特許第6602709号(P6602709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602709
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置、及び排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/72 20060101AFI20191028BHJP
   B01D 53/54 20060101ALI20191028BHJP
   B01D 53/58 20060101ALI20191028BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   B01D53/72ZAB
   B01D53/54
   B01D53/58
   B01D53/81
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-58457(P2016-58457)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-170326(P2017-170326A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 和浩
(72)【発明者】
【氏名】坂田 晋
(72)【発明者】
【氏名】関田 誠
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−512528(JP,A)
【文献】 特開平08−290050(JP,A)
【文献】 特開2010−042330(JP,A)
【文献】 特開昭56−078629(JP,A)
【文献】 特開2013−240779(JP,A)
【文献】 特開平09−296270(JP,A)
【文献】 特開2007−014910(JP,A)
【文献】 特開2009−062599(JP,A)
【文献】 特開2010−149082(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0248516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00−53/96
B01J 20/00−20/34
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属化合物と、金属塩基性ガスとを含む排ガスを処理する排ガス処理装置であって、
酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理する酸化部と、
前記酸化部の直後に設けられ、金属酸化物を捕集して除去する捕集部と、
金属塩基性ガスを分解し、生成する金属酸化物を吸着除去する第1除害剤を含む第1処理部と、
前記第1処理部の二次側に設けられ、非金属塩基性ガスを吸着除去する第2除害剤を含む第2処理部と、を備える排ガス処理装置。
【請求項2】
前記第1除害剤が触媒酸化剤であり、前記第2除害剤が化学吸着剤である、請求項に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記化学吸着剤が、HPO3を添着した活性炭、銀を添着した鉄マンガン酸化物、及び硫酸鉄のいずれか1以上を含む、請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
有機金属化合物と、金属塩基性ガスとを含む排ガスを処理する排ガス処理方法であって、
排ガスに酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理し、生成した金属酸化物を含む粉体を前記排ガス中から捕集除去する、第1処理と、
排ガス中の金属塩基性ガスを第1除害剤と接触させて、生成する金属酸化物を前記第1除害剤によって吸着除去した後、前記排ガスを第2除害剤と接触させて当該排ガス中から非金属塩基性ガスを吸着除去する、第2処理と、を含む、排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置及び排ガス処理方法に関するものであり、具体的には、金属塩基性ガスを含む排ガスの処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、太陽光発電パネル、及び発光ダイオード(LED)等の電子デバイスを製造する際、成膜装置等のデバイス製造装置が使用される。従来から、これらのデバイス製造装置から排出される排ガスを処理するために、除害装置が用いられている。この除害装置では、排ガス中から有害ガスが除去されて、無害化される。
【0003】
一方、近年の半導体プロセスの進化により、成膜装置として、例えば、原子層堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)装置が用いられている。このALD装置では、有機金属化合物と塩基性ガスとをプロセスガスとして使用するため、排ガス中にはこれらの化合物が共存して排出される。
【0004】
ところで、排ガス中の有害ガスを除去して無害化する方法としては、特許文献1及び特許文献2が知られている。具体的には、特許文献1には、有機金属化合物と、金属塩基性ガスとを含む排ガスの除害処理装置及び除害処理方法として、図3に示すように、酸化部102において有機金属化合物に酸化ガスを添加して酸化処理し、粉体状にしてフィルター103で捕集除去した後、第1除害部104において金属塩基性ガスを酸化触媒によって分解し、粉体状にしてフィルター103’で捕集除去する除害処理装置101及び除害方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、アンモニアやトリメチルアミン(TMA)等の非金属塩基性ガスを含む排ガスの除害装置及び除害処理方法として、図4に示すように、第1処理部204において硫酸鉄(FeSO)を活性炭に担持させた浄化剤を酸化吸着剤として用いる除害処理装置201及び除害方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5133231号公報
【特許文献2】特開平05−154333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された除害方法では、排ガス中に含まれる有機金属化合物及び金属塩基性ガスの除害処理は満足するものの、除害処理時において、金属塩基性ガスを分解した際に副生する非金属塩基性ガスの除害処理が考慮されていないため、除害処理後の排ガス中に有害な非金属塩基性ガスが含まれてしまうという課題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された除害方法では、排ガス中に含まれる非金属塩基性ガスが少量の場合には効果があるが、排ガス中に大量の非金属塩基性ガスが含まれる場合には十分に除去できないという課題があった。特に、金属塩基性ガスが含まれる排ガスを処理した場合、酸化吸着剤によって金属塩基性ガスが分解されて非金属塩基性ガスが副生するため、除去性能が充分ではないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、少なくとも金属塩基性ガスを含む排ガスを安全に除害処理することが可能な、排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有する。
(1) 少なくとも金属塩基性ガスを含む排ガスを処理する排ガス処理装置であって、金属塩基性ガスを分解し、生成する金属酸化物を吸着除去する第1除害剤を含む第1処理部と、前記第1処理部の二次側に設けられ、非金属塩基性ガスを吸着除去する第2除害剤を含む第2処理部と、を備える排ガス処理装置。
(2) 有機金属化合物と、金属塩基性ガスとを含む排ガスを処理する排ガス処理装置であって、酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理する酸化部と、前記酸化部の直後に設けられ、金属酸化物を捕集して除去する捕集部と、金属塩基性ガスを分解し、生成する金属酸化物を吸着除去する第1除害剤を含む第1処理部と、前記第1処理部の二次側に設けられ、非金属塩基性ガスを吸着除去する第2除害剤を含む第2処理部と、を備える排ガス処理装置。
(3) 前記第1除害剤が触媒酸化剤であり、前記第2除害剤が化学吸着剤である、前項1又は2に記載の排ガス処理装置。
(4) 前記化学吸着剤が、HPOを添着した活性炭、銀を添着した鉄マンガン酸化物、及び硫酸鉄のいずれか1以上を含む、前項1乃至3のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
(5) 少なくとも金属塩基性ガスを含む排ガスを処理する排ガス処理方法であって、排ガス中の金属塩基性ガスを第1除害剤と接触させて、生成する金属酸化物を前記第1除害剤によって吸着除去した後、前記排ガスを第2除害剤と接触させて当該排ガス中から非金属塩基性ガスを吸着除去する、排ガス処理方法。
(6) 有機金属化合物と、金属塩基性ガスとを含む排ガスを処理する排ガス処理方法であって、排ガスに酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理し、生成した金属酸化物を含む粉体を前記排ガス中から捕集除去する、第1処理と、排ガス中の金属塩基性ガスを第1除害剤と接触させて、生成する金属酸化物を前記第1除害剤によって吸着除去した後、前記排ガスを第2除害剤と接触させて当該排ガス中から非金属塩基性ガスを吸着除去する、第2処理と、を含む、排ガス処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排ガス処理装置及び排ガス処理方法は、デバイス製造装置から排出される、少なくとも金属塩基性ガスを含む排ガスを安全に除害処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である排ガス処理装置の構成の一例を示す系統図である。
図2】本発明の一実施形態である排ガス処理装置の構成の他の例を示す系統図である。
図3】従来の排ガス処理装置の構成の一例を示す系統図である。
図4】従来の排ガス処理装置の構成の他の例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である排ガス処理装置の構成について、その運転方法(すなわち、排ガス処理方法)とともに図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<排ガス処理装置>
先ず、本実施形態の一実施形態である排ガス処理装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態の排ガス処理装置1の構成の一例を示す系統図である。図1に示すように、本実施形態の排ガス処理装置1は、酸化部2、捕集部3、第1処理部4、及び第2処理部5を備えて概略構成されている。また、排ガス処理装置1は、チャンバ11及び真空ポンプ12を備えるデバイス製造装置10の後段(二次側)に設けられている。すなわち、排ガス処理装置1は、チャンバ11内に有機金属化合物と金属塩基性ガスとを供給して成膜した後に真空ポンプ12によってデバイス製造装置10の後段に排出された、上記有機金属化合物及び金属塩基性ガスを含む排ガスを除害処理して無害化するための装置である。
【0015】
除害対象となる有機金属化合物としては、デバイス製造装置10で用いられる原料ガスであれば、特に限定されるものではないが、例えば、TMA(トリメチルアルミニウム)、TEA(トリエチルアルミニウム)等が挙げられる。また、有機金属化合物として、これらのうちのいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上のガスを混合して用いてもよい。
【0016】
金属塩基性ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタニウム)、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミノチタニウム)、TDMAH(テトラキスジメチルアミノハフニウム)、TEMAH(テトラキスエチルメチルアミノハフニウム)、TDEAH(テトラキスジメチルアミノハフニウム)、TEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)、TBTDET(ターシャリーブチルイミドトリスジメチルアミノタンタリウム)、PDMAT(ペンタキスジメチルアミノタンタリウム)、AHEAD(ヘキサキスエチルアミノジシラン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)、4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン)等が挙げられる。また、金属塩基性ガスとして、これらの群のうちのいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上のガスを混合して用いてもよい。
【0017】
酸化部2は、排ガス中に酸化ガスを添加し、当該排ガス中の有機金属化合物と酸化ガスとを混合して酸化処理するために設けられている。酸化ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、酸素、空気、又は酸素富化空気等が挙げられる。
【0018】
捕集部3は、酸化部2において有機金属化合物が酸化処理された際に生成する金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム等)の微粒子を捕集して除去するために、上記酸化部2の直後(二次側)に設けられている。捕集部3としては、金属酸化物の微粒子を捕集して除去可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば、PALL製PFT30型(商品名「ポリファインII」)等のフィルターが挙げられる。
【0019】
第1処理部4は、金属塩基性ガスを除害するために設けられている。なお、本実施形態では、第1処理部4が、酸化部2及び捕集部3の後段(二次側)に設けられた構成について説明する。本実施形態の排ガス処理装置1では、排ガス中に含まれる金属塩基性ガスは、酸化部2及び捕集部3では除去されずに、後段に設けられた第1処理部4に到達する。
【0020】
第1処理部4は、排ガス中に含まれる金属塩基性ガスを分解し、生成する金属酸化物を吸着除去する第1除害剤を含んでいる。第1除害剤としては、上述した金属塩基性ガスを分解するとともに、その際に生成する金属酸化物を吸着除去できる触媒酸化剤であれば、特に限定されるものではない。このような触媒酸化剤としては、具体的には、例えば、硫酸鉄(FeSO)を添着した活性炭等が挙げられる。
【0021】
第2処理部5は、非金属塩基性ガスを除害するために、第1処理部4の後段(二次側)に設けられている。なお、本実施形態では、デバイス製造装置10からの排ガス中に、非塩基性ガスが含まれていない場合について説明する。本実施形態の排ガス処理装置1では、第1処理部4において排ガス中に含まれる金属塩基性ガスを分解した際に、金属酸化物とともに非金属塩基性ガスが生成する。生成した非金属塩基性ガスは、第1処理部4では除去されずに、排ガス中に含まれた状態で第2処理部5に到達する。
【0022】
非金属塩基性ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、MMA(モノメチルアミン)、MEA(モノエチルアミン)、DMA(ジメチルアミン)、MEA(メチルエチルアミン)、DEA(ジエチルアミン)、NH(アンモニア)等が挙げられる。また、非金属塩基性ガスとしては、これらの群のうちのいずれか1種が単独で含まれていてもよいし、2種以上のガスが混合して含まれていてもよい。
【0023】
第2処理部5は、排ガス中に含まれる非金属塩基性ガスを吸着除去する第2除害剤を含んでいる。第2除害剤としては、上述した非金属塩基性ガスを吸着除去できる化学吸着剤であれば、特に限定されるものではない。このような化学吸着剤としては、具体的には、例えば、HPOを添着した活性炭、銀を添着した鉄マンガン酸化物、及び硫酸鉄(FeSO)等が挙げられる。また、化学吸着剤としては、これらの群のうちのいずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
<排ガス処理方法>
次に、本実施形態の排ガス処理方法(すなわち、上述した排ガス処理装置1の運転方法)の一例について説明する。
本実施形態における排ガス処理方法は、有機金属化合物と金属塩基性ガスとを含む排ガスを処理する排ガス処理方法であり、排ガスに酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理し、生成した金属酸化物を含む粉体を排ガス中から捕集除去する工程(第1処理)と、排ガス中の金属塩基性ガスを第1除害剤と接触させて、生成する金属酸化物を第1除害剤によって吸着除去した後、排ガスを第2除害剤と接触させて当該排ガス中から非金属塩基性ガスを吸着除去する工程(第2処理)とを含んで、概略構成されている。
【0025】
(第1処理)
具体的には、先ず、図1に示すように、有機金属化合物と金属塩基性ガスとをプロセスガスとして真空蒸着チャンバ(チャンバ)11に導入する。チャンバ11に導入されたプロセスガス中の有機金属化合物と金属塩基性ガスは、成膜にサブ%程度使用された後、残り99%以上が排ガスとして真空ポンプ12によって、デバイス製造装置10の外側に排出される。次いで、デバイス製造装置10から排出された排ガスを、後段に設けられた排ガス処理装置1に導入する。ここで、排ガスの空間速度(S/V)が4000/hr以下となるように排ガス処理装置1に導入すると、効率良く除害処理することができる。
【0026】
第1処理では、先ず、排ガス処理装置1内へ導入された排ガスを、酸化部2において酸化ガスを添加して混合する。これにより、排ガス中の不安定な有機金属化合物が酸化されて金属酸化物の微粒子になる。これに対して、排ガス中の金属塩基性ガスは比較的安定なため、酸化ガスによって酸化、粒子化されない。
【0027】
排ガスへの酸化ガスの添加量としては、例えば、金属塩基性ガスの流量(L/min)に対して200倍以上の流量の酸化ガスを混合すると、効率良く除害処理することができる。また、排ガスの総量に対して金属塩基性ガスの総濃度が1%を超える場合には、総濃度が1%以下になるように排ガスに酸化剤を添加して混合することにより、吸着剤の異常発熱を抑制することができる。さらに、有機金属化合物が酸化される際の副生成物であるメタン(CH)が、爆発下限の濃度の1/2未満となるまで希釈できるように酸化ガスを混合することが好ましい。
【0028】
次に、捕集部3において、酸化部2で生成した金属酸化物の微粒子を捕集、除去する。以上のように、第1処理によって、排ガス中から有機金属化合物を除害することができる。なお、排ガス中に含まれる金属塩基性ガスは、酸化部2及び捕集部3を通り抜ける。
【0029】
(第2処理)
第2処理では、先ず、第1処理後の排ガスを第1処理部4に導入する。この第1処理部4では、捕集部3のフィルターを通りに抜けた排ガス中の金属塩基性ガスが触媒酸化剤(第1除害剤)との反応で分解して、金属酸化物と非金属塩基性ガスとが生成し、金属酸化物が吸着除去される。また、副生した非金属塩基性ガスは第1処理部4では除去されずに、排ガス中に含まれて第2処理部5に送られる。
【0030】
次に、第2処理部5において、第1処理部で副生した非金属塩基性ガスを化学吸着剤(第2除害剤)によって吸着除去する。以上のように、第2処理によって、排ガス中から金属塩基性ガスと、副生する非金属塩基性ガスとを除害することができる。
すなわち、本実施形態の排ガス処理方法によれば、上述した第1処理及び第2処理によって、排ガス中に含まれる、有機金属化合物、金属塩基性ガス、及び副生する非金属塩基性ガスを安全に除害処理することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の排ガス処理装置1によれば、酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理する酸化部2と、上記酸化部2の直後に設けられ、金属酸化物を捕集して除去する捕集部3と、金属塩基性ガスを分解し、生成する金属酸化物を吸着除去する触媒酸化剤(第1除害剤)を含む第1処理部4と、上記第1処理部4の二次側に設けられ、第1処理部4で副生する非金属塩基性ガスを吸着除去する化学吸着剤(第2除害剤)を含む第2処理部5と、を備える構成であるため、排ガス中に含まれる、有機金属化合物、金属塩基性ガス、及び副生する非金属塩基性ガスを当該排ガス中から安全に除害処理することができる。
【0032】
また、本実施形態の排ガス処理方法によれば、排ガスに酸化ガスを添加して有機金属化合物を酸化処理し、生成した金属酸化物を含む粉体を排ガス中から捕集除去する第1処理と、第1処理後の排ガス中の金属塩基性ガスを第1除害剤と接触させて、生成した金属酸化物を上記第1除害剤によって吸着除去した後、排ガスを第2除害剤と接触させて当該排ガス中から副生した非金属塩基性ガスを吸着除去する第2処理と、を含む構成であるため、排ガス中に含まれる、有機金属化合物、金属塩基性ガス、及び副生する非金属塩基性ガスを当該排ガス中から安全に除害処理することができる。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態の排ガス処理装置1及び排ガス処理方法では、デバイス製造装置10から排出される排ガス中に有機金属化合物及び金属塩基性ガスを含む場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図2に示すように、有機金属化合物、金属塩基性ガス及び非金属塩基性ガスをプロセスガスとしてチャンバ11に導入するとともに、デバイス製造装置10から排出される排ガス中に上記金属塩基性ガス及び非金属塩基性ガスが含まれる構成であってもよい。なお、除害処理対象となる排ガス中に最初から非金属塩基性ガスが含まれる場合であっても、排ガス処理装置1の構成、及び排ガス処理方法の構成は、上述した実施形態と同様である。
【0034】
また、上述した実施形態では、酸化部2及び捕集部3を第1処理部4及び第2処理部5の前段(一次側)に設けて、排ガス中の有機金属化合物を除害する第1処理後に、金属塩基性ガスを除害する第2処理を行う構成について説明したが、酸化部2の直後に捕集部3が設けられるとともに、第1処理部4の後段に第2処理部5が設けられていれば、これに限定されるものではない。具体的には、例えば、酸化部2及び捕集部3が、第1処理部4と第2処理部5との間に設けられた排ガス処理装置であってもよいし、酸化部2及び捕集部3が第2処理部5の後段に設けられた排ガス処理装置であってもよい。
【0035】
また、本発明の排ガス処理装置及び排ガス処理方法によれば、排ガス中には少なくとも金属塩基性ガスが含まれていればよく、第1処理部4と、この第1処理部4の後段に第2処理部5とが設けられた排ガス処理装置を用いて、排ガス中から金属塩基性ガスと、副生した非金属塩基性ガスとを除害処理することができればよい。
【0036】
以下、具体例を示す。
(実施例1)
図1に示す、本発明の排ガス処理装置1を用いて、排ガスの除害処理を行った。
具体的には、先ず、有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)と金属塩基性ガス(テトラキスジメチルアミノチタニウム、TDMAT)をプロセスガスとして真空蒸着チャンバ11に導入した。チャンバ11に導入された有機金属(トリメチルアルミニウム)と金属塩基性ガス(TDMAT)は、成膜にサブ%程度が使用された後、残り99%以上が真空ポンプ12によって、デバイス製造装置10から排ガスとして排出され、これを排ガス処理装置1に導入した。
【0037】
次に、排ガス処理装置1に導入した排ガスに、酸化部102において酸化ガス(空気またはO)を供給して混合した。これにより、下記反応式に示すように、排ガス中の有機金属(トリメチルアルミニウム)は、酸化されて金属酸化物(Al)の微粒子となった。一方、排ガス中の金属塩基性ガス(TDMAT)は、酸化ガス(空気またはO)によって酸化されなかった。
「トリメチルアルミニウムの酸化反応」
(CHAL+O→AL+CH
【0038】
次に、生成した金属酸化物(Al)の微粒子を捕集部3のフィルターで捕集除去した。次いで、捕集部3のフィルターを通りに抜けた金属塩基性ガス(TDMAT)を含む排ガスを第1処理部4に導入した。この第1処理部4において、金属塩基性ガス(TDMAT)を触媒酸化剤である硫酸鉄(FeSO)との反応で分解し、生成した金属酸化物(酸化チタン、TiO)を当該触媒酸化剤によって吸着除去した(下記反応式を参照)。
「TDMATの酸化反応」
(CHN[N(CHTi+O→TiO+(CHNH
【0039】
次に、第1処理部4で副生した非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を含む排ガスを第2処理部5に導入した。この第2処理部5において、非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を化学吸着剤であるリン酸(HPO)を添着した活性炭と反応させて化学吸着することにより、排ガス中の有害成分を除害することができた。
【0040】
したがって、本発明の排ガス処理装置1によれば、酸化部2及びその直後に設けた捕集部3によって排ガス中に含まれる有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)を、第1処理部4及びその後段に設けた第2処理部5によって排ガス中に含まれる金属塩基性ガス(TDMAT)と、副生する非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)とを、安全に除害処理することができた。
【0041】
(実施例2)
図2に示す、本発明の排ガス処理装置1を用いて、排ガスの除害処理を行った。
具体的には、先ず、有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)、金属塩基性ガス(テトラキスジメチルアミノチタニウム、TDMAT)、及び非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)をプロセスガスとして真空蒸着チャンバ11に導入した。チャンバ11に導入された有機金属(トリメチルアルミニウム)、金属塩基性ガス(TDMAT)、及び非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)は、成膜にサブ%程度が使用された後、残り99%以上が真空ポンプ12によって、デバイス製造装置10から排ガスとして排出され、これを排ガス処理装置1に導入した。
【0042】
次に、排ガス処理装置1に導入した排ガスに、酸化部102において酸化ガス(空気またはO)を供給して混合した。これにより、下記反応式に示すように、排ガス中の有機金属(トリメチルアルミニウム)は、酸化されて金属酸化物(Al)の微粒子となった。一方、排ガス中の金属塩基性ガス(TDMAT)及び非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)は、酸化ガス(空気またはO)によって酸化されなかった。
「トリメチルアルミニウムの酸化反応」
(CHAL+O→AL+CH
【0043】
次に、生成した金属酸化物(Al)の微粒子を捕集部3のフィルターで捕集除去した。次いで、捕集部3のフィルターを通りに抜けた金属塩基性ガス(TDMAT)及び非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を含む排ガスを第1処理部4に導入した。この第1処理部4において、金属塩基性ガス(TDMAT)を触媒酸化剤である硫酸鉄(FeSO)との反応で分解し、生成した金属酸化物(酸化チタン、TiO)を当該触媒酸化剤によって吸着除去した(下記反応式を参照)。
「TDMATの酸化反応」
(CHN[N(CHTi+O→TiO+(CHNH
【0044】
次に、元から排ガス中に含まれるとともに、第1処理部4で副生した非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を含む排ガスを第2処理部5に導入した。この第2処理部5において、非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を化学吸着剤であるリン酸(HPO)を添着した活性炭と反応させて化学吸着することにより、排ガス中の有害成分を除害することができた。
【0045】
したがって、本発明の排ガス処理装置1によれば、酸化部2及びその直後に設けた捕集部3によって有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)を、第1処理部4及びその後段に設けた第2処理部5によって金属塩基性ガス(TDMAT)及び非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を、安全に除害処理することができた。
【0046】
(比較例1)
図3に示す、従来の除害処理装置101を用いて、排ガスの除害処理を行った。
具体的には、先ず、有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)と金属塩基性ガス(テトラキスジメチルアミノチタニウム、TDMAT)をプロセスガスとして真空蒸着チャンバ11に導入した。チャンバ11に導入された有機金属(トリメチルアルミニウム)と金属塩基性ガス(TDMAT)は、成膜にサブ%程度が使用された後、残り99%以上が真空ポンプ12によって、デバイス製造装置10から排ガスとして排出され、これを除害処理装置101に導入した。
【0047】
次に、除害処理装置101に導入した排ガスに、酸化部102において酸化ガス(空気またはO)を供給して混合した。これにより、下記反応式に示すように、排ガス中の有機金属(トリメチルアルミニウム)は、酸化されて金属酸化物(Al)の微粒子となった。一方、排ガス中の金属塩基性ガス(TDMAT)は、酸化ガス(空気またはO)によって酸化されなかった。
「トリメチルアルミニウムの酸化反応」
(CHAL+O→AL+CH
【0048】
次に、生成した金属酸化物(Al)の微粒子を捕集部103のフィルターで捕集除去した。次いで、捕集部103のフィルターを通りに抜けた金属塩基性ガス(TDMAT)を含む排ガスを第1処理部104に導入した。この第1処理部104において、金属塩基性ガス(TDMAT)を触媒酸化剤との反応で分解し、生成した金属酸化物(酸化チタン、TiO)を捕集部103’によって捕集除去した(下記反応式を参照)。
「TDMATの酸化反応」
(CHN[N(CHTi+O→TiO+(CHNH
【0049】
しかしながら、第1処理部104で副生した非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)は、捕集部103’のフィルターでは捕集除去できずに通過してしまい、有害な非金属塩基性ガス(ジメチルアミン)が系外に放出された。
【0050】
したがって、従来の除害装置101では、排ガス中に含まれる有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)と金属塩基性ガス(TDMAT)については安全に除害処理できるが、金属塩基性ガスを分解処理する際に副生する非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を安全に除害処理できないことがわかった。
【0051】
(比較例2)
図4に示す、従来の除害装置201を用いて排ガスの除害処理を行った。
具体的には、先ず、有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)と金属塩基性ガス(テトラキスジメチルアミノチタニウム、TDMAT)をプロセスガスとして真空蒸着チャンバ11に導入した。チャンバ11に導入された有機金属(トリメチルアルミニウム)と金属塩基性ガス(TDMAT)は、成膜にサブ%程度が使用された後、残り99%以上が真空ポンプ12によって、デバイス製造装置10から排ガスとして排出され、これ除害処理装置201の第1処理部204に導入した。
【0052】
除害処理装置201の第1処理部204に導入された排ガス中の有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)の一部と金属塩基性ガス(TDMAT)は除害処理されるものの、副生した非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)が系外に放出された。
【0053】
したがって、従来の除害装置201では、排ガス中に含まれる有機金属(トリメチルアルミニウム、(CHAl)の一部と、金属塩基性ガス(TDMAT)については安全に除害処理できるが、金属塩基性ガスを分解処理する際に副生する非金属塩基性ガス(ジメチルアミン、(CHNH)を安全に除害処理できないことがわかった。
【符号の説明】
【0054】
1・・・排ガス処理装置
2・・・酸化部
3・・・捕集部
4・・・第1処理部
5・・・第2処理部
10・・・デバイス製造装置
11・・・チャンバ
12・・・真空ポンプ
図1
図2
図3
図4