特許第6602941号(P6602941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6602941
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】水素製造装置及び水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20191028BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   C01B3/38
   C01B3/56 Z
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-225671(P2018-225671)
(22)【出願日】2018年11月30日
【審査請求日】2019年1月23日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃平
(72)【発明者】
【氏名】櫛 拓人
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 広基
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−020102(JP,A)
【文献】 特開2004−338975(JP,A)
【文献】 特開2003−068339(JP,A)
【文献】 特開2005−008434(JP,A)
【文献】 特開2014−207133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器であって、前記炭化水素を水蒸気改質する改質触媒層と、改質触媒層よりも下流側で前記改質ガスから一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去部と、を有する改質器と、
前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、
前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、
前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、
前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、
前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、
前記改質器の前記改質ガスが流れる流路上で、前記改質触媒層と前記一酸化炭素除去部との間に配設され、前記改質ガスの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段で検出された前記改質ガスの温度に基づいて、前記切換手段を制御する制御部と、
前記オフガス流路の前記オフガスタンクよりも下流側に設けられ、ガス流量を検出するガス流量検出手段と、
前記改質器の燃焼室に空気を供給する空気供給流路と、
前記空気供給流路上に設けられ、前記燃焼室に供給される空気流量を調整する空気流量調整弁と、
を備え、前記制御部は、前記改質ガスの温度と、前記ガス流量検出手段で検出された前記ガス流量に基づいて、前記空気流量調整弁を制御として前記空気流量を調整する水素製造装置。
【請求項2】
原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、
前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、
前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、
前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、
前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、
前記改質器における改質ガスの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段で検出された前記改質ガスの温度に基づいて、前記切換手段を制御する制御部と、
前記オフガス流路の前記オフガスタンクよりも下流側に設けられ、ガス流量を検出するガス流量検出手段と、
前記改質器の燃焼室に空気を供給する空気供給流路と、
前記空気供給流路上に設けられ、前記燃焼室に供給される空気流量を調整する空気流量調整弁と、
を備え、前記制御部は、前記改質ガスの温度と、前記ガス流量検出手段で検出された前記ガス流量に基づいて、前記空気流量調整弁を制御として前記空気流量を調整する水素製造装置。
【請求項3】
原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器であって、前記炭化水素を水蒸気改質する改質触媒層と、前記改質触媒層よりも下流側で前記改質ガスから一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去部と、を有する改質器と、
前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、
前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、
前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、
前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、
前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、
前記改質器の前記改質ガスが流れる流路上で、前記改質触媒層と前記一酸化炭素除去部との間に配設され、前記改質ガスの温度を検出する温度検出手段と、
を備える水素製造装置を用いて、
前記改質器で生成された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを遮断させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを連通させ、
前記改質器で生成された前記改質ガスの温度が閾値以上の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを連通させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを遮断させると共に、
少なくとも前記改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記改質ガスの温度と、前記オフガス流路において前記オフガスタンクよりも下流側のガス流量とに基づいて前記改質器の燃焼室に供給される空気流量を調整する水素製造方法。
【請求項4】
原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、
前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、
前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、
前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、
前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、
を備える水素製造装置を用いて、
前記改質器で生成された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを遮断させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを連通させ、
前記改質器で生成された前記改質ガスの温度が閾値以上の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを連通させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを遮断させると共に、
少なくとも前記改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記改質ガスの温度と、前記オフガス流路において前記オフガスタンクよりも下流側のガス流量とに基づいて前記改質器の燃焼室に供給される空気流量を調整する水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置及び水素製造方法に関し、特に、炭化水素原料を改質して水素を製造する水素製造装置及び水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を得るための水素製造装置としては、原料炭化水素を改質装置で改質ガスに(水蒸気)改質した後、PSA(Pressure Swing Adsorption)装置(水素精製器)へ供給するものが知られている。PSAで改質ガスから不純物と分離された水素が取り出される。
【0003】
改質装置では、原料炭化水素から水蒸気改質された改質ガスの水素濃度等が所定の濃度に達していないことがある。例えば、改質装置の起動時には、改質装置の内部温度が所定温度まで上昇せず、水蒸気改質された改質ガスが所定の水素濃度に達しない(一酸化炭素濃度が高い)ことがある。そこで、特許文献1の水素製造装置では、改質装置で生成される所定の水素濃度に達していない改質ガスをフレアに供給している。すなわち、改質装置で生成された所定の水素濃度に達していない改質ガスを水素精製器に供給しないことにより、所定品質に到達していない製品水素が製造されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−149466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の水素製造装置は、所定品質に到達していない製品水素の製造を防止するという観点では優れているが、水素製造装置の熱効率の点で改善の余地がある。
【0006】
本発明の課題は、所定の水素濃度に達していない改質ガスが水素精製器に供給されることが防止されると共に、装置全体の熱効率を向上させた水素製造装置及び水素製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の水素製造装置は、原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器であって、前記炭化水素を水蒸気改質する改質触媒層と、改質触媒層よりも下流側で前記改質ガスから一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去部と、を有する改質器と、前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、前記改質器の前記改質ガスが流れる流路上で、前記改質触媒層と前記一酸化炭素除去部との間に配設され、前記改質ガスの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出された前記改質ガスの温度に基づいて、前記切換手段を制御する制御部と、前記オフガス流路の前記オフガスタンクよりも下流側に設けられ、ガス流量を検出するガス流量検出手段と、前記改質器の燃焼室に空気を供給する空気供給流路と、前記空気供給流路上に設けられ、前記燃焼室に供給される空気流量を調整する空気流量調整弁と、を備え、前記制御部は、前記改質ガスの温度と、前記ガス流量検出手段で検出された前記ガス流量に基づいて、前記空気流量調整弁を制御として前記空気流量を調整する
【0008】
この水素製造装置では、改質器の内部温度が所定温度に到達していないと、改質器で水蒸気改質が十分に行われず、所定の水素濃度に達していない改質ガスが生成される。
【0009】
制御部は、温度検出手段で検出された改質ガスの温度に基づいて、改質ガスの水素濃度が所定濃度に達しているか否かを判定している。制御部は、例えば、改質ガスの温度が所定温度未満の場合には、改質ガスが所定の水素濃度に達していないと判定し、切換手段によって改質ガス流路の上流側と下流側とを遮断させ、上流側と改質ガス分岐流路とを連通させる。これによって、所定の水素濃度に達していない改質ガスを改質器からオフガスタンクを介して改質器の燃焼室に燃料として供給する。すなわち、所定の水素濃度に達していない改質ガスを改質器の加熱に供する。
【0010】
すなわち、改質器で生成された所定の水素濃度に達しない改質ガスが水素精製器に到達することが防止されると共に、所定の水素濃度に達しない改質ガスをフレアに供給する装置と比較して装置全体の熱効率が向上する。
【0011】
一方、制御部は、改質器の改質ガスの温度が所定温度以上の場合には、改質ガスが所定の水素濃度に達したと判定し、切換手段によって改質ガス流路の上流側と下流側とを連通させ、上流側と改質ガス分岐流路とを遮断させている。これによって、所定の水素濃度に達した改質ガスを水素精製器に供給し、製品水素を製造する。また、水素精製器からオフガスタンクを介して改質器の燃焼室にオフガスが燃料として戻され、改質器の加熱に供される。この場合にも、オフガスを改質器に燃料として供給しない水素製造装置と比較して水素製造装置全体の熱効率が向上する。
【0012】
さらに、この切換時に、改質ガスが水素精製器に到達し、水素精製器で改質ガスから分離されたオフガスがオフガスタンクに到達するまでの間、オフガスタンクに貯留されていた改質ガスを改質器の燃焼室に供給することができる。したがって、切換時における改質器の燃焼室に対する燃料供給を安定的に維持し、改質器の加熱に供することができる。
【0013】
これにより、所定の水素濃度に達しない改質ガスをフレアに供給する水素製造装置と比較して水素製造装置全体の熱効率が一層向上する。
このように、制御部では改質器の改質ガス温度に基づいて改質ガスが所定の水素濃度に達しているか否かを判定し、これに基づいて切換手段を制御しているため、製品水素の品質を維持しつつ、装置全体の熱効率を向上させることができる。
【0022】
また、この水素製造装置では、改質ガスの温度に基づいて切換手段が切換られることにより、所定の水素濃度に達していない改質ガスがオフガスタンクを経由して改質器に燃料として供給される。この際、オフガス流路に設けられたガス流量検出手段で改質ガスの流量が検出され、制御部ではこの改質ガスの流量と温度に基づいて改質器の燃焼室に流れる空気流量を調整することで、燃焼室の燃焼性を良好に維持している。
【0023】
特に、制御部では、改質ガスの流量のみならず改質ガスの温度を参照することで、温度によって異なる改質ガスの組成に対応して燃焼室に供給する空気流量を調整するため、燃焼室の燃焼性が一層良好になる。
請求項記載の水素製造装置は、原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器と、前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、前記改質器における改質ガスの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出された前記改質ガスの温度に基づいて、前記切換手段を制御する制御部と、前記オフガス流路の前記オフガスタンクよりも下流側に設けられ、ガス流量を検出するガス流量検出手段と、前記改質器の燃焼室に空気を供給する空気供給流路と、前記空気供給流路上に設けられ、前記燃焼室に供給される空気流量を調整する空気流量調整弁と、を備え、前記制御部は、前記改質ガスの温度と、前記ガス流量検出手段で検出された前記ガス流量に基づいて、前記空気流量調整弁を制御として前記空気流量を調整する。
【0027】
請求項記載の水素製造方法は、原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器であって、前記炭化水素を水蒸気改質する改質触媒層と、前記改質触媒層よりも下流側で前記改質ガスから一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去部と、を有する改質器と、前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、前記改質器の前記改質ガスが流れる流路上で、前記改質触媒層と前記一酸化炭素除去部との間に配設され、前記改質ガスの温度を検出する温度検出手段と、を備える水素製造装置を用いて、前記改質器で生成された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを遮断させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを連通させ、前記改質器で生成された前記改質ガスの温度が閾値以上の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを連通させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを遮断させると共に、少なくとも前記改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記改質ガスの温度と、前記オフガス流路において前記オフガスタンクよりも下流側のガス流量とに基づいて前記改質器の燃焼室に供給される空気流量を調整する
この水素製造方法では、改質器で生成された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、改質ガスが所定の水素濃度に達していないと判定し、切換手段によって改質ガス流路の上流側と下流側とを遮断させ、上流側と改質ガス分岐流路とを連通させる。これによって、所定の水素濃度に達していない改質ガスを改質器からオフガスタンクを介して改質器の燃焼室に燃料として供給する。すなわち、所定の水素濃度に達していない改質ガスを改質器の加熱に供する。
【0028】
一方、改質器で生成された改質ガスの温度が閾値以上の場合には、改質ガスが所定の水素濃度に達したと判定し、切換手段によって改質ガス流路の上流側と下流側とを連通させ、上流側と改質ガス分岐流路とを遮断させている。これによって、所定の水素濃度に達した改質ガスを水素精製器に供給し、製品水素を製造する。
【0029】
このように、この水素製造方法では、改質器の改質ガス温度に基づいて改質ガスが所定の水素濃度に達しているか否かを判定し、これに基づいて切換手段を制御しているため、製品水素の品質を維持しつつ、装置全体の熱効率を向上させることができる。
また、この水素製造方法では、少なくとも改質ガスの温度が閾値未満の場合には、切換手段によって改質ガス流路の上流側と下流側とを遮断させ、上流側と改質ガス分岐流路とを連通させる。これにより、所定の水素濃度に達していない改質ガスがオフガスタンクを経由して改質器に燃料として供給される。この際、改質ガスの温度とオフガス流路において前記オフガスタンクよりも下流側のガス流量に基づいて改質器の燃焼室に供給される空気流量を調整することで、燃焼室の燃焼性を良好に維持することができる。
請求項記載の水素製造方法は、原料として供給された炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器と、前記改質器と接続され、前記改質ガスを製品水素と不純物であるオフガスとに分離して製品水素を精製する水素精製器と、前記水素精製器から前記改質器の燃焼室に前記オフガスを燃料として戻すオフガス流路と、前記オフガス流路上に設けられ、前記オフガスを一旦貯留した後、前記改質器に供給するオフガスタンクと、前記改質器から前記水素精製器に到る改質ガス流路から分岐して前記オフガスタンクに到る改質ガス分岐流路と、前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と、下流側又は前記改質ガス分岐流路のいずれか一方と連通し、他方と遮断する切換手段と、を備える水素製造装置を用いて、前記改質器で生成された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを遮断させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを連通させ、前記改質器で生成された前記改質ガスの温度が閾値以上の場合には、前記切換手段によって前記改質ガス流路における前記改質ガス分岐流路への分岐位置よりも上流側と下流側とを連通させ、前記上流側と前記改質ガス分岐流路とを遮断させると共に、少なくとも前記改質ガスの温度が閾値未満の場合には、前記改質ガスの温度と、前記オフガス流路において前記オフガスタンクよりも下流側のガス流量とに基づいて前記改質器の燃焼室に供給される空気流量を調整する。
【発明の効果】
【0030】
請求項1、記載の発明に係る水素製造装置は、上記構成としたので、改質器の起動時等に所定の水素濃度に達していない改質ガスが水素精製器に供給されることが防止されると共に、装置全体の熱効率を向上させることができる。
【0031】
また、請求項1、2記載の発明に係る水素製造装置は、上記構成としたので、燃焼室における改質ガスの燃焼性を良好にすることができる。
【0032】
さらに、請求項3、4記載の発明に係る水素製造方法は、上記構成としたので、改質器の起動時等に所定の水素濃度に達していない改質ガスが水素精製器に供給されることが防止されると共に、装置全体の熱効率を向上させることができる。
【0033】
また、請求項3、4記載の発明に係る水素製造方法は、上記構成としたので、燃焼室における改質ガスの燃焼性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態に係る水素製造装置を示した概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る多重筒型改質器を示した断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る水素製造装置の制御構成を示したブロック図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る水素製造装置を示した概略構成図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る水素製造装置の制御構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る水素製造装置及び水素製造方法の一例を図1及び図2を参照して説明する。
【0036】
〈水素製造装置〉
水素製造装置10は、図1に示すように、炭化水素(都市ガス)から水蒸気改質した改質ガスを生成する多重筒型改質器(以下、「改質器」という場合がある)12と、改質ガスを圧縮する圧縮機80と、圧縮された改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製する水素精製器90と、を備えている。また、水素製造装置10は、圧縮機80の上流側、下流側でそれぞれ改質ガスから水分を分離・除去する昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60と、改質器12の後述する燃焼排ガスから水分を分離・除去する燃焼排ガス水分離部70と、を備えている。
【0037】
なお、この水素製造装置10は、炭化水素原料から水素を製造するものであり、本実施形態では、炭化水素原料の一例としてメタンを主成分とする都市ガスが用いられる場合について説明する。
【0038】
(多重筒型改質器)
多重筒型改質器12は、図2に示すように、多重に配置された複数の筒状壁21、22、23、24(以下、「筒状壁21〜24」という場合がある)を有している。複数の筒状壁21〜24は、例えば円筒状や楕円筒状に形成される。複数の筒状壁21〜24のうち内側から一番目の筒状壁21の内部には、燃焼室25が形成されており、この燃焼室25の上部には、バーナー26が下向きに配置されている。この多重筒型改質器12は、改質器の一例である。
【0039】
さらに、この燃焼室25の上端部には、外部から燃焼用空気を供給するための空気供給管40が接続されている。バーナー26には、さらに都市ガスを供給するための原料供給管33から分岐された原料分岐管33Aが接続されている。原料分岐管33Aには、空気供給管40から分岐された空気分岐管40Aが接続されている。したがって、バーナー26には、都市ガスに空気が混合された気体が、供給される構成である。なお、空気供給管40が「空気供給流路」に相当する。
【0040】
一番目の筒状壁21と二番目の筒状壁22との間には、燃焼排ガス流路27が形成されている。燃焼排ガス流路27の下端部は、燃焼室25と連通されており、燃焼排ガス流路27の上端部には、ガスを排出するためのガス排出管28が接続されている。燃焼室25から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス流路27を下側から上側に流れ、ガス排出管28を通じて燃焼排ガス水分離部70へ送出される構成である。
【0041】
また、二番目の筒状壁22と三番目の筒状壁23との間には、第1流路31が形成されている。この第1流路31の上部は、予熱流路32として形成されており、この予熱流路32の上端部には、都市ガスを供給するための原料供給管33と、改質用水を供給するための改質用水供給管34とが接続されている。さらに、二番目の筒状壁22と三番目の筒状壁23との間には、螺旋部材35が設けられており、この螺旋部材35により、予熱流路32は、螺旋状に形成されている。
【0042】
予熱流路32には、都市ガスが原料供給管33から供給可能とされ、さらに、改質用水が改質用水供給管34から供給可能とされている。都市ガス及び改質用水は、予熱流路32を上側から下側に流れ、二番目の筒状壁22を介して燃焼排ガスと熱交換され水が気化される構成である。この予熱流路32では、都市ガス及び気相の改質用水(水蒸気)が混合されることにより、混合ガスが生成される構成である。
【0043】
また、第1流路31における予熱流路32の下側には、改質触媒層36が設けられており、予熱流路32にて生成された混合ガスは、改質触媒層36へ供給される構成である。改質触媒層36では、燃焼排ガス流路27を流れる燃焼排ガスからの熱を受け、混合ガスが水蒸気改質反応することによって、水素を主成分とする改質ガスが生成される構成である。
【0044】
なお、第1流路31において、改質触媒層36の下流側には、生成された改質ガスの温度を検出する温度センサ37が配設されている。温度センサ37の検出信号は、後述する制御部106に出力される。なお、温度センサ37が「温度検出手段」に相当する。
【0045】
さらに、三番目の筒状壁23と四番目の筒状壁24との間には、第2流路42が形成されている。第2流路42の下端部は、第1流路31の下端部と連通されている。第2流路42の下部は、改質ガス流路43として形成されており、第2流路42の上端部には、改質ガス排出管44が接続されている。
【0046】
また、第2流路42における改質ガス流路43よりも上側には、CO変成触媒層45が設けられており、改質触媒層36で生成された改質ガスは、改質ガス流路43を通過した後、CO変成触媒層45へ供給される構成である。CO変成触媒層45では、改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して水素と二酸化炭素に変換され(水性シフト反応)、改質ガス中の一酸化炭素が低減可能とされている。
【0047】
さらに、CO変成触媒層45の上側には、酸化剤ガス供給管46が接続されており、第2流路42におけるCO変成触媒層45よりも上側には、CO選択酸化触媒層47が設けられている。酸化剤ガス供給管46を通じて取り入れられた酸化剤ガス(例えば空気)、及び、CO変成触媒層45を通過した改質ガスは、CO選択酸化触媒層47へ供給される構成である。CO選択酸化触媒層47では、例えば白金やルテニウム等の貴金属触媒上で一酸化炭素が酸素と反応して二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が除去可能とされている。CO変成触媒層45及びCO選択酸化触媒層47で一酸化炭素が低減された改質ガスG1は、改質ガス排出管44を通じて排出される構成である。
【0048】
多重筒型改質器12において生成された改質ガスは、図1に示すように、昇圧前水分離部50、圧縮機80、昇圧後水分離部60、及び水素精製器90をこの順番で流れる。つまり、ガスの流れ方向において、上流側から下流側に、多重筒型改質器12、昇圧前水分離部50、圧縮機80、昇圧後水分離部60、及び水素精製器90がこの順番で配置されている。
【0049】
(昇圧前水分離部)
昇圧前水分離部50には、多重筒型改質器12から改質ガスG1を流入させる改質ガス排出管44の下流端が接続されている。昇圧前水分離部50の底部には水回収管59が接続され、昇圧前水分離部50の上部には連絡流路管56が接続されている。改質ガスG1は、昇圧前水分離部50の上流の改質ガス排出管44に配置された熱交換器HE1において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧前水分離部50の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管59へ送出される構成である。水が凝縮された後の改質ガスG2は、連絡流路管56へ送出される構成である。
【0050】
なお、連絡流路管56は、途中で分岐管100の上流端が接続されている。分岐管100の下流端は、後述するオフガスタンク112に接続されている。また、連絡流路管56において、分岐管100との分岐位置よりも下流側には、昇圧前水分離部50と圧縮機80とを連通又は遮断する第1開閉弁102が配設されている。さらに、分岐管100には、昇圧前水分離部50とオフガスタンク112とを連通又は遮断する第2開閉弁104が配設されている。なお、分岐管100が「改質ガス分岐流路」に相当する。また、第1開閉弁102、第2開閉弁104が「切換手段」に相当する。
【0051】
この第1開閉弁102、第2開閉弁104は、図3に示すように、制御部106からの制御信号によって開閉されるように構成されている。
【0052】
具体的には、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、第1開閉弁102が閉弁され、第2開閉弁104が開弁される構成である。すなわち、昇圧前水分離部50と圧縮機80とが遮断され、昇圧前水分離部50とオフガスタンク112が連通される構成である。
【0053】
一方、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値以上の場合には、第1開閉弁102が開弁され、第2開閉弁104が閉弁される構成である。すなわち、昇圧前水分離部50と圧縮機80とが連通され、昇圧前水分離部50とオフガスタンク112が遮断される構成である。
【0054】
(圧縮機)
圧縮機80には、昇圧前水分離部50からの改質ガスG2が流れる連絡流路管56と、昇圧後水分離部60へ供給される改質ガスG2が流れる連絡流路管66とが接続されている。圧縮機80は、昇圧前水分離部50から供給された改質ガスG2を圧縮し、昇圧後水分離部60へ供給可能とされている。
【0055】
(昇圧後水分離部)
昇圧後水分離部60には、圧縮機80から改質ガスG2を流入させる連絡流路管66の下流端が接続されている。昇圧後水分離部60の底部には水回収管69が接続され、昇圧後水分離部60の上部には連絡流路管68が接続されている。改質ガスG2は、昇圧後水分離部60の上流の連絡流路管66に配置された熱交換器HE2において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、昇圧後水分離部60の下部に水(液相)が貯留可能されている。当該水(液相)は、水回収管69へ送出される構成である。水が凝縮された後の改質ガスG3は、連絡流路管68へ送出される構成である。
【0056】
(水素精製器)
水素精製器90には、昇圧後水分離部60からの改質ガスG3が流れる連絡流路管68の下流端と、精製された水素が送出される水素供給管92の上流端と、水素精製器90で分離されたオフガスが送出されるオフガス還流管110の上流端とが接続されている。
【0057】
水素精製器90は、一例として、PSA装置が使用されている。この水素精製器90では、一対の吸着槽を備え、一方の吸着槽で吸着剤に不純物を吸着させる吸着工程を行い、他方の吸着槽で吸着剤に吸着した不純物を脱着させる脱着工程を行い、次に一方の吸着槽で脱着工程、他方の吸着槽で吸着工程を行う。これを周期的に繰り返すことで、改質ガスG3を水素と一酸化炭素を含む不純物(オフガスOG)とに連続的に分離して、水素が精製される構成である。精製された水素は、水素供給管92へ送出され、不図示のタンクへ貯留されたり、水素供給ラインへ送出可能とされている。
【0058】
水素精製器90のオフガスは、オフガス還流管110を介して改質器12の燃焼室25に設けられたバーナー26に供給可能とされている。なお、オフガス還流管110が「オフガス流路」に相当する。また、改質器12から水素精製器90に到る改質ガスの流路、具体的には、改質ガス排出管44、昇圧前水分離部50、連絡流路管56、圧縮機80、連絡流路管66、昇圧後水分離部60、連絡流路管68が「改質ガス流路」に相当する。
【0059】
(燃焼排ガス水分離部)
燃焼排ガス水分離部70には、改質器12の燃焼排ガス流路27から燃焼排ガスを導くガス排出管28の下流端が接続されている。燃焼排ガス水分離部70の底部には水回収管78が接続され、燃焼排ガス水分離部70の上部にはガス排出管76が接続されている。燃焼室25から排出される燃焼排ガスは、燃焼排ガス水分離部70の上流のガス排出管28に配置された熱交換器HE3において、冷却水との熱交換による冷却により水が凝縮されて分離され、燃焼排ガス水分離部70の下部に水(液相)が貯留可能とされている。当該水(液相)は、水回収管78へ送出される構成である。水が凝縮された後の燃焼排ガスは、ガス排出管76から外気中へ排出される構成である。
【0060】
水回収管59、69、78の各々の下流端は、改質用水供給管34に接続されている。改質用水供給管34には、溶存イオン成分を除去するための水処理器(イオン交換樹脂)34Aが設けられている。また、改質用水供給管34には、外部水供給部17が接続されている。外部水供給部17から改質用水供給管34に、例えば純水または市水が供給される構成である。
【0061】
さらに、改質用水供給管34には、ポンプP1が設けられている。昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70で分離された水、又は外部水供給部17から供給された水は、ポンプP1によって多重筒型改質器12へ供給される構成である。
【0062】
〈オフガスタンク〉
オフガスタンク112は、水素精製器90と改質器12のバーナー26とを連通するオフガス還流管110上に設けられている。また、オフガスタンク112には、分岐管100の下流端が接続されている。
【0063】
したがって、第1開閉弁102が開弁され、第2開閉弁104が閉弁された場合には、水素精製器90から供給されたオフガスがオフガスタンク112に一旦貯留され、流量や組成が平準化された後、改質器12のバーナー26に供給される構成である。
【0064】
一方、第1開閉弁102が閉弁され、第2開閉弁104が開弁された場合には、昇圧前水分離部50から供給された改質ガスがオフガスタンク112に一旦貯留された後、オフガス還流管110を介して改質器12のバーナー26に供給される構成である。
【0065】
(制御部)
続いて、第1開閉弁102、第2開閉弁104の開閉制御を行う制御部106について説明する。
【0066】
制御部106は、図3に示すように、温度センサ37の検出信号が入力されると共に、第1開閉弁102と第2開閉弁104に制御信号(開弁信号、閉弁信号)が出力される構成である。特に、制御部106は、第1開閉弁102と第2開閉弁104のいずれか一方に開弁信号、他方に閉弁信号を出力するものである。
【0067】
制御部106は、図示しない改質ガスが所定の水素濃度に達しているか否かを判定する改質ガスの温度の閾値を記憶している。すなわち、制御部106は、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が入力されると、改質ガスの温度と記憶されている閾値と比較する構成である。
【0068】
制御部106は、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値以上の場合には、制御部106は所定の水素濃度に達した改質ガスが生成されたと判定して、第1開閉弁102に開弁信号、第2開閉弁104に閉弁信号を出力する構成である。
【0069】
逆に、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値未満の場合には、制御部106は所定の水素濃度に達していない改質ガスが生成されたと判定して、第1開閉弁102に閉弁信号、第2開閉弁104に開弁信号を出力する構成である。
【0070】
(作用)
次に、水素製造装置10及び水素製造方法の作用について説明する。
【0071】
都市ガスが、原料供給管33から多重筒型改質器12に供給される。図2に示すように、多重筒型改質器12へ供給された都市ガスは、多重筒型改質器12の予熱流路32で改質用の水と混合されつつ加熱され、改質触媒層36へ供給される。改質触媒層36では、燃焼排ガス流路27を流れる燃焼排ガスからの熱を受け、水蒸気改質反応によって混合ガスから水素を主成分とする改質ガスが生成される。この改質ガスは、改質ガス流路43を通ってCO変成触媒層45へ供給される。CO変成触媒層45では、改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が低減される。
【0072】
さらに、CO変成触媒層45を通過した改質ガスは、酸化剤ガス供給管46から供給される酸化ガス(空気)と共にCO選択酸化触媒層47へ供給され、貴金属触媒上で一酸化炭素が酸素と反応して二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が除去される。CO選択酸化触媒層47で一酸化炭素が低減された改質ガスG1は、改質ガス排出管44へ送出される。
【0073】
この際、多重筒型改質器12の燃焼室25では、原料分岐管33Aと空気分岐管40Aから供給された都市ガスと空気とが混合された気体がバーナー26によって燃焼される。燃焼排ガスは、燃焼室25から燃焼排ガス流路27、ガス排出管28を介して燃焼排ガス水分離部70へ供給される。図1に示すように、燃焼排ガスに含まれる水は、熱交換器HE3での熱交換により冷却されて凝縮され、燃焼排ガス水分離部70に貯留され、水回収管78へ送出される。水が分離された燃焼排ガスは、ガス排出管76から外気中へ排出される。
【0074】
ここで、水素製造装置10(改質器12)の起動時には、改質器12の燃焼室25でバーナー26が燃焼されることによって改質器内部の温度が所定温度に到達するまで時間を要する。この間、燃焼排ガス流路27を流れる燃焼排ガスとの熱交換によって、改質触媒層36における水蒸気改質によって生成された改質ガスは所定の水素濃度に達していない。また、所定の水素濃度に達していない改質ガスの温度は、所定の水素濃度に達した改質ガスの温度と比較して低い。
【0075】
生成された改質ガスの温度は、第1流路31の改質触媒層36の下流側に設けられた温度センサ37で検出される。制御部106では、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値以上であるか否かを判定する。
【0076】
改質ガスの温度が閾値未満の場合には、所定の水素濃度に達していない改質ガスであると判定し、第1開閉弁102に閉弁信号を出力し、第2開閉弁104に開弁信号を出力する。
【0077】
これにより、第1開閉弁102が閉弁され、第2開閉弁104が開弁される。この結果、昇圧前水分離部50と圧縮機80とが遮断され、昇圧前水分離部50とオフガスタンク112とが連通される。
【0078】
この状態で、改質器12から改質ガス排出管44に送出された所定の水素濃度に達していない改質ガスG1は、昇圧前水分離部50へ供給される。昇圧前水分離部50では、熱交換器HE1での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管59へ送出される。
【0079】
水が分離された改質ガスG2は、連絡流路管56から分岐管100を介してオフガスタンク112に供給される。オフガスタンク112に一旦貯留された改質ガスG2は、オフガス還流管110を介して改質器12のバーナー26に供給され、燃焼室25で燃焼される(改質器12の加熱に供される)。
【0080】
一方、制御部106では、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値以上となった場合には、改質器12で生成された改質ガスが所定の水素濃度に達したと判定し、第1開閉弁102に開弁信号、第2開閉弁104に閉弁信号を出力する。
【0081】
これにより、第1開閉弁102が開弁され、第2開閉弁104が閉弁される。この結果、昇圧前水分離部50と圧縮機80とが連通され、昇圧前水分離部50とオフガスタンク112とが遮断される。
【0082】
したがって、図1に示すように、改質器12から送出された所定品質の改質ガスG1は、改質ガス排出管44を経て、昇圧前水分離部50へ供給される。昇圧前水分離部50では、熱交換器HE1での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管59へ送出される。水が分離された改質ガスG2は、連絡流路管56から圧縮機80へ供給され、圧縮機80によって圧縮される。
【0083】
圧縮された改質ガスG2は、連絡流路管66から昇圧後水分離部60へ供給される。昇圧後水分離部60では、熱交換器HE2での熱交換による冷却により凝縮された水が貯留され、水回収管69へ送出される。水が分離された改質ガスG3は、連絡流路管68から水素精製器90へ供給される。
【0084】
なお、昇圧前水分離部50、昇圧後水分離部60、燃焼排ガス水分離部70からそれぞれ水回収管59、69、78に送出された水は、改質用水供給管34に戻される。ポンプP1の駆動により、改質用水供給管34から多重筒型改質器12に改質水として供給される。
【0085】
水素精製器90では、圧力スイング方式が採用されており、一対の吸着槽の一方では吸着剤に水素以外の不純物が吸着され、他方の吸着槽では吸着剤に吸着された不純物が脱着されている。水素精製器90では、この吸着工程と脱着工程をそれぞれの吸着槽で一定の周期で繰り返すことにより、改質ガスG3から連続的に水素と不純物が分離されて水素が精製される。
【0086】
水素精製器90で精製された製品としての水素は水素供給管92へ送出され、不図示のタンクへ貯留されたり、水素供給ラインへ送られる。
【0087】
一方、水素精製器90から排出されたオフガスOGは、オフガス還流管110を介して改質器12に供給される。すなわち、オフガス還流管110上に設けられたオフガスタンク112に一旦貯留された後、改質器12のバーナー26に供給される。
【0088】
なお、このオフガスOGには、改質器12で除去しきれなかった一酸化炭素と水素精製器90で分離しきれなかった水素が含有されている。したがって、オフガスは、バーナー26に供給されることにより燃焼室25内で燃焼される(改質器12の加熱に供される)。
【0089】
ところで、第1開閉弁102を閉弁から開弁、第2開閉弁104を開弁から閉弁へ切り換えした時(以下、「切換時」という)には、改質ガスが昇圧前水分離部50から水素精製器90に到達し、水素精製器90で改質ガスG3から分離されたオフガスOGがオフガス還流管110を介してオフガスタンク112に到達するまで、時間を要する。
【0090】
この間、オフガスタンク112に供給される可燃ガス(改質ガスG2及びオフガスOG)はないが、オフガスタンク112に貯留されていた改質ガスG2がオフガスタンク112から改質器12のバーナー26に供給される。すなわち、バーナー26には、オフガスタンク112から燃料ガス(改質ガスG2又はオフガスOG)の供給が遮断されることになく継続される。したがって、バーナー26の燃焼状態が良好に維持される。
【0091】
このように、水素製造装置10では、改質器12で生成される改質ガスが所定の水素濃度に達していない場合には、第1開閉弁102を閉弁、第2開閉弁104を開弁させることで、分岐管100を介してオフガス還流管110上に設けられたオフガスタンク112に供給することができる。この結果、所定の水素濃度に達していない改質ガスをオフガスタンク112から改質器12のバーナー26に燃料として供給し、燃焼室25で燃焼させている。
【0092】
したがって、所定の水素濃度に達していない改質ガスが水素精製器90に供給されることが防止され、水素精製器90で精製された(製品)水素の純度(品質)が低下することが防止される(製品水素の品質を高く維持することができる)。
【0093】
また、所定の水素濃度に達していない改質ガスを改質器12のバーナー26に供給して燃焼室25で燃焼させることにより、この改質ガスをフレアに供給する水素製造装置と比較して水素製造装置10の熱効率を向上させている。
【0094】
さらに、制御部106は、改質ガスが所定品質に到達しているか否かを、温度センサ37で検出された改質ガスの温度に基づいて判定しているため、精度良く改質ガスの品質を判定することができる。
【0095】
さらにまた、改質ガスがオフガスタンク112に供給されている状態からオフガスがオフガスタンク112に供給されている状態に切り換える場合(切換時)には、オフガスタンク112に対する改質ガスの供給が停止した状態からオフガスがオフガスタンク112に到達するまでの間、オフガスタンク112に貯留された改質ガスが改質器12のバーナー26に供給される。したがって、オフガスタンク112からバーナー26へ燃料ガス(改質ガス又はオフガス)の供給が遮断することはなく、バーナー26の燃焼性が良好に維持される。
【0096】
オフガスタンク112からバーナー26へ燃料ガス(改質ガス又はオフガス)の供給が遮断された場合には、バーナー26に都市ガスを供給すること、又は都市ガスの供給量を増加させることが必要となる。水素製造装置10では、切換時にオフガスタンク112からバーナー26へ燃料ガス(改質ガス又はオフガス)の供給が遮断することはないため、バーナー26に対する燃料ガス(改質ガス、オフガス、都市ガス)の流量制御が簡単になると共に、装置全体の熱効率が一層向上する。
【0097】
なお、オフガス還流管110の途中にオフガスタンク112を設け、オフガスタンク112にオフガスOGを一旦貯留することで、例えば水素精製器90がPSA装置である場合に周期的に変動するオフガスの流量や組成を平準化して改質器12のバーナー26に供給することができる。これによって、バーナー26の燃焼性を良好に維持できる。
【0098】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る水素製造装置200及び水素製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、水素製造装置200は、水素製造装置10に流量検出器202と、流量制御弁204を追加したのみなので、当該部分に関する構成及び作用のみを説明し、第1実施形態と同様の作用効果については詳細な説明を省略する。
【0099】
(構成)
図4に示すように、水素製造装置200は、オフガス還流管110上においてオフガスタンク112の下流側にオフガス還流管110を流れるガス流量を検出する流量検出器202を設けている。図5に示すように、流量検出器202の検出信号が制御部106に出力される。なお、流量検出器202が「流量検出手段」に相当する。
【0100】
また、図4に示すように、空気供給管40上には、空気供給管40を流れる空気流量を調整する流量制御弁204が設けられている。図5に示すように、流量制御弁204は、制御部106からの制御信号が入力されることにより駆動され、空気供給管40を流れる空気流量を調整する。この流量制御弁204が「空気流量調整弁」に相当する。
【0101】
図5に示すように、制御部106では、温度センサ37と流量検出器202の検出信号が入力されると共に、第1開閉弁102、第2開閉弁104、流量制御弁204に制御信号が出力される構成である。
【0102】
また、制御部106には、流量検出器202と温度センサ37で検出された改質ガスの流量及び温度と、これらに対応した空気供給管40に流れる空気流量(空気流量調整弁の開度)との対応関係を示すテーブルが格納されている。これは、バーナー26に改質ガスが供給されることによって燃焼される場合、改質ガスの組成が改質ガスの温度によって異なることから、改質ガスの流量と温度に対応して燃焼室25に供給される空気流量を調整することで、燃焼室25における燃焼性(空燃比)を適切に調整するものである。
【0103】
したがって、制御部106では、温度センサ37で検出された温度と閾値を比較することにより、第1開閉弁102と第2開閉弁104に制御信号を出力して開閉制御すると共に、この開閉制御により改質ガスがオフガスタンク112に供給される場合に、図示しないテーブルを参照した制御信号を流量制御弁204に出力する構成である。
【0104】
(作用)
次に、水素製造装置200及び水素製造方法の作用について説明する。
水素製造装置200の制御部106では、改質器12の起動時に、温度センサ37で検出された改質ガスの温度が閾値未満である場合には、改質ガスが所定の水素濃度に達していないと判定し、第1開閉弁102を閉弁信号、第2開閉弁104を開弁信号を出力する。これにより、第1開閉弁102が閉弁されると共に第2開閉弁104が開弁される。
【0105】
この結果、装置の起動時に改質器12で生成され所定の水素濃度に達していない改質ガスが昇圧前水分離部50からオフガスタンク112に供給される。オフガスタンク112からオフガス還流管110を介して改質器12のバーナー26に改質ガスが供給される。この際、オフガス還流管110内を流れる改質ガスの流量が流量検出器202で検出される。
【0106】
制御部106では、上記のように改質ガス温度が閾値未満の場合には、改質ガスが燃焼室25のバーナー26に供給されることから、図示しないテーブルを参照して温度センサ37と流量検出器202で検出された改質ガスの温度と流量から、流量制御弁204の開度を決定し、これに対応する制御信号を流量制御弁204に出力する。
【0107】
流量制御弁204は、制御信号に基づいて所定の開度に調整することにより、空気供給管40から燃焼室25に供給される空気流量が所定の流量とされる。この結果、燃焼室25においてバーナー26に供給された改質ガスの燃焼状態が一層良好に維持される。
【0108】
なお、この場合、改質ガスの流量だけでなく改質ガスの温度を参照することによって改質ガスの組成が考慮されるため、燃焼室25におけるバーナー26の燃焼性が一層良好になる。
【0109】
[その他]
水素製造装置10、200では、それぞれ改質器12を多重筒型改質器としたが、これに限定されるものではない。都市ガスから水素を主成分とする改質ガスに改質可能なものであれば良い。
【0110】
また、水素製造装置10、200では、水素精製器90がPSA装置である場合について説明したが、改質ガスG3から水素を精製できるものであれば、これに限定するものではない。
【0111】
さらに、水素製造装置10、200では、連絡流路管56上の分岐管100との分岐位置よりも下流側に第1開閉弁102、分岐管100上に第2開閉弁104を設けることにより、昇圧前水分離部50と圧縮機80又はオフガスタンク112を選択的に連通する構成としたが、連絡流路管56上の分岐管100との分岐位置に三方弁を設けることにより昇圧前水分離部50と圧縮機80又はオフガスタンク112を選択的に連通する構成としても良い。
【0112】
また、水素製造装置10、200では、温度センサ37で検出した改質ガスの温度に基づいて制御部106が改質ガスの水素濃度を判定し、この判定結果に基づいて第1開閉弁102、第2開閉弁104の開閉制御を行う構成としたが、運転員が改質ガスの温度に基づいて改質ガスの水素濃度を評価し、第1開閉弁102、第2開閉弁104の開閉を行う構成でも良い。
【0113】
さらに、制御部106において改質ガスが所定の水素濃度に達しているか否かの判定は、改質ガスの温度に基づいて行うものであれば良い。例えば、改質ガスの温度上昇率等に基づいて改質ガスが所定の水素濃度に達しているか否かを判定しても良い。
【0114】
また、水素製造装置200では、制御部106で改質ガスの温度と流量から改質器12の燃焼室25に供給する空気流量を流量制御弁204で調整する構成としたが、改質ガスの流量のみに対応して燃焼室25に供給する空気流量を調整する構成でも良い。
【0115】
さらに、水素製造装置200では、改質ガスを改質器12のバーナー26に供給する場合だけ、流量制御弁204を調整して燃焼室25に供給される空気流量を調整する構成としたが、オフガスをバーナー26に供給する場合も同様の調整をしても良い。ただし、この場合には、制御部106がオフガスの流量と、空気流量(流量制御弁204の開度)との対応関係を示すテーブルを記憶し、流量検出器202で検出されたオフガス流量からテーブルを参照して流量制御弁204を制御して空気流量を調整することが考えられる。
【0116】
また、水素製造装置10、200において分岐管100の一端は、昇圧前水分離部50に接続されているが、これに限定するものではない。すなわち、分岐管100の一端は、改質器12から水素精製器90を結ぶ管路(改質ガス排出管44、昇圧前水分離部50、連絡流路管56、圧縮機80、連絡流路管66、昇圧後水分離部60、連絡流路管68)に接続されていれば良い。ただし、分岐管100の一端が昇圧前水分離部50よりも下流側と接続されると、改質ガスをオフガスタンク112に供給するまでの流路が長くなるという点で本実施形態と比較して不利である。また、改質ガス排出管44からオフガスタンク112に分岐管100が接続された場合には、水蒸気(水分)を多く含む改質ガスが改質器12のバーナー26に供給される点で本実施形態よりも不利である。
【0117】
さらに、分岐管100の他端は、オフガスタンク112に直接接続されていたが、これに限定するものではない。すなわち、分岐管100の他端は、オフガス還流管110においてオフガスタンク112よりも上流側に接続されるものであっても良い。
【0118】
また、水素製造装置10、200では、改質器12(水素製造装置10、200)の起動時について説明したが、起動時に限定されず、所定の水素濃度に達しない改質ガスを改質器12のバーナー26に供給するものである。
【符号の説明】
【0119】
10、200 水素製造装置
12 多重筒型改質器(改質器)
37 温度センサ(温度検出手段)
40 空気供給管(空気供給流路)
44 改質ガス排出管(改質ガス流路)
50 昇圧前水分離部(改質ガス流路)
56 連絡流路管(改質ガス流路)
80 圧縮機(改質ガス流路)
66 連絡流路管(改質ガス流路)
60 昇圧後水分離部(改質ガス流路)
68 連絡流路管(改質ガス流路)
100 分岐管(改質ガス分岐流路)
102 第1開閉弁(切換手段)
104 第2開閉弁(切換手段)
106 制御部
110 オフガス還流管(オフガス流路)
112 オフガスタンク
202 流量検出器(流量検出手段)
204 流量制御弁(空気流量調整弁)
【要約】
【課題】改質器の起動時に所定の水素濃度に達していない改質ガスが水素精製器に供給されることを防止すると共に、装置全体の熱効率を向上させた水素製造装置及び水素製造方法を提供する。
【解決手段】水素製造装置10は、改質器12のおける改質ガスが所定の水素濃度に達していない場合には、第1開閉弁102を閉弁し、第2開閉弁104を開弁することによって、当該改質ガスをオフガスタンク112に供給し、オフガス還流管110を介して改質器12のバーナー26に供給して燃焼室25で燃焼させる。これによって、所定の水素濃度に達していない改質ガスが水素精製器90に供給されて製品水素の純度が低下することが防止とされると共に、燃料ガスとして改質器12のバーナー26に供給されることで、水素製造装置全体の熱効率が向上する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5