが出来る。このように、本件発明における薄板搬送手段5は、用いる治具3に関して、薄板Wを保持する部分の面積を極力増大させない構成とすることで、例えば薄板Wに薬液処理を施す場合でも未処理領域の極小化を実現する。更に、薄板Wを搬送する際にこのような治具3を用いることで、薄板Wの様々な厚みや寸法に対応が可能となり、汎用性が向上する。なお、本件発明における薄板搬送手段5において、薄板Wを搬送する方法に関しては特に限定されず、従前の公知技術によって実施されることが出来るため、詳細な説明は省略する。
【0020】
ローラ: 本件発明に係る薄板液中搬送装置1を構成するローラ7は、処理槽2内に、薄板Wの搬送経路の両側に沿って配列して複数配置される。よって、薄板搬送手段5により搬送される薄板Wが、浮力や液流の作用等によって揺動するのを規制する。ここで、ローラ7は、例えば
図1,2に示すように、鉛直方向に位置したシャフト8上に、回転子10を、所定間隔をあけてシャフト8の軸を中心として回転自在に複数配置して備えることが出来る。このときに、回転子10は、薄板Wの搬送経路を挟んで相対向して配置されることで、薄板Wの搬送中の姿勢をより安定させることが出来る。また、シャフト8は、隣り合うシャフト8同士の間隔を薄板Wの搬送方向の長さよりも狭くすることで、薄板Wのシャフト8への巻付きを効果的に防ぐことが出来る。本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、このような構成を採ることで、例え薄板Wがフレキシブル性に富んだものであっても問題なくスムーズに搬送させることが出来る。なお、ローラ7及び回転子10に関しては、その形状、寸法、材質に関しても特に限定されず、適宜変更することが出来る。ただし、ローラ7及び回転子10の少なくとも薄板Wと接触する箇所に関しては、材質をPP(ポリプロピレン)等の樹脂とすることで薄板Wの損傷が抑止されるため好ましい。
【0021】
更に、本件発明に係る薄板液中搬送装置1において、ローラ7は、処理液14との接触により回転する回転羽根部材9を備え
る。ここで、回転羽根部材9が自身の回転に伴いローラ7を回転させるようにローラ7に接続固定されることで、処理液噴出手段12から噴出される処理液14により、ローラ7が薄板Wを搬送方向に進める方向に回転して、ローラ7と薄板Wとの間での摩擦力が低減され、薄板Wが揺動したとしても、擦り傷が付く等といった問題が確実に回避される。また、ローラ7が複数の回転子10を備える場合には、回転羽根部材9が自身の回転に伴い回転子10を回転させるように回転子10に接続固定されることで同様の効果を得ることが出来る。そして、このときの回転羽根部材9の回転によりその周囲で回転流が生じるため、ローラ7(又は回転子10)を薄板Wの搬送経路の両側に相対向して一対を一組として複数組位置することで、この回転流の作用によってより安定的に薄板Wを垂直姿勢で搬送させることが出来る。
【0022】
処理液噴出手段: また、本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、搬送経路を通過する薄板Wの両面に対して、斜め後方から処理液14を噴出する処理液噴出手段を更に構成に備えることも出来る。本件発明における処理液噴出手段12は、薄板Wの両側に向けて搬送方向に対する斜め後方から処理液14を噴出するにあたって、例えば噴出ノズル13を備えることが出来る。噴出ノズル13は、薄板Wの搬送経路を挟んで両側に相対向して位置することで、薄板Wの搬送中の姿勢を安定化させることが出来る。ここで、処理液噴出手段12からの薄板W表面に対する処理液14の噴出角度は、
図3に示す如く、薄板Wの斜め後方より薄板W表面に対して45°以上90°未満とすることが好ましい(
図3に示すθ1を参照のこと。)。処理液噴出手段12からこのような角度を付けて処理液14を噴出することで、噴出される処理液14の水圧により薄板Wが治具3からずれ動いたり脱落したりするといったような問題が確実に回避される。また、本件発明における処理液噴出手段12は、噴出する処理液14の送出圧力を調整することで、薄板Wの搬送中の揺動をより効果的に抑制することが出来る。
【0023】
更に、本件発明に係る薄板液中搬送装置1を薄板Wを薬液処理する際に用いる場合には、処理液噴出手段12より薬液14が搬送経路を通過する薄板Wの両面に対して斜め後方から噴出されることで、処理槽2内における薬液14の成分の偏りを効果的に軽減することができ、薄板Wの処理品質や処理効率を高めることが出来る。ここで、処理液噴出手段12からの薄板W表面に対する処理液14の噴出角度は、
図4に示す如く、薄板Wの搬送方向(水平方向L)より0°を超えて45°以下とすることが好ましい(
図4に示すθ2を参照のこと。)。処理液噴出手段12からこのような角度を付けて処理液14を下方に噴出することで、より均一な薬液処理を施すことが可能となると共に、処理効率の更なる向上を図ることが出来る。
【0024】
薄板ガイド部材: そして、本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、薄板Wの搬送経路に沿って延在して薄板Wを案内する薄板ガイド部材11を更に構成に備えることも好ましい。ここで、薄板ガイド部材11は、薄板Wの搬送経路に沿って延在して位置させるものであるが、例えばクリップ等を用いた取り外し自在の構造として上述したシャフト8に直接取付固定することが出来る。本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、薄板ガイド部材11を構成に備えることで、例え薄板Wがフレキシブル性に富んだものであったとしても薄板Wが搬送中に揺動して大きく変形することを確実に防ぐと共に、薄板Wがシャフト8に巻付くことが確実に防止されるため、薄板Wを処理槽2内でよりスムーズに搬送させることが可能となる。
【0025】
以上に、本件発明に係る薄板液中搬送装置1の各構成について説明したが、以下に本件発明に係る薄板液中搬送装置1の動作に関して、薄板液中搬送装置1をめっき処理装置として採用した場合を例に挙げて説明する。
【0026】
図5は、
図1に示す薄板液中搬送装置をめっき処理装置として採用したときの概略図である。本件発明の薄板液中搬送装置1は、基板Wに電気めっき処理を施すために用いる場合には、例えば
図5に示す如く、処理槽2と薄板搬送手段3〜6とローラ7との他に、基板Wに接続する陰極(陰極レール6)、及び処理槽2に設けられた陽極(陽極部材51)と、両電極に電流を供給する電源50とを備える。
【0027】
そして、薄板液中搬送装置1を用いて基板Wに電気めっきを施す場合には、
図5に示す如く、処理槽2にめっき液14を収容し、めっき液14中に基板Wを浸漬した状態で、基板Wをガイドする陰極レール6に横移動自在に支持された治具3によって、基板Wの上部を陰極レール6と電気接続された陰極クリップ4によって挟持して吊り下げる。処理槽2の両端側には、棒状又は板状の陽極部材51がそれぞれ配置され、陰極レール6が電源50のマイナス(−)側に接続され、陽極部材51が電源50のプラス(+)側に接続される。
【0028】
ここで、薄板液中搬送装置1は、陰極レール6から治具3を介して基板W上部で給電しながら、処理槽2内のめっき液14中に基板Wを垂直姿勢で水平方向に搬送させる。その結果、基板Wは、搬送経路に沿って搬送されながら(
図2中の矢印を参照のこと。)その両面にめっき処理が施される。
【0029】
このときに、本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、その構成にローラ7を備えることで、例え基板Wが剛性が弱く撓みやすいものであったり、基板Wが搬送される途中でめっき液14の流動による圧力を受けたとしても、基板Wの揺れを抑制することが出来る。このため、本件発明に係る薄板液中搬送装置1によれば、基板Wをその上部のみで保持した場合でも安定した姿勢で搬送することができ、様々な厚みや寸法の基板Wの表面に均一にめっき処理を行うことが出来る。また、ローラ7は、基板W表面と接触した場合に接触抵抗なく回転することで、基板W表面に形成されるめっき被膜に傷が付き難くなる。
【0030】
また、本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、基板Wの両側に設置された処理液噴出手段12からめっき液14を回転羽根部材9に向けて噴出してローラ7(又はローラ7に備わる回転子10)を回転させることで、めっき液14噴流が整流され、よりスムーズに基板Wを垂直姿勢で移送させることが出来る。更に、ローラ7(又はローラ7に備わる回転子10)との摩擦力が抵抗となって基板W表面に形成されるめっき被膜に傷が付くとか、処理液噴出手段12から噴出されるめっき液の水圧で基板Wが脱落するといったような問題が確実に回避される。
【0031】
本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、ローラ7が、薄板Wと所定間隔離れて位置し、且つ、薄板Wの搬送方向に回転自在に設けられるものである。本件発明に係る薄板液中搬送装置1は、このような条件でローラ7を設けることで、処理槽2に収容した処理液14中において薄板Wを地面に対して垂直となる姿勢で吊り下げたまま、薄板Wをその両面が搬送方向に沿うように且つ水平方向に安定的に搬送させることができ、薄板Wに変形等が生じるのを抑制することが出来る。よって、本件発明に係る薄板液中搬送装置1によれば、薄板Wとしてフレキシブル性に富んだ基板を用い、基板Wを薬液14中に浸漬させた状態で搬送させながら薬液処理を施す場合であっても、未処理領域を極力少なくすると共に、基板Wに対して薬液処理を均一に施すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本件発明に係る薄板液中搬送装置は、様々な寸法や形状の薄板を常に安定した姿勢に保ちながら搬送することが可能であるため、薄板の搬送中に当該薄板に傷や変形が生じるようなことがない。従って、本件発明に係る薄板液中搬送装置は、小型化、極薄化、フレキシブル化が進むプリント配線基板等の薄板を薬液に接触させて湿式処理するに際して好適に用いることができ、安定的に高品質の基板を製造することが出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 薄板液中搬送装置
2 処理槽
3 治具
4 クリップ(又は陰極クリップ)
5 薄板搬送手段
6 ガイドレール(又は陰極レール)
7 ローラ
8 シャフト
9 回転羽根部材
10 回転子
11 薄板ガイド部材
12 処理液噴出手段
13 噴出ノズル
14 処理液(又は薬液)
15 処理液回収部
16 配管
17 ポンプ
50 電源
51 陽極部材
W 薄板(又は基板)