(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伸縮性を有する糸で編成された、ウエスト部から股までの腹部および背側を被覆するパンティ部と、膝上までの脚部を被覆するレッグ部を有する下半身用のインナー・ウェアであり、
伸縮性を有するベース領域と伸縮性が前記ベース領域の伸縮性よりも小さい低伸縮性領域を有し、該インナー・ウェアにおけるウエスト部、三角形状腹部および2つのテーピング状部が前記低伸縮性領域であり、前記三角形状腹部はウエスト部の下辺を底辺とする逆三角形状であり、前記テーピング状部はウエスト部の下辺の左右脇部から下方に延び、背側を通って股下で内腿側に廻り込み、内腿に沿ってレッグ部の下端部まで達しており、前記低伸縮性領域以外の部分が前記ベース領域であることを特徴とするインナー・ウェア。
前記低伸縮性領域が、地糸と添糸とによる添糸編と、地糸による平編とタック編とからなり、前記三角形状腹部およびテーピング状部においては添糸編における添糸がカットボス編により、三角形状腹部またはテーピング状部とベース領域との境界で切断された状態で三角形状腹部およびテーピング状部に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のインナー・ウェア。
前記三角形状腹部または前記テーピング状部には合成樹脂またはゴムによる被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインナー・ウェア。
【背景技術】
【0002】
従来、身体に密着して着用する下半身用インナー・ウェアとしてはガードルがよく知られており、一般にガードルは腹部、臀部、大腿部等を押え付けて、腹部を引っ込ませたり、ヒップを持ち上げて臀部に丸みを持たせたりと、体型補正を目的として利用されている。
【0003】
また、特開2001−192903号公報(特許文献1)に開示されているように、身体に密着して着用され、身体の筋肉に緊締力を付与して、緊締力により筋肉をサポートし、筋肉の疲労の軽減やスポーツ障害の防止を目的とするインナー・ウェアも知られている。
【0004】
特開2012−158852号公報(特許文献2)には、臀部と大腿部背面に伸長抑制領域を設けたボトム衣類が開示されている。このボトム衣類を着用することで、歩行や階段昇降等の動作に対して伸長抑制領域が負荷を与え、これにより歩行時等により消費されるカロリーを増加させることができると開示されている。
【0005】
特許第4568134号公報(特許文献3)には、身体の骨格を動かす筋肉を外側から覆う布地が、筋肉の筋繊維に沿った方向の伸縮性よりも筋繊維を横切る方向の伸縮性を低くして構成されている痩身用パンツが開示されている。この痩身用パンツを着用した状態でユーザが運動すると、筋肉が収縮する際に、筋肉に負荷が加わることになり、これにより、エネルギーの消費が促進され、効果的な痩身を行うことができると開示されている。
【0006】
特許第5526409号公報(特許文献4)には、着用者のジャコビー線に対応する部分に沿い、パンティ部の左右の外側面にある着用者の大転子部に対応する部分をそれぞれ通り、左右の太ももの後面をそれぞれ経由して、着用者の左右の太ももの内側上顆部に対応する部分にそれぞれ延在する第1の強伸縮部と、パンティ部の左右の外側面にある着用者の腸骨稜に対応する部分から、パンティ部の着用者の臍点に対応する部分の下方で交差し、左右の太ももの前面をそれぞれ経由して、左右の太ももの外側面にある着用者の外側上顆部に対応する部分までそれぞれ延在する第2の強伸縮部と、着用者の臀溝に対応する部分に沿い、左右の太ももの外側面及び前面をそれぞれ経由して、左右の太ももの内側面にある前記内側上顆部に対応する部分にそれぞれ延在する第3の強伸縮部と、を有し、第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の伸縮抵抗が、ベース生地の伸縮抵抗と比較して大きいインナー・ウェアが開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、第1の強伸縮部は太ももの後面において、太もも外側面から内側面にかけて張架されることにより、着用者による踏み出しやもも上げの際に運動方向に対して抵抗になること、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部は、太もも21の前面において、交差して張架されることにより、着用者による蹴り出しの際に運動方向に対して抵抗になること、第3の強伸縮部は、着用者の臀溝に沿って配設されることにより、ヒップアップの補整効果を具備することが開示されている。
【0008】
更に、特許文献4には、特に、第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の延在方向(流れ)については、着用者の脚の動きに対して大きな寸法変化が生じるように配設しており、第1の強伸縮部、第2の強伸縮部及び第3の強伸縮部の伸長抵抗が、着用者のエネルギー消費量を増加させることを意図していることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2〜4に開示されているように、痩身やメタボリックシンドロームの対策として、身体に密着し、運動方向に伸び難い部分を有するインナー・ウェアを着用して運動を行い、運動時にインナー・ウェアにより負荷を加えることにより着用者のエネルギー消費量を増加させることが提案されている。
【0011】
しかし、このようなインナー・ウェアを着用しても、軽度の運動では余り効果がでにくい。また、充分に運動を行って効果が出た場合でも、痩せやすい部位から痩せてゆき、痩せ難い部位はなかなか痩せない(皮下脂肪が落ちない)という問題がある。
【0012】
特に、女性の場合、内腿,臀部下端,下腹部(臍の下の腹部)に皮下脂肪が付きやすく、これらの部位は運動しても筋肉が余り動かず、いったん皮下脂肪が付くと、皮下脂肪が落ち難いという問題がある。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を解消し、着用した状態で軽度の運動を行うことにより、皮下脂肪を燃焼させることが可能なインナー・ウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、伸縮性を有する糸で編成された、ウエスト部から股までの腹部および背側を被覆するパンティ部と、膝上までの脚部を被覆するレッグ部を有する下半身用のインナー・ウェアであり、伸縮性を有するベース領域と伸縮性が前記ベース領域の伸縮性よりも小さい低伸縮性領域を有し、該インナー・ウェアにおけるウエスト部、三角形状腹部および2つのテーピング状部が前記低伸縮性領域であり、前記三角形状腹部はウエスト部の下辺を底辺とする逆三角形状であり、前記テーピング状部はウエスト部の下辺の左右脇部から下方に延び、背側を通って股下で内腿側に廻り込み、内腿に沿ってレッグ部の下端部まで達して
おり、前記低伸縮性領域以外の部分が前記ベース領域であることを特徴とするインナー・ウェアにより前記目的を達成する。
【0015】
本発明において、前記低伸縮性領域が、地糸と添糸とによる添糸編と、地糸による平編とタック編とからなり、前記三角形状腹部およびテーピング状部においては添糸編における添糸がカットボス編により、三角形状腹部またはテーピング状部とベース領域との境界で切断された状態で三角形状腹部およびテーピング状部に挿入されていることが好ましい。
【0016】
また、前記添糸が鞘糸と該鞘糸よりも太い芯糸とからなることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記三角形状腹部または前記テーピング状部には合成樹脂またはゴムによる被覆層が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の下半身用のインナー・ウェアは、伸縮性を有する糸で編成されているので、身体に密着するものである。本発明のインナー・ウェアは伸縮性を有するベース領域と伸縮性が前記ベース領域の伸縮性よりも小さい低伸縮性領域を有する。ベース領域は小さな力でも伸び易く、低伸縮性領域はベース領域よりも伸び難く、伸ばすためにはより大きな力(すなわち、パワー)を必要とする。すなわち、本発明のインナー・ウェアを着用している状態では、低伸縮性領域はベース領域よりも身体により強く密着する(すなわち、加圧する)。
【0019】
本発明によれば、インナー・ウェアにおけるウエスト部、三角形状腹部および2つのテーピング状部を前記低伸縮性領域としており、前記三角形状腹部はウエスト部の下辺を底辺とする逆三角形状であり、前記テーピング状部はウエスト部の下辺の左右脇部から下方に延び、背側を通って股下で内腿側に廻り込み、内腿に沿ってレッグ部の下端部まで達している。すなわち、低伸縮性領域である三角形状腹部とテーピング状部はウエスト部に繋がっている。このため、骨盤が動くと、連動してウエスト部、三角形状腹部および2つのテーピング状部が動き、これらの低伸縮性領域が密着している身体の筋肉や皮下脂肪を動かす。このように、皮下脂肪を動かすことにより、皮下脂肪の燃焼(エネルギー消費)を行なわせることができる。
【0020】
本発明によれば、インナー・ウェアの2つのテーピング状部がウエスト部の下辺の左右脇部から下方に延び、背側を通って股下で内腿側に廻り込み、内腿に沿ってレッグ部の下端部まで達するように配置されているので、着用者の内腿と臀部下端部の皮下脂肪と筋肉に働きかける。また、インナー・ウェアの三角形状腹部が着用者の下腹部に作用する。
【0021】
一方、着用者の臀部および大腿の前側および外側に対応するインナー・ウェアの部分は伸縮し易いベース領域としているので、臀部の筋肉および大腿の前側および外側の筋肉の動きが妨げられず、運動を行い易い。
【0022】
本発明のインナー・ウェアを着用することにより、ウォーキングや自転車こぎ等の軽度の運動でも、皮下脂肪がついて重い体部位(内腿、臀部下端部および下腹部)を骨盤の動きに連動して動かして、従来はなかなか落ちなかった皮下脂肪を燃焼させることができる。
【0023】
本発明において、前記低伸縮性領域を、地糸と添糸とによる添糸編と、地糸による平編とタック編として、前記テーピング状部においては添糸編における添糸がカットボス編によりテーピング状部とベース領域との境界で切断された状態でテーピング状部に挿入することにより、ウェール方向(編組織の縦方向)にもコース方向(編組織の横方向)にも伸縮性を低くすることができる。
【0024】
添糸として鞘糸とこの鞘糸よりも太い芯糸とから糸を使用すると、より伸縮性を低くすることができる。
【0025】
また、三角形状腹部または前記テーピング状部には合成樹脂またはゴムによる被覆層を形成すると、伸縮性をより一層低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に示した実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0028】
図1および
図2に示すように、本発明のインナー・ウェアは伸縮性を有する糸で編成され、ウエスト部1から股2までの腹部3および背側を被覆するパンティ部Pと、膝上までの脚部を被覆するレッグ部Lを有する下半身用のインナー・ウェアである。図示した実施例は5分丈のパンツである。
【0029】
本発明のインナー・ウェアは、伸縮性を有するベース領域(
図1〜
図3では白地で示した)と、伸縮性が前記ベース領域の伸縮性よりも小さい低伸縮性領域(
図1〜
図3では斜線を施して示した)を有している。インナー・ウェアにおけるウエスト部1、三角形状腹部3aおよび2つのテーピング状部4が低伸縮性領域である。ベース領域は低伸縮性領域以外の部分であり、腹部3の白地部分(腹部ベース領域)、臀部ベース領域6および脚部ベース領域7である。
【0030】
三角形状腹部3aはウエスト部1の下辺1aを底辺とする逆三角形状であり、逆三角形状の頂点は股2より上方(好ましくは2〜7cm上方)として、インナー・ウェアを着用した際に三角形状腹部3aが鼠径部を圧迫しないようにすることが好ましい。
【0031】
テーピング状部4はウエスト部1の下辺1aの左右脇部から下方に延び、背側を通って股下2で内腿側に廻り込み、着用者の内腿に対応する部分に沿ってレッグ部Lの下端部5まで達している。好ましくは、本発明のインナー・ウェアを着用した状態で、テーピング状部4は、ウエスト部1の脇部から着用者の腸骨稜を避けながら背側へ回り込み、大臀筋を覆わないように避けながら、内腿へと向かい、大腿部内側の内側広筋・縫工筋の筋腹と、一部の半膜様筋・半腱様筋の停止腱を覆う。
【0032】
また、テーピング状部4の幅は、ウエスト部1の下辺1aからレッグ部Lの下端部5まで同じ幅でもよいが、ウエスト部1の下辺1aにおける幅から股2により少し上の高さまで同じ幅で(或いは、幅をやや狭めながら)延び、そこから幅を広げて内腿に沿ってレッグ部Lの下端部5まで延びるようにすることが好ましい。テーピング状部4の幅は、ウエスト部1の下辺1aの位置で5〜8cm程度、着用者の内腿に対応する部分では5〜12cm程度であることか好ましい(なお、ここで言う幅はインナー・ウェアに張力を掛けない状態で測るコース方向の幅である)。
【0033】
図1〜
図3において白地で示したベース領域は伸縮性を有する編糸(地糸)で平編で編成されている。前述したようにテーピング状部4がウエスト部1の下辺1aの左右脇部から下方に延び、背側を通って股下2で内腿側に廻り込み、着用者の内腿に対応する部分に沿ってレッグ部Lの下端部5まで達しているだけであるので、
図2に示すように、背側においてウエスト部1の下辺から股2までの間の中央部分は伸縮性を有するベース領域(臀部ベース領域6)であり、
図3に示すように、本発明のインナー・ウェアを着用した状態では着用者の臀部は伸縮性を有する臀部ベース領域6で覆われる。
【0034】
また、
図1および
図3(a)に示すように、パンティ部Pの前側(正面側)においては、三角形状腹部3a以外の腹部3は伸縮性を有する腹部ベース領域であり、着用した状態では着用者の腹部を締め付けない。レッグ部Lの前側(正面側)においては、テーピング状部4が内腿側に存在するだけで、他の部分は伸縮性を有するベース領域(脚部ベース領域7)であり、着用者の大腿の前側および外側は伸縮性を有する脚部ベース領域7で覆われる。
【0035】
このように、本発明のインナー・ウェアを着用した場合、着用者の臀部および大腿の前側および外側に対応するインナー・ウェアの部分は伸縮し易い臀部ベース領域6および脚部ベース領域7としているので、臀部の筋肉および大腿の前側および外側の筋肉の動きが妨げられず、運動を行い易い。
【0036】
また、
図1〜
図3において斜線を施して示した低伸縮性領域1、3a、4はベース領域の伸縮性よりも小さければよく、本発明の実施例においては、低伸縮性領域のウエスト部1は地糸による平編とタック編とから編成されており、三角形状腹部3aおよびテーピング状部4は、地糸と添糸とによる添糸編と、地糸による平編とタック編とから編成されている。
【0037】
三角形状腹部3aおよびテーピング状部4においては、添糸編における添糸が三角形状腹部3aまたはテーピング状部4とベース領域との境界で切断されるカットボス編により、三角形状腹部3aおよびテーピング状部4に挿入されている。
【0038】
図4は三角形状腹部3aまたはテーピング状部4の編組織の一実施例の1リピートを示しており、符号〇は地糸と添糸とによるカットボス編の編目を表わし、符号×はタック編の編目を表わし、符号□は平編の編目を表わす。例えば4口給糸の場合、第1と第3フィーダーでは地糸と添糸が給糸され、第2と第4フィーダーでは地糸が給糸される。第1と第3フィーダーで給糸された地糸と添糸は2本一緒に平編目で編成され、第2と第4フィーダーで給糸された地糸は平編とタックが交互して編成される。タックした箇所の糸は編針のフックまたは針幹にかけたままで編針とともに移動し、次コースの編成時に編まれる(すなわちニューループ(編目)をつくる)。
図4に示した実施例ではカットボス編の際に地糸および添糸と一緒にタックした箇所の糸が編まれる。
【0039】
本発明ではタック編を使用しているため、伸び難い編組織となっている。また、タック編を1コースおきに入れた場合、全部平編で編成した場合よりもウェール方向に長さが短くなる。従って、インナー・ウェアの腹側は三角形状腹部3aにタック編が使用されているので、背側よりも股上の長さが短くなり、ウエスト部1は後側が高く、前側が下がる。このため、着用した際にも、圧迫刺激に対して敏感な部位を避けられるので、ウエスト部1による締め付け感が少ない。
【0040】
本発明の一実施例では、ウエスト部1がダブルウェルト編成で袋状になっており、ウエスト部1の内側(着用者の肌に接する側)は地糸で平編目のみで編成され、ウエスト部1の外側は地糸で平編とタック編とで編成される。ウエスト部1がダブルウェルト編成で編まれて2重になっており、タック編も入っているので、ウエスト部1はベース領域よりも低伸縮性である。
【0041】
レッグ部Lの下端部5の編組織は特に限定されないが、地糸のみで編成し、着用者の脚を強く締め付けないようにすることが好ましい。例えば、平編とフロート編とを交互に行い、ゴム編風に編んで、コース方向(横方向)に伸び易くしてもよい。
【0042】
地糸は伸縮性を有する編糸であればよく、例えば、ウーリーナイロンやシングルカバードヤーン(SCY)、ダブルカバードヤーン(DCY)などが適している。地糸に使用するカバードヤーンの場合、ポリウレタン弾性糸などの細番手の弾性糸を芯糸としてこれより太番手のナイロン等の長繊維を鞘糸として巻き付けたものが伸縮性がよいので好ましい。
【0043】
これに対して、添糸編における添糸がカバードヤーンの場合、鞘糸よりも芯糸が太く、その芯糸が地糸の芯糸よりも太いことが好ましい。
【0044】
本発明の下記実施例における糸使いは次の通りであった。
(A) 幅広テーピング状部4(ウエスト部1の下辺1aの位置で7cm、内腿の部分では10cm)を有する80d(デニール)インナー・ウェアの場合
…ベース領域の編糸(地糸)は20d(デニール)のポリウレタンを芯糸とし、70d(デニール)/68f(フィラメント)ナイロンを鞘糸としたシングルカバードヤーン(SCY)
…カットボス編における添糸は70dのポリウレタンを芯糸とし、30dナイロンを鞘糸としたシングルカバードヤーン(SCY)
(B) パワーアップテーピング状部4(ウエスト部1の下辺1aの位置で5cm、内腿の部分では5cm)を有する80dインナー・ウェアの場合
…ベース領域の編糸(地糸)は20dのポリウレタンを芯糸とし、70d/68fナイロンを鞘糸とした80dのシングルカバードヤーン(SCY)
…カットボス編における添糸は120dのポリウレタンを芯糸とし、40dのナイロンを二重に巻き付けたダブルカバードヤーン(DCY)
(C) 幅広テーピング状部4(ウエスト部1の下辺1aの位置で7cm、内腿の部分では10cm)を有する110dインナー・ウェアの場合
…ベース領域の編糸(地糸)は30dのポリウレタンを芯糸とし、100d/96fナイロンを鞘糸としたシングルカバードヤーン(SCY)
…カットボス編における添糸は70dのポリウレタンを芯糸とし、30dナイロンを鞘糸としたシングルカバードヤーン(SCY)
(D) パワーアップテーピング状部4(ウエスト部1の下辺1aの位置で5cm、内腿の部分では5cm)を有する110dインナー・ウェアの場合
…ベース領域の編糸(地糸)は30dのポリウレタンを芯糸とし、100d/96fナイロンを鞘糸としたシングルカバードヤーン(SCY)
…カットボス編における添糸は120dのポリウレタンを芯糸とし、40dのナイロンを二重に巻き付けたダブルカバードヤーン(DCY)
前述した実施例の場合、カットボス編とタック編により伸縮性を低くしているが、更に伸縮性を低くするために三角形状腹部3aおよびテーピング状部4に弾力性を有する合成樹脂またはゴムにより被覆層を形成してもよい。被覆層を形成する場合、塗布またはプリントにより形成することが好ましい。弾力性を有する合成樹脂としては例えばシリコンやポリウレタンなどがある。
【0045】
本発明のインナー・ウェアの効果を検証した。
【0046】
本発明のインナー・ウェアは先の(A)および(C)の実施例のインナー・ウェア(以下、Aのものを弱圧パンツと称し、Cのものを強圧パンツと称する)と、身体に密着しない通常のハーフパンツと、ベース領域を編成する地糸〔20dのポリウレタンを芯糸とし、70d/68fナイロンを鞘糸としたSCY〕で全体を編成したインナー・ウェア(以下、ベースパンツと称する)を着用して運動を行い、エネルギー消費量と脂質消費量を測定し、比較検討した。
【0047】
被験者は健康な50代の女性であった。被験者には,測定前夜7時間以上の睡眠を取らせた。朝食(規定食)を7時30分までに摂食させ、人工気象室(環境温度:24.5℃,相対湿度:50.0%)に入室させた。椅座位安静1時間経過後、半袖でハーフパンツに着替え、11時30分に呼吸代謝を4日間4回測定した。運動負荷は自転車エルゴメーター(STB−1400、日本光電)を用いて、有酸素運動の範囲内で、6分ずつ5段階(第1〜5段階:運動負荷(Watt)10W、20W、30W、40W、10W)で、合計30分間運動させた。得られた呼吸商から1分間当たりの消費エネルギー量(kcal/min)を算出し、その由来である糖質と脂質の消費量(g/min)を求めた。同様にして、ベースパンツ、弱圧パンツおよび強圧パンツを着用して運動し、消費エネルギー量および糖質と脂質の消費量を測定した。
【0048】
図5(a)はこのように測定して得られたエネルギー消費量と運動段階との関係を示すものである。
図5において、縦軸に消費エネルギー量をとり、横軸に運動段階をとった。横軸のBCは運動前、ACは運動後、1、2、3、4、1′はそれぞれ運動負荷が10W、20W、30W、40W、10Wの時である。
【0049】
図5(a)において、白の棒線はハーフパンツを着用した時の測定値であり、黒の棒線はベースパンツを着用した時の測定値、左下がりの斜線を施した棒線は弱圧パンツを着用した時の測定値、右下がりの斜線を施した棒線は強圧パンツを着用した時の測定値である。
【0050】
図5(a)に見られるように、ハーフパンツ、ベースパンツ、弱圧パンツおよび強圧パンツをそれぞれ着用した場合、負荷の掛かっていない運動前の状態BCにおいて各パンツにおける測定値にバラツキがあるので、各パンツの性能を比較し易くするために、
図5(b)では
図5(a)におけるBC(運動前の状態)を統一して100として換算して、相対エネルギー消費量を示した。
【0051】
図5(b)からは、どのパンツをはいてもエネルギー消費量はそれほど差がなく、それぞれの運動強度ごとに比較すると、運動強度が強くなる(10Wから40Wへ)ほど,エネルギーが消費されることが分かる。
【0052】
図6(a)は縦軸に脂質消費量をとり、横軸に
図5と同じく運動段階をとった。各棒線は
図5について説明したものと同じで、白の棒線はハーフパンツを着用した時の測定値であり、黒の棒線はベースパンツを着用した時の測定値、左下がりの斜線を施した棒線は弱圧パンツを着用した時の測定値、右下がりの斜線を施した棒線は強圧パンツを着用した時の測定値である。
【0053】
図6(a)に見られるように、ハーフパンツ、ベースパンツ、弱圧パンツおよび強圧パンツをそれぞれ着用した場合、負荷の掛かっていない運動前の状態BCにおいて各パンツにおける測定値にバラツキがあるので、各パンツの性能を比較し易くするために、
図6(b)では
図6(a)におけるBC(運動前の状態)を統一して100として換算して、相対脂質消費量を示した。
【0054】
図6(b)から、ハーフパンツやベースパンツを着用して運動したときよりも、本発明の弱圧パンツや強圧パンツを着用して運動した方が脂肪がよく消費(燃焼)されていることが分かる。
【0055】
1〜5段階における脂質消費量のトータルでみると、ハーフパンツ、ベースパンツ、強圧パンツ、弱圧パンツの順に、それぞれのBC(運動前)の脂質消費量に対して40.58倍、40.56倍、107.13倍、122.05倍と驚異的な量の脂肪が燃えていることが分かった。
【0056】
このように、本発明のインナー・ウェアを着用して運動した場合、エネルギー消費量は従来のハーフパンツと余り差がないが、脂質消費量では従来のハーフパンツを着用した場合よりも倍以上多かった。このことから、消費エネルギーの燃料源が体脂肪であり、従来は落ち難かった部位の体脂肪を落とすことができることを確認できた。
【0057】
また、他の被験者の結果から、ハーフパンツやベースパンツよりも本発明のインナー・ウェアの方が脂質消費量が多いことが確認できた。筋力の弱い人には弱圧パンツが適し、筋力の強い人には強圧パンツの方が適していることも分かった。