特許第6602785号(P6602785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602785
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】水素吸蔵多相合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/00 20060101AFI20191028BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20191028BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20191028BHJP
   H01M 8/08 20160101ALI20191028BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C22C19/00 F
   H01M4/06 P
   H01M12/06 D
   H01M8/08
   H01M4/90 M
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-567736(P2016-567736)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公表番号】特表2017-519901(P2017-519901A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】US2015030534
(87)【国際公開番号】WO2015175640
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】61/996,984
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/996,981
(32)【優先日】2014年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/132,150
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クォー ヤング
(72)【発明者】
【氏名】大内 泰平
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ネイ
(72)【発明者】
【氏名】ダイアナ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】安岡 茂和
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021262(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/018494(WO,A1)
【文献】 特開2007−291474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00
H01M 4/06
H01M 4/90
H01M 8/08
H01M 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相水素吸蔵合金であって、
少なくとも、六方晶Ce2Ni7相および六方晶Pr5Co19相を含み、
合金全体に対して、該Ce2Ni7相の存在量は30質量%以上であり、かつ該Pr5Co19相の存在量は8質量%以上であり
六方晶CeNi3相および/または菱面体晶PuNi3相を含み、ここで、それらを合わせた存在量は、合金全体に対して、0質量%を上回り20質量%までであり、
該合金は、ミッシュメタルを含み、ここで該ミッシュメタル中のNdが50原子%未満であり、かつ
該合金は、17原子%から22原子%までのミッシュメタル、3原子%から5原子%までのMg、63原子%から81原子%までのNi、2原子%から6原子%までのAl、および0原子%から4原子%までの、B、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素からなる、前記多相水素吸蔵合金。
【請求項2】
請求項1に記載の合金であって、前記Ce2Ni7相の存在量は、合金全体に対して、30質量%から72質量%までであり、および/または前記Pr5Co19相の存在量は、合金全体に対して、8質量%から30質量%までである、前記合金。
【請求項3】
請求項1または2に記載の合金であって、前記合金は、菱面体晶Ce5Co19を更に含むか、または六方晶MgZn2、菱面体晶Pr2Ni7、菱面体晶Ce5Co19および六方晶CaCu5からなる群から選択される少なくとも1つの相を更に含む、前記合金。
【請求項4】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の合金であって、前記ミッシュメタルは、La、PrおよびNdを含み、および/または前記ミッシュメタルは、Ceを含まない、前記合金。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の合金であって、MgとNiとを含むか、または
i)ミッシュメタルおよびMgと、
ii)NiならびにB、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素と、
を含み、ここで、ii)対i)の原子比は、3.1から3.6までである、前記合金。
【請求項6】
多相水素吸蔵合金であって、
1種以上の希土類元素、六方晶Ce2Ni7相および六方晶Pr5Co19相を含み、ここで、合金全体に対して、該Ce2Ni7相の存在量は、30質量%から72質量%までであり、かつ該Pr5Co19相の存在量は、8質量%以上であり、かつ
六方晶CeNi3相および/または菱面体晶PuNi3相を含有し、ここで、それらを合わせた存在量は、合金全体に対して、0質量%を上回り20質量%までである、前記多相水素吸蔵合金。
【請求項7】
請求項に記載の合金であって、合金全体に対して、前記Ce2Ni7相の存在量は、30質量%から71質量%までであり、かつ前記Pr5Co19相の存在量は、8質量%から30質量%までである、前記合金。
【請求項8】
請求項またはに記載の合金であって、前記合金は、菱面体Ce5Co19を更に含む、前記合金。
【請求項9】
請求項からまでのいずれか1項に記載の合金であって、1種以上の希土類元素、MgおよびNiを含む、前記合金。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の水素吸蔵合金を含む電極を備えている、金属水素化物電池、アルカリ型燃料電池または金属水素化物空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された電気化学的特性を有する水素吸蔵多相合金に関する。該合金は、例えば改良された希土類A27型合金である。
【0002】
水素を吸収および脱着することができる合金は、水素吸蔵媒体および/または金属水素化物電池、燃料電池、金属水素化物空気電池システム等のための電極材料として使用することができる。そのような材料は、金属水素化物(MH)材料として知られている。
【0003】
希土類MgベースのAB3またはA27型の金属水素化物合金は、その高容量および良好な高率放電性能のため、ニッケル金属水素化物(NiMH)電池における負電極としてのAB5MH合金を置き換えるための有望な候補である。
【0004】
驚くべきことに、ある特定の金属水素化物合金が、改善された電気化学的性能を示すことが判明した。
【0005】
従って、開示されるのは、多相水素吸蔵合金であって、
六方晶Ce2Ni7相および六方晶Pr5Co19相を含み、
該Ce2Ni7相の存在量が30質量%(wt%)以上であり、該Pr5Co19相の存在量が8質量%以上であり、かつ
該合金は、ミッシュメタルを含み、ここで該ミッシュメタル中のNdが50原子パーセント(at%)未満である、前記多相水素吸蔵合金である。
【0006】
また、開示されるのは、多相水素吸蔵合金であって、
1種以上の希土類元素、六方晶Ce2Ni7相および六方晶Pr5Co19相を含み、ここで、該Ce2Ni7相の存在量が約30質量%から約72質量%までであり、かつ該Pr5Co19相存在量が8質量%以上である、前記多相水素吸蔵合金である。
【0007】
本発明の水素吸蔵合金は、改善された電気化学的性能を有する。
【0008】
詳細な開示
本発明の合金は、例えば不活性雰囲気下での誘導溶解またはアーク溶解によって製造される。該合金は、更に、不活性雰囲気下で例えば950℃未満の温度において焼き鈍すことができる。製造方法は、米国特許第8,053,114号(U.S.Pat.No.8,053,114)、同第8,124,281号(U.S.Pat.No.8,124,281)、同第7,829,220号(U.S.Pat.No.7,829,220)、同第8,257,862号(U.S.Pat.No.8,257,862)および同第8,409,753号(U.S.Pat.No.8,409,753)ならびに米国特許出願公開第2006/057019号明細書(U.S.Pub.No.2006/057019)に教示され、それらの内容は、参照により本明細書に援用される。
【0009】
電気化学的性能は、容量および高率放電性能(HRD)によって定義される。
【0010】
ハーフセルの高率放電性能(HRD)は、100mAg-1で測定した放電容量の、8mAg-1で測定した放電容量に対する比として定義される。合金の放電容量は、部分的に事前充電されたNi(OH)2正電極に対して液式のセル構成で測定される。圧縮成形された試料電極には、結合剤または他の金属添加剤は添加されていない。ハーフセル測定の前にアルカリによる前処理は適用されない。各試料電極は、100mAg-1の定電流密度で5時間充電され、次いで、100mAg-1の電流密度で放電され、その後に25mAg-1および8mAg-1で2回取り出される。容量は第2サイクルで測定される。
【0011】
本発明の合金の100mAg-1における第2サイクルの容量は、例えば320以上、325以上、330以上、333以上、340以上または345以上である。
【0012】
本発明の合金の高率放電性能(HRD)は、例えば第2サイクルで96%以上または97%以上である。
【0013】
該合金は、六方晶Ce2Ni7相を30質量%以上の存在量で、かつ六方晶Pr5Co19相を8質量%以上の存在量で含む。例えば、本発明の合金は、六方晶Ce2Ni7相を40質量%以上の存在量で、かつ六方晶Pr5Co19相を13質量%以上の存在量で含む。
【0014】
相の存在量は、合金の全含量に対する質量%(wt%)で報告される。
【0015】
例えば、六方晶Ce2Ni7相の存在量は、合金全体に対して35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上または60質量%以上である。
【0016】
六方晶Ce2Ni7相の存在量は、約30質量%から約72質量%まで、約30質量%から約71質量%まで、約30質量%から約75質量%まで、約35質量%から約72質量%まで、約40質量%から約68質量%まで、約45質量%から約66質量%まで、または約50質量%から約65質量%までであってよい。
【0017】
六方晶Pr5Co19相の存在量は、合金全体に対して、例えば8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上または19以上である。
【0018】
六方晶Pr5Co19相の存在量は、約8質量%から約30質量%まで、約10質量%から約25質量%まで、約13質量%から約23質量%まで、約16質量%から約22質量%まで、約18質量%から約21質量%まで、約8質量%から約12質量%まで、または約8質量%から約11質量%までであってよい。
【0019】
有利には、本発明の合金は、六方晶MgZn2、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3、菱面体晶Pr2Ni7、菱面体晶Ce5Co19および六方晶CaCu5からなる群から選択される少なくとも1つの更なる相を含むことができる。
【0020】
あるいは、本発明の合金は、六方晶MgZn2、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3、菱面体晶Pr2Ni7、菱面体晶Ce5Co19および六方晶CaCu5からなる群から選択される少なくとも2つの更なる相を含むことができ、または前記群から選択される少なくとも3つの更なる相を含むことができる。
【0021】
一実施形態においては、本発明の合金は、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3および菱面体Ce5Co19相の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを更に含む。
【0022】
CeNi3相およびPuNi3相の一方または両方を含むある特定の合金においては、これらの2つの相は一緒になって、合金全体に対して、有利には25質量%以下、24質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、または12質量%以下の存在量で存在する。例えば、CeNi3およびPuNi3は一緒になって、合金全体に対して、0質量%から約25質量%まで、0質量%を上回って約20質量%まで、1質量%から約15質量%まで、1質量%から約13質量%まで、1質量%から約12質量%まで、または1質量%から約11質量%までの存在量で存在する。
【0023】
Pr5Co19相およびCe5Co19相は、両方が存在する場合、例えば、合金全体に対して27質量%を上回る、例えば約28質量%から約70質量%までの合わせた存在量で存在する。
【0024】
例えば、六方晶MgZn2相は、合金全体に対して、0質量%から約2質量%までの存在量で存在する。
【0025】
六方晶CeNi3相は、合金全体に対して、約1質量%から約21質量%までの、または約2質量%から約20質量%までの存在量で存在することができる。
【0026】
菱面体晶PuNi3相は、合金全体に対して、約2質量%から約10質量%までの、または約4質量%から約8質量%までの存在量で存在してもよい。
【0027】
菱面体晶Pr2Ni7相は、例えば、合金全体に対して、0質量%から約2質量%までの存在量で存在する。
【0028】
菱面体晶Ce5Co19相は、合金全体に対して、約3質量%から約12質量%までの、約4質量%から約11質量%までの、または約5質量%から約10質量%までの存在量で存在することができる。
【0029】
六方晶CaCu5相は、例えば、合金全体に対して、0質量%から約16質量%までの、または0質量%から約15質量%までの存在量で存在する。
【0030】
該合金は、例えば、1つ以上の希土類元素、MgおよびNiを含む。例えば、本発明の合金は、Mg、Niおよびランタニド、ScおよびYからなる群から選択される1つ以上の元素を含む。例えば、本発明の合金は、Mg、NiおよびCe、La、NdおよびPrの1つ以上を含む。本発明の合金は、Mg、Ni及びミッシュメタルを含むことができる。
【0031】
本発明の合金のミッシュメタルは、例えばLa、PrおよびNdを含む。
【0032】
有利には、ミッシュメタル中のNd含有率は、該ミッシュメタルに対して50原子パーセント(at%)未満である。ミッシュメタルは、有利にはCeを更に含有しない。
【0033】
例えば、本発明の合金は、約17原子%から約22原子%までの、ミッシュメタルを含む1種以上の希土類元素、約3原子%から約5原子%までのMg、約63原子%から約81原子%までのNi、約2原子%から約6原子%までのAl、および0原子%から約4原子%までの、B、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素を含有する。
【0034】
これらの原子パーセント(at%)は、合金に対するものである。
【0035】
本発明の合金は、ABx型合金であり、ここで、xは、約2から約5までである。
【0036】
例えば、本発明の合金は、改良されたA27型合金であって、
i)1種以上の希土類元素およびMgと、
ii)NiならびにB、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素と、
を含有し、ここで、ii)対i)の原子比は、約3.1から約3.6まで、約3.2から約3.5まで、または約3.3から約3.4までである、前記合金である。
【0037】
本発明の更なる主題は、水素を可逆的にチャージおよびディスチャージすることができる少なくとも1つのアノードと、可逆的酸化が可能な少なくとも1つのカソードと、該アノードおよびカソードを内部に配置して有するケーシングと、該カソードおよびアノードを隔離するセパレーターと、該アノードおよびカソードの両方と接触する電解質とを含む金属水素化物電池であって、該アノードが本発明の水素吸蔵合金を含む、前記金属水素化物電池である。
【0038】
本発明の電池は、一方の極性のもとで大量の水素をチャージし、反対の極性のもとで所望量の水素をディスチャージすることができる。
【0039】
また、本発明の主題は、少なくとも1つの水素電極と、少なくとも1つの酸素電極と、少なくとも1つのガス拡散材料とを備えているアルカリ型燃料電池であって、該水素電極が、本発明の水素吸蔵合金を含む、前記アルカリ型燃料電池である。
【0040】
また、本発明の主題は、少なくとも1つの空気透過性カソードと、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つの空気入口と、該アノードとカソードの両方と接触する電解質とを含む金属水素化物空気電池であって、該アノードが、本発明の水素吸蔵合金である、前記金属水素化物空気電池である。
【0041】
ある実施形態の要素を指す用語「a」は、「1つ(one)」または「1つまたはそれより多く(one or more)」を意味し得る。
【0042】
「約」という用語は、例えば、典型的な測定および取り扱い手順によって、これらの手順における不注意による誤りによって、製造の違い、もしくは使用される成分の起源もしくは純度によって、使用される方法の違い等によって生じうる変化を指す。用語「約」は、また、特定の初期混合物に起因する組成について平衡条件が様々であるため異なる量を包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、実施形態および特許請求の範囲は、列挙された量との同等量を含む。
【0043】
本明細書中の全ての数値は、明示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾される。用語「約」は、一般に、当業者であれば列挙された値との同等量とみなす(すなわち、同じ機能および/または結果を有する)と考えられる数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数字を含むことができる。
【0044】
「約」という用語によって修飾された値は、もちろん特定の値を含む。例えば、「約5.0」は5.0を含まなければならない。
【0045】
以下は、本発明の幾つかの実施形態である。
【0046】
実施形態1. 多相水素吸蔵合金であって、
六方晶Ce2Ni7相および六方晶Pr5Co19相を含み、合金全体に対して、
該Ce2Ni7相の存在量は30質量%以上であり、かつ該Pr5Co19相の存在量は8質量%以上であり、かつ
該合金は、ミッシュメタルを含み、ここで該ミッシュメタル中のNdが50原子パーセント未満である、前記多相水素吸蔵合金。
【0047】
実施形態2. 実施形態1による合金であって、合金全体に対して、前記Ce2Ni7相の存在量は、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、もしくは60質量%以上であり、または前記Ce2Ni7相の存在量は、約30質量%から約72質量%まで、約30質量%から約71質量%まで、約30質量%から約75質量%まで、約35質量%から約72質量%まで、約40質量%から約68質量%まで、約45質量%から約66質量%まで、または約50質量%から約65質量%までである、前記合金。
【0048】
実施形態3. 実施形態1または2による合金であって、合金全体に対して、前記Pr5Co19相の存在量は、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上もしくは19質量%以上であり、または前記Pr5Co19相の存在量は、約8質量%から約30質量%まで、約10質量%から約25質量%まで、約13質量%から約23質量%まで、約16質量%から約22質量%まで、約18質量%から約21質量%まで、約8質量%から約12質量%まで、もしくは約8質量%から約11質量%までである、前記合金。
【0049】
実施形態4. 実施形態1から3までのいずれかによる合金であって、該合金は、六方晶MgZn2、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3、菱面体晶Pr2Ni7、菱面体晶Ce5Co19および六方晶CaCu5からなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つの、または少なくとも3つの相を更に含む、前記合金。
【0050】
実施形態5. 実施形態1から4までのいずれかによる合金であって、該合金は、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3および菱面体Ce519相の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを更に含む、前記合金。
【0051】
実施形態6. 実施形態1から5までのいずれかによる合金であって、六方晶CeNi3相および/または菱面体晶PuNi3相を含み、ここで、それらを合わせた存在量が、合金全体に対して、25質量%以下、24質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、もしくは12質量%以下であり、またはその合わせた存在量が、0質量%から約25質量%まで、0質量%を上回って約20質量%まで、1質量%から約15質量%まで、1質量%から約13質量%まで、1質量%から約12質量%まで、もしくは1質量%から約11質量%までである、前記合金。
【0052】
実施形態7. 実施形態1から6までのいずれかによる合金であって、合金全体に対して、六方晶MgZn2相を、0質量%から約2質量%までの存在量で、六方晶CeNi3相を、約1質量%から約21質量%までの、もしくは約2質量%から約20質量%までの存在量で、菱面体晶PuNi3相を、約2質量%から約10質量%までの、もしくは約4質量%から約8質量%までの存在量で、菱面体晶Pr2Ni7相を、0質量%から約2質量%までの存在量で、菱面体晶Ce5Co19相を、約3質量%から約12質量%までの、約4質量%から約11質量%までの、もしくは約5質量%から約10質量%までの存在量で、かつ六方晶CaCu5相を、0質量%から約16質量%までの、もしくは0質量%から約15質量%までの存在量で含む、前記合金。
【0053】
実施形態8. 実施形態1から7までのいずれかによる合金であって、ミッシュメタル、MgおよびNiを含むか、ミッシュメタル、Mg、Ni、AlおよびMnを含むか、またはミッシュメタル、Mg、NiおよびAlを含む、前記合金。
【0054】
実施形態9. 実施形態1から8までのいずれかによる合金であって、前記ミッシュメタルは、ランタニド、ScおよびYからなる群から選択される元素の混合物を含むか、Ce、La、NdおよびPrからなる群から選択される元素の混合物を含むか、またはLa、PrおよびNdを含む、前記合金。
【0055】
実施形態10. 実施形態1から9までのいずれかによる合金であって、前記ミッシュメタルは、Ceを含有しない、前記合金。
【0056】
実施形態11. 実施形態1から10までのいずれかによる合金であって、約17原子%から約22原子%までのミッシュメタル、約3原子%から約5原子%までのMg、約63原子%から約81原子%までのNi、約2原子%から約6原子%までのAl、および0原子%から約4原子%までの、B、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素を含有する、前記合金。
【0057】
実施形態12. 実施形態1から11までのいずれかによる合金であって、
i)ミッシュメタルおよびMgと、
ii)NiならびにB、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素と、
含み、ここで、ii)対i)の原子比は、約3.1から約3.6まで、約3.2から約3.5まで、または約3.3から約3.4までである、前記合金。
【0058】
以下は、本発明の更なる実施形態である。
【0059】
実施形態1. 多相水素吸蔵合金であって、
1種以上の希土類元素、六方晶Ce2Ni7相および六方晶Pr5Co19相を含み、ここで、合金全体に対して、該Ce2Ni7相の存在量は、約30質量%から約72質量%までであり、かつ該Pr5Co19相の存在量は、8質量%以上である、前記多相水素吸蔵合金。
【0060】
実施形態2. 実施形態1による合金であって、前記Ce2Ni7相の存在量は、合金全体に対して、約30質量%から約71質量%まで、約35質量%から約72質量%まで、約40質量%から約68質量%まで、約45質量%から約66質量%まで、または約50質量%から約65質量%までである、前記合金。
【0061】
実施形態3. 実施形態1または2による合金であって、合金全体に対して、前記Pr5Co19相の存在量は、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上もしくは19質量%以上であり、または前記Pr5Co19相の存在量は、約8質量%から約30質量%まで、約10質量%から約25質量%まで、約13質量%から約23質量%まで、約16質量%から約22質量%まで、約18質量%から約21質量%まで、約8質量%から約12質量%まで、もしくは約8質量%から約11質量%までである、前記合金。
【0062】
実施形態4. 実施形態1から3までのいずれかによる合金であって、該合金は、六方晶MgZn2、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3、菱面体晶Pr2Ni7、菱面体晶Ce5Co19および六方晶CaCu5からなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つの、または少なくとも3つの相を更に含む、前記合金。
【0063】
実施形態5. 実施形態1から4までのいずれかによる合金であって、該合金は、六方晶CeNi3、菱面体晶PuNi3および菱面体Ce519相の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てを更に含む、前記合金。
【0064】
実施形態6. 実施形態1から5までのいずれかによる合金であって、六方晶CeNi3相および/または菱面体晶PuNi3相を含み、ここで、合金全体に対して、それらを合わせた存在量が、25質量%以下、24質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、もしくは12質量%以下であり、またはその合わせた存在量が、0質量%から約25質量%まで、0質量%を上回って約20質量%まで、1質量%から約15質量%まで、1質量%から約13質量%まで、1質量%から約12質量%まで、もしくは1質量%から約11質量%までである、前記合金。
【0065】
実施形態7. 実施形態1から6までのいずれかによる合金であって、合金全体に対して、六方晶MgZn2相を、0質量%から約2質量%までの存在量で、六方晶CeNi3相を、約1質量%から約21質量%までの、もしくは約2質量%から約20質量%までの存在量で、菱面体晶PuNi3相を、約2質量%から約10質量%までの、もしくは約4質量%から約8質量%までの存在量で、菱面体晶Pr2Ni7相を、0質量%から約2質量%までの存在量で、菱面体晶Ce5Co19相を、約3質量%から約12質量%までの、約4質量%から約11質量%までの、もしくは約5質量%から約10質量%までの存在量で、かつ六方晶CaCu5相を、0質量%から約16質量%までの、もしくは0質量%から約15質量%までの存在量で含む、前記合金。
【0066】
実施形態8. 実施形態1から7までのいずれかによる合金であって、1種以上の希土類元素、MgおよびNiを含むか、Mg、Niならびにランタニド、ScおよびYからなる群から選択される1種以上の元素を含むか、Mg、NiならびにCe、La、NdおよびPrからなる群から選択される1種以上の元素を含むか、またはMg、Niおよびミッシュメタルを含む、前記合金。
【0067】
実施形態9. 実施形態1から8までのいずれかによる合金であって、ミッシュメタルを含む、前記合金。
【0068】
実施形態10. 実施形態1から9までのいずれかによる合金であって、ミッシュメタルを含み、該ミッシュメタルは、ランタニド、ScおよびYからなる群から選択される元素の混合物を含むか、Ce、La、NdおよびPrからなる群から選択される元素の混合物を含むか、またはLa、PrおよびNdを含む、前記合金。
【0069】
実施形態11. 実施形態1から10までのいずれかによる合金であって、ミッシュメタルを含み、該ミッシュメタル中のNd含有率は、50原子%未満であり、および/または該ミッシュメタルは、Ceを含まない、前記合金。
【0070】
実施形態12. 実施形態1から11までのいずれかによる合金であって、約17原子%から約22原子%までのミッシュメタル、約3原子%から約5原子%までのMg、約63原子%から約81原子%までのNi、約2原子%から約6原子%までのAl、および0原子%から約4原子%までの、B、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素を含む、前記合金。
【0071】
実施形態13. 実施形態1から12までのいずれかによる合金であって、
i)希土類元素およびMgと、
ii)NiならびにB、Co、Cu、Fe、Cr、Mn、Zn、SiおよびZrからなる群から選択される1種以上の元素と、
含み、ここで、ii)対i)の原子比は、約3.1から約3.6まで、約3.2から約3.5まで、または約3.3から約3.4までである、前記合金。
【0072】
以下は、本発明の更なる実施形態である。
【0073】
実施形態1. 前記実施形態のいずれか(前記の2組の実施形態のいずれかの実施形態)による合金であって、100mAg-1での第2サイクルの容量が、320以上、325以上、330以上、333以上、340以上、もしくは345以上であり、および/または該高率放電性能(HRD)は、第2サイクルで96%以上もしくは97%以上である、前記合金。
【0074】
実施形態2. 前記実施形態のいずれかによる水素吸蔵合金を含む電極を備えている、金属水素化物電池、アルカリ型燃料電池または金属水素化物空気電池。
【0075】
実施形態3. 水素を可逆的にチャージおよびディスチャージすることができる少なくとも1つのアノードと、可逆的酸化が可能な少なくとも1つのカソードと、該アノードおよびカソードを内部に配置して有するケーシングと、該カソードおよびアノードを隔離するセパレーターと、該アノードおよびカソードの両方と接触する電解質とを含む金属水素化物電池であって、該アノードが、前記実施形態のいずれかによる水素吸蔵合金を含む、前記金属水素化物電池。
【0076】
実施形態4. 少なくとも1つの水素電極と、少なくとも1つの酸素電極と、少なくとも1つのガス拡散材料とを備えているアルカリ型燃料電池であって、該水素電極が、前記実施形態のいずれかによる水素吸蔵合金を含む、前記アルカリ型燃料電池。
【0077】
実施形態5. 少なくとも1つの空気透過性カソードと、少なくとも1つのアノードと、少なくとも1つの空気入口と、該アノードとカソードの両方と接触する電解質とを含む金属水素化物空気電池であって、該アノードが、前記実施形態のいずれかによる水素吸蔵合金を含む、前記金属水素化物空気電池。
【0078】
実施形態6. 前記実施形態のいずれかによる合金の、金属水素化物電池、燃料電池または金属水素化物空気電池の電極における使用。
【0079】
実施形態7. 前記実施形態のいずれかによる合金の、水素吸蔵媒体としての使用。
【0080】
以下の実施例は、本発明を概説するものである。
【0081】
例1 Mm−Mg−Ni−Al−Mn合金
合金インゴットを、高周波誘導溶解で調製し、そしてアルゴン雰囲気中で950℃未満で焼き鈍す。その合金インゴットを破砕し、粉末に粉砕し、200メッシュを通じて篩別する。各試料の化学組成を、Varian社製LIBERTY 100誘導結合プラズマ(ICP)システムを用いて調査する。
【0082】
以下の合金は、ICPによって得られる実際の量で設計される。各合金は、ii)/i)原子比(Ni−Al−Mn)/Mm−Mgが3.31になるように設計されている。量は、該合金に対する原子%である。溶解中、蒸発による損失を補うために追加のMgが添加される。
【0083】
【表1】
【0084】
*ICPにより、試料F4中で0.1原子%のFeが検出されるが、Feは、鋼製の成形型から取り出されたという可能性が最も高い。
【0085】
用語「nd」は、「検出不能」または「検出限界未満」を意味する。ii)対i)の比は、原子比(Ni−Al−Mn−Fe)/(Mm−Mg)である。
【0086】
ミッシュメタル(Mm)はLa、PrおよびNdを含み、Ndはその約40原子%である。
【0087】
合金の相の存在量を、Philips X’PERT PRO X線回折装置を用いたX線回折法(XRD)によって測定し、それらを以下に報告する。「R」は菱面体晶であり、「H」は六方晶である。存在量は、合金全体に対する質量パーセント(質量%)である。
【0088】
【表2】
【0089】
合金F1およびF2は、本発明によるものであり、合金F3〜F5は、比較合金である。
【0090】
MgZn2相、CeNi3相、Ce2Ni7相、Pr5Co19相およびCaCu5相は、六方晶である。PuNi3相、Pr2Ni7相およびCe5Co19相は、菱面体晶である。全ての合金は、様々な量のAB2、AB5ならびに超格子相(AB3、A27およびA519)を含む多相の性質を示す。菱面体晶と六方晶の2つの結晶構造は、AB3相、A27相およびA519相について得られる。相の存在量の計算のためにJADE 9ソフトウェアが使用される。
【0091】
Mn不含の合金F1は、主相が六方晶Ce2Ni7(62.0質量%)の構造の主相、六方晶Pr5Co19(19.2質量%)、菱面体晶Ce5Co19(9.1質量%)、菱面体晶PuNi3(7.7質量%)および六方晶CeNi3(2.0質量%)の構造の4つの副相を有する。
【0092】
電気化学的な結果は、以下の通りである。
【0093】
【表3】
【0094】
1 合金の放電容量(mAh/g)は、部分的に事前充電されたNi(OH)2正電極に対して液式のセル構成で測定される。圧縮成形された試料電極には、結合剤または他の金属添加剤は添加されていない。ハーフセル測定の前にアルカリによる前処理は適用されない。各試料電極は、100mAg-1の定電流密度で5時間充電され、次いで、100mAg-1の電流密度で放電され、その後に25mAg-1および8mAg-1で2回取り出される。容量は第2サイクルで測定される。
2 ハーフセルの高率放電性能(HRD)は、100mAg-1で測定した放電容量の、8mAg-1で測定した放電容量に対する百分率比である。
3 最大容量に達するための活性化サイクル数
4 室温でのバルク拡散係数(10-10cm2/s)
5 室温での表面交換電流(mA/g)
【0095】
本発明の合金F1およびF2は、100mA/gでの顕著な第2サイクルの容量および顕著な高率放電性能を有することが理解される。
【0096】
また、本発明の合金は、比較合金より良好な拡散(D)を示すとともに、より反応性の表面(Io)を有することも理解される。