(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状の弁本体の側面部に形成された開口部に継手部材が挿入されて接続され、前記側面部における前記開口部の反対側に一又は複数の他の開口部が形成されるとともに、前記他の開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が前記弁本体に収容されるスライド式切換弁であって、
前記継手部材の外周面には、前記開口部の内周面を押圧する3つ以上の突起部が、周方向に並んで形成され、
前記突起部が前記継手部材の端面まで連続するように延び、
前記開口部は、前記側面部から外側に向かって突出するように形成されたバーリング部によって構成され、
前記突起部が前記バーリング部の全体に亘って延びていることを特徴とするスライド式切換弁。
筒状の弁本体の側面部に形成された開口部に継手部材が挿入されて接続され、前記弁本体に、前記開口部の反対側に一又は複数の他の開口部が形成されるとともに、該他の開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が収容されるスライド式切換弁を製造する製造方法であって、
前記側面部から外側に向かって突出するように形成されたバーリング部によって構成された前記開口部に前記継手部材を挿入した状態において、前記他の開口部に突起形成治具を通過させ、前記継手部材の内側に挿入して変形させることにより、前記継手部材の外周面に、前記開口部の内周面を押圧するとともに周方向に並び且つ当該継手部材の端面まで連続して前記バーリング部の全体に亘って延びる3つ以上の突起部を形成し、
前記継手部材の外周面と前記開口部の周囲とをろう付けによって接続することを特徴とするスライド式切換弁の製造方法。
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1又は2に記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように周囲が突出した接続口に吐出管を挿入する際、挿入深さが深くなると、吐出管の先端が弁本体内の部材(例えば弁部材)に接近することから、吐出管から弁本体内に流れ込む流体の流量が低下してしまう。一方、挿入深さが浅くなると、流量は増大するものの接合強度が低下してしまう。従って、挿入深さのバラツキは、吐出管から弁本体内に流れ込む流体の流量や、接合強度にバラツキが生じる原因となっていた。また、接続口が立ち上がるように形成されていなくても、同様に、挿入深さのバラツキが、吐出管から弁本体内に流れ込む流体の流量や、接合強度のバラツキの原因となり得る。
【0005】
吐出管を弁本体に挿入する際、吐出管を所定の挿入深さとし、且つ、傾きなく挿入するためには、接続口の内径と吐出管の外径とを近づけることが好ましいが、内径と外径とが一致してしまうと接続口に吐出管を挿入することが困難になってしまう。また、溶融したろう材が接続口と吐出管との間に浸透しにくくなる。このため、吐出管の外径を多少小さめに形成しなければならず、固定前に接続口内で吐出管が動いて挿入深さにバラツキが生じてしまったり、吐出管が正規の方向に対して傾く可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、弁本体に対する継手部材の挿入深さのバラツキおよび傾きを抑制することができるスライド式切換弁、スライド式切換弁の製造方法および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体の側面部に形成された開口部に継手部材が挿入されて接続され、前記側面部における前記開口部の反対側に一又は複数の他の開口部が形成されるとともに、前記他の開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が前記弁本体に収容されるスライド式切換弁であって、前記継手部材の外周面には、前記開口部の内周面を押圧する3つ以上の突起部が、周方向に並んで形成され、前記突起部が前記継手部材の端面まで連続するように延び
、前記開口部は、前記側面部から外側に向かって突出するように形成されたバーリング部によって構成され、前記突起部が前記バーリング部の全体に亘って延びていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、継手部材の外周面に設けられた突起部が開口部の内周面を押圧することで、開口部内で継手部材が軸方向にずれにくく、弁本体に対する継手部材の挿入深さのバラツキを抑制することができる。さらに、このような突起部が3つ以上形成されていることで、継手部材が3点以上において開口部の内周面に当接し、傾きを抑制することができる。
【0009】
この際、本発明のスライド式切換弁では、前記3つ以上の突起部は、径方向において互いに対向しないように配置されていることが好ましい。このような構成によれば、継手部材が傾くことをさらに抑制することができる。即ち、径方向に対向する2点において継手部材が開口部の内周面に当接している構成では、この2点を支点として継手部材が回動する可能性があるのに対し、突起部が径方向において対向していないことから、このような回動を抑制することができる。さらに、継手部材の外周面は、突起部の反対側において突起部の形成されない部分となっている。継手部材の外周面と開口部の周囲とをろう付けによって固定する場合、外周面と内周面との間のうち突起部が形成されていない部分には、継手部材と開口部との間に略均一な隙間が形成されることから、ろう材が浸透しやすく、気密性を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明のスライド式切換弁では、前記突起部は、前記継手部材の軸方向を長手方向とするオーバル状又は長方形状の押圧面を有することが好ましい。このような構成によれば、軸方向において、開口部の内周面に対する突起部の当接範囲が広くなり、継手部材の傾きをさらに抑制することができる。
【0011】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記外周面には、それぞれ周方向に並んだ3つ以上の前記突起部によって構成された突起部列が、前記継手部材の軸方向に沿って並ぶように複数列形成されていることが好ましい。このような構成によれば、軸方向において、突起部が開口部の内周面に対して複数箇所で当接し、継手部材の傾きをさらに抑制することができる。
【0012】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記継手部材の軸方向に隣り合う2列の前記突起部列において、前記突起部同士が前記継手部材の軸方向に隣り合わないように配置されていることが好ましい。このような構成によれば、突起部が軸方向に隣り合わないように互い違いに配置されていることで、突起部と、外周面のうち突起部が形成されていない部分とが軸方向に並ぶ。また、突起部が形成されない部分には上記のようにろう材が浸透しやすい。従って、周方向の全体に亘ってろう材を浸透させ、気密性をさらに向上させることができる。また、突起部が軸方向に隣り合う構成と比較して、突起部が開口部の内周面に当接する周方向の当接点数を増やすことができ、継手部材の傾きをさらに抑制することができる。
【0013】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記開口部は、前記側面部から外側に向かって突出するように形成されたバーリング部によって構成されていることが好ましい。このような構成によれば、バーリング部の突出寸法に応じて継手部材の挿入深さを調節することができ、流量を増大させつつ接合強度を確保することができる。
【0014】
また、本発明のスライド式切換弁の製造方法は、筒状の弁本体の側面部に形成された開口部に継手部材が挿入されて接続され、前記弁本体に、前記開口部の反対側に一又は複数の他の開口部が形成されるとともに、該他の開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が収容されるスライド式切換弁を製造する製造方法であって、
前記側面部から外側に向かって突出するように形成されたバーリング部によって構成された前記開口部に前記継手部材を挿入した状態において、前記他の開口部に突起形成治具を通過させ、前記継手部材の内側に挿入して変形させることにより、前記継手部材の外周面に、前記開口部の内周面を押圧するとともに周方向に並び且つ当該継手部材の端面まで連続
して前記バーリング部の全体に亘って延びる3つ以上の突起部を形成し、前記継手部材の外周面と前記開口部の周囲とをろう付けによって接続することを特徴とする。
【0015】
このような本発明のスライド式切換弁の製造方法によれば、上記と同様に、継手部材の外周面に3つ以上の突起部を形成することで、弁本体に対する継手部材の挿入深さのバラツキおよび傾きを抑制することができる。さらに、継手部材を開口部に挿入してから突起部を形成することで、予め突起部が形成された継手部材を開口部に挿入する方法と比較して、容易に挿入することができるとともに、突起部による押圧力を向上させることができる。このように押圧力が向上することで、弁本体に対して継手部材を仮接続した状態でろう付け等によって本接続する際に、継手部材のずれを抑制することができる。
【0016】
尚、突起形成治具を継手部材の内側に挿入することにより、突起部を形成するのに加え、継手部材のうち挿入された部分を周方向全体に亘って膨張させ、外周面全体が開口部の内周面を押圧するように変形させてもよい。このようにすれば、継手部材の外周面と開口部の周囲とをろう付けした際に、外周面と内周面との間をろう材が通過しにくく、弁本体における弁部材が収容された空間へのろう材の侵入を抑制することができる。
【0017】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、上記いずれかに記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。このような本発明によれば、スライド式切換弁において、弁本体に対する継手部材の挿入深さのバラツキおよび継手部材の傾きを抑制することができる。このため、継手部材から弁本体内に流れ込む流体のバラツキが抑制されることから、冷凍サイクルシステムの運転効率のバラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスライド式切換弁およびスライド式切換弁の製造方法によれば、継手部材の外周面に3つ以上の突起部が形成されて開口部の内周面を押圧することで、弁本体に対する継手部材の挿入深さのバラツキおよび傾きを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)10は、例えば冷凍サイクル1に設けられるものである。冷凍サイクル1は、ルームエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器3と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器4と、室外熱交換器3と室内熱交換器4との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁5と、四方切換弁10と、四方切換弁10の流路を切換え制御するパイロット電磁弁6と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁5に限らず、キャピラリでもよい。
【0021】
この冷凍サイクル1は、
図1に示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室外熱交換器3、膨張弁5、室内熱交換器4、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、加温モード(暖房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室内熱交換器4、膨張弁5、室外熱交換器3、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、パイロット電磁弁6による四方切換弁10の切換え動作によって行われる。
【0022】
本発明の実施形態に係る四方切換弁10は、
図2にも示すように、円筒状の弁本体11と、この弁本体11の内部にスライド自在に設けられた弁体12と、圧縮機2の吐出口に連通する継手部材としての高圧側導管(D継手)13と、圧縮機2の吸込口に連通する低圧側導管(S継手)14と、室内熱交換器4に連通する室内側導管(E継手)15と、室外熱交換器3に連通する室外側導管(C継手)16と、を備えて構成されている。
【0023】
円筒状の弁本体11は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体17,18と、弁本体11の内部に固定された弁座19と、を有し、全体に密閉されたシリンダーとして構成されている。栓体17,18には、それぞれパイロット電磁弁6に連通された導管17A,18Aが接続されている。弁座19には、低圧側導管14、室内側導管15、及び室外側導管16のそれぞれの先端が挿入されるとともに、後述する第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bを構成する開口が設けられている。弁座19の上面19Aは、弁体12をスライド案内する案内面となっている。
【0024】
弁本体11には、その側面部111に開口した複数のポート11A,11B,11C,11Dが形成されている。すなわち、高圧側導管13が接続されて弁本体11の内部に冷媒を流入させる開口部としての流入ポート11Aと、流入ポート11Aに対して弁本体11の側面部111の径方向反対側にて弁座19に開口する他の開口部としての第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bと、が設けられている。流出ポート11Bは、弁本体11の軸方向略中央に設けられ、第一ポート11Cは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの一方側(
図2の左側)に隣り合って設けられ、第二ポート11Dは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの他方側(
図2の右側)に設けられている。
【0025】
流出ポート11Bには、低圧側導管14が接続され、第一ポート11Cに室内側導管15が接続されることで、当該第一ポート11Cが室内側ポートを構成し、第二ポート11Dに室外側導管16が接続されることで、当該第二ポート11Dが室外側ポートを構成している。低圧側導管14、室内側導管15及び室外側導管16は、それぞれ流出ポート11B、第一、二ポート11C,11D周辺の弁本体11及び弁座19にろう付け固定されている。
【0026】
弁体12は、弁本体11の内周面に摺接する左右一対のピストン体21,22と、一対のピストン体21,22を連結して弁本体11の軸方向に沿って延びる連結部材23と、連結部材23に支持される弁部材24と、を有して構成されている。弁本体11の内部空間は、一対のピストン体21,22間に形成される高圧室R1と、一方のピストン体21と栓体17との間に形成される第一作動室R2と、他方のピストン体22と栓体18との間に形成される第二作動室R3と、に仕切られている。
【0027】
連結部材23は、金属板材からなり、弁本体11の軸方向に沿って延び弁座19の上面19Aと平行に設けられる連結板部23Aと、連結板部23Aの一方側端部が折り曲げられてピストン体21に固定される固定片部23Bと、連結板部23Aの他方側端部が折り曲げられてピストン体22に固定される固定片部23Cと、を有して形成されている。連結板部23Aには、弁部材24を保持する保持孔23Dと、冷媒を流通させる2箇所の貫通孔23Eと、が形成されている。
【0028】
弁部材24は、合成樹脂製の一体成形部材であって、弁座19に向かって凹状に開口した椀部25と、この椀部25の開口縁から外方に延びるフランジ部26と、を有して形成されている。椀部25は、平面視で長円形状を有したドーム状に形成され、連結部材23の保持孔23Dに挿入されている。椀部25の内部には、流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させて第二ポート11Dを連通させないか、又は、流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させて第一ポート11Cを連通させないような連通空間R4が形成されている。
【0029】
フランジ部26は、弁座19の上面19Aと摺接する摺接面26Aと、この摺接面26Aに開口して椀部25の内部に連通する開口部25Aと、を有している。このフランジ部26は、弁座19と連結部材23との間に配置される。そして、弁部材24に作用する高圧と低圧の圧力差により摺接面26Aが弁座19の上面19Aに密接され、椀部25の連通空間R4が弁座19に対して閉じられるようになっている。
【0030】
以上の四方切換弁10では、パイロット電磁弁6及び導管18Aを介して第二作動室R3に高圧冷媒が導入されると、
図1、2に示すように、ピストン体22が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向一方側(
図1、2の左側)にスライドされ、第一位置に移動される。また、パイロット電磁弁6及び導管17Aを介して第一作動室R2に圧縮機2から吐出された高圧冷媒が導入されると、ピストン体21が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向他方側(
図1、2の右側)にスライドされ、第二位置に移動される。
【0031】
弁体12が第二位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させる。また、椀部25が第一ポート11Cよりも他方側に位置することから、この第一ポート11Cは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第二位置にある状態は、流入ポート11Aと第一ポート11Cとが連通され、流出ポート11Bと第二ポート11Dとが連通された加温モード(暖房運転)となる。
【0032】
この加温モードでは、圧縮機2から吐出された高圧冷媒Hが高圧側導管13及び流入ポート11Aを介して高圧室R1に導入され、この高圧室R1を通過した高圧冷媒Hが第一ポート11C及び室内側導管15を介して室内熱交換器4に供給される。また、室外熱交換器3から室外側導管16及び第二ポート11Dを介して低圧冷媒Lが椀部25の連通空間R4に導入され、この連通空間R4を通過した低圧冷媒Lが流出ポート11B及び低圧側導管14を介して圧縮機2に還流される。
【0033】
一方、弁体12が第一位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させる。即ち、また、椀部25が第二ポート11Dよりも一方側に位置することから、この第二ポート11Dは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第一位置にある状態は、流入ポート11Aと第二ポート11Dとが連通され、流出ポート11Bと第一ポート11Cとが連通された冷却モード(冷房運転)となる。
【0034】
以上のような四方切換弁10における弁本体11と高圧側導管13との接続構造の詳細について、
図3に基づいて説明する。弁本体11の開口部としての流入ポート11Aの周囲には、弁本体11の側面部111から外側に向かって突出したバーリング部27が形成されている。即ち、バーリング部27の内周面が、流入ポート11Aの内周面に相当する。バーリング部27は、側面部111にバーリング加工を施すことによって形成されており、側面部111に対して屈曲した基端部271と、基端部271に連続する円筒部272と、を有する。基端部271の内周面は、側面部111の内周面111Aに連続する断面円弧状の曲面部271Aとなっている。この曲面部271Aの曲率半径は、側面部111の厚さに略等しい。
【0035】
図4にも示すように、高圧側導管13のうちバーリング部27に挿入される一端部131には、その外周面に、5つの突起部13Aが周方向に並んで形成されている。突起部13Aは、例えば高圧側導管13を内周面側から局所的に押圧し、膨出させることで形成される。また、突起部13Aは、高圧側導管13の軸方向を長手方向とするオーバル状の押圧面130Aを有して形成されている。5つの突起部13Aは、特に
図4(B)に示すように、略等間隔(約72°の間隔)を開けることにより、径方向において互いに対向しないように配置されている。即ち、高圧側導管13の外周面は、突起部13Aの反対側において、突起部13Aが形成されない部分となっている。
【0036】
ここで、高圧側導管13をバーリング部27に挿入する深さと、高圧側導管13から弁本体11内に流れ込む流体(冷媒)の流量と、の関係について
図5に基づいて説明する。尚、高圧側導管13の端面131Aと弁部材24の上面との間隔をX(
図2参照)とし、間隔Xを適宜な基準値X0で除した値を継手高さX/X0とする。即ち、継手高さX/X0が大きいほど高圧側導管13の挿入深さが浅く、継手高さX/X0が小さいほど高圧側導管13の挿入深さが深い。
【0037】
継手高さX/X0を変化させた際の高圧側導管13から弁本体11内に流れ込む流体の流量Fを
図5に示す。継手高さX/X0が大きく(挿入深さが浅く)なるほど流量Fが増大する。しかしながら、継手高さX/X0が大きくが大きくなりすぎる(例えば1.7よりも大きくなる)と、後述するようにバーリング部27に高圧側導管13をろう付けによって固定した際に、充分な接合強度が得られない。一方、継手高さX/X0が小さくなりすぎる(例えば0.2未満となる)と、流量Fが小さくなりすぎるとともに、高圧側導管13の端面131Aと弁部材24とが干渉してしまうことがある。本実施形態では、継手高さX/X0を適宜な値(例えば1.2〜1.6)に設定している。
【0038】
以下、弁本体11の側面部111に高圧側導管13を接続する方法の一例について
図6、7に基づいて説明する。まず、
図6に示すように、第1治具100を用い、上記のように予め突起部13Aが形成された高圧側導管13を弁本体11に仮接続する。第1治具100は、土台101と、土台101に形成された挿入孔101Aに挿入される棒状の挿入部材102と、弁本体11に挿通される棒状の挿通部材103と、を備える。挿入部材102は、下端が挿入孔101Aに挿入され、上端が弁本体11の流出ポート11Bに挿入される。挿通部材103は、弁本体11の内周面のうち上方側(バーリング部27が形成された側)に沿うように配置され、土台101から上方に向かって延びる支持柱101Bによって支持される。
【0039】
このような第1治具100によって弁本体11を支持した状態において、高圧側導管13に適宜な力を加えてバーリング部27内に圧入する。これにより、突起部13Aによってバーリング部27の内周面が押圧される。このとき、高圧側導管13の端面131Aが挿通部材103の外周面103Bに当接するまで挿入することで、所望の挿入深さが得られる。このように高圧側導管13を弁本体11に仮接続したら、弁本体11及び高圧側導管13から第1治具100を取り外す。
【0040】
次に、
図7に示すような第2治具200を用いて高圧側導管13を弁本体11に本接続する。第2治具200は、支持台201と、導管14〜16の下端に挿入される棒状の導管支持部材202と、高圧側導管13の上端に挿入される棒状の支持部材203と、を備える。支持台201は、導管支持部材202の下端が挿入される挿入孔201Aが形成された下段支持部201Bと、弁本体11が載置される中段支持部201Cと、支持部材203が挿通される挿通孔201Dが形成された案内板201Eと、を有する。
【0041】
第2治具200は、中段支持部201Cによって弁本体11を支持するとともに、下段支持部201B及び導管支持部材202によって、弁本体11に固定されていない導管14〜16が弁本体11から脱落しないように支持する。このように弁本体11及び導管14〜16が支持された状態において、支持部材203の下端を高圧側導管13の上端に挿入して支持する。
【0042】
このように高圧側導管13が弁本体11に仮接続された状態において、バーリング部27と高圧側導管13の一端部131とをろう付けにより固定し、本接続する。従来のように高圧側導管に突起部が形成されていない構成においては、弁本体と高圧側導管とを位置決めする場合、バーリング部及び高圧側導管の一端部の近傍を支持する治具を用いることが考えられる。一方、本実施形態においては、高圧側導管13に突起部13Aが形成されることにより、弁本体11に対して高圧側導管13が仮接続されていることから、弁本体11と高圧側導管13との位置決めのために、バーリング部27及び高圧側導管13の一端部131の近傍を支持する必要がなくなる。これにより、第2治具200の熱容量を小さくできるため、ろう付けを行う際の加熱時間を短くすることができる。
【0043】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、高圧側導管13の外周面に形成された突起部13Aがバーリング部27の内周面を押圧することで、バーリング部27内で高圧側導管13が軸方向にずれにくく、弁本体11に対する高圧側導管13の挿入深さのバラツキを抑制することができる。さらに、このような突起部13Aが3つ以上形成されていることで、高圧側導管13が3点以上においてバーリング部27の内周面に当接し、傾きを抑制することができる。
【0044】
さらに、5つの突起部13Aが径方向において互いに対向しないように配置されていることで、高圧側導管13の傾きをさらに抑制することができる。また、高圧側導管13の外周面における突起部13Aの反対側は、突起部13Aの形成されない部分となっている。高圧側導管13の外周面とバーリング部27とをろう付けによって固定する場合、突起部13Aが形成されていない部分には高圧側導管13とバーリング部27との間に略均一な隙間が形成されることから、ろう材が均一に浸透しやすい。これにより、気密性を向上させることができる。
【0045】
さらに、突起部13Aが高圧側導管13の軸方向を長手方向とするオーバル状の押圧面130Aを有することで、高圧側導管13の傾きをさらに抑制することができる。
【0046】
さらに、従来のように高圧側導管に突起部が形成されていない構成においては、バーリング部及び高圧側導管の一端部の近傍を支持する治具を用いることが考えられるが、本実施形態においては、突起部13Aが形成された高圧側導管13を弁本体11に仮接続した状態でろう付けによって本接続することで、ろう付け時にバーリング部27及び高圧側導管13の一端部131を治具によって支持する必要がない。これにより、第2治具200の熱容量を小さくし、ろう付けを行う際の加熱時間を短くすることができる。
【0047】
さらに、開口部としての流入ポート11Aの周囲にバーリング部27が形成されていることで、バーリング部27の突出寸法に応じて高圧側導管13の挿入深さを調節することができ、流量を増大させつつ接合強度を確保することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施形態では、高圧側導管13の外周面に、オーバル状の押圧面130Aを有する突起部13Aが5つ形成されるものとしたが、周方向に並ぶ少なくとも3つの突起部が形成されればよく、突起部は適宜な形状を有していればよい。例えば、第1の変形例として
図8、9に示すような突起部13Bが形成されてもよい。第1の変形例では、周方向に並ぶそれぞれ5つの突起部13Bによって、2列の突起部列L1、L2が形成されている。さらに、突起部列L1を構成する突起部13Bと、突起部列L2を構成する突起部13Bと、が軸方向に並んでいる。また、突起部13Bは円形状の押圧面130Bを有する。
【0050】
このような第1の変形例によれば、オーバル状の押圧面130Aを有する突起部13Aが形成された前記実施形態と同様に、高圧側導管13の傾きを抑制することができる。
【0051】
また、第2の変形例として
図10、11に示すような突起部13Cが形成されてもよい。第2の変形例では、周方向に並ぶそれぞれ5つの突起部13Cによって、2列の突起部列L3、L4が形成されている。さらに、突起部列L3を構成する突起部13Cと、突起部列L4を構成する突起部13Cと、が、周方向において約36°ずれることにより、軸方向に隣り合わないように互い違いに配置されている。
【0052】
このような第2の変形例によれば、突起部13Cと、突起部13Cが形成されていない部分とが軸方向に並ぶ。また、突起部13Cが形成されない部分には、上記のようにろう材が浸透しやすい。従って、周方向の全体に亘ってろう材を浸透させ、気密性をさらに向上させることができる。また、突起部が軸方向に隣り合う構成と比較して、突起部13Cがバーリング部27の内周面に当接する周方向の当接点数を増やすことができ、高圧側導管13の傾きをさらに抑制することができる。
【0053】
尚、オーバル状の押圧面を有する突起部によって複数の突起部列を形成してもよいし、異なる形状を有する突起部が混在していてもよいし、突起部列を3列以上形成してもよい。また、例えば充分な数の突起部が形成されることで高圧側導管13が傾きにくい場合には、突起部が径方向において互いに対向するように配置されてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、予め突起部13Aが形成された高圧側導管13を弁本体11に圧入するものとしたが、弁本体11に高圧側導管13を挿入した状態で突起部を形成してもよく、このような第3の変形例のスライド式切換弁を製造する方法の具体例を
図12〜14に示す。まず、バーリング部27内に高圧側導管13を挿入した状態で弁本体11を載置台300に載置する。載置台300には、高圧側導管13を収容する凹状の収容部301と、高圧側導管13を脱落しないように下方側から端面131Aを支持する支持部材302と、が形成されている。支持部材302の高さによって高圧側導管13の挿入深さが決まる。
【0055】
このような状態において、流出ポート11Bを他の開口部として突起形成治具400を通過させ、高圧側導管13の内側に挿入する。突起形成治具400の先端には、高圧側導管13の内側に挿入される被挿入部401が形成され、被挿入部401は、円筒部402と、円筒部402から突出した5つの突起形成部403を有する。5つの突起形成部403は、軸方向に沿って延びる長方形の下端に半円が組み合わされた平面視形状を有するとともに、略等間隔を開けて周方向に並んでいる。また、5つの突起形成部403のうち最も突出した部分を結ぶ仮想的な円の直径は、高圧側導管13の内径よりも大きい。突起形成部403は、高圧側導管13に挿入しやすいように先端側がテーパー状に形成されている。
【0056】
このような突起形成治具400を高圧側導管13の内側に挿入すると、突起形成部403によって高圧側導管13が内側から局所的に押し広げられる。
図14には、突起形成治具400を高圧側導管13から引き抜いた後の様子を示し、
図15には、
図14における弁本体11及び高圧側導管13のうち、高圧側導管13のみを示す。このとき、高圧側導管13には、周方向に並ぶとともに端面131Aまで連続した5つの突起部13Dが形成され、突起部13Dがバーリング部27の内周面を押圧することにより、弁本体11に高圧側導管13が仮接続される。このように仮接続された状態において、前記実施形態と同様に、ろう付けによって弁本体11と高圧側導管13とを本接続する。
【0057】
このような第4の実施形態によれば、突起部13Dを形成することにより、バーリング部27内で高圧側導管13が軸方向にずれにくくなり、前記実施形態と同様に、弁本体11に対する高圧側導管13の挿入深さのバラツキおよび傾きを抑制することができる。さらに、高圧側導管13をバーリング部27に挿入してから突起部13Dを形成することで、高圧側導管13をバーリング部27内に容易に挿入することができるとともに、突起部13Dによる押圧力を向上させることができる。このように押圧力が向上することで、弁本体11に対して高圧側導管13を仮接続してから本接続するまでの間に、高圧側導管13のずれを抑制することができる。
【0058】
尚、突起形成治具400を高圧側導管13の内側に挿入することにより、高圧側導管13を周方向全体に亘って膨張させ、高圧側導管13の一端部131の外周面全体がバーリング部27の内周面に当接するように変形させてもよい。このようにすれば、高圧側導管13の外周面とバーリング部27の周囲とをろう付けした際に、高圧側導管13の外周面とバーリング部27の内周面との間をろう材が通過しにくく、高圧室R1へのろう材の侵入を抑制することができる。
【0059】
また、前記実施形態では、開口部としての流
入ポート11Aの周囲にバーリング部27が形成され、突起部13Aが形成された継手部材としての高圧側導管13が挿入されるものとしたが、バーリング部が形成されずに単に側面部111において開口した開口部に、突起部が形成された継手部材が挿入されてもよい。このとき、突起部が開口部の内周面を押圧するように設けられていればよい。
【0060】
また、前記実施形態では、バーリング部および規制部が設けられるスライド式切換弁として四方切換弁10を例示したが、スライド式切換弁は四方切換弁に限定されず、三方弁や二方弁等、他の方式のスライド式切換弁であってもよい。
【0061】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。