特許第6602717号(P6602717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602717
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】冷凍ユニットのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20191028BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20191028BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20191028BHJP
   H01L 39/04 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H01F6/04ZAA
   A61B5/055 360
   A61B5/055 331
   G01N24/00 600D
   H01L39/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-68758(P2016-68758)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-183526(P2017-183526A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502147465
【氏名又は名称】ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 斉
(72)【発明者】
【氏名】糸木 温子
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−252380(JP,A)
【文献】 特開平02−004172(JP,A)
【文献】 特開2001−230459(JP,A)
【文献】 特開2007−127298(JP,A)
【文献】 特開2005−123313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/055
G01N22/00−22/04
24/00−24/14
G01R33/28−33/64
H01F6/00−6/06
H01L39/02−39/04
39/14−39/16
39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コイルと、前記超電導コイルを収容する輻射シールドと、前記輻射シールドを収容する真空容器と、を備える超電導マグネット装置に用いられる冷凍ユニットであって、前記輻射シールドを冷却する第1冷却ステージ、前記超電導コイルを冷却する第2冷却ステージ、及び、前記真空容器に取り付けられることが可能な冷凍機本体を有するもののメンテナンス方法であって、
前記第1冷却ステージと前記輻射シールドとが熱的に接触した状態で前記冷凍機本体を前記真空容器に接続する接続工程を備え、
前記接続工程では、前記第1冷却ステージの温度を検出して、その検出値を確認しながら、前記第1冷却ステージの温度が目標温度となるように、前記冷凍機本体を前記真空容器に固定するための部材であって締付力の調整により前記第1冷却ステージの前記輻射シールド又は前記輻射シールドに対して熱的に接触している熱伝導部材への接触圧力を調整可能な締付部材の締付力を調整する、冷凍ユニットのメンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍ユニットのメンテナンス方法において、
前記接続工程では、前記目標温度として、前記輻射シールドの温度から予め設定された設定値を引いた温度が用いられる、冷凍ユニットのメンテナンス方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷凍ユニットのメンテナンス方法において、
前記接続工程では、前記第1冷却ステージと前記輻射シールド又は前記熱伝導部材との隙間を埋めることが可能な熱伝導シートと、前記熱伝導シートに積層された熱伝導剥離層と、を介して前記第1冷却ステージと前記輻射シールドとが熱的に接触した状態で前記冷凍機本体を前記真空容器に接続する、冷凍ユニットのメンテナンス方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の冷凍ユニットのメンテナンス方法において、
前記冷凍ユニットは、前記超電導マグネット装置として、前記輻射シールド内において前記超電導コイル及び液体ヘリウムを収容するヘリウム槽をさらに備えるものに用いられ、
前記接続工程の前に前記冷凍ユニットを前記真空容器から取外す取外し工程をさらに備え、
前記取外し工程では、前記ヘリウム槽内が正圧に維持された状態で前記冷凍ユニットを取り外す、冷凍ユニットのメンテナンス方法。
【請求項5】
請求項4に記載の冷凍ユニットのメンテナンス方法において、
前記取外し工程では、前記ヘリウム槽内が負圧であるときに、前記ヘリウム槽内が正圧となるまで当該ヘリウム槽内にヘリウムガスを供給した後、前記ヘリウム槽内が正圧に維持された状態で前記冷凍ユニットを取外す、冷凍ユニットのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネット装置に用いられる冷凍ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導コイルを超電導状態で使用することによって高い磁場を生じさせる超電導マグネット装置が知られている。例えば、特許文献1には、超電導コイルと、超電導コイル及び液体ヘリウムを収容する低温容器と、低温容器を収容する熱シールドと、熱シールドを収容する真空容器と、真空容器に装着されており熱シールド及び超電導コイルを冷却するための冷凍機と、を備える超電導マグネット装置が開示されている。冷凍機は、伝熱部材を介して熱シールドを冷却する第1冷却ステージと、ヘリウムを介して超電導コイルを冷却する第2冷却ステージと、伝熱部材を介して第1冷却ステージと熱シールドとが互いに熱的に接触した状態で真空容器に固定される冷凍機本体と、を有している。冷凍機本体の真空容器への固定は、ボルト等の締付部材によって行われることが多い。
【0003】
この超電導マグネット装置では、締付部材が取り外され、冷凍機が真空容器から引き抜かれる(取外される)ことにより、冷凍機のメンテナンスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−194258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような超電導マグネット装置では、冷凍ユニットのメンテナンスないし交換後、第1冷却ステージが輻射シールドに対して適切に熱的に接触した状態となるように冷凍機を真空容器に再装着することが困難である。具体的に、第1冷却ステージが高い接触圧で輻射シールドに接触されることにより、第1冷却ステージと輻射シールドとの良好な熱的接触状態が得られるが、前記締付部材による締付力が大き過ぎる場合、第1冷却ステージが破損する恐れがある。逆に、締付部材による締付力が不足している場合、第1冷却ステージと輻射シールドとの熱的接触が不十分となるので、輻射シールドの冷却が不十分となる。このため、締付部材による締付力が大きくなり過ぎずかつ小さくなり過ぎないように当該締付部材が締め付けられる必要があるが、このような好適な範囲となるように締付部材を締め付けることは困難である。
【0006】
以上の課題は、液体ヘリウム及びこれを収容するヘリウム槽を備えていないもの、すなわち、液体ヘリウムではなく熱伝導率の高い部材からなるプレート等を介して第2冷却ステージにより超電導コイルが冷却される超電導マグネット装置においても同様に生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、第1冷却ステージが輻射シールドに対して適切に熱的に接触した状態で冷凍機本体を真空容器に取り付けることが可能な冷凍ユニットのメンテナンス方法及び冷凍ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、超電導コイルと、前記超電導コイルを収容する輻射シールドと、前記輻射シールドを収容する真空容器と、を備える超電導マグネット装置に用いられる冷凍ユニットであって、前記輻射シールドを冷却する第1冷却ステージ、前記超電導コイルを冷却する第2冷却ステージ、及び、前記真空容器に取り付けられることが可能な冷凍機本体を有するもののメンテナンス方法であって、前記第1冷却ステージと前記輻射シールドとが熱的に接触した状態で前記冷凍機本体を前記真空容器に接続する接続工程を備え、前記接続工程では、前記第1冷却ステージの温度を検出して、その検出値を確認しながら、前記第1冷却ステージの温度が目標温度となるように、前記冷凍機本体を前記真空容器に固定するための部材であって締付力の調整により前記第1冷却ステージの前記輻射シールド又は前記輻射シールドに対して熱的に接触している熱伝導部材への接触圧力を調整可能な締付部材の締付力を調整する、冷凍ユニットのメンテナンス方法を提供する。
【0009】
本メンテナンス方法では、接続工程において、第1冷却ステージの温度を確認しながら当該温度が目標温度(例えば冷凍ユニットのメンテナンス前の第1冷却ステージの温度)になるように締付部材の締付力を調整するので、締付力が大きくなり過ぎることによって第1冷却ステージが破損すること、及び、締付力が小さくなり過ぎることによって第1冷却ステージと輻射シールドとの熱的接触が不十分となることの双方が抑制される。例えば、第1冷却ステージの温度が目標温度よりも低い場合、第1冷却ステージの輻射シールド又は熱伝導部材に対する熱的な接触状態(接触圧力)が不十分であることに起因して第1冷却ステージから輻射シールドへの冷熱の伝達が不十分となっている(第1冷却ステージが冷え過ぎている)と考えられる。このため、第1冷却ステージの温度が目標温度よりも低い場合、締付部材の締付力を大きくする。
【0010】
前記冷凍ユニットのメンテナンス方法において、前記接続工程では、前記目標温度として、前記輻射シールドの温度から予め設定された設定値を引いた温度が用いられることが好ましい。
【0011】
この態様では、第1冷却ステージの輻射シールドへの良好な熱的接触状態が得られていることの判断を、第1冷却ステージの温度のみに基づいて行われる場合に比べて高い精度で行うことが可能である。具体的に、第1冷却ステージと輻射シールドとは互いに熱的に接触しているため、この熱的な接触状態が十分であれば、輻射シールドの温度と第1冷却ステージの温度との温度差は非常に小さくなる。よって、この非常に小さな値が前記設定値に設定されることにより、第1冷却ステージと輻射シールドとの熱的な接触状態を高い精度で判断することができる。例えば、前記温度差が前記設定値よりも大きい場合、すなわち、第1冷却ステージの温度が輻射シールドの温度から前記設定値を引いた温度よりも低い場合、第1冷却ステージと輻射シールドとの熱的な接触状態が不十分と考えられる。よって、その場合、第1冷却ステージの温度が輻射シールドの温度から前記設定値を引いた温度に等しくなるように締付部材の締付力が調整される。
【0012】
また、前記冷凍ユニットのメンテナンス方法において、前記接続工程では、前記第1冷却ステージと前記輻射シールド又は前記熱伝導部材との隙間を埋めることが可能な熱伝導シートと、前記熱伝導シートに積層された熱伝導剥離層と、を介して前記第1冷却ステージと前記輻射シールドとが熱的に接触した状態で前記冷凍機本体を前記真空容器に接続することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、接続工程において熱伝導シートを介して第1冷却ステージと輻射シールドとの良好な熱的接触状態が確保され、しかも、熱伝導剥離層が介在しているので、冷凍ユニットのメンテナンス時に第1冷却ステージを輻射シールド又は前記熱伝導部材から容易に離間させることができる。
【0014】
また、前記冷凍ユニットのメンテナンス方法において、前記冷凍ユニットは、前記超電導マグネット装置として、前記輻射シールド内において前記超電導コイル及び液体ヘリウムを収容するヘリウム槽をさらに備えるものに用いられ、前記接続工程の前に前記冷凍ユニットを前記真空容器から取外す取外し工程をさらに備え、前記取外し工程では、前記ヘリウム槽内が正圧に維持された状態で前記冷凍ユニットを取り外すことが好ましい。
【0015】
このようにすれば、取外し工程において冷凍ユニットを取外すときのヘリウム槽内への空気の流入が抑制される。このため、ヘリウム槽内へ流入した空気に含まれる水分が凝固することにより形成された氷のヘリウム槽ないしその近傍への付着が抑制される。
【0016】
具体的に、前記取外し工程では、前記ヘリウム槽内が負圧であるときに、前記ヘリウム槽内が正圧となるまで当該ヘリウム槽内にヘリウムガスを供給した後、前記ヘリウム槽内が正圧に維持された状態で前記冷凍ユニットを取外すことが好ましい。
【0017】
また、本発明は、超電導コイルと、前記超電導コイルを収容する輻射シールドと、前記輻射シールドを収容する真空容器と、を備える超電導マグネット装置に用いられる冷凍ユニットであって、前記輻射シールドを冷却する第1冷却ステージ、前記超電導コイルを冷却する第2冷却ステージ、及び、前記第1冷却ステージが前記輻射シールドに熱的に接触した状態で前記真空容器に取り付けられることが可能な冷凍機本体を有する冷凍機と、前記第1冷却ステージに接続された温度センサと、前記冷凍機本体を前記真空容器に対して着脱自在に接続可能な部材であって締付力の調整により前記第1冷却ステージの前記輻射シールド又は前記輻射シールドに対して熱的に接触している熱伝導部材への接触圧力を調整可能な締付部材と、前記締付部材と前記真空容器との間に設けられており、前記締付部材と接触することにより前記締付部材を締め付ける際の締付抵抗を生じさせ、かつ、前記締付抵抗を生じさせた状態から前記締付部材の締付力が大きくなるにしたがって次第に前記締付部材と前記真空容器との距離が小さくなるように弾性的に圧縮変形するストローク調整部材と、を有する、冷凍ユニットを提供する。
【0018】
本冷凍ユニットでは、締付部材の増し締め(締付ストロークの調整)が可能であり、また、この増し締めにより第1冷却ステージの温度の調整が可能であるので、第1冷却ステージの温度が目標温度(例えば冷凍ユニットのメンテナンス前の第1冷却ステージの温度)となるように締付部材の締付力を調整することにより、第1冷却ステージが輻射シールドに対して適切に熱的に接触した状態で当該冷凍ユニットのメンテナンスないし交換を完了することができる。具体的に、ストローク調整部材は、締付部材と接触することにより締付抵抗を生じさせるので、メンテナンス作業者は、前記締付抵抗を感じた時点(締付トルクが所定値になった時点)で締付部材の締め付けを停止することができる。そして、その時点での温度センサの検出値(第1冷却ステージの温度)を確認し、この温度が目標温度よりも低い場合、第1冷却ステージの輻射シールドに対する熱的な接触状態(接触圧力)が不十分であることに起因して第1冷却ステージから輻射シールドへの冷熱の伝達が不十分となっている(第1冷却ステージが冷え過ぎている)と考えられるので、この場合に締付部材を増し締めする(締付部材の締付力を大きくする)。その結果、締付部材と真空容器との距離が小さくなるので、第1冷却ステージの輻射シールド又は前記熱伝導部材への接触圧力が増大するとともに前記検出値が目標温度に近づくように大きくなる。このように第1冷却ステージの温度を調整することが可能であるので、締付部材の締付力が大きくなり過ぎることによって第1冷却ステージが破損すること、及び、締付力が小さくなり過ぎることによって第1冷却ステージと輻射シールドとの熱的接触が不十分となることの双方が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、第1冷却ステージが輻射シールドに対して適切に熱的に接触した状態で冷凍機本体を真空容器に取り付けることが可能な冷凍ユニットのメンテナンス方法及び冷凍ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の超電導マグネット装置の概略を示す断面図である。
図2図5のII−II線での断面を含む冷凍ユニットの近傍の拡大図である。
図3】熱伝導シート及び熱伝導剥離層を示す図である。
図4】冷凍ユニットの概略を示す図である。
図5】冷凍ユニットの平面図である。
図6図5のVI−VI線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態の超電導マグネット装置について、図1図6を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示されるように、超電導マグネット装置は、超電導コイル10と、ヘリウム槽14と、輻射シールド20と、真空容器30と、電極部材40と、導電部材50と、第1冷凍機60と、第2冷凍機80を含む冷凍ユニット70と、を備えている。
【0023】
超電導コイル10は、超電導体(超電導物質)からなる線材を巻枠に巻回することにより得られるコイルである。
【0024】
ヘリウム槽14は、超電導コイル10と液体ヘリウム12とを収容する。ヘリウム槽14は、ステンレスからなる。図1に示されるように、ヘリウム槽14は、超電導コイル10の中心軸が水平となる姿勢で超電導コイル10を収容している。このヘリウム槽14には、第1冷凍機60の一部を包囲する第1内筒部15Aと、冷凍ユニット70の一部を包囲する第2内筒部15Bと、が接続されている。各内筒部15A,15Bは、これら内筒部15A,15Bの中心軸がヘリウム槽14の軸方向と直交する姿勢でヘリウム槽14の上部に接続されている。第2内筒部15Bは、ヘリウム槽14の軸方向について第1内筒部15Aから離間した位置に設けられている。ヘリウム槽14で液体ヘリウム12が蒸発することにより生じたヘリウムガスは、各内筒部15A,15B内の各冷凍機60,80で冷却されることにより凝縮する。これにより生じた液体ヘリウム12は、ヘリウム槽14に滴下する。
【0025】
輻射シールド20は、ヘリウム槽14及び各内筒部15A,15Bを被覆する形状を有している。輻射シールド20は、アルミニウムからなる。輻射シールド20は、当該輻射シールド20外からヘリウム槽14への熱の侵入を抑制する。輻射シールド20は、ヘリウム槽14を収容する内胴部21と、第1内包囲部22Aと、第2内包囲部22Bと、を有している。
【0026】
第1内包囲部22Aは、内胴部21に接続されており第1内筒部15Aを取り囲む形状を有する。第1内包囲部22Aは、当該第1内包囲部22Aの軸方向が内胴部21の軸方向と直交する姿勢で内胴部21の上部に接続されている。第1内包囲部22Aの上端部には、第1内上壁23Aが接続されている。
【0027】
第2内包囲部22Bは、内胴部21に接続されており第2内筒部15Bを取り囲む形状を有する。第2内包囲部22Bは、当該第2内包囲部22Bの軸方向が内胴部21の軸方向と直交する姿勢で内胴部21の上部に接続されている。第1内包囲部22Bの上端部には、第2内上壁23Bが接続されている。本実施形態では、第2内上壁23Bには、熱伝導率が高い材料(銅等)からなる冷却プレート24Bが接続されている。冷却プレート24Bの上面に温度センサT2が取り付けられている。また、冷却プレート24Bの上面には、第2内筒部15Bの上端部に接続されており熱伝導率が高い材料(銅等)からなるフランジ25Bが接続されている。
【0028】
真空容器30は、輻射シールド20を被覆する形状を有している。真空容器30内は真空に保たれる。これにより真空容器30内への熱の侵入が抑制される。真空容器30は、外胴部31と、第1外包囲部32Aと、第2外包囲部32Bと、を有する。
【0029】
外胴部31は、ヘリウム槽14及び内胴部21を収容する。具体的に、外胴部31は、円筒状の内周壁及び円筒状の外周壁を有しており、これら内周壁及び外周壁間の空間に超電導コイル10、ヘリウム槽14及び内胴部21を収容している。外胴部31は、ステンレスからなる。
【0030】
第1外包囲部32Aは、外胴部31に接続されており第1内包囲部22Aを取り囲む形状を有する。本実施形態では、第1外包囲部32Aは、円筒状に形成されている。この第1外包囲部32Aの上端部には、第1外上壁35Aが接続されており、第1外上壁35Aには、電極部材40及び第1冷凍機60が接続されている。電極部材40は、導電部材50を介して超電導コイル10に接続されている。
【0031】
第2外包囲部32Bは、外胴部31に接続されており第2内包囲部22Bを取り囲む形状を有する。本実施形態では、第2外包囲部32Bは、円筒状に形成されている。この第1外包囲部32Bの上端部には、第2外上壁35Bが接続されており、第2外上壁35Bには、ヘリウムガス流路17B及び冷凍ユニット70が接続されている。第2外上壁35Bとフランジ25Bとの間には、冷凍ユニット70の一部を取り囲む第2外筒部16Bが設けられている。
【0032】
第1冷凍機60は、真空容器30の第1外上壁35Aに対して着脱自在に接続可能である。第1冷凍機60は、第1冷却ステージ61と、第2冷却ステージ62と、第1外上壁35Aに接続される冷凍機本体63と、を有する。
【0033】
第1冷却ステージ61は、輻射シールド20の第1内上壁23Aに熱的に接続される。第2冷却ステージ62は、ヘリウム槽14から上方に延びる第1内筒部15A内に配置される。冷凍機本体63が駆動されると、第1冷却ステージ61の温度は、30K〜60Kとなり、第2冷却ステージ62の温度は、4K程度となる。本実施形態では、冷凍機本体63が駆動されると、輻射シールド20は、当該輻射シールド20の温度が約40K〜90Kとなるまで冷却され、また、ヘリウム槽14内の液体ヘリウム12の気化により生じたヘリウムガスは、第2冷却ステージ62に冷却されることによって凝縮する。
【0034】
ヘリウムガス流路17Bは、図1及び図2に示されるように、ヘリウム槽14の上部から第2外上壁35Bに至るように延びる形状を有する。ヘリウムガス流路17Bの上部には、当該ヘリウムガス流路17Bを通じてヘリウム槽14内にヘリウムガスを供給可能なヘリウムガス供給ライン18Bが接続されている。このヘリウムガス供給ライン18Bには、逆止弁Vが設けられている。逆止弁Vは、ヘリウムガス流路17Bから真空容器30外へのヘリウムガスの流出を許容する一方、真空容器30外からヘリウムガス流路17B内への空気の流入を禁止する。このため、ヘリウム槽14内における液体ヘリウム12の蒸発量が多くなることによってヘリウム槽14内の圧力が基準値を上回ると、逆止弁Vを通じてヘリウムガスが真空容器30外に流出する。また、ヘリウムガス流路17Bの上部には、差圧計Pが設けられている。この差圧計Pは、ヘリウム槽14内の圧力と、真空容器30外の圧力と、の差を算出する。
【0035】
冷凍ユニット70は、真空容器30の第2外上壁35Bに対して着脱自在に接続可能である。冷凍ユニット70は、第2冷凍機80を含む。第2冷凍機80の構造は、第1冷凍機60の構造とほぼ同じである。すなわち、第2冷凍機80は、第1冷却ステージ81と、第2冷却ステージ82と、第2外上壁35Bに接続される冷凍機本体83と、を有する。
【0036】
第1冷却ステージ81は、図2に示されるように、第2内筒部15Bの上端部に接続されたフランジ25Bに接続されている。第1冷却ステージ81の下面及びフランジ25Bの上面は、それぞれ平坦である。本実施形態では、第1ステージ81は、フランジ25B及び冷却プレート24Bを介して輻射シールド20に対して熱的に接続されている。つまり、本実施形態では、フランジ25B及び冷却プレート24Bが「熱伝導部材」を構成する。
【0037】
図3に示されるように、第1冷却ステージ81とフランジ25Bとの間には、熱伝導グリス95、熱伝導シート96及び熱伝導剥離層97が設けられている。熱伝導シート96は、第1冷却ステージ81とフランジ25Bとの隙間を埋めることが可能なシートであり、例えば、インジウムシートが挙げられる。熱伝導剥離層97は、第1冷却ステージ81をフランジ25Bから離間させやすくするものであり、例えば、二硫化モリブデンのパウダーが挙げられる。
【0038】
第2冷却ステージ82は、第2内筒部15B内に配置されており、当該第2内筒部15B内においてヘリウムガスを凝縮させる。
【0039】
冷凍機本体83は、第1冷却ステージ81が輻射シールド20に熱的に接触した状態で真空容器30に対して着脱自在に接続可能である。冷凍機本体83は、駆動部84と、駆動部84の下面に接続されており当該駆動部84の径方向の外向きに張り出す張出部85と、を有している。張出部85は、円環状である。
【0040】
本実施形態の冷凍ユニット70は、第2冷凍機80に加え、温度センサT1と、複数の固定部材88と、複数の締付部材90と、ストローク調整部材94と、をさらに有している。
【0041】
温度センサT1は、第1冷却ステージ81の上面に取り付けられている。この温度センサT1は、第1冷却ステージ81の温度を検出する。温度センサT1に接続された配線86は、張出部85に形成されており配線86の挿通を許容する配線挿通孔85a(図4を参照)を通じて張出部85外に導出される。本実施形態では、第2冷却ステージ82にも温度センサT3が取り付けられており、この温度センサT3に接続された配線87も、配線挿通孔85aから張出部85外に導出される。
【0042】
複数の固定部材88及び複数の締付部材90は、第1冷却ステージ81が輻射シールド20に熱的に接触した状態(本実施形態では、第1冷却ステージ81がフランジ25Bに接触した状態)で冷凍機本体83を真空容器30に固定する部材である。なお、図4では、固定部材88の図示は省略されている。
【0043】
各固定部材88は、張出部85を第2外上壁35B上に設けられた固定部36B(図2を参照)に固定する。図5に示されるように、複数の固定部材88は、張出部85の周方向に沿って間欠的に並ぶように配置されている。なお、図1図2及び図4は、固定部材88と、配線挿通孔85aと、を通る面での断面図であり、図6は、締付部材90を通る面での断面の拡大図である。
【0044】
各締付部材90は、図2及び図6に示されるように、張出部85を第2外上壁35B上に設けられた固定台38Bに固定する。各締付部材90は、締付力の調整が可能である。図5に示されるように、複数の(本実施形態では4つの)締付部材90は、張出部85の周方向に沿って等間隔に並ぶように配置されている。本実施形態では、締付部材90は、ボルト91と、ナット92と、を有している。ボルト91の軸部は、張出部85及び固定部36Bを貫通し固定台38Bにねじ込まれることが可能な長さを有する。ナット92は、ボルト91の軸部のうち固定台38B上の部位に取り付けられる。このため、ナット92に対してボルト91が締め付けられるにしたがって、次第に第1冷却ステージ81のフランジ25Bに対する接触圧力が増大する。
【0045】
ストローク調整部材94は、締付部材90と冷凍機本体83との間に配置されている。より具体的には、図6に示されるように、ストローク調整部材94は、ボルト91の頭部と張出部85との間に設けられている。ストローク調整部材94は、締付部材90のボルト91と接触することにより締付部材90を締め付ける際の締付抵抗を生じさせ、かつ、締付抵抗を生じさせた状態からボルト91の締付力が大きくなるにしたがって(ボルト91が増し締めされるにしたがって)次第にボルト91の頭部と張出部85との距離が小さくなるように弾性的に圧縮変形する。ストローク調整部材94は、複数の(本実施形態では13個の)皿ばね座金94aを有している。
【0046】
次に、冷凍ユニット70のメンテナンス方法について説明する。このメンテナンス方法は、冷凍ユニット70を取外す取外し工程と、冷凍ユニット70のメンテナンスないし交換後に冷凍ユニット70を再度接続する接続工程と、を備えている。
【0047】
前記取外し工程では、まず、ヘリウム槽14内が正圧か否かが判断される。この判断は、差圧計Pの値に基づいて行われる。差圧計Pの値が負圧であることを示している場合、ヘリウムガス供給ライン18Bを通じてヘリウム槽14内にヘリウムガスが供給される。
【0048】
そして、ヘリウム槽14内が正圧に維持された状態で冷凍ユニット70が取外される。具体的には、各固定部材88及び各締付部材90が取外された後、図1の矢印で示される向き(上向き)沿って、冷凍ユニット70が第2内筒部15B及び第2外筒部16B内から引き抜かれる。
【0049】
ここで、第1冷却ステージ81とフランジ25Bとの間には、熱伝導剥離層97が設けられているので、第1冷却ステージ81をフランジ25Bから容易に離間させることができる。また、冷凍ユニット70の取外しは、ヘリウム槽14内が正圧に維持された状態で行われるので、冷凍ユニット70の取外し時におけるヘリウム槽14内への空気の流入が抑制される。このため、ヘリウム槽14内へ流入した空気に含まれる水分が凝固することにより形成された氷のヘリウム槽14ないしその近傍(第2内筒部15Bの下部等)への付着が抑制される。
【0050】
続いて、前記取外し工程の後、前記接続工程が行われる。つまり、冷凍ユニット70のメンテナンスないし交換後、その冷凍ユニット70が再び真空容器30に装着される。この接続工程は、ヘリウム槽14内の液体ヘリウム12の減少を抑えるという観点から、前記取外し工程後、できるだけ速やかに行われることが望ましい。本実施形態では、冷凍ユニット70は、第2冷凍機80や温度センサT1等が一体となっているので、取外し工程から接続工程までの所要時間が短縮される。
【0051】
具体的に、接続工程では、まず、熱伝導グリス95、熱伝導シート96及び熱伝導剥離層97を介して第1冷却ステージ81がフランジ25Bに接触した状態(輻射シールド20に熱的に接触した状態)において、各固定部材88により張出部85が固定部36Bに固定される。
【0052】
そして、第1冷却ステージ81の温度が目標温度となるように、締付部材90の締付力が調整される。本実施形態では、前記目標温度として、メンテナンス前、つまり、取外し工程の前における第1冷却ステージ81の温度が採用される。前記締付力の調整は、以下のようにして行われる。すなわち、ボルト91の頭部と張出部85との間にストローク調整部材94が介在した状態において、ボルト91がストローク調整部材94に接触することによって所定の締付抵抗が生じるまで当該ボルト91がナット92に対して締め付けられ、このときの第1冷却ステージ81の温度、つまり、温度センサT1の検出値が確認される。ここで、前記検出値が目標温度よりも低い場合、第1冷却ステージ81の輻射シールド20に対する熱的な接触状態(接触圧力)が不十分であることに起因して第1冷却ステージ81から輻射シールド20への冷熱の伝達が不十分となっている(第1冷却ステージ81が冷え過ぎている)と考えられる。このため、第1冷却ステージ81の温度が目標温度よりも低い場合、ボルト91の締付力が大きくされる(ボルト91が増し締めされる)。そうすると、ボルト91の頭部と張出部85との距離が小さくなるようにストローク調整部材94が弾性的に圧縮変形するので、第1冷却ステージ81のフランジ25Bに対する接触圧力が高くなり、これにより第1冷却ステージ81と輻射シールド20との熱的接触状態がより強固になる。その後、温度センサT1の検出値が再度確認される。この操作が、第1冷却ステージ81の温度が目標温度になるまで続けられる。そして、前記検出値が目標温度になったときにボルト91の増し締めが停止される。
【0053】
以上のようにして冷凍ユニット70のメンテナンスが行われる。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0055】
例えば、接続工程では、各固定部材88の取り付け後、冷却プレート24Bの温度(温度センサT2の検出値)と第1冷却ステージ81の温度(温度センサT1の検出値)との温度差が予め設定された設定値となるように、ボルト91の締付力が調整されてもよい(ボルト91が増し締めされてもよい)。換言すれば、前記目標温度が、冷却プレート24Bの温度(輻射シールド20の温度)から前記設定値を引いた温度とされてもよい。この態様では、第1冷却ステージ81の輻射シールド20への良好な熱的接触状態が得られたことが、上記実施形態のように第1冷却ステージ81の温度のみに基づいて行われる場合に比べて高い精度で判断可能である。具体的に、第1冷却ステージ81と輻射シールド20とは互いに熱的に接触しているため、この熱的な接触状態が十分であれば、前記温度差は非常に小さくなる。よって、この非常に小さな値が前記設定値に設定されることにより、第1冷却ステージ81と輻射シールド20との熱的な接触状態を高い精度で判断することができる。すなわち、前記温度差が前記設定値よりも大きい場合、第1冷却ステージ81と輻射シールド20との熱的な接触状態が不十分と考えられる。よって、前記温度差が前記設定値よりも大きい場合、この温度差が設定値となるまでボルト91が増し締めされる。
【0056】
また、ストローク調整部材94は、ボルト91の増し締め時に弾性的に圧縮変形可能であれば、皿ばね座金94aに限られない。例えば、ストローク調整部材94として、コイルばねが用いられてもよい。
【0057】
また、第1冷却ステージ81の接続位置は、フランジ25Bに限られない。第1冷却ステージ81は、直接輻射シールド20に、すなわち、第2内上壁23Bに接続されてもよい。
【0058】
また、液体ヘリウム12及びヘリウム槽14は省略されてもよい。この場合、超電導コイル10は、各冷凍機60,80の第2冷却ステージ62,82に接続されたプレート(銅プレート等)を介して冷凍機60,80に冷却される。
【符号の説明】
【0059】
10 超電導コイル
14 ヘリウム槽
20 輻射シールド
21 内胴部
22A 第1内包囲部
22B 第2内包囲部
30 真空容器
31 外胴部
32A 第1外包囲部
32B 第2外包囲部
40 電極部材
50 導電部材
60 第1冷凍機
61 第1冷却ステージ
62 第2冷却ステージ
70 冷凍ユニット
80 第2冷凍機
81 第1冷却ステージ
82 第2冷却ステージ
83 冷凍機本体
90 締付部材
91 ボルト
92 ナット
94 ストローク調整部材
94a 皿ばね座金
96 熱伝導シート
97 熱伝導剥離層
T1 温度センサ
T2 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6