(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の機能性粒子顔料は、少なくとも染料を内包する機能性粒子顔料であって、前記樹脂の外側がオレフィン系樹脂でコーティングされていることを特徴とするものである。
【0011】
〈機能性粒子顔料〉
本発明の機能性粒子顔料としては、少なくとも染料を含有するコア成分、およびこれらを樹脂によって形成したシェルで内包したコア/シェル型マイクロカプセル顔料、染料を内包した樹脂成分により構成されるマイクロ(ナノ)スフィア顔料等が例示される。そしてこれらの顔料の外側がオレフィン系樹脂でコーティングされていることを要旨とするものであり、その製造は、少なくとも染料を内包する機能性粒子顔料を得た後、この顔料の外側をオレフィン系樹脂でコーティングすることにより得られるものである。
本発明において、コーティング前の機能性粒子顔料としては、顔料の母体となる樹脂に染料が内包されている態様であれば、特に限定されず、例えば、1)熱変色性マイクロカプセル、2)光変色(蛍光発色)性マイクロカプセル、3)マイクロ(ナノ)スフィアなどが挙げられる。
なお、本発明における「染料」とは、溶媒に溶解する色材を表す概念であって、単独で発色する機能を有する色材は勿論、単独では発色しないものの、他の化合物との作用により発色する機能を有する色材も含む。
【0012】
〈熱変色性マイクロカプセル〉
上記1)の熱変色性マイクロカプセルは、摩擦熱等の熱により変色する染料を内包したもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ染料(色素)、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0013】
用いることができるロイコ染料(色素)としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるものを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0014】
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ染料を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
用いることができる顕色剤としては、具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス( 4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0015】
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、前記したロイコ染料1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0016】
用いることができる変色温度調整剤は、前記ロイコ染料と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。
用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C
7H
15)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C
11H
23)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C
13H
27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C
13H
27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C
15H
30)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C
21H
43)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C
13H
27)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0017】
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ染料1質量部に対して、1〜100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
【0018】
本発明において、上記1)の熱変色性マイクロカプセルは、少なくとも上記ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径となるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
なお、本発明(後述する実施例等を含む)において、「平均粒子径」は、粒度分布測定装置〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて、メディアン径を測定した値である。
【0019】
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0020】
これらのロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該染料1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
本発明において、上記1)の熱変色性マイクロカプセルは、上記ロイコ染料、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、好ましくは、摩擦熱等の熱により有色から無色となる熱変色性マイクロカプセルを得ることができる。
【0021】
本発明において、上記1)の熱変色性マイクロカプセルでは、描線濃度、保存安定性、の点から、壁膜がウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が挙げられる。
上記マイクロカプセルの壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
なお、壁膜がアミノ樹脂で形成するためには、各マイクロカプセル化法を用いる際に、好適なアミノ樹脂原料(メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、並びに、分散剤、保護コロイドなどを選択する。
【0022】
〈光変色(蛍光発色)性マイクロカプセル〉
本発明において、上記2)の光変色(蛍光発色)性マイクロカプセルとしては、種々のものを用いることができ、例えば、フォトクロミック染料(色素)、蛍光染料(色素)を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0023】
用いることができるフォトクロミック染料(色素)としては、例えば、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、cis−1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)エテン、1,2−ビス[2−メチルベンゾ[b]チオフェン−3−イル]−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン、1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン、1−(2−ヒドロキシエチル)−3,3−ジメチルインドリノ−6´−ニトロベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6´−ニトロベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6´−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8´−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノナフトスピロオキサジン、2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4´−[8´−アミノナフタレン−1´(4´H)−オン]ペリミジン(o−体含む)、2,3−ジヒドロ−2−スピロ−7´−[8´−イミノ−7´,8´−ジヒドロナフタレン−1´−アミン]ペリミジン、アゾベンゼン、3,3−ジフェニル−3H−ナフト[2,1−b]ピラン、2,5−ノルボルナジエン、チオインジゴなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0024】
用いることができる光変色性となる蛍光染料(色素)としては、例えば、アリールアミン誘導体、フェニルアントラセン誘導体などのアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾアザトリアゾール誘導体などのアゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体などのチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体などのジエン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラゾン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体などのピロール誘導体、フルオレン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピレン誘導体、フェナントレン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、キノフタロン誘導体、ルブレン誘導体、キナドリン誘導体などの少なくとも1種が挙げられる。
本発明では、上記フォトクロミック染料(色素)、蛍光染料(色素)などから選択される1種以上を好適に用いることができる。
【0025】
本発明において、上記2)の光変色(蛍光発色)性マイクロカプセルは、少なくとも上記フォトクロミック染料(色素)、蛍光染料(色素)などから選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、平均粒子径が所定径となるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、上述の熱変色性マイクロカプセルの製造と同様に調製することができ、例えば、水溶液からの相分離法では、フォトクロミック染料(色素)などを、ジエチレングリコール、メチルエチルケトン、フェニルグリコールなど有機溶剤などと共に、加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の室内照明環境において無色であり、紫外線照射環境で発色する性質を有する光変色性マイクロカプセルを製造することができる。
【0026】
<マイクロ(ナノ)スフィア>
本発明において、上記3)のマイクロ(ナノ)スフィアは、少なくとも染料を樹脂に溶解し、これを微粒子化した着色樹脂粒子が挙げられる。
用いることができる染料としては、例えば、油溶性染料、分散染料、直接染料、塩基性染料等が挙げられるが、樹脂に対し安定して内包できるという点から油溶性染料、分散染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、ソルベントブラック、ソルベントレッド、ソルベントブルー、ソルベントイエロー、ソルベントグリーンなどの少なくとも1種が挙げられる。
分散染料としては、例えば、ディスパーズブラック、ディスパーズレッド、ディスパーズブルー、ディスパーズイエロー、ディスパーズグリーンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0027】
用いることができる樹脂は、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、塩化ビニルなどのビニル系、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのようなオレフィン系、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのアクリル系、ウレタン系などの少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
本発明において、上記3)のマイクロ(ナノ)スフィアは、少なくとも上記染料及び樹脂を含む組成物を粒子化することにより製造することができる。
例えば、染料と樹脂を有機溶媒に溶解した後、水中に乳化分散させる。次に、前記溶媒を除去することでマイクロ(ナノ)スフィアを製造することができる。
【0029】
〈コーティング方法〉
本発明では、上記1)の熱変色性マイクロカプセル、上記2)の光変色性マイクロカプセル、上記3)のマイクロ(ナノ)スフィア顔料などの少なくとも染料を内包する顔料の外側をオレフィン系樹脂でコーティングすることにより目的の機能性粒子顔料が得られるものである。
コーティング方法としては、例えば、A)上記の機能性粒子顔料と、オレフィン系樹脂を油性溶媒に溶解した溶液とを、水性媒体に分散させ、次いで加熱、減圧等により油性溶媒を除去してオレフィン系樹脂を析出せしめて前記顔料の外側(外表面)にオレフィン系樹脂の被覆層を形成する方法、B)オレフィン系樹脂を油性溶媒に溶解させた溶解液に上記機能性粒子顔料を分散させ、加熱、減圧等により油性溶媒を除去することにより前記顔料の外側(外表面)にオレフィン系樹脂の被覆層を形成する方法、C)乾式衝撃処理(いわゆるハイブリダイゼーション)により上記顔料の外側(外表面)にオレフィン系樹脂の被覆層を形成する方法などが挙げられる。
【0030】
コーティングにより形成される被覆層となるオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体、脂環式オレフィン系樹脂が挙げられる。
脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
好ましくは、極めて高い耐薬剤性に優れる機能性粒子顔料を得る点から、オレフィン系樹脂としてノルボルネンの共重合体を用いることが望ましく、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
【0031】
このようなノルボルネンの共重合体としては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネンの共重合体は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができ、また、市販品があればこれらを用いることができる。市販品では、例えば、それぞれ商品名で、ドイツのTOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHにて生産され、日本ではポリプラスチックス株式会社から販売の「TOPAS(トーパス)」、JSR株式会社製造・販売の「アートン」、日本ゼオン株式会社製造・販売の「ゼオノア」及び「ゼオネックス」、三井化学株式会社製造・販売の「アペル」などの各シリーズ及びその中の各グレードを用いることができる。
【0032】
上記A)のコーティング方法では、機能性粒子顔料と上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂を油性溶媒に溶解した溶液とを、水性媒体に分散させ、次いで、加熱、減圧等により油性溶媒を除去して上記オレフィン系樹脂を機能性粒子顔料の外表面に析出せしめてオレフィン系樹脂の被覆層を形成することにより、目的の機能性粒子顔料を製造することができる。
【0033】
上記方法において用いることができる油性溶媒は、特に限定されず、例えば、ベンゼン、イソプレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エタノール、アリルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、エチルメチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、用いることができる上記水性媒体は、特に限定されず、例えば、水に、乳化剤、分散安定剤等を添加した水性媒体が用いられる。上記乳化剤は特に限定されず、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。上記分散安定剤は、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0034】
上記方法において油性溶媒を除去してノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂を析出させる方法として、30〜70℃に加熱する方法が好ましく、加熱に加えて、0.095〜0.080MPaの圧力となるよう設定して減圧を行う方法がより好ましい。
【0035】
上記B)のコーティング方法では、上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂を油性溶媒に溶解させた溶解液に機能性粒子顔料を分散させ、加熱、減圧等により油性溶媒を除去することにより機能性粒子顔料の外表面にオレフィン系樹脂の被覆層を形成することにより、目的の機能性粒子顔料を製造することができる。
このコーティング方法において、油性溶媒、加熱、減圧等により油性溶媒を除去する方法としては、上記B)で用いる油性溶媒、加熱、減圧等を用いることができる。
【0036】
上記C)のコーティング方法では、機能性粒子顔料の外周面に、上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂の微粉末(上記機能性粒子顔料の平均粒子径未満の平均粒子径を有する微粉末)を付着させた後、これらのマイクロカプセルを気流中で互いに衝突させるか、あるいは機械的衝撃を与え、この衝突あるいは衝撃によって上記機能性粒子顔料の外表面にオレフィン系樹脂の被覆層を形成することにより、目的の機能性粒子顔料を製造することができる。
上記機能性粒子顔料の外周面に、上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂の微粉末を付着させる方法等としては、上記マイクロカプセルと、上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂の微粉末とをドライブレンドすなわち乾燥状態で混合して撹拌し、この際に機能性粒子顔料に生ずる摩擦帯電により付着させることができる。機械的衝撃手段としては、乾式表面改質装置などを用いて実施することができる。
上記A)〜C)の各コーティング方法において、コーティング容易性、コストの点から、上記A)およびB)のコーティング方法の実施が望ましい。
【0037】
本発明において、上記機能性粒子顔料の外周面に形成される上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂で構成される被覆層(コーティング層)の厚みは、感熱記録材料、筆記具用インク、スタンプ用インク、インクジェット用インク、印刷用インク等の用途により好適な範囲を設定することができ、必要とする耐薬剤性や他の性能(保存性、耐光性、着色性などの所定の性能)に応じて適宜決められる。
被覆層の厚みはコーティング前後の外径の差により算出され、(コーティング後/コーティング前)の値が1.1〜10の範囲内であることが好ましい。1.1未満では本発明の効果が得られない場合があり、10を超えると着色力が低下する場合がある。
なお、本発明(後述する実施例等を含む)において、マイクロカプセルの表面に形成される上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂から構成される被覆層の厚みは、粒度分布測定装置を利用して測定したコーティング前後の平均粒子径の値から算出した値をいう。
また、上述のノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂で外周面がコーティングされた本発明となる機能性粒子顔料の大きさ(平均粒子径)は、感熱記録材料、筆記具用インク、スタンプ用インク、インクジェット用インク、印刷用インク等の用途により好適な範囲を設定することができる。
【0038】
上記ノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂で構成される機能性粒子顔料の外側にコーティングにより形成する被覆層の厚みは、上記A)〜C)の各コーティング方法において、用いるノルボルネンの共重合体などのオレフィン系樹脂、または重合の際に用いるラジカル重合性オレフィン系モノマー及び水溶性ラジカル重合開始剤の使用量や、用いる各成分(油性溶媒、水性媒体等)の使用量、若しくは、加熱、減圧等の各条件、または、乾式衝撃処理条件を好適に設定することなどにより、好適に調整することができる。
【0039】
このように構成される本発明の機能性粒子顔料は、母体となる樹脂中に少なくとも染料を内包する顔料であって、顔料の外側がオレフィン系樹脂でコーティングすることにより、特に、ノルボルネンの共重合体でコーティングすることにより、薬剤が存在する条件下でも、染料が破壊されて色材としての機能を失うことなく耐薬剤性に優れる機能性粒子顔料が得られることとなる。
【0040】
本発明の機能性粒子顔料は、薬剤が存在する条件下でも、染料が破壊されて色材としての機能を失うことなく耐薬剤性に優れる機能性粒子顔料が得られることとなるので、例えば、感熱記録材料、筆記具用インク、スタンプ用インク、インクジェット用インク、印刷用インク等に用いる色材として好適に用いることができ、各用途毎に公知の各配合成分を好適に組み合わせ、調製等することにより、感熱記録材料、筆記具用インク組成物、スタンプ用インク組成物、インクジェット用インク組成物、印刷用インク組成物等を得ることができる。
例えば、筆記具用インク組成物では、上記構成の機能性粒子顔料、溶媒(水性溶媒、油性溶媒)、筆記具用の添加成分を好適な含有量で含有せしめて、ボールペン、マーキングペン等の筆記具用水性インク組成物、油性インク組成物、ゲルインク組成物などとして好適に用いることができる。
また、印刷用インク組成物では、上記構成の機能性粒子顔料、溶媒(水性溶媒、油性溶媒)、印刷インク用の添加成分を好適な含有量で含有せしめて、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、孔版印刷などとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。なお、下記実施例等の「部」は「質量部」を意味する。
【0042】
〔実施例1:熱変色性のマイクロカプセル顔料タイプの機能性粒子顔料の処方〕
下記処方にて顔料1(熱変色性マイクロカプセル)を得た。
ロイコ染料として、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン1部、顕色剤として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン2部、及び変色性温度調整剤として、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液にカプセル膜剤として、イソシアネート10部及びポリオール10部を加えて攪拌混合した。次いで、保護コロイドとして12%ポリビニルアルコール水溶液60部を用いて、25℃で乳化して分散液を調製した。次いで、5%の多価アミン5部を用いて、80℃で60分間処理してマイクロカプセルを得た。
以上の手順により得たマイクロカプセル化した水分散体をスプレードライすることでパウダー状にして顔料1(熱変色性マイクロカプセル)を製造した。
【0043】
次いで、上記で得られた顔料1(熱変色性マイクロカプセル)を用いて下記方法に従い、シェルの外側をオレフィン系樹脂でコーティングすることにより顔料1(熱変色性マイクロカプセル)の外表面に被覆層を形成して、実施例1の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造した。
(コーティング法)
へキサン:シクロヘキサン=1:1の混合溶媒99.5部にノルボルネン・エチレン共重合体0.5部を加えて撹拌溶解後、前記顔料1を2.5部加えて十分に分散させ、次いでスプレードライすることでパウダー状にして顔料1(熱変色性マイクロカプセル)の外表面にノルボルネン・エチレン共重合体の被覆層を形成して、実施例1の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造した。
以上の手順により得た水分散体をスプレードライすることでパウダー状にして顔料1(熱変色性マイクロカプセル)の外表面にノルボルネン・エチレン共重合体の被覆層を形成して、実施例1の熱変色性のマイクロカプセル顔料タイプの機能性粒子顔料(平均粒子径1.75μm、被覆層の厚み:3.5)を製造した。
【0044】
〔実施例2:光変色性マイクロカプセル顔料タイプの機能性粒子顔料の処方〕
下記処方にて顔料2(光変色性マイクロカプセル)を得た。
光変色性色素として、1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−(1−ピペリジニル)スピロナフソザジン3部、ジエチレングリコールジベンゾエート10部、およびメチルエチルケトン10部を80℃に加熱溶融して、均質な組成物23部を得た。
上記で得た組成物23部の均一な熱溶液にカプセル膜剤として、イソシアネート10部及びポリオール10部を加えて攪拌混合した。次いで、保護コロイドとして12%ポリビニルアルコール水溶液60部を用いて、25℃で乳化して分散液を調製した。次いで、5%の多価アミン5部を用いて、80℃で60分間処理してマイクロカプセルを得た。
以上の手順により得たマイクロカプセル化した水分散体をスプレードライすることでパウダー状にして顔料2(光変色性マイクロカプセル)を製造した。
【0045】
次いで、上記で得られた顔料2(光変色性マイクロカプセル)を用いて上述したコーティング法に従い、シェルの外側をノルボルネン・エチレン共重合体でコーティングした光変色性マイクロカプセルの外表面に被覆層を形成して、実施例2の光変色性マイクロカプセルタイプの機能性粒子顔料(平均粒子径4.6μm、被覆層の厚み:5.8)を製造した。
【0046】
〔実施例3:マイクロ(ナノ)スフィア顔料タイプの機能性粒子顔料の処方〕
C.I.Solvent−Blue70:10部をアセトン190部に溶解し、染料溶解液とした。次にイオン交換水2,000部を攪拌しながら、この中に染料溶解液を注入し、油性染料微粒子スラリーを得た。
次いで、スラリーをエバポレータにかけ、アセトンと一部の水を留去した。次に0.5μmのメンブランフィルターを用いて吸引濾過して濃縮、水洗を行い、トータル液量100部のスラリーとした。
上記スラリー100部にスチレンアクリル樹脂5部を1mol/kgの水酸化ナトリウム10部に溶解した液とポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルのアンモニウム塩1部を加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散した。
次に、得られた液を攪拌しながら、1mol/kgの塩酸を加え、沈殿物を得た。この沈殿物を濾過、イオン交換水で洗浄して、100部のウエットケーキを得た。このウエットケーキに1mol/kgの水酸化ナトリウム水溶液5部を添加し、超音波ホモジナイザーを用いて分散を行った。更にミリポアフィルターで濾過することにより粗大粒子を取り除き、イオン交換水を加えて機能性粒子顔料の水系分散体を得た。
以上の手順により得た水分散体をスプレードライすることでパウダー状にして顔料3(マイクロ(ナノ)スフィア)を製造した。
【0047】
次いで、上記で得られた顔料3(マイクロ(ナノ)スフィア)を用いて上述したコーティング法にしたがい、シェルの外側をノルボルネン・プロピレン共重合体でコーティングした光変色性マイクロカプセルの外表面に被覆層を形成して、実施例3の(マイクロ(ナノ)スフィア)タイプの機能性粒子顔料(平均粒子径2μm、被覆層の厚み:2.2)を製造した。
【0048】
〔実施例4:機能性粒子顔料の処方〕
上記で得られた実施例1の顔料1について、上述したコーティングに用いたノルボルネン・エチレン共重合体をポリプロピレンに代えて、外表面にポリプロピレンの被覆層を形成した実施例4の熱変色性のマイクロカプセル顔料タイプの機能性粒子顔料(平均粒子径
3.2μm、被覆層の厚み:6.4)を製造した。
【0049】
〔比較例1〜3〕
比較例1〜3として、上記実施例1〜3で得られた各顔料1〜3(コーティング処理を施さない各顔料)を用いた。
【0050】
上記で得た実施例1〜4及び比較例1〜3の各機能性粒子顔料を用いて、下記評価方法により、耐薬剤性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0051】
(耐薬剤性の評価方法)
得られた機能性粒子顔料に対して、次亜塩素酸を滴下して、その耐薬剤性を下記評価基準に基づいて評価した。
評価基準:
○:色相の変化なし。
△:わずかに色相の変化が認められる。
×:大きな色相の変化が認められる。
【0052】
【表1】
【0053】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1〜4の各機能性粒子顔料は、本発明の範囲外となる比較例1〜3の各機能性粒子顔料に較べて、満足のいく十分な耐薬剤性に優れることが判明した。