特許第6602810号(P6602810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602810
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/02 20060101AFI20191028BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20191028BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   H02P3/02 C
   H02P27/06
   F25B1/00 341U
   F25B1/00 361D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-69574(P2017-69574)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174603(P2018-174603A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小池 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智允
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−114875(JP,A)
【文献】 特開昭57−013293(JP,A)
【文献】 特開2010−196975(JP,A)
【文献】 特開2011−200089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/02
F25B 1/00
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路のスイッチング素子を制御する演算器を有し、ロータ及びコイルを有する圧縮機モータを駆動させるモータ駆動装置であって、
前記演算器は、
回転周波数指令値を生成する回転周波数指令生成部と、
前記ロータの実回転周波数を検知又は推定する実回転周波数算出部と、
前記回転周波数指令値及び前記実回転周波数を利用して前記モータの負荷の大小を判定するモータ負荷判定部と、を有し、
前記モータの停止指令を検知した場合、前記モータ負荷判定部の判定結果に応じて、前記インバータ回路の駆動を停止させるタイミングを変動させることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータ負荷判定部は、前記回転周波数指令値及び前記実回転周波数の差分の絶対値と脈動閾値との大小関係に基づいて、前記モータの負荷の大小を判定し、
前記モータの負荷を小さいと判断したとき、前記インバータ回路の駆動を停止させ、
前記モータの負荷を大きいと判断したとき、前記回転周波数指令生成部が生成する回転周波数指令値を減少させ、その後、前記インバータ回路の駆動を停止させることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記モータ負荷判定部は、前記回転周波数指令値及び前記実回転周波数の差分の絶対値と脈動閾値との大小関係に基づいて、前記モータの負荷の大小を判定し、
前記モータの負荷を大きいと判断した場合に前記インバータ回路の駆動を停止させるときの前記ロータの実回転周波数は、前記モータの負荷を小さいと判断した場合に前記インバータ回路の駆動を停止させるときの前記ロータの実回転周波数よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記モータ負荷判定部は、前記回転周波数指令値及び前記実回転周波数の差分の絶対値と脈動閾値との大小関係に基づいて、前記モータの負荷の大小を判定し、
前記モータの負荷を大きいと判断した場合に前記ロータの実回転周波数を減少させる速度は、前記モータの負荷を小さいと判断した場合に前記ロータの実回転周波数を減少させる速度よりも低いことを特徴とする請求項1又は3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記モータの停止指令を検知しない場合、夜間であると判断したときに、前記モータ負荷判定部は、前記回転周波数指令値及び前記実回転周波数の差分の絶対値と脈動閾値との大小関係に基づいて、前記モータの負荷の大小を判定し、
前記モータの負荷を大きいと判断したとき、前記回転周波数指令生成部が生成する回転周波数指令値を増加させることを特徴とする請求項1乃至4何れか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路のスイッチング素子を制御する演算器を有し、ロータ及びコイルを有する圧縮機モータを駆動させるモータ駆動装置であって、
前記演算器は、前記モータの停止指令を検知した場合、前記圧縮機モータの負荷の大小に応じて、前記インバータ回路の駆動を停止させるタイミングを変動させることを特徴とするモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ制御装置を備えた基板によって駆動される圧縮機において、圧縮機内部のモータが外部からの停止指令により停止する際に、停止指令を受信した時点の回転数よりも低回転数にしてから停止させる技術として、特許文献1に記載のようなものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−24929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、圧縮機の停止要求があったとき、圧縮機の回転周波数を機械共振周波数に向けて低下させた後、インバータの駆動信号を停止している(0019、図8)。
【0005】
特許文献1は、運転停止時の振動を抑制すべく圧縮機の停止要求のたびに上述の制御を行っている。しかし、圧縮機が比較的低負荷で運転している場合は、高負荷で運転している場合に比べ、回転周波数が比較的高い状態でインバータの駆動信号を停止しても振動が抑制された状態で圧縮機を停止させることができる。停止要求後、時間をおいてインバータの駆動信号を停止させると、その間の電力が必要であり、省エネの観点から改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑みてなされた本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路のスイッチング素子を制御する演算器を有し、ロータ及びコイルを有する圧縮機モータを駆動させるモータ駆動装置であって、前記演算器は、回転周波数指令値を生成する回転周波数指令生成部と、前記ロータの実回転周波数を検知又は推定する実回転周波数算出部と、前記回転周波数指令値及び前記実回転周波数を利用して前記モータの負荷の大小を判定するモータ負荷判定部と、を有し、前記モータの停止指令を検知した場合、前記モータ負荷判定部の判定結果に応じて、前記インバータ回路の駆動を停止させるタイミングを変動させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1のモータ駆動装置の回路図
図2】実施例1の演算器内部の制御構成
図3】実施例1の回転周波数指令と実回転周波数の関係を示す図
図4】実施例1のモータ負荷判定によるモータ停止プロセスのフローチャート
図5】実施例2のモータ負荷判定によるモータ停止プロセスのフローチャート
図6】実施例3のモータ負荷判定によるモータ停止プロセスのフローチャート
図7】実施例4の周囲環境に応じた騒音低減制御のフローチャート
図8】機器の一例としての冷蔵庫の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、また、同一の説明は繰り返さない。
【実施例1】
【0009】
[モータ駆動装置100]
図1は実施例1におけるインバータ制御装置1及びモータ2を有するモータ駆動装置100の回路図である。
インバータ制御装置1は、電源電圧を供給するインバータ直流電源9と、6個のスイッチング素子3から構成される3相のインバータ回路部と、各スイッチング素子3のON−OFFスイッチング状態を決定するための駆動信号を出力する演算器4と、インバータ直流電源9に流れる電流を検出する電流検出部8とから構成される。インバータ制御装置1には、負荷として3相のコイル5及びロータ6を有するモータ2が接続される。モータ2の3相のコイルは、スター形に結線されている。
【0010】
インバータ直流電源9は、インバータ回路部に直流電圧を印加する。インバータ直流電源9の低電位側は接地している。インバータ回路部は、2つのスイッチング素子3が直列に接続した上下アーム(U,V,W相)が、3つ並列に接続した構造である。上下アームの上側素子(U+,V+,W+相)には、インバータ直流電源9の高電位側が、下側素子(U−,V−,W−相)には、インバータ直流電源9の低電位側が、それぞれ接続している。各スイッチング素子3には、還流ダイオードが並列に接続されている。また、インバータ直流電源9の低電位側及びインバータ回路部の間には、電流検出部8が設けられている。
【0011】
各上下アームの上側素子及び下側素子の間には、モータ2が有する3つのコイルそれぞれに接続する導線の一端が電気的に接続されている。以下では、第一上下アーム(U+,U−相)にU相コイルが、第二上下アーム(V+,V−相)にV相コイルが、第三上下アーム(W+,W−相)にW相コイルが、接続しているとして説明する。各相のコイルは、それぞれの上側素子及び下側素子の間に一端が、中性点に他端が接続している。
【0012】
[モータ駆動制御]
図2は、図1の演算器4内部で行われるモータ駆動制御の制御概要図である。以下にモータ駆動制御プロセスを示す。
【0013】
モータ2を所望の回転数で駆動させるため、本実施例の演算器4は次の演算処理を行っている。演算器4は、回転周波数指令生成部12、回転周波数制御部13、インバータ駆動信号生成部14、モータ電流取込部15、実回転周波数算出部16、及びモータ負荷判定部17を有する。
【0014】
まず、回転周波数指令生成部12は、目標とする回転周波数指令を決定して回転周波数制御部13及び後述するモータ負荷判定部17に出力する。回転周波数制御部13は、回転周波数指令及び後述する実回転周波数を用いてモータ2(ロータ6)が所望の回転数で回転するような電流指令値を算出し、インバータ駆動信号生成部14に出力する。例えば、回転周波数指令と実回転周波数との残差を用いることができる。
【0015】
インバータ駆動信号生成部14は、電流指令値を電圧指令値に変換し、インバータ回路部のスイッチング素子3のドライブ信号(インバータ駆動信号)として出力する。インバータ駆動信号生成部14にて生成されたインバータ駆動信号により、インバータ回路部のスイッチング素子3のスイッチングが行われ、インバータ直流電源9の電力が変換されて、モータ2へ電圧が印加される。これにより、コイル5へ電流が流れ、ロータ6が回転する。また、ロータ6が回転し、電流検出部8から電流情報を取得することができる。モータ電流取込部15は、電流検出部8の検知結果を取込み、演算器3内部でモータ2の各相に流れる電流を推定して実回転周波数算出部16に出力する。実回転周波数算出部16は、推定されたモータ電流をもとに、ロータ6の実回転周波数を公知の方法により算出してモータ負荷判定部17及び回転周波数制御部13に出力する。
【0016】
モータ負荷判定部17の機能及びモータ負荷判定部17の出力に応じた回転周波数指令生成部12の振る舞いは後述する。
【0017】
また、回転周波数制御部13では、実回転周波数算出部16によって算出された実回転周波数と回転周波数指令生成部12が生成する回転周波数指令を用いて、実回転周波数が回転周波数指令に一致するようなモータ電流指令値を算出する。このプロセスを繰返すことで、モータ2を所望の回転数で駆動することが可能となる。
【0018】
[モータ負荷の大小判定]
図3は、モータ2駆動時の回転周波数指令と実回転周波数の関係を示す図であり、横軸に圧縮機のモータ2の機械角を、縦軸に周波数をとったものである。
【0019】
モータ2の実回転周波数は、回転周波数指令に対して周期的に脈動することがある。原理は公知であるが、例えば、クランク機構を利用して回転モータの回転力をピストンの往復動力に変換する圧縮機では、この実回転周波数の脈動が大きい程、圧縮機のモータ2へ掛かっている負荷が大きいと推定できる。
【0020】
本実施例では、回転周波数指令生成部12が例えば略一定の周波数指令値を出力している間、実回転周波数算出部16が算出する実回転周波数が脈動する場合、これらの差分を検知することでモータ2の負荷が大きいか否かを判定する。すなわち、モータ負荷判定部17は、実回転周波数と回転周波数指令との差を演算する。例えば具体的には、回転周波数指令の出力値である1周期間に2回、実回転周波数と回転周波数指令値との差分である差分Aと差分Bとを算出する。差分Aと差分Bとは、圧縮機のピストンの上死点及び下死点近傍の位置における値で取得することが好ましい。作動流体の圧縮及び膨張過程を考慮すると、それぞれこのタイミングであると、実回転周波数が最小及び最大の値をとりやすいためである。これは、圧縮機の構造が既知であることと、機械角を検知又は推定する方法が公知であることとから、当業者であれば容易に実現できる。
【0021】
そして、差分A及び差分Bの絶対値の一方又は両方が予め演算器3に設定しておいた脈動閾値を超えた場合、負荷が大きいと判定し、何れも脈動閾値を超えない場合は、負荷が大きくないと判定する。この際、判定精度を好適にするには、回転周波数指令値を略一定にしている間に負荷の大小判定を行うことが好ましい。ここでは、差分Aが圧縮機の上死点近傍における値、差分Bが圧縮機の下死点近傍における値であるとして説明する。
【0022】
[圧縮機モータ停止時のプロセス]
図4は、モータ駆動装置100によるモータ負荷判定を用いた圧縮機モータ停止プロセスである。
【0023】
演算器3がモータ停止指令を受信した場合(ステップS101)、モータ負荷判定部17は、実回転周波数と回転周波数指令の差分Aと差分Bの一方又は両方の絶対値が脈動閾値を超えているか否かを判定する(ステップS102)。脈動のパターンとしては、圧縮過程での影響が大きい場合、膨張過程での影響が大きい場合、どちらも同様の影響を与える場合、がそれぞれ考え得るため、差分Aと差分Bの一方だけでも脈動閾値を超えていれば負荷が大きいと判定することができる。
【0024】
差分Aと差分Bそれぞれの絶対値の両方が脈動閾値以下であった場合(ステップS102,No)、モータ負荷判定部17は、回転周波数指令生成部12に周波数指令値を0にさせることでスイッチング素子3へのドライブ信号を停止させ、インバータ出力を停止させる(ステップS105)。一方、差分Aと差分Bとの一方又は両方が脈動閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS102,Yes)、モータ負荷判定部17は、回転周波数指令生成部12に回転周波数指令の値を減少させていく(ステップS103)。その後、回転周波数指令の値の減少に応じて実回転周波数が減少していく。演算器3は、実回転周波数が0となるまで実回転周波数を減少させていく(ステップS104,No)。実回転周波数が0となれば(ステップS104,Yes)、インバータ出力を停止させる(ステップS105)。
【0025】
なお、ステップS104における実回転周波数の判定、すなわち、インバータ出力を停止(ステップS105)させる実回転周波数値は、0でなくてもよく、例えば、モータ停止指令を受信した(ステップS101)ときの実回転周波数から10%減少した値にしてもよい。
【実施例2】
【0026】
本実施例の構成は、次の点を除き実施例1と同様にできる。図5は、実施例2のモータ駆動装置100によるモータ負荷判定を用いたモータ停止プロセスである。
本実施例では、モータ負荷判定部17による差分A,差分Bそれぞれの絶対値と脈動閾値との比較の結果(ステップS102の結果)に応じて、インバータへの出力を停止させる実回転周波数の値(回転周波数閾値)を決定する。具体的には、回転周波数閾値(ステップS104で用いる閾値)を、高負荷時に第1の回転周波数閾値Xとし、低負荷時に第2の回転周波数閾値Yとする。そして、高負荷時でも低負荷時でも、設定した回転周波数閾値に至るまで回転周波数指令値を略等しい速度で減少させていく(ステップS103)。
【0027】
本実施例の説明において、第1の回転周波数閾値Xと第2の回転周波数閾値Yとの間には、X<Yの関係が成り立つ。X=0、Y=∞にすれば、実施例1と同様の効果が得られる。
【0028】
差分Aと差分Bそれぞれの絶対値の両方が脈動閾値以下であった場合(ステップS102,No)、モータ負荷判定部17は、周波数閾値として第2の周波数閾値Yを設定する(ステップS202)。そして、回転周波数指令生成部12は回転周波数指令値を減少させていく(ステップS103)。実回転周波数が第2の回転周波数閾値Yを下回ったら(ステップS104,Yes)、インバータ出力を停止させる(ステップS105)。
【0029】
一方、差分Aと差分Bとの一方又は両方が脈動閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS102,Yes)、モータ負荷判定部17は、回転周波数閾値として第1の回転周波数閾値Xを設定する(ステップS201)。そして、回転周波数指令生成部12は回転周波数指令の値を減少させていく(ステップS103)。実回転周波数が第2の回転周波数閾値Xを下回ったら(ステップS104,Yes)、インバータ出力を停止させる(ステップS105)。
【0030】
本実施例によれば、高負荷時にインバータ出力を停止する実回転周波数値より低負荷時にインバータ出力を停止する実回転周波数値を大きくできる。これにより、高負荷時は騒音を抑制できる程度にまで減速してから停止させ、低負荷時はこれより早期に停止させることができるから、騒音抑制と省エネとの両立が可能になる。
【実施例3】
【0031】
本実施例の構成は、次の点を除き実施例1又は2と同様にできる。図6は、実施例3のモータ駆動装置100によるモータ負荷判定を用いたモータ停止プロセスである。
本実施例では、モータ負荷判定部17による差分A,差分Bそれぞれの絶対値と脈動閾値との比較の結果(ステップS102の結果)に応じて、回転周波数指令値の減少速度を決定する。具体的には、減少速度(ステップS103で用いる減少速度)を、高負荷時に第1の減少速度αとし、低負荷時に第2の減少速度βとする。そして、設定した回転周波数閾値に至るまで回転周波数指令値を設定した減少速度で減少させていく(ステップS103)。
【0032】
本実施例の説明において、第1の減少速度αと第2の減少速度βとの間には、α<βの関係が成り立つ。α=βにすれば、実施例1又は2と同様の効果が得られる。
【0033】
差分Aと差分Bそれぞれの絶対値の両方が脈動閾値以下であった場合(ステップS102,No)、モータ負荷判定部17は、回転周波数指令値の減少速度として第2の減少速度βを設定する(ステップS302)。そして、回転周波数指令生成部12は回転周波数指令値を減少速度βで減少させていく(ステップS103)。実回転周波数が回転周波数閾値を下回ったら(ステップS104,Yes)、インバータ出力を停止させる(ステップS105)。
【0034】
一方、差分Aと差分Bとの一方又は両方が脈動閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS102,Yes)、モータ負荷判定部17は、回転周波数の減少速度として第1の減少速度αを設定する(ステップS301)。そして、回転周波数指令生成部12は回転周波数指令の値を減少速度αで減少させていく(ステップS103)。実回転周波数が回転周波数閾値を下回ったら(ステップS104,Yes)、インバータ出力を停止させる(ステップS105)。
【0035】
本実施例によれば、高負荷時に回転周波数を比較的高速で(単位時間あたり大きな負の傾きで)減少させ、低負荷時に回転周波数を比較的低速で(単位時間あたり小さな負の傾きで)減少させる。これにより、騒音抑制と省エネとの両立が可能になる。
【実施例4】
【0036】
本実施例は、さらに周囲環境に鑑みて騒音を低減する制御を導入したものである。同じ音圧レベルであっても、ユーザにとっては昼間より夜間の方が大きな騒音に感じる。実施例1乃至3では、圧縮機停止時に負荷に応じて騒音を抑制できるが、圧縮機停止前に拘らないタイミング(圧縮機駆動中)にも、通常よりも高度に騒音を低減したい場合、本実施例の構成を採用することが好ましい。
【0037】
圧縮機の駆動中、圧縮機の停止信号を受信した場合は(ステップS401,Yes)、実施例1乃至3のステップS101へ遷移する。一方、圧縮機の停止信号を受信しない場合(ステップS401,No)、圧縮機は現在時刻を取得する(ステップS402)とともに、現在時刻に基づいて夜間(例えば午後7時〜午前5時)であるかを判定する(ステップS403)。夜間である場合(ステップS403,Yes)、さらに回転周波数指令阿多及び実回転周波数値の差分A,B何れかが脈動閾値を上回るか判定する(ステップS404)。夜間でない場合(ステップS403,No)、ステップS401に戻る。
【0038】
上回る場合(ステップS404,Yes)、回転周波数指令生成部12は、回転周波数指令値を増加させる(ステップS405)。高負荷時における圧縮機の脈動は、高負荷環境下における圧縮・膨張過程での負荷の変動にピストン等の慣性が大きく影響を受けてしまうために起こる。このため、回転周波数を増加させて慣性力を増加させることで、脈動を小さくして騒音を低減することができる。一方、上回らない場合(ステップS404,No)、ステップS401に戻る。
このような制御を導入することで、圧縮機駆動中も騒音を効果的に低減できる。なお、現在時刻に基づいて夜間であるか否かを判定することに代えて又は追加して、照度センサの検出値を用いてもよい。
【0039】
[各実施例のモータ2を有する圧縮機200を備える機器]
図8は、モータ2で駆動するクランク機構を備えた圧縮機200を備えた危機の一例である冷蔵庫300の断面図である。冷蔵庫300は、密閉型圧縮機200、凝縮器(不図示)、減圧部(不図示)及び蒸発器301を含む冷凍サイクルを有している。密閉型圧縮機200は、冷媒を密閉型圧縮機200で圧縮して高温高圧にし、凝縮器で放熱させ、さらに減圧部で圧力を低下させて蒸発器301で蒸発させることで冷気を得ることができる。
密閉型圧縮機200を搭載する機器は、冷蔵庫300に限られず、空調機等種々の機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:インバータ制御装置
2:モータ
3:スイッチング素子
4:演算器
5:コイル
6:ロータ
7:電圧検出回路
8:電流検出回路
100:モータ駆動装置
200:密閉型圧縮機
300:冷蔵庫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8