特許第6602740号(P6602740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602740
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/08 20060101AFI20191028BHJP
   G01L 23/10 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   G01L9/08
   G01L23/10
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-209297(P2016-209297)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-72057(P2018-72057A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年2月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】特許業務法人鳳国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 盾紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 達範
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友也
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−264037(JP,A)
【文献】 特開2011−203103(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0255683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32,27/00−27/02,
F02D 13/00,35/00−35/02,45/00,
H01T 13/00−13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる筒状の筐体と、
前記筐体の先端側に固定され、受圧した圧力に応じて変形するダイアフラムと、
前記筐体内の孔部に配置され、1個以上の圧電素子を含む2個以上の積層部材を有する圧電ユニットと、
前記ダイアフラムの変形を前記圧電ユニットに伝達する伝達部材と、
を備える圧力センサであって、
前記軸線に沿って延びる貫通孔を有し、該貫通孔内にて前記圧電ユニットの少なくとも一部分の外周を囲むガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記筐体と非接触であり、
前記圧電素子を通る前記軸線と垂直な断面において、
前記貫通孔内で、前記貫通孔の中心と、前記圧電素子の中心と、の間の径方向の距離が取り得る最大値をSLとし、
その時の前記圧電素子の外側面と、前記貫通孔の中心と、の間の径方向の距離の最大値をALとするとき、
(SL/AL)≦0.26を満たし、
前記筐体内の前記孔部の中心から前記筐体の内側面までの距離の最小値D1を半径とする第1の円の面積をS1とし、
前記ガイド部材の中心から前記ガイド部材の外側面までの距離の最大値D2を半径とする第2の円の面積をS2とするとき、
(S2/S1)≦0.65を満たすことを特徴とする、圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサであって、
前記積層部材は、前記圧電素子よりも後端側に位置する後端積層部材と、前記圧電素子よりも先端側に位置する先端積層部材と、を有し、
前記圧力センサは、前記後端積層部材を先端方向に押圧する後端押圧部材と、前記先端積層部材を後端方向に押圧する先端押圧部材と、をさらに備え、
前記ガイド部材の先端面と前記先端押圧部材との間と、前記ガイド部材の後端面と前記後端押圧部材との間と、のうちの少なくとも一方に、間隙を有することを特徴とする、圧力センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力センサであって、
前記断面において、
前記圧電素子の中心から前記圧電素子の外側面までの距離の最大値D3を半径とする第3の円の面積をS3とするとき、
(S3/S1)≦0.5を満たすことを特徴とする、圧力センサ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の圧力センサであって、
前記圧電ユニットは、2個以上の前記圧電素子を含むことを特徴とする、圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等において燃焼室内の圧力を検出する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサとして、ダイアフラムと圧電素子と伝達部材(例えば、ロッド)とを備えるものが、提案されている。燃焼室内の圧力に応じてダイアフラムが変形すると、伝達部材は、所定の向きに変位して圧電素子に力を加える。圧電素子は、加えられた力に応じた電荷(電圧)を出力する。この結果、圧電素子から出力される電荷を測定することで、燃焼室内の圧力を検出することができる。
【0003】
圧電素子から出力される電荷を安定させるために、圧力センサは、圧電素子に対して予荷重が付与された状態で、組立てられる。例えば、特許文献1では、圧電素子は、センサハウジングに接触して挿入されたホルダ内に、圧電素子が格納された状態に、組み立てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−271321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、圧電素子の軸線と垂直な断面積を小さくすること、および/または、圧電素子の軸線方向の長さを長くすることで、圧電素子の絶縁抵抗値を大きくすることができる。圧電素子の絶縁抵抗値を大きくすることで、漏れ電流を抑制できるので、圧力センサの測定精度を向上することができる。しかしながら、例えば、圧電素子の軸線と垂直な断面積を小さくすること、および/または、圧電素子の軸線方向の長さを長くすべく複数個の圧電素子を積層することは、予荷重を付与する際に圧電素子の径方向の位置のずれを引き起こす可能性があった。このような圧電素子の径方向の位置のずれによって、所望の予荷重が付与できない場合には、圧力センサが所望の測定性能を発揮できなくなる可能性がある。このために、圧電素子の径方向の位置のずれを抑制する技術が求められていた。
【0006】
本明細書は、圧力センサにおいて、圧電素子の径方向の位置のずれを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
[形態]
軸線に沿って延びる筒状の筐体と、
前記筐体の先端側に固定され、受圧した圧力に応じて変形するダイアフラムと、
前記筐体内の孔部に配置され、1個以上の圧電素子を含む2個以上の積層部材を有する圧電ユニットと、
前記ダイアフラムの変形を前記圧電ユニットに伝達する伝達部材と、
を備える圧力センサであって、
前記軸線に沿って延びる貫通孔を有し、該貫通孔内にて前記圧電ユニットの少なくとも一部分の外周を囲むガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記筐体と非接触であり、
前記圧電素子を通る前記軸線と垂直な断面において、
前記貫通孔内で、前記貫通孔の中心と、前記圧電素子の中心と、の間の径方向の距離が取り得る最大値をSLとし、
その時の前記圧電素子の外側面と、前記貫通孔の中心と、の間の径方向の距離の最大値をALとするとき、
(SL/AL)≦0.26を満たし、
前記筐体内の前記孔部の中心から前記筐体の内側面までの距離の最小値D1を半径とする第1の円の面積をS1とし、
前記ガイド部材の中心から前記ガイド部材の外側面までの距離の最大値D2を半径とする第2の円の面積をS2とするとき、
(S2/S1)≦0.65を満たすことを特徴とする、圧力センサ。
【0008】
[適用例1]軸線に沿って延びる筒状の筐体と、
前記筐体の先端側に固定され、受圧した圧力に応じて変形するダイアフラムと、
前記筐体内の孔部に配置され、1個以上の圧電素子を含む2個以上の積層部材を有する圧電ユニットと、
前記ダイアフラムの変形を前記圧電ユニットに伝達する伝達部材と、
を備える圧力センサであって、
前記軸線に沿って延びる貫通孔を有し、該貫通孔内にて前記圧電ユニットの少なくとも一部分の外周を囲むガイド部材を備え、
前記圧電素子を通る前記軸線と垂直な断面において、
前記貫通孔内で、前記貫通孔の中心と、前記圧電素子の中心と、の間の径方向の距離が取り得る最大値をSLとし、
その時の前記圧電素子の外側面と、前記貫通孔の中心と、の間の径方向の距離の最大値をALとするとき、
(SL/AL)≦0.26を満たすことを特徴とする、圧力センサ。
【0009】
上記構成によれば、ガイド部材によって、圧電素子の径方向の位置のずれを抑制することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の圧力センサであって、
前記ガイド部材は、前記筐体と非接触であり、
前記断面において、
前記筐体内の前記孔部の中心から前記筐体の内側面までの距離の最小値D1を半径とする第1の円の面積をS1とし、
前記ガイド部材の中心から前記ガイド部材の外側面までの距離の最大値D2を半径とする第2の円の面積をS2とするとき、
(S2/S1)≦0.65を満たすことを特徴とする、圧力センサ。
【0011】
上記構成によれば、例えば、ガイド部材と筐体との間隔を確保できるので、圧電素子が過度に加熱されることを抑制することができる。
【0012】
[適用例3]適用例1または2に記載の圧力センサであって、
前記積層部材は、前記圧電素子よりも後端側に位置する後端積層部材と、前記圧電素子よりも先端側に位置する先端積層部材と、を有し、
前記圧力センサは、前記後端積層部材を先端方向に押圧する後端押圧部材と、前記先端積層部材を後端方向に押圧する先端押圧部材と、をさらに備え、
前記ガイド部材の先端面と前記先端押圧部材との間と、前記ガイド部材の後端面と前記後端押圧部材との間と、のうちの少なくとも一方に、間隙を有することを特徴とする、圧力センサ。
【0013】
上記構成によれば、圧電素子を含む2個以上の積層部材に対して、先端押圧部材と後端押圧部材とによって適切な予荷重を付与することができる。
【0014】
[適用例4]適用例2に記載の圧力センサであって、
前記断面において、
前記圧電素子の中心から前記圧電素子の外側面までの距離の最大値D3を半径とする第3の円の面積をS3とするとき、
(S3/S1)≦0.5を満たすことを特徴とする、圧力センサ。
【0015】
上記構成によれば、筐体内の孔部の径方向の大きさに対して、圧電素子の径方向の大きさが小さいために、圧電素子の径方向のずれが発生しやすい場合に、ガイド部材によって、圧電素子の径方向のずれを抑制することができる。
【0016】
[適用例5]適用例1〜4のいずれかに記載の圧力センサであって、
前記圧電ユニットは、2個以上の前記圧電素子を含むことを特徴とする、圧力センサ。
【0017】
上記構成によれば、2個以上の圧電素子を含むために、圧電素子の径方向のずれが発生しやすい場合に、ガイド部材によって、圧電素子の径方向のずれを抑制することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、圧力センサ、その圧力センサを搭載する内燃機関等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態としての圧力センサ10を示す説明図である。
図2】実施形態の圧力センサ10の先端ユニット100近傍の拡大図である。
図3】圧電ユニット50とガイド部材61と後端押圧部材62aと先端押圧部材62bと配線接続部材63と絶縁体64との分解斜視図である。
図4】圧電素子51aを通り、軸線CLと垂直な面で先端ユニット100を切断した断面を示す図である。
図5】断面CSのうちガイド部材61と圧電素子51aとを含む部分の拡大図である。
図6】圧力センサによって測定される圧力の波形の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施形態:
A−1.圧力センサ10の構成
図1は、実施形態としての圧力センサ10を示す説明図である。軸線CLは、圧力センサ10の中心軸である。以下、軸線CLに平行な方向を、「軸線方向」とも呼ぶ。軸線CLと垂直な面上において軸線CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、当該円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。また、軸線CLに沿った方向のうち、図1の下に向かう方向を、「先端方向Df」と呼び、先端方向Dfの反対方向を、「後端方向Dr」と呼ぶ。先端方向Df側を「先端側」と呼び、後端方向Dr側を「後端側」とも呼ぶ。図1には、圧力センサ10の先端側の部分の軸線CLよりも左側の断面構成が示されている。この断面は、軸線CLを含む平断面(平面で切断された断面)である。また、図1には、圧力センサ10の他の部分の外観構成が示されている。
【0021】
本実施形態の圧力センサ10は、内燃機関に取り付けられて、内燃機関の燃焼室内の圧力を検出するために用いられる。図1に示すように、圧力センサ10は、主な構成要素として、筒状金具20と、先端ユニット100と、ケーブル70と、を備えている。
【0022】
筒状金具20は、軸線CLに沿って延びる略筒形状を有し、内部には、軸線CLに沿って延びる軸孔29が形成されている。筒状金具20は、例えば、ステンレス鋼などの導電性の金属で形成されている。
【0023】
筒状金具20の後端側外周面には、ねじ部22および工具係合部24が設けられている。ねじ部22は、圧力センサ10を内燃機関のシリンダヘッドに固定するためのねじ溝を備えている。工具係合部24は、圧力センサ10の取り付けおよび取り外しに用いられる工具(図示省略)が係合する外周形状(例えば、横断面が六角形)を有する。
【0024】
図2は、実施形態の圧力センサ10の先端ユニット100近傍の拡大図である。具体的には、図1に領域Xとして示す部位を拡大して示す断面図である。この断面は、軸線CLを含む断面である。先端ユニット100は、筐体30と、ダイアフラム40と、圧電ユニット50と、ガイド部材61と、後端押圧部材62aと、先端押圧部材62bと、配線接続部材63と、絶縁体64と、カバー65と、伝達ロッド91と、後端挿入部材92と、を備えている。図2に示すように、圧力センサ10の軸線CLは、先端ユニット100の軸線でもあり、先端ユニット100を構成する部材30、40、50、61、62a、62b、63、64、65、91、92のそれぞれの軸線でもある。
【0025】
筐体30は、軸線CLに沿って延びる略筒形状を有し、内部には、軸線CLに沿って延びる貫通孔である軸孔39が形成されている。筐体30は、先端側の大外径部31と、後端側の小外径部33と、大外径部31と小外径部33との間の中外径部32と、を備えている。大外径部31の外径は、小外径部33の外径より大きい。中外径部32の外径は、大外径部31の外径より小さく、小外径部33の外径より大きい。筐体30の中外径部32は、筒状金具20の先端に挿入されており、中外径部32と筒状金具20とは、レーザ溶接によって、筒状金具20の先端に溶接部WP1を介して接合されている。圧力センサ10が内燃機関に取り付けられる場合、大外径部31は、内燃機関のシリンダヘッドから燃焼室に露出する。筐体30は、筒状金具20と同様に、例えば、ステンレス鋼などの導電性の金属で形成されている。
【0026】
ダイアフラム40は、軸線CLを中心とする円板形状を有する膜であり、例えば、ステンレス鋼などの導電性の金属で形成されている。ダイアフラム40は、筐体30の先端側に固定されている。具体的には、ダイアフラム40の外周縁は、レーザ溶接によって、全周に亘って、筐体30(大外径部31)の先端に、溶接部WP2を介して接合されている。ダイアフラム40は、圧力センサ10が内燃機関に取り付けられる場合に、先端側に燃焼室内の圧力を受圧し、受圧した圧力に応じて変形する。
【0027】
図3は、圧電ユニット50と、ガイド部材61と、後端押圧部材62aと、先端押圧部材62bと、配線接続部材63と、絶縁体64と、の分解斜視図である。
【0028】
図2に示すように、圧電ユニット50は、筐体30の軸孔39(孔部とも呼ぶ)内に配置されている。圧電ユニット50は、2個の圧電素子51a、51bと、2個の圧電素子51a、51bを挟む2個の電極52a、52bと、を有する。後端電極52aは、圧電素子51a、51bよりも後端側に位置する導電性の部材である。先端電極52bは、圧電素子51a、51bよりも先端側に位置する導電性の部材である。これらの4個の部材51a、51b、52a、52bは、軸線方向に沿って積層された4個の積層部材である。図4に示すように、4個の積層部材51a、51b、52a、52bは、いずれも軸線CLと垂直方向の断面が矩形(本実施例では正方形)である四角柱形状を有している。
【0029】
圧電素子51a、51bは、軸線CLに沿って力を受けると受けた力に応じた電荷(例えば、電気信号)を、2個の電極52a、52bを介して出力する。圧電素子は、例えば、酸化チタンや水晶などの公知の圧電材料を用いて形成されている。電極52a、52bは、公知の導電性材料、本実施例では、ステンレス鋼を用いて形成されている。
【0030】
ガイド部材61は、例えば、樹脂などの絶縁材料を用いて形成され、図3に示すように、軸線CLに沿って延びる貫通孔61hを有する略筒状の部材である。図2に示すように、ガイド部材61は、筐体30の軸孔39内に配置されている。ガイド部材61の貫通孔61h内には、圧電ユニット50が収容されている。すなわち、ガイド部材61は、圧電ユニット50の外周を囲んでいる。ガイド部材61の外径は、筐体30の内径(軸孔39の径)より十分に小さい。このため、ガイド部材61と、筐体30と、は非接触である。
【0031】
図3に示すように、後端押圧部材62aは、後端電極52aを先端方向Dfに押圧する部材である。後端押圧部材62aは、円盤状の基板部621aと、基板部621aの先端側の面から先端側に突出する突出部622aと、を備えている。基板部621aは、ガイド部材61より後端側に位置している。突出部622aの先端側は、ガイド部材61の貫通孔61h内に位置している。突出部622aは、上述した電極52a、52bと同様の四角柱形状を有している。突出部622aの先端面は、ガイド部材61の貫通孔61h内において、後端電極52aの後端側の面と、接触しており、後端電極52aの後端側の面を、先端方向Dfに押圧している。
【0032】
先端押圧部材62bは、先端電極52bを後端方向Drに押圧する部材である。先端押圧部材62bは、円盤状の基板部621bと、基板部621bの後端側の面から後端側に突出する突出部622bと、を備えている。基板部621bは、ガイド部材61より先端側に位置している。突出部622bの後端側は、ガイド部材61の貫通孔61h内に位置している。突出部622bは、四角柱形状を有している。突出部622bの後端面は、ガイド部材61の貫通孔61h内において、先端電極52bの先端側の面と、接触しており、先端電極52bの先端側の面を、後端方向Drに押圧している。
【0033】
なお、ガイド部材61の軸線CLの長さL1(図3)は、4個の積層部材51a、51b、52a、52bと、突出部622a、622bと、の軸線CLの長さの合計より僅かに短い。このために、ガイド部材61の先端側の面と先端押圧部材62bの基板部621bとの間と、ガイド部材61の後端側の面と後端押圧部材62aの基板部621aとの間と、のうちの少なくとも一方に、間隙NTが形成される。例えば、図2の例では、ガイド部材61の後端側の面と後端押圧部材62aの基板部621aとの間に、間隙NTが形成されている。これによって、圧電ユニット50(圧電素子51a、51bを含む4個の積層部材51a、51b、52a、52b)に対して、後端押圧部材62aと先端押圧部材62bとによって適切な予荷重を付与することができる。仮に、間隙NTが形成されていない場合には、後端押圧部材62aと先端押圧部材62bとによる荷重が、ガイド部材61に付与されるので、圧電ユニット50に対して、十分な予荷重が付与できない。
【0034】
配線接続部材63は、軸線CLに沿って貫通する軸孔63hを有する筒状の部材である。配線接続部材63は、後端押圧部材62aの後端側に接触している。配線接続部材63の軸孔63hを形成する内側面には、ケーブル70の内部導体75(後述)と接続するための配線である細径導線77が接続される。
【0035】
後端押圧部材62a、先端押圧部材62b、配線接続部材63は、いずれも導電性を有する材料、例えば、ステンレス鋼などの金属を用いて形成されている。
【0036】
絶縁体64は、軸線CLに沿って貫通する軸孔64hを有する筒状の部材である。絶縁体64によって、配線接続部材63と、後述する後端挿入部材92と、の間が絶縁されている。これによって、圧電素子51a、51aの後端側(後端電極52a側)と、圧電素子51a、51aの先端側(先端電極52b側)と、の短絡が防止されている。絶縁体64は、例えば、アルミナなどの絶縁材料で形成されている。
【0037】
伝達ロッド91は、円柱形状を有する部材であり、例えば、ステンレス鋼などの導電性の金属で形成されている。伝達ロッド91の後端側は、先端押圧部材62bに接続され、先端側は、ダイアフラム40に接続される。
【0038】
具体的には、伝達ロッド91の後端側の面は、先端押圧部材62bの先端側の面に当接している。この結果、伝達ロッド91に先端側から後端側に向かって加えられた力は、先端押圧部材62bを介して、圧電ユニット50、引いては、圧電ユニット50の圧電素子51a、51bに伝達される。
【0039】
伝達ロッド91の先端側は、ダイアフラム40の後端側の面の中央部に接続されている。ダイアフラム40と伝達ロッド91とは、鍛造や削り出しによって、一体的に形成されている。ダイアフラム40と伝達ロッド91とは、別々に形成され、溶接などにより接合されていても良い。
【0040】
ダイアフラム40が、受圧に応じて変形すると、その変形は、伝達ロッド91によって、圧電ユニット50に伝達される。
【0041】
後端挿入部材92は、軸線CLに沿って貫通する軸孔92hを有する筒状の部材である。後端挿入部材92の外径は、筐体30の軸孔39の内径とほぼ等しい。後端挿入部材92は、該軸孔39に後端側から挿入されている。後端挿入部材92は、先端方向Dfに向かって所定の予荷重で押し込まれた状態で、例えば、溶接部WP3を介して筐体30に固定されている。これによって、圧電ユニット50に対して、予荷重が付与される。適切な予荷重は、圧電素子51a、51bに加えられた荷重と、荷重に応じて出力される電荷と、の関係(以下、出力特性)が安定した領域にて、圧力が測定できるように、圧電素子51a、51bの出力特性に基づいて、予め定められている。
【0042】
カバー65は、例えば、樹脂などの絶縁性の材料で形成されたチューブであり、ガイド部材61、後端押圧部材62a、先端押圧部材62b、配線接続部材63、絶縁体64の先端部分、および、伝達ロッド91の後端部分を覆っている。カバー65は、例えば、組立時に、これらの部材が、ばらばらに分離して作業性が低下することを防ぐために用いられる。カバー65は省略されても良い。
【0043】
ケーブル70は、筒状金具20の軸孔29内で、先端ユニット100より後端側に配置されている。ケーブル70は、圧電ユニット50から出力される電荷に基づいて内燃機関の燃焼室内の圧力を検出するための図示しない電気回路に対して、圧電ユニット50から出力される電荷を伝えるための部材である。ケーブル70は、ノイズを低減するための多層構造を有するいわゆるシールド線と呼ばれる同軸ケーブルである。具体的には、ケーブル70は、中心から外周側に向かって配置された、内部導体75と、絶縁体74と、導電コーティング73と、外部導体72と、ジャケット71と、を備えている。
【0044】
ケーブル70の先端部で露出する内部導体75は、平板導線76と細径導線77とからなる配線を介して、配線接続部材63に接続されている。これによって、ケーブル70は、平板導線76、細径導線77、配線接続部材63、後端押圧部材62aを介して、圧電ユニット50の後端側に電気的に接続される。ケーブル70と圧電ユニット50とを接続するための上述の構成は、一例であり、他の任意の構成を採用可能である。
【0045】
細径導線77は、両端を除く略全体が、絶縁性のチューブ78によって覆われている。これにより、細径導線77と、後端挿入部材92と、が接触することで、圧電ユニット50の先端側と後端側とが短絡することが防止される。
【0046】
外部導体72の先端部には、外部導体72の先端から先端側に延びる接地導線79が接続されている。接地導線79の先端部は、後端挿入部材92に溶接によって接合されている。これにより、外部導体72は、接地導線79、筐体30、および、内燃機関のシリンダヘッドを介して接地される。
【0047】
A−2. 圧電素子を通る断面の構成:
図4は、圧電素子51aを通り、軸線CLと垂直な面(図2のa−a面)で、先端ユニット100を切断した断面CSを示す図である。なお、もう1個の圧電素子51bを通り、軸線CLと垂直な面で、先端ユニット100を切断した断面も、図4と同じ構成となっている。なお、図4では、カバー65の図示は省略されている。
【0048】
断面CSにおいて、筐体30に形成された軸孔39の中心CC1から、軸孔39を形成する筐体30の内側面までの距離の最小値を、第1の距離D1とする。本実施形態では、断面CSにおいて、軸孔39は真円であるので、中心CC1から筐体30の内側面までの距離は、全ての周方向の位置において等しい。この場合には、任意の周方向の位置における当該距離が、第1の距離D1とされる。軸孔39が真円でない場合には、中心CC1から筐体30の内側面までの距離は、周方向の位置によって異なり得る。この場合には、全ての周方向の位置における当該距離のうちの最小値が、第1の距離D1とされる。第1の距離D1を半径とする第1の円の面積をS1とする(S1=πD1)。本実施形態では、軸孔39の中心CC1と圧力センサ10の軸線CLとは、一致しているが、径方向にずれていても良い。
【0049】
また、断面CSにおいて、ガイド部材61の中心CC2から、ガイド部材61の外側面までの距離の最大値を、第2の距離D2とする。本実施形態では、断面CSにおいて、ガイド部材61の外側面は真円であるので、中心CC2からガイド部材61の外側面までの距離は、全ての周方向の位置において等しい。この場合には、任意の周方向の位置における当該距離が、第2の距離D2とされる。ガイド部材61の外側面が真円でない場合には、中心CC2からガイド部材61の外側面までの距離は、周方向の位置によって異なり得る。この場合には、全ての周方向の位置における当該距離のうちの最大値が、第2の距離D2とされる。第2の距離D2を半径とする第2の円の面積をS2とする(S2=πD2)。本実施形態では、ガイド部材61の中心CC2と圧力センサ10の軸線CLとは、一致しているが、径方向にずれていても良い。本実施形態では、面積S1に対する面積S2の比率は、0.65以下である。すなわち、(S2/S1)≦0.65が満たされる。
【0050】
また、断面CSにおいて、圧電素子51aの中心CC3から圧電素子51aの外側面までの距離の最大値を、第3の距離D3とする。本実施形態では、断面CSにおいて、圧電素子51aは、矩形であるので、中心CC3から該矩形の1個の頂点までの距離が、第3の距離D3である。仮に、圧電素子51aの断面が円であれば、該円の半径が最大値D3となる。第3の距離D3を半径とする第3の円の面積をS3とする(S3=πD3)。図4の例では、圧電素子51aの中心CC3と、圧力センサ10の軸線CLと、は、一致しているが、組付け時に、圧電素子51aの中心CC3は、軸線CLに対してずれ得る。本実施形態では、面積S1に対する面積S3は、0.5以下である。すなわち、(S3/S1)≦0.5が満たされる。
【0051】
図5は、図4の断面CSのうち、ガイド部材61と圧電素子51aとを含む部分の拡大図である。本実施例では、断面CSにおいて、ガイド部材61の貫通孔61hの形状は、単純な円や矩形ではない。すなわち、ガイド部材61の貫通孔61hを形成する側面は、平面状の平側面611と、曲面状の曲側面612と、を備えている。平側面611は、貫通孔61h内に収容される圧電素子51a、51bの外側面に沿った平面である。曲側面612は、貫通孔61h内に収容される圧電素子51aの矩形の断面の頂点に対応する位置に形成された側面である。曲側面612は、圧電素子51aの矩形の断面の頂点に対応する位置に、軸線CLに貫通する略円柱状の孔を形成している。曲側面612が形成されていることで、例えば、貫通孔61h内に、圧電素子51a、51bを収容する際に、圧電素子51a、51bの角が、貫通孔61hを形成する側面と、干渉することを抑制できる。この結果、圧力センサ10を組み立てる作業性が向上する。
【0052】
ここで、ガイド部材61の貫通孔61h内で、貫通孔61hの中心CC4と、圧電素子51aの中心CC3Sと、の間の径方向の距離が取り得る最大値を、第4の距離SLとする。本実施形態では、貫通孔61hの中心CC4は、圧力センサ10の軸線CLと、一致している。また、貫通孔61hの中心CC4は、ガイド部材61の中心とも一致している。貫通孔61hの中心は、ガイド部材61の中心とずれていてもよいし、圧力センサ10の軸線CLからずれていてもよい。
【0053】
図5において実線でしめす圧電素子51aIは、設計上の理想的な位置に配置されている。理想的な圧電素子51aIの中心CC3Iは、軸線CLと一致している。図5において破線でしめす圧電素子51aSの位置は、設計上の理想的な位置と比較して、径方向にずれている。具体的には、圧電素子51aSは、貫通孔61hの中心CC4と、圧電素子51aの中心CC3Sと、の距離が最大となる位置に配置されている。本実施形態では、図5に示すように、圧電素子51aSの2個の外側面が、ガイド部材61の対応する2個の平側面611と接触する位置において、貫通孔61hの中心CC4と、圧電素子51aSの中心CC3Sと、の距離が最大となる。従って、図5の例では、貫通孔61hの中心CC4と、破線で示す圧電素子51aSの中心CC3Sと、の間の距離が、第4の距離SLである。なお、図5の例では、ガイド部材61の中心CC2と、ガイド部材61の貫通孔61hの中心CC4と、は一致しているが、ずれていても良い。例えば、ガイド部材61に対して、貫通孔61hをずらして形成すれば、ガイド部材61の中心CC2と、ガイド部材61の貫通孔61hの中心CC4とは、ずれる場合がある。
【0054】
図5において、第4の距離SLだけずれた状態の圧電素子51aSの外側面と、ガイド部材61の貫通孔61hの中心CC4と、の間の径方向の距離の最大値を、第5の距離ALとする。図5の例では、第5の距離ALは、貫通孔61hの中心CC4と、頂点STと、の間の距離である。頂点STは、圧電素子51aSの4個の外側面のうち、ガイド部材61の2個の平側面611に接触する2個の外側面がなす角の頂点である。本実施形態では、第5の距離ALに対する第4の距離SLは、0.26以下である。すなわち、(SL/AL)≦0.26が満たされる。
【0055】
A−3.圧力センサ10の動作
圧力センサ10は、内燃機関のシリンダヘッドに設けられ、燃焼室と連通する取付孔に取り付けられる。該取付孔には、雌ねじが形成されており、筒状金具20のねじ部22が、当該雌ねじに固定される。この状態で、先端ユニット100の先端部は、内燃機関の燃焼室内に露出して、ダイアフラム40の先端側の面は、燃焼室内の気体(例えば、燃料ガス)の圧力を受ける。
【0056】
ダイアフラム40は、燃焼室内の圧力に応じて変形する(撓む)。伝達ロッド91は、ダイアフラム40の変形に応じて軸線CLに沿って変位することによって、ダイアフラム40が受けた圧力に応じた荷重を、後端側の圧電ユニット50に伝達する。圧電ユニット50の圧電素子51a、51b上では、ダイアフラム40(図2)から伝達ロッド91を通じて伝達された荷重に応じて、電荷が生じる。圧電素子51は、荷重に応じた電荷(例えば、電気信号)を、2個の後端電極52aおよび先端電極52bを介して、出力する。出力された電気信号に基づいて、燃焼室内の圧力が特定される。
【0057】
A−5.圧力センサ10の製造方法
次に、圧力センサ10の製造方法について説明する。先ず、上述した圧電ユニット50が、ガイド部材61の貫通孔61h内に収容される。そして、圧電ユニット50が収容されたガイド部材61と、後端押圧部材62aと、先端押圧部材62bと、細径導線77が取り付けられた配線接続部材63と、絶縁体64と、積層されて、カバー65によって固定される。
【0058】
次に、ダイアフラム40と伝達ロッド91とが一体化された部材が、筐体30に取り付けられる。具体的には、伝達ロッド91が、筐体30の軸孔39内に位置するように、ダイアフラム40が、筐体30の先端側の開口に取り付けられる。この状態で、ダイアフラム40の外縁部と、軸孔39の先端部と、がレーザ溶接によって接合される(溶接部WP2が形成される)。その後、軸孔39内において、カバー65によって互いに固定された上述の部材群50、61、62a、62b、63、64が、伝達ロッド91の後端側に取り付けられる。その後、後端挿入部材92の先端側の面が、絶縁体64の後端側の面と接触するまで、後端挿入部材92が、筐体30の軸孔39に挿入される。後端挿入部材92は、さらに、所定の予荷重を圧電ユニット50に付与すべく、先端方向Dfに所定の力で押さえられる。この状態で、後端挿入部材92と筐体30とがレーザ溶接によって接合される(溶接部WP3が形成される)。これによって、先端ユニット100が完成される。
【0059】
その後、細径導線77とケーブル70との接続、および、接地導線79と後端挿入部材92との接続が行われた後に、先端ユニット100の筐体30と筒状金具20とがレーザ溶接によって接合される(溶接部WP1が形成される)。これによって、圧力センサ10が完成される。
【0060】
第1実施形態の圧力センサ10では、上述したように、圧電素子51a、51bの外周を囲むガイド部材61を備えており、上述した第4の距離SLと第5の距離ALとは、(SL/AL)≦0.26を満たすように構成される。この結果、ガイド部材61によって、圧電素子51a、51bの径方向の位置のずれを抑制することができる。
【0061】
圧電素子は、高温になると絶縁抵抗が低くなる。絶縁抵抗が低くなると、圧電素子の一方の電極から他方の電極へと漏れる電流が多くなる。漏れる電流が多くなると、圧力に応じて出力される電荷量が、所望の値から変化するので、圧力の測定精度が低下する。これを防ぐためには、圧電素子の絶縁抵抗を大きくすることが好ましい。圧電素子の絶縁抵抗は、軸線と垂直な断面積が小さいほど大きくなり、軸線方向の長さが長いほど大きくなる。このために、本実施形態では、2個の圧電素子51a、51bを軸線方向に重ねることで、圧電素子の全体の軸線方向の長さを長くしている。また、筐体30の軸孔39の径に対して、2個の圧電素子51a、51bの径方向の長さを短くすることで、圧電素子の軸線と垂直な断面積を小さくしている。また、2個の圧電素子51a、51bを軸線方向に重ねると、圧力に応じて出力される電荷量が増加するので、圧力に対する圧力センサ10の感度が向上する。
【0062】
しかしながら、圧電素子を重ねる個数が多いほど、圧電素子の軸線と垂直な断面積が小さいほど、圧電素子が径方向にずれやすくなる。また、圧電素子の表面は、予荷重を付与した際において、予荷重を該表面の全体に均等に付与するために、および、圧電素子の不純物量の確認のために、研磨されている。このために、さらに、圧電素子は、径方向にずれやすくなっている。圧電素子が径方向に過度にずれると、十分な予荷重を圧電素子に付与することができなくなり、圧力センサ10は、安定した圧力の検出ができなくなる可能性がある。例えば、内燃機関の運転条件の違い(例えば、燃焼室内の温度や最大圧力の違い)によって、圧力の検出結果のばらつきが大きくなる可能性がある。
【0063】
本実施形態では、圧電素子51a、51bを含む積層部材(圧電ユニット50)の外周を囲むガイド部材61を設けることで、圧電素子の径方向の位置のずれを抑制することができる。特に、第5の距離ALに対する第4の距離SLの長さ(SL/AL)が十分に短くなるように、(SL/AL)が0.26以下に設定されている。これによって、ガイド部材61の貫通孔61h内において、圧電素子51aが径方向に最大限までずれたとしても、圧電素子を含む積層部材の互いの重なりを維持できる程度しかずれない。この結果、圧電素子51a、51bの径方向の位置のずれを抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、筐体30とガイド部材61とは互いに非接触である。また、(S2/S1)≦0.65が満たされる。すなわち、上述した第1の距離D1を半径とする第1の円の面積S1に対する第2の距離D2を半径とする第2の円の面積S2が0.65以下であることが好ましい。これによって、ガイド部材61の外測面と、筐体30の内側面と、の間隔を十分に確保できるので、圧電素子が過度に加熱されることを抑制することができる。また、ガイド部材61が高温での使用時に熱膨張した場合であっても、筐体30とガイド部材61とが接触することを抑制することができるので、燃焼室内の熱が、圧電ユニット50に伝わることを抑制できる。したがって、圧電ユニット50内の圧電素子51a、51bの絶縁抵抗の低下を抑制できる。また、圧電ユニット50の後端側と、筐体30と、が電気的に短絡する不具合を抑制できる。
【0065】
さらに、本実施形態では、ガイド部材61の先端面と先端押圧部材62bとの間と、ガイド部材61の後端面と後端押圧部材62aとの間と、のうちの少なくとも一方に、間隙NTを有する(図2)。この結果、圧電素子51a、51bを含む圧電ユニット50に対して、先端押圧部材62bと後端押圧部材62aとによって適切な予荷重を付与することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、断面CSにおいて、面積S1に対する面積S3の比率は、0.5以下に設定されている。すなわち、(S3/S1)≦0.5が満たされる。この場合には、筐体30の軸孔39の径方向の大きさに対して、圧電素子51a、51bの径方向の大きさが小さいために、圧電素子51a、51bの径方向のずれが発生しやすい。このような場合に、ガイド部材61によって、圧電素子51a、51bの径方向のずれを適切に抑制することができる。
【0067】
B.評価試験
圧力センサのサンプルを作製して、以下に説明する第1〜第3評価試験を行った。
B−1:第1評価試験
第1評価試験では表1に示すように、12種類の圧力センサのサンプルA1〜A12を作製して、評価試験を行った。各サンプルに共通な項目は、以下のとおりである。
ガイド部材61の外径:2.6mm
貫通孔61hの互いに対向する平側面611間の間隔W(図5):1.1mm
圧電素子51a、51bの軸線方向の長さ:0.5mm
予荷重の目標値:300N
筐体30の内径:4.6mm
【0068】
【表1】
【0069】
各サンプルにおいて、圧電素子51a、51bの径方向の一辺の長さを変更することによって、(SL/AL)の値を変更した。圧電素子51a、51bの径方向の一辺の長さが短くなるほど、(SL/AL)は大きくなる。12個のサンプルA1〜A12では、(SL/AL)は、表1に示すように、0.1、0.15、0.2、0.22、0.24、0.26、0.28、0.3、0.32、0.35、0.4、0.5にそれぞれ設定されている。
【0070】
評価試験では、各サンプルを上述した製造方法に従って組み立てた。そして、組立の時点で、所定の予荷重を付与することができないサンプルの評価を「B」とした。そして、所定の予荷重を付与することができたサンプルについては、さらに、2MPaの動圧を流したチャンバーに、サンプルを取り付けて、サンプルからの出力波形を確認した。この結果、出力波形が確認できなかったサンプルの評価を「B」とし、出力波形が確認できたサンプルの評価を「A」とした。所定の予荷重を付与することができないサンプルは、組立時に圧電素子51a、51bの径方向へのずれが発生したために、所定の予荷重を付与することができなかったと考えられる。また、出力波形が確認できなかったサンプルは、圧電素子51a、51bの径方向へのずれが発生しているために、出力波形を外部に出力できないと考えられる。
【0071】
評価結果は、表1に示す通りである。(SL/AL)が、0.26を超えるサンプルA7〜A12の評価は、いずれも「B」であった。そして、(SL/AL)が、0.26以下であるサンプルA1〜A6の評価は、いずれも「A」であった。
【0072】
以上の説明から解るように、第1評価試験によって、(SL/AL)≦0.26を満たすことによって、圧電素子51a、51bの径方向の位置のずれを抑制することができることが確認できた。
【0073】
B−2:第2評価試験
第2評価試験では表2に示すように、14種類の圧力センサのサンプルB1〜B14を作製して、評価試験を行った。各サンプルは、(SL/AL)=0.17を満たすように、圧電素子51a、51bの径方向の一辺の長さが一定値に設定されている。さらに、各サンプルでは、ガイド部材61の外径を変更することによって、上述した第2の距離D2が変更されている。これによって、(S2/S1)の値が変更されている。具体的には、14個のサンプルB1〜B14では、(S2/S1)は、表2に示すように、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95にそれぞれ設定されている。その他の寸法や予荷重は、第1評価試験のサンプルと同じである。
【0074】
【表2】
【0075】
評価試験では、各サンプルを上述した製造方法に従って組み立てた。そして、各サンプルを用いて、実機評価試験を行った。具体的には、内燃機関の同じシリンダ(すなわち、燃焼室)にサンプルのセンサと、目標となる圧力センサ(「目標センサ」とも呼ぶ)とを取り付け、内燃機関を運転させることによって、サンプルのセンサと目標センサとのそれぞれから圧力の波形が取得された。内燃機関としては、直列4気筒、排気量1.3L、自然吸気の内燃機関が用いられた。内燃機関は、燃焼室内が最も高温となる条件、具体的には、スロットル全開(WOT(Wide-Open Throttle)で、回転速度が4500rpmである条件下で、運転された。
【0076】
図6は、圧力センサによって測定される圧力の波形の例を示すグラフである。横軸は、クランク角度CAを示し、縦軸は、圧力(単位は、kPa)を示している。ゼロ度のクランク角度CAは、上死点を示している。グラフ中には、目標センサによって測定される圧力G1(目標の圧力とも呼ぶ)と、サンプルによって測定される圧力G2(サンプルの圧力とも呼ぶ)と、が示されている。目標センサは、十分に良好な精度で圧力を測定できるように、予め調整されているので、圧電素子の電極間の漏れ電流が発生していない。本評価試験では、サンプルの圧力G2と目標の圧力G1とを、5サイクルに亘って測定した。そして、燃焼室内の圧力が比較的低いベース圧力となる所定のタイミングでの2つの圧力G1、G2の差分Emをサイクル毎に特定した。そして、5個の差分Emの平均値を、サンプルの圧力誤差Epとして算出した。この圧力誤差Epは、サンプルにおいて、圧電素子の電極間の漏れ電流が発生することに起因して発生する誤差であると考えられ、ドリフト量とも呼ばれる。
【0077】
ドリフト量Epが、200kPa以下であるサンプルの評価を「A」とし、ドリフト量Epが、200kPaを超えるサンプルの評価を「B」とした。
【0078】
評価結果は、表2に示す通りである。(S2/S1)が、0.65を超えるサンプルB9〜B14の評価は、いずれも「B」であった。そして、(S2/S1)が、0.65以下であるサンプルB1〜B8の評価は、いずれも「A」であった。
【0079】
この理由は、以下のように考えられる。(S2/S1)が、0.65以下であるサンプルB1〜B8では、筐体30とガイド部材61との間隔を十分に確保できるので、圧電素子51a、51bが過度に加熱されることを抑制することができるので、圧電ユニット50内の圧電素子51a、51bの絶縁抵抗の低下を抑制できる。したがって、圧電素子の電極間の漏れ電流を抑制して、ドリフト量Epを低下させることができる。
【0080】
以上の説明から解るように、第2評価試験によって、(S2/S1)≦0.65を満たすことによって、圧電素子51a、51bが過度に加熱されることを抑制することができることが確認できた。
【0081】
B−3:第3評価試験
第3評価試験では表3に示すように、16種類の圧力センサのサンプルC1〜C16を作製して、評価試験を行った。各サンプルでは、圧電素子51a、51bの径方向の一辺の長さを変更することによって、上述した第3の距離D3が変更されている。これによって、(S3/S1)の値が変更されている。具体的には、16個のサンプルC1〜C16では、(S3/S1)は、表3に示すように、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95にそれぞれ設定されている。また、ガイド部材61の貫通孔61hの寸法、具体的には、貫通孔61hの互いに対向する平側面611間の間隔W(図5)は、(SL/AL)=0.17を満たすように、圧電素子51a、51bの径方向の一辺の長さに応じて決定されている。その他の寸法や予荷重は、第2評価試験のサンプルと同じである。
【0082】
【表3】
【0083】
評価試験では、先ず、ガイド部材61を用いることなく、各サンプルを上述した製造方法に従って組み立てた。そして、組立の時点で、所定の予荷重を付与することができなかったサンプルの評価を「B」とした。そして、所定の予荷重を付与することができたサンプルの評価を「A」とした。さらに、所定の予荷重を付与することができなかったサンプルについて、ガイド部材61を用いて、上述した製造方法に従って組み立てた。そして、組立後のサンプルを、2MPaの動圧を流したチャンバーに取り付けて、サンプルからの出力波形を確認した。この結果、出力波形が確認できなかったサンプルの評価を「B」とし、出力波形が確認できたサンプルの評価を「A」とした。
【0084】
評価結果は、表3に示す通りである。ガイド部材61を用いない場合には、(S3/S1)が0.5以下であるサンプルC1〜C7の評価は、いずれも「B」であった。そして、ガイド部材61を用いない場合には、(S3/S1)が、0.5を超えるサンプルC8〜C16の評価は、いずれも「A」であった。すなわち、(S3/S1)が0.5を超えるサンプルは、ガイド部材61を用いなくても組み立てることができるが、(S3/S1)が0.5以下であるサンプルは、ガイド部材61を用いることなく組み立てることはできなかった。
【0085】
そして、ガイド部材61を用いる場合には、(S3/S1)が0.5以下であるサンプルの評価は、いずれも「A」であった。すなわち、ガイド部材61を用いる場合には、(S3/S1)が0.5以下であるサンプルであっても、組み立てることができた。
【0086】
以上の説明から解るように、(S3/S1)が0.5以下であるサンプルでは、筐体30内の軸孔39の径に対して、圧電素子51a、51bの径方向の大きさが小さいために、ガイド部材61を用いない場合には、組み立てることができないが、ガイド部材61を用いることで組み立てることができることが確認できた。
【0087】
C.変形例:
(1)上記実施形態では、圧電ユニット50は、2個の圧電素子51a、51bを含んでいる。圧電素子の個数は、これに限られず、1個でも良いし、3個以上であっても良い。圧電ユニット50が、2個以上の圧電素子を含む場合には、問題となる圧電素子の径方向のずれが発生しやすいと考えられるが、ガイド部材61によって、圧電素子の径方向のずれを抑制することができる。
【0088】
(2)上記実施形態では、(S2/S1)≦0.65を満たしているが、(S2/S1)≦0.65を満たしていなくても良い。この場合には、(S2/S1)≦0.65を満たす場合と比較して、圧電素子51a、51bが高温になる可能性が高くなる。しかしながら、(SL/AL)≦0.26を満たしていれば、圧電素子51a、51bの径方向のずれを抑制することができる。
【0089】
(3)上記実施形態では、(S3/S1)≦0.5を満たしているが、(S3/S1)≦0.5を満たしていなくても良い。この場合には、ガイド部材61が無くても圧力センサ10を組立て可能ではあるが、ガイド部材61を用いることによって、圧電素子51a、51bの径方向のずれを、ガイド部材61を用いない場合よりも抑制することができる。
【0090】
(4)上記実施形態では、ガイド部材61の先端側の面と先端押圧部材62bの基板部621bとの間と、ガイド部材61の後端側の面と後端押圧部材62aの突出部622aとの間と、のうちの少なくとも一方に、間隙NTが形成されている。これに代えて、間隙NTが形成されなくても良い。例えば、間隙NTがない場合でも、ガイド部材61を軸線方向に変形可能な弾性材料(エラストマーやゴムなど)を用いて形成すれば、先端押圧部材62bと後端押圧部材62aとによって圧電ユニット50に予荷重を付与することができる。
【0091】
(5)圧電素子51a、51bの軸線と垂直な断面は、矩形に限らず、円形でも良く、他の多角形、例えば、五角形や六角形であっても良い。この場合には、ガイド部材61の貫通孔61hの形状も、圧電素子51a、51bの形状に対応して適宜に変更されることが好ましい。圧電素子51a、51bの形状や、ガイド部材61の貫通孔61hの形状に関わらずに、(SL/AL)≦0.26が満たされることが好ましい。こうすれば、圧電素子51a、51bの径方向のずれを抑制することができる。
【0092】
(6)圧力センサ10を構成する各部材、例えば、40、50、91、63、64、92の形状等の具体的な構成は、一例であり、他の様々な構成が採用され得る。また、各部材について例示したステンレス鋼などの材料は、一例であり、他の様々な材料が採用され得る。例えば、伝達ロッド91は、一部または全部が中空の筒状の部材であっても良いし、角柱形状や角筒形状を有していても良い。また、後端挿入部材92は、外周面に雄ねじが形成されたネジ部材であっても良い。この場合には、筐体30の軸孔39を形成する内周面には、雌ねじが形成され、該雌ねじに、後端挿入部材92がねじ込まれることで、後端挿入部材92が筐体30に固定される。この場合には、後端挿入部材92のねじ込み量によって、圧電ユニット50に付与される予荷重が調整される。
【0093】
(7)上記実施形態では、ガイド部材61は、圧電ユニット50の全体の外周を囲んでいるが、必ずしも圧電ユニット50の全体の外周を囲んでいなくても良い。例えば、圧電ユニット50のうち、最も先端側に位置する先端電極52bは、後端側の一部分のみガイド部材61によって囲まれていても良い。また、圧電ユニット50のうち、最も後端側に位置する後端電極52aは、先端側の一部分のみガイド部材61によって囲まれていても良い。
【0094】
また、圧電ユニット50の構成としては、図2図3の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、後端電極52a、52bが省略されて、後端押圧部材62a、先端押圧部材62bが、直接に圧電素子51a、51bと接触していても良い。
【0095】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10...圧力センサ、20...筒状金具、22...ねじ部、24...工具係合部、29...軸孔、30...部材、30...筐体、31...大外径部、32...中外径部、33...小外径部、39...軸孔、40...ダイアフラム、50...圧電ユニット、51a、51b...圧電素子、52a...後端電極、52b...先端電極、61...ガイド部材、61h...貫通孔、62a...後端押圧部材、62b...先端押圧部材、63...配線接続部材、64...絶縁体、65...カバー、70...ケーブル、71...ジャケット、72...外部導体、73...導電コーティング、74...絶縁体、75...内部導体、76...平板導線、77...細径導線、78...チューブ、79...接地導線、91...伝達ロッド、92...後端挿入部材、100...先端ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6