(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6602885
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】排ガス後処理方法及び排ガス後処理システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20191028BHJP
F01N 3/029 20060101ALI20191028BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20191028BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
F01N3/08 A
F01N3/029 Z
F01N3/24 E
F01N3/24 L
F01N5/02 G
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-548418(P2017-548418)
(86)(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公表番号】特表2018-507985(P2018-507985A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2016055597
(87)【国際公開番号】WO2016146637
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】102015003255.0
(32)【優先日】2015年3月16日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス・ケーニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・ヴェークマン
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・トーラント
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】シェン・チェン
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−126298(JP,A)
【文献】
特開2014−094352(JP,A)
【文献】
特開昭61−178022(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3091064(JP,U)
【文献】
特開2015−161244(JP,A)
【文献】
特開2015−203416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−5/04
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガス(15)を排ガス後処理するための方法であって、前記排ガス(15)が、前記排ガスの熱エネルギのための回収セクション(11)を介して導かれる、前記方法において、
熱を回収するために前記排ガス(15)を調整するために、及び、排ガス後処理プロセスのさらなるステップを実施可能とするために、吸収剤(16)が、前記排ガスの流れ方向に関する前記内燃機関(10)の下流において且つ濾過ユニット(13)及び前記回収セクション(11)の上流において250℃より高い温度で前記排ガス(15)に導入され、混合セクション(14)において前記排ガス(15)と混合され、その後に汚染物質で満たされた前記吸収剤(16)が、前記濾過ユニット(13)において他の粒子状の排ガス物質と共に分離され、前記排ガス(15)が、前記回収セクション(11)の上流において熱分解されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記吸収剤(16)が、前記排ガス(15)に導入され、
前記吸収剤(16)が、硫黄化合物を化学吸着によって低減するように機能することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸収剤(16)が、前記排ガス(15)に導入され、
前記吸収剤(16)が、前記排ガスに含有されると共に後続の処理工程にとって問題となる、さらなる汚染物質と結合するように機能することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収剤(16)を導入する際における前記排ガスの温度が、250℃より高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸収剤(16)が、乾燥した紛体として前記排ガス(15)に導入されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記排ガスの温度が、脱硫及び脱塵の際であっても250℃より高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記濾過ユニット(13)の内部の前記排ガスが、例えばセラミック材料や金属材料から成ると共に高温に適応可能とされる濾過要素を介して、濾過されるように導かれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
内燃機関(10)から排出される排ガス(15)を排ガス後処理するための排ガス後処理システムであって、前記排ガスの熱エネルギのための回収セクション(11)を有している前記排ガス後処理システムにおいて、
計量装置(12)が、前記排ガス(15)の流れ方向に関する前記内燃機関(10)の下流に位置決めされており、
吸収剤(16)が、前記排ガスの流れ方向に関する前記内燃機関(10)の下流において且つ濾過ユニット(13)及び前記回収セクション(11)の上流において250℃より高い温度で前記計量装置(12)を介して前記排ガス(15)に導入され、その後に、前記吸収剤を含有する前記排ガスが、脱硫及び脱塵のために、前記濾過ユニット(13)を介して導かれ、前記排ガス(15)が、前記回収セクション(11)の上流において熱分解されることを特徴とする排ガス後処理システム。
【請求項9】
前記濾過ユニット(13)が、例えばセラミック材料や金属材料から成るフィルタ要素のような高温に適応可能とされるフィルタ要素を具備する、排ガス清浄フィルタとされることを特徴とする請求項8に記載の排ガス後処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス後処理方法に関する。さらに、本発明は、排ガス後処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転の際に、排ガス後処理が果たす役割は益々大きくなっている。従って、排ガスの放出を低減するための触媒コンバータ及び/又は粒子フィルタを介して内燃機関から排出される排ガスを導くことが、実践から知られている。さらに、排ガスに含有される熱エネルギを利用可能とするために、熱回収のための回収セクションを介して内燃機関から排出される排ガスを導くことが、他の排ガス後処理システムから知られている。
【0003】
排ガスの熱エネルギのためにこのような回収セクションを具備する排ガス後処理システムの効果的な動作を実現することは、大きな課題であり、現在においても顕著な改善の可能性を提供するものである。従って、硫黄化合物と当該処理にとって悪影響を及ぼす粒子及びさらなる構成物質とを排ガスから除去する回収セクションの領域において、排ガスから熱エネルギを一層効果的に回収可能とする、排ガス後処理方法及び排ガス後処理システムに対するニーズが存在する。熱回収のために調整された排ガスは、排ガス後処理の他の後続する処理工程すべてに対して優位であるに違いない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような見地から、本発明は、新しいタイプの排ガス後処理方法及び排ガス後処理システムを生み出すという目的に基づいている。当該目的は、請求項1に記載の方法を通じて解決される。本発明では、熱回収及び排ガス後処理の他の処理工程のために排ガスを調整するために、吸収剤が、排ガスの流れ方向に関する内燃機関の下流において、排ガスに導入され、排ガスと混合され、その後に、硫黄化合物及びさらなる有害物質で満たされた吸収剤が、さらなる粒子状の排ガス物質と共に、濾過装置の補助を受けて排ガスから除去される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における排ガスの調整方法は、吸収剤を導入するステップと、吸収剤を排ガスに含有される上述の汚染物質と反応させるステップと、汚染物質及びさらなる粒子状の排ガス物質で満たされた吸収剤を除去するステップとを備えており、当該方法によって、回収セクションの領域において利用可能とされる排ガスから、熱エネルギを一層効果的に抽出することができ、排ガス後処理のさらなる処理工程すべてにおいて、さらに利点を提供することができる。これにより、内燃機関に装備されると共に排ガス後処理システムを具備する発電システム又は推進システムにおいて、高い全体効率を実現することができる。
【0006】
本発明の優位なさらなる発展形態では、吸収剤が、内燃機関の下流において排ガスに導入され、排ガスと混合され、吸収剤の導入の際における排ガスの温度が、好ましくは250℃より高く、吸収剤が、硫黄化合物を化学吸着により低減させるように、好ましくはさらに、排ガスに含有されるさらなる汚染物質と結合するように構成されている。これにより、熱回収及び排ガス後処理システムのさらなる処理工程すべてのために、排ガスを特に有効に調整することができる。好ましくは、吸収剤は、乾燥した紛体として排ガスに導入される。乾燥した紛体を吸収剤として導入することによって、熱回収の範囲内において利用可能とされるエンタルピーを増大させることができるので、システム全体の効率を高めることができる。さらなる好ましい効果は、流体の給排のための技術的処理及び技術的設備を省略することができることに由来する。
【0007】
本発明の優位なさらなる発展形態では、排ガスの温度が、排ガス清浄フィルタ内における脱硫及び脱塵の際であっても250℃より高い。
【0008】
本発明における排ガス後処理システムは、請求項9に規定されている。
【0009】
本発明の好ましいさらなる発展形態については、従属請求項及び発明の詳細な説明から理解可能とされる。本発明の典型的な実施例については、添付図面を介して一層詳細に説明するが、本発明を限定する訳ではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、内燃機関から排出された排ガスを排ガス後処理するための方法、及び、当該方法を実施するための排ガス後処理システムに関する。
【0012】
図1は、内燃機関10と内燃機関10の排ガス15を清浄するために利用される排ガス後処理システムとから成る概略的な系統図である。排ガス後処理システムは、排ガス15に含まれている利用可能な熱エネルギ11を回収又は生成するために、熱エネルギのための回収セクション11を備えている。回収セクション11としては、例えば熱交換器等が挙げられる。
【0013】
本発明は、排ガス15を分離セクション11の上流において熱分解されるように調整することを提案する。
【0014】
本発明に従って熱回収のために排ガス15を調整することによって、吸収剤16が、排ガスの流れ方向に関する内燃機関10の下流において、具体的には計量装置12の補助を受けて排ガス15に導入される。排ガスに導入された吸収剤16は、混合セクション14の領域において排ガス15と混合される。好ましくは、汚染物質、特に硫黄化合物及びその他が、計量装置12と濾過ユニット13との間に配置されている混合セクション14の領域において吸収剤と結合された後に、濾過ユニット13において排ガスから除去される。
【0015】
吸収剤16は、内燃機関10の下流且つ濾過ユニット13及び回収セクション11の上流において、具体的には250℃より高い排ガス温度で排ガス15に強制的に導入される。当該実施例では、吸収剤16は、具体的には例えばノズルとして構成されている計量装置12を介して、乾燥した紛体として排ガス15に導入される。
【0016】
排ガス15に導入された吸収剤16は、少なくとも硫黄化合物を化学吸着によって低減するように、好ましくはさらに、排ガスに含有されると共に後続の処理工程にとって問題となる、さらなる汚染物質と結合するように構成されている。後続の処理工程は、エネルギ回収及びさらなる排ガス後処理の両方の目的に対して有効である。
【0017】
例えば、上述の方法の特に優位な実施例では超微粒子の形態とされる、ナトリウム化合物群又はカルシウム化合物群に属する物質が、吸収剤として利用される
。
【0018】
上述のように、排ガス15に導入された吸収剤16は、排ガス15と混合され、吸収剤16の大部分が、混合セクション14の領域並びに計量装置12及び濾過ユニット13の領域において、排ガス15に含有される汚染物質と反応する。
【0019】
同様に上述のように、その後に、硫黄化合物及びさらなる汚染物質並びにさらなる粒子状の排ガス物質で満たされた吸収剤が、濾過ユニットの補助を受けて排ガスから除去される。濾過ユニット13は、排ガスを清浄するためのフィルタであって、250℃より高い温度に適合する、例えばセラミック材料又は金属材料から成る濾過要素を利用している。同様に、脱硫及び脱塵の際において、排ガス温度は250℃より高い。
【0020】
濾過ユニット13で濾過する際には、汚染物質及びさらなる粒子状の排ガス物質で満たされた吸収剤が、排ガスから濾過され、排ガス後処理システムから除去される。
【0021】
利用された吸収剤の機能として、当該方法は、濾過ユニット13の領域において依然として汚染物質結合能を完全に使い切っておらず、且つ、計量システム12の領域において排ガス15に再び導入可能とされる、再循環システムによって拡張可能とされる。
【0022】
本発明は、例えば大型の内燃機関において利用される。このような大型の内燃機関としては、液体燃料若しくは気体燃料又は石炭若しくは再生燃料のような様々な種類の燃料で動作する、例えば発電所や船舶で利用される大型の内燃機関が挙げられる。
【0023】
本発明では、内燃機関10から排出される排ガス15を最適に調整することによって、その結果として発生する熱エネルギを回収セクション11の領域において回収することができる。さらに、調整された排ガスの優位な特徴は、排ガス後処理方法の実施可能なさらなるステップに対して有効な効果を有している。このために、吸収剤16は、好ましくは乾燥した紛体として排ガス15に導入され、排ガス15と混合され、その後に濾過ユニット13において粒子状の物質と汚染物質で満たされた吸収剤とを除去する。調整の全体が、内燃機関10の下流で且つ熱回収セクション11の構成部品の上流において、250℃より高い温度で強制的に実施される。これにより、熱回収及び排ガス後処理方法の実施可能なさらなるステップのための、排ガス15の最適な調整が可能となる。
【符号の説明】
【0024】
10 内燃機関
11 回収セクション(分離セクション)
12 計量装置
13 濾過ユニット
14 混合セクション
15 排ガス
16 吸収剤