(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602854
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】保持プロファイル付フィルムチャンバ
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20191028BHJP
【FI】
G01M3/26 M
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-515217(P2017-515217)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公表番号】特表2017-529534(P2017-529534A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2015071180
(87)【国際公開番号】WO2016046039
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】102014219473.3
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン・トリースト・ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】ダウエンハウアー・ミヒャエル
【審査官】
森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−185752(JP,A)
【文献】
米国特許第05513516(US,A)
【文献】
国際公開第2013/102610(WO,A1)
【文献】
特表2003−505690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リークの有無が検査される被検体を収納するフィルムチャンバ(12)であって、
少なくとも2つの可撓性フィルム層(14,16)と、
各々が封止面を備える、少なくとも2つのフレーム体(24,26)とを備え、
該封止面は、相対する2つのフレーム体(24,26)が互いに重なりあって、気密性を保ち、フィルムチャンバ(12)を気密封止するものである、フィルムチャンバ(12)において、
前記2つのフィルム層(14,16)が突起またはノーズとして形作られた少なくとも1つの保持プロファイル(20)をエッジ部分に有し、
前記2つのフレーム体(24,26)は、前記保持プロファイル(20)を収容する少なくとも一つの保持溝(22)を前記封止面に備え、
実質的に、2つの前記封止面間で表面圧力を加える必要なく、前記保持プロファイル(20)と前記保持溝(22)の嵌合による接続によって、前記2つのフィルム層(14,16)が前記2つのフレーム体(24,26)の間に保持されることを特徴とする、
フィルムチャンバ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルムチャンバ(12)において、各フィルム層(14,16)は一体化された部分として、あるいは接着または溶接により接合された別部材として、前記保持プロファイル(20)を備えることを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(12)において、前記保持プロファイル(20)および前記保持溝(22)が互いに相補的な形状をとるように設計され、前記保持溝(22)がアンダーカット状に設計されていることを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(12)において、各前記保持プロファイル(20)のエッジ部分には、断面形状において、返しが形成されていることを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(12)において、各前記フレーム体(24,26)の前記保持溝(22)は、ガス送通体(32)により覆われており、前記ガス送通体(32)は、前記フレーム体(24,26)の各クランプ面(28)に固定されて、前記保持プロファイル(20)の前記保持溝(22)からの偶発的滑り出しを防止することを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(12)において、気密封止部材(30)が前記2つのフレーム体(24,26)の前記封止面(28)間に設けられることを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルムチャンバ(12)において、前記封止部材(30)は、少なくとも2つのシールリップを備え、該シールリップは、
前記2つフレーム体(24,26)の一方のフレーム体のシール保持溝(31)に保持されることを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルムチャンバ(12)において、通気チャネル(36)が、前記二つのフレーム体(24,26)の一方において、前記2つのシールリップ間に設けられることを特徴とするフィルムチャンバ。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(12)において、フィルムチャンバ排気用の通気チャネル(38)が、前記少なくとも2つのフレーム体(24,26)の一方において、前記封止部材(30)と前記保持プロファイル(20)との間に設けられることを特徴とするフィルムチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リークの有無を検査される被検体を収納するフィルムチャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムチャンバは、気密度の検査される被検体を格納する検査チャンバの特定の形態である。フィルムチャンバは、少なくとも1つの壁部が可撓性材料(フィルム)で構成されることを特徴とする。リークの有無を検査される被検体は、フィルムチャンバ内に配置され、その後フィルムチャンバが排気される。フィルムチャンバを排気すると、フィルムチャンバから空気が排出されて、可撓性のフィルムチャンバ壁が被検体に密着する。特に適切なフィルムチャンバは、被検体を内包し、気密状態を構成するよう、端部において接続された2つのフィルム層を備えるものである。
【0003】
フィルムチャンバを、気密状態で閉鎖するために、フィルムチャンバは、フレーム領域において密封される。この点に関して、フレーム体(枠状部品)のクランプ面間でフィルム層を挟みつける方法が知られており、フレーム体を押し付け合うことにより、表面圧力によってフィルム層が保持される。フレーム体は、強い力により互いに押圧されている必要があるが、これによりフレーム体が変形する可能性がある。その結果、クランプ面のごく一部のみがクランプ力をフィルムに伝えることとなり、引張応力を受けると、挟まれた固定位置からフィルム層が外れる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開102012200063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フィルム層の取付性を向上させたフィルムチャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルムチャンバは、請求項1の構成要件により定義されるものである。
【0007】
これによると、少なくとも2つのフィルム層は、それぞれ端部に保持プロファイル(保持用の輪郭構造)を備える。該保持プロファイルに対応する保持溝が、各フレーム体のクランプ面に設けられており、保持プロファイルはこの保持溝と係合し、フィルム層とフレーム体は形態の嵌合によってぴったりと接続される。これによって、各フィルム層は各フレーム体に保持されるので、従来の表面圧力は不要となる。ついで、2つのフレーム体は、封止部材(シールエレメント)により対置され、これによって、端部において、フィルムチャンバの上半部と下半部の間に、気密性の接続が形成される。このためには、単に、リップ状の封止部材(リップシール)と、封止面(シール面)を接触させ得るに足る力を、フレーム体に加えればよい。これによって、フレーム体に加えるべき力を低減しつつ、フィルム層とフレーム体の接続はより安定化される。
【0008】
被検体は、2つのフィルム層間の正確に中央に、配置されることが好ましい。2つのフィルム層のそれぞれは、端部において、ただ1つのフレーム体に保持される。フレーム体はフィルム層の外端に沿って周状に形成され、一個の部品からなるものであってもよく、複数の部品から組み立てられたものでもよい。2つのフレーム体の間に気密性のフィッティングを形成するため、少なくとも1つの周状の封止部材(例えばO−リング型のシール)を2つのフレーム体のクランプ面間に設置することが好ましい。
【0009】
各フィルム層の端部における保持プロファイルは、突起またはノーズとして形作られている。各フレーム体の、該保持プロファイルに対応する保持溝は、保持プロファイルと相補的な形に形成される。保持プロファイルと、保持ノーズは、特に強固な固定を得るため、下部(基部)がアンダーカット形状(逃げ溝形状)を備えていてもよい。保持プロファイルのエッジ部分と、保持溝のエッジ部分とが、断面において、「返し」(トラバース)を形成していると、特に好ましい。この場合、フィルム層に引張応力をかけても、保持プロファイルを保持溝から動かすことはできない。
【0010】
保持体は、各フレーム体、および、好ましくはそのクランプ面に取り付けることが可能であり、保持体により、保持プロファイルが保持溝から滑り出さないように固定される。保持要素は、例えば、ねじでクランプ面に固定され、クランプ溝を覆ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1において、鎖線IIで示された部分の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
フィルムチャンバ12は、各々の端部において対向して設置され、両者の間において被検体を包有する2枚のフィルム層14,16を備える。各フィルム層14,16は、その端部にフィルム層14,16と一体形成された、周状の保持プロファイル20を備える。フィルム層14の保持プロファイル20は、第1フレーム体24の保持溝22に挿入されている。下部フィルム層16の保持プロファイル20は、第2フレーム体26の保持溝22に挿入されている。保持溝22は、各フレーム体24,26の表面にそれぞれ形成される。保持溝22は周状の凹部であり、その形状は各保持プロファイル20の形状と相補的なものである。各保持プロファイル20は、周状の突起としてフィルム層の端部に形作られている。また、各フィルム層14,16は特に、複数の周状プロファイルを備え、該プロファイルは、各フレーム体に設けられた、複数の異なる保持溝の、対応する溝に嵌合するものであってもよい。
【0013】
フレーム体24,26は、クランプ面28により互いに対向して設置される。クランプ面28とクランプ面の間には、封止部材(シール)30が保持されて、気密封止されたフィルムチャンバ12のために、気密性の接続を提供する。封止部材30は、2つの離間したシールリップ(リップ状封止部材)により構成され、各シールリップは、一方のフレーム体24のシール溝31に保持され、他方のフレーム体26のクランプ面28に押圧される。前記2つのうち一方のフレーム体24において、2つのシールリップ間に通気チャネル36が形成され、通気チャネル36を介して、2つのシールリップと隣接するクランプ面28との間のギャップを排気することが可能である。さらに、2つのうち一方のフレーム体24において、封止部材30とフィルム層14,16の保持プロファイル20との間に通気チャネル38が設けられる。2つのフィルム層14,16間のギャップ、よってフィルムチャンバ12は、この通気チャネル38を介して通気される。
【0014】
各保持溝22は、ガス送通体(gas-carrying element)32により覆われ、それぞれの保持プロファイル20が保持溝22から滑り出さないように固定する。各ガス送通体32は、面ファスナ(hook & loop type fastener)34によって、各クランプ面28に固定される。
【0015】
本発明は、引張応力に対して十分な耐性を有する安定した接続を形成するために、表面圧力によってフィルム層14,16を2つのフレーム体24,26にクランプする必要がない、という利点を提供する。フレーム体の相互押圧には、ガス気密性の接続を形成するために要する力のみしか必要としない。保持プロファイル20と保持溝22との間の係合により、形態の嵌合による接続が形成され、各フィルム層14,16の間に、十分な引張応力耐性を有する、ガス気密性の封止状態が形成される。
なお本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
リークの有無が検査される被検体を収納するフィルムチャンバ(12)であって、
少なくとも2つのフィルム層(14,16)と、
各々が封止面を備える、少なくとも2つのフレーム体(24,26)とを備え、
該封止面は、相対する2つのフレーム体(24,26)が互いに重なりあって、気密性を保ち、フィルムチャンバ(12)を気密封止するものである、フィルムチャンバ(12)において、
前記2つのフィルム層(14,16)がすくなとも1つの保持プロファイル(20)を壁部に有し、
前記2つのフレーム体(24,26)は、前記保持プロファイル(20)を収容する少なくとも一つの保持溝を前記封止面に備え、
実質的に、形態の嵌合による接続によって、前記2つのフィルム層(14,16)が前記2つのフレーム体(24,26)の間に保持されることを特徴とする、
フィルムチャンバ。
〔態様2〕
態様1に記載のフィルムチャンバ(12)において、各フィルム層(14,16)は(例えば成型により)一体化された部分として、あるいは接着または溶接により接合された別部材として、前記保持プロファイル(20)を備えることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様3〕
態様1または2のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、前記保持プロファイル(20)および前記保持溝(22)が互いに相補的な形状をとるように設計され、前記保持溝(22)がアンダーカット状に設計されていることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様4〕
態様1〜3のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、各前記保持プロファイル(20)のエッジ部分には、断面形状において、返しが形成されていることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様5〕
態様1〜4のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、各前記フレーム体(24,26)には、保持プロファイル(20)の前記保持溝(22)からの偶発的滑り出しを防止する、ガス送通体(32)が設置されていることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様6〕
態様1〜5のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、気密封止部材(30)が前記2つのフレーム体(24,26)の前記封止面(28)間に設けられることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様7〕
態様1〜6のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、前記封止部材(30)は、少なくとも2つのシールリップを備え、該シールリップは、
前記2つフレーム体(24,26)の一方のフレーム体のシール保持溝(31)に保持されることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様8〕
態様1〜7のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、通気チャネル(36)が、前記二つのフレーム体(24,26)の一方において、前記2つのシールリップ間に設けられることを特徴とするフィルムチャンバ。
〔態様9〕
態様6〜8のいずれか一態様に記載のフィルムチャンバ(12)において、フィルムチャンバ排気用の通気チャネル(38)が、前記少なくとも2つのフレーム体(24,26)の一方において、前記封止部材(30)と前記保持プロファイル(20)との間に設けられることを特徴とするフィルムチャンバ。
【符号の説明】
【0016】
12 フィルムチャンバ
14,16 フィルム層
20 保持プロファイル
24,26 フレーム体
30 封止部材(シール)
31 シール溝
36,38 通気チャンネル