(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状セグメントがリングの90から360°の範囲、好ましくは180から360°、より好ましくはリングの300から360°の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーマトリックスコアが、エチレン−co−酢酸ビニル、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーマトリックスコアが、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーマトリックスコアが、ポリマーマトリックス材料の全重量に基づき0.1から50重量%の前記少なくとも1種の治療薬を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーコーティングが、エチレン−co−酢酸ビニル、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーコーティングが、エチレン−co−酢酸ビニル、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルメタクリレート)またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーコーティングが、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
前記少なくとも1種の治療薬が、抗生物質製剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、プロスタグランジン類似体、抗緑内障薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、抗血管新生薬、免疫系調節薬、抗がん剤、アンチセンス剤、抗真菌剤、縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬、散瞳薬、分化調節剤、交感神経作動薬、麻酔薬、血管収縮剤、血管拡張剤、充血除去薬、細胞輸送/移動切迫剤(cell transport/mobility impending agents)、ポリペプチド製剤およびタンパク製剤、ステロイド薬、炭酸脱水酵素阻害剤、ポリカチオン、ポリアニオンならびに滑沢剤からなる群より選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
前記少なくとも1種の治療薬が、プロスタグランジン類似体、抗緑内障薬、抗炎症薬、抗血管新生化合物、免疫系調節薬からなる群より選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
前記少なくとも1種の治療薬が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、チモロール、ラタノプロスト ドルゾラミド、トリアムシノロン、デキサメタゾンまたはシクロスポリンからなる群より選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーマトリックスコアが、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレンを含み、前記ポリマーコーティングが、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレンまたはポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ポリマーマトリックスコアがポリ(メチルメタクリレート)を含み、前記ポリマーコーティングがポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレンまたはポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
前記デバイスにより投与される治療薬が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、チモロール、ラタノプロスト、ドルゾラミド、トリアムシノロン、デキサメタゾンおよびシクロスポリンからなる群より選択される、請求項17に記載のデバイス。
得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供するステップが、前記得られたポリマーマトリックスコアをポリマー膜により鋳型中で覆うこと、および前記鋳型を50〜150℃の範囲の温度で加熱することにより実施される、請求項19に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願に使用する方法を説明する前に、本出願が、記載された特定の方法、構成要素またはデバイスに限定されるものではなく、したがって方法、構成要素およびデバイスはもちろん変更できることを理解すべきである。また、本出願の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものなので、本明細書において使用される専門用語が限定を意図するものではないことも理解すべきである。
【0022】
特に明記されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本出願が属する分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または等価の任意の方法および材料が、本出願の実践または試験に使用できるが、好ましい方法および材料をここに記載する。
【0023】
本明細書において使用する場合、文脈が明らかに他の事を述べない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、単数および複数の指示対象を含む。「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」および「で構成される(comprised of)」という用語は、本明細書において使用する場合、「含むこと(including)」、「含む(includes)」または「含有すること(containing)、「含有する(contains)」と同義であり、包括的または非制限的であり、列挙されていないさらなる部材、構成要素または方法ステップを排除するものではない。「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」および「で構成される(comprised of)」は「から成る(consisting of)」という用語もさらに含む。
【0024】
終点による数値範囲の記述は、個々の範囲内に組み込まれるすべての数字および小部分ならびに列挙された終点を含む。数値が使用される場合、前記値は正確な数値それ自体、ならびに標準的数学的および/または統計学的規則に従って前記正確な数値に切り上げられたすべての数値を包含する。例えば、リングの「180度」の環状セグメントは、179および181度の角度値、より詳細には、179.5、179.6、179.7、179.8、179.9、180.0、180.1、180.2、180.3および180.4度を包含する。「約」という用語と組み合わせて使用する場合、前記リングの環状セグメントは、前記正確な角度と0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.7、0.9または1.0度異なる角度もさらに包含する。当業者は、徐放性眼内薬物送達デバイスの大きさが長さ単位で表される場合、同じ原理を適用し、例えば、長さ「14.0mm」は13から15mmの長さの値、より詳細には、13.5、13.6、13.7、13.8、13.9、14.0、14.1、14.2、14.3および14.4mmの長さの値を包含することを理解するであろう。したがって、「約14.0mm」という用語は、前記正確な長さと0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.7、0.9または1.0mm異なる長さを包含する。
【0025】
同様に、期間が数値を使用して、例えば「約30分」と示された場合、前記値は、示された正確な時間および正確な時間から例えば、1分未満、1/2分または1、2、3、4もしくは5分逸脱した期間を包含する。同様に、「約30秒」という用語は、約20、25秒から約35、40秒ならびにこの間の任意の時間を包含する。
【0026】
本開示を通して使用される「濃度」および「含有量」という用語は交換可能に使用され、成分の重量濃度または質量分率、すなわち、成分の質量を全成分の合計質量で割ったものを指し、重量%またはw/w%で表される。
【0027】
本明細書において使用される「約」という用語は、パラメーター、量、継続時間などの測定可能な値を指す場合、指定した値およびそれから+/−10%またはそれ未満、好ましくは+/−5%またはそれ未満、より好ましくは+/−1%またはそれ未満、さらにより好ましくは+/−0.1%またはそれ未満の変動を包含することを意味し、このような変動は、開示された発明の実施に対して適切である。修飾語「約」が指す値はそれ自体もまた、具体的に、および好ましく開示されると理解するべきである。本明細書に引用されるすべての文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書を通した「一実施形態」または「ある実施形態」に対する言及は、その実施形態と関連して記載された特定の特色、構造または特徴が、本出願の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通してさまざまな場所にある「一実施形態において」または「ある実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではないが、その場合もあり得る。さらに、本開示から当業者に明らかなように、特定の特色、構造または特徴は、1またはそれを超える実施形態において任意の適切な様式で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、いくつかの特色を含み、他の実施形態に含まれる他の特色は含まないが、当業者により理解されるように、異なる実施形態の特色の組み合わせは本出願の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、特許請求の範囲において、特許請求される実施形態はいずれも任意の組み合わせで使用することができる。
【0029】
さらなるガイダンスによって、説明に使用される用語の定義を、本出願の教示をより良く理解するために挙げる。
【0030】
本出願の一態様は、徐放性眼内薬物送達デバイスであって、
(a)少なくとも1種の治療薬を含有するマトリックスコア、および
(b)前記マトリックスコアを完全に覆うポリマーコーティング、
を含み、
前記マトリックスコアおよびポリマーコーティングが眼液において不溶性および不活性であり、眼の溝のために構成されるデバイスを提供する。
【0031】
好ましくは、前記デバイスは、眼の溝のために構成された柔軟な環状セグメントを含むか、またはこれにより形成される。より詳細には、前記デバイスは、0.10から0.80mmの範囲の断面直径を有する。環状セグメントはリングの90から360°の範囲であってよい。好ましくは前記環状セグメントはリングの180から360°、より好ましくは300から360°の範囲である。環状セグメントは、5.0から15.0mm、好ましくは10.0から15.0mm、より好ましくは13.0から14.0mmの範囲、例えば13.5mmの外径(external or outer diameter)を有し得る。環または環状セグメントの「外径(external diameter)」または「外径(outer diameter)」は、本明細書において環または環状セグメントの外円の直径を意味する。
【0032】
「徐放性」剤形は、特定の期間に一定の薬物濃度を維持するために所定の速度で薬物を放出するように設計されている。
【0033】
本明細書において使用される「治療薬」または「化合物」は「薬物」と交換可能に使用され、疾患の治療、治癒、予防または診断に使用される化学物質を指す。
【0034】
本明細書において使用される「眼内薬物送達デバイス」は、眼に配置されるため構造化、サイズ化または構成され、ひとたび配置されると選択された薬物を局所的に放出する装置を指す。本出願の眼内薬物送達デバイスは眼の生理学的状態に生体適合性であり、正常な眼および/または偽水晶体眼において有害な副作用を引き起こさない。本出願に係る眼内薬物送達デバイスは、視覚を妨げることなく眼に配置することができる。
【0035】
本明細書において使用される「偽水晶体眼」は、眼内レンズが移植されている眼を指す。眼内レンズは、例えば、穿孔性の創傷もしくは潰瘍により損傷された水晶体または例えば白内障もしくは近視の場合で適切に機能しない水晶体と置き換えることができる。眼内レンズは、先天性異常のため水晶体がない患者にも移植することができる。
【0036】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの「マトリックスコア」は、本デバイスの最も内側に位置づけられる。このマトリックスコアは、眼液において不溶性および不活性(すなわち生体適合性)であるが、同時に眼組織により吸収または分解されない材料を含む。壁の溶解は薬物放出の恒常性および長期間所定の位置に留まるこのデバイスの能力に影響を与えると思われるので、眼液に急速に溶解する材料または高度に溶解性の材料の使用は、回避されるべきである。本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアに使用される好ましい材料としては、例えばニチノールなどのポリマーまたはステント材料が挙げられる。
【0037】
ニチノールはニッケルとチタンの合金であり、2つの元素が大まかに同等の原子百分率で存在する。ニチノール合金は2つの特有の性質、形状記憶および超弾性を示す。「形状記憶」という用語は、ある温度において変形しても、その後加熱により元の形状に回復する、合金の能力を指す。「超弾性」という用語は、極めて大きな弾性、普通の金属のおよそ10から30倍の弾性を示す合金の能力を指す。ニチノール合金は、耐食性および生体適合性の両方を有する。
【0038】
本発明の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアは、少なくとも1種の治療薬をさらに含む。本発明の徐放性眼内薬物送達デバイスマトリックスコアは、ポリマーマトリックス材料の全重量に基づき0.1から50重量%の少なくとも1種の治療薬を含む。好ましくは、マトリックスコアはポリマーマトリックス材料の全重量に基づき1.0から50重量%の前記少なくとも1種の治療薬を含む。
【0039】
本発明の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアは、このコアの中に治療薬が分散または分布される、すなわち、少なくとも1種の治療薬がマトリックスコア、好ましくはポリマーマトリックスコア内に混合されることを特徴とする。治療薬のマトリックスコア内への分散は、例えば、架橋性ポリマー(例えばPDMS)と少なくとも1種の治療薬のブレンドの架橋、または熱可塑性ポリマー(例えばEVA、PE、好ましくはHDPE、PMMA)と少なくとも1種の治療薬との共押出し成形により達成することができる。
【0040】
ある実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアはニチノールステント材料で作られる。
【0041】
別の実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアはポリマーで作られる。
【0042】
本出願の第1の態様によれば、徐放性眼内薬物送達デバイスであって、
(a)少なくとも1種の治療薬が混合されたポリマーマトリックスコア、および
(b)前記ポリマーマトリックス材料を完全に覆うポリマーコーティング、
を含み、
前記マトリックスコアおよびポリマーコーティングが眼液において不溶性および不活性であり、眼の溝のために構成されたデバイスが提供される。
【0043】
好ましくは、前記デバイスは、眼の溝のために構成された柔軟な環状セグメントを含むか、またはこれにより形成される。より詳細には、前記デバイスは、0.10から0.80mmの範囲の断面直径を有する。環状セグメントは、リングの90から360°の範囲であってよい。好ましくは、前記環状セグメントはリングの180から360°、より好ましくは300から360°の範囲である。
【0044】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの「ポリマーマトリックスコア」は、本デバイスの最も内側に位置づけられる。このポリマーマトリックスコアは、眼液において不溶性および不活性(すなわち生体適合性)であるが、同時に眼組織により吸収または分解されないポリマーを含む。壁の溶解は薬物放出の恒常性および長期間所定の位置に留まるこのデバイスの能力に影響を与えると思われるので、眼液に急速に溶解する材料または高度に溶解性の材料の使用は、回避されるべきである。
【0045】
本明細書において使用される「ポリマー」という用語は、複数の反復単位で構成される構造の分子を指す。したがって、「生体適合性ポリマー」は生体により耐容性が示されるポリマーである。生体適合性ポリマーは天然起源であっても、または合成起源であってもよい。
【0046】
さまざまなポリマーが、中に治療薬が分布されたポリマーマトリックスコアを形成するために使用することができる。好ましくは、ポリマーは治療薬と化学的に適合性があり、治療薬に対して浸透性がある。
【0047】
ポリマーマトリックスコアに適切なポリマーとしては、例えば、エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、(可塑化)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ酢酸ビニル、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレートコポリマー、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4−イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−ジエチルフメレール(fumerale)コポリマー、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、シリコーン−カーボネートコポリマー、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマーおよび塩化ビニリデン−アクリロニトリド(acrylonitride)コポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(TPE)(例えばSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、MBM(メチルメタクリレート−ブタジエン−メチルメタクリレート)など)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
ポリマー中の架橋度は、ポリマーマトリックスコアからの薬物放出速度を制御するために有利に利用することができる。例えば、架橋度の高いポリマーは、架橋度が低いポリマーより低速で薬物を放出するであろう。
【0049】
一実施形態において、ポリマーマトリックスコアは、エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、(可塑化)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ酢酸ビニル、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルブチレート、エチレンエチルアクリレートコポリマー、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4−イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン、アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−ジエチルフメレール(fumerale)コポリマー、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、シリコーン−カーボネートコポリマー、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマーおよび塩化ビニリデン−アクリロニトリド(acrylonitride)コポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(TPE)(例えばSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、MBM(メチルメタクリレート−ブタジエン−メチルメタクリレート)など)またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0050】
特定の実施形態において、ポリマーマトリックスコアは、エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む。
【0051】
特定の実施形態において、ポリマーマトリックスコアは、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む。
【0052】
本発明の徐放性眼内薬物送達デバイスのポリマーマトリックスコアは、少なくとも1種の治療薬をさらに含む。本発明の徐放性眼内薬物送達デバイスのポリマーマトリックスコアは、ポリマーマトリックス材料の全重量に基づき0.1から50重量%の少なくとも1種の治療薬を含み得る。好ましくは、ポリマーマトリックスコアは、ポリマーマトリックス材料の全重量に基づき1.0から50重量%または5.0から50重量%の前記少なくとも1種の治療薬を含む。
【0053】
特定の実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含み、少なくとも1種の治療薬は前記ポリマーの間に分散される(すなわち、少なくとも1種の治療薬が前記ポリマーに混合される)。
【0054】
本発明の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアまたはポリマーマトリックスコアは、前記デバイスの柔軟性を増加するための支持構造もまた含み得る。好ましくは、前記支持構造はフィラメントである。より好ましくは、前記構造は金属フィラメントである。
【0055】
ある実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスのマトリックスコアまたはポリマーマトリックスコアは金属フィラメントを含む。
【0056】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスはさらに、マトリックス材料を完全に覆う「ポリマーコーティング」を含み、ポリマーコーティングはポリマーマトリックス材料中に含有される治療薬の放出をさらに制御する。前記ポリマーコーティングは、眼液において不溶性および不活性(すなわち生体適合性)であるが、同時に眼組織により吸収または分解されないポリマーを含む。好ましくは、前記ポリマーコーティングのポリマーは治療薬に対して浸透性である。
【0057】
ポリマーコーティングに適切なポリマーとしては、例えば、エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、(可塑化)ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、架橋ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルまたは架橋ゼラチン;再生された不溶性、耐食性セルロース、アシル化セルロース、エステル化セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロースジエチル−アミノアセテート;ポリウレタン、ポリカーボネートならびに不溶性コラーゲンで修飾されたポリカチオンおよびポリアニオンの共沈殿により形成される微多孔質ポリマーまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
一実施形態において、ポリマーコーティングは、エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、(可塑化)ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、架橋ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルまたは架橋ゼラチン;再生された不溶性、耐食性セルロース、アシル化セルロース、エステル化セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロースジエチル−アミノアセテート;ポリウレタン、ポリカーボネートならびに不溶性コラーゲンで修飾されたポリカチオンおよびポリアニオンの共沈殿により形成される微多孔質ポリマーまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0059】
特定の実施形態において、ポリマーコーティングはエチレン−co−酢酸ビニル(EVA)を含む。
【0060】
特定の実施形態において、コーティングは、ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含む。
【0061】
ポリマーコーティング用に選択されたポリマーの架橋度は、眼内薬物送達デバイスからの薬物放出速度を制御するために有効に利用することができる。例えば、架橋度が高いポリマーは、架橋度が低いポリマーより低速で薬物を放出するであろう。
【0062】
実施形態においては、
(a)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーを含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記ポリマーに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、およびこれらの組み合わせなる群より選択されるポリマーを含む、前記マトリックスを完全に覆うコーティング、
を含み、眼の溝のために構成された除放性眼内薬物送達デバイスが提供される。
【0063】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PEに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含むコーティング、
を含む。
【0064】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PEに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含むコーティング、
を含む。
【0065】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PMMAに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含むコーティング、
を含む。
【0066】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PMMAに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含むコーティング、
を含む。
【0067】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PMMAに混合されたマトリックスコア、および
(b)エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)を含むコーティング、
を含む。
【0068】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PEに混合されたマトリックスコア、および
(b)エチレン−co−酢酸ビニル(EVA)を含むコーティング、
を含む。
【0069】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PMMAに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリプロピレン(PP)を含むコーティング、
を含む。
【0070】
特定の実施形態において、徐放性眼内薬物送達デバイスは、
(a)ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)を含み、少なくとも1種の治療薬、好ましくはチモロールが前記PEに混合されたマトリックスコア、および
(b)ポリプロピレン(PP)を含むコーティング、
を含む。
【0071】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの大きさは、眼が構成する限定された解剖学的空間を考えると、考慮に入れるべき重要なパラメーターである。デバイスは、眼の溝のために構成されるべきである。デバイスが大きいほど移植および摘出の両方に複雑な外科手術が必要となり、複雑さが増すと、合併症、長い治癒および回復の期間および副作用の可能性をもたらす。したがって、「眼の溝のために構成された」という表現は、本発明に係るデバイスの定義を読んだ場合、眼の溝への挿入または移植を可能にする形状および大きさを有する部材として理解されるべきであり、この部材は人間集団を通して一様な大きさ(直径11±0.37mm、Davis et al,Cornea 1991)を有する。
【0072】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、0.10から0.80mmの範囲であり得る断面直径の環形状を呈する。ある実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの断面直径は0.20から0.50mmの範囲である。さらに別の実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの断面直径は0.30から0.45mmの範囲である。好ましい実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの断面直径は0.33から0.38mmの範囲である。前記環形状は、リングの90から360°の範囲の環状セグメントも含む。好ましくは、前記環状セグメントは、治療有効量の薬物または治療用化合物を収容するために必要な体積に依存して、180から360°、より好ましくは300から360°の範囲である。
【0073】
実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、5.0から15.0mmの間、好ましくは10.0から15.0mmの間、より好ましくは13.0から14.0mmの間に含まれる、例えば約13.5mmの外径を有する環形状を有する。(
図2参照)。
【0074】
したがって、当業者は、リングの環状セグメントの角度を変更することによって投薬量および療法の期間を調整し得ることを把握できると思われる。例えば、90°の角度を有する環状セグメントは、300°の角度を有する環状セグメントより小さく、したがって、セグメントが小さいほど含有する用量は少ない、または短期間の療法もしくは低用量に採用される。同様に、180°の角度を有する環状セグメントは、通常360°の角度を有する環状セグメントの用量の約半分を含む。
【0075】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの長さもまた、治療有効量の薬物もしくは治療用化合物を収容するように適合させることができ、したがって本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの長さは5.0から40.0mm、例えば5.0から10mm、5.0から14.0mm、5.0から20mm、5.0から25.0mm、5.0から30mmまたは5.0から35mmの範囲であり得る。好ましくは、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの長さは、上に概説された外径に基づき計算される(
図2参照)。例としては、デバイスが約13.5mmの外径を有する場合、長さ約35.0から40.0mmは約350から360°の環状セグメントに相当する。約180°の環状セグメント(リングの約半分)は、この場合通常17.5mmから20.0mmの長さを有する。
【0076】
実施形態において、本明細書に記載のデバイスは、5.0から50.0mmの間、例えば10.0から40.0mmの間に含まれる長さを有する。
【0077】
したがって、当業者は、デバイスの長さを変更することによって投薬量および療法の期間をさらに調整し得ることを把握できると思われる。したがって、例えば、10.0mmのデバイスは、例えば14.0mmのデバイスより少ない投薬量を含有し、またはより短期間の療法もしくは低用量に採用され得る。同様に、7.0mmのデバイスは通常14.0mmのデバイスが含有する量の約半分の用量を含むと思われる。
【0078】
したがって、環状徐放性デバイスの長さまたは角度を変更することは、新しい鋳型を製造する必要がなく、またマトリックスコアの組成を変更する必要なく、異なる投薬量の活性成分を含むデバイスを作る簡単な方法である。
【0079】
さらに、この徐放性眼内薬物送達デバイスのポリマーマトリックスコアの断面の大きさもまた、前記デバイスが含有する治療薬の量、したがって、投薬量および療法の期間を決定する。したがって、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスのポリマーマトリックスコアは、0.05mmから0.48mmの範囲であり得る断面直径を有する棒形状を呈する。さらに別の実施形態において、ポリマーマトリックスコアの断面直径は0.11から0.19mmの範囲である。好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスコアの断面直径は0.13から0.18mmの範囲である(
図1参照)。最大の断面は、デバイスをヒトの眼、好ましくはヒトの成人の眼の溝に配置できる断面であり、一方最小の断面はデバイスの安定性および操作の容易さを可能にする断面である。
【0080】
図1は、本出願一実施形態に係る眼内薬物送達デバイスのポリマーマトリックスの概略図を示し、前記ポリマーマトリックスは0.13mmの断面直径を有し、前記ポリマーマトリックスは環状の柔軟なセグメントを含む環形状を呈する。前記環状の柔軟なセグメントは、355°の角度を有する。
【0081】
ポリマーコーティングはマトリックス材料に含有される治療薬の放出をさらに制御するので、その寸法もまた投薬量の計画および療法の期間を決定する助けとなる。したがって、ポリマーコーティングは、0.05から0.32mmの範囲の厚さを有し得る。さらに別の実施形態において、ポリマーコーティングは、0.08から0.29mmの範囲の厚さを有する。別の実施形態において、ポリマーコーティングは、0.11から0.20mmの範囲の厚さを有する。ある実施形態において、ポリマーコーティングは、0.13から0.18mmの範囲の厚さを有する(
図2参照)。
【0082】
別の実施形態において、ポリマーコーティングはポリマー膜である。
【0083】
一実施形態において、前記ポリマーコーティングは、0.05から0.32mm、例えば0.05から0.20mmの範囲の厚さを有するポリマー膜である。
【0084】
本明細書に記載の実施形態に係る眼内薬物送達デバイスの一実施形態において、前記ポリマーコーティングは、0.12から0.32mmの範囲の厚さを有するポリマー膜である。
【0085】
本発明に係る眼内薬物送達デバイスに使用される材料は、前記デバイスが柔軟な環状セグメントの形成を確保するように具体的に選択される。すなわち、環状セグメントは力を印加することによってまっすぐに伸ばせるが、力が印加されなくなれば元の環形状にもどる。このこと、すなわち、デバイスを一時的に線形化し、その後デバイスは元の形状に復帰して、挿入後は眼の溝の生体構造へ追従することが、デバイスの眼への簡単な挿入を可能にするので、これは重要である。本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスの特定の寸法が、眼へのその挿入を容易にする。
【0086】
材料はさらに、デバイスを移植可能にするために十分な硬さまたは剛性を確保するように選択される。本明細書において「剛性(stiffness)硬さ」または「剛性(rigidity)」は、物体が印加された力に応答した変形に耐える程度を意味する。
【0087】
より詳細には、材料は、室温(約21℃)において決定した場合、少なくとも約200MPa、例えば少なくとも約210MPa、220MPa、230MPaまたは240MPa、好ましくは少なくとも約250MPa、さらにより好ましくは少なくとも約300MPaのヤング率を確保するように選択される。
【0088】
したがって、実施形態において、本明細書において教示される眼内薬物送達デバイスは、室温(約21℃)において決定した場合、少なくとも約200MPa、例えば少なくとも約210MPa、220MPa、230MPaまたは240MPa、好ましくは少なくとも約250MPa、さらにより好ましくは少なくとも約300MPaのヤング率を有する。
【0089】
「ヤング率」、「引張係数」または「弾性係数」は、物体の堅さの尺度として本明細書において定義される。
【0090】
さらに好ましくは、材料は、室温(約21℃)において決定した場合、少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも10MPa、より好ましくは少なくとも15MPaの破断強度を確保するように選択される。
【0091】
「極限引張強度(UTS)」、「引張強度(TS)」、「極限強度」または「破断強度」は、材料または物体が伸ばしたり引っ張ったりされる間に、壊れるまたは破壊されるまでに耐え得る最大応力である。いくつかの材料は塑性変形することなく鋭く破壊され、これは脆性破壊と呼ばれる。より延性の他の材料はいくらかの塑性変形を受け、破砕前にネッキングすると思われる。
【0092】
さらに好ましくは、材料は、室温(約21℃)において決定した場合、少なくとも5%(初期長さに対して)、好ましくは少なくとも10%(初期長さに対して)の破断伸びを確保するように選択される。
【0093】
本明細書において使用される「破断伸び」は、物体の破断後の変化した長さと初期長さとの間の割合を表す。
【0094】
ヤング率、UTSおよび破断伸びは、ISO規格527に従った引張試験を実施して、工学応力(単位面積当たりの力)対ひずみ(初期長さにわたる変形の割合)を記録することによって決定することができる。引張曲線の線形領域における軸に沿った応力とその軸に沿ったひずみとの割合がヤング率である(
図10)。応力−ひずみ曲線の最も高い点がUTSである(
図10)。
【0095】
通常、試験は伸び計で試料を引っ張ること、それによって、試料が破断するまで徐々に力を増加することを伴う。例えば、引張試験は、電気機械伸び計(例えばInstron5566、Elancourt、France)を使用して実施することができる。試料はホルダー(例えば、Pneumatic Action grips、Elancourt、France)の間に取り付けられ、室温(約21℃)において5mm/分の速度で引っ張られる。ヤング率(MPa)および破断ひずみ(%)は、インストロン(Instron)のソフトウェア(Bluehill2、Elancourt、France)により自動的に計算され得る。ヤング率を得るために、このソフトウェアは、その弾性変形領域中の各応力−ひずみ曲線の勾配を計算する(各曲線の弾性変形領域は、カーソルを動かすことによって手作業で範囲を定めることができる)。
【0096】
デバイスは、自己閉鎖透明角膜切開(<2.0mm)により虹彩面と眼内偽水晶体眼内レンズまたは天然水晶体との間に直接導入するか、またはインジェクションリング(InjectorRing:登録商標)などのマイクロインサーターデバイスの助けにより挿入することができ、このマイクロインサーターは、溝として知られる眼の領域にデバイスを正確に挿入することができる。両方の手順は、局所麻酔下で瞳孔拡張後に実施することができる。この手順の間に粘弾性材料が注射され、溝におけるインプラントのマイクロマニピュレーターによる正確な位置づけを助け得る。正確な位置にひとたび配置されると、インプラントは恒久的にその位置に留まることができ、他のインプラントと交換することができ、または第2の手順の間には摘出することができる。
【0097】
本明細書において使用される「眼の溝」という用語は、虹彩の後面と、最前の毛様体突起の内側およびわずかに前方の突出部とにより形成される空間に対応する解剖学的な眼の構成要素を指す(Smith SG,et al;J.cataract Refract.Surg.13:543,1987)(
図7参照)。
【0098】
眼の溝を本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスのための挿入点として使用することは、患者における線維形成過程の開始のリスクを排除し、したがって、デバイスの拒絶が最小化され、一定期間後のデバイスの摘出および/または交換の可能性が確保されるので特に有利である。
【0099】
特定の実施形態において、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、前記デバイスの挿入または摘出の間の操作を容易にするために、タグまたは突起を含む。前記タグまたは突起は、眼への容易な挿入または眼からの摘出のために、使用者が、例えばマイクロインサーターもしくはピンセットを使用してつかむことができるようにする。好ましくは、前記タグまたは突起は少なくとも1.0mmの大きさがあり、
図2は本出願の一実施形態に係る、前記タグを含む薬物送達デバイスの概略図を示す。
【0100】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは眼液において不溶性および不活性であり、眼の組織により吸収または分解されない材料で形成されるので、材料の溶解または侵食により影響を受けない速度で眼および周囲組織に薬物を連続投与するための薬物リザーバとして機能するために必要な療法の経過の間、これらの形状および完全性を保持する。したがって、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、長期間の完全な眼科投薬計画を提供し、この期間は、必要に応じて数週間、数か月またはさらに数年であり得る。好ましくは、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、可能な限り患者の不快感を低減または制限するために、1から2年の完全な眼科投薬計画を提供する。より好ましくは、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、5年までの間の完全な眼科投薬計画を提供する。
【0101】
所望の治療プログラムが終了すると、本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは、眼の溝のその眼内の位置から摘出することができる。本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスによる少なくとも1種の治療薬の眼への時間依存性送達は、治療の薬理学的および生理学的効果の最大化を可能にする。
【0102】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスは療法の開始および終了のためだけに介入(すなわちデバイスの摘出)を必要とするので、治療計画の間の患者のコンプライアンスの問題が大部分排除される。
【0103】
本出願に係るデバイスは、抗生物質製剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、プロスタグランジン類似体、抗緑内障薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、抗血管新生薬、免疫系調節薬、抗がん剤、アンチセンス剤、抗真菌剤、縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬、散瞳薬、分化調節剤、交感神経作動薬、麻酔薬、血管収縮剤、血管拡張剤、充血除去薬、細胞輸送/移動切迫剤(cell transport/mobility impending agents)、ポリペプチド製剤およびタンパク製剤、ステロイド薬、炭酸脱水酵素阻害剤、ポリカチオン、ポリアニオンおよび滑沢剤からなる群より選択される少なくとも1種の治療薬を含有する。
【0104】
本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスにより送達できる治療薬および薬物としては、例えば、抗生物質製剤、例えばフマギリン類似体、ミノサイクリン、フルオロキノロン、セファロスポリン系抗生物質、ハービマイシン(herbimycon)A、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン,オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシンおよびエリスロマイシン;抗菌剤、例えばスルホンアミド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール(sulfoxazole)、ニトロフラゾンおよびプロピオン酸ナトリウム;抗ウイルス剤、例えばイドクスウリジン、ファムビル、トリナトリウムホスホノホルメート(trisodium phosphonoformate)、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、DDIおよびAZT、プロテアーゼおよびインテグラーゼ阻害剤;プロスタグランジン類似体、例えばラタノプロスト、トラボプロスト、ウノプロストンおよびビマトプロスト;抗緑内障薬、例えばベータブロッカー(チモロール、ベタキソロール、アテノロール)、プロスタグランジン類似体、降圧脂質および炭酸脱水酵素阻害剤;抗アレルギー薬、例えばアンタゾリン、メタピリレン(methapyriline)、クロルフェニラミン、ピリラミンおよびプロフェンピリダミン;抗炎症薬、例えばヒドロコルチゾン、レフルノミド、リン酸デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、リン酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン(fluoromethalone)、ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、副腎皮質ステロイドおよびこれらの合成類似体ならびにマンノース−6−リン酸;潜在的抗脈絡膜血管新生剤であり得るものを含む抗血管新生薬、例えば2−メトキシエストラジオールおよびその類似体(例えば、2−プロピニル(propynl)−エストラジオール、2−プロペニル−エストラジオール、2−エトキシ−6−オキシム−エストラジオール、2−ヒドロキシエストロン、4−メトキシエストラジオール)、VEGFアンタゴニスト、例えば、VEGF抗体(ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプトなど)およびVEGFアンチセンス、血管新生抑制ステロイド(例えば、酢酸アネコルタブおよびその類似体、17−エチニルエストラジオール、ノルエチノドレル、メドロキシプロゲステロン、メストラノール、血管新生抑制活性を有するアンドロゲン、例えばエチステロン);免疫系調節薬、例えばシクロスポリンA、プログラフ(タクロリムス)、マクロライド系免疫抑制剤、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシンおよびムラミールジペプチドおよびワクチン;抗がん剤、例えば5−フルオロウラシル(5−fluoroucil)、シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位錯体、アドリアマイシン、メトトレキセートなどの代謝拮抗剤、アントラサイクリン系抗生物質;アンチセンス剤、例えばホミビルセン;抗真菌剤、例えばフルコナゾール、アンホテリシンB、リポソーマルアンホテリシンB、ボリコナゾール、イミダゾール系抗真菌剤、トリアゾール系抗真菌剤、エキノカンジン様リポペプチド系抗生物質;縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬、例えばピロカルピン、サリチル酸エゼリン、カルバコール、ジイソプロピルフルオロホスフェート、ホスホリンヨード(phospholine iodine)および臭化デメカリウム;散瞳薬、例えば硫酸アトロピン、シクロペンタン、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、オイカトロピンおよびヒドロキシアンフェタミン;分化調節剤;交感神経作動薬、例えばエピネフリン;麻酔薬、例えばリドカインおよびベンゾジアゼパム;血管収縮剤、例えばプソイドエフェドリンおよびフェニレフリン;血管拡張剤、例えばトラゾリン、ニコチン酸、ニコチニルアルコールおよびニリドリン;充血除去薬、例えばナファゾリン、フェニレフリン、テトラヒドロゾリンおよびオキシメタゾリン(exymetazoline);ポリペプチド製剤およびタンパク製剤、例えばアンギオスタチン、エンドスタチン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、血小板第4因子、インターフェロン−ガンマ、インスリン、成長ホルモン、インスリン関連成長因子、熱ショックタンパク質、ヒト化抗IL−2受容体mAb(ダクリズマブ)、エタネルセプト、モノクローナルおよびポリクロナール抗体、サイトカイン、サイトカインに対する抗体;ステロイド薬、例えばトリアムシノロン、デキサメタゾン、クロベタゾール、ベタメタゾンおよびハロメタゾン;細胞輸送/移動切迫剤(cell transport/mobility impending agents)、例えばコルヒチン、ビンクリスチン、サイトカラシンB;炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾールアミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミドおよびメタゾラミド;ポリカチオンおよびポリアニオン、例えばスラミン(Suramine)およびプロタミン;ならびに滑沢剤が挙げられる。
【0105】
当業者は、眼内投与による治療に使用できる任意の薬剤が、本発明に係る眼内デバイスを使用して適用可能であることを理解すると思われるので、治療薬のこの記載は例示であり、網羅的ではない。
【0106】
さらに、本出願の眼内薬物送達デバイスは、1またはそれを超える医薬的に許容される担体または賦形剤をさらに含み得る。
【0107】
本明細書において使用される「医薬的に許容される担体」または「医薬的に許容される賦形剤」という用語は、治療薬と一緒に製剤化され得る任意の材料または物質を意味する。前記医薬組成物およびそれらの製剤に使用するための適切な医薬担体は、当業者には周知である。本出願の範囲内でこれらの選択には何の特別な制限はない。適切な医薬担体としては、湿潤剤、分散剤、粘着剤、接着剤、乳化剤または表面活性剤、増粘剤、錯化剤、ゲル化剤、溶媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張化剤(糖または塩化ナトリウムなど)などが、これら医薬品の実務を調和すること、すなわち、恒久的な損傷を哺乳動物に与えない担体および添加剤であることを条件として、挙げられる。
【0108】
少なくとも1種の治療薬は、徐放性眼内薬物送達デバイスからの放出速度にさらに影響を与えるように製剤化され得る。例えば、少なくとも1種の治療薬は、マイクロカプセル化する(治療薬の分散を遅延させる材料でコーティングする)、イオン交換樹脂と複合化する、または多孔質マトリックスに包埋することができる。複数の治療薬が使用される場合、各薬剤は、前記薬剤がそれぞれ徐放性眼内薬物送達デバイスから異なる放出速度を示すように別々に製剤化され得る(Tomaro−Duchesneau,C.,et al,J.Pharmaceutics,2013,Article ID 103527,19頁;Srikanth,M.V.et al,J.Sci.Res.2(3),597−611; Gruber,M.F.,et al;J.Coll.Interf.Sci.,395(2013)58−63)。
【0109】
本出願の特定の実施形態は、少なくとも1種の治療薬が、プロスタグランジン類似体、抗緑内障薬、抗炎症薬、抗血管新生化合物、免疫系調節薬からなる群より選択される、本明細書に記載の実施形態に係るデバイスもまた包含する。
【0110】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の治療薬は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト(aflibrcept)、チモロール、ラタノプロスト ドルゾラミド、トリアムシノロン、デキサメタゾンまたはシクロスポリンからなる群より選択される。特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の治療薬はチモロールである。
【0111】
本出願の別の態様は、眼疾患の治療に使用するための治療薬であって、本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼の溝に挿入される治療薬に関する。
【0112】
本出願の別の態様は、眼疾患の治療に使用するための、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、チモロール、ラタノプロスト、ドルゾラミド、トリアムシノロン、デキサメタゾンまたはシクロスポリンからなる群より選択される治療薬であって、本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼の溝に挿入される治療薬に関する。
【0113】
本出願の別の態様は、眼疾患の治療に使用するための、ベバシズマブ、ラニビズマブ、チモロール、ラタノプロストまたはシクロスポリンからなる群より選択される治療薬であって、本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスが眼の溝に挿入される治療薬に関する。
【0114】
本明細書において使用される「眼疾患」という用語は、眼または眼の一部もしくは領域に影響を与えるか、または関与する任意の状況を指す。大まかに言って、眼は、眼球および眼球を構成する組織および体液、眼球周囲の筋肉(斜筋および直筋など)、眼球内または眼球に隣接する視神経の一部を含む。
【0115】
前眼疾患は、前方(すなわち、眼の前部)の眼の領域または部位、例えば眼球周囲筋、瞼もしくは眼球組織または水晶体嚢の前壁から後壁に位置する体液もしくは毛様体筋に影響を与えるか、または関与する任意の状態である。したがって、前眼疾患は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、水晶体もしくは水晶体嚢および前眼の領域もしくは部位を血管新生化または神経支配する血管および神経に主に影響を与えるか、または関与する。本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスを使用して治療可能な前眼疾患の例としては、無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼腺腫;白内障;結膜の疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;ドライアイ症候群;瞼疾患;涙器疾患;涙道閉塞症;近眼;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視が挙げられる。緑内障治療の臨床目標は、眼の前眼房において過剰な体液により引き起こされる、高血圧の低減(すなわち眼圧低下)であり得るので、緑内障もまた、前眼疾患であると考えることができる。
【0116】
後眼疾患は主に、脈絡膜または(水晶体嚢の後壁を通る面の後方の位置にある)強膜、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(すなわち視神経円板)ならびに後眼の領域または部位を血管新生または神経支配する血管および神経などの、後眼の領域もしくは部位に影響を与えるか、または関与する任意の状態である。本出願の徐放性眼内薬物送達デバイスを使用して治療可能な後眼疾患の例としては、急性黄斑神経網膜症;ベーチェット病;脈絡膜血管新生;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラズマ症;真菌もしくはウイルスに起因する感染症などの感染症;急性黄斑変性、非滲出性加齢黄斑変性および滲出性加齢黄斑変性などの黄斑変性;黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫などの浮腫;多巣性脈絡膜炎;後眼部位または位置に影響を与える眼外傷、眼腫瘍、網膜中心静脈閉塞症などの網膜障害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎性網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−小柳−原田(Vogt Koyanagi−Harada)(VKH)症候群;ブドウ浸出(uveal diffusion);眼のレーザー治療により引き起こされる、または影響を受ける後眼状態;光力学療法により引き起こされる、または影響を受ける後眼状態、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症性糖尿病性網膜機能不全(non−retinopathy diabetic retinal dysfunction)、網膜色素変性ならびに緑内障が挙げられる。治療目標が、網膜細胞または視神経細胞に対する損傷またはこれらの喪失による視力低下を防ぐこと、または視力低下の発生を低減すること(すなわち神経保護)なので、緑内障は後眼状態と考えることができる。
【0117】
本明細書において使用される「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼の疾患、病気または状態の低減、消散もしくは予防、または傷害を受けた、もしくは損傷された眼組織の治癒の促進を指す。治療は普通、眼の疾患、病気または状態の少なくとも1つの症状の低減に有効である。
【0118】
本明細書において使用される「治療有効量」という用語は、眼疾患を治療するために必要なレベルもしくは量、または眼または眼の領域に重大な負のもしくは有害な副作用を引き起こさずに眼の傷害もしくは損傷を低減もしくは予防するレベルもしくは量を指す。上記を考慮して、治療有効量の治療薬は、眼疾患、状態または病気の少なくとも1つの症状を低減させるために有効な量である。
【0119】
本出願の第3の態様は、眼疾患を治療する方法であって、眼疾患の治療に使用するための治療有効量の化合物を投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される方法に関する。
【0120】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、チモロール、ラタノプロスト、ドルゾラミド、トリアムシノロン、デキサメタゾンまたはシクロスポリンからなる群より選択される治療有効量の化合物を投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0121】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のベバシズマブを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0122】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のラニビズマブを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0123】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のアフリベルセプトを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0124】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のチモロールを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0125】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のラタノプロストを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0126】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のドルゾラミドを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0127】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のトリアムシノロンを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0128】
一実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のデキサメタゾンを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0129】
ある実施形態において、眼疾患を治療する方法は、治療有効量のシクロスポリンを投与することを含み、前記化合物は本明細書に記載の実施形態に係る徐放性眼内薬物送達デバイスで投与され、前記徐放性眼内薬物送達デバイスは眼疾患が治療されるように眼の溝に挿入される。
【0130】
本明細書に記載の徐放性眼内薬物送達デバイスは、モールディングまたはレーザーカッティングにより製造することができる。
【0131】
本出願の第4の態様は、本出願の第1の態様に係る徐放性眼内薬物送達デバイスを作製する方法であって、
−少なくとも1種の治療薬と、不溶性および不活性なポリマーとを混合すること、
−前記混合物をモールディングおよび/または押出し成形して、ポリマーマトリックスコアを供給すること、ならびに
−得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供すること、
を含む方法を提供する。
【0132】
少なくとも1種の治療薬は、不溶性および不活性なポリマーと混合され、均一な混合物を提供することができる。混合ステップは、スパチュラまたは他の適切な混合機器を用いて実施されてよい。または混合ステップは、ブレンダ―を用いて実施されてよい。
【0133】
本出願の特定の実施形態において、不溶性および不活性なポリマーと少なくとも1種の治療薬との混合物は鋳型中に配置され、前記鋳型を加熱することによりポリマーマトリックスコアが得られる。
【0134】
一実施形態において、鋳型の前記加熱は、50から150℃の温度範囲で実施され、好ましくはこの鋳型の加熱は80から120℃の温度範囲で実施される。
【0135】
別の実施形態において、前記鋳型は、0.5から50分の間の期間加熱され、好ましくは、前記鋳型は1分から40分の間の期間加熱され、より好ましくは、前記鋳型は2分から30分の間の期間加熱される。
【0136】
別の実施形態において、鋳型の前記加熱は、80から120℃の温度範囲において、2分から30分の間の期間実施される。
【0137】
または、不溶性および不活性なポリマーと少なくとも1種の治療薬との混合物が、鋳型に配置され、前記鋳型が加熱される場合、さらに鋳型に圧力を印加してポリマーマトリックスコアを供給することもできる。本出願の特定の実施形態において、不溶性および不活性なポリマーと少なくとも1種の治療薬との混合物は鋳型に配置され、前記鋳型は加圧下で加熱され、ポリマーマトリックスコアが得られる。
【0138】
一実施形態において、前記加圧下の鋳型の加熱は、50から150℃の温度範囲で実施され、好ましくはこの鋳型の加熱は、80から120℃の温度範囲で実施される。
【0139】
別の実施形態において、前記鋳型は、0.5から50分の間の期間加圧下で加熱され、好ましくは、前記鋳型は、1分から40分の間の期間加圧下で加熱され、より好ましくは、前記鋳型は、2から30分の間の期間加圧下で加熱される。
【0140】
別の実施形態において、前記鋳型は、2.5から10Nの圧力範囲において加圧下で加熱され、好ましくは、前記鋳型は、3.5から9Nの圧力範囲において加圧下で加熱され、より好ましくは、前記鋳型は、5から7.5Nの圧力範囲において加圧下で加熱される。
【0141】
別の実施形態において、前記加圧下の鋳型の加熱は、80から120℃の温度範囲で、2分から30分の間の期間、5から7.5Nの圧力範囲において実施される。
【0142】
本出願の一実施形態において、本出願の第1の態様に係る徐放性眼内薬物送達デバイスの作製方法は、
−少なくとも1種の治療薬と、不溶性および不活性なポリマーとを混合すること、
−前記混合物をモールディングして、ポリマーマトリックスコアを供給すること、ならびに
−得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供すること、
を含む。
【0143】
別の特定の実施形態において、不溶性および不活性なポリマーと少なくとも1種の治療薬との混合物は押出し成形されて、ポリマーマトリックスコアを供給する。
【0144】
押出し成形方法としては、押出し成形(すなわち、ポリマー材料を溶融し、連続した外形に形成する方法)および共押出し成形法(共押出し成形は、材料の複数の層の同時押出し成形である)の両方が挙げられる。
【0145】
別の特定の実施形態において、不溶性および不活性なポリマーと少なくとも1種の治療薬との混合物は共押出し成形されて、ポリマーマトリックスコアを供給する。
【0146】
押出し成形/共押出し成形方法を使用する場合、ポリマーおよび少なくとも1種の治療薬は、製造に必要な温度、普通少なくとも約85℃において安定であるように選択され得る。押出し成形/共押出し成形方法は、約50℃から約170℃、より好ましくは約65℃から約130℃の温度を使用する。ポリマーマトリックスコアは、押出し成形機の温度を、薬物/ポリマー混合のためにまず約60℃から約150℃、例えば約120℃に、約0から1時間、0から30分または5から15分の期間で到達させることによって作製することができる。例えば、期間は、約10分、好ましくは約0から5分であってよい。好ましくは、不溶性および不活性なポリマーと少なくとも1種の治療薬との混合物は、約50℃から約170℃、例えば約120℃の温度で押出し成形または共押出し成形され、少なくとも130μmの厚さを有するポリマーシートを形成する。
【0147】
得られたポリマーシートは次いで、鋳型に配置され、加熱され、ポリマーマトリックスコアを得ることができる。本出願の特定の実施形態において、少なくとも130μmの厚さを有するポリマーシートは鋳型に配置され、前記鋳型が加熱され、ポリマーマトリックスコアが得られる。
【0148】
一実施形態において、前記鋳型の加熱は50から150℃の温度範囲で実施され、好ましくはこの鋳型の加熱は80から120℃の温度範囲で実施される。
【0149】
別の実施形態において、前記鋳型は0.5から50分の間の期間加熱され、好ましくは、前記鋳型は1分から40分の間の期間加熱され、より好ましくは、前記鋳型は2分から30分の間の期間加熱される。
【0150】
別の実施形態において、前記鋳型の加熱は80から120℃の温度範囲で、2分から30分の間の期間実施される。
【0151】
または、少なくとも130μmの厚さを有するポリマーシートが鋳型に配置され、前記鋳型が加熱される場合、さらに鋳型に圧力を印加してポリマーマトリックスコアを供給することができる。本出願の特定の実施形態において、少なくとも130μmの厚さを有するポリマーシートが鋳型に配置され、前記鋳型は加圧下で加熱されポリマーマトリックスコアが得られる。
【0152】
一実施形態において、前記鋳型の加熱は50から150℃の温度範囲で実施され、好ましくは、この鋳型の加熱は80から120℃の温度範囲で実施される。
【0153】
別の実施形態において、前記鋳型は0.5から50分の間の期間加圧下で加熱され、好ましくは、前記鋳型は1分から40分の間の期間加圧下で加熱され、より好ましくは、前記鋳型は2分から30分の間の期間加圧下で加熱される。
【0154】
別の実施形態において、前記鋳型は2.5から10Nの圧力範囲において加圧下で加熱され、好ましくは、前記鋳型は3.5から9Nの圧力範囲において加圧下で加熱され、より好ましくは、前記鋳型は5から7.5Nの圧力範囲において加圧下で加熱される。
【0155】
別の実施形態において、前記加圧下の鋳型の加熱は、80から120℃の温度範囲で2分から30の間の期間、5から7.5Nの圧力範囲において実施される。
【0156】
本出願の一実施形態において、本出願の第1の態様に係る徐放性眼内薬物送達デバイスの作製方法は、
−少なくとも1種の治療薬と、不溶性および不活性なポリマーとを混合すること、
−前記混合物を押出し成形およびモールディングして、ポリマーマトリックスコアを供給すること、ならびに
−得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供すること、
を含む。
【0157】
本出願の特定の実施形態において、得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供するステップは、前記得られたポリマーマトリックスコアをポリマー膜により鋳型中で覆うこと、および前記鋳型を加熱することにより実施される。
【0158】
ある実施形態において、前記鋳型の加熱は50から170℃の温度範囲で実施され、好ましくはこの鋳型の加熱は80から120℃の温度範囲で実施される。
【0159】
別の実施形態において、前記鋳型は0.5から50分の間の期間加熱され、好ましくは、前記鋳型は1分から40分の間の期間加熱され、より好ましくは、前記鋳型は2分から30分の間の期間加熱される。
【0160】
別の実施形態において、前記鋳型の加熱は、80から120℃の温度範囲で2分から30分の間の期間実施される。
【0161】
またはポリマーマトリックスコアおよびポリマー膜が鋳型に配置され、前記鋳型が加熱される場合、さらに圧力を鋳型に印加することもできる。本出願の特定の実施形態において、得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供するステップは、前記得られたポリマーマトリックスコアをポリマー膜により鋳型中で覆い、前記鋳型を加圧下で加熱することにより実施される。
【0162】
一実施形態において、前記鋳型の加圧下での加熱は50から150℃の温度範囲で実施され、好ましくは、この鋳型の加熱は80から120℃の温度範囲で実施される。
【0163】
別の実施形態において、前記鋳型は0.5から50分の間の期間加圧下で加熱され、好ましくは、前記鋳型は1分から40分の間の期間加圧下で加熱され、より好ましくは、前記鋳型は2分から30分の間の期間加圧下で加熱される。
【0164】
別の実施形態において、前記鋳型は2.5から10Nの圧力範囲において加圧下で加熱され、好ましくは、前記鋳型は3.5から9Nの圧力範囲において加圧下で加熱され、より好ましくは、前記鋳型は5から7.5Nの圧力範囲において加圧下で加熱される。
【0165】
別の実施形態において、前記加圧下での鋳型の加熱は、80から120℃の温度範囲で2分から30分の間の期間、5から7.5Nの圧力範囲において実施される。
【0166】
本出願の別の特定の実施形態において、得られたポリマーマトリックスコアにポリマーコーティングを提供するステップは、前記得られたポリマーマトリックスコアとポリマー膜を一緒に押出し成形することにより実施される。
【0167】
押出し成形方法は、約25℃から約180℃、より好ましくは約50℃から約170℃の温度を使用する。徐放性眼内薬物送達デバイスは、温度を約60℃から約150℃、例えば130℃に到達させ、約0から1時間、0から30分または5−15分の期間混合することによって作製することができる。例えば、期間は約10分、好ましくは約0から5分であってよい。徐放性眼内薬物送達デバイスは、その後約50℃から約170℃、例えば約75℃の温度において押出し成形される。
【0168】
他の実施形態において、ポリマーマトリックスコアは、複数のポリマーコーティングでコーティングされ得る。前記複数のポリマーコーティングは、異なる技術を使用して適用され得る。例えば、第1のポリマーコーティングは、ポリマーマトリックスコアを鋳型中でポリマー膜を用いて覆い、前記鋳型を加熱することにより適用でき、第2のコーティングは、得られたポリマーマトリックスコア−ポリマーコーティング複合体をポリマー膜と一緒に押出し成形することによって適用することができる。
【0169】
これらの方法は、ポリマーマトリックスコア中に存在する治療薬または薬剤の放出速度プロファイルおよびさまざまな他の特性を調節するように選択され得る、幅広い薬物製剤を有する徐放性眼内薬物送達デバイスの製造に有用に適用され得る。
【0170】
この製造方法の別の有利性は、製品の質を損なうことなく製品の均一性が容易に得られることである。
【実施例】
【0171】
下記の実施例は本出願を例示する目的で提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきでは決してない。
【実施例1】
【0172】
チモロール−PDMS徐放性眼内薬物送達デバイスの製造。
【0173】
チモロール(Midas Pharmaceuticals)を乳鉢中で粉砕しスパチュラを使用して、混合物が一様になるまで(2分後)、PDMS MED−6381(NuSil Silicone Technology)と混合した。得られた混合物は50w/w%のチモロール濃度を含有し、次いでこれを真空下に5分間配置し、気泡を除去した。この混合物を鋳型に配置し(
図2参照)、80℃において30分間加熱し、ポリマーマトリックスコアを得た。
【0174】
得られたチモロール含有ポリマーマトリックスコアを、次いで第2の鋳型においてEVA Elvax3129(DuPont(登録商標))シートの間で圧縮した(
図3参照)。EVAシートは100μmの厚さを有し、120℃の温度に5Nの圧力下で加熱することにより作製した。その後、鋳型を120℃の温度において5Nの圧力を印加しながら加熱し、チモロール徐放性眼内薬物送達デバイスを得た。
【実施例2】
【0175】
チモロール−EVA徐放性眼内薬物送達デバイスの製造。
【0176】
チモロール(Midas Pharmaceuticals)を乳鉢中で粉砕し、スパチュラを使用して、混合物が一様になるまで(2分後)EVA Elvax3129(DuPont(登録商標))と混合した。得られた混合物は50w/w%のチモロール濃度を含有しており、これを次いで120℃において共押出し成形した。その後、得られた混合物のシートを、この混合物を、Fontune GTR208加熱プレスを使用して、5Nの圧力下で120℃の温度に加熱することにより得た。得られたシートは少なくとも130μmの厚さを有していた。ポリマーシートを鋳型に配置して(
図2参照)、120℃において5分間、5Nの圧力を印加しながら加熱して、ポリマーマトリックスコアを得た。
【0177】
得られたチモロール−含有ポリマーマトリックスコアを、次いで第2の鋳型においてEVA Elvax3129(DuPont(登録商標))シートの間で圧縮した(
図3参照)。その後、鋳型を120℃の温度において5分間、5Nの圧力を印加しながら加熱して、チモロール徐放性眼内薬物送達デバイスを得た。
【実施例3】
【0178】
治療薬のIn vitro放出。
【0179】
図3および4は、それぞれ本出願に係る眼内徐放性薬物送達デバイスからのチモロールおよびドルゾラミドの放出を決定するための較正曲線を示す。この較正曲線は下記のように決定した:正確な量の治療薬(チモロールまたはドルゾラミド)を正確な量の蒸留水に溶解した。この混合物を、磁気スターラーを用いて完全な溶解/均一性まで撹拌した。混合物のアリコート(正確な体積が分かっている)を、次いでUV分析用の石英セルに配置し、Hitachi U−330分光光度計を使用して各治療薬のUVピーク(チモロールに関しては290nmおよびドルゾラミドに関しては250nm)において試料の吸光度を記録した。その後、各治療薬の初期混合物のいくつかの希釈液を調製して、これらの個別の吸光度測定値を記録した。その後較正曲線を、溶液中に存在する治療薬の濃度の関数として吸光度をプロットすることによって確立した。
【0180】
実施例1において得られたデバイスを容器中に配置して、10mlの蒸留水を加えた。室温において5週間後、0.1mlの水の試料を容器から採取し、治療薬の放出をUV分光法(λが290nmにおいて)により測定し、その後、対応する較正曲線(
図3)で補間して、7.8mgのチモロールがインプラントから有効に放出されたことを決定した。
【実施例4】
【0181】
インプラントの機械的特性
インプラントを、使用するポリマーのタイプに依存して実施例1または2に記載のようにモールディングによって、または表1に示すレーザーカッティングによって作製した。表1に示すさまざまなタイプのポリマー、特にEVA(Elvax3165(酢酸ビニル18%)またはElvax3129(酢酸ビニル10%))、HDPE(Lupolen)およびPMMA(Diakon)を、インプラントの製造のために使用した。
【0182】
得られたインプラントの機械的特性を、電気機械的引張試験機(Instron5566、Elancourt、France)を使用する引張試験により評価した。全試料をホルダー(Pneumatic Action grips、Elancourt、France)に取り付けた。引張試験は、5mm/分の速度で室温(21℃)において実施した。ヤング率(MPa)および破断ひずみ(%)は、インストロン(Instron)ソフトウェア(Bluehill2、Elancourt、France)により自動的に計算された。ヤング率を得るために、このソフトウェアは、その弾性変形領域中の各応力−ひずみ曲線の勾配を計算する(各曲線の弾性変形領域は、カーソルを動かすことによって手作業で範囲を定めた)。
【0183】
ヤング率約390MPa、破断/流動応力約15MPaおよび破断伸び約10%という値は、眼科学分野において移植に適切な剛性を提供すると考えられる。これらの値を有する医療用デバイスの引張曲線を
図8に示す。
【0184】
インプラントの引張曲線を
図8および9に示し、ヤング率、破断/流動応力および破断伸びを表1に要約する。
【0185】
表1:本発明に係るインプラントのヤング率、破断/流動応力および破断伸び。ND:未決定。
【表1】
【0186】
HDPEおよびPMMAで構成されるインプラントは、移植を可能にするために十分に強固であると考えられる。
図8および9ならびに表1に示されるように、このようなインプラントは少なくとも240MPAのヤング率および少なくとも15MPAの破断応力を有する。
【実施例5】
【0187】
API放出の評価
インプラントを、実施例2に記載のようにモールディングにより作製した。コアは50重量%のチモロールおよび50重量%の、EVA(Elvax3129(酢酸ビニル10%))、HDPE(Lupolen)またはPMMA(Diakon)のいずれかを含んでいた。インプラントのシェルは、EVA(Elvax3129(酢酸ビニル10%))、HDPE(Lupolen)またはPPで構成された。さらにシェルを有さないインプラントも作製した。
【0188】
このインプラントを10mlの蒸留水中に配置した。表示の時点において、媒体を新しくして、媒体中のチモロールの放出を、UV分光法により(λが290nmにおいて)測定し、その後チモロール較正曲線(
図3)で補間した。
【0189】
図11および12ならびに表2および3は、放出されたチモロールの量を経時的に示す。放出されたチモロール累積百分率を
図13に示す。
【0190】
表2:表示の時間間隔の間にインプラントから放出されたチモロールの量(mg)。n.a.は非適用
【0191】
【表2】
【0192】
表3:表示の時間間隔の間にインプラントから放出されたチモロールの量(mg)。
【0193】
【表3】
【0194】
本実施例は、チモロールがEVA、HDPEおよびPMMAのコアから放出され得ることを示す。シェルを有さないインプラントは、それらの全チモロールを1日で放出し、一方、シェルを有するインプラントは、9または8.5ヶ月後も未だチモロールを放出している。