特許第6603007号(P6603007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6603007
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】水分散性シート
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/20 20060101AFI20191028BHJP
   D21H 17/26 20060101ALI20191028BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20191028BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20191028BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20191028BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20191028BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20191028BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   D21H11/20
   D21H17/26
   D21H27/00 A
   B41M5/41 200
   B41M5/40 220
   C09J7/21
   C09J7/38
   C09J201/00
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-528791(P2019-528791)
(86)(22)【出願日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2018043941
【審査請求日】2019年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-247603(P2017-247603)
(32)【優先日】2017年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】石野 良明
(72)【発明者】
【氏名】松森 泰明
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−049188(JP,A)
【文献】 特開平11−269201(JP,A)
【文献】 特開2004−314623(JP,A)
【文献】 特開平10−323818(JP,A)
【文献】 特開2000−170100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M5/035
5/26−5/52
C09J1/00−5/10
9/00−201/10
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用繊維及びアルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースから成り、更に、シート中にカルボシキアルキルセルロース塩を含む水分散性シートであって、
該シートの一方の表面上に粘着剤層を有し、
該繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度が0.2〜0.6であり、
該カルボシキアルキルセルロース塩のエーテル化度が0.5〜0.9であり、
該カルボシキアルキルセルロース塩の1重量%水溶液についてブルックフィールド型粘度計で測定した粘度が2〜200mPa・sであり、
該製紙用繊維及び該アルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースの合計に対する該カルボシキアルキルセルロース塩の割合が0.1〜10重量%である水分散性シート。
【請求項2】
前記製紙用繊維のカナダ標準ろ水度が200〜750mlCSFである請求項1に記載の水分散性シート。
【請求項3】
前記粘着層を設けた紙基材の表面とは反対の表面上に感熱記録層を設けた請求項1又は2に記載の水分散性シート。
【請求項4】
前記粘着層を設けた紙基材の表面とは反対の表面上に水系塗料が塗工された請求項1又は2に記載の水分散性シート。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の水分散性シートを製造する方法であって、
(1)製紙用繊維及び繊維状カルボキシアルキルセルロースから成る抄紙原料を抄紙する段階、
(2)(1)段階で得られた抄紙原料にアルカリ化剤及びカルボシキアルキルセルロース塩を同時にサイズプレス方式で塗工する段階、及び
(3)(2)段階で得られた水分散性シートの一方の表面上に粘着層を設ける段階、
ら成る、方法。
【請求項6】
更に、前記水分散性シートの粘着層を設けた表面とは反対の表面上に水系塗料を塗工する段階を含む請求項に記載の方法。
【請求項7】
更に、前記水分散性シートの粘着層を設けた表面とは反対の表面上に感熱記録層を設ける段階を含む請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水分散性が改善された水分散性シートに関し、より詳細には、水分散性が改善され、一面に粘着層や、他面に感熱記録層やインクジェット記録層などの塗工層を設けることのできる水分散性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
水に速やかに分散する水分散紙(又は、水解紙又は水溶性紙ともいう)は、たばこのフィルター巻取り紙、包装用紙、機密文書用紙、水分散性ラベルなどの用途に広く用いられている(特許文献1、2等)。このうち水分散性ラベルは、水分散紙の表面に、印刷や印字ができるように、感熱記録層やインクジェット記録層などの塗工層を設け、裏面に水溶性の粘着層を設けた構成をしており、リターナブル容器などに貼着して使用されている(特許文献3等)。
また、水分散性ラベルなどの水分散紙の用途が広がるにつれて、従来以上の水分散性が要求されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−49188
【特許文献2】特開2000−170100
【特許文献3】特開2004−314623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人による従来の水分散紙(特許文献1、2)を検討したところ、今回の発明と同様に水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース塩)を使用しているが、その目的は水解性基剤の表面を密にして通気性を規制するため(特許文献1[0039])や基紙表面を親水性に変えるため(特許文献2[0017])であり、通常高分子量(したがって、高粘度)のものが使用されており、その水分散性は十分なものではなかった(後述の比較例5)。
そのため、本願発明は、水分散性が更に改善された水分散性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
セルロース繊維(パルプ)に由来するカルボキシアルキルセルロースには、あまり改変せずにその繊維状を保ったままのものと改変を進めて粉状にしたものがある。前者は、繊維状カルボキシアルキルセルロースと呼ばれ、後者は、一般的にカルボキシアルキルセルロースと呼ばれている。本発明においては、後者をカルボキシアルキルセルロース塩と呼び、繊維状カルボキシアルキルセルロースを含まない。両者とも、カルボシキアルキル基が酸型のものは水不溶性であり、塩型のものは水溶性である。一般に、カルボキシアルキルセルロース塩は、水に溶解させて増粘効果や接着効果が期待される用途に用いられ、一方、繊維状カルボキシアルキルセルロースはその繊維形態に由来するパルプに近い性質を持ち、パルプと共に抄紙して水分散紙の製造などに用いられる。
この繊維状のもの(繊維状カルボキシアルキルセルロース)は抄紙のためにエーテル化度を低く保つのが一般である(エーテル化度0.4〜0.5程度)。粉状のもの(上記カルボキシアルキルセルロース塩)は用途によりその分子量(粘度に関連する)やエーテル化度を様々に改変されたものが用いられているが、例えば、従来の水分散紙(特許文献1、2)では通常高分子量(したがって、高粘度)のものが使用され、エーテル化度については十分に検討されていなかった。
【0006】
本願発明においては、製紙用繊維の水分散性を上げるために、かつ抄紙ができるようにエーテル化度が低い繊維状カルボキシアルキルセルロースを製紙用繊維に混合した抄紙原料に、更に、エーテル化度と粘度(低粘度)を最適化したカルボキシアルキルセルロース塩を用いることにより、水分散性シートの水分散性を大幅に改善することができた。
即ち、水分散性シートに、製紙用繊維及びアルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースを含有させ、更に、カルボキシアルキルセルロース塩を含有させ、該繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度を特定範囲とし、該カルボキシアルキルセルロース塩の粘度を特定範囲とし、更に該カルボキシアルキルセルロース塩の含有割合を特定の含有割合とすることにより、水分散性を更に改善させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、製紙用繊維及びアルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースから成り、更に、カルボシキアルキルセルロース塩を含む水分散性シートであって、該繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度が0.2〜0.6であり、該カルボシキアルキルセルロース塩のエーテル化度が0.5〜1.6であり、該カルボシキアルキルセルロース塩の1重量%水溶液についてブルックフィールド型粘度計で測定した粘度が2〜200mPa・sであり、該製紙用繊維及び該アルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースの合計に対する該カルボシキアルキルセルロース塩の割合が0.1〜10重量%である水分散性シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の水分散性シートは、紙基材(以下「基紙」ともいう。)が、製紙用繊維、アルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロース、及びカルボキシアルキルセルロース塩を含む。
【0009】
本発明で用いる製紙用繊維としては、一般に製紙用に用いられている木材パルプ繊維又は非木材系パルプ繊維、例えば、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等の木材パルプ繊維、亜麻パルプ、マニラ麻パルプ、ケナフパルプ等の非木材系パルプ繊維、リヨセル等の精製セルロース繊維等を挙げることができる。製紙用水分散性繊維の平均繊維長としては、0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは0.8〜2mmである。
この製紙用繊維のカナダ標準ろ水度は、好ましくは200〜750mlCSF、より好ましくは350〜720mlCSF、更に好ましくは500〜700mlCSFである。このカナダ標準ろ水度は、JIS P8121−2:2012に従って測定されたものである(以下同様)。
叩解が進む(ろ水度は低くなる)と、繊維のフィブリル化、切断、内部膨潤が多くなり、基紙の密度、強度、平滑度が高くなる一方で、水分散性は低下する。
本発明の基紙中の製紙用繊維の含有量は好ましくは20〜95重量%、より好ましくは30〜90重量%、更に好ましくは40〜80重量%である。
【0010】
本発明で用いる繊維状カルボキシアルキルセルロースは、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維を公知の方法でカルボキシアルキル化したものであり、水不溶性である。この具体例として、繊維状カルボキシメチルセルロース、繊維状カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。
この繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度(以下「DS」ともいう。)は0.2〜0.6、好ましくは0.4〜0.6未満(即ち、0.4以上で0.6未満)である。このエーテル化度は、この繊維状カルボキシアルキルセルロースのカルボキシアルキル基の置換度を指す。エーテル化度が低いと、例えば、0.2より低いと水溶性が良くなく、またエーテル化度が高いと、例えば、0.6より高いと、基紙の抄紙時にワイヤーへの貼り付き等がおこり、生産が困難となる。そのため、本願発明では、このようなエーテル化度の繊維状のカルボキシアルキルセルロースを使用する。
【0011】
本発明において、繊維状カルボシキアルキルセルロースはアルカリ化剤を用いてアルカリ化される。基紙をアルカリ化することにより、基紙中の水不溶性繊維状カルボキシアルキルセルロースは中和反応により水溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロース塩に変換され、基紙は水中で繊維が膨潤、離解し易くなり、水分散性となる。
このアルカリ化剤はアルカリ性化合物の水溶液であり、具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩並びに炭酸水素塩、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア及びアンモニウム塩、エタノールアミン等のアミン類、分子量1000以下のポリエチレンイミン等の水溶液を挙げることができる。
【0012】
このアルカリ化は、基紙の抄紙時にアルカリ化剤を紙料液に混合することにより行ってもよいし、抄紙後に、アルカリ化剤を、噴霧器により噴霧、塗工機を用いて塗工、又はフェルト等に付着させて紙料に転移させるなどして行ってもよく、適宜好適な方法によって行うことができる。
【0013】
本発明の水分散性シート(特に、粘着層を設けた水分散紙)の水分散性を改善するために、本発明で用いるカルボキシアルキルセルロース塩は特定範囲の粘度を有することが好ましい。即ち、カルボキシアルキルセルロース塩の1重量%水溶液についてブルックフィールド型粘度計で測定した粘度は、2〜200mPa・s、好ましくは2〜100mPa・sである。この粘度が高すぎると、水分散性シートの表面に皮膜ができて水の浸透が悪くなるため、水分散性が悪化する。
このカルボキシアルキルセルロース塩はカルボキシアルキルセルロースのカルボシキアルキル基がナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属などによって塩となったものをいう。
【0014】
これらの中で、本発明で用いるカルボキシアルキルセルロース塩として、カルボシキメチルセルロース塩を使用することが水分散性向上、強度向上の点から好ましい。
このカルボキシアルキルセルロース塩のエーテル化度(DS)は、0.5〜1.6、好ましくは0.6〜1.0(即ち、0.6以上で1.0以下)である。カルボシキアルキルセルロース塩のエーテル化度が高いほど、例えば、エーテル化度が0.5〜1.6程度であると、水溶性が良くなる。
本発明においては、繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度は、このカルボキシアルキルセルロース塩のエーテル化度よりも低いことが好ましい。
製紙用繊維及びアルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースの合計に対する該カルボキシアルキルセルロース塩の割合は0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%である。このカルボキシアルキルセルロース塩の割合が多すぎると、水分散性シートの表面に皮膜ができて水の浸透が悪くなるため、水分散性が悪化する。
【0015】
このカルボキシアルキルセルロース塩の添加は、基紙の抄紙時にカルボキシアルキルセルロース塩を紙料液に混合することにより行ってもよいし、抄紙後に、カルボキシアルキルセルロース塩を、塗工機を用いて塗工、又はフェルト等に付着させて紙料に転移させるなどして行ってもよく、適宜好適な方法によって行うことができる。
【0016】
本発明の水分散性シートは以下の方法で製造することができる。
(1)製紙用繊維及び繊維状カルボキシアルキルセルロースから成る抄紙原料を抄紙する段階、並びに
(2)(1)段階で得られた抄紙原料にアルカリ化剤を塗工する段階、及び
(3)(2)段階で得られた抄紙原料にカルボキシアルキルセルロース塩を塗工する段階から成る、又は
(2')(1)段階で得られた抄紙原料にカルボキシアルキルセルロース塩を塗工する段階、及び
(3')(2')段階で得られた抄紙原料にアルカリ化剤を塗工する段階、
から成る、方法。
この(2)段階及び(3)段階、又は前記(2')段階及び(3')段階を同時に行ってもよい。即ち、本発明の水分散性シートは以下の方法で製造することができる。
(1)製紙用繊維及び繊維状カルボキシアルキルセルロースから成る抄紙原料を抄紙する段階、及び
(2'')(1)段階で得られた抄紙原料にアルカリ化剤及びカルボキシアルキルセルロース塩を塗工する段階
から成る、方法。
【0017】
基紙にアルカリ化剤及び/又はカルボキシアルキルセルロース塩を塗工する場合、アルカリ化剤及び/又はカルボキシアルキルセルロース塩は、その水溶液又は該水溶液と相溶性のある水性有機溶媒との混合液として、特に限定されないが、サイズプレスなどの2ロールコーター、トランスファーロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター等の塗工機、好ましくはサイズプレスを用いて塗工される。


【0018】
これらのアルカリ性化合物の塗工量は、基紙中の繊維状カルボシキアルキルセルロースの好ましくは中和当量以上、より好ましくは中和当量の1〜3倍量である。アルカリ性化合物の量が中和当量に満たない場合、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースが残るため、十分な水分散性を得ることが困難となる上、経時でカルボキシアルキルセルロース同士が結合し溶解性が大きく低下する。また、アルカリ性化合物の量が中和当量の3倍を越えると、基紙中に残留するアルカリ性化合物の影響で、基紙の変色、強度低下等の外観、材質変化が起こるため好ましくない。
【0019】
基紙中のアルカリ性化合物の含有率は、基紙の坪量、繊維状カルボキシアルキルセルロースの置換度及び配合率、使用するアルカリ性化合物の種類等により異なるため適宜調整することが望ましい。なお、一例を挙げると、アルカリ性化合物が炭酸ナトリウムの場合、アルカリ性化合物の含有率は、基紙重量に対して0.3〜67重量%、水酸化ナトリウムの場合は基紙重量に対して0.2〜51重量%である。
【0020】
本発明の基紙の坪量は、通常10〜200g/mであり、特に、印刷・印字用の塗工紙の基紙としては通常50g/m以上、好ましくは50〜120g/mの範囲にあるものが適している。
【0021】
本発明の水分散性シートは、その片面に粘着剤層を有してもよい。
この粘着剤層を構成する粘着剤としては、水溶性又は水再分散性を有する粘着剤、特に水溶性アクリル系粘着剤が好適に用いられる。
水溶性アクリル系粘着剤の例としては、アクリル酸アルコキシアルキルとスチレンスルホン酸塩と他の共重合性単量体とからなる共重合体や、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体と水酸基含有単量体と場合により用いられる共重合可能な他の単量体との共重合体をベースポリマーとして含有するものなどを挙げることができる。また、水再分散性アクリル系粘着剤の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有ビニル系単量体とアルコキシ基を有するビニル系単量体と場合により用いられる共重合可能な他の単量体との共重合体や、カルボキシル化ロジンエステル含有ビニル系単量体とカルボキシル基含有ビニル系単量体と水溶性ビニル系単量体が共重合されてなる共重合体をベースポリマーとして含有するものなどを挙げることができる。なお、これらの共重合体のカルボキシル基は、必要に応じ一部又は全部がアルカリにより中和された塩型であってもよく、このアルカリとして、アルカリ金属塩、アミン塩、アルカノールアミン塩が好適に用いられる。
【0022】
この水溶性アクリル系粘着剤には、粘着力や水溶性又は水分散性の調整のために架橋剤を配合することができる。このような架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、1,2−エチレンジイソシアネートのようなイソシアネート系架橋剤、ジグリシジルエーテル類のようなエポキシ系架橋剤をはじめ、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。また、前記アクリル系粘着剤には、必要に応じ性状を調整し、性能を高めるために、従来公知の可塑剤、粘着性付与剤、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、防黴剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。ここで、可塑剤、粘着性付与剤は水溶性又は水分散性のものが好ましく、可塑剤としては、例えば、糖アルコールなどの多価アルコール、ポリエーテルポリオール、酸化ロジンのアルカノールアミン塩などが挙げられ、粘着付与剤としては、例えば、ロジン、不均化ロジン、水添ロジンなどのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩、ポリエーテルエステルなどが挙げられる。
【0023】
これらの粘着剤は、基紙のアルカリ化剤及び/又はカルボキシアルキルセルロース塩塗工面に直接塗布して粘着剤層を設けてもよいし、剥離シートの剥離剤表面上に粘着剤を塗布して粘着剤層を設けたのち、これを基紙のアルカリ化剤及び/又はカルボキシアルキルセルロース塩塗工面に貼着し、該粘着剤層を転写してもよい。何れの場合も、粘着剤層は使用時以外での不要な粘着を防ぐために剥離シートを貼合し、所望により剥がして使用してもよい。基紙に設けられる粘着剤層の塗工量は固形分として3〜60g/m、好ましくは10〜50g/m程度である。粘着剤塗工量が5g/m未満では、得られる粘着シートの接着性能が不足し、一方、60g/mを越えると粘着シートの製造時や後加工工程で粘着剤がはみ出し易くなり好ましくない。
【0024】
上記剥離シートとして特に制限はなく、従来公知のもの、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの各種プラスチックフィルムの片面若しくは両面に、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この剥離シートの坪量については特に制限はないが、通常20〜120g/m程度である。
また、粘着剤の塗布を印刷方式で行い、エッジ部分等を除いてパターン状に塗布してもよく、この場合に用いる剥離シートも粘着剤の塗布パターンに対応して剥離剤を部分塗布することもできる。更に、本発明の水分散性シートの片面に、点状や矩形状の非連続パターンで剥離剤を部分塗布し、一方、剥離剤を塗布した面の反対面に剥離剤と対応するパターンで粘着剤を部分塗布し、粘着剤部分塗布面と剥離剤部分塗布面とを重ね合わせることにより、剥離シートが不要の粘着シートを形成することもできる。
【0025】
本発明の水分散性シートの粘着層を設けた表面とは反対の表面上に、用途に応じて、水系塗料塗工層、感熱記録層やインクジェット記録層などの任意の塗工層を設けてもよい。
本発明における塗工層は、水系塗料を塗工・乾燥して形成された層であれば単層、多層でも良く、塗工方式などに制限はない。また、印刷方式(オフセット印刷、グラビア印刷など)あるいは印字方式(インクジェットプリンター、感熱プリンター、レーザービームプリンターなど)に適した塗工層の構成材料を適宜選択することができる。
以下に、感熱プリンター、インクジェットプリンター、グラビア印刷に適応した塗工層の例を示す。
【0026】
(I)感熱プリンターに適応した塗工層(感熱記録層)の例:
本発明の水分散性シートを感熱プリンターによる印字に適応させる場合、上記水分散性シートの粘着層を設けた表面とは反対の表面上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう。)及び電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう。)とを主成分として含有する感熱記録層を塗設する。また、基紙と感熱記録層との間に、顔料及びバインダーを主成分として含有するアンダーコート塗工層を設けてもよい。上記基紙は繊維状カルボキシアルキルセルロースが含有されているポーラスな層(断熱効果の高い)を有しているため、カス付着性、スティッキング性が改善される。
アンダーコート層を塗設する基紙表面の平滑性は特に限定されないが、一般的には高平滑な表面が好まれ、ヤンキードライヤー接触面、カレンダリング処理面が好適に用いられる。
アンダーコート層は、感熱記録体において、基紙表面の平滑性を高めて画像のシャープネスと高感度を達成するために塗設されるもので、公知の顔料、バインダー、各種添加剤を適宜選択して用いることができる。また、アンダーコート層を塗設しない場合、アルカリ化剤及び/又はカルボキシアルキルセルロース塩を含有した基紙と感熱記録層が直に接して、発色感度が低下する可能性があるため、アンダーコート層を塗設することが好ましい。
【0027】
アンダーコート層の顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、などの無機顔料、又はメラミン樹脂顔料、尿素−ホルマリン樹脂顔料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダーなどの有機顔料が挙げられる。
アンダーコート層のバインダーとしては水溶性樹脂又は水分散性樹脂が好ましく、具体的にはデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、ポリアクリル酸ソーダ等が挙げられる。これらの中でも水分散性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンをバインダーの主成分として使用することが望ましい。
アンダーコート層のバインダーは、通常、顔料100重量部に対して固形分で5〜100重量部である。
【0028】
アンダーコート層には、顔料及びバインダーのほか、慣用的に使用される各種添加剤を併用できる。各種添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、サイズ剤、増感剤、蛍光染料、防腐剤等が挙げられる。
アンダーコート層は、前記顔料及びバインダーにその他の添加剤を分散混合して得られる塗料を、塗工機によって一層あるいは多層に分けて塗工し、ドライヤー等で加熱乾燥することによって得られる。
アンダーコート層の塗工量は、固形分として通常0.5〜50g/m、好ましくは3〜15g/mである。塗工機としては、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター等が挙げられる。
【0029】
本発明で設けられる感熱記録層において、公知のロイコ染料を単独又は2種以上混合して使用することができ、特にトリフェニルメタン系、フルオラン系、フエノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。
ロイコ染料の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3'−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N,n−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6'−クロロ−8'−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6'−ブロモ−3'−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−クロルフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−ニトロフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジエチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−メチルフェニル)フタリド、3−(2'−メトキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−ヒドロキシ−4'−クロル−5'−メチルフェニル)フタリド、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、
【0030】
3−ピロリジノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3')−6'−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4'−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4',5'−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソプロピル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン等である。
【0031】
本発明の水分散性シートは使用後に排水溝ヘ洗い流される用途として使用される可能性もあることから、環境面を考慮し、これらの中でもより安全性の高いロイコ染料として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−4−メチルフェニルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−メチルアニリノ)フルオラン、3,3'−ビス(ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチル−インドール−3−イル)フタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン等が好ましく使用される。
【0032】
感熱記録層にロイコ染料とともに含有される顕色剤としては、フェノール類、有機酸又は無機酸あるいはそれらエステルや塩などを使用することができる。具体例としては、没食子酸、サリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、1,1'−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4'−イソプロピリンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4'−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4'−sec−ブチリデンジフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−キシレノール、チモール、メチル−4−ヒドエロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2'−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2'−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−クロロジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、
【0033】
2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4−ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3−オキサペンタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ−4'−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−sec−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−tert−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−フェノキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−(m−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−(p−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−(o−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−(p−クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホン等である。
【0034】
本発明の水分散性シートは使用後に排水溝ヘ洗い流される用途として使用される可能性もあることから、環境面を考慮し、これらの中でもより安全性の高い顕色剤として、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、パラヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ−4'−プロポキシジフェニルスルホン、3−{[(フェニルアミノ)カルボニル]アミノ}ベンゼンスルホンアミド、N−(4'−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−2−ヒドロキシアニリン、N−(4'−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−4−ヒドロキシアニリンとN−(4'−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−2−ヒドロキシアニリンとの1:1混合物、4,4'−ビス(3−(フェノキシカルボニルアミノ)メチルフェニルウレイド)ジフェニルスルホン、2,2'−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホン)フェノキシ〕ジフェニルエーテルを含有する顕色剤組成物等が好ましく使用される。
【0035】
感熱記録層には公知のバインダーを使用することができる。具体例としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、デンプン類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、エチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラールポリスチロール及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等の水分散性樹脂を例示することができる。これらは水、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することも出来る。これらの中でも水分散性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール類、変性ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドンをバインダーの主成分として使用することが望ましい。
【0036】
感熱記録層には、前記ロイコ染料、顕色剤及びバインダーと共に、必要に応じ、補助添加成分、例えば、増感剤、顔料、p−ニトロ安息香酸金属塩(Ca、Zn)又はフタル酸モノベンジルエステル金属塩(Ca、Zn)等の安定剤、脂肪酸金属塩などの離型剤、ワックス類などの滑剤、圧力発色防止剤、ベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、グリオキザールなどの耐水化剤、分散剤、消泡剤等を併用することができる。
【0037】
熱応答性を向上させる増感剤としては熱可融性物質が用いられ、50〜200℃程度の融点を持つ熱可融性有機化合物等を使用することができる。具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、2,2'−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α'−ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(4−クロルベンジル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類、モンタン系ワックス、ポリエチレンワックス、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−α−ナフチルカーボネート、1,4−ジエトキシナフタリン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、ジフェニルスルホン、パラフェニルアセトフェノン、β−ベンジルオキシナフタレン、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、o−キシレリン−ビス−(フェニルエーテル)、4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル等が列挙される。
【0038】
本発明の水分散性シートは使用後に排水溝ヘ洗い流される用途として使用される可能性もあることから、環境面を考慮し、これらの中でもより安全性の高い増感剤として、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、シュウ酸ジ(4−クロルベンジル)、4−ベンジルビフェニル、1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、ジフェニルスルホン、β−ベンジルオキシナフタレン、パラフェニルアセトフェノン、1,2−ビス−(3−メチルフェノキシ)エタン等が好ましく使用される。
【0039】
顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、などの無機填料又はメラミン樹脂顔料、尿素−ホルマリン樹脂顔料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダーなどの有機顔料が挙げられる。
【0040】
顕色剤、ロイコ染料、増感剤の量、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常ロイコ染料1重量部に対して、顕色剤0.5〜10重量部、増感剤0.5〜10重量部を使用し、バインダーは全固形分中5〜50重量%が適当である。
前述の有機顕色剤、ロイコ染料並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグラインダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダー及び目的に応じて各種の添加材料を加えて塗料とする。
感熱記録層の形成方法については特に限定されず、例えば、平版等の各種印刷方式をはじめ、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工等の方法によって塗料を基紙上に塗工乾燥する方法で形成される。また、感熱記録層の塗工量については、固形分として通常2〜12g/m、好ましくは3〜10g/m程度の範囲である。
【0041】
また、任意に、感熱記録層上に保護層を塗設することによって、サーマルヘッド等のマッチング性や記録画像保存性を向上させることができる。
保護層に用いるバインダーは前記感熱記録層のバインダーと同種のものが使用できる。具体例としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、デンプン類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、エチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラールポリスチロール及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等の水分散性樹脂を例示することができる。これらは水、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することも出来る。これらの中でも水分散性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール類、変性ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドンをバインダーの主成分として使用することが望ましい。
【0042】
保護層に用いられる各種添加剤としては、顔料、界面活性剤、滑剤、圧力発色防止剤等が挙げられる。この場合、顔料及び滑剤の具体例としては、前記感熱記録層において例示されたものと同様のものが挙げられる。
保護層は、前記バインダーに各種添加剤を分散混合して得られる塗料を、塗工機によって一層あるいは多層に分けて塗工し、ドライヤーで加熱乾燥することによって得られる。
保護層の塗工量は、固形分として通常0.2〜10g/m、好ましくは0.5〜5g/mである。塗工機としては、特に限定されるものではなく、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター等の公知の塗工機を使用することができ、特に制限されることはない。
【0043】
本発明において、画像のシャープネス及び感度の向上を目的に、カレンダー、スーパーカレンダー、ソフトニップカレンダー等の平滑化装置を用いて、本発明の水分散性シートの感熱記録層側の表面平滑性を高めることは好ましい。感熱記録層側表面のベック平滑度は50〜2000sにすることが好ましく、より好ましくは100〜2000sである。ベック平滑度が50sに満たない場合は、画像のシャープネス及び感度の向上効果が乏しい。また、ベック平滑度が2000sを越えると、基紙の密度向上による水分散性の低下が目立つようになり好ましくない。
【0044】
(II)インクジェットプリンターに適応した塗工層(インクジェット記録層)の例:
本発明の水分散性シートをインクジェットプリンターの印字に適応させる場合、水分散性シートの粘着層を設けた表面とは反対の表面層上に顔料及び水系バインダーを主成分としたピグメントコート層、あるいはカチオン性樹脂及び/又は水系バインダーを主成分としたクリアーコート層を設けることが好ましく、顔料、バインダー、各種添加剤は公知のものを適宜選択して用いることができ、配合量は要求される品質により適宜調整することができる。また、上記水分散性シートは繊維状カルボキシアルキルセルロースが含有されているポーラスな層(インク吸収性の高い層)を有しているため、インク吸収性が向上する。
【0045】
顔料としては、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム複合シリカなどの無機顔料、又はメラミン樹脂顔料、尿素−ホルマリン樹脂顔料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー、スチレン、スチレン−アクリル、アクリルなどの有機顔料が挙げられる。中でも、インク吸収性及び発色性の点から、シリカ、アルミナ、焼成カオリン、炭酸カルシウムなどを用いることが好ましい。
【0046】
バインダーとしては水溶性樹脂又は水分散性樹脂が好ましく、具体的にはデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸ソーダ、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。中でもインク吸収性及び発色性の点から、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどを用いることが好ましい。
【0047】
各種添加剤としては、カチオン性樹脂(染料定着剤)、顔料分散剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、サイズ剤、蛍光染料、防腐剤等が挙げられる。中でも、カチオン性樹脂は画像部の耐水性及び発色性を著しく向上させるため、併用することは望ましい。
塗工機としては、特に限定されるものではなく、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター、2ロールコーター、トランスファーロールコーター等が使用される。
【0048】
(III)グラビア印刷に適応した塗工層の例:
本発明の水分散性シートをグラビア印刷に適応させる場合、水分散性シートの粘着層を設けた表面とは反対の表面層上に顔料及び水系バインダーを主成分としたピグメントコート層、あるいは水系バインダーを主成分としたクリアーコート層を設けることが好ましく、顔料、バインダー、各種添加剤は公知のものを適宜選択して用いることができる。また、上記基紙は繊維状カルボキシアルキルセルロースが含有されているポーラスな層(クッション性の高い層)を有しているため、インキ着肉性が向上する。
【0049】
顔料としては、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム複合シリカなどの無機顔料、又はメラミン樹脂顔料、尿素−ホルマリン樹脂顔料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー、スチレン、スチレン−アクリル、アクリルなどの有機顔料が挙げられる。
【0050】
バインダーとしては水溶性樹脂又は水分散性樹脂が好ましく、具体的にはデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸ソーダ、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも水分散性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンをバインダーとして含有させることが望ましい。
【0051】
各種添加剤としては、カチオン性樹脂(印刷適性向上剤)、顔料分散剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、サイズ剤、蛍光染料、防腐剤等が挙げられる。
塗工機としては、特に限定されるものではなく、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター、2ロールコーター、トランスファーロールコーター等が使用される。
【0052】
このようにして得られる本発明の水分散性シートは、コンテナやリターナブル容器などの被着体に貼付された後、水で洗い流すのみで、被着体から容易に取り除くことができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。実施例1
製紙用パルプとして針葉樹晒クラフトパルプをカナダ標準ろ水度550mlCSFまで叩解したもの80重量%と、繊維状カルボキシメチルセルロース(以下「繊維状CMC」ともいう。エーテル化度0.43)20重量%を配合した抄紙原料を用いて単層シートの手抄き紙(坪量:54g/m)(以下「パルプシート」ともいう。)を作製した。この手抄き紙に、アルカリ化剤として炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製ソーダ灰ライト)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末(以下「CMC−Na塩」ともいう。商品名サンローズ、日本製紙(株)製、エーテル化度0.7、20℃における1重量%水溶液の粘度が3mPa・s)を溶解した水溶液を手抄き紙に対して炭酸ナトリウムが8.0重量%(付着量:4.3g/m)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が3.1重量%(付着量:1.7g/m)となるようにサイズプレス方式で塗工して水分散性シートを作製した。
【0054】
実施例2
配合する針葉樹晒クラフトパルプをカナダ標準ろ水度650mlCSFまで叩解したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
実施例3
配合する針葉樹晒クラフトパルプをカナダ標準ろ水度450mlCSFまで叩解したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
実施例4
炭酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末(商品名サンローズ、日本製紙(株)製、エーテル化度0.9、20℃における1重量%水溶液の粘度が28mPa・s)を溶解した水溶液を手抄き紙に対して炭酸ナトリウムが8.0重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が3.1重量%となるようにサイズプレス方式で塗工したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
【0055】
実施例5
炭酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末(商品名サンローズ、日本製紙(株)製、エーテル化度0.7、20℃における1重量%水溶液の粘度が170mPa・s)を溶解した水溶液を手抄き紙に対して炭酸ナトリウムが8.0重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が3.1重量%となるようにサイズプレス方式で塗工したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
実施例6
炭酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末を溶解した水溶液を手抄き紙に対して炭酸ナトリウムが9.3重量%(付着量:5.0g/m)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が1.9重量%(付着量:1.0g/m)となるようにサイズプレス方式で塗工したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
実施例7
針葉樹晒クラフトパルプを50重量%と、繊維状カルボキシメチルセルロース(エーテル化度0.43)50重量%を配合した抄紙原料を用いて単層シートの手抄き紙(坪量:54g/m)を作製したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
【0056】
実施例8
針葉樹晒クラフトパルプをカナダ標準ろ水度250mlCSFまで叩解したもの70重量%と、繊維状カルボキシメチルセルロース(エーテル化度0.43)30重量%を配合した抄紙原料を用いて単層シートの手抄き紙(坪量:54g/m)を作製した。この手抄き紙に、炭酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末を溶解した水溶液を手抄き紙に対して炭酸ナトリウムが10.5重量%(付着量:5.5g/m)、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が4.2重量%(付着量:2.2g/m)となるようにサイズプレス方式で塗工すること以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
実施例9
針葉樹晒クラフトパルプをカナダ標準ろ水度650mlCSFまで叩解したもの95重量%と、繊維状カルボキシメチルセルロース(エーテル化度0.43)5重量%を配合した抄紙原料を用いて単層シートの手抄き紙(坪量:54g/m)を作製したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
【0057】
実施例10
下記配合の粘着剤を調製し、この粘着剤をシリコーン剥離剤を塗布した市販の剥離シートの剥離処理面に固形分として25g/m塗布して乾燥し、粘着剤層を設けた剥離シートを作成した。
<粘着剤>
水溶性アクリル系粘着剤(ビッグテクノス(株)製、商品名「リキダイン
AR−2410」、固形分濃度42重量%) 100重量部
硬化剤(ビッグテクノス(株)製、商品名「サンパスタHD−
5013」) 0.1重量部
実施例1で作製した水分散性シートと、この粘着剤層を設けた剥離シートの粘着剤層とを貼り合せて水分散性シートを作製した。
【0058】
実施例11
下記配合の顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)および増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径1.0μmになるまで湿式磨砕を行った。
顕色剤分散液(A液)
4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン(日本曹達
株式会社製D8) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:PVA
117、固形分10%) 18.8部
水 11.2部
ロイコ染料分散液(B液)
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本
化成社製、ODB−2) 2.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 4.6部
水 2.6部
【0059】
増感剤分散液(C液)
4−ビフェニル−p−トリルエーテル(日華化学株式会社製) 4.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 3.0部
次いで、下記の割合で各分散液を混合して感熱記録層用塗料を調製した。
<感熱記録層用塗料>
顕色剤分散液(A液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 9.2部
増感剤分散液(C液) 12.0部
実施例1で作製した水分散性シートの一面に、上記の要領で調整した感熱記録層塗料を固形分として6g/mになるように塗工し、乾燥(50℃)させて感熱記録層を形成し、ベック平滑度が500〜1000秒となるように平滑化処理を行って、水分散性シートを作製した。
【0060】
実施例12
実施例1で作製した水分散性シートの一面に、実施例11と同様にして感熱記録層塗料を塗工して感熱記録層を形成し、このシートの他面と、実施例10と同様に用意した粘着剤層を設けた剥離シートの粘着剤層とを貼り合せて水分散性シートを作製した。
【0061】
比較例1
実施例1において手抄き紙に対するサイズプレス塗工に用いた水溶液からCMC−Na塩を除いたこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
比較例2
実施例1において手抄き紙に対するサイズプレス塗工に用いた水溶液からアルカリ化剤(炭酸ナトリウム)を除いたこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
比較例3
実施例1において抄紙原料に繊維状CMCを用いないで手抄き紙を作製したこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
【0062】
比較例4
実施例1においてCMC−Na塩として、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末(商品名サンローズ、日本製紙(株)製、エーテル化度0.25、20℃における1重量%水溶液の粘度が75mPa・s)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
比較例5
実施例1においてCMC−Na塩として、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩粉末(商品名サンローズ、日本製紙(株)製、エーテル化度0.7、20℃における1重量%水溶液の粘度が550mPa・s)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
【0063】
比較例6
実施例1においてパルプシートに対するCMC−Na塩の使用量を18.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして水分散性シートを作製した。
比較例7
実施例12において手抄き紙に対するサイズプレス塗工に用いた水溶液からCMC−Na塩を除いたこと以外は、実施例12と同様にして水分散性シートを作製した。
【0064】
作製した水分散性シートについて、下記評価を行った。なお、水分散性試験時には剥離シートを剥がした上で、評価を行った。
【0065】
1)水分散性
23℃、50%RHの雰囲気で24時間以上保管した水分散性シート試料から3cm角の試験片5枚を作製した。次に300mlビーカーに脱イオン水300mlを入れてスターラーで650rpmに撹拌しながら上記試験片1枚を投入した。試験片が完全に繊維一本一本にほぐれ、繊維状になる時間をストップウォッチで求め、5回の測定の平均値を水分散時間(秒)とした。なお、水分散時間が短いほど水分散性は優れている。
2)引張試験
23℃、50%RHの雰囲気で24時間以上保管した水分散性シート試料について、JIS P8113に準拠して測定した。
3)通気度
フィルトローナー社製の通気度手動測定器(形式、PPM100型)を用いて、差圧100mmHOの時、試料の1cmを1分間に通過する空気の容積を測定した。
【0066】
作製した水分散性シートの構成と評価結果を表1に示す。
【表1】
【0067】
この表から、特定のアルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースと特定のカルボキシアルキルセルロースナトリウム塩の2種類の化合物を用いることにより、水分散性が更に改善された水分散性シートが得られることが分かる。
また、高粘度のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いると(比較例5)、通気性が抑制される一方で、水分散性も悪化し、本願発明の目的には沿わない。
【要約】
本発明は、水分散性が更に改善された水分散性シートを提供することを目的とする。本発明の水分散性シートは、製紙用繊維及びアルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースから成り、更に、カルボシキアルキルセルロース塩を含む水分散性シートであって、該繊維状カルボキシアルキルセルロースのエーテル化度が0.2〜0.6であり、該カルボシキアルキルセルロース塩のエーテル化度が0.5〜1.6であり、該カルボシキアルキルセルロース塩の1重量%水溶液についてブルックフィールド型粘度計で測定した粘度が2〜200mPa・sであり、該製紙用繊維及び該アルカリ化された繊維状カルボキシアルキルセルロースの合計に対する該カルボシキアルキルセルロース塩の割合が0.1〜10重量%のものである。